SS:はっ、必死に努力し続けたら誰でも三冠ウマ娘になれるってか?
1 : お前   2025/04/12 04:23:15 ID:P/2vHxlbPE
・独自解釈独自設定を含みます。おおらかな人だけどうぞ
・細かい部分が気になる方はこの先はご覧にならない事をお勧めします

彼はそう笑った
傑作だというように、私を嘲るように
そして続けた
――そんなんでなれるわけねえのは、お前が一番分かってンじゃねえのか?
――ココの連中はみんなみーんな、お前のいう一生懸命な努力をずぅっとずぅっと続けてるぜ?
――で、その結果そいつらはG1はもちろん、メイクデビューも未勝利戦も勝てねえのが半数ってとこだ、そいつらは一生懸命努力してなかったのか?
彼は睨むように、でもまっすぐに私を見ていた
私は答えた
「それでも――私は三冠ウマ娘になります」

2 : 使い魔   2025/04/12 04:28:20 ID:P/2vHxlbPE
――短距離路線を受け入れられないなら君とは契約を続けられない

たったそれだけで彼女、ミホノブルボンは契約を解除された
三冠ウマ娘になりたい。 それだけを目標に彼女はトレセン学園に入学した
入学前にはトレーナーだった父の指導のもとずっと厳しいトレーニングをつづけていた。
多少は自信もあった。メイクデビューではない、三冠ウマ娘になれるという方の自信だ――しかし現実はその自信をいとも容易く砕いた。
ブルボンの特性は短距離であるのは幼少期からわかっていた。それでも、その短距離ですらブルボンは学園内で"並"かそれ以下の評価でしかなかった。
淡々と状況を理解し次の方法を模索するブルボンですら多少は落ち込んでしまうほどに
3 : トレ公   2025/04/12 04:32:54 ID:P/2vHxlbPE
さらに、トレーナーから短距離路線に今から絞る事を求められた。
トレーナーの判断は正しい、短距離路線ですら今の実力、タイムではメイクデビューで勝てる率は限りなく低く、掲示板に入れたら十分褒められる程度だ。
それでも、ミホノブルボンはそれを受け入れなかった。
彼女にとっての夢は三冠ウマ娘でありそれは大好きな父がその偉大さを教えてくれたからだ。 自分にとってこのトレセンの全ては三冠ウマ娘になることであってメイクデビュー前から路線変更など考えたくもなかった。
しかし、トレーナーはあっさりと契約を打ち切った。

「……」

ステータス、悲しみ……ステータス……落ち込み……ステータス……
4 : ダンナ   2025/04/12 04:38:10 ID:P/2vHxlbPE
彼女は気づく、自分は迷子になってしまったのか
トレセン学園はあまりに拾い。 これだけのウマ娘を抱えられるトレーニング場を準備するだけでこの学園一つが一つの小さな町のようだ
その町の疎外地……要は誰もこなさそうなとこまでトボトボ、ふらふらと歩いてしまっていたのだろう。 ここがどこなのかわからなくなる
ブルボンの視界の先には未整備のトラック場がいくつか。
雑草があり石ころが転がり、練習場ではなく今はただの空き地のようで
そして―――
―――なぜか一つの小さな小さなトレーニング場だけに山のように土が盛られている。

――土を保管しておくばしょだろうか

「なんだ、お前」
5 : トレーナー   2025/04/12 04:43:53 ID:P/2vHxlbPE
『なんだ、お前』

手に持ったシャベル・赤茶色の土まみれの作業着。 軍手、手ぬぐいを頭に巻いて、顔にも土が沢山こびりついている。
背は低い、声も殆ど声変わりしてないが男性だろう。ひたすら目つきの悪い若い男が迷い込んだミホノブルボンを睨むように見ていた。

「あの、私は」
『ここらは危ねえぞ? 空き地だったり何かを放っておいたりするトコだかんな。』
『ここで勝手な自主トレとかすんなよ? マジでココ危ねえしここらでの自主トレ禁止だかんな』
「そうなのですか? いくつかトラックがありますが」
『こんな石だらけ、未整備の硬い硬いとこでトレーニングなんかしてみろ、1日で足が壊れる。 壊れなくても2日め3日め――爆弾爆発まで引き伸ばすだけだ。』

やめとけやめとけ、と男は手を振った
6 : 大将   2025/04/12 04:49:47 ID:P/2vHxlbPE
「詳しいのですね。」『当たり前だ、トレーナーだからな』
ミホノブルボンは少々驚いた、とはいえ彼女の表情は全然変わることがないが
感情はあり考えたり喜んだり悲しんだりはあっても彼女はほとんど表情に出ない。態度にも出ないが、自称トレーナーを名乗る男は言葉を止めしばらく固まる彼女を見て
「……あーそっか、このカッコじゃただの作業員だよな、悪ィ悪ィ」
「でもま、俺は所謂底辺な零細トレーナーでな、担当ウマ娘なんかいやしねえし今日もこうして土を盛るわけだ」
『土を? ……これは、なんですか?』
彼女は大量に盛られた土を見て問いかけた。 遠目から見ればただただ大量に土を山のように盛った土山にしか見えない
『―――これか? これは何に見える?』

若い男はにやっと、逆にミホノブルボンに問いかけた。
7 : アナタ   2025/04/12 04:57:02 ID:P/2vHxlbPE
「私には……山、に見えます。土でできた山です」
『おーそっかそっかあ、山ね。うんうんいいないいな……じゃあちょっと山を見てみるか』

男はミホノブルボンについてくるように目配せし、そのトレーニング場に向かう。
このトレーニング場だけ大きい――1周 6ハロンだろうか。
山はその直線に盛られていた。
直線だけに、容赦なく山のように
『で、これ――何に見える?』

「…………壁、です。 巨大な壁」

ミホノブルボンは思った事をそのまま言った。
厳密には山なので傾斜がついて直線をつくっている
ありえないほどの高低差のついた――坂だ

『アッハッハッハッハ、いいな、その反応とそのたとえ! こっちが欲しい反応をそのままくれるじゃんお前』

男は愉快そうに笑う。そしてにやりと笑いながらブルボンに向いた
8 : お兄ちゃん   2025/04/12 05:07:39 ID:P/2vHxlbPE
男は愉快そうに笑う。そしてにやりと笑いながらブルボンに向いた

「長さは気に入らないが勾配は4%以上、直線の高低差30m以上。
――最高にキツい"坂路"だ」

壁、ではなく坂
直線にだけこれがあるせいでゴールであろう頂点からはゆっくりと下り坂でようやくそれが終わったと思えばもうこの直線。 つまりこの坂だ。
『お前、そのトモだとまだメイクデビュー前か? いきなりこれを登れとは言わねえよ。 中山競馬場の最終勾配ですら2.24% これの半分だからな』
男は坂の頂上を見つめながら、夕日に少し目を細める
『これなら同じトレーニング量でも確実に心肺能力がつく、しかも足への負担がかからねえ。 これが最強のトレーニング……なんだが』

男は締まらない顔で肩をすくめる

『いかんせん俺みたいな実績もないトレーナーの理論言い分なんか相手にもされなくてなあ、土を運んでもらって、重機でならしてもらうだけありがてえ。 あとは』
9 : 貴様   2025/04/12 05:14:09 ID:P/2vHxlbPE
『"これ"だ』

男はシャベルを持ち上げ肩に担ぐ。本来、重機でやるコースの地均しを手作業でやるという

『盛ってもらえば手作業で全部坂路作って、まあローラーだけはどうしても理事長にしてもらっちゃいるが、ここまで好き勝手やらせてもらってるならありがてえってもんだな』
「ずっと、このトレーニング場……坂路トレーニング場を作っていると?」
『ああそうだ。これが認められればウマ娘の能力だけじゃなく確実に故障が減る。』
「故障? 坂路は足への負担が減るのですか?」
『そりゃな、まずスピードが出ない。 ウマ娘ってのはヒトミミより圧倒的に筋力が高い、スピードも加速も車みたいなもんだからな。』
『だがな、その反面――関節や骨みたいなとこは実は筋肉ほど極端な違いはないんだ』
10 : トレーナーさん   2025/04/12 05:22:05 ID:P/2vHxlbPE
『とんでもないスピードで走って、その蹴った足はそのスピード……つまりエネルギーと衝撃を全部受けながら前で接地する……そこにかかる負担やダメージがえげつないのぐらい想像できるだろ?』
「坂路なら、スピードが落ちる分その負担が減ると?」
『そうだ、坂路イコールスピードが落ちるってすぐ出てきたのは大したもんだ。
勿論負担はそこそこに掛けなきゃいけない。 トレーニングってのは筋肉を痛めつけて超回復で筋肉を太くする。 そこはヒトミミもウマミミも一緒だ。 脚への負担を減らすためにスピードを落としたらなーんの意味もねえ』
「坂路であれば、全力でトレーニングをして負担を平地より増やしつつ脚への負担を減らせるわけですね」
『そゆこと、そもそもひたすら走ってるだけ、筋トレだけ、頑張るだけのトレーニングなんかなんの意味もねえよ』
男はトレーナーにあるまじき発言のような言葉を口にする

「一生懸命に努力して頑張るのは……無意味でしょうか?」
11 : トレーナーさま   2025/04/12 05:26:09 ID:P/2vHxlbPE
「一生懸命に努力して頑張るのは……無意味でしょうか?」
『あ? 』
「私は――三冠ウマ娘になります。 そのために今までずっと、努力して頑張ってきました。 幼い時からずっとずっと、父とトレーニングをしてきました」
『……で、三冠ウマ娘になれそうか?お前』
男はまっすぐに問いかける。 ミホノブルボンは首を横にふって
「いいえ、今の私では無理です。ですが、もっと努力をして、頑張ります」

『はっ、そんなんで三冠ウマ娘になれるなら世の中みーんな三冠ウマ娘ばっかだぞ?まさかお前頑張ってるのは自分だけだとでもおもってんのか?』
彼はそう笑った
傑作だというように、私を嘲るように
12 : あなた   2025/04/12 05:31:47 ID:P/2vHxlbPE
「…………」
『俺はな、お前が最初"駆け込み寺"にきた奴かと思ったんだよ』
「駆け込み寺? それはなんですか?」
『…………』
苦いものを飲んだかのような男の顔。 今までの少し軽薄な男の顔とは少し違う
『なあ、トレセン学園で"1勝"できる割合って知ってるか?
未勝利でも良い。 勿論メイクデビューでもいい。 中央にきてたった一回……
一回でも、"センターに立てる"確率』だ

「……50%ほどでしょうか」
『35%だ。 メイクデビューから夏の未勝利戦線が終わるまでに勝てるのは50%ぐらいかもだがな』
「??」
13 : アンタ   2025/04/12 05:37:20 ID:P/2vHxlbPE
「メイクデビューも未勝利も同じ1勝というならば50%が勝てる可能性があるなら35%というのは低すぎます。計算が合いません」
『ああ、そうだ――だってその前に入学した30%以上がメイクデビューにも出れないからな。…………能力不足で地方にいくならまだいい。 この30%には沢山の故障者がいる。』
苦い何かを飲み下すような、そんな顔をして男は続けた
『勝てないから、トレーナーがつかないから、模擬レースで結果が出せないから、選抜レースで結果が出せないから』
『みんなそうやってオーバーワークを繰り返して――最悪一生走れなくなる。
地方に行くとか、競争ウマ娘としてじゃなく――歩くことすらできなくなるやつもいる……メイクデビュー前にココを去る30%の中にはそいつらがいて』

『メイクデビューを無事果たした70%のうち――1勝出来るのがその半分、35%ってとこだ。』
14 : 相棒   2025/04/12 05:43:20 ID:P/2vHxlbPE
『トレセン学園に入学できて、メイクデビューをして、人生競争にかけたんだから――1回は立ちたいよな、センター。
一回だけでいい。 人生をかけたもので主役になりたい。
最後にはな、こういう勝てない奴らはこう思うんだ』

――脚なんて壊れてもいいから、それでも私は強くなりたい

「っ……!!」
『学生時代の競争人生だ。 そこからだって十分やり直しが効く。
それでも、自分が人生かけた夢を一回掴みたいって思う奴らがいて
――ハードワークだとしても度外視で1勝を掴むために異常なスパルタをするトレーナーがいるってこった。』
「……それが"駆け込み寺"ですか」
『で、お前三冠ウマ娘になるって言ってたけどさ、この自分の人生、脚と引き換えに1勝ほしいですって奴らに勝てるのか?』
15 : トレぴっぴ   2025/04/12 05:50:14 ID:P/2vHxlbPE
男はまっすぐ、ミホノブルボンに向き合う
男の背は低い、身長が160のミホノブルボンと殆ど変わらない。
それでもミホノブルボンが一歩だけ足を下げるほどの圧があった

『一生懸命結構。 努力も結構。 お気楽に手軽に勝てるやつなんてそういない。』
『でもな――努力すれば勝てる? 努力を増やしてもっと頑張れば三冠ウマ娘になれる? 嘘つけよ』
『ここにいる連中はみんな一生懸命に、必死に、命も人生も自分の脚もかけてやってるんだ』
『脚が折れたら三冠どころかレースも、トレーニングもできねえ。 脚が折れてでも、一生走れなくなってもいい……それでも大舞台に立てねえのが中央だぞ』

「……確かに、貴方の言うとおりです。 今の私には、無理です。
――ですが、一つだけ出来ることがあります
――この坂を、登り切ります」
16 : トレ公   2025/04/12 05:54:10 ID:P/2vHxlbPE
『無理だ、やめとけやめとけ。 俺はお前を虐めたいわけでもねえし三冠路線をやめろって言ってるわけでもねえよ。 ただただ根性論でなんとか出来る話じゃねえってのを受け入れろって言ってんだ。』

ミホノブルボンはトモからモモ、ふくらはぎ、かかと、立ち位置も歩き方もどう見ても短距離型だ。
それでも三冠に固執してるのはなにか理由があるのかもしれないが、どういう方向でも"夢を掴もう"とすることには違いない。
それのために必死になるウマ娘をトレーナーが愛さないわけもないのだ。短距離であっても、三冠路線であっても。

――そうでなければ、トレーナーの時間もなにもかも掛けて、この坂路を作っていない
17 : 大将   2025/04/12 05:59:29 ID:P/2vHxlbPE
『この坂路はジュニアじゃさすがにいきなりで一本登り切るのすら無理だわ
基礎から鍛えて身体が出来上がってくる時期からじゃないとな』

4ハロンには届かぬ3ハロン600Mの直線
中山の大勾配の倍の坂路を全力で走り切るのには並ならぬ馬力と、それを全開で回し続ける心肺能力がいる。 メイクデビューもまだのジュニアがやれることではない

「やります。 ……修正します、"やれます"」
『っ』
「私は、この坂以上のものを知っています。だから、やれます」
『……好きにしろ。 まずアップしてこい』
18 : トレぴっぴ   2025/04/12 06:04:31 ID:P/2vHxlbPE
言っても無駄。 実際にやってみれば痛感するだろう、この坂路はそんな生易しいものじゃない。 そんなただのいじめ、スパルタ、無意味に見えるものだからこそ、公の承認がおりずに一人でやっているのだ。
しつこいまでの陳情に理事長のお情けで土と運搬、盛るための重機を何回かにわけて手配してくれた。 盛り土をならせば理事長はローラーで乗り込んでくれた。
それ以外は全部自分で坂路を、何年もかけて作った。この無為に見えるものには――自分が人生をかけて良いだけの理由と根拠がある。

『直線前の4角からスタートだ。 坂路である直線はレースの最終直線と思え。 登りきったらゴールだ』
「オーダー了解しました。」

パァン
両手を叩く音と共にミホノブルボンが飛び出す。
19 : トレピッピ   2025/04/12 06:09:05 ID:P/2vHxlbPE
上半身が強そうだ、トレーニングを一切怠ってないどころかかなりハードなトレーニングをしていたのは間違いない。 ジュニア期でそこまで集中してトレーニングをできるのは先程の話と矛盾はするが貴重なほう。 身体が出来上がってないウマ娘も多い、なにより脚や身体が丈夫でないとハードなトレーニングができない。

『だが……動きがガチガチだ、トモが強くなさそうなのに力がありそうってのは無駄な肉が多いんだろうな』

贅肉、ではない。 "無駄な"筋肉だ。 競争に必要な筋肉、身体を支える体幹、腕をふりきり胸を張る背筋……これらが必要以上にあるのだろう。
20 : 使い魔   2025/04/12 06:18:20 ID:P/2vHxlbPE
『まあ……やっぱ無理だろうなあ。』
4角からゴール地点に向かいながらミホノブルボンを見つめる。
坂路に差し掛かるとミホノブルボンの速度は一気に落ち込む。

「くっ、ぅっ……」

モモに、ふくらはぎに、足首に、アキレス腱に
まるでおもりがついたように重い。今までのトレーニングでは感じない重さを感じる。【登りきれない】という男の言葉の意味は、確かにわかる
――だが――ミホノブルボンには一つの大きな才能がある

『さすがに止めるか……お――』

大声でミホノブルボンを止めようとして、異変に気づく
確かにラストスパートとは思えない鈍足さ、正直力尽きて止まると思ったが
確実に、しかし倒れることなく、ゆっくりと
ミホノブルボンは坂を登る。 減速したきり、加速できない坂路を

『……いやおい、そんなノロノロが全力なのに、……まさかまさか』

男の広角が上がる。
根性論を否定し、一生懸命なのは皆そう。 だからそれだけじゃ意味がない
そういった男が見たものは

――幼少期から山でスパルタトレーニングをうけ、そして決して諦めず身体を動かし続けることを愚直に、愚直に繰り返したミホノブルボンが
止まってしまいそうな坂路を、それでも走ることをやめず。ノロノロと――確実に
自分がつくったこの壁のような坂路を登り続ける姿
21 : 使い魔   2025/04/12 06:24:03 ID:P/2vHxlbPE
――脚が重い
――それ以上に心臓が張り裂けそう
――肺が悲鳴を上げている
――心拍数、レッドゾーン危険。肺活量、レッドゾーン危険。
――それでも、私は

『もう少しだ……もう少し―――いけっ、ミホノブルボン!もうすぐゴールだ……頑張れっ、頑張れっ、頑張れっ!』

いつしか
男はミホノブルボンにそう叫んでいた。 アップでようやく自己紹介をした、さっき出会った並程度の才能しかない――努力と一生懸命だけで三冠ウマ娘になろうとしてたウマ娘の名前を、必死に叫ぶ

『いけえっ!ミホノブルボン!!』
「わたしは――」

―――視界がひらける。 その瞬間脚が空を駆けた気がした。
坂を登りきりゴールをした瞬間、レッドゾーンのままフル回転してた心臓が、肺が、からだが全力で悲鳴をあげた
22 : トレーナーさん   2025/04/12 06:27:51 ID:P/2vHxlbPE
「全身、エラー……活動限界」


『――――止まるなっ!!!』

突然の怒鳴り声に、ミホノブルボンは閉じかけた目を開く。
脚が動かず前のめりに倒れそうになった身体にムチをうちギリギリで脚を一歩前にだし、踏みとどまる

『そのまま止まるな!ジョグでも無理なら歩いてでもいいからゆっくり歩きながらすすんで4角まで回ってこい!! いいか? 絶対止まるな、クールダウンしながら4角だぞ!!』

ミホノブルボンはもう返事もできず、歩くような速度でゆっくりと歩をすすめた
23 : トレぴ   2025/04/12 06:35:52 ID:P/2vHxlbPE
『おいおいおいおいおい! お前なにもんだよ、あの坂路のぼりきっちまった』
「……いえ、あれはもう最後は走ってたというようなものでは」
『関係あるもんか、お前本当にすげえよミホノブルボン!最高に根性がある……それに一本でもアレを登り切るまで動けるのはほんとすげえんだって』

確かに遅い
しかしこの坂路トレーニングをするのに必要なのは最低限の馬力だ。 たった600Mのトレーニングとはいえ、それを途中で切り上げるのと最後まで登りきり、止まることなくクールダウンが出来るかは大きい。

「私は、山でくらしてました。 だから、勾配のある坂を走り回ってました」
だから、もう少しうまく走りきれると思ってました。 心臓が、破れそうでした。」
『ああ、普通は心肺に限界が来てどんなに頑張っても限界が来る。文字通り脚がとまってリタイヤだ。 本当によくやった。』
「あの、飯山トレーナー」
初めて男を……飯山と、トレーナーと呼ぶ

「このトレーニングは、心肺機能にも効果がありますか?」
『……ある』
24 : お前   2025/04/12 06:43:29 ID:P/2vHxlbPE
「そう、ですか。 では――このトレーニングを続ければ、3000Mを走り切れますか?」
『……レースの3000M……菊花賞の話だよな?』
「はい、私は短距離適正なので菊花賞を走り切るスタミナが必要です。
スピードも、心肺機能もパワーもすべてが必要です。 これをつづければ――私はクラシックを戦い切れますか?」

『…………そりゃ無理だ――普通はな』
「普通は……ですか?」
『そりゃ心肺機能もつく、競争に必要なパワーもスピードもつく。それでも、短距離ウマ娘がクラシックまでに3000Mを走り切る心肺機能を得るのは難しい。』
「では、普通ではないやり方なら可能ですか」

飯塚はミホノブルボンを睨むように見る。
『可能じゃない、だが……不可能って話でもない。』
「では飯塚トレーナー、私と契約してください。 」
『いやいやいや待てよブルボン。 不可能じゃないけど出来るよって話じゃねえよ? そもそも……うーん……』
「脚を壊すか、壊れなければ走り切る心肺能力がつくかということでしょうか」
25 : トレーナーちゃん   2025/04/12 06:47:55 ID:P/2vHxlbPE
『…………』
「トレーナー、私はずっと山でハードなトレーニングをしてきました。
トレーニング内容だけでいえばトレセン学園でのトレーニングよりずっとハードです。
だから……私はトレセン学園でも三冠ウマ娘として努力できる自信がありました。」
『……』
「でも、それでも私は"短距離なら並"のウマ娘でしかありませんでした。
それじゃダメなんです。 私は、三冠ウマ娘になりたい。
私は、丈夫さなら自信があります。 父とのトレーニングでも脚を壊したことはありません。」
『……この坂路はトレーニングで故障する馬鹿な根性論を減らすためのもんだ』
26 : モルモット君   2025/04/12 06:51:45 ID:P/2vHxlbPE
『ウマ娘ってのは、走れば走るほど脚に負担がかかって故障する。
一度故障すればまた故障しやすくなる。 その脚をかばえば逆の足がぶっ壊れることもある。
でもな』
「……はい」
『ウマ娘が強くなるには、走るしかねえ。 だったら出来るだけ低負荷で最大効率のトレーニングが必要だ。
そしてそれの実績を、坂路トレーニングの実績をトレセン学園が認めてこの坂路トレーニングを一般化する必要がある。 勿論坂路のトレーニング場もトレセン学園にはある。タイム計測もあるが大した勾配じゃない。 タイムを取るには良いだろうがトレーニング効率はそんなでもない』
27 : トレピッピ   2025/04/12 06:55:33 ID:P/2vHxlbPE
『俺は、実績が欲しい。 実績があればこれの脚部への安全性が認められる』
「……三冠ウマ娘は実績にはなりませんか?」
『そのためにブルボンを実験台にしろってか? 馬鹿言うな。 ウマ娘の脚砕いてまで認められたかねえよ』
「砕けません。 私の脚は強いです、スピードもスタミナもパワーも足りないですが……私の夢と身体はとてもとても丈夫です。」
『……』
「私は、トレーナーを信じます。 トレーナーも私を信じてください。」
「私は、必ずあなたのオーダーを完遂します。」
28 : トレーナーちゃん   2025/04/12 06:59:17 ID:P/2vHxlbPE
『負けたよ、オーケーわかった。 お前を三冠ウマ娘にすりゃいいんだな?』
「はい、宜しくお願いしますトレーナー。」
『その代わり、俺のオーダーは絶対だぞ。 それ以下も、それ以上も許さねえ。
俺の指示以外の自主トレも禁止、食生活にも口出しをするけどいいな?』
「はい、わかりました。」

メシは絶対食え、トレーニングでメシが食えなくてもなんとしてもつっこめ
21時には就寝できるように風呂に入ること

それだけを指示し、翌日ミホノブルボンに尋ねる
29 : マスター   2025/04/12 07:05:42 ID:P/2vHxlbPE
『昨日はメシちょっとは食えたか?』
「おはようございますマスター。 昨日の食事は人参ハンバーグが1kg コロッケが1kgと……」
『いやいやいやいやいやまってまってまって?』
「?」
『聞きたいことがもう複数あるんだけど、まずマスターってなに?』
「はい、私を管理しすべてにオーダーをいただく存在としてトレーナーの事を"マスター"と呼ぶことにしました。」
『……お、おう? で、メシ食えたの? そんなにいっぱい? なんで?』
「??? たくさん運動したらご飯がとても美味しかったので。食事制限をしたほうがいいでしょうか?」
『……嘘だろこいつ、あんだけ心肺限界まで回してメシ食えるのか?』

もちろん喜ばしいことだが競争能力以外の必要な事はすべてクリアしてる事になる
とても丈夫で、トレーニングで食欲が落ちず、愚直になにかをこなす
『……じゃあ、俺も覚悟決めますか。 んじゃ行こうか』
「どこにでしょうか?」
『もちろん――お前の親御さんとこだ』
30 : 相棒   2025/04/12 07:06:05 ID:P/2vHxlbPE
1話終了 2話は明日以降
31 : お姉さま   2025/04/14 10:49:17 ID:eC0EMjgj5.
ほす
32 : アンタ   2025/04/14 18:57:44 ID:hpHokQLCjk
ミホノブルボンと飯塚トレーナーは電車に揺られる
トレセン学園のある都市からかなり遠いそこに特急を使いさらに鈍行に乗り継ぐ
平野から山あいに景色が変わっていき

『嬉しそうだな、ブルボン。』
「はい。 学園に入学して以来父とは殆ど話もできてませんでした。」
『スマホがあるだろ。 親御さん厳しくてそういう電話も嫌がるのか?』
「否定します。 私の体質による問題でスマートフォンで父と通話が殆どできません。
通話をする時は他の生徒にお願いしてスマホを持ってもらう必要があります」
『?? なんでまたそんな面倒な事を』
「私は得意体質で電子機器に触れると壊してしまいます。」

やはり不思議そうな顔で眉を寄せるトレーナー
しかし車窓から見える山々を見つめるブルボンの表情に、細かいことはどうでもいいか。と話を忘れる。
33 : トレ公   2025/04/14 19:04:23 ID:hpHokQLCjk
「マスター」
『そのマスターってのやめろ。 俺はトレーナーであってお前の御主人様でもなんでもないんだ。 お前の親御さんに娘がトレーナーにマスターなんて呼ばせてると思われてみろ。 契約だトレーナーだ担当だの話の前に殴り倒されるわ』
「否定します、マスター。 この呼び方はもう父も承諾済みです」
『……は?』
「昨日、食後寮室のフラワーさんにお願いして父と通話をしました。 その時に新しい担当トレーナーが決まったことと、その手腕から"マスター"と呼ばせて頂く事にしたと伝えました」
『お、おう……で、お父様はなんと?』
「なんと、とは?」
『いやその俺に対してなにかこう、ほら、苦情というかそのマスター呼びにたいして苦言というか』
「理解不能、父は頑張れと応援してくれました。マスター呼びに対しては特に言及はありません」
『…………なんかお前んち行くのこえーなーこえーなー』
34 : アンタ   2025/04/14 19:13:38 ID:hpHokQLCjk
「マスター、私から質問があります」
『ん、なんだなんだ?』
「前のトレーナーは家族に挨拶はしませんでした
周囲でも担当契約を結んだことで家族に挨拶をするという話が私のメモリーにはありません。
担当契約を結ぶ際に"オヤゴサン"に挨拶をするという理由があるとは思えませえん」
『あー……』

トレーナーは電車の天井を仰ぐ。
何かを考えるように、一度車窓から景色を眺めて
ミホノブルボンの瞳をまっすぐ見つめる

『お前、どうやったら3000Mを走りきれると思う?
3000Mを走り切るなんて実は簡単なことなんだ』
35 : 使い魔   2025/04/14 19:20:32 ID:hpHokQLCjk
息を呑み、トレーナーの言葉の続きを待つ
トレーナーは意地悪なガキのような顔をして

『3000Mゆっくりマラソンで走れば良い。 ジョグでもいい。 そうすりゃ3000Mだろうが5000Mだろうがいくらでも走りきれる』
「……」
『もちろんビリッケツだ。
重要なのは"どうやったら1着になれるスピード"で、2000Mを、2400Mを、3000Mを、走りきれるか、だろ。 そもそもお前はスプリンターだ。 それに……そのスプリンターとしてもスピードは足りてない』
「…………はい」
『ないないないない、ないもの尽くし。才能ある奴らが必死こいて努力してそれでも届かないG1、しかも人生一度きりのクラシック三冠を全部勝つための能力
それはスタミナだけじゃない。
今のお前を根本から――お前の身体も脚も全部作り直す必要がある』
「作り………直す」
36 : トレ公   2025/04/14 19:26:33 ID:hpHokQLCjk
『そうだ。 お前は幼少期からずっと続けてきたハードトレーニングで大きなメリットとデメリットを抱えてる。』
「デメリット……ハードトレーニングは、いけない事なのでしょうか?」
『いいや、お前はそのハードトレーニングのおかげで俺のこしらえた坂路を登りきった。 それは今殆どのジュニア級のウマ娘ができるこっちゃない。
お前のやってきたハードトレーニングは無意味な事でも逆効果だったわけでもねえ、自信もて。』
「はい、マスター。 ステータス状況"安堵"です」
『だが、その卓越したパワー……いや馬力のために色々と無駄な筋肉がついてる。
無駄っていうか、非効率的な筋肉だな』
37 : 貴方   2025/04/14 19:32:20 ID:hpHokQLCjk
「筋肉に非効率があるのですか?」
『早く走るために筋肉を鍛える。 筋肉を鍛えるってのは筋繊維にダメージと栄養と睡眠……休息を与え超成長を起こさせるってことだ。 ここまではわかるな?』
「はい、習ったことはあります」
『筋繊維を負荷などで傷つけ、そこに栄養と休息を与えると傷に耐えられるように前より強靭になる。 当然ここで筋肉が重くなる。お前の身体の重量が増すわけだ』
「はい……あーー」
『お前は身体にウェイトを巻きまくった状態で走ってる。あの坂を何度も登り切るための身体づくりからしなきゃならん』
「それは、どのような身体づくりをするんですか」
『簡単なこった――坂路しかしない』
38 : トレ公   2025/04/14 19:58:56 ID:Q/YY/qjh6Q
『簡単なこった――坂路しかしない』
「それだけ、ですか?」
『お前には十分すぎる馬力がある。 さっきも言ったがあの坂路を登り切る基礎体力や身体ってのはまずそこから造る必要があるはずなんだ。
でも、お前はアレを登りきれる能力がある。ならもうひたすらそれをやる。 坂路に不要な筋肉は使われないから勝手にシェイプアップされる。 ひたすら坂路をはしるためのロボみたいにそのための身体になってもらう』
「わかりました、マスター。 オーダー"坂路を登るだけのウマ娘になれ"を今後遂行します」
『いや、まってまって? なんであっさり納得してんの?
不安になったりしないの? 色んなトレーニングがあるのに坂路しかしないとか本当に大丈夫ですか? とかもっと別のトレーニングを混ぜるのが王道なんじゃないですか?とかさ』
「不要です。 私はマスターのオーダーを信じます。なぜなら」

――こんなに私を真剣に、3000Mで1着になれる方法を考えてくれる人だからです
39 : アナタ   2025/04/14 19:59:54 ID:Q/YY/qjh6Q
『……』
「私の適性は短距離です。 長距離どころか中距離にもまったく適正はありません。
過去のトレーナーも短距離路線に切り替えることを推奨していました。
周囲も同様でした。 私は才能があるわけでもありません、短距離なら速いわけでもありません。
長距離にも中距離にも才能のない並かそれ以下の短距離馬です。」

ブルボンの表情には憂いも悲しみも自嘲もない。
ただ、事実を述べるように言って

「だから、マスターがはじめてです。 出来るかどうかではなく――どうしたら――3000Mで1着になれるか
どうしたら、私を三冠ウマ娘にできるかを真剣に考えてくれた人は
だから――私はマスターの言葉をすべて信じます。
脚が折れるまで、いいえ、折れても復帰したらマスターのオーダーに従います。
ですから、私がマスターのオーダーに拒否や疑問を抱く必要がありません」

『そうか……そう、か』

嬉しくないはずがない
学園の関係者には狂人扱い、ときに駆け込み寺としてたった1勝を掴むためにやってはいけないハードなトレーニングをする
そのせいでトレーナーの間では"壊し屋"なんてあだ名がついた
そんな自分の理論をただ信じてくれる人がいる
40 : トレーナー   2025/04/14 20:00:32 ID:Q/YY/qjh6Q
『じゃあ、先に言っておく。俺は超高確率でお前の脚を壊すトレーニングプランをやらせようとしてる』
「はい」
『……もうちょっとなんか、こう、ない?』
「ありません。 その必要があるからマスターがそのプランを選んだのだと推察しました。」
『いやまあ、そりゃその通りなんだけど……』
「それに――そのミッションをクリアしたら、三冠ウマ娘になれるのですよね?」
『ああ、なれる。 菊花賞までにお前に最強の脚をプレゼントしてやる。』
「承知しました。 マスターのオーダー通り、脚を壊さずミッションを完遂します。」
『で、まあ非常識……というか、俺がやるプランってのが"医学的に見てもタブーで絶対やってはいけないコト"をする。
前提が脚が壊れるであろうしこんなのはやってはいけないわけだ。
だから、お前の親御さんにも先に挨拶する。
娘さんの脚をぶっ壊させてください、一生歩けなくなるかもしれません。 でもうまく行ったら三冠とれます。
ってな。 多分俺はお前のお父さんからぶん殴られる』
「それは」
『覚悟決める。って言ったろ? 嘘でも五体満足でお返ししますってのが常識だ。
でもな……こんな非常識なURA人生選ぶならもう正直に言うしかねえんだ。 それぐらいしないと』
「私が三冠を取るのは不可能」
41 : アネゴ   2025/04/14 20:10:55 ID:Q/YY/qjh6Q
『……そうだ。 真っ当な一流どころが毎年毎年毎年3冠を目指す。
仕上がりが早ければ2000Mならと長距離には向かないウマ娘が皐月賞に挑戦し
第一コーナーで勝負を決めたいウマ娘が枠順と奇跡に祈ってダービーに挑戦する
春までに頭角を出せなかったウマ娘、2400でも距離が足りなかった長距離向きも含めて大成したウマ娘が3000Mでぶつかり合う菊花賞
一個取れるだけでとんでもないことだ。それを3つ取らなきゃいかん。 こいつらを全部ぶちのめさなきゃいけないんだ。
そんなの並の短距離ウマ娘ができるわけねえだろ、ちょっと才能あるウマ娘がクラシック回避して短距離路線行ったら無双して伝説になりました~……とか漫画かよ、それと一緒だ。 化け物が揃ってる中そいつらを全員ぶっ倒す化け物になるにはシンプルに一番つよくなるしかねえ』

「それでも、私は三冠を取ります。 マスターのオーダーをすべてコンプリートします。
そして、マスターが正しいことを証明します。 マスターの造る、私の脚で」

『……そうだな。まずは親御さんに承諾して貰うことから、だな』
「? 父はすぐ了承すると思いますが。 きっと喜びます。」
『そんなワケねえだろ……娘の脚を壊すような男だぞ』
『ですが……その坂路を登り切るようになるほどのスパルタなトレーニングをしていたのが父です』
『…………』
「…………」

『サンキューブルボン、俺ちょっと緊張で胃が痛くなってたとこだわ。ちょっと楽になった』
「???」
42 : キミ   2025/04/14 20:23:44 ID:Q/YY/qjh6Q
[遠路はるばるお越しくださったのに、なんのもてなしもできず本当に申し訳ない。]
『いえ、我々も日帰りで帰らなくてはなりませんから。多少複雑な話ですので長くなります、本題に入らせて頂くのは速いほうがいいです』
畳の上
挨拶をしてブルボン父と正座で向かい合うトレーナー
同じく正座をして向かい合うブルボン父、 その様子にミホノブルボンは父に

「お父さん――マスターに異常を検知しました。 非常事態です。」
『……はい?』
[ああ、いや、ひょっとして……挨拶とか喋り方のことかい?]
「肯定します。 マスターは普段もっと――比喩表現"ワイルド"であり"フランク"です。このような喋り方をしません。 マスターのステータス"緊張"の可能性がありあす。 今すぐリラックスさせる事を提案します」
『ブルボンさん? 大人というのはね初対面の相手には敬意をもってお話をするんでございますよ? だからふだんとはちょお~~っと違う喋り方になっちゃうんですよ』
「危険です、マスター、お父さん。」
[あっはっは、申し訳ありませんトレーナーさん。 娘はちょっと変わっておりまして。 マイペースというか独自の感性をもっておりまして。 いやはやお恥ずかしい。]
「いえいえ、とんでもないです。今回はその」
[ええ
私もトレーナーだった人間です。 担当と契約をしただけで挨拶に伺うことが普通ではないのは存じてるつもりです。
娘からは担当として契約をした。 と伺ってますが……なにか大きな問題があったのではないでしょうか?]

『…………』
[もしかして、娘の夢である三冠ウマ娘の事ですか?]
『よく、お気づきで』
43 : お兄さま   2025/04/14 20:30:37 ID:Q/YY/qjh6Q
[ええ、三冠という夢を熱く語った私の影響で、娘はずっと三冠ウマ娘になることを固執していました。
理解はしてます……娘はどう見ても短距離適正です。 親の贔屓目にみても才能ですべてを解決できるわけではない。
それでも――娘は三冠ウマ娘になろうとしてる。]
『……その件で
……その件で今回は挨拶と、お許しを得たく参上いたしました。』
[お許し? それは、一体]
『俺たちは、三冠路線……いいえ、三冠ウマ娘になるためにミホノブルボンのレース人生を歩むことにしました。
しかし、そのためには大きな大きなリスクを背負う必要があると
そのリスクを常に背負ったまま、クラシックが終わるまで戦い続けることが必要だと』

トレーナーの言葉がとまる。
息を飲み込み、吐き出す。 なんども、なんども
大きなトレーナーの呼吸音だけがしばし続いて

『そのトレーニングプランは、前提として
……前提として、 脚を壊す可能性のほうが高い事をご理解いただくためにご挨拶にきました。』
44 : 貴方   2025/04/14 20:36:44 ID:Q/YY/qjh6Q
「……っ、お父さ――」

ブルボンの父は立ち上がっていた
ブルボンが知らない顔をしている。 こんな顔をした父は見たことがない
父は立ち上がり、ブルボンが見たことがない顔で、目で、トレーナーを見下ろしてから……大きく、息を吐いた

[大変、みっともないところを見せました。 申し訳ありません。]

深々と頭をさげて平伏する父を、トレーナーが狼狽したように制する

「お顔をあげてください。娘の脚をこわすような事を言われて黙ってる親はいません。 お父様の反応は至極全うで正統なものです。」
[いえ、貴方の言葉を最後まで聞けなかった。
私もトレーナーだった身です。 ウマ娘の脚が脆いのはよく知っている。 だからこそ、脚に細心の注意を払う必要があるというのも知っている。
――そして、それをいたずらに博打で壊すコトを是とするトレーナーなどいない。
ましてや、それをわざわざ娘の親に伝えるために会いに来るトレーナーがいるはずがない]
『……』
[あるんですね、貴方の中に――娘を、三冠ウマ娘にするプランが]
45 : お兄さま   2025/04/14 20:47:30 ID:Q/YY/qjh6Q
『アスリートのトレーニングの基本は、超回復を目的とした筋肉へのアプローチと心肺機能を高める有酸素運動です。
このうち筋肉の超回復の基本は負荷などで傷をつけた筋繊維に栄養と休息を与え、筋繊維が完全に回復したときにもっとも大きな強化が起こります』

『私のプランでは坂路によって強い負荷と心肺機能の向上の両立のために完全な回復を待ちません。 意図的に筋繊維が完全回復をする手前での同一のトレーニングをします。』
[……それは、ハードというより]
『ヒトミミのマラソン選手などが筋力を維持しながら心肺機能を高めるための手法です。 勿論これは本来マラソンとは比較にならない速度と脚部への反動が生まれるウマ娘のトレーニングとしては禁忌です。』
[筋肉への負担は蓄積します。 その疲労の蓄積は筋肉のクッション効果を減らして甚大な故障、事故へのリスクが増えます
……脚が壊れるのも当たり前。 脚が壊れる前提のプランですね、確かに]
46 : お前   2025/04/14 20:52:41 ID:Q/YY/qjh6Q
『私の知る限り……いえ、他の手法で心肺機能をいくら向上させても限度があります。 3冠になるには、スピード、パワー、スタミナすべてが高次元で必要です
今からどんなトレーニングをしても菊花賞までに3000Mを走り切るスタミナをつけさせる方法が、これしかありませんでした。
もっとも心肺を鍛えられ、筋力を向上させられる坂路トレーニング。 それで限界ギリギリ……いえ、それ以上の危険なトレーニングを、故障させないように続けるしか手がありません。
父親として娘の脚を壊すようなことが許されるわけありません。
ですが、
ですが……』

トレーナーは深く、平伏する。
土下座をして、大きく叫んだ

『娘さんの脚を、俺にください。 彼女を三冠ウマ娘にするには、これしかないんです!』
47 : ダンナ   2025/04/14 20:59:19 ID:Q/YY/qjh6Q
[……]

すぅ
はぁ

今度は、父が深く、深く呼吸をしていた。
なにか考えるように。思い悩むように。

[バカバカしい、とは思いませんでしたか?]
[短距離向きの、長距離の適正なんかこれっぽっちもないウマ娘が三冠を狙うなんて、そんな荒唐無稽なわがままのような事を強請るのは]

『わかりません。 俺はトレーナーです。 彼女たちの夢がなんなのか、どれほど大きいのかはわかりません。 適当に"なれたらいいな"と思うウマ娘もいます。 身の程をわきまえないウマ娘もいるかもしれません。
でも、彼女の根性も、覚悟も、努力も、本当です。
だったら――俺がそれを出来る可能性があるならやらせるしかないじゃないですか。
全力で――必死に――その夢へ向かうのを支えるしか無いじゃないですか』

[でも、父親としては脚は壊してほしくない。
ウマ娘が大きな事故を起こせば、走るどころか一生歩けなくなる事もある]

[ブルボン――覚悟はできているか? 三冠か、脚一本か――お前が選びなさい]

ブルボンは、まっすぐ父を見ながら即答した
「両方です。 マスターは私を壊さず、三冠を取らせてくれます」
48 : トレーナーさん   2025/04/14 21:05:43 ID:Q/YY/qjh6Q
「マスターだけが、真剣に私を三冠ウマ娘にする方法を考えてくれました。」
「私はまだ浅慮で、頑張れば、もっと努力すれば――そうしたらなれると思ってました。でも、そんなことは全然なくて――でも、マスターは真剣に、その危険も考えながら方法を考えてくれました」

ブルボンは正座をして父に向き、頭を下げる。

「お父さん……私は三冠ウマ娘になりたいです。
でも、きっとこのままではなれません。 そんなのはいやです。
私はマスターの事を信じたい……この人といっしょに、戦いたいです。」

[はあ……頑固なところは母さんみたいだ]
[飯塚さん。]
[この子は変わり者で、それでいてちょっと抜けていてね]
[とても不思議なことを言い出したりする。]
[人見知りはしないんだがあまり折り合いがつく相手が少ないんじゃないかと心配していました。でも貴方のようなトレーナーに会えて本当に良かった]

父は深々と頭を下げる。 平服でもなく土下座でもなく、心から娘のことを頼み込むように

[どうぞ、娘をよろしくお願いします。]
[脚一本覚悟した娘です、もし迷うことがあっても――その覚悟で進んでください]
49 : アナタ   2025/04/14 21:13:13 ID:Q/YY/qjh6Q
電車での帰り道

『…………緊張した。もう二度とこんな思いはごめんだ』
「お疲れ様でしたマスター。 マスターがマスターでなくなったときはステータス:驚愕 になりました」
『いや俺だって最低限の礼儀は……って、そういやお土産になんか頂いたんだよな、瓶だと思うけど。水の綺麗そうなとこだったし日本酒かな』
「きっと、バーボンだと思います。 父はバーボンが好きなので」
『へえ……』
「父は気に入った相手にバーボンを送るんです。 きっと、おと――父はマスターの事を気に入ったのだと思います。 嬉しそうでした。」
『そりゃ良かった、今後ともうまくやっていけるといいけど』
「?」
『じゃあ、明日から坂路トレーニングだ。 登り切るかぶっ倒れるかだ。
来月までにまともなタイムにするぞ。 そっから本数を増やす』

『最終的にあの壁を4本、これをずっとずっとやってもらう。
朝日杯までに1600M 皐月賞までに2000M ダービーまでに2400M
……菊花賞までに3000M
それまで時間がない、全力で取り組むぞ』
50 : トレ公   2025/04/14 21:17:12 ID:Q/YY/qjh6Q
だそく

「はむ、あむあむ、あむあむあむあむあむ」
『よく食うな……駅弁10個めか』
「はい、このシュウマイはとても美味しく……はむはむ」
『あーたしかにそれ美味しそうだ』
「……申し訳ありませんマスター。 あげません」
『いやいらんて』
「そうですか、はむはむはむ」
『…………』
「……どうしましたかマスター」
『……(うずっ)一個もらおっかな―』
「がるるるるる!!ステータス:独占欲を開始」
『ごめんごめんうそだってごめんて』
「……」
『普段めっちゃ従順なのにメシの邪魔すると怖いな』
51 : お兄ちゃん   2025/04/14 21:17:49 ID:Q/YY/qjh6Q
2話終了
3話は明日以降
ほすあったので続けた
52 : 大将   2025/04/14 22:28:22 ID:eC0EMjgj5.
ほすしたものです
こういうところでしか読めないSSにしかない栄養素は確かにあるので
ありがとうございます
53 : キミ   2025/04/15 19:28:10 ID:xTwPv0Nb6w
『昨日トレーニング後の食事と就寝時間は?』
「はい、先日の食事量は――」

契約後1ヶ月、毎日食事と就寝時間を確認するのがルーチンの一つだ
ミホノブルボンの食事量をチェックしつつ、トレーナーは難しい顔をする

「トレーナーの表情の変化を検知しました。 食事量に問題があったのでしょうか? シェイプアップのために食事量を減らすのはステータス【はらぺこ】になる懸念があります」
『いやメシは食え。 食えるならもっと食え食えるだけ食え。 こういうハードなトレーニングを毎日してると普通メシを食えなくなるんだよ。 疲労が蓄積していくとどんどん食欲が失せてくもんなんだ。』

呆れたようにトレーナーは言う。 食事を取るのもアスリートの大切な仕事だが通常はこのように厳しいトレーニングを続けると食欲がなくなるのだがミホノブルボンには関係ない話のようだ

『丈夫で内臓も強くて健啖ねえ、完璧じゃんいいねいねえ。
お前マジで強くなるぞ。
――で、痛いところはないか? 痛くなくても違和感とかないか?』
「いいえ、システムオールグリーン、とても順調で……あんっ」
『あ、すこし強かったか? さすがに俺もそんなに慣れてなくてな』
「いえ、このままでお願いします。 とても、気持ちいい……です……んっ」
『じゃあ、もう少し強めにいくぞ。 ここは、んっどうだ?』
「ッ、 ソコ、はい、とても、いい、です」
54 : お姉ちゃん   2025/04/15 19:36:59 ID:xTwPv0Nb6w
『そうか、じゃあじっくり全部ほぐして行くぞ』
「はい、続けて、くだ……さ、いっ」
『あんま大きな声だすな。 トレーナー室だって外に人くるかもしれないんだ、ぞっ』
「はい、しか、し、これは流石にミュートは厳し、くっ」

トレーナーはミホノブルボンに馬乗りになって、ミホノブルボンはうつ伏せでトレーナーが動くたびに声を漏らす

「マスターのこれは、とても気持ちいいです」
『まあ、トレーナーだからな。 マッサージ師の免許はないが資格が取れるぐらいには勉強してるわ』
「しかし、毎日とても長い時間マッサージをして頂いてます。マスターの握力や疲労が心配です。マスターは疲れませんか?」
『そりゃ疲れるさ。 今だって腕がパンパンだ。 それでも、これでお前の脚の疲労がちょっとでも抜けるなら安いもんだ。 』
「……マスターは、厳しいようでとても優しいです。 私の脚の事をいつも心配してくれてます」
55 : 貴方   2025/04/15 19:52:45 ID:xTwPv0Nb6w
『なーにいってんだ、トレーナーが担当の脚を大事に大事にすんのは当たり前だろうがよ』
「マスターの"大事"は、とても優しい気がします。」
『はいはい、そういう事は照れるからやめなさい。 トレーニングのピーク時間は短いけどな、お前がしてるトレーニングってのはトモから脚全体への疲労が半端ないんだ。 それを毎日できる限り緩和してちょっとでも多くトレーニングをするためだ』
「はい、まだ私は坂路トレーニングを2本に増やすことはできません。 トレーニングの目標である4本に至るまでは遠いです」
『ああ、でも焦らなくていいぞ。 菊花賞は3000Mだが道中は1600M・2000M・2400Mだ。 今の目標は1600Mを完璧に走り切るだけでいい。
坂路の本数もそれと一緒だ。今は1本をしっかり仕上げればそれでいい』
「マスターは、私が三冠ウマ娘になれると思いますか?」
『知らん』
「……」
『だが、俺のオーダーを今後も完全にこなせばなれる。』
「はい、マスター」
56 : トレピッピ   2025/04/15 20:19:23 ID:xTwPv0Nb6w
『そのために、こうしてオーダーを完遂させるために脚の疲労を全力で取るわけだ。
怪我をしたらその時点で全部おしまい。 前提が脚を壊す覚悟でといっても脚が壊れたら全部おしまいだし脚を壊すつもりもないからな
――よし、だいたいおしまいだ。 ブルボンちょっと立ってみてストレッチなりなんなりしてみてくれ』

「はい、ありがとうございますマスター」

ソファから起き上がって、身体を動かすミホノブルボン。

「トレーニング直後なのにとても身体が楽になりました。 マスターの手は魔法のようです。」
『ははっ、そうだろうそうだろう。この手でブルボンの脚をURAで一番の脚にしてやるからな。 痛いところや疲労がたまってそうなところはあるか?』
「ありません。 ……ですが」
『ん、どうした?』
「あの、マスター。 マスターの手で頭をさわってみてくれませんか?」
『ん ……こうか?』
「…………ステータス"安堵""安心""充足感"を確認。 マスターの手はやはり、父のように魔法を使えます」

……なんか犬撫でてるみたいだな
トレーナーはそんなことを考えながらミホノブルボンを撫でる手を止める

「……」

じっとトレーナーを見つめるミホノブルボン。 仕方なく頭を撫でるトレーナー
57 : お姉さま   2025/04/15 20:33:18 ID:xTwPv0Nb6w
『ナデナデ……ナデナデ……』
「……」
『満足してる顔なんだよな…多分だけど』
ひょいっと手を離すと、ミホノブルボンはまたトレーナーを見つめる
黙ってまたミホノブルボンを撫で続け
『なあ、そろそろおしまいでもいい?』
「もう少しだけ、この魔法をお願いします」
『じゃ、じゃあほら、明日トレーニング終わったらまたしてやるから…』

パアアア

『お前普段あんまし表情動かさないけどなんか雰囲気を表情にするんだな』
「ぜひ、トレーニング"なでなで"を組み込んでください」
『これはトレーニングじゃねえよ』

『じゃあな、今日もメシたくさん食って早く寝ろよ? それだけでお前は強くなるからな』
「はい、お疲れ様でしたマスター」



『…あいつほんと犬みたいだな。頭撫でるだけであんなに喜んじゃって、まあ…』

トレーナーはスマホを取り出して、なにかを打ち込みながらトレーナー寮にかえっていった
58 : お姉さま   2025/04/15 20:54:11 ID:xTwPv0Nb6w
「はあっ…はあっ……ぜっ、ぜっ、ぜっ――!!」

『止まるな!!!
そのままジョグでゆっくり戻ってこい!!!』

いつものように坂路をゴールし、そのまま進み、1角、2角…短いバックストレート、3角、4角と戻って来る。
脚が重い、心臓が破裂しそう、肺が悲鳴をあげている
しかし

『ブルボンっ!!』
「マス――きゃっ」

トレーナーは興奮しきった様子でブルボンを抱き、背中を何度も叩く

『お前最高だよ、もう2本めやりきりやがった!
ははははっ、お前は間違いなく最強のウマ娘になれるぞ! 誰にも負けない無敵の三冠ウマ娘だ!』
「マスターのステータス:高揚 がレッドゾーンです」
『当たり前だろ、こんな短期間にこの坂路を登りきれるようになるなんてそうそうねえよ、ああ最高だお前は最高のウマ娘だよミホノブルボン!』

まるで子供がはしゃぐように喜ぶトレーナーをじっとみつめて

「嬉しいです、マスター」
『2本を続ければ、これからはもっともっと効率的に強くなれる。 これからは今までの倍以上苦しいし、辛いけどお前は絶対に三冠ウマ娘になれるぞp』
「はい…ですが、マスター」

「私が嬉しいのは、マスターがそんなにも喜んでくれることです。
私は三冠ウマ娘になるために今まで努力してきました。頑張ってきました。
たしかに、ハードなトレーニングは辛いこともあります。
ですが三冠をとるためには必要なことでした。 私は父のもとで、トレセン学園でも、三冠のため…自分自身のためにそうしてきました」
59 : 大将   2025/04/15 20:59:24 ID:xTwPv0Nb6w
「ですが」
「私の走りでマスターがこんなにも喜んでくれる。 興奮してくれる。
そう思うと、私の中に……とても大きな充足感が満ちます。
ステータス:幸福 です。
私が頑張るのを、喜んでくれるというのはとても、とても嬉しい。 私のデータにはなかったことです。
私の走りが、マスターをこんなにも喜ばせるなんて。」

『……お前は、それだけ凄いことをしたんだよ。』

ぽんぽん、と頭を撫でる。はやくクールダウンとストレッチをしてあがろう、と。
ミホノブルボンが、トレーナーの服の裾を掴む

「マスター、あの、"なでなで"を要望しても、いいでしょうか?」

『……先にクールダウンとマッサージをしてからな。 あとでいっぱい褒めてやるから』

パアアア

(ホントに犬みたいだな、なんかわかりやすい)
60 : お兄ちゃん   2025/04/15 21:08:03 ID:xTwPv0Nb6w
トレーナー室・マッサージ後

『明日、暇か?』
「スケジュールを確認。 特にスケジュールはありません」
『オーケー、じゃあ明日昼、なんかメシ食いにいくぞ』
「食事ですか?」
『ああ、お前が坂路2本をクリアしたご褒美だ』

ナデナデ
トレーナーはソファに座るブルボンの頭を撫でる。 気持ちよさそうに目を細めるブルボン。 本来は年頃の少女の頭や髪の毛を撫でるなどよろしくはないのだろうが、所望するのならしょうがない。 それでやる気があがるならいっぱい褒めていっぱい撫でるべきだろう。

「ありがとうございます。」
『ところで、メシは食えそうか?』
「…………???はい、今日は2本の坂路をクリアしたのでお腹が減っています。 ステータス:非常に空腹」
『マジか、すっげえ健啖だな。まあそれは良いことだ。 ほんとにお前最高だよ。
ところで何が食べたい?』
「はい、…………あの」
『なんだ?』
「ご存知だと思いますが、我々ウマミミはヒトミミより大量の食事を摂取します。
それは、大丈夫なのでしょうか? お腹いっぱい、食べてしまっても」
『ああ、もちろんだ。 ブルボンへのご褒美なのになに遠慮してんだ。 腹いっぱい食べに行くんだぞ』

ッパアアアアア

あまり表情が変わってないが雰囲気でめちゃくちゃ喜んでるのがわかるのでトレーナーは苦笑する。
61 : マスター   2025/04/15 21:12:35 ID:xTwPv0Nb6w
『じゃあ、お疲れ。明日な』
「今日もありがとうございました、マスター
…あの」
『?』
「明日、楽しみにしています」
『ああ、おう、ゆっくり休めよ』


『しかし、こんなに早く2本め突入か。 しかも連日のハードトレーニングに加え今日は一番辛かっただろうに、食欲がまったく失せない。 メシが食えるうちはトレーニングの強度は落ちないし精神も折れない。
…………親御さんはとんでもない娘さんを作ったもんだ』
62 : 相棒   2025/04/15 21:28:03 ID:xTwPv0Nb6w
「おまたせしましたマスター」
『よう、ブルボン。 時間通りだな』
「しかしマスターのほうが早く到着して…あ」
『ん? どうした?』
「これが、クラスメイトの方々が言っている
特殊ステータス:ごめん待たせちゃった? ううん、いま来たところ
という挨拶でしょうか? 失礼しました、挨拶を最初から修正します、マスター」
『いやいやデートじゃないし別に待ってはいないからな?』

昼食には早いので買い物、ウィンドウショッピングをする。
ゲーセンのプライズコーナーにて

「……あ」
『ん? UFOキャッチャーか……ああこれ取れそうだな』
「本当ですか、マスター。 このうさぎが取れるのですか?」
『おう、やってみるか? ってああ、お前機械触れないのか……よし、まあ見てろ』

チャリーン…ピロピロ…デッデッデッデ…パラリラリーン

『よし楽勝…ほれ、ブルボン』
「ありがとうございますマスター、 うさぎ男爵さんを入手します」
『男爵? それそういう名前なのか?』
「はい。 いつも部屋の留守を警備してるうさぎさんのバディになります。」
『……? あー、寮室にもううさぎがいるのか?』
「はい、留守番をしてもらってます」
『ああ、そういうことか。 まあ仲良くしてくれるといいな』
「はい……はいマスター。 うさぎさんはとても優しいのできっと仲良くしてくれます。」
63 : モルモット君   2025/04/15 21:40:14 ID:xTwPv0Nb6w

もともとマイペースというか個性的なタイプだとは思うが、時たまとても幼い情緒をしてるんだなと思う。 この年でぬいぐるみ、人形とこのように戯れるのは年頃の少女だと恥ずかしがって思ってはいても本人の趣向に反して離れてしまうこともあるが。
ナデナデの要求が強かったり、子供っぽいところも多い
―――しかし、高身長とも言えないがそれなりに背は高く、腰はすごくくびれてるが発育も良い、下世話な言い方をすれば女性的なボディラインをした美少女だ。
そんな美少女がこんなに幼い情緒をしてることが不思議でならない。

『そっか、きっとその男爵も紳士なうさぎさんだから仲良く出来るな』
「……パアアアア」
「はい、うさぎさんはいつも完璧に留守番のオーダーをこなしてくれます。 とても優しいウサギさんで」
――これ、テンションあがってるのか
うさぎさん談義をしつつ、昼食のためにちょっとだけお高めのハンバーグ屋に入る。 ウマミミOKで学園のウマ娘からも評判がいいお店だ
『ここのハンバーグがうまいらしいぞ、栄養バランスのためにサラダもしっかり食べてもらうがいくらでも喰っていいぞ』
「ステータス:期待・高揚を確認しました。 とても楽しみです」

『うまいか?』
「はい…あむあむ、もぐもぐもぐもぐ」
ミホノブルボンは元々淡々と何事もこなすタイプだが、食事もあまり会話をしない。
これは淡々と、というより食事に集中してるのだろう。
夢中でハンバーグを食べるミホノブルボンの邪魔をしないように黙ってる。

「……はっ マスター、ごめんなさい。 食事に集中しすぎていました」
『いいんだよ、お前のご褒美のためにここにきたんだろ? まずは腹いっぱい食え。 話なんていつでもどこでもできる。』
「はい、マスター。」
64 : トレぴ   2025/04/15 21:45:21 ID:xTwPv0Nb6w
もぐもぐもぐもぐ
――よく食べる。 昨日も空腹だと言っていたし翌日も食欲が落ちる様子がない
今後もこの調子であればありがたい、ありがたいのだがそうそうはいかないだろう。
正直坂路1本でも食欲が失せるもののはずだ。 平地のトレーニングと違って坂路…いや、ミホノブルボンが"壁"と例えたあの大坂路でのトレーニングはそれほどに身体に負担がかかる。 負担をかけるためのものだから当然だ

『おいブルボン、おい』
「……ふぁい、マスター」
『いっかい手を止めて顔こっち向けろ。 ソースついてる』
「はい、むぐむぐ、むぃむぃ」
『ほれ、きれいになった。 汚れたらまた拭いてやるから食え食え』
「はい、マスター。 もぐもぐ、むぐむぐ」

「マスター、ありがとうございます」
『おう、腹一杯になったか?』
「はい、ハンバーグをこんなにいっぱい食べたのは初めてです」

チラッ

『……あれか、いいぞ。あとであのでっかいパフェも食べような』
「パアアアアア」
『お前の喜んでるときの顔なんかわかったような気がするわ。』
「ところでトレーナー、父から連絡がありました」
『おう』
「父は、私が坂路を二本クリアしたことを存じてました」
65 : 貴様   2025/04/15 21:51:53 ID:xTwPv0Nb6w
『そうか、まあ俺が伝えたからな』
「はい、父から教わりました。 マスターはトレーニングの進捗や状況、脚や身体の具合などを毎日のように必ず教えてくださると
大坂路の画像や私のトレーニング風景の動画も送っていただいたと。
父はとても感謝していました。 心配は尽きないが、マスターのおかげで安心できると」
『そりゃ心配するだろ、特にお前の親御さんは元トレーナーだ。
お前が今やってるトレーニングがどんだけ危険か、よく分かってる。』
『インターバルトレーニングってのは高負荷と低負荷を繰り返す。ここまでは一般のトレーニングとしてやれる。
坂路も元々心肺向上と脚力、スピードの効率的な向上のためのものでむしろ故障率は下げられるはずだ』
66 : アンタ   2025/04/15 22:00:07 ID:xTwPv0Nb6w
『だが、お前さんのしてるのは坂路でのラストスパート……心拍を限界まで上げた状態で長い距離を全力疾走させられてるようなもんだ。
心肺を鍛える、スピードを鍛える。 しかもクラシックの全ウマ娘最高の脚と心肺を得るための負荷をかけ続けるんだ。
今はまだ坂路の本数が2本だが3本、4本になればもっともっと危険になっていく。
親御さんからしたら毎日爆弾抱えて走ってる娘の姿を想像しちまうだろうよ』

「ですが」
『ん?』
「私は、マスターのトレーニングをこなしているのがとても楽しいです」
『楽しい?』
「はい。 マスターは私をいっぱい褒めてくれます。 私をいっぱい撫でてくれます。 タイムが良いとまるで自分の事のように喜んでくれます。
だから、トレーニングをしながら頑張ろうと思えます。」
『そっか、俺も楽しいよ。 ブルボンが走ってるのを見るのは好きだ』
「はい、私もマスターが大好きです。」
『はいはい、そういう言葉は聞くやつによっては勘違いをされるから程々にな?』
「ステータス:疑問を検知しました。 勘違いというのはなんでしょうか?」
67 : トレぴ   2025/04/15 22:05:45 ID:xTwPv0Nb6w
『あー……んー……、 お前、お父さんは好きだろ?』
「肯定です、おと――父のことは尊敬していますし大好きです」
『うんうん、人参ハンバーグ好きだろ?』
「肯定です、 とても美味しくて大好きです」
『うんうんそうだなそうだな。 でも、男と女でいう「好き」はちょっと違うだろ?』
「理解できます。 少女漫画などでいう恋愛の好きですね。 LikeとLoveの違いだと表現されるものです。」
『おおおお良かったブルボンちゃんとわかるんだなあ偉いぞ偉いぞ』
『つまり、お前はお父さんや人参ハンバーグのように俺を好きだというが、人によってはLoveの方の好きと勘違いされる事もあるわけだ。』


「理解不能、それは問題があるのでしょうか」
「私は、両方の意味で好きだと表現しても差し支えないと思っています」
68 : モルモット君   2025/04/15 22:15:03 ID:xTwPv0Nb6w
『………………………………えっと
一応聞くが、それは告白とかそういう?』
「否定します。 一般用語:愛の告白 とは違う感情です」
『あ~~~~よかった。 そうだよね? 違うよね? びっくりしちゃったよ
ごめんごめんごめん、俺が勘違いしちゃったよごめんな?』

「マスターは父のようです。 厳しいところも多いですが優しくて、いつも私のことを見てくれてます。 マスターに撫でられると安心できます、充足感に包まれます。」
「同時に、そのようなマスターを恋愛的な意味でいう好きという男性を見る意味で好きだと思っていても私は問題ないと思っています」
69 : アンタ   2025/04/15 22:20:31 ID:xTwPv0Nb6w
『…………えっと、それはどういう?』
表情に照れとか恥じらいとか、そういうものは出ていない
相手はミホノブルボンだ。 年不相応の情緒を持つ無表情の少女である。
きっと、まだ男性女性の恋愛という感覚がわからないのだろう
わからないからこそ親御さんとにている、だから好きというのを混同してるのだろう。
「マスター、質問があります」
「マスターは私の事をどのような人物だと思っていますか?」
『んー? んー……高等部にしては情緒が幼くてマイペースで、努力家で、感情が表面に出にくいけれど実際の感情は強くて周囲から無感情と思われることに困ってるタイプ?』
「はい、私には感情があります。 そして高校生です。」
「マスターはなぜ」
「そんな私が恋愛感情や男女の性欲を一切理解してないという誤解があるのでしょうか?」


『…………え?』
70 : トレーナー   2025/04/15 22:30:22 ID:xTwPv0Nb6w
やばい
本能的に感じた。
それはトレーナーと担当ウマ娘という意味合いのものではなく
ヒトミミとウマミミという生物の根源としても警鐘

「私はまだ子供です。 ですからマスターの言う通り【父への愛情】と誤解して混同してしまっているのかもしれません。 ですが」
「私は私の中でそれとの区別をつけたうえで【そっちでもいい】と思っています」
『いやいやいやストップストップ。俺等まだ1ヶ月の契約だし、更に言うと君は学園のウマ娘、俺は学園のトレーナー。 オーケー?』
「はい、世間一般で学生とトレーナーが公に交際をすれば大事になるのは理解しています。マスターにそれを求めたりはしません。
ですが――実際にそのような事例が多く存在してるというデータも存在しています。」
『いやいや待って待って待って、まずブルボンのお父様に殺されるよ俺!?』

「先日の坂路の件で父にも相談しました。 父は私が本気なら構わないが三冠をとるまで本分をおろそかにするなと許可をくれました。」
『お父さん!?まってなんで?』
「はい、父は言っていました。 一介のトレーナーが契約の許可を取るために娘の脚をくれと言いに来る胆力が非常に気に入ったと。」

店内の白い天井を仰ぎ見る。
ミホノブルボンはこう――見た目に反して頭の中身幼女というか子供と勝手に思っていた。まあ年相応の情緒というわけではないようだが
愛情として好きだから告白というわけでもなく
そっちの感情であっても構わないと――そう、好きを伝えているのだ
71 : アネゴ   2025/04/15 22:39:00 ID:xTwPv0Nb6w
――なんとかその時の話をうやむやにして
栗東寮まで送るために河川敷の横を二人で歩く。
トレーナーは身長もそんなに高くない、というより低い、ちびだ
顔だって童顔なほうで、背格好と相まって「子どものよう」という評価を異性同性とわず受ける。
ミホノブルボンのような美少女は将来もっと良い男性との出会いがあると思う
そもそも自分と彼女は担当契約の間柄だ。

「あの、マスター」
数歩、ミホノブルボンが前にすすみ、トレーナーの前を塞ぐように向かい合う
「私は、トレーナーから見て魅力的に見えませんか?
担当としてではなく、女性として魅力的には見えないでしょうか?」
『お前は美人だし魅力的だよ。女としても』
「っ…」
『そのパアアアってのやめろ。 でもそういう付き合いはする気ないぞ。
お前は三冠ウマ娘、俺は自分の理論と坂路などの運動学トレーニングの普及のために互いに頑張る間柄だ。 恋愛ラブラブイチャコラするための関係じゃない』
「…………はい、あの」
「トレーナーには、そういう女性はいるのでしょうか?」
『いねえよ悪いか、トレーナーなんてのは年齢イコール彼女いない歴ばっかだ。
安心しろ彼女のためにトレーニングをおろそかにするマスターはいねえよ。
……クソクソクソっ、なんで高校生にこんな事ッ、クソクソクソ』

呪詛のように彼女いないモテない自分にクソクソ言っている

「良かったです――マスター」
『なんだ?』
72 : トレピッピ   2025/04/15 22:46:49 ID:xTwPv0Nb6w
「マスターは故障を覚悟してやりきれ、そして三冠を穫れると言いました。
私は、三冠を獲ります。 故障はしません。
恋のレースも、出走できるなら獲ります。
三冠を獲ったら――もう一度、マスターに【好き】を伝えようと思います」

ミホノブルボンは表情の変わらないウマ娘だ。
しかし、その時のミホノブルボンは――笑っていたように見える
恋する少女のような――捕食者のような
トレーナーは逃げるように、真っ赤にした顔をそらした

『………知らん、勝手にしろ。もう知らん知らん知らん!
明日からまた坂路だからな! 二本に増えるからしっかりストレッチして寝ろよ!』
「了解しました、マスター」

翌日
『おはようブルボン』
「おはようございます、マスター」
『よし、アップ軽くしてストレッチだ。 今日から坂路2本きっちり走るぞ。
覚悟決めて全力でいくぞ』
「了解しました。 ミッション:大坂路2本トレーニングを開始します。」
73 : お兄ちゃん   2025/04/15 22:51:56 ID:xTwPv0Nb6w
『昨日のアレはなんだったんだ……』
特になにもなく――何事もなく、今日のトレーニングが始まったことに安堵と肩透かしをくらったように、ため息をつく。
まあ、実際ミホノブルボンは魅力的な少女だ。
顔立ちだって超がつく美少女だし身体は正直めちゃくちゃスゴい
胸もお尻も出るところは出てるくせに全体の骨格はそこまでなので、相対的に胸が更に強調されて大きく見える。 腰はアスリートとは思えないほど細い
表情の変化は薄いものの感情がないわけでもないし、機微の変化は結構わかる。
なんというか、可愛げがある子供なのに美少女なのだ。
実際トレーナーもそう思うし、学園に"間違い"がそこそこ起きるのもあんな美少女達と間違いが起こるのはまああるだろうな、ぐらいは思う。
とはいえ、彼女は三冠ウマ娘を狙う存在で自分とは契約した関係だ
間違いが起こってはいけない
74 : トレぴっぴ   2025/04/15 22:55:20 ID:xTwPv0Nb6w
「マスター、忘れ物をしました」
アップに向かったミホノブルボンが戻ってきた
『ありゃ、そうか。 まあ早めに戻れよ?』
「いいえ、マスターに忘れ物をしました」

ミホノブルボンはマスターの前に立って、無表情のまま

「マスター、好きです。 行ってきます」
『っ!?』

表情を変えず、いつもどおりの距離で、いつもの口調で
ミホノブルボンはトレーナーにそれだけ行って、アップに向かっていった。
呆然としたままのトレーナーはしばらくその場に硬直していて

――心拍、激しく上昇
――緊張、緩和
――ステータス:歓喜を確認
――トレーナーのステータス、戸惑いを確認
75 : トレーナー君   2025/04/15 22:55:36 ID:xTwPv0Nb6w
3話おしまい
4話明日以降
76 : トレ公   2025/04/15 22:59:26 ID:xTwPv0Nb6w
だそく
「と、いう状況です。 マスターは私の【好き】を信用していません」

🌻「それなら、ちゃんと毎日アピールしなきゃですねブルボンさん」

「アピールですか。 考察…考察」

🌻「ちゃんと、ブルボンさんが好きだっていうのをトレーナーさんに理解してもらわないと。 こう、誘惑したりちょっと際どい格好をしたり、きゃー♪」

「好きをちゃんと伝える……理解しました」

🌻「応援しますねブルボンさん!」
77 : アナタ   2025/04/15 23:22:04 ID:oU9XjjpFyM
フラワーGJ!
78 : 使い魔   2025/04/16 13:43:27 ID:xi55cQe5Lg
多分、本気ではないだろう
情緒がまだ育ちきってないであろうブルボンが一般的な女子高生程度の恋心や性欲、二次性徴を迎えていたとして……それでも恐らくブルボンがやたら投げかけてくる【好き】は一般的な愛の告白ではない。
本人も混同してるかもしれないと言っていたし、本当にソッチであれば情緒が幼い故もっと照れたり恥ずかしがるはずだ。堂々とそのような言葉を発して反応を楽しむ小悪魔的な性格でも情緒でもない。
要は父親やうさぎのぬいぐるみに言う【好き】であり、そこに男性要素があっても構わないと思い込んでるだけだ
そう、思わないとやってられない

『いやこれが学園関係者だとか記者さんだとか……外部のちゃんとした大人ならなあ……まあ、しゃーねーけど』

ちび、細、ガキのような物言い さらに実績ゼロの底辺トレーナー
要は「子どものよう」と形容されるトレーナーには色恋は全然縁が無い
そんな出会いも個人的な縁もあるわけない。彼女居ない暦=年齢を舐めるな

「トレーナー、クールダウン終わりました」

ノックの音がして、トレーナー室にミホノブルボンが入ってくる

『おう、ソファにうつ伏せになってくれ』
79 : トレ公   2025/04/16 13:47:33 ID:xi55cQe5Lg
アップ、ストレッチ、有酸素運動、それらが終わってから高負荷のトレーニング
心肺に大きく負担をかけてから一切止まらせず低負荷の運動に切り替える。心拍に負担をかけ、それをゆっくりと運動をさせながら下げ、今度は坂路で一気に身体を追い詰める。
脚にかかる負担だけでも、マッサージで最低でも1時間かけて疲労をぬきたい。筋肉をもみほぐさなくても皮膚を撫でて刺激と血行をよくするだけでもいい。

「あの、マスター」
『動くな動くな。なんだ重いか? またがってるけど痛かったり重かったりしたら言うんだぞ』
80 : お前   2025/04/16 14:38:22 ID:xi55cQe5Lg
「いえ、マスターの体重はとても軽いので問題ありません。
クールダウンのあと、シャワーを浴びては居ますがそれでもトレーニングの影響で汗をかきます。」
『そりゃそうだ、あんだけのトレーニングをしてんだからしょうがない。
ちゃんと汗かいたら肌着は寝る前に変えるんだぞ。 睡眠も重要なトレーニングだ』
「いえ、その……マスター」
『なんだなんだ、珍しく歯切れが悪いな……もしかしてなんか違和感とか故障か』
「否定します。 私が危惧してるのは、マスターがマッサージをしていて…………汗臭くないか心配です」
『あーーーーなるほど。 安心しろ言われて初めてそんな事考えたぐらいだそんな臭いしたことがない。
なんつーか、果物みたいな甘い匂いはするなと思ってる。 制汗剤かシャンプーの匂いなのか知らんが』
「よかったです、マスター。」

そんな事気にしたことはなかったが、この状況は確かに距離も近いしいやらしい行為ではないが少女の身体をベタベタ触っていることになる。
逆に大人のはずのトレーナーが意識してしまう
81 : モルモット君   2025/04/16 14:44:02 ID:xi55cQe5Lg
「マスター、気分を悪くしましたか?バッドステータスでしょうか?」
『ふわへっ? あ、いやなんでもない…ど、どうしたブルボン』
「マスターがマッサージ中ずっと黙っていたのは初めてだったので」
「……ああ、すまんすまん。なんつーか、その、そういう話されて、その、意識しちまった。すまん」
「……やはり、汗臭いでしょうか?」
『いやいやそうじゃなくて、その……うーん、そういう話で、ブルボンも女の子だから、俺がこうやって脚をべたべた触るのは良くないなって。
まあ? とはいえ? 他所にマッサージを頼めるような大富豪でもなく?
マッサージは絶対毎日やらなきゃだから? やるんだが』
「マスターは、ちゃんと私の事を女の子として見てくれてますか?」
『え?あ、ああ。そりゃお前は女子高生としてもウマミミとしても美少女だしスタイルもいいだろうよ、脚長いし腰細いし』
82 : トレーナー君   2025/04/16 14:54:00 ID:xi55cQe5Lg
「―――」
『わっ、おいおいおい尻尾をばたばたすんなマッサージできなくなる』
「つまり、マスターの評価として私の外見、容姿は対象として見れるということですね?」
『はいはいお前が女子高生じゃなく成人した大人で学園の関係者だとかURAの記者だとかでこういう関係なら一回はデートにさそったかもねーうんうんうんそうだねうんうんうんうん』

わざと茶化すトレーナー

「では――卒業したらいいのでしょうか」
『あほか、そんな担当とトレーナーがホイホイホイホイ入籍してたら学園にトレーナー残っとらんわ。っと、ほら、マッサージ終わったから。軽くストレッチして座りな』
「了解」
『てかさ、お前なんで俺がいいんだよ? みろよ、俺お前と身長もかわらんちびだぞ?もっとほら、高身長イケメン高収入だとかさ』
「??」
『いや、万が一お前がもうちょっと身長伸びちゃったら俺のほうが小さいことになるんだが』
「……」
ミホノブルボンはしばし考え
――――
『え、なんでお前ちょっとうれしそうな顔してんの?!』
83 : モルモット君   2025/04/16 15:02:41 ID:xi55cQe5Lg
『ちょっとまって俺の身長が伸びるわけじゃないんだよ? 高校1年の君の身長が伸びるかもって話だよ?』
「はい、理解してますマスター」
『なんで嬉しそうなの? 女子って高身長イケメンとか高身長マッチョとかが好きじゃん!?』
「肯定します、女子の多数は高身長な男性に惹かれるというデータはあります。
ですがマスター、私は身長を気にしません。
マスターはニシノフラワーさんのトレーナーをご存知ですか?」
『そりゃまあ勿論。 童顔でそういうのが好きそうな奴にはモテるな』
「マスター、マスターもそっち側です。 私はマスターのような容姿は好きです」
『はあ!?』
84 : マスター   2025/04/16 15:13:57 ID:xi55cQe5Lg
ニシノフラワーは飛び級で学園に入学した天才少女だ
マイル、スプリントの類まれなる才能があるウマ娘でもありまだ幼さの残る年齢ながらもうすでに将来を期待されている
彼女のトレーナーは確かに小柄で童顔、まあそういうのが好きなお姉様がたから人気なのもトレーナー間で話題になることがある
というか変な気を起こしたトレーナーから襲われるんじゃないかとよく心配されるような所謂「可愛い」系の男性だ。
同じ低身長でも目つきも口も悪いトレーナーとは存在が違う

『いやまって? ニシトレさんと俺を比較したり一緒にするのはニシトレさんに失礼だろ? 』
「この前、カフェでフラワーさんとお茶を飲んでるときにマスターと遭遇したときの事を寮室でフラワーさんは『可愛いトレーナー仲間』と称されてました」
『………いや俺大人の男性ッスよブルボンさん? 可愛いとか言われてもあんましちょっと』
「……お嫌ですか? 気分を害しましたでしょうか?」

耳をしゅーんとペタンとさせるブルボンにトレーナーは難しい顔で

『いや、嫌だとかムカつくってのはない。 意外とそういう気分にならないのは俺自身意外だけど……でもなんつーか手放しで喜べないと言うか複雑というか』
「それに、マスターの容姿外見は好きですが、マスターの事をすきなのはそこではありません」
85 : トレぴ   2025/04/16 15:23:08 ID:xi55cQe5Lg
「私が初めて坂路を登りきった時、興奮して私を抱いてはしゃいでるマスターにステータス困惑と――ステータス:嬉しいを覚えました。
自分が自分のためにやりきったことなのにトレーナーはこんなに喜んでくれる。 自分自身のための事なのにマスターは真剣になって夢中になって本気で喜んでくれる。
私は三冠ウマ娘になる夢を叶えるために、自分のために努力してきました。必死に努力してきました。
でも――マスターはそんな私の事を真剣に見て真剣に怒って、真剣に喜んでくれました。 きっと、そんな人はトレーナー業をしていてもマスター以外に見つからない気がします。」

『うーん……うーん……』

「マスターはよく怒ります。 口が悪い時もあります。
でも――とても優しくて私の事を真剣に考えてくれます。
そんな人を好きになるのは、男性を好きになるとは違うのでしょうか」
『…………わ、わ、わ』

『――わかるわけねえだろ、年齢イコール彼女居ない歴を舐めるな小娘!』
86 : アネゴ   2025/04/16 15:30:19 ID:xi55cQe5Lg
ミホノブルボンは、トレーナーが見たこと無いような顔をしている
怒ってるとか悲しんでるとか失望してるとかじゃなく、ただただポカーンとしてるような顔―――こんな表情の猫がネットのミームでいた気がする

『あ――いや、その――俺だって女性経験豊富じゃないんだ。その――すまん』
『……な? ほらな? 俺こんなみっともねえ男なんだ、ほらブルボンもこんなのが彼氏とか恋人とかイヤだろうなーって』
「否定します、その狼狽は私の感情にステータス:高揚を与えます」
無表情のまま耳をピコピコ、尻尾をブンブンしている
『まてまてまてステイ、ステイだブルボン。 お前が真剣なのはわかった、 なにかの勘違いという事ももう言わない!
だが、アイ・アムトレーナー、ユーイズ担当ウマ娘アンド未成年、オーケイ?』
「はい。 菊花賞を勝つ時は17歳です。 その翌年には18歳です」
『生々しいからやめて!? 』

87 : モルモット君   2025/04/16 15:38:43 ID:xi55cQe5Lg
「マスター、提案があります。」
『……なんスか? もうなんでもいい……』
疲れ切った表情のトレーナーにブルボンは
「いますぐ私の好きに答えて頂かずとも、三冠を取るまで期間があります。
ですのでその間を猶予期間にしていただけないでしょうか?」
『猶予期間ってなんだよお俺はなんも悪いことしてねえよお……』
「どの道、三冠達成まで私にもトレーナーにも遊び歩く時間はありません。
本分を達成するまでを、私からマスターへの【アピール期間】と考えていただければ。
もちろんオフの日にマスターをデートに誘いますし、断られたらやる気はさがりますしもしかしたら片頭痛や寝不足気味になるかもしれません。」
『ねえまって!? バッドステータスを人質にしないで? 君の夢の三冠だよ?』
「私は三冠のためにも全力で努力をします。
――同時に、大好きなマスターと結ばれる事も全力で努力します。」
『あーもう好きにしろ、どうなろうと知らん。トレーニングおろそかにしたらその瞬間契約切るからな、絶対にトレーニングを最優先しろよ!?』

「その事ですが、マスター」

「次回のトレーニングで―――"4本"に挑戦したいです」
88 : トレーナー君   2025/04/16 15:50:06 ID:xi55cQe5Lg
いつもより1日多い休養、その休養明けのトレーニング日

『調子は?』
「ステータス:絶好調 体調:万全
全力を出せます、マスター」
『しかし前倒しも良いところだぞ? いけるのか?』
「いけます。 マスター、最近の私は――ステータス:最強 です」

坂路を3本に増やしてから明らかに負担と疲労が増えた
今までの坂路前の高負荷トレーニングが全部坂路に置き換わるんだから当然だ
正直、トレーナーとしてもこれはもう、4本ではなく菊花賞まで3本で行こうかという感想すらあった。 しばらくは――クラシック期に入るまでは3本で行く予定だった。
ジュニアのメイクデビュー前にするような行為ではない。
ブルボン以外のウマ娘なら一番ハードなトレーニングでごく稀に1日3本をいれるかどうかだろう
だが、最近の彼女の躍進はめざましい。
毎回毎回、メキメキとタイムを伸ばしていく。 上半身はいい具合にシェイプアップされ前よりしなやかに、下半身――特にトモと呼ばれるおしりから太ももに流れる大きな筋肉は、明らかに筋肉で力強いラインを描くようになった。
――いいケツしてる――というのは一般では完全にセクハラだが、学園に限って言えば競争能力を評価する見た目、筋肉の付き方として重要な言葉だ。

『そういや……』

――菊花賞を勝つ時は17歳です

『はっ、三冠を"勝ちたい"と言ってた奴が今は"勝つのは"になってやがる』
「……?マスター?」
『ああ、独り言だ、すまん。じゃあアップと柔軟してこい』
89 : 使い魔   2025/04/16 16:07:34 ID:xi55cQe5Lg
――正直言って、ミホノブルボンの評価は"並"だった
よくいる短距離適正のウマ娘。 OPに行ければトレーナーからよく頑張ったなと手放しに褒めてもらえるような、G1勝利どころか出走にも縁もない程度の短距離バ
しかも、トレーナーだった父親からハードなトレーニングを受けて学園に来たというのは、それは"伸びしろが少ない"という可能性も高い。
三冠路線ではなく短距離路線を強要して契約を破棄したトレーナーが悪いわけではない。むしろ一人のウマ娘の人生としては正しい。短距離路線で並の才能のウマ娘が三冠路線を進んで――そもそもが皐月賞どころか、そのトライアルにどうやって出走するというのか。 並というのはそういう事だ

彼女のハードなトレーニングで身についた、坂路を登り切るパワー
淡々と黙々と、トレーニングを続ける事ができる性格、集中力
そしてずっとずっとハードなトレーニングをしても疲労で落ちない食欲
睡眠時間や就寝時間、食事を指示通りずっとつづける勤勉さ

トレーナーが作った大坂路でのハードトレーニングを続けるための条件をすべて兼ね備えてる、"並"であっても稀有な才能をまとめて持ったウマ娘

一本目――二本目
タイムは落ちない。想定タイムより良いタイムを刻む
『……タイム、一緒だな…最初から、最後まで』
『………1本目も、2本めも…………まさか、な』
90 : お姉さま   2025/04/16 16:25:02 ID:xi55cQe5Lg
――3本目
100mごとにラップを刻むストップウォッチを持つ手が震える…………
『おい、おいおいおいおい……? いやそんな事が可能な訳が
いや、待て現実を受け入れろ。偶然でこんな事が出来るわけない』

3本目を終え低負荷のジョグを続けるミホノブルボンを3角で待って

『ブルボン、同じタイムで4本目いけ。 登りきれなくてもいいから"3本目までと同じタイム"だ』
「オーダー了解しました」

ミホノブルボンの表情も声も、もう余裕がない。
当たり前だ、3本でもシニアでも厳しい強度のトレーニング、ジュニア級でやれるものではない、クラシック級でも倒れてもおかしくない。

なのに――この"並"のはずだったミホノブルボンはジュニアで、メイクデビューなのに

『すげえな……本当に努力だけで、ここまでなっちまった』
91 : ダンナ   2025/04/16 16:33:28 ID:xi55cQe5Lg
根性、努力、丈夫さ、馬力
そして、さっき確信したもう一つの才能
それはもし本当にそうならば――ブルボン以外が持ち得ない才能になる
そんな才能がある訳が無い、もしその才能を持つウマ娘がいたら――それは最強のスキルでありギフトだ

――体内時計

心拍が限界まで上がっていて疲労で身体も脳もすべてが悲鳴を上げてるのに?
歩くだけでもその時計は正しくないのに?
機械のような少女は――本当に機械のような正確さをもっていると?

『ありえない――ありえないが』

ただ走ってるだけで完璧に坂路のinからgoalまで同タイムというのはもっとありえない。しかもインターバルをはさんだ2本め、常識的な限界であろう3本目まで同じラップを刻んでいるとかありえない。
トータルタイムだってかなり良い。 断言できるがこのタイムを出せるウマ娘は恐らくクラシックですらいやしない。 シニアの、G1ウマ娘でもこのタイムを全員が出せるとは限らない。

――そんなレースのペース同然の状況で、全く同じラップを刻み続けるなど、かの三女神ですら不可能な芸当だ
92 : お兄さま   2025/04/16 16:50:32 ID:xi55cQe5Lg
――嬉しかった
自分の夢を笑わないでくれたことが
真剣に聞いて真剣に考えてくれたことが
頑張った結果を本気で喜んでくれたことが
だから、自分のため以上に――マスターのために
頑張りたいと思った、努力じゃなく、マスターが喜ぶことをしたい
自分の走りを褒めてくれるマスターのために、走りでマスターを喜ばせたい
私が、4本のトレーニングを続けるためには全力で頑張るだけじゃなくて
想定するタイムから逆算したラップで走り続けること
淡々と機械のように同じ事を続けること
マスター、貴方のつくってくれた"脚"は――とても強いです
お父さんが作ってくれた身体で、貴方が作ってくれた脚なら

―――――私は、三冠を穫れる


『ブルボン!!!』

最後の最後、ゴールまであと100Mで失速し
ほぼ意識もなく、それでもふらふらと前に進み
最後はもう、たった100Mを50秒以上かけて――ブルボンは4本目の坂路をゴールした

『止まるなブルボン!』

トレーナーの声に、ブルボンの上半身がまっすぐ起きて――ゆっくりと、歩く。
ヒトミミの少年が簡単に追いつけるような、ふらふらの歩き方で

『よくやった、よくやったぞブルボン! お前は最高のウマ娘だ!
最高だよブルボン、お前は本当に最高だ!』

嬉しいのか、心配すぎて泣いたのか
くしゃくしゃのぐずぐずの顔で、ブルボンを褒めちぎる言葉をつづける。
横に立って手を伸ばし、くしゃくしゃと頭を撫でる
93 : お前   2025/04/16 16:51:06 ID:xi55cQe5Lg
「……ミッション未達成です。 4本目を走りきれませんでした」
『いいんだ、いいんだ、そんなのはこれから走りきれるようになるから。
お前はずっと同じラップで想定タイムを出そうとした。 間違いないな?』
「はい……私は体内時計で一定のペースで走ることができます。 それを4本分に当てはめれば、4本を走りきれる計算でした。
ですが、スタミナ切れというのが――距離の壁というのがどういうものか、よくわかりました。」
努力や根性、精神でどうしようもない領域。 心臓の、肺の限界。脚が自分のものでなくなるという錯覚、動かない身体。
スタミナ、という言葉だけでは表現できぬ距離の限界


『大丈夫だ、それはこれを続ければ必ず伸びる。 そのための坂路だ。
お前は誰よりも厳しいトレーニングをやりきったんだ。 俺はもうどんな事でもおまえにしてやりてえよ』
「ほんとう、ですか? ではコンプリートのリワード:ごほうびがほしいです」
『ああ、なんだっていいぞ。 そうだな、前にいったハンバーグ屋でも、もっと高い店でもいいぞ』

「マスターに、ちゅーをしてほしいです。キスです」
『アホか』

結局なんやかんやで、ハグで許してもらうことにした
94 : お兄さま   2025/04/16 16:58:50 ID:xi55cQe5Lg
『しっかし、100mごとのラップを全部体内時計でね……負荷とか感覚じゃないんだろ?』
「はい、数えているような感じですがうまく説明はできません。 ですが距離の目測と所要時間は完璧に計算ができます」
『それ、最強のスキルだぞ。 一定のペースを保てるかどうかって大事だからな。
例えば2000MのとあるG1のレコードタイムが1分58秒2だとするだろ?
これを最初の1000Mで59秒 後半1000Mで59秒で走りきればこのレコードをあっさり塗り替えることになる。 後ろもまずついてこれない』
「……それは合理的な作戦だと思います」
『まあ、まず1000Mを59秒、残り1000Mを59秒で返ってこれる能力が必要って前提が辛いが……普通はまずこのペース配分ができない。
理論上できたら最強だけどできないよね、というやつだ』

――でも、ミホノブルボンは出来る
95 : トレーナー   2025/04/16 17:04:44 ID:xi55cQe5Lg
この、何を考えてるかわからん事も多いやたらトレーナーに積極的に見える機械的少女はそれを可能にする能力を得られる。そして、天賦の才であろう体内時計が本当に壊れない時計であれば

『ブルボン――お前メイクデビューまでずっと坂路でいくぞ。 合わせや合同訓練もしない。 正直メイクデビューは今走っても楽勝なだけの能力があるが、今は1600を完璧に走り切るスタミナと、皐月賞に向けた能力向上をしたい。』
「了解しました。ミッション:一生坂路 を遂行します」
『んっ、しかし流石に、筋肉もパンパンというかいつもより張ってるな。 痛かったり違和感がすごいとか、ないか?』
「ありません。 疲労感の大きさは確かにいつもの数倍ですが、マスターのマッサージがとても気持ちいいです。」
96 : あなた   2025/04/16 17:11:15 ID:xi55cQe5Lg
そんなこんなで、マッサージも終えて

黒のスパッツに白基調にシンプルなパステルペイントの水玉のおちたようなTシャツを着たミホノブルボンがぶ厚めのソファに座ったまま両手を広げる

「マスター、私の準備は万端です。」
『あ、あー……どうしてもしなきゃだめっスか?』
「? マスターは私が初めて坂路を登りきった時、感情を爆発させて私を抱きしめてくれました。
あのような行為は常識的範囲でハグと呼ばれる行為で淫行にはあたらないので社会的にも問題はないと思います。
ですので、今、ここでマスターが私をハグする行為は問題はないと判断します」
『あのね、倫理ってやつもあるんスよ社会には。 気持ちが高ぶってハグはいいけど、こうして準備しましたバッチコーイでするのは倫理的にヤバいんすよ……』
「…?? 理解できませんマスター。
私はマスターにハグをされるのは大好きです。 もっともっと頑張ろうと思えるようになります。 つまり、これは心の栄養の摂取です。
なので
さあ」
97 : お姉さま   2025/04/16 17:34:02 ID:xi55cQe5Lg
『あーもうわかったわかったわかった、しょうがねーな』

かがむような格好で、ミホノブルボンをハグする

――うっわ身体やわらか――てかすっげえ甘くていい匂いする……

ミホノブルボンが少し強引にトレーナーを抱き寄せ密着する。
ブルボンの肩に顎をのせ、あまりにも近すぎて横のブルボンの表情が伺えない
栗色の髪のシャンプーの匂いと、ブルボンの身体の匂いであろう甘い果物のような匂いを同時に嗅ぐと、頭がとろけて力が抜けて、このまま目を閉じて眠ってしまいたくなる。

「マスター 私は今、ステータス:幸せ です。」
『うん……俺も、気持ちよくて幸せ……』
「………」

なにか変なことを言った気がするが脳が完全に溶けたトレーナーは自分の言葉すら覚えてない。 ブルボンは何も言わずに、優しくトレーナーをハグして



『――言っとくが今日だけだからなハグは』
「否定します。ステータス:不満を主張します、トレーニング後には毎回マッサージとハグをしてケアをすべきです」
『しません、アイ・アムトレーナー・ユーイズ担当ウマ娘』
「マスターも気持ちよくて幸せと言っていました」
『言ってません、てかトレーナーが言ってたらやばいだろソレは』
「…………」
『なんだよまだ不満かよ』
「いえ、なんでもありません」
『なんか怖いな。 はよ寮にもどって飯食って休め。 2日ぐらいはオフにするけど自主練とかは禁止な』
「了解しました。 マスター、ご褒美のデートはありませんか?」
『あるわけねえだろ。 まあこの前のハンバーグ屋さんならつれてってやるぞ』
「楽しみにしています、マスター」

ミホノブルボンは振り返り、トレーナーに歩み寄って
ぎゅ♪
「まだ"今日"ですから。 おやすみなさいマスター」

そう言って、ミホノブルボンは踵を返しトレーナー室を出ていった
98 : トレぴ   2025/04/16 17:54:36 ID:xi55cQe5Lg
だそく

トレーナーが
なんで女子高生に本気でときめいてるんだ俺は
とトレーナー室で発狂してる頃

ミホノブルボンは坂路トレーニングとは違う胸の高鳴りと、男性とはいえ柔らかく細いトレーナーの身体とその匂いを思い出し、尻尾をブンブンさせながら「心の栄養」と口ずさみつつ、寮に帰っていった。


「と、言うことでミッション:ご褒美ハグ作戦 成功しました」
🌻「おめでとうございますブルボンさん、ブルボンさんのトレーナーさんも可愛い方ですね♪カフェで見た時ああ、私のトレーナーさんみたいに可愛らしい方だなあって」
「恐縮です、前で言うとおこられますが私のトレーナーさんはとても可愛いです」
🌻「ですよね~」
「はい、うさぎさんもそういっています」
🌻「ブルボンさんはスタイルもいいし、美人ですしきっとうまく行きますよ!」
「はい、マスターも言ってました。 私とのハグは気持ちよくて幸せ、だそうです」
🌻「わあっ♪ほ、ほ、ほんとですか? うわあっ♪」
「はい、マスターは言った記憶がないようでした。陶酔上の言葉であれば本心だと革新します」
🌻「と、と、陶酔っ? そんな蕩けた声だったのですかブルボンさん!」
「はい、あれはとても気分が高揚しました」
99 : マスター   2025/04/16 17:54:52 ID:xi55cQe5Lg
4話おしまい
100 : キミ   2025/04/16 17:58:47 ID:xi55cQe5Lg
おかしい
ちょっとスポ根めの必死で泥臭い話の予定が変な方向いってる
101 : 大将   2025/04/16 18:09:13 ID:NrCVlEnEvA
このまま三冠取ったらマスコミの前で結婚宣言(一方的)してその夜に夜のゲートイン(意味深)でも全然いいよ
102 : アナタ   2025/04/16 18:10:28 ID:xi55cQe5Lg
>>101
ダイワスカーレットじゃん・・・
103 : >>1   2025/04/16 21:13:56 ID:xi55cQe5Lg
>>1です
個人的にインモラルなものや誘惑などの妖艶、色気があるものが好きなのですが皆さんはどうですかね とは言ってもミホノブルボンの場合素直クールの延長のようなものになると思いますが
正統派の純情のほうがやっぱみんなみたいものなんでしょうか
104 : トレーナー君   2025/04/16 22:04:34 ID:mRyyLqidEo
お疲れ様です
個人的には、「作者の思う物」を書いて貰えるほうが好きなのですが、人を選ぶ自覚があるようであれば、軌道修正してもらってもいいのかなと思います。
ただ、基本的には俺はこういうブルボンの話が書きたいんだ!で始められたと思いますので、その気持ちのままでいいのではないでしょうか?
105 : 貴方   2025/04/17 00:36:34 ID:5AusdZVO8Y
個人的に実はバリバリそっちの知識あって周りが思ってる程幼く無いブルボンばドストライクなので規約に引っ掛からない程度にぬちょぬちょして欲しい
106 : トレーナー君   2025/04/17 07:25:51 ID:rJU9jBX5Zs
>>104>>105
ありがとうございます。 ガイドラインを遵守する範囲で書きます
基本的にこのブルボンには性欲も性知識もそれなりにはありますがちょっとズレてる感じです。
107 : あなた   2025/04/17 20:33:17 ID:c7.9i4fNpQ
『ブルボン、来月メイクデビューな』

マッサージをしながらトレーナーが言う
低負荷と高負荷を繰り返すトレーニングは坂路を4本にしてから、すべての高負荷を坂路で行うことになった
ゲート練習すらまったくしてない、バ群を想定した並走もしてない
ただただ大坂路を走り、登りきったらゆっくりと降りてくる。 そして再び坂路に向かう。

『不安か?』
「いえ、ペースを上げても身体がついてくるようになっています。 私は着実に力をつけているのは自覚しています。」
『そうか。 まあ安心しろ、今のお前ならメイクデビューは問題にならん』

ぎゅ、ぎゅ、とマッサージを続けていく。最近ではブルボンの尻尾の動き方で心地いい力具合が分かってきた

「私は、大した実力もないウマ娘でした。 ですからメイクデビューが楽勝、という感覚がよくわかりません。」
『まあ、才能と実力にあふれてても同じレースに出走する中に、ウマ娘の歴史に残るようなバケモンがいて負けるとか普通にあるからな――今年デビュー組はちと不幸かもな』
「不幸、ですか?」

『ああ、ミホノブルボンっていう絶対に勝てない三冠ウマ娘と同期とか不幸でしかねえよ』
108 : トレピッピ   2025/04/17 20:39:35 ID:c7.9i4fNpQ
「マスター」
『とはいえ、坂路4本っていうトレーニングばっかのブルボンにはピンとこないか
と、いうことでメイクデビュー前に一本、普通のトレーニング場での模擬レース出るぞ』
「模擬レース」
『ああ、ジュニア級の有力馬、目玉になるウマ娘を探せみたいな記事の企画でな、トレセン学園が公開トレーニングに応じることになった。
デビュー予定の模擬レースを行う。
模擬レっていっても3人1組で行う500Mの直線トレーニングと思って良い、コーナーもなしの直線500Mのタイムを計測する。』
『で、そのコースがトレセン学園で新設した坂路トレーニング場らしい。』
「坂路」
『勿論"大坂路"のようなのじゃない低勾配のもんだ。 そこで今のお前がどうなってるか、実戦に近いコースではしってみりゃいい』
109 : 貴様   2025/04/17 20:46:12 ID:c7.9i4fNpQ
トレセン学園、坂路トレーニング場
新設された新しい試みということで、トレーニング場もかなり綺麗で新しい
そこに沢山のトレーナー、記者、見学のウマ娘が集まっていた

『どうだ、これだけの人に見られながらの模擬レース。 緊張するか?』
「感情、異常ありません。 緊張も問題ありません、マスター」
『そっか、じゃあ多少短いがここの連中を驚かせてやれ』
「オーダー了承しました。 ミッション:模擬レースを開始しま――」

ミホノブルボンの言葉が止まった。ブルボンの視線を追うように振り返ると別のトレーナーが立っていた。ベテランで堅実、腕の良さはブルボンのトレーナーも認める存在だ。

「ミホノブルボンくん、久しぶりだな」
「……お久しぶりです、トレーナー」
110 : アネゴ   2025/04/17 20:46:42 ID:c7.9i4fNpQ
めちゃ眠いんで今日はねます。4話明日以降続きます
111 : お姉さま   2025/04/18 05:18:32 ID:45NzUEcmiU
「飯塚トレーナー――君が今の担当トレーナーか」
『……そッスね。』

ミホノブルボンはコースに向かい、それを遠巻きに囲むトレーナー、記者陣
バツの悪そうな顔でトレーナーは、ベテラントレーナーと並んでいた

「彼女は、まだ三冠路線を」
『ええ、勿論穫る気ッスね。 短距離路線に行く気はゼロですか』
「……それで――君のような"壊し屋"を"駆け込み寺"に使ったと?」
『……まあ……誰が見てもそんな構図なんでしょうね。しかも、"並"かそれ以下のタイムすらなかった』
「夢に掛ける、人生に掛けるのは私も悪いことじゃないと思う。 彼女たちの人生は彼女のものだ。
――でもね、もっと良い方向がある。良いやり方があるのにそれを示し、導けないなら、私は彼女と契約を続けてはいけないと思ったんだ。」
『まあ、見てられないッスよね。 明らかに破滅に向かって頑張ってるウマ娘なんて』
「彼女は2000Mを走れるような適性はない。 それでも、新しい担当とならマイルのオープンを勝って出走ぐらいはできるのかもしれない。 」
『ウマ娘の競争能力は天性のもの。 それを引き出すのがトレーナーの役割
天性以上のものを求めたらまっているのは』
「故障、破滅だよ。残念ながら努力は才能をひっくり返せない。ウサギとカメの話のようにはいかない。 なぜならここのウサギたちはみんな努力家だからね」
『俺ぁ、あんましそう思ってない方なんですよ。 まあ、見ててください
ベテランの1流トレーナーのアンタならわかるはずだ、 たった500Mのコレでその常識がひっくり返るのがわかる。』
112 : アネゴ   2025/04/18 05:37:30 ID:45NzUEcmiU
3人1グループとなってウマ娘たちが模擬レースを始めていく
その様子を見ながら、ベテラントレーナーは少し目を見開き、しかし飯塚トレーナーの方には目を向けず

「強気だな。 そんなにいいタイムが出せるようになったのか?」
『ここの記録のレコードってわかりますか?』
「坂路かい? なにせ出来たばかりのコースだからね。 ジュニアだと、えっと……」
『ああ、いえ……全部ので。 シニアも含めた記録ってどうなのかなって』
「……30.4だ。シニアでも31秒前半をだせればG1級だろうな」
『じゃあ、ジュニアでそんなタイムを出せるようなウマ娘なんていないッスね』
「当たり前だ、今走ってる子たちのタイムを見ればわかるだろう」

『そっスね――常識的に、ね』

「……私は、君が苦手だ。 根性論やスパルタトレーニングはウマ娘の人生を奪うやってはいけないことだと思ってる。
君のその態度が悪意のないものなのはわかっているがね、そんな態度でそんな事をしていたら、本当に君は未勝利のウマ娘をつまむ、壊し屋でしかないぞ。」
『……そっスか。 俺はアンタを尊敬してますよ。 アンタは優しいし適正に合わせ他指導で決して無理をしない。だからブルボンが破滅の道を歩むのをそばで見てられなかった。』
113 : お兄ちゃん   2025/04/18 05:43:42 ID:45NzUEcmiU
『それでも――ウマ娘の自由も意思も強制して捻じ曲げたくはなかったんでしょ?
ブルボンは、アンタの愚痴や文句をいったことがない。
的確なトレーニング指導をする優しいトレーナーだった、ただ…三冠路線だけは認めてもらえなかった。 私では、その可能性を示せなかった。
そう、言ってましたよ』
「ああ、そうだ。 彼女では短距離路線のオープンにいければ良いほうだ。」
『だから俺も、アンタが間違ってるってあんま思ってないんスよね。
アイツが可能性を示せなかった、だから俺等トレーナーは……アイツに方法を示せなかった』
「…………」
『常識的に、それが間違ってるわけじゃないんスよ。 ただ……あいつは』

『あいつには、常識を打ち破る事ができる事ができる、武器があったんで』
114 : トレーナー   2025/04/18 05:51:14 ID:45NzUEcmiU
ミホノブルボンが出走する。スタートは良い。 そのまま一足で加速する

『……はあああ、良かった。ゲート練習全然してなかったからゲートだけが心配だったんスよね』
「彼女は胆力もあるし反応もいいからな。スタートの良さは間違いなく才能だよ
しかし――良い加速をしてる。」
ミホノブルボンは残り2人をどんどん引き離していく。まるで全力で短距離走を走るように。
「500Mとはいえ坂路だぞ。 ジュニア級であのペースで保つ訳が」
『いやあ、良いペースだ。 それで良いぞブルボン』

ベテラントレーナーが飯塚トレーナーの方を向く。 もはや飯塚トレーナーはベテラントレーナーにではなく。 キラキラした目でコースを見つめていた。

『よおし、行けブルボン――常識をぶちのめせ!』
115 : トレーナー君   2025/04/18 06:06:38 ID:45NzUEcmiU
300Mを超える頃には観客席がざわついていた。
二人をぶっちぎり圧倒的なペースで走るミホノブルボンにトレーナーも、記者たちも注目した。
スパートをかけたような序盤のスピードから一切落ちない。もっとも心肺に、脚に負担がかかってスピードが落ちるであろう坂路の直線をその最高速でかけていく

――おい、あれ誰だ?
――本当にジュニアかあれ
――このタイムって…シニアじゃないの?

「――飯塚さん、何をしたんです。」
『なんにも……ただあいつは頑張っただけですよ。
スパルタなハードトレーニングを黙ってずっとしたんです。』

残り100Mの白い標識で
――ミホノブルボンは更に加速し、スパートをかけた
どよめく観客。 ストップウォッチを握りしめる飯塚トレーナー

ミホノブルボンという、並の短距離ウマ娘が出した記録は
29秒9という学園のレコードタイムだった。
500M坂路という場で、シニアも含めた学園すべてのウマ娘の頂点のタイムを出したのだ。

――見たか? おいおいおいおい見たか見たか見たか?
――アレがミホノブルボンだ、見たかあの走りを?
――最高だろ! あんな走りが出来るウマ娘なんかいやしねえぞ!
――ブルボン、あいつは最高のウマ娘だ!

観客席で子どものように歓喜し叫び周囲のトレーナーに抱きつく飯塚トレーナー
その姿が記者によって写真を公に公開されるのはブルボンのメイクデビュー前週の話になる。
116 : ダンナ   2025/04/18 06:26:06 ID:45NzUEcmiU
『お疲れ、ちゃんとクールダウンしたか?』
「戻りましたマスター。クールダウンはいつも通りの時間行いました。
各部位異常なし、心拍、体調すべてオールグリーンです」

トレーナー室、ミホノブルボンはゴール後会心の走りができた実感から、すぐにトレーナーのいる観客席に向かってきて

『あほかっ! さっさとクールダウンしてストレッチしてシャワーだ!』

と、トレーナーに怒鳴られた。
耳がぺたんとなるほど落ち込みながらクールダウンを終え、シャワーに向かおうとした時。 ベテラントレーナーに声をかけられた
ベテラントレーナーは、ミホノブルボンに一言だけ
――応援してるよ、君の三冠挑戦を
とだけ言って、踵を返した。

『よし、模擬レースおつかれさん。 ちょっとそこに立て』
「はい、マスター」

ミホノブルボンがトレーナーの前に立つ。 すると
がばっと、情熱的に抱きしめられた。 トレーナーはバンバンバンバンとミホノブルボンの背中を何回も叩きながら

『よーしよしよし、よくやったよくやった! 29秒9だってよ!
お前本当によくやった!学園レコードだぞ学園レコード!』
「……はい」

口調も、態度も子どものように、嬉しさを爆発させたようにミホノブルボンを強く抱きしめて背を叩き後ろから頭を撫で回す。 ミホノブルボンの髪型が崩れてもお構いなしだ。

「今日はスタートもよく、ペースも完璧な運びでした。 結果:よくやった という事になります」
『ばか、そうじゃないだろそうじゃないだろ』

ブルボンの言葉を否定しつつも、トレーナーはハグをやめずブルボンの頭を撫で回す。 それがブルボンにとってはとても心地よく、髪の毛が乱れることなんかどうでもよかった。
ずっと撫でてもらいたいしずっと褒めていて欲しい。
きっと自分が今日頑張ったのはこの為だったのだろうと思えるぐらいに嬉しいし、幸せだった
117 : アンタ   2025/04/18 07:18:14 ID:45NzUEcmiU
『お前が学園レコードを出したのはな、今日頑張ったからじゃなくて今日までずっとずっと頑張ってきたからだ。
だからお前は本当によくやったんだよ。 見たか? トレーナーや記者たちのあの顔。 お前はこれから学園で一番注目されるウマ娘だ』

――マスターは
――自分が頑張るとこんなに喜んでくれる。 褒めてくれる
――三冠ウマ娘になるとかなれないかじゃなく、自分の努力をこんなにも全身で喜んで、褒めてくれる。
――それがたまらなく、嬉しい

『っと、すまんすまんちょっと頭なでくりまわし過ぎた。髪の毛ぐちゃぐちゃになっちまった』

トレーナーは我にかえってブルボンから一歩離れる。
するとブルボンはいつもの感情を出さない表情のまま一歩前に寄り、トレーナーと同じぐらいの身長のまま顔を近づける。

「マスター」
『な、なんだよ』
「要望:おかわり を希望します。 もっとハグをしてもっと頭を撫でる事を希望します」
『あー……』

今日は確かに頑張った。 そのぐらいはしてやっても全然いい。
しかしさっきまでの自分の感情に任せたものと違ってこうして冷静でいるときにハグをしたりしてると、やはりミホノブルボンが女の子であることを意識してしまう。
おそらくは香水や制汗剤でおしゃれをするようなタイプではない。
しかし距離がちかいと、こう――少女がもつ甘くて頭が幸せにとろけるような匂いがするのだ。

「マスター。 私は頑張りました。 よくやりました。」
『う"っ……』
「マスター」
『わかった、わかったわかったわかった』
118 : アネゴ   2025/04/18 07:27:32 ID:45NzUEcmiU
ぱああああ

ミホノブルボンは嬉しそうな雰囲気で両手を広げる
はあ、とため息をついてトレーナーはミホノブルボンをぎゅうっとハグして、頭をポンポンと撫でてやる。
長くて綺麗な尻尾がぱたぱたぱたと揺れてる。 よほど嬉しいのか止まる気配もない

――うっわー、すっげー甘くていい匂い

ミホノブルボンは担当ウマ娘であり邪な感情や劣情を抱いてはいけない対象だ
それでも、鼻腔から脳に直接くるような甘い匂いは心地いい
色々と、間違いを犯して担当と永遠を刻んでしまうトレーナーが毎年現れる気持ちが少しわかる気がする
きっと彼らも理性を鋼のように固く抗ってはいたのだろう

「マスター、私はマスターにハグをされるのが好きです」
『……おう』
「マスターは、イヤですか? 私とハグをするのが」

ミホノブルボンが両手でぎゅっとトレーナーを包むようにハグをしてくる

「私はマスターとこうしているのがとても好きです」
119 : トレーナー君   2025/04/18 07:36:25 ID:45NzUEcmiU
『嫌、じゃない』
「じゃあ、もっとハグをしましょう」

ミホノブルボンは更に身体を密着させる。 大きく柔らかい胸が強くあたってたわみ、太ももが互いに絡み合うような格好

『――はいストップ! おしまいだ!』
「マスター」
『そんな顔してもだめだ。 ほらソコソファに座れ』


ソファに座るブルボンの対面に座って
『お前は三冠ウマ娘になりたい。そのためには俺の指導と大坂路が絶対に必要だ』
「はい、マスター」
『つまり俺達はトレーナーと担当という関係をずっと維持しなきゃいけない。 ソレ以上踏み込んだ関係になってはいけないということだ。
万が一ソレ以上の関係になったのが外部にバレたら俺はクビ確定。 そうじゃなくても担当契約は学園で解除されるだろう』
「……」
『わかるな? お前が俺のことを好きだと言ってくれるのはまあ……嬉しいは嬉しいんだが、それを受け入れるつもりは一切ない。
お前の夢を叶えるための担当契約を破棄する状況はあってはならない。

…………わかるな?』

ミホノブルボンは、しゅんとしたような雰囲気でこくりと頷いた
120 : アナタ   2025/04/18 07:42:51 ID:45NzUEcmiU
――危なかった
あのまま身体を絡め合っていたら本当に間違いが起きていたかもしれない
心臓がまるで心臓破りの坂を走ったようにバクバクしてる
こんな美少女がいい匂いさせながら抱きついてπだ太ももだ密着させるのだから頭壊れてしまう。

「……あの、マスター」
『なんだ』
「わかりました。 過度なスキンシップは禁止だとメモリーに記憶させます
ですが、一つだけ教えて下さい」

「もし、私とマスターが担当契約関係のない状況であれば、マスターは私をうけいれてくれますか?」
『知らん、それなら俺はお前の魅力に気づけてない。お前の走りをみてもいない。
美少女でめちゃスタイルの良い女だとは思うが接点がない』

こう答えるのが精一杯だった。
そりゃこんな美少女が年齢的な問題もトレウマ関係でもなく言い寄ってきたら間違いなく付き合うし結婚したい。しかもミホノブルボンは性格も良い子だ。
多少世間とズレてる部分はあるがわがままであったりとか他人に悪意をむけるような子ではない。
それに、こんな腰が細くてπが大きい子は正直めちゃ好みだ
だが――だからこそ間違いはあってはいけない。
多少冷たい言葉を使ってでも距離感を保たねばいけない
121 : アネゴ   2025/04/18 07:47:30 ID:45NzUEcmiU
『まあ、ツキナミな言葉だが』

手を伸ばして、ソファに座るブルボンの頭を撫でる

『お前が学園を卒業して大人になって
それでも俺のことを今みたいに思ってくれてたら、その時はそれはそれでデートとかしような』

妥当な逃げ口上だが、実際こんな好みの美少女と付き合えるなら付き合いたいものだ。 そこは嘘ではない。

ブルボンは耳をピンっと立ててコクコク頷く。
ふう、と安堵のため息を胸の中でついてから

――立ち上がって近くで見下ろすミホノブルボンを見上げる事になる
122 : トレーナーちゃん   2025/04/18 07:56:15 ID:45NzUEcmiU
「マスター」
『……なんスか?ミホノブルボンさん』
「私の頑張りに、努力に、マスターはいっぱい褒めてハグをして、頭を撫でてくれました。 それは"担当契約"の範囲なので問題ありません」
『………そっスねそのぐらいは大っぴらに見られなければ問題ないと思いますよミホノブルボンさん。』
「では」

「今度はマスターの"頑張り"に私が感謝を伝えるべきだと判断しました」
「ミッション:マスターをハグ&なでなでを開始します」

『………はい?』
「これは男女の行う行動ではなくあくまで担当トレウマのスキンシップです。問題ありません、さあマスター立ってください。
立たないと私がソファでマスターを抱きしめることになります。」

トレーナーは素直に立ち上がった。
その後ミホノブルボンのハグ攻勢を――マスターは耐えた。
甘い匂いと柔らかな感触で間違いを起こしてしまいそうになったが――耐えた
123 : トレーナーちゃん   2025/04/18 07:56:30 ID:45NzUEcmiU
4話おしまい。
5話明日以降
124 : お姉さま   2025/04/18 08:26:23 ID:7B3IeuRaaA
あまあああああい!!!(井戸田)
125 : トレーナーさま   2025/04/18 17:37:13 ID:6bUpmEOfC6
『メイクデビュー決まったぞ、9月1週の土曜日。 開催は中京 距離は1000Mだ』

トレーナー室
書類を片手で、パンパンと音を鳴らしてブルボンの視線を誘う。
追い切り――というわけではないが全開の模擬レースを見るにミホノブルボンの能力はもうメイクデビューに十分すぎるだろう、9月予定ではあったが予想以上の仕上がりに安堵していた。

「了解しました。 1000Mというのはなにか理由があるのでしょうか?」
『ある。 お前は3冠のためにもっと長い距離を走りたいと思うか?』
「肯定しますマスター、今の自分がもっと長い距離のレースに耐えれるかテストしたい気持ちはあります」
『じゃあ先にそっちの回答だけしてやる。 今のお前は3000Mどころか2000Mの皐月賞も距離的には耐えられん。 試す必要すらない』

トレーナーはばっさりと言い切った。ミホノブルボンは表情を変えない。
変えないが――尻尾が垂れ耳がへにょっと下がったのを見るに少々落ち込んだらしい。 ミホノブルボンというウマ娘は感情が表情にでないだけで内部ではとても感情豊かなのだろう。 最近は耳や尻尾、雰囲気でその機微を感じられるようになってきた。
126 : お兄さま   2025/04/18 17:38:08 ID:6bUpmEOfC6
『そもそも今からあと1年以上ある菊花賞もそうだが短距離ウマ娘がそんな数ヶ月で3冠を穫れるほどのスタミナを得るというのは不可能だ。だからお前が弱いとか努力不足という話じゃない。
むしろトレセンの坂路500Mで30秒を切ったという現実を誇れ。お前は今でもスタミナは足りないが最強に一歩も二歩も踏み込んでる。
お前はめちゃくちゃ頑張ったしつよい。 ずっといっしょにいた俺が保証してやる。
ミホノブルボン、肯定か否定かで答えろ。 俺はウマ娘にきやすめで慰めるために誇大的な評価をする男か?』
「っ! 否定します。 マスターは事実のみで評価をします。」
『そうだ、俺はお前が三冠を穫るために気休めは言わない。 黒を白とも言わない。
そんな俺がお前は強いと言ってるんだ。 十分頑張ってるぞ』

ぱあああ
――あ、立ち直った。
このミホノブルボン、無感情どころか表情がマスクデータなだけで非常に単純で感情がこうしてすぐ明るくなる。基本的に犬のような性格だ
あまり浮かれたり調子に乗ってケガややけどをするタイプでもないので常時褒めちぎってる。
127 : 大将   2025/04/18 17:48:58 ID:6bUpmEOfC6
『で、メイクデビューが決まったから今後の目標を立てていく。』

ホワイトボードに黒ペンでカキカキと描いていく
メイクデビュー
1600Mのレース
朝日杯FS
皐月賞
日本ダービー
(長期休養+合宿)
菊花賞トライアル
菊花賞

『描いてみると予想以上にシンプルだな。』
「……」
『どうしたブルボン。レース数が少なくて不服か?』
「いいえ、マスター。 ステータス:感慨深い です
こうして作戦会議をしてると、私は本当に三冠に挑戦するのだなと」
『確かに……お前はここのレースを全部勝つのが目標だからな。』
『んで、この全体の目標と、お前の心肺……要は「スタミナ」の目標を同期する』
「同期」

『お前のスタミナ、心肺はまだまだ足りない。 しかしクラシックは2000M・2400M・3000Mと伸びていく。 朝日杯も含めれば1600Mから3000Mまで順番にやってくるわけだ。
なら、朝日杯までに1600Mを全力で走りきれるスタミナを、皐月賞までに2000Mを、2400はダービーまでにトレーニングで身につける。それでいい。
最終的にこの坂路トレーニングでしっかり3000Mまでを走りきれる心肺をもって菊花賞に望む。
だからメイクデビューはあえて1000Mにした。 この時点で長い距離を走る必要なんかない。どうせここでスタミナが足りないとわかっていてもやることは…』
「坂路を今まで通り走ること、でしょうか」
128 : トレーナーさま   2025/04/18 17:52:44 ID:6bUpmEOfC6
『そうだ。 どの道脚への負担や菊花賞までの持続的なトレーニングを考えたら一回二回、坂路を5回に増やしても意味がない。 結局スタミナ足りないと思いますだろうとなんだろうと結果今までの坂路4本をひたすら繰り返すほかない』
「……あの、マスター……質問と提案が同時なのですが」
『珍しいな、お前がそうして聞くのは。 なんだなんだ』
「私はこうして4本の大坂路トレーニングをしています。 現状トレーニング進捗は順調。 ――ならば、5本目に挑戦するのは」
『絶対やらん』

冷たく、厳しい口調だった。 ミホノブルボンが、言葉を飲み込むほどに
129 : トレーナーちゃん   2025/04/18 17:57:21 ID:6bUpmEOfC6
『模擬レースの坂路あったな? あれは直線が500Mちょい。変則なコースで直線がな長いが、一周が約800Mだ。
一応はそんな大坂路より傾斜がゆるい800Mの坂路も一部の重賞勝利者などが使ってる。
そこで問題だ――シニアのG1級のウマ娘たちがやってるその坂路、1日何本してると思う?』

「……あの坂路は傾斜がかなり抑えられてます。 シニアのG1級であれば5本以上は」
『2本だ。 3本以上やるトレーナーを俺は見てない。』
「……」
『お前は、あんな坂道じゃなく"壁"のような大坂路を1日で4本やってる。
お前のやってる事はお前が思ってるより限界ギリッギリをやってんだよ。』
130 : お姉ちゃん   2025/04/18 18:04:16 ID:6bUpmEOfC6
『重賞級、G1を勝利してる、させてるウマ娘とその実績をもつ実力派たちがあの坂路で2本。 かたや俺達は大坂路で4本……正直いつお前が故障しても"当たり前の事"でしかないんだ。』
「すいませんでした、マスター……私は、もっと、もっと頑張りたくなって」
『あー……うーん……』

ものすごく落ち込んでるミホノブルボン。 表情は相変わらず無表情だが、耳がこれ以上なく垂れ落ちてる。 質問と要望――それは三冠を穫るため、ではなく

『なあ、ブルボン――お前が5本にしたかったのは、もしかして……俺のためか?』
「……はい。 すいませんでしたマスター。
マスターは私が頑張れば頑張るほど、褒めてくれます。 いっぱい、褒めてくれます。 だから、私はもっと頑張ろうと思いました。 もっとミホノブルボンは頑張れるんだと、マスターに……思って欲しかったんです。」
『馬鹿だな、ブルボン』

トレーナーはソファに座るミホノブルボンに近寄って片膝をついて、ぎゅっと抱きしめる

『お前は毎日毎日、すっげえ頑張ってるよ。 こんなに頑張れるやついないって。
俺はいつもそう思ってる。 だからこれ以上とか考えるな……俺にとってお前は世界一頑張って努力してるウマ娘だよ』
「……はい、マスター」
131 : キミ   2025/04/18 18:09:05 ID:6bUpmEOfC6
『……と、まあ話が脱線しちまったが。
メイクデビューは正直ぱぱっと踏み台にしたい。 ここで楽勝するのが前提のルートだ。 一番短い1000Mで疲労を貯めずレースというのを体感してこい』

タンタン、とペンでホワイトボードを叩いてから

『で、ミホノブルボン。お前の作戦は『逃げ』一本で行く。 お前の体内時計なら同じペースで走りきって勝つという紛れがないレースが可能だ。
全レースそのハイペースかつ同一のラップを刻んで勝つのがお前のスタイルになる。』
「はい、マスター」
『今回の想定タイムは59秒。 100Mあたり5.9秒だが、できるか? 6秒よりコンマ1速いペース』
「可能です。 私の体内時計はコンマ2桁まで可能です。」
『……いやほんとそれなんで? 普通は1秒誤差でも59秒数えるのきついよ?』
132 : トレぴっぴ   2025/04/18 18:14:27 ID:6bUpmEOfC6
「私は……ロボットですから」
『……ブルボンロボ、発進!』
「了解しましたマスター・ミホノブルボン、発進します」

ロボットのような起き上がり方でソファから立ち、パントマイムのような動きをする。 ミホノブルボンも多少はノリがいい。

『あっはっは、ああそうだ。 万が一出遅れたら……まあ適当にいけ』
「オーダーに不明な単語を感知しました。 適当、とは」
『いや前に適当についてけ。 ほんと雰囲気でいい、焦って逃げようとすんな。
いいか? お前のその体内時計は最強の武器だが、お前の脚はソレ以上だ。 だからついて行って最後の直線がみえたらスパートして全部抜け。』
「オーダー、承認。出遅れた際には作戦名:適当について行って全部抜けに変更します」
『まあ、そもそも出遅れないのが一番だが――とはいえゲート練習も殆どできないからな。 ここまでやってもギリッギリなのが現状だ』
133 : モルモット君   2025/04/18 19:48:50 ID:6bUpmEOfC6
ニシノフラワーさんの協力を頂いて、お父さんに電話をした

「お父さん――メイクデビューが決まりました」

――そうか、精一杯頑張りなさい。お前は、頑張れる子だからね

「承知しました、頑張って来ます」

――さっきもね、飯塚トレーナーから連絡があったよ。 律儀にね、レースまでのスケジュールもLaneで見せてもらったよ。

「マスターは優しいです。 お父さんにもちゃんと連絡をしてくれるなんて」

――ブルボン、もしかして飯塚トレーナーが私に毎日Laneをくれてるのを、知らないのかい?

「……毎日、ですか?」

――ああ、毎日、ブルボンはは先日なにをどのくらい食べたとか、今日のタイムはどのくらいだったとか、特に3本目、4本目と増えたときには事細かく報告をくれてね
――父親として心配するだろうと、毎日食欲が落ちてない事や脚に異常がない事を必ず1行だけでも連絡をくれてたよ
――娘さんの脚をこのような形で頂く以上、貴方の心配を減らす手段がこれぐらいしかおもいつかない、と言っていた。
――ああ、29秒9の…坂路の学園レコードを出した時は、凄く嬉しそうに電話をくれたよ。あんなに子どものように喜んでくれるトレーナーはそうそうはいない
――ブルボン、本当に良い"マスター"に巡り会えたね。 頑張りなさい
――私はいつでも応援してるよ

少しだけ他愛のない会話をして、通話を切って

「ミホノブルボンさんのマスターさんは、すっごく優しい人なんですね」
134 : お姉ちゃん   2025/04/18 19:54:51 ID:6bUpmEOfC6
「フラワーさん……はい、マスターは口こそ乱暴ですが、とても優しいです。
私がミッションをコンプリートすると、かならずいっぱい褒めてくれます。
毎日、長時間マッサージをしてくれます。 マスターの腕がどんなに疲れても、握力がなくなっても、ずっとしてくれます。」

「……私、ブルボンさんがマスターさんと契約をしてから、ずっとずっと、よくない噂を聞いてました。 ブルボンさんのマスターさんは……とても怖い人だって」

「肯定します。 マスターは口調も強く、相手を緊張させる事があります
――ですが、"壊し屋"ではありません。 ウマ娘が壊れるのを誰よりも嫌う人です。」

「はい、ブルボンさんはマスターさんと出会って、契約してから毎日がとても楽しそうです。 部屋に戻ったらマスターさんの話をいつもしてくれます」

「ステータス:不安を確認。 もしかして、ご迷惑だったでしょうか?」

「とんでもありませんむしろばっちこいです!!」
135 : ダンナ   2025/04/18 20:00:23 ID:6bUpmEOfC6
「だって、ミホノブルボンさんのマスターさんってすっごく可愛いじゃないですか! こう、ガキ大将の男の子!って感じで!
私のトレーナーさんは少しおとなしめの男の子って感じでとっても可愛いんですけど、ブルボンさんのマスターさんみたいな男の子もいいなって思うんです」

「同調します。マスターは――可愛いです。 隠しステータス:萌えが止まりません」

「ですよね、可愛いですよね。 あんな可愛いトレーナーとハグ出来るなんて私もブルボンさんもそれだけでダッシュ3本は出来ちゃいます!」

「いいえ、私は坂路4本はイケます。その先に、マスターのハグがまってますから。」

「あーわかります。でもこっちからハグするとちょっと蕩けちゃうんですよね、きゃー可愛い~♪」

「あの、ブルボンさん。 次のメイクデビューで勝ったら、特別なご褒美をおねだりしてはどうですか?」

「特別な
ご褒美」
136 : あなた   2025/04/18 20:05:09 ID:6bUpmEOfC6
「はい、 ハグ以上のご褒美です。 デートでも――キスでも」

「………キス」

「さすがにキスは拒否されるかもしれませんが、デートならってなるかもしれません。 メイクデビューの結果次第ではもしかしたら、その場の勢いでキスとか
――っきゃーブルボンさん大胆です♪」

ほっぺに手を当てて身悶えてるニシノフラワー
想像をしたのかオーバーヒートして宇宙ブルボンのままフリーズしてるミホノブルボン

栗東寮は平和である

137 : 貴方   2025/04/18 20:13:28 ID:6bUpmEOfC6
『よし――調子は?』
「ステータス:絶好調 万全です」
『作戦は?』
「ミッションはスタートから100Mラップ5.9秒 59秒以内にゴール」
『よし、十分だ。 緊張してるか?』
「ほのかな高揚は確認されますが、手足の痙攣や行動を阻害されるようなステータスはありません」
『じゃあ、勝つのは?』
「ミホノブルボンです」
『よおし勝ってこい』

パンッと体操服姿のミホノブルボンの背中を叩く。
その手に押され、ミホノブルボンはパドックに向かった
138 : マスター   2025/04/18 20:28:20 ID:6bUpmEOfC6
――ぶっちぎりの1番人気ですね、飯塚さん
『あ、どうも。 まあ雑誌の記事でデカデカとでちゃいましたからね。』

競馬場にトレーナー専用ルームがあるわけではない。しかし、観客席と控室直通の通路がある席ぐらいは用意されてる。
当然そこにはライバルたちのトレーナーもあつまるわけで
レース当日のミホノブルボンはぶっちぎりの1番人気。 投票者のなんと6割近い得票を得ていることになるほどだ。

――今日は楽勝ですか?
『はは、メイクデビューを黙って勝たせるようなトレーニングはしてないでしょう?』
たぬきとキツネのばかしあいはゴメンだ。もうすぐ始まるレースの手の内を隠す必要もない
ただ
『まあ――正直圧勝するペースは想定してます。』
――ペースっていうと、ブルボンは逃げ想定ですか。ああ、こりゃ奇遇ですね
――うちのホーエーマーチもね逃げなんですが、こいつが凄くてね、ありゃ才能ってやつだ。
(逃げかぶりか。 それでもブルボンのスタートと加速についていける奴はいないと思うが)

――まあ、レースが始まるし、見てみましょうや



だあんという大きなゲートの開く音、その音と同時に飛び出す影がある
まさにロケットスタートというにふさわしいとんでもないスタートだ。 ソレと同時に一気に加速する黒い影

『うわ、えっぐいスタートしたなブルボン。 うちのブルボンはスタートはよくて……いやまてアレ黒くね?』

――うちの子ですねえ……マーチはほんとスタートは才能だ。

『えげつないロケットスタートだったな………で、ブルボンは――出遅れて最下位…え、マジ?』
139 : トレーナー君   2025/04/18 20:35:47 ID:6bUpmEOfC6
数度のスタート練習以来のゲート
本当のレースのゲートは予想以上に狭かった。 初めて入るそこに緊張の空気がつつまれる。
初めてのメイクデビュー、初レース
緊張するウマ娘たちの空気が伝染し、ゲートすべてを満たすような重い空気になる
ただ一人を除いては

――勝ったら、デート
――勝ったら、キス
――勝ったら、一晩なでなで
気を抜いていたわけではない。いや嘘である本人はそういうかもしれないが完全に上の空であった。
妄想で恥ずかしがるマスターを抱き寄せ、頬に手を当てこっちをむかせる
そして、ゆっくりと顔を近づけて
――ゲートが開いた

「……」

一歩の出遅れが致命的、結果ミホノブルボンはとんでもない出遅れスタート
ゲートを出た瞬間、周囲を壁に囲まれた
他のウマ娘がコースラインを確保するために争っていて先頭が見えない
ペースは、先頭までの距離は
そう、計算しようとして――頭の中に声が響いた


――適当に行け

「……承知しました、作戦――適当についていきます」
140 : トレーナー   2025/04/18 20:42:44 ID:6bUpmEOfC6
『出遅れて完全に前ブロックで、最後方集団か』
――1000Mだが、大丈夫かい? おたくのブルボン
『さあね、それよりマーチちゃん良い逃げっぷりじゃん』
――あの子は先頭を気持ちよく走れれば、最後まで粘るよ。今日はもらったかもねえ

ぐんぐんと加速し気持ちよく逃げるホウエイマーチ。
1000Mという短さもあって、焦って追いすがる他のウマ娘たちを、マーチのトレーナーが目を細めて見ていた

――ありゃあだめだ、ペースもへったくれもない。 焦って追っても、スパートできやしないね。
――おたくのブルボンは、まだこないね。

『ああ、…出遅れたら適当についてくだけでいい、って言ったからな』
――ふうん、賢い子じゃないか。メイクデビューでここまで我慢できるとはね
『とはいえ、そろそろじゃねえの……ブルボンさん? おーい』
――やれやれ、ウマ娘よりトレーナーがあせってどうするんだい
141 : トレぴっぴ   2025/04/18 20:49:15 ID:6bUpmEOfC6
(ゆっくりとてきとうに――ついていく。 そして、直線がみえたら――)
第三コーナーからその先のコーナーが消える。
第四コーナーに入った証拠だ。 この先が直線である
(ギアチェンジ――モード、スパートに変更)


――あんな後ろじゃ、流石に届かないんじゃない?
『……そっすね、内側は全部埋まってるし、よし……外に出た』
――いくら中京の直線が長いからと言って流石に無理だよ、マーチの勝ちだ
『すんません、ちょっとあいつは、違うんスよ』
――んん?なにが?


『――脚が、っすかね――まあ、見ましょうや』
142 : トレ公   2025/04/18 20:56:29 ID:6bUpmEOfC6
コーナーが終わった。でも前が塞がれてる
前が見えるとこに――外に膨らんで、前が開けた

――お前の脚は、最強だ

この脚は――父と、マスターが造ってくれました。
スパート

コーナーでは窮屈そうだったミホノブルボンが直線にはいるころには絶望的な差になっていた。 誰もが出遅れのせいでミホノブルボンは沈んだと思っていた。
だが、彼女は外側に進路をかえ、直線が開けた瞬間
とんでもない豪脚で先頭に迫っていく

――おおっと外からミホノブルボン
――とてつもない勢いで上がっていく、差を詰める差を詰めるこのまま先頭になる勢い。しかしホウエイマーチも粘る

脚が軽い、身体が軽い――もう一つ、ギアを上げれそうだ。
ホウエイマーチは最初のペースが嘘のように粘り、最後の踏ん張りを見せる
残り200Mでまだホウエイマーチは先頭を守り

しかし、残り100Mでさらに加速したミホノブルボンが彼女を抜き去った。


143 : 貴方   2025/04/18 21:01:02 ID:6bUpmEOfC6
――ミホノブルボンは、逃げだって言ってたじゃないか……あれじゃまるで
『……ほんとですよ。 俺は逃げ指示しかしてない。 万が一出遅れて前がつまってたら――適当について行って直線で勝負しろ、って言っただけです』
――めちゃくちゃが、すぎるじゃないか……あんなにも、出遅れて

――それで、コースレコードなんて




身体は軽かった
万全の状態だった、出遅れはしたけど脚はいつもより軽かった
フットワークも軽くて、すっと外に出れた。
疲労なんかなかった――マスターがいつもこの脚を大事にしてくれたから
だから、何も考えずに全力ではしったら、いけるかなって
自分の脚が、自分の脚じゃないみたいに地面を蹴って――自分はどこまでも早くとんでいけるって思えた
144 : アンタ   2025/04/18 21:05:10 ID:6bUpmEOfC6
「………」

『よ、出遅れ逃げウマ娘』

「マスター、申し訳ありません。 作戦名:59秒 を失敗しました」

『どうでもいい、どうでもいい。 ライブの前に脚、見せろ』

今までになく真剣な面持ちで控室で脚をマッサージするトレーナー

『正直に答えろ――出遅れは、脚の不調が原因か? それとも何か体調不良か?』
「…………」
『ミスならミスでいい、だがお前がそういうくっだらないミスをするタイプじゃないのは知ってる。足の痛みとか、ないだろうな?
いいか、朝日杯を蹴っても皐月賞には間に合う。 もし脚になにかあるなら正直に言え』




「ステータス:罪悪感 罪悪感罪悪感」
145 : トレぴ   2025/04/18 21:12:33 ID:6bUpmEOfC6

―――こんの阿呆がっ!ポンコツロボットがあっ!!!

今までにない特大のカミナリが、ライブを終えたミホノブルボンに落ちる。
罪悪感から正直にトレーナーに出遅れの理由を言ってしまったのだ。
シミュレーション:デートとキスに没頭した結果ゲートが開いた、と。
あんなにも脚を心配していたトレーナーはにこにこ顔で「まずはライブに行ってきなさいミホノブルボンさん」と背中を押され
ライブを終えて帰ってきたら容赦なく怒鳴られた

『お前俺言ったよなあ? トレウマの関係を続けて3冠を穫るのが目標だって
それを終えて、お前が大人になって、もしお前の気持ちがかわらんかったらって。
そーれーなーのーにー?
お前はメイクデビュー戦のゲートでぼんやりデートの妄想してましたってか!
あほかっ! お前のメモリーDMM製かFANZA版か!』

ばんばんばんばんと、革張りのソファより高いベッドのような寝台を叩いて

『まあいい、しょうがねえ。勝ったんだしこれ以上は言わない。はよここにうつ伏せになれ』
「マスター?」
『マッサージだよ、マッサージ。 はよ疲労ぬくぞ』
146 : トレぴっぴ   2025/04/18 21:19:52 ID:6bUpmEOfC6
ぎゅ、ぎゅっ
脚をマッサージする、台座が沈む音が響く。

『ブルボン、お前自分のタイム確認したか?』
「……はい、58秒1でした」
『中京のジュニアコースレコードだってよ、毎回お前はレコードだしてくな』
「……しかし、私はマスターの指示を」
『勝てばなんでもいい、正直ぼんやりしてようがあっぱらぱーしてようが勝てるかどうかだ。 そういう意味じゃコースレコード出して勝ってるんだからいいんだよ。』

ぽんぽん、とうつ伏せのままのミホノブルボンの頭を撫でて

『お説教はさっきまで、だ。 よく頑張ったな、ブルボン』
「マスター、私は頑張りました」
『そうだな。 よくやったブルボン、偉いぞ』
「コースレコードも出しました。マスターの造ってくれたこの脚で、一つレースをかてました」
『そうだな、俺も嬉しいよ。 ありがとなブルボン』
「出遅れの原因は私にあるので、キスは要望できませんがデートと1日ハグはできますか?」
『ミホノブルボンさん? お前本当に反省してる??』
147 : モルモット君   2025/04/18 21:25:31 ID:6bUpmEOfC6
結局のところ
デートというか食事を奢るぐらいはしてもいいだろうと言うことで妥協した
しかしブルボンはそれを固辞。

――マスターとの1日ハグチケットを要望します

と、いうことでレースの休養期間にトレーナーの部屋にブルボンを入れる約束をした。 おうちデートである


🌻「ブルボンさん、ついに大人の階段を登るのですか?」
「はい、おうちデートでずっとハグをしてもらいます」
🌻「ついにキスまでしちゃうんですか? しちゃうんですか? きゃーブルボンさん大胆ですよぅ♪」
「キスは拒否されました、私の出遅れもありそれはこれ以上強要はできません」
🌻「それは残念です、でもまたの機会に」
「しかし」
「マスターは私のハグを、甘くていい匂いがして、幸せ。と形容しました
デバフ:恍惚状態であれば……勢いで間違いが起こる可能性はあります」
🌻「――っきゃー♪ブルボンさん! デート応援してますね」


『……うう、なんだ今の悪寒。』
148 : トレーナー   2025/04/18 21:26:24 ID:6bUpmEOfC6
5話おしまい
149 : アンタ   2025/04/18 21:54:48 ID:q9JTyUS3lc
ここのフラワー面白くてすこ
150 : アンタ   2025/04/19 08:50:10 ID:cExjvntY26
『あの、ミホノブルボンさん?』
「はい、マスター」
『たしかにね、今日はお前のメイクデビューレコード勝利のご褒美に俺んち……つつってもトレーナー寮のアパートだけどさ、そこで過ごすって約束をしたよ?』
「マスター、修正をお願いします。おうちデートです、デート。」
『いいや違うよ? アイ・アムトレーナー・ユーイズ担当ウマ娘だよ?』
「ユーアーですマスター、担当関係であっても男女が一緒に過ごすのをデートというのは何ら問題がありません」
『わざと言ってるんだよ生々しいから――まあ、ハグというのも納得はしてるよ? うんうん勝ったから俺んちでハグね。でもさ』

『――でもなんで俺がお前にハグされてんの?逆でしょ??』

「マスターは"トレ吸い"というのをご存知でしょうか?」
『知りませんねミホノブルボンさん、俺は真っ当な底辺トレーナーなもんでね』
「トレーナー成分であるトレニウムを摂取することでウマ娘の精神の安定ややる気向上によるトレーニング効率の上昇が認められてます」
『なにそれ怖い、トレニウムってなんだ』
「トレニウムはトレーナーとのスキンスップやハグ、キスなどで摂取可能です。
濃厚な接触であればあるほど多くのとレニウムを摂取可能です」
『だからそういう生々しい単語やめてよお』
151 : トレーナーさん   2025/04/19 09:22:43 ID:cExjvntY26
「マスター」
『なんですかミホノブルボンさん。キスとかは禁止ッスよ』
「そこです、マスター。」
「私はトレセン学園に入学する時、お父さ――父から何度も何度も繰り返し注意されました。」

――男というのは自分の欲求で時には女性を不幸にしてしまう
――そこにブレーキをつけていてもそれは容易く外れてしまう。
――悪い男もいる、そして悪くないはずの男もいとも容易く間違いを犯してしまう。
――だから、男女関係には十分気をつけなさい

『うんうん間違ってないですね、特に悪い男じゃなくても間違いを犯してしまうとかマジでブルボンのお父上はとても素晴らしい教育をされてると思いますよミホノブルボンさん。』
「ですがマスターはいつも欲情に耐えています。」
『そりゃそうだ、耐えなきゃ今言った間違いを犯してしまうからな』
「節度をもった関係を維持すればいいのではないでしょうか?」
『あー……うーん』

ミホノブルボンはカーペットの上にあぐらを崩したように脚を前に出して腰をおろして
トレーナーはブルボンを背にして脚の間、脚の中に座ってる。
ブルボンが後ろから好きなだけハグできる格好だ
152 : トレぴ   2025/04/19 09:31:07 ID:cExjvntY26
『まあ、結構色んなとこで大事な話だな……
例えばブルボン―――お前今後俺とのハグ禁止、1ヶ月に1回だけにしましょうってなったら――うわおっ?』

ミホノブルボンが後ろからがばっとトレーナーに抱きつく。身体を密着させトレーナーの肩におでこをスリスリしながら

「拒否します――抗議します。拒否します。 そのオーダーは受け入れられません。
むしろ1日1時間はハグをすべきです。
禁止になったら私はマスタニウム欠乏症で死んでしまうかもしれません」

柔らかいものが背中にあたってる。
ものすっごい甘い匂いが鼻腔をくすぐる
正直ずっとこうしていたい欲求にかられる

『落ち着けブルボン、例え話だから一応今は禁止にしないから落ち着け
と、まあ自分がしたい事を取り上げられるのは嫌だし耐えられないわけだ。
これは色んな事に当てはまる。
おやつ、間食、ダイエット
勉強、ゲーム、宿題
不純異性交遊、スキャンダル、行き過ぎた欲求
もっともっといえばドーピング、ドラッグなど明らかに禁止行為、法に違反する行為にも及ぶ。』
「……」
『でだ、お前俺と出会う前までハグなんかしてたのか? 男と』
「いえ、してません。」
『うんうんそうだな、じゃあその間耐えきれなかったのか?』
「……いえ」
『ハグっていうものを知ったからハグをしたい。
こういうのは一回やったらずっとずっとそれをしたくなるんだよ。
だからみんな最初の一回をしないようにする。 悪事も、薬物も、借金とか散在とかギャンブルもそうだ。』
153 : トレピッピ   2025/04/19 09:38:18 ID:cExjvntY26
『もちろん、恋愛やその延長、愛を確かめ合う行為なんかは犯罪でもなんでもない。悪いこっちゃねえが、俺等の場合担当契約ってものがある。
万が一露呈すれば、間違いなく俺は学園にいられない。 お前は三冠を穫れない。
バレなくても――そっちばっか気になって考えてトレーニングに集中できないなら絶対にあってはならないんだ
――あっるぇー?ところで前のレコードを出したレース、なんで出遅れたんですっけえ? ミホノブルボンさぁん?』
「それは……その……」
『お父さんもいってるだろ? ――善い人でも間違いは犯す。
俺が良い奴悪い奴はさておいて、一回そういう経験をしたら次も、次もとなる。
俺だって彼女いない歴年齢だよ? お前みたいなのが彼女になってそういうコトしたら、そりゃ人生の歯車狂うかもしれない。
だからシない。
お前が気をつけるだとか、トレーニングを疎かにしなくても俺が間違いを犯すかもしれない。 』

「………マスター」
『なんだ?』
「危険性について承知しました。 ですが、マスターに一つだけ確認を」

――私はマスターにとって魅力的に見えますか?
――その、そのような対象に、見えますか?
154 : お姉さま   2025/04/19 09:49:58 ID:cExjvntY26
『………』

背中からハグをされてるので、トレーナーの顔はミホノブルボンには見えない。
しばしの時間、ゆっくりとトレーナーは口を開く

『そりゃあね、お前はめちゃくちゃ美人だしめっちゃスタイルもいいよ』
「マスター、スタイルがいいとは」
『……そ、そ、そりゃあね、その』
「???」
『だあああ、もういい、おっπがでっかいとか太ももが綺麗とか腰がめっちゃ細いとかそういう身体つきの方! やめてよお社会的な立場のある成人男性に少女が言わせる話じゃないよお勘弁してよお』
「……マスターは、私の身体でそのような欲求を感じるということでしょうか?」
『はいそうです、俺って男は教え子の身体にそういう欲求を感じる男なんです!
わかったらはよハグやめて離れなさい、気持ち悪いだろトレーナーが教え子をそんな目で見てるってのは』

半分以上ヤケクソだ。とはいえあまりに距離が近すぎて支障が出るのならば、このように幻滅させるほうがお互いのためであろう。
155 : マスター   2025/04/19 09:56:55 ID:cExjvntY26
「マスター、マスターは大きな認識のエラーを抱えています。」

ミホノブルボンはぎゅうっとトレーナーに抱きつきながら言葉を続ける

「男性が女性にそのようないやらしい視線を送るのは汚らわしい事、気持ち悪いことであるという一般常識はたしかにあります。
そこに間違いはありません。社会的同義、道徳観念からしてそのような視線や欲情を表に出すべきではないというのは正当性があります」
「ですが、それは男性だけの問題ではありません。女性も男性にそのようないかがわしい欲求と視線を送っています」

ミホノブルボンのプロフィールは体重や管理のために一応はスリーサイズも含め把握している。
しかしミホノブルボンは腰周りもかなり細く、肩、肋骨周りも他より細めだ。
つまり――B90に至らずともその膨らみは正直B90ステークスに出走してると言って良いのである
そんな双丘を押し当てられ、愛する担当に抱かれているのに――なぜかトレーナーの背に、ぞくっという悪寒が走った


「具体的にに言えば――トレセン学園の生徒の方が、男性――主にトレーナーにえげつない妄想と欲望の眼差しとそのような会話がされます」
156 : 使い魔   2025/04/19 10:04:34 ID:cExjvntY26
――はーなの♡しょうがないの脱げなのブチ犯す♡
――産むから
――トレーナーさんってマゾですよね♡
――12人は産むのよね♡アンタがパパになるのよね♡
――おしるこ!
――お兄ちゃんこの下着履こうね


『やめてやめてやめてもう聞きたくないやめて』
「女子高生や性自認をした女子中学生はこのような話題で盛り上がる事があります。 勿論このような会話――俗的な擁護で猥談とよばれる会話を嫌う生徒もいますがそれはむしろ少数派であり、法的規制のかからない少女漫画などでは実際にそのような行為が規制にふれないよう、描かれています」
『やーーーめーーーてーーー』
「たとえば同室のニシノフラワーさんですが、トレーナーと恋愛的関係になっているというのは生徒内で認知されてます。」
『やめて、ほんとやめて聞きたくないそんななってはいけない周知の事実聞きたくないのやめて』
「ニシノフラワーさんのトレーナーは世間一般の評価でいうと『とてもかわいい』という評価です。 女性だけではなく多くの男性ファンもいるそうです」
『生々しい話やめようよお!ミホノブルボンさん!?』
「そこで私達は寮室でこのような妄想での会話をします」

――ニシトレxマスターのBLがあったら絶対売れるよね

『うわあああああああああああああ』
157 : トレーナーさん   2025/04/19 10:11:05 ID:cExjvntY26
「マスター、理解して頂けましたか?
トレーナーたちが教え子をそんな目で見てはいけないと思っているその時間、ウマ娘はトレーナーたちを"そういう目"でみています。」

『知りたくなかった……知りたくなかったよお……しくしく』

「もちろん、誰しもが自分が好きな相手以外にそのような視線を送られることは嫌います。しかし私はマスターにそのように見られるというのは――とても嬉しいです。 もちろん私もマスターの事をそういう目で見ます。
そしてニシノフラワーさんとそのような会話をします。」

『やだー、俺等の知らないとこで俺等を汚さないでよお!』

「大丈夫です。 マスターにそのような目でみられるのは、状況:ばっちこい です」

ミホノブルボンが満足し、ツヤッツヤの表情で帰っていった。
その夜のトレーナーは、ベッドの上で横たわり時々枕を涙で濡らした
勿論あのあとミホノブルボンとなにかしたわけではない。

『ああ、汚された。ってこういう気持ちなんだ――』

ベッドの上でトレーナーはそんな事を考えていた
158 : トレぴ   2025/04/19 10:26:48 ID:cExjvntY26
――ミホノブルボンの勝負服が届いたらしい
トレーナー室に運ばれる2つの大きな箱。縦長で簡易的なキャスターがついてておそらくはハンガーに吊るされた状態での納品なのだろう

『…………2つ?』
「はい、2着お願いしました」
『ああ、予備みたいな?』
「否定します。別デザインのものを2着用意しました。」
『ああ、気分で使い分けるようなもんか。 最近は勝負服複数登録オッケーになったんだっけ』
「2着をまったくの別コンセプトで発注しました。 これがプランΒです」
『β? メイド服じゃん、とはいってもチョコレート色なのはちょっとめずらしいな』
ヒラヒラしたチョコレート色に白のフリルがたくさん。
胸元とエプロンの下部には大きなピンクのジュエル――

「マスター、いかがでしょうか?」

隣の空室を更衣室にして勝負服に着替えたミホノブルボンが入ってくる。
歩くたびに胸元のフリルと宝石が揺れている。 スカートもふわりと広がってかわいらしい。

『いっすね、めちゃくちゃ可愛いぞブルボン。 メイドカフェとかのモデルさんみたいだ。』
「ありがとうございますマスター。
ところで――これはマスターの好みでしょうか?」
『……はい?いや、可愛いと思うぞお世辞抜きで』
「違います。 マスターの趣味嗜好に沿うかどうかの話です」
『…………ノーコメントです。』
「マスター」
『はいおしまい、試着おしまいでーす』
「マスター」

159 : アナタ   2025/04/19 10:53:10 ID:cExjvntY26
『…………』
「こちらがプランα、 本来注文していたデザインです。
いかがでしょうかマスター、機能美とロボットをイメージしたデザインです」
『ロボ? 水着衣装ってやつじゃないのソレ。そもそもその腰のはどうやって浮いてるの?』
「わかりません、しかし電子機械であれば私が触れると故障しますがこれは故障しません。 ですのでこれは機械ではないと判断します。」
『…そッスか。 で――本来って?』
「はい。 今着ている勝負服が本来予定していた勝負服でした。 ですがある時思ったのです」

――マスターはメイド萌えなのではないかと

『…………はい?』

160 : あなた   2025/04/19 15:12:37 ID:cExjvntY26
――服装にも幾多の趣味があります。
チアリーダー・メイド服・水着もワンピース、ビキニなど

「つまり――勝負服をマスターの好みに合わせればマスターに喜んでいただけると判断しプランβを準備しました。」

『………お、おう……まずは朝日杯目指して頑張ろうな』
「マスター、どちらの勝負服が好みか、ご指示を」
『ねえやめてよおなんで教え子に俺の性癖言わなあかんのよお』
161 : トレピッピ   2025/04/19 15:40:30 ID:w9JBfR9oug
「マスターはメイド萌だったのですね」
『いいえ違いますよミホノブルボンさん。 俺はふわふわだったりサラサラな生地がすきなだけですよブルボンさん。
正直萌え萌えキュンとかピンとこねーもん』

「ではメイドカフェには」

『行ったことはございません。
そういやブルボンが好きな男の衣装とかってあるの? こういうコスプレみたいな話ってあんまし女性がキャーキャーいうイメージないんだけど』

「それはマスターにどんなコスプレをしてほしいかという事でしょうか?」

『いや着ないけどね?』

「作務衣とか浴衣が、好きです。」

『あー、まあなんとなく分からんでもない。』

「あとは、マワシでしょうか」

『……相撲の?』

「肯定です。 そしてニシノフラワーさんのトレーナーと相撲を」

『しないよ?』
162 : トレ公   2025/04/19 16:13:41 ID:w9JBfR9oug
「マスターとカフェに行けるのは嬉しいです。
マスター、ここはトレセン学園。 合法的に担当ウマ娘にサンドイッチをあーんできる場所です」

『しませんよミホノブルボンさん――あ、ニシトレ先輩。ちっす』

🌻「あーあ」
「出会ってしまいました」

『こんにちはニシノフラワーさん、ミホノブルボンさんがいつもおせわになってるようで』
「マスター、口調が違います。」『わざとに決まってんだろ要らん事ブルボンに教えやがって』

🌻「こんにちはブルボンさん、ブルトレさん。 一緒に食べませんか」
『ん、いいかブルボン』「喜んで」
163 : 相棒   2025/04/19 16:23:03 ID:w9JBfR9oug
🌻「ここはクラブハウスサンドが美味しいんですよ。はいトレーナーさん、あーんしてくださいね」
――いや、フラワー今は
『……大丈夫です先輩俺は何もみてないっす』
🌻「……トレーナーさん?」
(びく)――は、はい(もぐもぐ)
🌻「うふふ、可愛いです♪」

『……うっわあ、俺は見てないしこの記憶は消去するけどうっわあ』

「マスター、私もマスターにあーんしたいです、特別ミッション:あーんを希望します」

『しませんよミホノブルボンさん。
てかアレだよ、普通はこういうのって男が女の子にサラダとかつまんで食べさせてあげるもんなんじゃないのか?』

🌻「うーん、そういう方も居ますが結局はスキンシップなので、どっちでも良いと思いますよ、それに――私はトレーナーさんをお世話するのも大好きです♪
こうしてカフェっていう色んな方がいるところであーんをすると――こう――トレーナーさんのリアクションが可愛らしくて♪」

『こわっ』

「マスター、あーんを希望します。マスター、マスター」
164 : アナタ   2025/04/19 16:33:10 ID:w9JBfR9oug
『トレーニングのコツ、スか? ……うーん………』

🌻トレ「うんうん、ブルトレくんって今すっごい注目されてるんだよね。
    坂路でメイクデビュー前の子が学園レコードタイムだしたり、デビュー戦も電撃的な追い込みでジュニアのコースレコード。 坂路調教っていう新境地を開いた新鋭って言われてるよ」

『俺全然新鋭じゃないじゃないスか、もう4年目っすよ、ただの底辺トレーナーです。 俺じゃなくてミホノブルボンが凄いんじゃないんですかね。』

🌻「そんな事ぜったいないですよ、いつも寮室でブルボンさんはマスターさんの話ばっかりしてます。 マスターさんと契約してからブルボンさんはいつもこう、エネルギーに満ちてるっていうか、なんかこう……雰囲気がちがうんです」

『あっはっは、ありがとなニシノフラワー。でもま、俺は坂路のトレーニングプランを出してるだけでトレーニングを全部こなすブルボンが凄いんですよ。』

「いいえ、マスターはいつも私のメンタル面、脚のケアを欠かしません。 トレーニング後にはいつも1時間以上丁寧に脚をマッサージしてくださいます。 その後はかならずハグの時間を儲けてくれます。
私は常時、ステータス:やる気超絶好調 です」

🌻「きゃー♪ハグなんて大胆です♪」🌻トレ「君も担当と…」

『いやまってあと先輩なんスか、"も"ってなんスか』
165 : トレ公   2025/04/19 16:45:54 ID:w9JBfR9oug
『まって、ニシノフラワーって飛び級でしたよね? ニシトレさん…………』
🌻トレ「聞こえません 聞こえないんです。ただただ、ボクはフラワーが一番大事なウマ娘というだけです……。」
🌻「きゃっ♪ 嬉しいですトレーナーさん♪」

『………間違いが起きちゃったかあ……』
「マスター、間違いは起きます。 しかしその結果幸せになれるきっかけかもしれません。」
『あーんしてあげるから勘弁してよお』
「パアアアア」
166 : お姉ちゃん   2025/04/19 16:51:15 ID:w9JBfR9oug
『いやまあ、実際のとこブルボンがこんなに強くなったのはブルボンの才能だと思いますよ、ブルボンはとにかく胃腸が強くて――大坂路4本こんだけしててもメシが食える、これはデカいと思います。』

🌻「ああ、トレーニングが激しいと結構食欲落ちちゃいますよね」
「??? そうなのですか?」
🌻トレ「うんうん、身体が資本のウマ娘ってトレーニング後にご飯いっぱい食べれるのは大きいよねえ」
『良いかブルボン、普通はな、ハードなトレーニングをしてバテバテの時は食欲おちたり肉肉しいモノや脂っこいものはちょっと困るんだ。 でもお前は食える、それだけ強くなれるんだ、良いことだぞ』
「マスターが食べさせてくれるなら、もっと私は食べれます」
🌻「ああ、それいいですね♪ トレーナーさん、もっとご飯食べて成長できるように、私にもあーんしてください」
🌻トレ「まってまってここじゃアレだから二人きりのときに」
167 : アナタ   2025/04/19 17:29:36 ID:w9JBfR9oug
「では、私達は午後の授業へ向かいます」
🌻「また一緒にお昼しましょうね、マスターさん」


『ニシノフラワー、いい子ですね。 飛び級ってことはまだ年齢的には初等部でしょ? できた子だなあ』

🌻トレ「うんうん。まだ身体がしっかりしないのが悩みだけど、才能はすごいし優しくてすっごくいい子。」
『……可愛いし?』
🌻トレ「う"っ、それは、その、あの……まあ実際困るよね、あの子はまだ年齢的には中等部未満だけど、結構積極的でね。 恋に恋する乙女って感じなんだろうけど、最近は距離間近くてね。 くっつくぐらい隣に座ったり、ハグを求められるんだ」

――あれ? 俺ハグしてるけど俺って実は結構ヤバい事シてる?
168 : トレ公   2025/04/19 17:45:28 ID:w9JBfR9oug
『メイクデビューは出遅れ最後尾――1勝クラスでダッシュつかず2番手か」

「申し訳ありません、マスター……」

『あーいやあまりいいこっちゃないが悪いことばかりでもない。
なあ、前に言った"まぎれのない"レースの勝ち方の話、覚えてるか?』

トレーナー室でのミーティング。 互いに向き合う形でソファに座り、いくつかの資料を右手にトレーナーがミホノブルボンに向き合う。

『有力なウマ娘が負ける――いわゆる波乱や番狂わせの原因の主なものは、掛かり――まあペース配分の問題だな。 それにブロック――バ群、集団に阻まれて抜けない。垂れたウマ娘に押しつぶされる。
スパートのタイミングや調子の良し悪しはまああるが、"勝てるはず"だったウマ娘が負けることは実は結構多いんだ』

特に集団に囲まれたまま視野を保てずスパートのタイミングが遅れて届かない事は多い。 単純にブロックされて前にいけないだけの問題ではない。

『あとは、そのバ群にツッコんでいける思い切りの良さ、恐怖心の克服。 斜行、進路妨害、タックルでペナルティをうけるかどうかの判断。 まあいろいろとめんどくさい。
その点、逃げでハナをとればこの問題はすべて解決する。 なにせバ群もクソもないからな。一番前だし。最も合理的な作戦は逃げだ。』

『しかし――逃げを作戦で選ぶことは実際多くない。 事実差しや好意差しのほうが有利に働くのがレースだ。
これだけのデメリットを抱えても、2番手、3番手、あるいは中団の方が勝率が高い、作戦として選ばれやすいのはなぜかわかるか?』

「……はい、マスター。 ペースメーカーとして利用されるからです」
169 : 使い魔   2025/04/19 17:49:28 ID:w9JBfR9oug
『そうだ。 逃げウマは先頭にたってレースを引っ張る。 ペースもすべて自分が決めることになる。
強いウマ娘が逃げればそれはもっとはっきりする。 なにせそいつをゴール前で抜けば勝ちってシンプルな話になるからな。
ついて行って直線で抜く。 これが今のレースでシンプルに勝ちやすい。』

「メイクデビューの時のように、ですか。」

『そうだ、出遅れようと最後尾だろうと最後に1番を抜いて1番になれば勝ちだ。
ホウエイマーチのスタートは芸術的なモノだったし、序盤の展開は完璧だった。
普通なら、あのままゴールして、レコードタイム。
だが、あのレースの1着はブルボンだしレコードタイムもお前のものだ。』
170 : トレーナーちゃん   2025/04/19 17:58:36 ID:w9JBfR9oug
『まあ、そもそも逃げに必要なのはスピードと、それをどれだけ持続出来るかだから、脚、というか筋肉の質の適正もある。 直線でキレのある、電光石火の脚。これは爆発力があるが長く続かない。
最近のウマ娘でいうとダイイチルビーがそうだな。 爆発的な豪脚を持ってるが最初は逃げ、先行路線でスピードを活かそうとして燻ってた。
たしかどっかのレースでとんでもない出遅れをして、あの豪脚に偶然気づいたんだっけな。
勿論逆もありうる。 キレる脚や豪脚はないが、持続的なスピードや性格的に前にいって好き勝手走ったほうが強いってやつもいる。』

「作戦というのは個人個人だけでも大きく変わるのですね」

『ま、適正はあるからな。 それで、ミホノブルボン。 お前の適正だが』

「はい、マスター」

『基本的には逃げだ、お前のそのスピードと心肺もそうだが、その体内時計は確実に武器になる。 徹底して同じラップを刻んで走れるのは最も効率的な走り方だからな。 勝てるペースできっちり走って最後の直線しっかり頑張る。
これだけで皐月賞もダービーも菊花賞も勝てる』

「…………」

『なんだ、ブルボン。 いつものパアアアって表情じゃなくなんか複雑なあれだが』

「……マスター。 ステータス:感慨です。私のデータにない感情です。」
171 : 大将   2025/04/19 18:06:13 ID:w9JBfR9oug
「私は、"短距離"の"並"なウマ娘で
三冠は不可能だと、短距離路線に進むべきだと。 実際、それは正しい選択で。」

『……そうだな』

「ですが、マスターとトレーニングをしてると思うんです
私は、本当に三冠に挑戦できるんだなと。G1に出れる、ではなく、三冠を獲りにいけるのだなと。
――ありがとうございます、マスター。 私の心臓を、脚を、こんなにも強くしてくれて」

『……ブルボン、お前は最初からすごいウマ娘だよ。』

トレーナーは手を伸ばし、ブルボンの頭をぽんぽんと頭を撫でる。

『言ったろ、メイクデビュー前じゃあの大坂路は登れないって。お前はそれを登りきったんだ。 それに遊びたい盛りの高等部で、ずっとずっとトレーニングばかりだ。 でもお前はいつも真剣にトレーニングを続けた。
お前の根性と頑張りはトレセン学園全部見たって誰もマネできやしないよ
競争能力が並でも、お前はすごいウマ娘だったんだよ』

「……マスター」
172 : お兄ちゃん   2025/04/19 18:13:38 ID:w9JBfR9oug
「マスター、もう少しだけ……頭を撫でていてくれませんか?」

『……いいぞ。 お前は頑張った。 いっぱいいっぱいいつも頑張ってるすごい奴だ』

トレーナーは優しくミホノブルボンの頭を撫でて、労う。

マッサージを毎日していると、ミホノブルボンの疲労の蓄積がわかる。 毎日マッサージで抜いても、ミホノブルボンが睡眠時間をしっかりとっても、疲労がどんどん溜まっていっている。
――とはいえ、朝日杯は1600M 皐月賞は2000M、これを走り切る心肺と競争能力を手に入れるためにも坂路4本をやめるわけにはいかない。
脚の爆弾が大きくなっているのも、毎日のトレーニングがどんどんつらくなっているのも、きっとブルボン自身が一番わかってる。
ジュニア級でこれだ。 本数が増えなくても今後どんどん辛くなっていくだろう。

『……辛いか、ブルボン』
「はい――今までより、疲労が残る日が多いです。」
『そうだな、今後も辛いと思う。』
「ですが、三冠は穫れます。 私は、マスターを信じてます。
ですから
マスターも私の脚を信じてください。私は丈夫ですから」
『ああ、全くお前は凄いやつだ、偉いぞ、ブルボン』

わしゃわしゃと髪の毛が崩れるのを構わず撫で回す。 ミホノブルボンは気持ちよさそうにそれを受け入れていた
173 : トレぴっぴ   2025/04/19 18:37:26 ID:w9JBfR9oug
――その、ホウエイマーチがまだ未勝利なんだよな

スタートのセンスも良かった。 序盤の展開も上手かった
ミホノブルボンが追った事で直線で全力以上のモノがでたとしても、ミホノブルボンが届かなければ彼女がレコードタイムだ。
そんな実力者がまだ未勝利である

『どうなってんだ今年のジュニアは。 こりゃ朝日杯も、クラシックもやべーのがそろいそうだ』

出走表明をしているのは京成杯ジュニアを勝利したヤマニンキセキ
京成杯ジュニアでは3着だがすぐ1400mの1勝クラスで大勝したエーピーターボ
府中ジュニアSで豪脚を発揮して乗り込んでくるマチカネタンホイザ

『エーピーターボちゃんがなあ……正直回避しねえかなあ』

エーピーターボがホウエイマーチ同様にスタートセンスがいい逃げだ。
ミホノブルボンには逃げ指示をするが、おそらくハナは譲ってもらえないだろう。最悪ハナの取り合いになる。 一定のペースとはいっても前に邪魔なウマ娘がいるか単騎でハナを走れるかは雲泥の差だ
恐らくエーピーターボ側も全く同じことを考えてるだろう。たとえミホノブルボンのほうが劣ってるウマ娘だったとしても、逃げがかぶるのは本当に勘弁だ
174 : トレぴっぴ   2025/04/19 18:52:30 ID:w9JBfR9oug
「あれ、ブルトレ君じゃないか。」

『あ、どうもニシトレ先輩。 デイリー杯ジュニア優勝おめでとう御座います
札幌ジュニア、デイリージュニア、重賞2連勝。 阪神JF、最有力候補っすね』

「あはは、ありがと。 もともとマイル周りは自信あったんだけど、あの子はほんとすごいよ。 ボクなんかにはもったいないぐらいだ。」
『いやあ、真面目にニシノフラワーがティアラ路線で良かったって思ってますよ。 あの子と1600Mで競うなんてちょっとしたくないッスね』

あの小柄な身体で、とんでもない豪脚をもつニシノフラワーはある意味ミホノブルボンの天敵だ。
あの獲物に飛びかかるような末脚は、どのようなペース設定をしていいかわからなくなる。

「ありがと。 ところでブルボンさんのほうはどう?」
『あー、メンバーが強くて』
「うんうん……ああ、ヤマニンキセキさんにエーピーターボさん……あげくに後方からマチカネタンホイザさんかあ」
『くわしいっすね、この子らクラシック路線なのに』
「勿論だよ、彼女たちは素質に恵まれてるし、ティアラ路線でもトライアルでぶつかる可能性があったからね。」
『うーん、全然ゲートやスタートの練習してないんスよね。 本当はさせたいんスけど、スタート良くても"出ムチ"されてハナ取られるかもだし』
「エーピーターボさんがゲート上手なんだっけ?」
175 : ダンナ   2025/04/19 18:58:21 ID:w9JBfR9oug
『ええ、正直ブルボンはマイペースに逃げてほしいんで。
――ただ、良かったですよ朝日杯で。』
「まあ、いい練習になるよね。 クラシックでいきなり前塞がれるよりは」

『いえ――ここで実力でぶっ潰せば、以後クラシックでハナの取り合いなんかしないでくれるなーって。 最悪、クラシック回避してくれるなーって』

「こわっ!? 怖いよブルトレ君!?」

『あっはっは、冗談スよ冗談。 レース決めるのは自由なんで。 一生に一度のクラシックですもんねあはは』

「目が笑ってないよ!?
――はあ、実際どうなの? みんな短距離路線、短距離路線、距離の壁。っていうでしょ?」

『あー、いつも言われますし記者からも言われますね。 まあ、そこらはアレっすよ』


『勝って黙っていただいて――距離の壁もミホノブルボンなら、って思っていただくってことで』
176 : トレピッピ   2025/04/19 19:06:48 ID:w9JBfR9oug
『結構寒いな、しっかり身体あっためて行けブルボン』
「はい、マスター」
『どうだ、調子は』
「……」
『大丈夫か』
「……はい、大丈夫です。 ステータス:武者震い レースに支障はありません」
『よし、事前に言ったことだが、恐らくハナの奪い合いになる。
無理して付き合うことはない。譲ってしまって良い。 2番手でもペースを刻んで、その状況で垂れてきたら抜けばいい。 付き合うなよ』
「了解です、マスター」

「ミッション:朝日杯ジュニアに行ってまいります」

『おう、勝ってこいミホノブルボン』
177 : トレ公   2025/04/19 19:13:35 ID:w9JBfR9oug
🌻「……勝てますか? ブルボンさん」
『ああ、勝つさ。お前だって勝ったんだ』

今やジュニアティアラ王者になったニシノフラワーとそのトレーナーと一緒にレースを見つめる。
支持率65%の圧倒的1番人気。 しかしその実は坂路の学園レコードとメイクデビューのレコードタイムをもつ2勝ウマ娘
ライバルは一流同士で勝利を収めたOP、重賞勝利者たちだ

🌻「ブルボンさんは逃げるんですか?」
『予定ではそうだが、他に逃げウマ娘もいる。 特にエーピーターボがそれをゆるさないだろ。 最初はハナを狙うが無理せず2番手3番手でもいい』
🌻トレ「……ブルトレ君、変わってないね。 その癖」
『え、なんスか?』
🌻トレ「レースの時の神様仏様ってやつ。 両手組んでお祈り」

トレーナーは無意識に両手を組んで、祈るような格好になっていた。
事実レース前にはいつも神様だか仏様だかに祈っている

――無事、レースを終えて帰ってきますように
178 : トレピッピ   2025/04/19 19:18:55 ID:w9JBfR9oug
――これが――G1

観客席の声も、周囲の空気もはっきりと違う。
彼女たち全員が強い。勝ちたいという気持ちが空気を伝って肌に感じる。
頂点を決めるレース。 一生に一度の舞台

――これが、朝日杯ジュニアステークス

息を吸って、吐いて。
問題はない。 今日は偶数番号――奇数番号が入って、偶数番号が入ってからレースがはじまる。
1600M
それを走り切るだけのトレーニングをしてきた。

(マスター……証明します。
貴方と――貴方が造った大坂路は、貴方が造ったミホノブルボンは、最強だと)

ゆっくりとゲートに入り、準備を整えた。

――ゲートが開くと同時に、ミホノブルボンは会心のスタートを切る
179 : トレーナー   2025/04/19 19:26:51 ID:w9JBfR9oug
🌻「一人、出遅れ!?」
『いや、別のだ! こっちのスタートは良い!』
🌻トレ「でもやっぱりエーピーターボが……いや、追走?」
『いやまてエーピーターボじゃなくてハナ塞いだのは誰だ』



――ハナはあげるよ、アタシはアンタの後ろで悠々ついてって最後に勝たせて貰う。
――せいぜいペースメーカー、ヨロシク♪

エーピーターボは、あっさりと前を譲り――しかし、ハナをきったのはミホノブルボンじゃなくマイケルアーサーだった

「きゃはははっ、今日はあたいが一番、いちばんいちばんいちばん☆
一番前をずーっとはしってればいっちばーん☆」

スタートからぐんぐん飛ばす。あっさりと先頭を奪って気持ちよく逃げる


「……オーダー通りです、マスター」
180 : 貴方   2025/04/19 19:36:58 ID:w9JBfR9oug
🌻トレ『うわあ、あの子、京成杯でエーピーターボに逃げまけてたのに、完全に開き直ってる』
🌻「あ、あのブルボンさん大丈夫です、大丈夫ですよね? 勝てますよね?」
『当たり前だ、あいつを誰だと思ってる。学園で最もスパルタに耐えたやつだぞ』



――お前には逃げを命令するが、お前は別に逃げ馬ってわけじゃない
――その体内時計を活かすための逃げだが、お前の脚は、お前の適性は
――長い脚で追える、スパートも可能な自在だ

後ろにべったりと張り付くエーピーターボ。 勿論スパートを同時にしかけて追い抜くつもりなのだろう。スピード勝負に絶対の自身があるようで
そしてその後方、逆からはゆっくりとヤマニンキセキがあがってくる。
京成杯ジュニア覇者は、ジュニアの段階で高いレースセンスをもっていた。 スパートではなくジリジリと上がっていき――3角4角で前にでるのであろう

そして――3コーナーに差し掛かった時、調子にノリすぎてすでに体力付きたマイケルアーサーが垂れ落ちてくる。


――モード、追い越し。ギアチェンジします
181 : トレーナーさん   2025/04/19 19:41:22 ID:w9JBfR9oug
『アイツは素直な性格だからなのか、冷静だからなのか元からレースセンスがよくてね。 俺は一切ああいう捌き方を教えてない。 メイクデビューだって、前がふさがれてると思った瞬間、コーナーの勢いを利用して外に大きくステップできたやつだ。』

🌻「ええっ、でも垂れたマイケルさんをわかってたみたいにあっさりかわしてますよ、あんなのよほど練習しないと」
『多分、自分のペースが狂ってない絶対の自信があるからなんだろうな。
ペースが狂ってない自分と相手の距離が詰まるってことは――前のペースが落ちたから、スパートしながら抜いたんだろう』
🌻トレ「すごいよ……これならこのレース」
『……いや、どうやらもう一人の本命さんが起こしのようだ』
182 : トレピッピ   2025/04/19 19:49:39 ID:w9JBfR9oug
垂れたマイケルアーサーを外に出てあっさりとかわすミホノブルボン
しかし同時に、その更に外から強襲する影があった

――ヤマニンミラクル、 京成杯ジュニア覇者

「負けません――ブルボンさん」

いつも過酷なトレーニングを積んできた。
期待をされそれに恥じないだけの努力はした
メイクデビューを圧勝した時はさすがだと持て囃され、しかし直後のGⅢでは1番人気だったのに4着
それだけで周囲の目は急に冷たく厳しくなった。
だけど――それでも腐らずに頑張って
頑張って、頑張って、努力して――OPから勝ち上がって京成杯ジュニアを獲ってきた
だから――勝ちたい、この朝日杯で勝ちたい。
ミホノブルボンには―――負けない。

「――ッ!!! 」

背後にとてつもないプレッシャーがのしかかる。スパートのためではなく、ヤマニンミラクルのプレッシャーに潰されたくなくて速度を上げたくなる。
それを――全力で耐えた。
自分はスパートをしない――直線までは
183 : 貴方   2025/04/19 19:54:31 ID:w9JBfR9oug
――スピードが早ければ早いほど大きな負担が脚にかかる
――同時に、コーナーってのは遠心力やソレに耐えるために斜めになった身体、脚が蹴る力が偏ってどうしても軸足――内ラチ側に妙な負荷がかかる
――外の蹴り足だってそうだ。 スピードをだしながらコーナーを回る力で地面を蹴ってるんだからな。

――だから、お前のスピードならコーナーで戦わなくて良い。 スパートするなら直線だ。


スパルタなトレーニング。 脚を壊す前提のようなトレーニング
だからこそマスターはいつもいつも脚を心配してくれる。
1時間以上のマッサージ、ハリが引かない時は2時間でも3時間でもしてくれる。
マスターは、私の三冠のために、私の脚を大事にしてくれる

――だから、私が無意味に、この脚に無駄な負担をかけるわけには行かない。
184 : お姉ちゃん   2025/04/19 20:04:18 ID:w9JBfR9oug
🌻「ヤマニンキセキさんが!」
『大丈夫だ、大丈夫……あいつはまだ抑えてる』
🌻「抑えてるって――もう直線ですよ!?」
『アイツはお前ほどコーナー巧くねえんだ。 もう、直線なんじゃない――やっと直線がきたんだよ』


正面にみえた右手の内ラチが消える。
ミホノブルボンにとっては、それがGOサイン、外に並んで抜き去ろうとするヤマニンキセキの表情が変わる。

ーー負け、ません――ブルボンさん、貴方には!

「私も、負けません。 私の脚は、マスターが造ってくれたんです」

ヤマニンキセキが、強く強く芝を蹴る。
同時に、ミホノブルボンがスパートをする


――なんだあいつら……なんてスピード、次元が違う
――くそ、くそくそくそっ! アタシを無視すんなお前らッ!!!!

その後ろからエーピーターボが加速してくる。
しかし、その加速よりはるかに速く、ミホノブルボンとヤマニンキセキが競り合う
ミホノブルボンがたった一歩だけリード
勢いのあるヤマニンキセキがもう一歩加速した瞬間

――ッ!?

ミホノブルボンは同様に加速する。
たった一歩――それが足りない。届かない。

――負け、る。 いやだ、いやだ、負けたくない
――あんなに努力して頑張って、それでも負けるなんて嫌だ
――勝ちたい、勝ちたい、勝ちたい、勝ちたい
185 : アネゴ   2025/04/19 20:13:06 ID:w9JBfR9oug
🌻トレ「また伸びてきた」
🌻「並ばれる、これじゃ」
『ブルボンッ、負けんなもう一歩ふみこめっ!!!』

――最後のひと伸びをしたヤマニンキセキは、ミホノブルボンを抜いた
――しかしそれは、ゴール板を超えた直後
――1着はミホノブルボン、ハナ差でヤマニンキセキ


――1着はミホノブルボン! ヤマニンミラクルわずか届かず
――朝日杯王者はミホノブルボンです!

実況の興奮した声。
ミホノブルボンに惜しみなく注がれる歓声

『勝ったか……勝ったんだよな?』
🌻「はい! ミホノブルボンさんやりましたよ!」
🌻トレ「ははは、実感、なくなるんだよねこの瞬間って」

『そっか、そっか……おおおっ、勝った、勝ったぞ!!よおおおおおおしっ!!
ブルボン、勝ったぞおおおおっ!』



🌻「あは、すっごい勢いで走っていっちゃいましたね」
🌻トレ「あの人、子供みたいで可愛いよね。 あんなに感情爆発させちゃって」
🌻「あはは♪」
186 : キミ   2025/04/19 20:27:49 ID:w9JBfR9oug
ライブ準備のための控室で、ミホノブルボンがクールダウンをしていると

―――ブルボンッ!

勢いよくドアが開かれて、トレーナーが入ってくる。
そしてそのままミホノブルボンを抱きしめた。
ミホノブルボンは驚いたように棒立ちのまま熱い抱擁を受け止めている

「マスター……はい、マスター。 勝ちました
最初の重賞ミッション:朝日杯ジュニアをクリア、です。 マスター」

『ああ、よくやった。 ほんっとーによくやった。 っと、ああ、すまん。これからライブだな。』

くしゃりと頭を撫で回そうとして――手を止める。 まだライブが残ってる。髪型を崩すわけにも行かないだろう。

「いいえ、マスター。 あとで直しますので――撫でてください。
いつも以上に髪の毛がくずれるぐらい。 G1を勝ったのですから、いつもの何十倍も、ほめてください。」

トレーナーは言われた通り、頭をぐしゃぐしゃに撫で回す。

『ほんとすごいな、とうとうG1まで獲っちまって。 頑張った、頑張った頑張った、偉いぞブルボン。お前は自慢のウマ娘だ、ジュニア最強だぞジュニア最強
……ほんと、すごいな、努力と頑張りでG1獲っちまった』

足が壊れてもおかしくないスパルタトレーニング
故障をしてなくても辛いだろう、手を抜きたいだろう。
目標があっても、夢があっても――それを続けるのがどんなに辛いか

「みんな、努力をしてました。 勝ちたいと思ってました」
『……?』

「ゲートに入った時から、別世界でした。 みんなが勝つ気で、全力でくる空気をかんじました。
特に――ヤマニンキセキさんのプレッシャーは、最後の直線で、ずっとずっと――おしつぶされそうでした。 一歩間違えば」

――差し切られていた
187 : トレーナーさま   2025/04/19 20:31:23 ID:w9JBfR9oug
ヤマニンキセキがそれだけの強さと、執念を持っていた。という話でもあり、今後はもっともっとそういったレースになっていく。
レースに多く出走して経験を積ませる事はできない。 スタミナを鍛えるためにもそんな余裕は一切ない。

『でもな、お前は勝ったんだ』

トレーナーは優しく、ミホノブルボンを撫でる。髪の毛をやさしく梳くように

『みんなみんな必死に努力して、実際一番努力したやつが勝つ世界ってわけでもない。 1着になれるのは一人だけで、もしかしたら2着以下の奴らには1着以上に人生かけて努力したやつもいるのかもしれない』
『それでも、勝ったのはお前だ。ミホノブルボン』

ぽんぽん、と背中を叩く。そっと身体を離して。

『脚は大丈夫だな?』
「はい、マスター」
『じゃあ、ライブ行って来い。 G1を勝ったさいっこーにキラキラしたウマ娘ってやつを見せてこい』
188 : トレぴ   2025/04/19 20:38:03 ID:w9JBfR9oug
ライブ会場裏

🌻トレ「おめでとう、ブルトレ君」
『……あ、ども。 なんか実感ないもんスね』
🌻トレ「あはは、わかるわかる。 ボクも阪神JFを勝ったって自覚があまりないや」
『まあでも、勝ったんスね俺等。』
🌻トレ「そうだね。 あの子達がやってくれたよ」
『……いえーい☆』
🌻トレ「? あはは、いえーい☆」

こつん、と拳をぶつけ合う。


ライブは滞りなく終わって
ミホノブルボントレーナーは勝利者インタビューの会場に座っていた

――ミホノブルボンさんの適性はどう見ても短距離路線ですが、この先は短距離マイルで進むのでしょうか?
それとも皐月賞までは挑戦を視野にいれるのでしょうか?


(――ああ、この手の質問がくるよなあ……)
189 : 相棒   2025/04/19 20:44:46 ID:w9JBfR9oug
「否定します。 私の夢は三冠ウマ娘です。」

――えっと、それは

『あー、彼女はクラシック三冠が夢であり目標なのでクラシック路線に行きます。
NHKマイルなどの変則2冠などではなく王道3冠です』

――それは彼女の意思なのでしょうか? 彼女は短距離適正ですよ?
――せめてマイル路線などに進むべきではないでしょうか?
――今回の1600でもハナ差であり圧勝でなかったのは距離の限界だったのでは?

「否定します。 距離の限界はマスターがレースまでにスタミナを作り上げてくれます。」

――? マスターとは

『あーはいはいはいはい!
皆さんのお気持ちもお言葉も凄く理解できますしね、ご尤もな話ですよ
彼女の適性が短距離であるのもそのとおりです
ですが、彼女の夢は三冠ウマ娘なんでね。
きっと皆さん無理だ不可能だって言うと思いますよはい。
――でもさ、皆さんこういうの、大好きでしょ?』


――不可能を可能にするウマ娘って、ミホノブルボンはそういうウマ娘ですよ。
190 : 相棒   2025/04/19 20:51:32 ID:w9JBfR9oug
「マスター」「マスターさん♪」

G1勝利や今までの疲労を抜くことも踏まえ、少しの間だけ大坂路トレーニングをやめ休養期間ということにした。
そんな、冬休み前でありクリスマス前の冬

今年のジュニア最優秀ウマ娘は、特別に2人選出された
重賞3勝、うちG1:阪神JFを獲ったニシノフラワー
メイクデビューで中京の1000Mコースレコードを出し、朝日杯を獲ったミホノブルボン
東西最優秀ジュニアウマ娘として二人が決まったのだ。

🌻「それで、最優秀ウマ娘の表彰ついでにお祝いでトレーナーで集まって」
「酒の場でパーティー、その後むちウマ居酒屋、嬢バ倶楽部へ行ったという嫌疑がお二人にかかってます。」

『え、ああ……その』

🌻「私のトレーナーさんにはもう来てもらってますので」
「ご同行をお願いします、マスター」

――ウマミミにヒトミミは逆らえないのである
191 : 相棒   2025/04/19 21:05:38 ID:w9JBfR9oug
🌻「はい、トレーナーさん……こちらに座ってくださいね」
🌻トレ「はい」
🌻「ソファに座って良いとは言ってません♪ 正座です♪」
🌻トレ「…………はい」

「マスター」
『……はい、マスター正座します。』

マスターが何をしたというのか
単に最優秀ウマ娘ということでニシトレと飯塚トレーナーに学園から報奨金が出た。当然それを知った他トレーナーは祝勝会という名目で飲み会をしたくなるのだ。
なにせ報奨金、なにせ他人の金、なにせあぶく銭
マスターだってたまにはぱっと遊びたい
ニシトレは真面目だが周囲の押しに弱い
だからちょっとみんなで飲み歩いて、ちょっとだけお酌をしてくれる可愛いウマミミちゃんがいる店がいいと◯◯トレが言ってそういうお店にいっただけだ

🌻「ふむふむ、あは♪ 反省の色――ゼロですね」
🌻トレ「ひっ、ご、ご、ごめんフラワー! もうそういうお店行かないから!」
『いいや待ってくださいよ先輩。 俺等は悪いことをした覚えはねえ!』
「……マスター、嬢バ倶楽部というのはどういうお店なのかフラワーさんから聞きました。 浮気です」

『異議あり! そもそも俺らはちょっと露出の多いお姉ちゃんがお酌をしてくれるお店に行っただけで嬢バ倶楽部に行ったのは他トレーナーだ!俺は行ってないしニシトレ先輩はフラワーに悪いからって断ってるのを聞いている!』

🌻「まあ♪ 本当ですかトレーナーさん?」
🌻トレ「う、うん……」
🌻「でも、むちウマ居酒屋には行ったんですね?」
🌻トレ「ひっ」

『そもそも俺らは成人男性だしお前らと付き合ってるわけでも結婚してるわけでもな――いひゃいいひゃいひゃいちふぃれる!ちふぃれる!!!』

言葉の途中でミホノブルボンがマスターのほっぺたをつねって引っ張る。 ものすごくご立腹のようだ
192 : トレーナー君   2025/04/19 21:13:46 ID:w9JBfR9oug
『なんでだよ不条理だろ、俺等はお前らに手を出したら犯罪なのに、合法のお姉ちゃんの店に行ったら犯罪者のように取り調べを受けるって、不条理だろっ』

🌻トレ「そうだよ、ボクだってそういうお店はあまり好きじゃないんだ。でもトレーナー同士の付き合いとか横のつながりってあるんだよ。」
🌻「トレーナーさん?」
🌻トレ「はい、今後断ります」

『よわっ!? 先輩相手小学生ッスよもうちょっとビシっと』
🌻「トレーナーさんをたぶらかさないでくださいマスターさん」
「私達ではだめなのに、接客業の女性に鼻の下をのばしていたというのが由々しき事なんです、マスター」
🌻「そんなにお酌がされたいのなら――私達がしてあげますね」
「マスターたちが望むのなら、お触りも問題ありません」
🌻「その時は一生分の責任をお支払いいただきますね」


出されるノンアル(どちらかといえば酒のフリをしたフェイクジュース)
寮室のそれぞれのベッドに座らされ、となりにぴったりと勝負服姿で寄り添うフラワーとブルボン。

「マスター、今日はバレンタイン衣装です。 どうぞ――ホットチョコレートです」
『………うす』
🌻「はい、トレーナーさん。おつまみ、お口あーんしてくださいね♪」
🌻トレ「…………やめようよおフラワー、ブルボンさんもブルトレ君も見てるよ」
193 : お前   2025/04/19 21:17:29 ID:w9JBfR9oug
おめでとう飯塚トレーナー、おめでとうニシトレ
今夜は祝勝会だ
6話終わり
194 : マスター   2025/04/19 21:34:10 ID:w9JBfR9oug
だそく
※今回の蛇足はパラレルであり本編とは別次元です

「マスター、質問があります。 ミッション:他愛のない雑談です」
『んー、なんだブルボン』

「学園には沢山の美少女がいます」

『そっすね。 ウマミミは美人多いよね、ブルボンも美少女だし。』

「ありがとうございますマスター。マスターの外見に限った好みは誰ですか?」

『……はい? それってブルボン以外の名前出したら俺のほっぺたちぎれたりしない? 絶対つねるでしょ君』

「つねりません。 私という選択肢がないときにマスターがどのような女性をピックアップガチャするのかという好奇心です」

『ガチャってなんスか』 「忘れてくださいマスター」

『見た目、見た目ねえ……アストンマーチャンとか?』

「――身長152cm 86-55-80、なるほど」

『ねえスリーサイズいうのやめようよ生々しいよブルボン』

「どのような部分がポイントですか?マスター」

『えーーーーー? うーん雰囲気とか垂れ目とかおっとりなトコとか、腰が細い、とか?』

「腰が細いのが好きなのですか、マスターは
私は86の54です、いかがですか」

『いやさっき自分は除外しろっていったじゃないの』
195 : アンタ   2025/04/19 21:37:55 ID:w9JBfR9oug
「他にはどうですかマスター」

『んー、そっすね。 ……スーパークリークとか?』

「………………」

『? どしたん?』

「だめです、マスター。 クリークさんはだめです。」

『なんで、別にアプローチするわけでもないじゃん』

「彼女はだめです、私がマスターのお世話をするんです。
お世話されてはいけませんしでちゅねするなら私がマスターをでちゅねにします」

『ごめん何言ってるかわからん。いや実際背高いし、スタイルもいいしさ

――いふぁいいふぁいいふぁいいふぁい!!?』
196 : 貴方   2025/04/19 21:44:17 ID:w9JBfR9oug
だそくおわり
197 : キミ   2025/04/20 20:59:03 ID:6FWg3.FBf6
『ブルボン、さんぽ行くぞ』

――マスターとおさんぽ。
――マスターは、いつも私の事を気遣ってくれて
――いつも、私に元気をくれて
――口は悪いけど、いつもいつも私を心配してくれる
――ちょっと子供っぽくて、でも、お父さんみたいに頼りがいがあって
――私は、マスターが大好きです
――今日は、どこに行きますか、マスター
――てきとう。 そうマスターは行って私の手を取って、一歩前を歩く
――河川敷を歩いて、他愛のない雑談をして
――私がハグを求めると、恥ずかしそうに拒否する
――そんな、いつもが、かけがえのない幸せ

――今日は、いつもと違う散歩道
――路地を抜けて、角を曲がって
――……なぜですか マスター?
――どうして? 私を…………騙したのですかマスター
――マスター、どうして、こんなところに


――――目白うまむす病院


『クラシックにもなったし、ちゃんと予防接種しないとな』
198 : 貴方   2025/04/20 21:03:54 ID:6FWg3.FBf6
「マスター…………マスターは散歩だと言いました」
『ああ、言ったな』
「予防接種だとは聞いてません」
『だってお前…というかお前ら予防接種って言ったら逃げるじゃん、ガチ逃げするウマ娘なんて捕まえられないだろ』
「騙したのですか、マスター」
『ああ いや高校生なんだから予防接種ぐらい受けろよ。 毎年毎年毎年この時期大戦争なんだぞ学園。 なんと国から特殊部隊も派遣されるようになりました。 恥じろ』
「……いやです。拒否します」
『はい、予防接種いこうねーいい子だからねー
いやーブルボンはいい子だから予防接種も頑張ってくれるんだろうなあ』
「マスター、マスター、マスター」
199 : 大将   2025/04/20 21:15:50 ID:6FWg3.FBf6
『てかお前どんだけ健康優良児なんだよ、病院つったら健康診断だとか脚の検査だとかあるだろうにまっさきに予防接種を思いつきやがって、まあ正しいんだけどさ』

中は阿鼻叫喚の地獄だった。
柱にしがみつくウマ娘、座ってはいるが一生ガタガタガタガタ震えてるウマ娘
トレーナーに全力で抱きついてトレーナーが泡ふいてるのもいる

『……おうちデート』
「………」
『これ終わったら門限まで俺の部屋来ていいから』
「……ハグは」
『いくらでもしていい』
「……オーダー、承認。 ミホノブルボン、耐えます」
『……はあ』

ハグが嫌なのではない。 実際のところめちゃくちゃ気持ちいいし甘い匂いするし許されるのであれば毎日どころか毎時間したい。
勿論ゆるされる事ではない、いつ間違いを犯すか起きるかわからない。
なので部屋に招くことは基本しないしハグだってトレーニング後にご褒美にするぐらいだ。
200 : トレーナーさん   2025/04/20 21:23:31 ID:6FWg3.FBf6
――はっ! スカーレット、予防接種なんて余裕だろ。 俺は3本は打ってもらうぜ

――ばかねうぉっか、わたしは5本よ

『予防接種は数競うもんじゃねえよ……なんで予防接種だとみんなIQさがるんだ』
「あの、マスター」
『どうした』
「……カミナリと、注射は苦手です。 マスター」
『そっかそっか、頑張ろうなブルボン』
「あの、手を握っていてもいいでしょうか」
『先生ががいいよって言ってくれたらな』


『ほらブルボン、針じゃなく腕伸ばしたままこっちみろこっち。
はいもう終わるぞ―、ほらほら、よーしいい子だおわったぞー』

「あらー、ブルボンさんいい子でしたねえ。 トレーナーさんも助かります。 ウマミミの方は注射みると興奮しちゃって」

『よーし帰るぞブルボン。 帰りになんか食べてくか?』
201 : アネゴ   2025/04/20 21:29:13 ID:6FWg3.FBf6
『なあ、ブルボン。 機嫌なおしてくれよー。なあブルボンってばさー』

「拒否します……マスターの声は聞こえません。 マスター」

『うわー、初めてブルボンが反抗期だ。
ん? ………こりゃ雨降るな』

「?」

『おいブルボン、雨降るからアパートまでのバス乗るぞ』

空はたしかに雲が多いが、雨が降りそうなほどではない。場所に寄っては日差しが落ちてくるぐらいだ。
しかし、アパートにつく頃には雨がふりはじめ、すぐに本降りになった

『あぶねーあぶねー、もうちょい遅れてたらずぶ濡れだったな。
まってろブルボン、紅茶いれるから』

「あの、マスター。 天気予報はくもりで降水確率は低かったのに、なんでにわか雨がくるとわかったのですか?」

『あー……俺以前、脚をケガしてさ。映画とか、漫画でよく言うだろ、雨の日は古傷がどうこうって。』

トレーナーはチノパンを履いた右足を軽くたたいて見せる。
202 : 大将   2025/04/20 21:33:54 ID:6FWg3.FBf6
『後ろから……こう、ハグすりゃいいのか』

「はい、お願いします。」

『よしよし、予防接種頑張った頑張った』

「……バッドステータスが、回復していきます。ステータス: ここちよい。です」

『そういやさ、俺ちょっと悩んでる事あるんスよ。ブルボンさん』

「マスターが悩みを」

『そうそう、なんつーのか……語彙力?』

「??? 語彙力、言葉や会話のバリエーション、でしょうか」

『そそ。 ほらさブルボンがこうして頑張った時、いつも褒めてるでしょ?』

「はい、マスターにハグされながら褒められるのは、グッドステータス:幸せ です」

『それなんだけど、いつも大体同じ事しか言わないじゃん?
頑張ったなーとか、偉いぞ―とかさ。 なんか聞いてて飽きたり、同じこといってんなこいつとか思ったりしない?』
203 : トレ公   2025/04/20 21:39:59 ID:6FWg3.FBf6
「?? 私は十分幸せですが。 バリエーションが必要なのでしょうか?」

『なんか言ってて不安なんだよね、もっとなんか気の利いた事言えなきゃだめかなとか同じことばっかで薄っぺらく感じないかなとかさ』

「そんな事はありません。 私はマスターが褒めてくれるだけで幸せです。
もっと頑張ろうという思いが込み上げて体力値がいつも70回復します」

『100じゃないんだ』

「70が最高値です。 ですがキスをしてくれたら100回復するかもしれません。」

『しませんけどね……あ、光った』

「――ッ!?」

その瞬間、ミホノブルボンがトレーナーの腕にしがみつく。 一瞬の間があって、ゴロロロロと鳴るカミナリの音

「マスター、マスター……尻尾を取られてしまいます。マスター」

『あん? そういやさっき、カミナリ苦手だと言ってたな』

「お父さんが、お父さんが言ってました。 カミナリは、ウマ娘の尻尾をもっていってしまうと。 尻尾を、とられるのはイヤです。 マスター」

『あー……なるほど』

積極的にハグをしたり、キスをあんなにも求めたり、男に性癖聞いたりするわりにやはりちぐはぐなほどに子供っぽいところがある。
204 : キミ   2025/04/20 21:44:57 ID:6FWg3.FBf6
『しょうがねえな、ほれ、大丈夫だブルボン、そんなガタガタ震えるな。
――ったく、ほら』

「あんッ …マスター?」

トレーナーはミホノブルボンの大きな尻尾に全身で抱きついた

『ほら、尻尾とられないように俺がこうして抱いといてやるから。 かみなりなんかにブルボンの尻尾はやらないぞ』

本気で怯えて震えるブルボンを安心させるために、両腕で抱き枕のように尻尾を抱く。
ブルボンは顔を赤くして俯いてから

「マスター――マスター」

振り向いたミホノブルボンは、がばっとトレーナーを押し倒す。

『ミホノ――ブルボンさん?』

「マスターが悪いんです、 尻尾を、あんなに、抱きつくなんて」

『まって、まってブルボン抱きつかないで顔に胸当てないでうわやわらかっすっげーいい匂いちょっとまって助けてまってまってまって』
205 : お前   2025/04/20 21:48:15 ID:6FWg3.FBf6
🌻「っっっっきゃーっ♪ ブルボンさん大胆ですっ♪
ついに結ばれちゃったんですか? ウィナーズサークル入りですか?」

「いえ……最後の最後まで固辞されました。 キスを含めキス以上の行為は拒否されました」

🌻「えー、残念です。 」

「ですが、互いにソファに寝ながらのハグはとても新鮮でした。 マスターも最初は抵抗してたのですがしばらくすると、私のハグを受け入れてくださり――」

🌻「うわー、もっと聞かせてくださいブルボンさん」
206 : 使い魔   2025/04/20 21:48:30 ID:6FWg3.FBf6
予防接種終わり、続き明日以降
207 : あなた   2025/04/21 06:48:46 ID:QC1k5eXN2.
『さて、朝日杯も獲って、このまま皐月賞に直行、のつもりだったが
――1戦挟むぞ。 G2スプリングステークス。 1800Mな』

タンタン、とホワイトボードを叩く音。

『正直これだけのハードトレーニングをしてる中レースに出走はしたくない。
しかし第一目標の皐月賞までくると相手もG1級だ、その中でぶっつけ本番でハナを切った逃げをするかどうかをここで決める。
合わせ――並走を一切してないからな。このレースを含めてレースの感覚を本番で覚えてもらうってのも理由の一つだ。』

出走メンバーを書き連ねていく
『最大のライバルはラジオたんぱ覇者、共同通信杯2着のノーザンコンタクト。
小柄だがその末脚はかなりのもんだ。 』

『それにサクラ軍団――ヴィクトリー倶楽部に所属していたサクラバクシンオーもここをトライアルに使ってくる。
実績は1勝クラスで特別のみだが、ハナを切った逃げにもかかわらず上がり3Fで34.6をマークしてる、あとお前とおなじ先行、逃げだ。 おそらくハナを奪い合うライバルになる』

ノーザンコンタクト・サクラバクシンオー・ダイヤーエース・ライスシャワー・マチカネタンホイザ

「……あ」
『どうした?』
「ライスシャワーさんも――出走するんですね」
208 : 大将   2025/04/21 07:09:43 ID:QC1k5eXN2.
『なんだ、知り合いか。』
「はい。 ライスシャワーさんは小柄で可愛らしくてとても優しい方です。 とても、仲良し、な関係です」
『で、競争能力的には?』

「……」

『……はあ、お前、三冠目指すんだろ? ライスシャワーやサクラバクシンオーとも戦って勝つのがお前の三冠ルートだ。』

「……はい、すいませんマスター」

『……今回スプリングS出走は大正解だったみたいだな。 ブルボン、今後は出来るだけハナを切れ。 友達だとかに気を使ってレースをしない一番の方法は最初からハナ切って並ばせずにゴールすることだからな。』

「はい。 あの、マスター」

『なんだ?』

「委員長、いえサクラバクシンオーさんは」

『ああ、そっちは俺が知ってる。 確か学級委員長してるって言ってたな。
こんなんだろ? ……ちょわっ!?』

トレーナーはサクラバクシンオーのマネをしてみせる。 手の動きまでそっくりだ
209 : あなた   2025/04/21 07:22:51 ID:QC1k5eXN2.
『まあ、トレーナー同士同じ学園内のトレーニングだからな。 有力なライバルの偵察ぐらいはするさ。
最近、こんな場末の空き地みたいなとこに人が増えたろ? 殆どがお前のトレーニングの偵察だぞ』

見られたところで何かが変わるわけもない。
むしろ、この大坂路のトレーニングはマネのしようもないだろう
せいぜいが学園公式の坂路トレーニングの予約が埋まる程度だ
今更坂路は増やせない――しかしこのトレーニングを見て、結果を見れば必ず要求は増えるだろう

――坂路トレーニング場を増やして欲しい――と

『ま、俺もコンタクトちゃんや、いいんちょのトレーニングぐらい見に行ったさ
そしたら本人につかまっちまってな。』


――おやおやおやおや! 最優秀ジュニアウマ娘ミホノブルボンさんのトレーナーさんではありませんか! この学級委員長の偵察でしょうか!
――いいでしょう!! この学級委員長逃げも隠れもいたしません!!さあさあトレーニングの偵察なり私にインタビューなりしてください!バクシン的にお答えしますよ!

『まあ元気なやつだったなあ……聞いてるこっちが疲れたわ』

「バクシンオーさんはいつも元気な方です」
210 : あなた   2025/04/21 07:36:16 ID:QC1k5eXN2.
『で、まあノーザンコンタクトは後ろからのレースだから置いといて
ハナを取るのは大前提で、序盤をわざとややハイペースにする
――サクラバクシンオーにさっさと潰れて貰うぞ』

「……バクシンオーさんを……潰す」

『何度かトレーニングを見させてもらったが、あいつは間違いなくスタミナ不足だ。 まあ元々短距離向きなのかもしれないが、明らかにスタミナが足りてない。 今回の1800Mはいっぱいいっぱいだろうな。 それでもジュニア期で上がり34秒を出した脚を持っている実力者だ。 だからそのスパートをさせなくする。
お前がペースを作って逃げ潰せ』

『逃げ同士でつぶしあいはご法度だが、お前には最強の体内時計がある。お前が自滅することはないだろう。』

「………オーダーを承認します。」

『辛いか? 友達をこうやって潰すのは』

「……はい。 ですが三冠を穫るためです。」

『そうだ。 タックルや悪質なブロック、違反ギリギリの進路妨害をする必要はない。 ライバルたちを正々堂々と――その逃げと心臓で潰すぞ、ブルボン。 お前の背中を掴ませさせるな』

「了解しました、マスター」
211 : アナタ   2025/04/21 07:49:11 ID:QC1k5eXN2.
「あの」
『ん』
「ライスシャワーさんは……その」
『友達、だったっけか』
「はい」
『んー……』

正直言ってデータを見る限り、力不足。 ミホノブルボンの敵ではないしこのレースで善戦出来るウマ娘に見えない。
とはいえ、友達を酷評するわけにもいかないだろう

『お前のほうが強い』

と答えるのが精一杯だ。正直同じレースを戦う者同士を同じ学級や空間で共同生活をさせるのはどうなのだろうと思う。

「……はい」
『さっきもいったが、レースではいくらでも"勝たせない"ためのテクニックがある。 タックル、進路妨害――走りにくくするために肘を開いての双方。
わざと蹴り足を深くして相手に泥や土を被せるなんてものもある。』
「………」
『審議や処罰うけなきゃ勝ちは勝ちだ。 卑怯だとは思うが本当に勝ちたければそういう事もある。 だがお前にはやらせるつもりもない
正々堂々ってのは綺麗事すぎるが、お前の逃げで全部潰せ、背中を捕まえさせるな。 友達であろうとなんだろうと、それで全部カタがつく。
スタートをしくじらずに最初の先頭争いを制してそのまま1着でゴールすれば互いに汚い手段もへったくれもない』
212 : キミ   2025/04/21 08:02:15 ID:QC1k5eXN2.
『その、ライスシャワーってのはそんなに頑張ってるのか』
「はい、彼女は少々内向的な性格ですが、いつもいつも頑張っています。
状況をエミュレートします」

右手をまっすぐあげて伸ばしてから、両手を胸辺りにおさめて

「がんばるぞ ライスがんばれ、おー」

「――と、いつも自身を鼓舞してます。 私は三冠を獲りますが――彼女にも頑張ってほしいと、ステータス"矛盾"を抱えています」

『あー、いいんじゃね?いいじゃん、友情、努力、勝負だっけか。ウマ少女スポ根の合言葉って。 ブルボン、三冠ってすごいじゃん?』

「はい、三冠ウマ娘は過去にもいますがすべて伝説のような存在です。 栄光と称賛を受けるに値する最強のウマ娘たちです。」

『じゃあさ、なんで三冠ってすげーんだろうな?』

「?」

『2000Mのレースなんていっぱいある。2400Mだってそうだ。
現状長距離レースは開催数は少ないが実際最長は天皇賞春でも菊花賞でもないG2の3600Mだ
でも三冠ってのは皐月賞・ダービー・菊花賞だろ? 』

「それは……」
『皐月賞、ダービー、菊花賞、それぞれみんなすげーやつらが来るからな。
菊花賞は距離的にきつくても2000Mなら、今の仕上がりならってその時の一流どころがあつまって。
中央レースの祭典、一生に一度の晴れ舞台のダービーをクラシックの大目標にしてるトレーナーや一族だっている。
更に春には間に合わなくても夏、秋で実力を開花させた奴らはスタミナ豊富な奴が多い。 そいつらが最後の1冠菊花賞になだれこんで下剋上を狙ってくる』


『どのレースも強者がひしめいてたった一人の1着を狙う。 誰一人弱いやつなんかいない。ワンチャンあれば最低人気でも1着を狙ってくる。
それが皐月賞、ダービー、菊花賞――一生に一度のクラシックだ』
213 : キミ   2025/04/21 08:06:31 ID:QC1k5eXN2.
『なんで三冠がすげーかってさ、強い奴らがわんさか集まるんだよ。
だからそこで一着になるってのは特別な事だし、それを全部勝ったやつは伝説になるんだ。
お前が夢見た三冠ってのはすげーから三冠なんだろ?
だったら、そこに出走するライバルが強いほうが――勝ったお前はもっと凄いし、三冠らしいだろ。 弱いやつしかいないレースで当たり前にかった栄冠より、よっぽど価値がある』

『だから、いいんじゃねえの? ライスシャワーがいっぱい頑張るのもさ。
頑張れーライスってやってたら、がんばれーライスって言ってやれ。』

トレーナーは、ブルボンの頭をぽんぽんと撫で

『お前はそれより頑張ってライスシャワーに勝てば良い』

「はい、マスター」
214 : 大将   2025/04/21 08:27:58 ID:QC1k5eXN2.
「ライバルの君に相談していい話ではないのは承知してるんだが……このままではライスシャワーが故障してしまう。助けてくれ」

ライスシャワーのトレーナーが頭を下げてきた。
正直他所様のウマ娘事情に首をツッコミたくはないしライスシャワーはクラシック戦線をともに戦うライバルだ

🤖「マスター、ライスさんを助けてください。 バッドステータス:心配 です」
『………まあ、話を聞くだけでもいいなら』

「最近ライスシャワーがオーバーワーク気味でね、どうしてもスプリングSでミホノブルボンに勝ちたいって制止を聞かないんだ。」

『……まあ、故障はだめッスけど、それ当のライバルとそのトレーナーに言われてとまるもんじゃないでしょ』

「それはその通りなんだが、ミホノブルボンが超ハードなトレーニングをしてるのは有名な話なんだよ。 最近じゃ彼女はロボなのかサイボーグなのかと言われているぐらいだ」

🤖「肯定、それは正しい情報です。 私はロボットでありマスターの手によって改造されたウマ娘サイボーグです。」

『あーいいからいいから。で、それがライスシャワーとなにか?』

「まあ、そのミホノブルボンに触発されたというのが問題なんだが、そのハードトレーニングを無故障で続けてる君というトレーナーの手腕も話題になっていてね」

『そんなの明らか俺の手腕じゃないじゃないスか。 ミホノブルボンが滅茶苦茶丈夫なだけでしょ、ライストレさんならそのぐらい分かってるでしょうに』

「ウマ娘たちからしたらそうは見えてないって話だ。 俺達からしたら無茶なトレーニングに見えても彼女たちからしたら君は今ゴッドハンドのような扱いをされてるんだよ」
215 : アナタ   2025/04/21 08:54:52 ID:QC1k5eXN2.
『ああ、そういう……』

ジュニア級というのは才能とセンスで1年を終えることもよくある。
名家だったり話題性のあるスターが入学しそのままジュニアの最優秀になって、という王道パターンだ。
無名なウマ娘が無敗で朝日杯を勝ち最優秀ウマ娘になれば、ウマ娘もトレーナーもそれなりに話題になるだろう

「僕はライスに故障してほしくない。 だから今のライスの脚の状況をみてもらって、遠回しにでもオーバーワークに釘を刺してほしいんだ。」


🍚「うわあ、うわあ、ブルボンさん!」
🤖「こうして練習場でお会いするのは初めてですね、ライスさん」
🍚「嬉しいな、嬉しいな。 ブルボンさんと並走できるなんて」
🤖「……」
『並走していいぞ、一本。 ただし一本きりな分一杯までやっていい』

「どう、ですか? ライスの走りは」

『身体柔らかそうですね。 バネも良いモノもってますよ。』

「素質は良いんだけど、結果が伴わなくてね。」

『……うーん』


🍚「はあ、はあ、やっぱり、ブルボンさんにはかなわないな、すごいな、ブルボンさんは……すっごく早いし――強いなって」
🤖「ライスさんも、いい走りでした」

『よーし、こっちこい。 ライスシャワー、ここに座ってもらえる?』

芝生の上、ブルーシートにライスシャワーを座らせて――おもむろにお腹を触る

🍚「うひゃうっ!? な、な、なっ?」
「ちょっとブルトレくん?」

『あー、やっぱ骨盤とかまだしっかりしてねえなあ。じゃあ次うつ伏せなって?』

🍚「あ、あ、あのおじさま? おじさま?」
『……ライストレさん教え子におじさまとか呼ばせてるんスね……』
「マスターと呼ばせてる君に言われたくはないよ!? それより急になにしてんの!?」
『え、触診スよ触診。 こうして骨や筋肉や内臓の成長確認してるんス。はい、次うつ伏せね。』
216 : お姉さま   2025/04/21 08:55:18 ID:QC1k5eXN2.
うつ伏せになったライスシャワーの背中を軽く押すようにマッサージしていきながら

『ふーん、じゃあちょっとくすぐったいかもだけど我慢してね―』

と、膝立ちのままライスにまたがっておしりのあたりを両手で揉む。


🍚「うひゃあっ? ちょ、ちょっとブルトレ、さん? きゃうっ」
🤖「……………マスター」
『黙ってろブルボンこちとら真剣なんだ。うんうん…なるほど』



『単に調子悪いだけ、ってかまだ未成熟なだけっすね』
🍚「へ?未成熟って」


『本格化はきたけどまだ内臓や骨盤の骨がしっかり出来上がってないって事。
だから今焦って強度の高いトレーニングをしても骨の育成に良くないから。
しっかりトレーナーが身体を造るメニューつくってくれるだろうから、それに従ってな』


🍚「まって、まってください。 でも、もうクラシック期で、その……」
『身体が出来上がるかどうかは個人差大きいの。 お前ブルボンに勝ちたいんでしょ?』
🍚「そ、そ、それは……その」
『なに、勝ちたくないの? ブルボンはスプリングS出るぞ。 多分バクシンオーやコンタクトも出る。 そこでブルボンを倒そうって思ってるだろうし、俺等は全員逃げ潰して1着を穫るつもりでいる』
『お前は? ……お前はミホノブルボンに勝ちたくないの?』
🤖「ライスさん」

🤖「私は、ライスシャワーさんと全力で戦いたいです。」
🤖「ライスシャワーさんがいっぱいいっぱい頑張って、努力してるのを知ってます。だから――ライスシャワーさんの全力と、戦って、勝ちたい」

🍚「私も……私もブルボンさんと戦いたい! 全力で、勝ちたいっ……!」
217 : お前   2025/04/21 09:01:01 ID:QC1k5eXN2.
『……じゃあ、今の全力でスプリングSにぶつかってこい。 勿論負けるつもりもないし、実力差を思い知らせてやる。 でも、レースはスプリングSだけじゃないからな
身体をしっかり作って、いっぱい頑張って……それでまた勝負してこい。
もし、ブルボンが不甲斐なければスプリングSで勝ってみせろ』



「すごいな君は。 触診だけであんな内臓や筋肉が未成熟だなんて」

『え? ああさっきの半分ぐらいは適当っすよ? そんなの医者でもあるまいしわかるわけないないじゃないッスか。』

「………………え?」

『まあでも、身体柔らかすぎでお尻からトモが甘いとか骨盤が弱いとかそのつなぎ目が細すぎて、体幹からしっかりつくらないといけないとは思いました。
あれであの走りができるってのは良い素質持ってると思いますよ』

「…え、えっ? さっきのは?ねえさっきのは?」

『でまかせ半分ですよ。 オーバーワーク、してほしくないんでしょ?
あの子はまだ身体できあがってないってのは間違いないんで嘘ってわけでもないスけどね。 春でしっかり身体できたら良いレース出来ると思います。』

「ええっ、君あんなに自信満々に触診してたじゃん!?」

『まあええ、あれはほらマッサージとかであるじゃないですか』

「普通は女の子のお尻をわしづかみにしてもまないよ!?」

『え、しないんスか?』

「しないよ!?」

『だめですよ、おしりからトモまでしっかりマッサージしないと』
218 : 使い魔   2025/04/21 09:09:52 ID:QC1k5eXN2.
トレーナー室で、トレーナーはミホノブルボンにじっと見られていた
無表情だが、なにかトゲのある雰囲気、オーラだけが出ている

『あー、うんミホノブルボンさん? 何をそんなに怒っているのか、ナ? 僕ぁ親友であるライスシャワーちゃんに適切なアドバイスをしたと思うん、だけど、ナ?』

🤖「ライスさんのおしりは、柔らかかったですか? マスター」
『ええ、お前もソレいうの?
確認だけするけど、俺がライスのおしりや太ももをベタベタ触ったのが気に入らないと?』
🤖「破廉恥です、マスター」
『えー……』

わきわきと動かす自分の手を見つめるトレーナー。
そのような意識がかけらもなかったが、確かにやっていることは、少女のお尻を触りまくっているということだ

『いや、俺お前のマッサージ毎日してるじゃん? なんかこう、お尻を触るのがいやらしい事とか考えもしなくなってんだよね』
『まあ確かにそうだなあ、うーんブルボンにマッサージしてたけどたしかに良くないよなあ、どうするか』

🤖「問題ありませんマスター。 マッサージの継続を希望します」
🤖「ところでマスター、マスターはお尻を触ることで性的興奮をおぼえないのでしょうか? 男性は乳、尻、太ももが好きだと」

『あー俺尻フェチではないんで。 安心しろ魅力とか関係なく邪な感情を抱いたりしない。大丈夫だぞ』

🤖「………」

『ねーなんでそんな不機嫌オーラ出すんだよ―、そんなエロオヤジみたいなのにケツさわれたくないだろブルボンだってさー、俺誠実に向き合ってるよねえ?』
219 : アナタ   2025/04/21 09:29:25 ID:QC1k5eXN2.
『いやさ、俺思ったんですよミホノブルボンさん』
🤖「?」
『世間一般のトレーナーはマッサージしても臀部までしないんだと。 でも臀部ってトモにも腰にもつながってるから俺はするじゃん?』
🤖「はい、マスターが悪意ある欲求で触れてないのは理解してます」
『ブルボンって理解あるし、そもそも距離近いじゃん?』
🤖「もっと縮めることは可能です。マスター」
『結構ですミホノブルボンさん、いやまあ、今日のライスシャワーもびっくりしてたし、俺ももうちょっとブルボンとの距離感かんがえないとなって
『確かによくよく考えたらセクハラだよなあって、まあでもマッサージはしますよ? 脚の疲労ぬくのはもう絶対に必要だし』
🤖「他の女性に配慮する分私とのスキンシップはもっとすべきだと進言しますマスター、マスターがケツフェチでなければ、おっぱいでも問題ありません。 私は86の54です。カップは」

『やめなさいやめなさいやめなさい。 ブルボンが魅力的なのは知ってるからかわいいから、やめなさい』
220 : お姉ちゃん   2025/04/21 09:34:18 ID:QC1k5eXN2.
『いつも言ってるけど、お前の本分は三冠なわけですよ。 わかりますよねミホノブルボンさん。』

🤖「はい、そのためのトレーニングでも良好な結果をだしています。 トレーニングは順調です、マスター」

『くそ、タイムも何一つ申し分ないしトレーニングもしっかり集中してるから言い返せねえ』

🤖「よって、その時間以外は私のメンタルややる気を向上させる事で今後更にトレーニング効率が上昇する可能性が高いのでミッション:らぶらぶちゅっちゅを提案します」

『しませんよブルボンさん。俺は犯罪者にはなりたくないんですよブルボンさん』

🤖「なぜですかマスター。 マスターには性欲がないのですか?」

『ありますよブルボンさんでもそんな話を教え子としたくないんですよ、わかってくださいブルボンさん』

🤖「わかりません。 モード力ずくを使用するか、協議が必要です」

『やめてね?マジで人生終わるからやめてね?』
221 : トレ公   2025/04/21 09:34:37 ID:QC1k5eXN2.
休憩
222 : お前   2025/04/21 13:09:35 ID:QC1k5eXN2.
『あのね、もう言っちゃったから言うけど、お前は美人だし身体もイイしハグしてると滅茶苦茶いい匂いすんの』

🤖「ッパアアアア」

『でもね、君は学生なの手を出したら犯罪なのバレなきゃOKって思うかもだけど世の中の犯罪ってのはみんなバレないようにしてバレてるんだよ俺は犯罪者にはなりたくない』

🤖「……ステータス:理不尽」
🤖「わかりましたマスター。 その代わりに――先程の「美人」「かわいい」「おっぱい大きい」「いい匂いする」を沢山言ってください。
そうしたら我慢します」

『やだよ恥ずかしい。あとお前はそういうの言ったらかかって我慢できなくなるから無しだ。 スプリングS圧勝したら考えてやっても良い』

🤖「ッパアアアア」
223 : キミ   2025/04/21 18:04:44 ID:O0V8.L1QMU
『さて――いい話ばかりじゃない。 今後の事もちょっと話しておく。』

🤖「はい」

『今回のスプリングSは1800Mだが皐月賞2000Mの前哨戦だ。 ほどなく日本ダービーが控えてる。
もし、スタミナ、距離適性が原因で敗戦した場合―――2000Mの皐月賞まで時間がない事から皐月賞を走り切るスタミナが足りてない。 と判断する。
――意味は、わかるな?』

🤖「――はい、クラシック路線を走りきれない、短距離路線への変更を考える、という事ですね。」

『随分あっさり言うじゃないか、三冠しか興味ないって感じだったろう』

🤖「私はマスターを信じています。 マスターが鍛え上げた脚と、心臓を信じています。 ですからそれを作り上げたマスターの判断に、すべて従います。
――三冠路線を諦めるとマスターが判断すれば、従います」

『……いいのか?お前の夢だろう?』

🤖「マスターは言いました。 才能があるウマ娘が頑張って、努力してそれで最強が集まるのがG1、クラシック戦線だと。ならば適正を考えるのは選択としては正しいと思います。
朝日杯1600Mの僅差が私の距離限界を示しているとの見解は見ました」

『個人的にはありゃヤマニンキセキが覚醒しすぎた感じだったけどな』
224 : お姉さま   2025/04/21 18:13:38 ID:O0V8.L1QMU
朝日杯のヤマニンキセキの覚醒した走りは限界を超えたものだった。
あと20Mあれば確実に差し切られていた。
ミホノブルボンの上がりは35秒5 良馬場とはいえ曇りの湿気の含んだ中山11Rとしては十分なタイムだが、ヤマニンキセキの上がりの走りはそれを凌駕した。

『限界を超えるってのはいいこっちゃないんだ。
事実ヤマニンキセキはあのあと骨膜炎を発症、この前の弥生賞で復帰したが走りに影響が出ていいとこなしの4着だ。』

――己のスピードの限界を超えればそうなる
――それはスタミナの限界を超えても一緒だ

『スタミナが切れれば上半身を支えられなくなる。 乗っていたスピードが支えられない身体と脚に一気に襲い掛かる。
当然故障すれば全てはパーだ。
これ以上の無理は出来ない。わかるだろ?
スタミナが足りなくてもレースは勝てない
――故障をしたらレースに出れない』
225 : マスター   2025/04/21 18:18:30 ID:O0V8.L1QMU
🤖「私は――マスターを信じます。 ですが、私はまだ、証明していまいません」

――スプリングステークスで、マスターに証明します。
――マスターが作り上げたミホノブルボンは、誰しもが認める最強のウマ娘だと言うことを

『……そうか。 わかった、まずスプリングSで俺にも証明してみせろ。 』

個人的には
皐月賞までのスタミナは鍛え上げたと思っている。
しかし、そこからさらに400M――その400Mの距離はあまりにも長過ぎる。
東京の長い長い直線。 あの直線を後続を突き放して走り切るスタミナ。
このスプリングSでもし――スタミナに不安が出れば、その400M いや600Mの距離は絶対に間に合わない
226 : モルモット君   2025/04/21 18:23:22 ID:O0V8.L1QMU
『……準備はできたか、ブルボン』
🤖「――――」
『……ブル―――』

言葉を飲み込む。 ミホノブルボンは初めてレース前に瞳を閉じて、集中していた。
しばしの沈黙のあと、ミホノブルボンは目を開き、立ち上がる

🤖「システムオールグリーン。 ステータス:超絶好調
ありがとうございます、マスター
――今日は最高の状態だと言えます。」

『……おう』

ミホノブルボンはあまりレースでの自意識が過剰な方ではない。
しかし今日のミホノブルボンには強い自信と――強者がもつ威圧感、風格というものがあった。
最高の状態、というのは間違っていないようだ

『いってこい。 2枠4番、偶数番号はゲートインから開くまでがはやい。 逃げには絶好だ。』

🤖「はい、マスター」
227 : お兄ちゃん   2025/04/21 18:33:58 ID:O0V8.L1QMU

>>226に表記ミスがありました。 スプリングSの枠順は1枠1番です。訂正してお詫び申し上げます

『どうですか、ライスシャワーの仕上がりは』

「ああ、悪くはない。 悪くはないがまだ万全じゃないね。 君の言う通り今は身体を作り上げることにしてるよ。 皐月賞までは苦戦するだろうね。
今日のミホノブルボンの調子はどうだい?」

『世辞抜きに最高ですね。 集中もしてました。 これで万が一スタミナ足りなくて負けるようなら――』

「……短距離に転向かい? 惜しいね。 でも、今日は枠番も味方してる。
中山の1800Mはスタート直後がコーナーだ。 1枠1番は良い枠順だろう。」


一瞬、互いの言葉が止まって――
ゲートが開いた
228 : トレーナー君   2025/04/21 18:46:27 ID:O0V8.L1QMU
🌸「バクシン的……ロケットスタート!」

最高のスタートを切ったのは4番サクラバクシンオー
そのまま先頭を伺い――

🌸「ちょわっ?」

スタートはバクシンオーに劣ったものの、一足、二足と加速して先頭に立とうとするサクラバクシンオーに並ぶ

🤖「――ッ」
🌸(なんという加速、なんというバクシン! しかしスタートでそんな加速をしては1800Mという距離が保つのですかブルボンさん。コーナーが目の前ではこれ以上は競れませんね……バクシン的撤退です。二番手から脚が鈍ったブルボンさんを差します)

――第一コーナーに来てまだ加速してますの?
――ミホノブルボンさん、貴女は中距離――1800Mを甘く見てますわ


『ノーザンコンタクトは抑えたな。 さすが名家の一族、ハイペースには付き合わないか。』

「重賞で2000M勝利、1800Mを2着。 1800M以上のレースの経験があるからね。 ジュニアに多いマイルまでのペースでは通用しないのが分かってる。」

『さすが、ミホノブルボンを抑えての1番人気だ。』
「それにしても――はやすぎやしない? 今日、不良馬場に近い重馬場だよ?」
『……俺もそう思います。 ですが、ミホノブルボンが掛かってるとは思いません』
「途中で息をいれるにも、もうバックストレートに入ってる」
229 : トレぴ   2025/04/21 18:52:08 ID:O0V8.L1QMU
――キミの適性は短距離だろう
――三冠路線なんてもってのほかだ
――まず、OPクラスまで無難に勝つ方法を

短距離適性しか無い、並のウマ娘
それが私、ミホノブルボン
でも――今は違う。
マスターに出会って――マスターが私を最初から作り直してくれた。
あの人の作り上げた脚は、心臓は――最強なのだと
私が思う三冠への夢と同じぐらい――証明したい
――マスターは、最高のトレーナーなのだと

🍚「――ッ、だめだ、今いかないと――きっとブルボンさんは垂れてなんかくれない」
🌸「……ええい、ッこれ以上は離されません、離されませんとも、私は学級委員長!私はサクラバクシンオーなのです!」

――だから! そんなペースで1800Mを走りきれるわけないじゃないですの!
――そんな甘いレースじゃない、距離が200M変われば別世界なのがレースですの!
――でも
――もし――ミホノブルボンさんが―――
――もし――このまま垂れ落ちなかったら?
――あり得ない
――だって追走してる子たちの表情だって精一杯だ

――ついていくだけで潰れてしまうなんて相手――そんなのはありえませんわ
230 : アナタ   2025/04/21 18:57:50 ID:O0V8.L1QMU
『……俺は、1800Mなんかでミホノブルボンがいっぱいになるって思ってはいなかったんスよね。 スタミナの壁に悩まされるのはきっと、日本ダービーぐらいかなって。』

「いや、しかしこのペースは……サクラバクシンオーが、もう表情からして限界だ。 後ろの子たちがスパートをかけたら」

『できます? 今日、ほぼ不良馬場なんですよね?』

「……まさか、彼女は」

『俺は、逃げ競るサクラバクシンオーを潰せとは言いました。 でもあれじゃ
――ついてくるウマ娘全員潰すような、走りじゃないですか』


――背中が遠い
――なのに、あの背中は、トモは大きく見える
――これが強者の、背中
――ついていくのがやっと、ううん、気を抜いたらライスも潰れそう
――でも――ついてく――――ついてく!
――今日は勝てないと思う。 それでも
――今日、ついてければ――いつか勝てるから
231 : あなた   2025/04/21 19:08:12 ID:O0V8.L1QMU
🌸「負けません、学級委員長として! 負けま、せんっ」
🍚「バクシンオーさん……ライスは、ついてく、絶対に、絶対に!」
🌸「っぷ、あっ」

第四コーナーを回ったところで、ライスシャワーに並ばれたサクラバクシンオーの顎があがった。 完全にいっぱい――スタミナ切れだ。

「サクラバクシンオーがいっぱいだ! ミホノブルボンは!」

『まだです! まだ! ほらブルボン、最後の一本!! 四本目だ!!
いけ!いけいけいけいけ!!』

重馬場としては異様なペース
サクラバクシンオーが追走しきれず潰れ
後方待機の殆どのウマ娘が差を縮められない――追走だけでいっぱいなのだ
そんな――後方待機で潰れたウマ娘に囲まれ沈んでいくノーザンコンタクト

――どいて、どいてっ!
――私はまだやれる!このために耐えてましたのに!
――邪魔をしないで、私はここから――勝てるのにっ!!


「ノーザンコンタクトは――バ群に揉まれたか」
『進路妨害もへったくれもねえ、完全に潰れたウマ娘の下敷きだ。 あれじゃ進路がない。 ブロックするつもりもねえんだろうが、進路ミスだな』
「いや――外に出た子いるぞ――マチカネタンホイザ」
『ああん!? あいつ目立たないと思ったらいつの間に外に?』

最後の直線
ミホノブルボンが先頭で――しかし外にはマチカネタンホイザ
そして――ずっとミホノブルボンについてきたライスシャワーが内から出てくる

「ライスシャワーの進路が開いた! 」
『ブルボンっ!最後の一本!』

「いけっライス!ライスライス!!」
『ブルボンッ!!!』
232 : 貴方   2025/04/21 19:16:52 ID:O0V8.L1QMU
🕷️「ふん、ふん、ふん――ドロドロバ場は走りづらいけど――でも、外は走りやすそう~……じゃあ、行きますよブルボンさん。むんっ」
🍚「ブルボンさんっ……行きます」

ここまでのハイペースでも潰れなかったウマ娘たちが最後の直線でミホノブルボンの背中を捉えようとラストスパートを仕掛ける。
しかし

――マスター
――証明できました
――私にはこの直線を走るだけの力が残ってます

🤖「ギアチェンジ――モード:ラストスパート システム――"四本目"」

ダンッ

🕷️「…うっそ、ぉ~……む、むんっ!!」
🍚「まだ、スパートが出来るの!? 届かない――ううん、どんどん離される」


「……たまげた。 ちょっと強すぎる」

『いや、俺もちょっとビビってますよ。 あのペースで押し切るのかと思ったら――直線で更に伸びやがった』

「ライスシャワーも直線までしっかりついていって内のいい位置から伸びた。正直ありゃだめだ――次元が違う」

『いや、凄いっすよね。ブルボン、すごいっすね……
っしゃあっ! どうだ、俺のブルボンが!こんなにも強いっ!!よっ……しっ!!』

「そんな全力でガッツポーズするトレーナー、始めてみたよ。 キミは、良いトレーナーだ。」
233 : トレぴっぴ   2025/04/21 19:23:55 ID:O0V8.L1QMU
――強い!残り200で差は5バ身いや6バ身!さらに差を広げてゴール
――圧勝ですミホノブルボン!これは強い!
――圧倒的な逃げ切り!

場内は歓声とどよめきに包まれている
あまりの強さに、観客もどのような反応をしていいかわからなかった。
重バ場のレースとは思えないペースでレースを引っぱり、直線に出る頃には追走するウマ娘たちが潰れていた。
それを追走しきったウマ娘のスパートを上回る直線の豪脚

淡々とレースをこなした
というにはあまりにも強すぎるミホノブルボンの圧勝だった。


🤖「戻りました、マスター」
『よし、タオル。 後ろ向け全部拭くから。
全部拭き終わったらまず着替えろ。 ライブ用の勝負服で今日はライブするぞ。』

🤖「あの、あのマスター」

『いいから、まず身体拭いて、アイシングとマッサージだ。
よくやった。 本当によくやった。
今気を抜いたら全部やるべきこと忘れて全力ではしゃいじまいそうなんだ。
先にマッサージとアイシングだけさせてくれ。 あとでいつもの100倍はほめてやるから。』

🤖「……はい、マスター」
234 : 貴方   2025/04/21 19:32:18 ID:O0V8.L1QMU
――ミホノブルボンさん

ライブが終わって、声をかけられた。
きらびやか、という雰囲気の似合う、お嬢様といった雰囲気のウマ娘、今日の一番人気だったノーザンコンタクトだ。

――なんなんですの……あの、あの走りは、なんなんですの!?
――あんなペース、保つわけがありませんわ。 なのに後続がバタバタ潰れていって、それなのに先頭を走る貴方はさらにスパートをして
――貴方は、なんなんですの!?

よほど、ショックだったのだろう。1800Mも2000Mもすでに経験していた彼女にとって、まるで別次元のレースだったことに。

🤖「……私は、ミホノブルボンです。
三冠を穫るために、この脚と心臓を鍛えてきました。
だから、このレースも勝てたんです。」

――このレースは三冠のための踏み台?

🤖「いいえ、否定します
今の私に出来る最高のレースでした。 それでも――まだ強くなる必要性があります。
皆さんも、これからどんどん強くなります。 今勝てた相手が、今度はもっと強くなります。 ライスさんも、マチカネタンホイザさんも
――ノーザンコンタクトさん、貴女も。」

――――私達が、まだライバルだと?

🤖「私も最初は弱いウマ娘でした。 ですから――今勝った相手に次も勝てる保証は存在しません。 全員が、強敵です。」

――は、ははっ
――潰れたウマ娘にブロックされて轢かれた私もライバルだっていうの!?

🤖「はい。 貴女も強敵です。ですから―――」

🤖「次も―――負けません。」
235 : 貴方   2025/04/21 19:35:24 ID:O0V8.L1QMU
🍚「ぶ、ブルボンさん!!」
🤖「ライスさん」
🍚「ぜ、全然勝負にならなかったよ、えへへ……ブルボンさんは、やっぱすごいな、強いな……」
🤖「内から黒い影が見えました。あれがライスさんだったのですね。」
🍚「え、き、気づいてたの?」
🤖「はい」
🍚「すごいな、ブルボンさんは」
🤖「ライスさんも――あのペースをずっと付いてこられるのはプレッシャーを感じました」
🍚「そ、そうかな? ライス、頑張れた、かな……」
🤖「はい、とても」
236 : トレーナー君   2025/04/21 19:44:28 ID:O0V8.L1QMU
『ライブお疲れ、脚や腰に違和感はないか?』
🤖「ありません、マスター。」
『よし、ここ今日は使われないらしいし許可もらったからもう少しマッサージしていくぞ』
🤖「マスター」
🤖「今日のレースは、証明になりましたか?
――私は、マスターが最高のトレーナーだと、証明できましたか」

『……っ、あーもう、お前は自分の三冠のことだけ考えてろ』

🤖「っ、マスター」

ぎゅうっと、強く抱きしめる。いつものように頭を撫で回したり背中をたたくような事もせず、ぎゅうっと強く、深く抱きしめる

『びっくりした。 驚いた。 ブルボンがこんなに凄くて強いって、いつもトレーニングを見てる俺がびっくりしたんだ。
本当によくやった。 本当にすごかった。 証明なんか要らん、お前は誰がなんと言おうと最強のウマ娘だし、今日レースを見たやつはお前が最高のウマ娘だって思ってるさ』

――嗚呼
――私は――マスターに出会えて、よかった

🤖「マスター……」
『ブルボン――』

ミホノブルボンとトレーナーは見つめ合い、ゆっくりと顔を近づけ

『――あぶねえ!?』

ギリギリのところでトレーナーが離れた
237 : アネゴ   2025/04/21 19:48:45 ID:O0V8.L1QMU
🤖「…………マスター それはバッドステータス:空気読め なのではないかと進言します。」
『うるせえっ!うるせえうるせえ!! あぶねええええっ、ほんとに危なかった!!!』
🤖「……」

上気した頬、潤んだ瞳、ハグで伝わる柔らかい身体、甘い匂い
――間違いを犯すとこだった
心臓破りの坂をのぼったように心臓をバクバクバクバクさせて、トレーナーは

『ほら、これ見てみろこれ! 触ってみろ』

🤖「あっ、マスター……?」

『心臓の音わかるだろ? 死ぬほどバクバクしとるわ、小娘が良い年した大人をときめかすんじゃない! 間違いはおこさないって約束だろう?』

🤖「……つまり、 これは――状況:惜しかった という事ですねマスター」

『間違いを犯すなって言ってんだよ!』
238 : トレピッピ   2025/04/21 19:56:44 ID:O0V8.L1QMU
『後でタクシー呼ぶから。 怒られるギリッギリまでマッサージするぞ。
学園と寮には事情説明してあるし許可貰ってるから門限は気にするな』

マッサージ用の寝台にうつ伏せになったミホノブルボンの脚をゆっくりとマッサージしていく。
お尻からトモの部分の筋肉の発達が素晴らしい。 鍛え抜かれた筋肉の張りと美しい曲線美が出来上がっている。
いいケツ、とかデカいケツ。というと性的に聞こえるがそうではなく、そういう丸いケツではなく、鍛えられたのがよく分かるトモまでの筋肉がそのままお尻に伸びてるというアスリートとして垂涎の臀部だ。

🤖「マスター、マスターは私のおしりには興奮しないのですか?」
『なんなんですか、ミホノブルボンさん突然のセクハラよくないですよ?』

ぎゅ、ぎゅ、とマッサージを続ける。

『ちなみに、トレーナーって基本おしりと太ももずっと見てるけど職業柄なわけで。 まあ勿論チチシリフトモモって言葉はありますよ? 男性はそういうとこをいやらしい目で見るのはまちがいないですよ?』

🤖「では、私のお尻には魅力がありませんか?」

『ちがうんスよ。 なんつーかほら……下着メーカー勤務の男性が女性用下着にそういう邪な視線をむけないような。 もうトモにどんだけ筋肉がついてるかとか大臀筋からトモのバランスはどうかとかで見てるからいやらしい目で見る習性が消えてるんスよね、多分俺だけじゃなく殆どのトレーナーそうよ?』
239 : トレぴっぴ   2025/04/21 20:03:14 ID:O0V8.L1QMU
🤖「……そうですか、残念です。 マッサージのたびにマスターの理性を削れると思っていたのですが」

『あのね、最近は女性から男性へのセクハラも認められる世の中だからね? やめようねほんとにやめようね。
それにしても、こうしてトモとかをマッサージしてると、だ』

🤖「?」

『脚にも腰にも、いい意味ですっげー筋肉ついたなって。 手に余るというかマッサージ出来る範囲がどんどんどんどん狭くなる。
前はここ手のひらで届いたのになって――お前ほんとに頑張ったんだなって』

🤖「はい……頑張りました。」

『次――皐月賞だな』

🤖「はい、 三冠の1つ目です。」

『今日より200M長い。 朝日杯より200M長かった今日、どうだった?』

🤖「……200Mは、予測より遥かに大きな差でした。
結果、7バ身差でしたが最後はとても心配――スタミナがいっぱいでした。」

『ああ、もうすぐに皐月賞で、さらに200M伸びる。 』

🤖「問題ありません。 ペースとデータを更新し最適なラップを割り出します」
240 : 大将   2025/04/21 20:06:17 ID:O0V8.L1QMU
『よし、そろそろ帰るぞ。 タクシー呼ぶからちょっとまっていてくれ』

🤖「マスター、ご褒美のハグは」

『さっき滅茶苦茶したじゃん。 キスまでしそうになったじゃん』

🤖「マスター、今日私はとても頑張りました。 とてもとても頑張りました」

『くそ、要求の仕方覚えやがって。 もう帰らなきゃいけないからおしまいです。 おしまい』

🤖「……」

『ま、今度また俺の部屋にきて、いっぱいご褒美やるから。 今日は確かにすげーレースだったもんな。感動したよブルボン』

🤖「ッパアアアア」
241 : お前   2025/04/21 20:06:36 ID:O0V8.L1QMU
スプリングSおしまい
242 : トレーナーちゃん   2025/04/21 20:07:04 ID:O0V8.L1QMU
今日はだそくなしで明日以降に次話書きます
243 : トレピッピ   2025/04/21 20:15:56 ID:O0V8.L1QMU
>>1です
閲覧ありがとうございます。 今回の枠番のミス、申し訳ありませんでした。
また史実をご存知の方は実際のレース内容と違う部分があります。
マーメイドタバン・ダッシュフドーなど史実でライスシャワー、マチカネタンホイザより上位入着したウマが登場してない部分は、

・文字だけで表現することで発言や心理描写の混戦が起こる
・この掲示板の文字数制限改行制限で細かく描写ができない

などの都合であえて登場させていません。 筆者の表現限界と思いご容赦いただければと思います。
今後も、このような史実との乖離、ご都合主義による史実、アプリストーリーとの乖離、改変などありますが、どうぞ暖かくスルーしていただければ幸いです
244 : アネゴ   2025/04/22 18:03:17 ID:HcyNelBreg
『皐月賞――G1――かあ』

スプリングSの圧勝から1ヶ月にもならない。
しかしスプリングS以外のトライアルから続々と出走登録は出ている
人気薄ながらOP、重賞と連勝。 その報知新聞杯ではヤマニンキセキ、サクラワールドオーを破って2000Mを勝利したアサカリーゼント
OPクラスを2勝、クラシック期に入って実績を詰むナリタタイセー
勿論、ライスシャワーやマチカネタンホイザも出走表明してきた
堂々たる顔ぶれ、人気の上位から人気薄まですべてが強者

――ミホノブルボンさんは初の2000Mという事ですがどうですか?
――距離の壁に苦しむのではありませんか?
――トレーナーとして彼女の適正に合わせ短距離路線を進ませないんですか?
――彼女に2000Mは走れますか

記者会見とかいう大仰なものは初めてだったが殆どがネガティブな距離への不安の質問ばかり。
うっとおしい、だめだと言おうがスタミナは余裕だと言おうがレースは変わらないのだ。もうここまできたら走るしかないのだから。
スプリングSのあの圧勝を見てもこれだ。 半分以上は話題性のためのゴシップなのだろうが、ここまでくると黙って見ていろと怒鳴りたくなる

――とはいえ、ミホノブルボンに逆風になるような事は言うつもりはない。

ゴシップであるなら最もそのような記事で盛り上げれば良い
短距離ウマ娘が距離の限界を超え三冠ウマ娘に――その方がよほどセンセーショナルだ。ファンも記者も、URAもすべてが一つの物語の体験者になる。
余計な事は言わず、その限界を、距離の壁を超えられるのがミホノブルボンだとだけ、記者が喜びそうな言葉を選んで答えておいた
245 : キミ   2025/04/22 18:10:13 ID:HcyNelBreg
距離の壁を、努力で克服した三冠ウマ娘
伝説的な存在、歴史に名を刻む事件だ。 ミホノブルボンはスターになるだろう

『……ま、あんだけ頑張ったんだ。 本当に三冠馬になったら、スターになるぐらいいいじゃんな』

「あの、ミホノブルボンさんのトレーナーさんですよね?」

『……はい?』

ミホノブルボンや自分よりちょっとだけ低い背丈
左耳にリボンのついたウマミミ
とはいえ学生ではない。 佇まいも体格も明らかにアスリートではない
太っている、というわけではないがアスリートのしまった筋肉質な体躯ではなく、ッ全体的に豊満、といった柔らかい雰囲気の女性だ

『あー、記者会見で話した事以外話せる事ないっスよ? 皐月賞は走りで距離の壁を克服してるって証明するしかないんで』

学園にまで入り込むとは随分熱心な記者だ。 パパラッチの類かもしれないがその時はさっさと警備員の方にお願いしよう
246 : アネゴ   2025/04/22 18:13:47 ID:HcyNelBreg
「ち、違うんです。 私――ミホノブルボンさんの特別なライブ――三冠グランドライブを企画したくて――」

『三冠、グランドライブ……すか?』

三冠ともなればURAも特別なセレモニーをするのだろうか? とはいえまだ皐月賞前なのに随分気の早い話だ。

「はいっ! ミホノブルボンさんは三冠ウマ娘になれるって信じてるんです! 私ちょっとしたファンです! トレーナーさんに是非お話伺いたいなって思いまして」


「私――イベントプロデューサー、URAのイベント企画をしているライトハローと言います」
247 : アンタ   2025/04/22 18:27:16 ID:HcyNelBreg
最初からライトハローの身の上を信じたわけではなかった。
ゴシップ狙いの記者ならいくらでも身分を詐称する。なので質問をした

――アンタはミホノブルボンのどこが好きなんだ?


『――はい、次のビール来ましたよライトハローさん!
今日は皐月賞の前祝い! はいかんぱーい!』
「かんぱーーーーい☆ ブルトレさんは話がわかる方ですね、素敵です☆」

商店街、小さな居酒屋

トレーナーはライトハローとすっかり意気投合して酒を飲んでいた。
明らかに身分をさぐるようなトレーナーの問いに、ライトハローは即答したのだ

――ケツです、お尻です! あんなすっごいお尻見たことありません!
――私スプリングSのパドックで見た時「うわ、尻すっご」って言っちゃいましたもん

トレーナーは尻フェチではない。しかしミホノブルボンというウマ娘を語る時、まずケツの凄さから語る人間は間違いなくミホノブルボンを理解してる。
鍛え抜かれたトモ、ハムストリングス、それを支える大臀筋
恥じる事なくここを絶賛する人間は間違いなく本気でURAに取り組んでる人物だ

流石にトレーナー同士でこの時期に酒はのめない。 ライバル関係になる陣営も多いからだ。 一人で居酒屋でちびちびも淋しいもの

そこに現れたミホノブルボンファンであろうライトハローと酒を酌み交わしガハハと笑うのは必然だった。

『いやあ、ミホノブルボンへの評価の第一声が尻ごっついなあとはライトハローさんはわかってらっしゃる。 はい、飲んで飲んで飲んで』

「えへへ、三冠ウマ娘のトレーナーさんにお酌していただけるなんて光栄です。」

『ライトハローさんも、学生時代はURAで走ってらっしゃったんですか?』
248 : トレーナーさん   2025/04/22 18:33:29 ID:HcyNelBreg
「はい、でも私は未勝利で終わってしまいました。 それでもURAのキラキラした世界に関わりたいなって――今回は表彰ウマ娘などの大記録や記憶に残るなにかを達成したウマ娘のセレモニーとして、特別なライブ――グランドライブを立案、企画して学園やURA関係者にプレゼンしたいなって」

『おおお、そりゃ凄いですねライトハローさん。 素晴らしいアイデアだと思いますよ、ご褒美のおかわりをどうぞ、まだ飲めますよね』

さすがにブルボンのように頭をくしゃくしゃぽんぽんはできない。
その代わりというようにライトハローのコップにビールを注ぐ

「んっ、…んく、んく――ぷはー☆ 今日は一層ビールが美味しい☆
さささ、トレーナーさんも一献、お注ぎしますよ☆」

『いやあ、こんな美人さんにお酌されるなんて光栄ですよ、おっとっと。
本人の意思は尊重したいですがセレモニーの件、トレーナーとしては勿論喜んでお願いしたいぐらいです。
それにブルボンの話でこんなに盛り上がれる酒なんてなかなかね、ほら――正直? ブルボンが? ぜーんぶ? クラシックとっちゃうからねえ!』

悪酔いである。 とはいえ本当はブルボンを自慢したくてしたくてしょうがないのだ。 とはいえトレーナー間だとG1の栄誉を奪い合う間柄、自分の担当の栄誉はそのトレーナーたちの雪辱の上に成り立ってる。
酒で騒ぐ時はあっても、自分の担当の強さ自慢はなかなかにできないものだ
249 : ダンナ   2025/04/22 18:40:52 ID:HcyNelBreg
「よっ、ミホノブルボン! 歴史上初の無敗の四冠ウマ娘っ☆」

『まあまあまあまあ、ほらライトハローさんグラス空ですよカラ、飲んで飲んで
――あれ? 史上初?』

「そうですよ☆ "皇帝"シンボリルドルフの無敗の三冠は朝日杯が入りません。
菊花賞まで無敗で行った時は――史上初の無敗の4冠です。」

『あー、そっすね。 そういや栗東寮でもすこし話題になっていたような』

「栗東寮?」

『ええ
トレセン学園って栗東寮と美浦寮ってありましてね
まあ昔からトレーナーも栗東ひいき、美浦ひいきってあるんですよ。
昔からの慣習なんでいがみ合い、みたいなのはないですけどね』

「へえ、そんなのあるんですね」

『で――シンボリルドルフは美浦寮――というか過去の三冠ウマ娘はみんな美浦寮だったらしいです。 まだ栗東寮からは三冠ウマ娘が出てないとか。
今回、ブルボンが三冠路線ってことで、ちょっとだけ盛り上がってるらしいんですよね。』

実際、美浦寮の方が新入生から人気があるそうだ。 美浦寮を希望してこぼれた結果栗東にくるとなればそれが誰かわからずとも栗東寮からしたら気分はよくない
あくまで気分の問題だが、ミホノブルボンに三冠を獲ってもらいたいと思ってもらえるならいい話だ
250 : ダンナ   2025/04/22 18:45:04 ID:HcyNelBreg
「でも、実際スプリングSみたいなレースならもう皐月賞も、ダービーも、貰ったようなもんじゃないですか? ブルボンさんって逃げでも序盤から直線まで全く同じペースで走れるような子じゃないですか。」

『お、お、お? ラップみました? わかります? いっやーブルボンの体内時計にきづいてくれるなんてライトハローさん流石だなあ!
おっちゃん、ハイボール大ジョッキでもってきて、あと唐揚げ!
じゃあちょっと、ミホノブルボン試験しちゃおっかなー、ライトハローさんのブルボン愛をテストしちゃうぞー』

「きゃー、お手柔らかにおねがいしますねトレーナーさん」

『正解したらジョッキ一本奢りますね、今日は何本でも飲んでいってください』

「やりますやりますやりますっ! 私のミホノブルボン愛語っちゃいます」




―――マスター、そろそろ明日の準備をしてはいかがでしょうか?
251 : アンタ   2025/04/22 18:52:55 ID:HcyNelBreg
冷水を頭から被ったら、このように人間は戦慄するのだろうか

勿論トレーナーは冷水など被っていない。 ミホノブルボンは間違っても実力行使に訴えるようなウマ娘ではない。
単に、静かに、とても静かに――後ろからトレーナーに声をかけただけだ。

『…………………ミホノブルボン、さん?』
🤖「…………こんばんは、マスター」
🤖「マスター」
🤖「質問に答えてください」
🤖「私は今冷静さを失おうとしてます、マスター」

『まって?ねえまって? ねえ今門限すぎてるよね? 』
🤖「寮長であるフジキセキさんに夜間外出の許可を頂いてます。」
『そもそもなんで俺がここいるって知ってるの!?』
🤖「マチカネタンホイザさんから伺いました。 商店街の方がここでマスターが女性と飲んでいると」
『い、いいじゃないスか、たまにはこう、ハメをはずしてもいいじゃないスか!』
🤖「明日はミーティングです。 そろそろ明日の準備をすべきです、マスター」

ミホノブルボンに首根っこを掴まれ、ずるずるとお会計に引きずられるトレーナー
ライトハローは呆気にとられたままそれを見送っていた
252 : あなた   2025/04/22 19:02:31 ID:HcyNelBreg
『えー、今日は皐月賞のミーティングです。
――だよね? なんで俺は床に正座させられてるの?』

🤖「……」
🌻「だめですよマスターさん、浮気はだめですよ☆」
🍚「お、女の人と夜のお酒とか、ライスよくないと思うな」

『ちょっとまって、俺下心なかったよ? ねえ俺ギルティなの?
ブルボン愛を語れるライトハローさんと酒のんでブルボンの話でもりあがってたんだよ?』

🌻「同じ趣味や好きを共有していつしか恋仲とかよくある話ですね」
🍚「うわあ…うわあ……マスターさんギルティだよぉ」
🤖「マスター、浮気はだめす。 浮気はだめです。」
🌻「ライトハローさんはどんな方でしたか?」
🤖「おっぱいもお尻も大きいかたでした。 目視での計測は90をゆうにオーバー」
🍚「ふ、ふえ、そんなのだめだよ、だめだよお」

『そういうのは女の子だけで語っててよ男を前に生々しいのやめてよお』
253 : トレーナーさん   2025/04/22 19:11:14 ID:HcyNelBreg
『商店街の刺客だったのか――マチカネタンホイザは。 くそ、いかにも無害な普通のウマ娘って感じなのにくそっ
ええい、俺はライトハローさんといかがわしい間柄じゃねえ、単に三冠セレモニーの企画を打診されてただけだ。』

🌻「セレモニー?」

『ああ、引退式とかあるだろ? あんな感じで三冠の戴冠式みたいな大きなセレモニーと大規模ライブをしたいらしい。 とはいってもまだ構想段階だし――ブルボンが三冠を穫るって前提の話だ』

🤖「三冠……はい」

『まあ、お前がそういう企画を受けるかどうかってのはあるがまずは目の前の皐月賞をとってからだ。 あと桜花賞おめでとうニシノフラワー!』

🌻「あ、はい。 ありがとうございます。」

『まあ、ニシノフラワーはティアラ路線というのが確定してる。 しばらくライバルとして戦う事はない。
だが?
ここに?
スパイがいるな? なああああ?』

🍚「きゃああああごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

わざと怖い声をだし両手をあげライスシャワーを脅かすトレーナー

『まあいい、他の奴に一切漏らさないこと。それだけが条件な』
254 : お兄ちゃん   2025/04/22 19:17:53 ID:HcyNelBreg
🤖「いいのですか? マスター、最終ミーティングですが」

『じゃあなんでライトハローさんの尋問とはいえライスシャワーを連れてきたんだ。
――どうせやることは変わらん。スプリングS同様に逃げて逃げて追走しても潰れるほどに逃げる。 速く仕掛けてきたらスタミナ切れ、遅けりゃ届かん。 非常にシンプルで潰しようがない戦法だし、そもそも手の内はもうスプリングSと同じなんて全員わかってる。 』

🍚「う、うん……おじさまも、ブルボンさんはスプリングS同様に最初から飛ばすだろうって」

『朝日杯のマイケルアーサーみたいな先頭じゃないと気がすまないってのがいない。 敢えてブルボン対策にハナを奪うような博打はブルボンの先行力を考えたら自爆行為だ』

スプリングSでも、スタートはサクラバクシンオーが上回っていた。
しかしそれでも、ミホノブルボンの先行力はサクラバクシンオーすらも上回っていたのだ。
255 : トレーナー君   2025/04/22 19:27:47 ID:HcyNelBreg
🌻「マスターさん、そもそもブルボンさんみたいな逃げより無理して前にいかなきゃいけないって事はあるんですか?」

『あるぞ――走り方が前傾姿勢や小柄で蹴り足のドロをもろにかぶるやつ
それで集中できないでイライラしたり掛かったり――自分のペースを保てなくなる逃げウマは結構いる。
あとは、シンプルに性格だな、バ群に入れない、競り合うのが苦手、追い抜きが下手、あとは――自分の前に他のウマ娘がいるのが気に入らないとか、走る気なくすとかだな。』

🌻「脚質って色々なんですね」

『例えば、過去に伝説となったダービーウマ娘はダービーで最初の1000Mで58秒6ってタイムで通過した。 誰もが明らかなペースの狂い、潰れると思われたが逃げ切った。 明らかにへばってるのに後続馬が詰め寄ると加速して決して追いつけない。
これだけ聞くと、どっかの誰かさんを思い浮かべるんだが』

🤖「……」

『実際、ペースは滅茶苦茶。 実のところを言えばこのダービーウマ娘は滅茶苦茶な怖がりでな、後ろの足音だけで心臓が跳ね上がるし並び掛けられると思うと恐怖心が湧き出したそうだ。 闘志むき出しで並走してくる相手が怖いと思い文字通り必死に逃げてただけなんだとよ』
256 : アンタ   2025/04/22 19:35:59 ID:HcyNelBreg
『まあ、ペースメーカーにされがちな逃げって戦法を好んで使うのは大体が性格的な理由とかそんなんだ。 怖がりなやつ、前や横に誰かがいると集中出来ないやつ。
――だが、ブルボンは違う』

『強いから逃げる。 丁寧に勝てるラップを刻んで追ってくる奴らが届かない、つぶれるようなレースをする。 追い詰められてもそこから更に伸びる。
戦術はシンプルに、それに勝てる方法がないから、強い』

🤖「はい、マスター」
🌻「こうして聞くと、ブルボンさんってとってもすっごい方なんですね」
🍚「ブルボンさん、やっぱ凄いな、凄いな……ライスも、頑張ってついてくね」
『ついてくじゃなくて勝ちにこい。 強いやつがG1勝つんだから。』
🤖「ライスさん、お互い全力を尽くしましょう。 たとえどちらが勝っても、すべてを出し切れるように」
🍚「う、うんっ! 頑張るねブルボンさん!」


その後

『――で、実際のとこ、どうだ? 調子は』
🤖「問題ありません、皐月賞は全力でミッションを遂行できます」
『そうか、レース間隔が狭いからな……しかもダービーまでも殆ど時間がない』
🤖「……」
257 : アナタ   2025/04/22 19:43:19 ID:HcyNelBreg
『……ブルボン、あくまで俺の見解だが――皐月賞よりダービーの2400Mがきなってる。 予想以上にお前は強くなった。
正直お前の脚も、トモも大したもんだよ。 クラシックでそんなに出来上がった脚をしてるウマ娘なんて他にいやしない。
お前のトモと脚をみるだけで、あれはミホノブルボンの脚だってわかるぐらい、お前の脚は凄いと思う。』

🤖「ありがとうございます、マスター。 」

『だが、まあわかっちゃいたが――筋肉ってのは重いもんだ。
走りにだけ集中させて、走りに無駄な筋肉は自然に無くしていって
今度はその必要な脚の筋肉の重さが、スタミナを奪っていく』

🤖「確かに――以前のようにタイムが一足飛びで良化することは少ないです。
以前より心肺への負担がどんどん減っていく実感は、なくなっていきます」

『ここから、2000M,2400M この400Mは、多分大きい。俺等が思ってるより、きっとな』

🤖「マスター、皐月賞を獲ったら――もし、皐月賞をマスターが納得行くレースができたら」


――ダービー、菊花賞のために、私に"五本目"を挑戦させてください
258 : トレピッピ   2025/04/22 19:48:57 ID:HcyNelBreg
皐月賞
中山2000M――もっとも"早い"ウマ娘が勝つと言われる三冠路線最初のG1
しかしクラシックすぐの4月に2000Mを"速く"走りきれるウマ娘は多くない。結局のところこの時期でもっとも速く、もっともタフなウマが勝つレース
早熟なだけでは決して勝てない。

――朝日杯でもギリギリだったんだぜ?
――でもスプリングSを見ろよ、あんなの普通のウマ娘じゃできっこねえって
――ミホノブルボンって短距離ウマ娘だろ? ただの早熟な子じゃねえの?


『気合は?』
🤖「上々です、マスター」
『調子は?』
🤖「絶好調――いいえ、状態:超絶好調です、マスター」
『今年の三冠を穫るのは?』
🤖「……私です、ミホノブルボンです」
『よおし、皐月賞いってこい!』
259 : トレ公   2025/04/22 19:54:50 ID:HcyNelBreg
――ミホノブルボン、あれが
――…………うわ、ごっつい尻……
――なんか、雰囲気あるね。

パドックで堂々と立つブルボンに、観客は勿論出走するウマ娘も呑まれている。

『ほんと、大したもんだ。
並、短距離、適正、散々言われて阿呆みたいに頑張る、努力言ってたひよっこが
――ほんとに強者になっちまった』

ゲートに入る
2枠4番――奇数からゲートインし偶数が後からはいる。 コーナーから近く、ゲートが開くまで短いそこは絶好の場だ

――集中――ゲートの、気配を――音を

「ミッション――コンセントレーション」

皐月賞のゲートが開いた
260 : お兄ちゃん   2025/04/22 20:03:20 ID:HcyNelBreg
ホーエーマーチがしたようなとんでもないロケットスタートというわけではない
するりとゲートから飛び出したミホノブルボンは――しかしたった数歩で並んだ一列から飛び出す

――各ウマ娘まずまずのスター……いやもうミホノブルボンが頭2つは抜けてる! とんでもない加速、ミホノブルボンがスタート数歩で先頭に立ちました

スタートのカンもいいが、あの加速は尋常じゃない。 無理やりの加速ではなくスタートから流れるように加速して一瞬でトップスピード。
このスタートの加速についていけるクラシック級は存在しないかもしれない。


――身体は十分軽い。 確かに徹底した坂路トレーニングで増加した筋肉は重いのかもしれないが、その筋肉は十分な推力をブルボンに与えている

――見ていてください、マスター
261 : 相棒   2025/04/22 20:08:05 ID:HcyNelBreg
🌻 「ペース、やっぱり速くないですか? 」
🌻トレ 「もうすぐ1000M……59秒8」
🌻 「っ、今日雨ですよ!? 発表は良バ場ですけど、こんなペースじゃ」
『……証明したいんだ』
『きっと、このぐらい重い場所で、こんなペースでも走りきれるスタミナがあるって、証明したいんだ。』

――五本目を、やらせてください。 ダービーまでの間だけでも
――私が、強くなったと思えたなら、させてください

『……くそ、ダービーまで全然ねえんだぞ。
残り400M、 どうすんだ』
262 : お兄さま   2025/04/22 20:13:21 ID:HcyNelBreg
自分には大した取り柄がない
クラスメイトからは怖がられる、上手く溶け込めない
表情をうまく顔にだせない。会話のリズムがあまり噛み合わない

――大人たちからは三冠路線を否定されて
――同級生からは、すこし距離を置かれた
――それが、最近は三冠路線を応援されるようになった。
――話をすると、ブルボンさんは怖そうにみえたけどいい人だって言われた時はすごく嬉しかった。
――頑張って、努力して、それを正しく努力するようになって
――自分がどんどん強くなれて、世界が変わった。
――ファンからも応援されるようになって
――クラスメイトからも皐月賞前には囲まれて沢山応援された


「っ、っ、ラップ、継続。100M――5.98」

――マスターは、私の世界を変えてくれた
――私の脚も、心臓も――世界を全部創り変えてくれた
――三冠のために、マスターのために
――もっと、もっと強くなりたい
263 : あなた   2025/04/22 20:19:28 ID:HcyNelBreg
――さあ第四コーナー、外からスタンドマン、セキテイドラゴンあがってくる
――しかし追走勢の脚色が辛いか、じわじわと差が開いてくる
――最後の直線、 差が縮まらない、むしろどんどん開いていく
――ミホノブルボン、更にスパート! 差が更に広がっていく!!
――はやい、はやい! 堂々としたスピードを見せつける、ミホノブルボン!
――圧倒的な強さをみせつけミホノブルボン、今ゴールインです!!!


――勝ったのはミホノブルボン! 無敗の5勝目皐月賞を圧勝です!!!


うわああああああああああああああああああああ!!!!
ブルボンつえええええええ!!
圧勝じゃねえか、距離の壁ってなんだったんだ!?

割れんばかりの歓声に包まれる
圧倒的な強さで皐月賞を逃げ切ったミホノブルボン
ついて行った後続がバテて潰れていくという逃げ
観客はミホノブルボンの三冠を期待し、歓声を送った
264 : お姉さま   2025/04/22 20:22:55 ID:HcyNelBreg
🤖「……マスター」
『よーーーーしよくやったよくやったよくやったよくやったよくやった!!
皐月賞制覇だ! 圧勝だったじゃねえかブルボン!
偉いぞ偉いぞ偉いぞ! 今日はマッサージして、帰りにうまいもん喰って帰ろう! 少しぐらい遅れてもちゃんと祝勝会だって寮にも電話してやるから!
…なんだったら明日は俺んちでずっと撫でててやるぞ』

控室――戻ってきたミホノブルボンをトレーナーが褒めちぎる
肩を何度もたたき、頭を両手でぐしゃぐしゃと撫で回し

――だが

「すいません――想定のラップを維持できませんでした。
最後の1Fでの急激な原則を、確認しました。」
265 : トレぴ   2025/04/22 20:27:15 ID:HcyNelBreg
脚が止まったわけではない
あのペースを維持できないのは当たり前の事だ
だが――そうではなく
あのペースはダービーを想定したペースなのだろう。 後続が追走できず潰れるようなペースで、しかもスパートしたように見えても
その実、後半は大きくペースダウンしている。 そのペースダウンの中圧倒的に早かったのがミホノブルボンであっただけだ

🤖「……マスター」
『…………だめだ』
🤖「しかし」
『言っただろ、五本は絶対させない。 今までだってずっとずっと無理をしてる。
筋肉が付いて坂路でも立派にスピードに乗ってる。 その分重くなった筋肉が脚にずっと負担をかけてる。』

『坂路4本、これでスタミナ切れならだめだ。 これ以上はさせない』
266 : 相棒   2025/04/22 20:32:31 ID:HcyNelBreg
わかってる
前半59秒8 トータルのタイムは2分1秒4
雨の中の良バ場としては十分立派なタイムだが、そのタイムの変化の方が問題だ。
2000Mをブルボンの完璧な体内時計をして、59秒8でかえってこれなかった。
スタミナ切れだ――400M伸びるダービーはわずか1ヶ月と少ししかない。
本当は、出来るんじゃないかと思ってる。
というか、やらないと完全なスタミナ切れで脚が止まる可能性がある。
2000Mの皐月賞は足が止まるまでに至らなかっただけで、400Mのびるダービーでどうなるかはわからない。

時間がない――ギリギリまでハードトレーニングをしても足りない。
6月になればクラシックから頭角を現したライバルがトライアルから参戦してくる


🤖「マスター、お願いします。 今のままでは――ダービーの勝率は大きく下がります」
267 : アナタ   2025/04/22 20:36:31 ID:HcyNelBreg
皐月賞から1週間後

――いつもと違う重苦しい空気で、大坂路の前にミホノブルボンが立っていた

『……いいか、タイムがちょっとでも悪いようなら途中で止める。
五本目登りきっても絶対に脚は止めるな。登り切るのが目標じゃなく目的は心肺の強化、登りきって心拍をゆっくり下げるクールダウン、インターバルまでセットだ。
脚に違和感、背中に違和感あったら即終了しろ。
――いいか? 目的はダービーだ。 五本こなすことじゃない、怪我したらダービーも終わるぞ。』

🤖「オーダー、了解しました」
268 : トレーナー君   2025/04/22 20:40:30 ID:HcyNelBreg
怒っているような、トレーナーの顔

🤖「大丈夫です、マスター。 マスターの作り上げた心臓も――脚も、まだ、戦えます。」

「よし――いくぞ、あと五本! 行って来い!」

――やりたくなんてない。
――博打をするなんて、しかも掛けるのが脚なんて、絶対にごめんだ
――こんなこと、本当にごめんだ。
――いいじゃないか、ダービーだって勝てる可能性はそこそこある
――相手がよわければ、ブルボンの逃げに焦ってくれれば
――ペースをうまいこと操って息をいれれば
――勝てるかもしれないじゃないか


――――かも、ではなく……私は三冠ウマ娘になりたいんです
269 : キミ   2025/04/22 20:44:54 ID:HcyNelBreg
――どうか、お願いします。 私に、戦わせてください

そう、深く頭を下げられた。
誰もがみとめる圧勝した無敗の朝日杯、皐月賞ウマ娘が、東日本ジュニア最優秀ウマ娘が――
まるで――未勝利のまま、脚を壊す前提で、たった一勝のために"壊し屋"に頼みに来るような、そんな頭の下げ方をされた。


『俺は――壊れず4本走りきったら――三冠穫れるって、言っちまったんだ』

だが、スタミナは足りない。 あと400Mを全力で走り切るだけの心肺がない
ミホノブルボンを最強たらしめるトモと脚の筋肉が、その重量が、そのスタミナをうばっていく。


『止まるなブルボン!! あと4本!』
270 : マスター   2025/04/22 20:47:34 ID:HcyNelBreg
この大坂路を2本やるのだってかなり過酷なトレーニングだ
シニアでだって常時やるようなもんじゃない
それをジュニアからずっとずっと4本やってきて

『あと三本! ペース落とすな同じペースで入れ!』

五本に増やしてもダービーまでに間に合うかどうかもわからない
危険ばかりでリスクばかりでリターンなんか殆どありゃしない

『あと二本! 走れ走れ走れ! 』
271 : 貴様   2025/04/22 20:52:47 ID:HcyNelBreg
いつもどおりのペース、いつもどおりの限界を超えるためのメニュー
しかし、ここから更に一本の追加、変則コースをおりていって、そのまま3角4角でゆっくり降りた脚を加速させていく


――ラスト一本! タイム出ないなら五本はさせないぞ行け行け行け!!

坂に入る前から今までの4本で心臓はパンクしそうだ
脚も腕も動くことを拒否してる

――レッド、レッド、危険、危険――危険

心臓が裂けそうだ、気を抜くと走ってるのか倒れるのかすらわからなくなる。
それでも、上半身をまっすぐ立て、早いピッチで大坂路を上がる

――私は、この坂で強くなりました
――この坂のお陰で、だから――もう一本、五本目を登りきって
――もっと、強く、強く――強く

目の前の坂が消える。
登りきった瞬間、坂が消え、視界が広がる
ミホノブルボンは、五本めを登りきって―――

――そして、その頂上でばったりと倒れた
272 : あなた   2025/04/22 20:59:03 ID:HcyNelBreg
心臓が、まだ痛い
――否定、心臓に痛覚はなく、しかし――心臓が痛いという表現以外の表現方法がありません。
頭の血管が、まだズキズキとする。
血液が脳に送られるたびにずきずきと疼くような痛みがする

――私は、何をしてたんだろう


『ブルボン! ブルボンッ!!』

坂路のゴール地点で、トレーナーに抱かれたまま倒れていた。
ゴールをした瞬間限界以上に身体を酷使した結果、意識を失って

(マスター……なぜ、そんなに泣いているのですか)

子どものように泣きじゃくるトレーナーに抱かれたまま、ミホノブルボンはぼんやり考える。自分は、トレーニングをして――坂路の五本目に挑戦して――五本目の頂上がみえた瞬間、景色が真っ白になって――

『ブルボンっ、返事しろ! ブルボン!! 』

泣きじゃくりながら、必死にミホノブルボンの事を呼ぶトレーナーに、手を伸ばす。

――泣かないでくださいマスター……私は
――私は、子供みたいに喜ぶマスターが、見たいんです
273 : トレピッピ   2025/04/22 21:01:35 ID:HcyNelBreg
『ブルボン! いいか動くな、今救護を呼んだ。 すぐ車両まわしてくれるって』

🤖「すいません、マスター。 脚、止めてしまいました。」

『いいから、だまってろ。 お前、がんばったから』

ボロボロと大粒の涙を流しながら

――止めなかった俺のせいだ、ごめん、ごめんブルボン

と何度も何度も、トレーナーの謝罪を聞いた、むせび泣く声を聞いた。

――自分は
――自分は、マスターを、悲しませてしまったのだろうか
274 : アナタ   2025/04/22 21:07:26 ID:HcyNelBreg
幸い、大きな異常も故障もなかった。
限界を超えて走ったせいで一時的な貧血を起こしたという診断だった
それでも――右足の脛に発熱があり、少しの期間坂路の使用は勧めないと医者に言われた

『……しばらく、プールでのトレーニングに切り替える。』

ベッドで横になるブルボンにトレーナーが有無を言わせないような口調で切り出した。

『どのみち熱が引くまで坂路はできない。 筋肉や骨への負担を抜く意味でもプールでしっかり心肺と全身を動かしてトレーニングする』

「……できます。 今日は、だめでしたが……今度は、五本、走りきってトレーニングに」

『だめだ!
――もう、これ以上は、だめだ』

🤖「マスター、私は三冠ウマ娘に」

『お前は、走れなくなるって事がなんだかわかってない。』
275 : 貴方   2025/04/22 21:12:50 ID:HcyNelBreg
『今まで当たり前にできてた行為ができなくなる。
周囲はそれをずっとしてる。 じぶんだってできたはずだ。
歩く走る――そんな当然のことまで、できなくなるんだ。』

トレーナーは『見ろ』と右のズボンのすそをまくる

「―――――ッ、マス……ター」

『学生のときに、事故で無くしたよ。 トラックの居眠り運転。
右からぶつかったと思った瞬間意識がとんでさ――目覚めたらこれだ』

細い金属の球体関節、板バネのような脚部分。
トレーナーの膝上から下はすべて義足だった

『大したもんだろ、十年以上身につけてると義足だって誰にも気づかれない。
歩くぐらいならホントに困らねえ。
事故の前までは、これでもヒトミミの陸上選手だったよ』
276 : お兄さま   2025/04/22 21:17:58 ID:HcyNelBreg
『脚をなくしても、義足をつけて生活して――
それでも、何年もしても夢を見るんだ―――自分の脚があって
ああ、なんだ俺の脚あるじゃんて思うんだ―――ほら、夢の中って滅茶苦茶なことでも納得しちまうだろ?』

ミホノブルボンは俯いたまま、返事もできない。それでも、トレーナーは続ける
――もう、ミホノブルボンは十分強い、これ以上脚に爆弾をくくりつけさせてはいけない

『でさ、目覚めて、自分の脚を見て思うんだ
――何年経とうと、思うんだよ。 ああ、やっぱ夢だったよな、脚ねえじゃん、って』



『――他人事でも他所の不幸な話でもないんだ。
むちゃをしすぎたウマ娘ってのの故障は――走れなくなる。歩けなくなる。
脚があるかないかの違いがあっても一緒なんだ。
俺はもうこれ以上お前に無理をしてほしくない。』
277 : トレーナーさま   2025/04/22 21:21:22 ID:HcyNelBreg
『……しばらくは、プールトレーニングだ。 いいな?』

「ごめんなさい。 マスター」

嗚咽の混じった声、ショックを与えすぎた事に、トレーナー自身の胸が痛む。
――それでも、これ以上の故障との綱渡りをさせるわけにはいかない。

「ごめんなさいマスター、私は―――」


――私はそれでも、三冠ウマ娘になりたい

『――ッ』

ゾクリ、と背筋が凍った。
トレーニングで倒れて
目の前に脚のない義足をみせられて
脅されたようなものだ、脅迫といっていい
278 : 大将   2025/04/22 21:25:54 ID:HcyNelBreg
それでも――ミホノブルボンは

「坂路五本ができないなら四本、今まで通りの継続をダービーまで。
熱が引くまではプールでも。
ですが、ダービーまでに――残りの400Mを走るために、少しでもやれることを」

『………』

トレーナーは大きく、ため息をついた。
正直今回の発熱は故障の兆候だ。 骨膜炎一歩手前だっただろう
だからこそ、これ以上の無茶はさせれない
自分の"右足"をも見せて止めたかったが――それでも止まらない
現状を嘆かず、出来る範囲で、なんとかしようとしてる
279 : 使い魔   2025/04/22 21:30:10 ID:HcyNelBreg
『――くそっ、俺の負けだ。
いいかブルボン、お前の脚の発熱は骨膜炎だ。 本来なら休養が必要だがプールトレーニングで患部に負担をかけないようにする。
プールへの移動や学校内の移動は熱が引くまでは杖を補助にする。 本来不要なもんだが少しでも移動で患部に負担掛けさせないためだ。』

「はい、マスター」

『当然――周囲は故障だダービー回避だ騒がれるが全部無視しとけ、ダービーには出ます程度にあしらっときゃいい。
熱が引くまで徹底してプールで心肺のトレーニング
――熱ひいたら、坂路戻るぞ、ただし四本だ。 五本は絶対にやらせん。』

「はい、マスター。ありがとうございます」
280 : マスター   2025/04/22 21:35:48 ID:HcyNelBreg
――はい、はい。
――ミホノブルボンにも、私の脚の事は話しました
――私の不届き、不徳で娘さんを故障手前までさせたこと、本当に申し訳ありません。


ミホノブルボンを休ませて
ミホノブルボンの父親に連絡をする。 無茶な五本目を試してミホノブルボンが倒れたこと、骨膜炎の前兆である発熱が脛におきたこと。
それらを詫び、以前に話しておいたトレーナー自身の右足の件を知らせた事を伝えた

驚くほどあっさりと、父親はトレーナーを許した。
ブルボンがどうしてもダービーを獲りたいとせがんだのだろうと
皐月賞で最後の最後でスタミナがきれたことを悔いていたと知らされた

――これからも、娘をよろしくお願いします

とだけ言われ、通話を切る
281 : お姉ちゃん   2025/04/22 21:36:57 ID:HcyNelBreg
皐月賞、おしまい
曇らせのようで申し訳ありませんが、ハピエン厨なので曇らせたままはありません
282 : トレーナー君   2025/04/22 21:45:22 ID:HcyNelBreg
蛇足

🤖「マスター、あの」

『なんスかミホノブルボンさん』

🤖「泳げるのでしょうか? マスター」

『義足はずしたらめちゃ泳げるよ。
ただ脚ないから目立つじゃん? あとはしごないと無理だな。上にあがるのきつい
いやーブルボンに脚の話したからお前と二人の時はプールはいれていいわ』

🤖「あの、あの……マスターはその、義足な事を気にしたりは」

『ないもんはない。 そりゃ、お前らが羨ましいと思うことはあるようんうん。
でも、お前にはどっちにしても言おうとは思ってたんだ』

🤖「そうなのですか?」

『だって――今は、お前のその脚が俺の脚みたいなもんだろ。
丹精込めた俺の脚だ、ブルボン――その脚でダービーにつれてってくれ』
283 : トレーナーちゃん   2025/04/22 21:52:35 ID:HcyNelBreg
だそく

『義足の話してからなんかブルボンが気を使ってるように感じるな
――よし、おーいブルボン』

🤖「はいマスター、どうしましたか?」

『俺は今日からマスターロボだ、見ろ見ろ、ロケットキーック(義足蹴って飛ばす)』

🤖「…………………」

『あれ? あれ? ブルボンさん?』

🤖「マスター、バッドステータス:自暴自棄。 今すぐ精神のケアが必要です
緊急ミッション:父への相談、学園長への相談」

『ええええっ!?まって? まってジョークだってジョーク!!』



🌻「で、義足でロケットパンチの真似事をしたと?
🍚「うわあ…うわあ、ちょっとドン引きだよライス…うわあ」
『えー!? 』
284 : 大将   2025/04/22 22:02:45 ID:HcyNelBreg
だそく
🤖「あの、マスター」

『なんですかブルボンさん 』

🤖「マスターは水着には興味がないのですか? 職業:女子高生 の水着姿です」

『あー俺、あんまし水着萌えしないのよ』

🤖「!? な、なぜですか?」

『いや知らんて、なんというか健康的すぎるというか。
つか、ブルボンはブルボンで男の水着姿とか萌えるのかよ』

🤖「はい、 マスターの水着姿が見れてプールトレーニングやれてよかったと思ってます」 『もうちょっと隠そうね美少女女子高生』

『まあでもブルボンの競泳水着姿は綺麗だなとかは思うようん』
🤖「/////」
285 : トレピッピ   2025/04/22 22:27:14 ID:HcyNelBreg
🤖「マスター、陸上というのは」
『ああ、50M走』
🤖「短すぎないですか?」
『50Mだとヒトミミでもウマミミと争えるんだよ最初のダッシュ次第だから』
『こう見えてもクッッッッソ早かったんだぞ、親父もお袋も陸上選手でさ』
🤖「……」
『ああ、事故からちょっと疎遠でな。
でもブルボン、よーく考えてみな?』
🤖「?」
『俺が作った脚はヒトミミじゃなくてウマミミ……URAの頂点だぞ? やばくね』
🤖「あの、それは」
『頂点じゃないの?』
🤖「…頂点です、マスターの脚は世界一の脚です」
『よーしいい子だブルボン(わしゃわしゃわしゃ)』
286 : マスター   2025/04/23 19:04:58 ID:p1A6Drlhh.
🤖「マスター。 好きです。」
『おう俺も好きだぞブルボン、めっちゃ愛してる』
🤖「ッパアアアア、ではハグを希望します。」
『しませんよブルボンさんトレーニング頑張ったらご褒美にしましょうね』
🤖「はい」
『……てかさ、俺愛してるとか好きって言われてるの一応わかってるよね?』
🤖「はい。 性的、恋愛的意味で本気でマスターが言っていないのは了承してます」
『いいの? 適当にあしらわれてるとか怒ったりせんの?』
🤖「大丈夫ですマスター。 マスターが私を好きな事実は変わりません。 怒ってもそこでその好意が愛情や性的好意に変換は不可能です」
『お、おう、なんか恋愛強者な言葉だな……』
287 : キミ   2025/04/23 19:13:48 ID:p1A6Drlhh.
今日はお休みです
288 : 相棒   2025/04/25 00:44:43 ID:kEAghphoQw
289 : アンタ   2025/04/25 08:03:45 ID:725.XAEgLo
『よし、坂路トレーニングに戻ってきたわけだが。
今まで通り4本。 ただし一本一本脚の違和感やハリを確認して少しでも違和感があれば途中で切り上げだ』

「了解しました、マスター」

本来ならば疲労を抜いていかなくてはいけないレース前だがギリギリまで追い切りを引き伸ばしての坂路。
疲労を抜いてもスタミナが足りなければ東京の長い坂道は走りきれない
ミホノブルボンが最強な理由は届かない事にある
手が届きそうでも突き放される二の足、それがスタミナ切れで届くとわかれば相手に希望が見える。 希望は最後の一滴のガソリンになりうる

『よおし、あと3本! 脚を止めるな3本目4本目のために今限界まで心拍上げろ!』

本当は休ませたい。 疲労を抜いてダービーに万全の状態で挑ませたい。
しかし、皐月賞から伸びた400Mはそれを許さない
290 : 貴方   2025/04/25 08:10:54 ID:725.XAEgLo
「マスター、脚の状態は良好
脚部への負担が少ないプールトレーニングの効果が出ています」

『リハビリじゃなくしっかり心肺に負担がかかるようにトレーニングしたからな。 今のお前はとにかく心肺をギリギリまで鍛えなきゃならん。一本一本集中しろ
ラスト一本! 走れ走れ走れ走れ!!』

レース直前までのハードなトレーニング
骨膜炎でプールトレーニングを行った時から学園でもURAの記者からも散々言われた。
――ミホノブルボン故障?
――ダービー回避?
――トレーナーの管理はどうだったのか
――なにをしてるんだあのトレーナーは

まあ、事実だ。
坂路五本を止めていれば骨膜炎は発症していなかったし
ただ、ミホノブルボンには申し訳ないとおもってもそいつらには申し訳ないと思うわけもなく。

しかし――それに納得しなかった者もいるわけで

当のミホノブルボンが、トレーナーへの風当たりに対して不満げだったのだ
291 : トレピッピ   2025/04/25 08:14:23 ID:725.XAEgLo
マスターは今まで最高のトレーニング環境を提供し最も効率的でもっとも心肺、スタミナを効率よく引き上げるトレーニングを提示してくれている
短距離適正である自分が2000MのG1を勝てたのもトレーナーとしての手腕である
勝つためにハードなトレーニングをしているのだから故障のリスクは十分承知している。

――ダービーで、私は結果を出します。
――マスターの指導が正しい事を証明します。

ダービー回避のセンが消え、坂路トレーニングを再開したことでダービー出走への安堵が広まったのかミホノブルボン陣営の故障への避難は収まっていった
292 : モルモット君   2025/04/25 08:27:43 ID:725.XAEgLo
 『珍しいな、お前が自己主張、というか自分の意見を他所様に張っていくの』

 「……マスターはく正しい判断をしています。
不当に批判をされるような事はしてません。」

 『そっか、ありがとな。』

トレーナーはくしゃくしゃと頭を撫でる。 最近は頭をなでると目を細めたり目をつぶったり、気持ちよさそうな顔をするのが微笑ましい。

 『ダービーまで時間がないが、休養できない。 ギリギリまで坂路で心臓も身体もいじめ抜く事になる。ダービーも含め辛いだろうが、できるか?』

 「もちろんです、マスター。目標は三冠です、2400Mまでではなく3000Mまで保つスタミナを希望します」

 『その意気だ。 ところで――もしダービーを獲ったら夏合宿なんだが。
 ブルボンの親御さんにも挨拶したいし、多少の休養もかねてブルボンの実家に向かってからにしたいと思う』

 「マスター、本当ですか?」

 『ああ、朝日杯、皐月賞、ダービー無敗のウマ娘として親御さんに挨拶しにいくぞ。 ダービーまで全力だ』

 「オーダー承認します。 ダービー制覇のミッション、開始します」
293 : トレーナー君   2025/04/25 08:34:12 ID:725.XAEgLo
「さあ、ダービーの前祝いしましょう☆ かんぱーーーいっ☆」

『うす、かんぱーい』

「あれあれ元気ないですよトレーナーさん☆ 今日は私が奢っちゃいますから☆」

――ライトハローさんに捕まった。 前祝いという名目の酒のがぶ飲み会だ

スタイルもよく柔らかそうでしかもウマミミだから美人というふんわりほんわか系美女ではあるライトハローさんだが、この人のお誘いは酒を飲むための口実でしかない。 ライトハローさんの欠点を挙げるなら脳みそがアルコールで溶けてる系の人物ということだ。
普段はもうちょっとしっかりしてるが酒がはいるとてんで駄目な大人になる。

「えへへー☆ ダービーウマ娘をアテに飲むお酒は美味しいですねええへへ☆」

『ハローさんは年中お酒美味しくのんでそうですけどね』

「あはー☆ばれちゃいました? まあまあもういっぱい行きましょうよトレーナーさん☆」
294 : アネゴ   2025/04/25 08:45:19 ID:725.XAEgLo
ウマミミはアルコールに強い子が多い、本当か都市伝説かは不明だが完全耐性を保つ個体もいるそうな
もちろんライトハローさんは違う。対して強くないしそのせいで完全にハッピーアル中だしもう気持ちよさそうに上半身がふらっふらしてる。

『あーもうハローさんペース落としましょうよ。 ふらふらじゃないですか』

「えぇ~酔ってませんよお☆ 私が酔ったらこんなもんじゃすまないですよお~☆」

『もうこれ飲んだらかえりましょ? ね?』

「あははー☆ 送ってもらってあざでした~☆ ダービー勝ったら祝勝会しましょうね~☆」

べろんべろんのライトハローさんを送って一人トレーナー寮に帰る。

 『うーん、ダービーか。 しかも無敗の朝日杯、皐月賞勝利か。
 なんかとんでもない世界に生きてるなあ今』

ミホノブルボンは平気だと言っていたがこの先レースはダービー、菊花賞のトライアル、菊花賞ぐらいだろう。 レースにでるより徹底して心肺をいじめぬいて菊花賞を走り切るスタミナを作らないといけない。
骨膜炎があったとはいえここまで無事にはしれたのはブルボンの丈夫さを考えても奇跡にちかい。
身体もしっかりして鍛え上げられた筋肉の重量や全身の体重を考えれば今後はジュニアのように鍛えるほどスタミナがつくともいえない。
あの鍛え抜かれた身体は消耗するスタミナもとんでもないのだ
295 : アンタ   2025/04/25 08:47:50 ID:725.XAEgLo
――贅沢な悩みだ。

ダービー出走だけでも誉、そこに上位人気として出走できるだけで十分な話だ。
なのにトレーナーは勝つ前提でダービーを、その先を考えている

――頑張れば、努力すれば――本当に頑張って努力してすごいとこに立っちまったなあブルボン。

頑張ってほしい
勿論菊花賞まで無敗の三冠馬を貫いて欲しい
同時に――そのためのトレーニングやレースで故障なんかしないでほしい。

『ああ、本当に贅沢だ』
296 : トレーナー君   2025/04/25 08:53:02 ID:725.XAEgLo
🌻「ブルボンさん! 私はオークス惨敗でしたけど――ブルボンさんなら勝てます! がんばってくださいね!」
🤖「はい、フラワーさん。 状態は良好――今日はダービー勝利のために全力でミッションを遂行します。」

 『……やっぱ、ニシノフラワーはマイルですか』
🌻トレ「うん、本当は秋からマイルに向かおうかなって思ったんだけど……本人の希望は最後のエリザベス女王杯までは走りたいって」
 『もうすぐくるティアラ路線の改正が来てればよかったんすけどね。 確か新レースの秋華賞が2000Mでしたっけ』
🌻トレ「エリ女は2400Mだからね。 とはいっても、近くでミホノブルボンをみてると自分も頑張りたいって気持ちはわかるよ。 今度、そっちの坂路で走らせてもらいたいんだ。」
 『ああ、いいすよ。 並走でも単走でも』
297 : トレーナーさま   2025/04/25 09:00:24 ID:725.XAEgLo
🍚「ぶ、ブルボンさんっ!」

小柄で黒の勝負服――ライスシャワーがブルボンに駆け寄ってくる。

🍚「今日、ライスすっごい調子がいいんだ! ブルボンさんとダービーを走れるなんて夢見たいだよ!」

『………』

🍚トレ「本来はファン数不足で出走できなかったんだけどね。 出走回避の子が多すぎるそうだよ。
 今回ばかりはミホノブルボンくんに助けられたかもね。 有力な子もみんなNHKマイルや裏開催に回ってるのはミホノブルボンに勝てないってところだろう?」

ジュニアのメイクデビューとOPが一生づつ
ソレ以外は3着にも入っていないウマ娘がギリギリでダービーに滑り込み出走
まあ――過去の実績だけでみたら明らかに実力不足。
事実ライスシャワーの人気はドベもドベ。 支持率から見る人気指標――オッズでは一番人気のミホノブルボンが2.3に対してライスシャワーは114となっている。

『……ライストレさん。 ライスシャワーってあんなに雰囲気ありましたっけ?』
298 : トレーナーちゃん   2025/04/25 09:03:32 ID:725.XAEgLo
何度か見たことはある。スプリングSまではトレーニングも見ることはあった。
もっとひ弱で線も細い子だったと思うが――体格は一緒なのに、こう

 『前より全体がしっかりしてますね、ライスシャワー』

🍚トレ「ああ――皐月賞ぐらいから急に身体がしっかりしてきてね。
 今日はもしかしたら――なんて思うことがあるんだ」

 『ふぅ、ん……確かに距離が伸びたのは良い材料ですよね、あの子にとっては』

最低人気の実績なしのウマ娘ライスシャワーを見ながら、トレーナーは嫌な気持ちを抑えきれない。
299 : あなた   2025/04/25 09:10:27 ID:725.XAEgLo
🤖「マスター……マスターもやはり小柄で可愛らしくて守ってあげたくなるような少女――はっきり表現すると可愛らしいロリっ子が好みなのでしょうか?」

『おおう、ダービー出走前なのにトバしてるねミホノブルボンさん、急にどうしたんですか?これからダービースタートするんですよ?』

控室に入るとミホノブルボンが唐突に切り込んできた
無表情といわれるが無感情ではなくクールと言われるがその実頭ピンクなミホノブルボンである。
クラスメイトが自分の無表情っぷりに怖がるのを気にしてしまうぐらいの情緒はあるし、マスターの事がすきなのでそこをストレートでなげつけてくるだけの感情はしっかりしている

🤖「ずっとライスシャワーさんを見ていました。
 私もちょっとスケスケな黒のドレスに黒と濃紫の下着をつければマスターにずっと見ていてもらえますか? マスター」

 『見ていたの意味があまりに違いすぎるんだよな。
 実際どうだ? 今日のライスシャワー見た感想は』

🤖「強いです。 今までとまとっている雰囲気が違います。 突然バージョンアップしてMk2とついたような、超電磁コーティングをまとったかのような違いを感じました。」

『よーし頭まで茹で上がってはいないようで安心したぞ』
300 : トレピッピ   2025/04/25 09:14:40 ID:725.XAEgLo
 『とはいえ――ライスシャワーの脚は逃げができるほど長くない。 結局お前が逃げて他を潰す構図は皐月賞となんら変わらない。
 ただただ400Mのびて大回りで直線が伸びただけだ。 東京の直線は長い坂と500M以上の大直線だが――その400Mよりお前はずっとずっと苦しい坂を毎日走ってた。』

 『――最後の最後、どうしようもなくなってもその毎日を思い出して根性でなんとかしろ!』

根性論を嫌い――スパルタではあっても運動学、医学根拠と効率を求めたトレーナーが最後の最後に言う言葉が根性論である。
そのぐらいにはギリギリなのだ。 2400Mを走りきれるかどうかは正直わからない。 それを試すような機会もない。 ぶっつけ本番だ
301 : お姉さま   2025/04/25 10:19:18 ID:725.XAEgLo
「オーダー:最後まで頑張れを承認します。 ミッション:日本ダービー……
 マスター――ありがとうございます。
 私を、ここまで導いてくれて。 」

『まだ終わってないだろう、ダービーだけじゃなく、菊花賞まで全部勝って無敗の三冠馬になってからそういう事は言うんだブルボン
――ただ、まあ―――』

ぽんぽん、といつものように手を頭に置く。

 『ダービーまでのキツいトレーニングよく頑張った。  
 今日勝って、一緒に親御さんに頑張って良かったと報告しに行くぞ』

――はい、三冠ウマ娘のため、マスターのために、ミホノブルボン、発進します。


――うわ、前より脚も腰もすごくなってない?
――いやいや、皐月賞から1ヶ月ちょいしかなかったのに、いやでも
――うわあ、ごっつい尻しとんな

パドックに立つウマ娘の中で一際目を引く身体。
体格が良い、強そうとかではない
その脚の鍛え抜かれた筋肉は遠目から見ても他を圧倒するものがある

『ダービー、貰っていくぞ』
302 : トレーナー   2025/04/25 10:27:13 ID:725.XAEgLo
――どうですか、ブルボンの様子は

『ご無沙汰してます。 ギリギリまでトレーニングだったので疲労は抜けきってないかもしれませんが――その分鍛え抜かれてます。
 それに――その御蔭なのか、鬼気迫るほどに集中できてますよ。
 それにしても――いいんですか? 娘さんと挨拶しなくても』

ミホノブルボンの父親は困ったように首を振り

 「今私の顔をみて集中が途切れてもアレですからね。 親ばかのような言葉ですが、あの子はどうにも私に懐き過ぎていて。
 最近は安堵してるんですよ、マスター……貴方のような立派な方とブルボンが巡り会えた事に」

 『よしてくださいよ、私なんてただのうだつのあがらないトレーナーです。 ブルボンの担当をするまで未勝利か一勝かしか面倒みたことがない。』

 「あの子がダービーをね……私も元はトレーナーです。 あの子がそういった未勝利、一勝クラスでウロウロする才能だとは思ってました。
 それが今やダービーを獲ろうとしてる。 しかも朝日杯、皐月賞と無敗で掲げて――堂々と勝利を目指してる。」

――ブルボンの父は深く、深く頭を下げた
303 : キミ   2025/04/25 10:30:42 ID:725.XAEgLo
――夢を、現実にしてくれてありがとう

 『くすぐったいんで、頭をあげてください。 そういうのは三冠を獲ったときに一緒に酒でも呑みながらしましょう。 ダービーはふたつ目でしかないですから』

 「勝ち目は」

 『皐月賞直後なら半々でした。 皐月賞では終盤スタミナが切れてた、しかも私の不手際で坂路五本のせいで骨膜炎同様の発熱。 展開次第ではスタミナが保って勝つか、後続にギリつかまらなければいいなという塩梅でした』

「――では、今は?」

『そりゃ――勝てますよ。 あいつはそれだけの努力を皐月賞から今日までもしてますから』
304 : お兄ちゃん   2025/04/25 11:04:54 ID:725.XAEgLo
「ダービーの1角までは短い。 誰も彼も優秀なスピードに富んだウマ娘達がスタートから最高のポジションを目指して競り合う。
――7枠15番、大外側から穫れますか? 一番手」

『確かにそうですが』

ダンッ!!!
ゲートが開かれ勢いよくゲートが開かれる

内側のウマ娘がロケットスタートを切って先頭に立とうとする。

「―――ッ!?」

確実に他の追随を許さないロケットスタートをきめた
なのにたった数歩で大外からチョコレート色の影が飛び込んでくる
並ぶ、という生易しいものではなくすでにトップスピードになっていたミホノブルボンは内枠のウマ娘をあっさり突き放し先頭で1角に入っていく


 「皐月賞でも思いましたけど――スタートそのものじゃなく、スタートから一瞬で加速するんですね。あんな加速が当たり前のようにできるようになったんですか」

『ええ、坂路で身についた筋肉は急勾配に負けない力。 平地での使い方がうまいんですよね、加速がとにかく良い。 よほど出遅れなければスタートが良いウマ娘よりよほど速くトップスピードに乗ります』

「ええ、ええ――私もね、年甲斐もなく興奮してますよ。 あんなに素晴らしい加速のウマ娘なんてまずいない。 自分の娘がそんな走りができるようになるなんてね
――それに、ロボットに憧れてロボットのマネをしだした娘が決めた勝負服は、ちょっと、父親からみても露出が、ねえ?」

『そういや、今日はチョコレートメイド服ですね。』
305 : あなた   2025/04/25 11:07:00 ID:725.XAEgLo
「ブルボンがね、男の人が喜ぶ服とはなにか? と聞いてきたときには本当に驚愕しましたよ。 今まで三冠ウマ娘とロボットのマネばかりだったブルボンが男性の事をきにして勝負服をデザインしたいなんて。
私も貴方の趣味までは知らなかったですから、とりあえず嫌いな人の少ないメイド服なんかを勧めましたが」

『まってチョコレートメイド服てお父さんの趣味だったの!?』

「ああいやあくまで万人向けの話ですよ? ほらもう一着の方が結構露出が多いでしょう? ですからもう一着は逆の方向性がいいかなって
トレーナーとしては、どちらがいいとかは」

『日本ダービーですよ!?そんなことより応援しましょう!?』
306 : トレーナー   2025/04/25 11:22:41 ID:mI5oZHB2yM
――疲労があったはずなのに、疲労を感じない。
――まだ、ペースを速く設定できる。
――後続との距離、2バ身。 ペースを6.1秒に設定

2角を過ぎバックストレートに入る頃には2~3バ身の差をつけて先頭
しかし後続は3角までに差を縮めようと、ゆっくり、ゆっくりと距離を詰める

『後続が予想以上に落ち着いてるな。』

「2番手につけた黒い小柄な子……ライスシャワーか、スパートやペースアップとは言えないぐらいじんわりしたあげ方ですね」

『いやな上げかたですね……今ペースを上げたら潰れる、三角からじゃ間に合わない――きちんと目測のある詰め方です。』

「1000M 61秒2 ……ブルボン、頑張れ、いいペースだ。」


――第三コーナーに入って、じわじわと詰め寄られる
――コーナーは、焦らない。 スパートは直線から
――私の末脚は、マスターも褒めてくれた

詰め寄られる。 コーナーで後続が捕まえられると思えるほどの差しかない
皐月賞で敗れたがNHKマイルで勝利したナリタタイセーが
ミホノブルボンに何度も何度も苦渋を飲まされたマーネイドタバンが
期待に答えられなかったがNHKマイルでは2着に飛び込んだマチカネタンホイザが

――そして、その集団の先頭で、黒い刺客のライスシャワーが
――一斉にミホノブルボンに襲いかかろうとする
307 : 貴様   2025/04/25 11:31:06 ID:mI5oZHB2yM
――大ケヤキを超えて第四コーナー
――差がどんどんと縮まっていく、先頭のミホノブルボンとの差はもう1バ身、1バ身もありません!
――さあ、ここから東京の長い長い直線。 ミホノブルボンまだ先頭、後続が捉えようとする、東京の直線は500Mです!!

 「……ブルボン、粘れ、頑張れ、ブルボン」

 『お父さん、褒めてあげましょう。 アイツは、よく耐えたんです』

 「耐えた? だって後続が、あんなに」

 『メイクデビューの中京は410M 東京は500Mです。 あいつはちゃんと直線まで耐えた――いけぇっ、ブルボン!!』


 ――外に出る必要がない
 ――私は――マスターが創ってくれたこの脚と、心臓は
 ――ここから

 「ブルボンさん、捕まえる――ライスだって、ライスだって――」

直線に入ってラストスパートしたライスシャワー。
しかし、1バ身もなかった差が更に開く。
NHKマイルを勝ったナリタタイセーが、それを追い詰めたマチカネタンホイザが
それよりも前でレースをし、一番ミホノブルボンに近かったライスシャワーが
ブルボンのラストスパートで逆に差を広げられる

――ミホノブルボンここでスパート!1バ身だった差を広げていく!
――強い! ミホノブルボン強い! 東京の坂を軽々と登っていく!
――さあ残り400M ここまでで2000M
――ミホノブルボンには未知の領域!!
308 : トレピッピ   2025/04/25 12:08:07 ID:mI5oZHB2yM
――コーナーが巧いわけじゃない
――スタミナがあるわけじゃない
――スピードだって並程度

(マスター、それを貴方はすべて作り上げてくれた…
 スピード、パワー、スタミナ。 それでもコーナーは得意とは言えない。
でも、直線に入れば……出遅れてなくてもスパートはできる)

必死で食い下がる後続がズルズルと沈んでいく。
3角、4角で詰め寄って直線で射程圏に捕らえたはずの逃げウマにスパートで突き放されるのだ

(ブルボンさん、まだこんな力が残って――強い、すごいよブルボンさん……
でも、ライスだって、ライスだって――ブルボンさんみたいに)

――さあ残り200! ミホノブルボン!ミホノブルボン先頭!!
――差がどんどん広がっていく、ミホノブルボン!
――残り100を切ってもう大丈夫か!もう一着は大丈夫か!

――ミホノブルボンゴールイン!
――今ここに6戦無敗、無敗の2冠馬が生まれました!
309 : アナタ   2025/04/25 12:13:20 ID:mI5oZHB2yM
『――ッシャア! 見たか見たか見たか!! これが俺のミホノブルボンの走りだ!! 直線まで詰め寄られても逆にそれをぶっちぎるスピード!
うおおお最強最強最強!! よしよしよし!!

―――あ』

観客席で何度も飛び上がり全身で喜びを表現するトレーナーをブルボン父は微笑ましく見守っていた。

『あ、すんません。 はしゃぎすぎました』

「ああいやいやいやいや、自分の娘の事でそんなに喜んでもらえるのは嬉しいですよ。 ブルボンがよく言ってましたよ、マスターは自分のことのように喜んでくれるって」

『あ、はい。 いえ、お恥ずかしい事で』

「いえいえ、そのぐらいブルボンに入れ込んでもらえるのは父親冥利に付きますよ。それじゃ、私は帰りの電車もあるんで、ここらでね」

『え――会っていかないんですか? 絶対喜びますよブルボン、ダービーですよダービー』
310 : アナタ   2025/04/25 12:17:50 ID:mI5oZHB2yM
「父親としては会いたいですね。
 でも、これからマッサージをずっとしてね、その間いっぱいいっぱい褒めてくれる"大好きな人"からのご褒美の場に父親がいるのはね。
 ……夏休みは来ていただけるのでしょう? 山の反対側が海でしてね。 海水浴場になるほどは混み合ってないけど、海水浴場としても使える地元の穴場でしてね。
夏休み、楽しみにしてますよ。

――トレーナーさん、本当に……本当にありがとうございます。
娘をどうぞよろしくお願いします。」

――結局のところ、父親が来たことはブルボンには後で伝えることにして

『ミホノブルボンさん、無敗の2冠、ダービーおめでとうございます』

🤖「? マスター?」

『歴史に名を刻む大ウマ娘ミホノブルボンさんには今後生意気な口は効かないようにする所存です、ささ、こちらへ。マッサージの準備ができております。』

🤖「オロオロ マスター、マスター、マスター」
311 : あなた   2025/04/25 12:23:42 ID:mI5oZHB2yM
控室の仮寝台にうつ伏せになるミホノブルボン
その背中に、手とは違うおおきなものが置かれる。トレーナーの額だ

『お前、本当に無敗で2冠馬になっちまったなあ……』

『すげえや、お前。 普通なら4本の坂路なんかできるわけない。
それを毎日やるどころか一本一本全力で、だれよりも真面目に手を抜かず走ってさ。 殆ど遊び歩かないしさ、練習を一回もサボるどころか休んだ事ないんだぜ?』

「……はい、頑張りました。 とても、頑張りました」

『そうだよな。 今日のダービーだって、スタミナが保たないって言ってたのに、直線であのスパートなんだよ、一体。 ナリタタイセーだってマチカネタンホイザだってマーネイドタバンだって凄いのにさ、そいつら全員置き去りでさ』

「はい、マスターも私の脚は凄いから――スパートは直線だけで良いといってました。」

『お前、すごいよ。 本当に400Mの壁埋めちまった』

「マスター、私は凄いですか? 頑張りましたか? 偉いですか?」

『ああ、すごい、めちゃ凄い。 レースも凄いしいつもいつもいつも頑張ってるのもすごいしめちゃ偉い』
312 : アナタ   2025/04/25 12:33:28 ID:mI5oZHB2yM
「もっと――もっと褒めてください。
ステータス:ふわふわ です。 自分がダービーを勝てて嬉しいはずなのに、夢の中みたいな感覚で、嬉しいはずなのに実感がありません。
 なのに――マスターに褒められると、とても嬉しくて、ああ、勝ったんだと思えます。 ですから――いつもみたいに全力で褒めてください」

『……いいの? 今日の俺はもう遠慮しないよ?』

 「勿論ですマスター」

『――最高ッ!ブルボン、ブルボンブルボンブルボンブルボン!
 ああああお前ほんっとに凄いじゃん、ホントに無敗でダービーまで獲ったんだぞ。偉いっ! 最高! 日本最強のウマ娘ッ! このチョコレート超特急!
可愛くてスタイルよくて日本一速いウマ娘なのに2400Mも余裕のスタミナとか神様贅沢盛りしすぎっ!』

「…ッパアアア。」

マッサージというか、ワシャワシャと尻尾も髪も背中も頭も全部もみくちゃにして
落ち着いたらマッサージをしていく

『そういや、夏休みの合宿さ――ライスシャワーやマチカネタンホイザとか一部のウマ娘と合同で学園の指定合宿所じゃないとこでやらないかって話出てるんだよね』

「……そうなのですか?」

『個人的には疲労を抜きたいから大坂路はなくていいんだけど学園の合宿場は設備はいいけど坂道とか走りきれるばしょなくてな
 そこで、海と山があって、無敗の2冠馬サマが幼少期からトレーニングしてた坂道もある場所があるなって』

 「……それはもしかして」

『そ、お前の実家の山の裏手、そこの民家にアポとった。
少数精鋭の強化合宿するぞ、ニシノフラワーやサクラバクシンオーもくるってよ』
313 : お姉ちゃん   2025/04/25 13:12:56 ID:52VuIaSPTI
ブルボンを先に退室させ、ギリギリまで居残らせて頂いた礼をしつつ鍵を返し
そして帰るためにレース場から出ると、レース場の前の屋台に人が群がっている

🕷️「あ、ブルボンさんのマスターさんども。 ここの天むす美味しいですよ」
🍚「焼きおにぎりも美味しいよ、マスターさん」
🤖「もぐもぐもぐもぐ、むしゃむしゃむしゃむしゃ」
🕷️「もーブルボンさん、ほらマスターさんきたよ。 手とめて」

『馬鹿飯食ってるブルボンは』

🤖「シャアアアアアアアアっ!がるるるるる!!」
🕷️「うわぁっ!? 怖っ!?ブルボンさんこわっ!?」
『メシ喰ってるときのブルボンはそっとしとこうな、ほらブルボン口出して拭いてやるから』
🤖「もぐもぐ、 むいむい、ありがとうございますマスター。 もぐもぐもぐもぐ」

『しかしなんでレース直後なのに大量に食えるんだ』
🍚「……だよね」
🕷️「すごいよね」
『いやキミらもだからね?』
314 : モルモット君   2025/04/25 13:15:01 ID:52VuIaSPTI
日本ダービーおしまい
キャッキャウフフのドキドキ☆夏合宿~ひとなつのあばんちゅ~る~は後日

315 : トレーナーさま   2025/04/25 20:46:18 ID:52VuIaSPTI
🤖「現在、一つのバッドステータス:悩みを抱えています。」
🌻「ええ、あの無敗の二冠ウマ娘ブルボンさんに悩みが?」
🤖「はい、私のトモ――臀部はとても鍛えられてます」
🕷️「うんうん良いお尻してるよねブルボンさん」
🍚「お尻ごっついってよく言われるよね、実際はお尻とトモの部分だろうけど」
🤖「はい。 私のパワーとスピードの源であるこの臀部――今回はお尻と言いますが、鍛え抜かれた私のお尻は――触り心地が固くなってしまっているのではないかと」
🌻「――! それは由々しき事態ですね、ブルボンさん……!」
🕷️「え、それはどういう問題が? 競争能力としては良いことなんじゃ?」
🍚「ちがうんだよタンホイザさん! お尻の柔らかさは今のブルボンさんにとっては大事なんだよ!」
🕷️「え?え?」
🤖「私は毎日トレーニング後にはマスターに徹底してマッサージをして頂いてます。 時に2時間以上かけてくださる事もあります。
ふくらはぎからお尻までみっちりとされます。
女性のお尻を触るという事であっても、マスターは遠慮しません。 徹底しておしりをもみくちゃにします。」
316 : 貴様   2025/04/25 20:53:51 ID:52VuIaSPTI
🌸「ちょわわっ!?そ、それは破廉恥なのでは? いけませんよブルボンさん! 男女の付き合いは節度を持って健全にですよ!? そう、この学級委員長のように!」
🕷️「バクシンオーさんトレーナーさんと付き合ってたんだ……いいなあ」
🍚「うう、ライスのおじさまはイケメンナイスミドルだけど既婚者だよ……」
🕷️「おじさまって表現結構インモラルだよね。 私のトレーナーさんも既婚者で愛妻家だあ、たまに一緒に商店街でご飯ごちそうになるけど私のこと娘のようにしてくれるもん」
🌻「私やブルボンさんみたいに若くて可愛いトレーナーさんも捕まえておかないと皆から狙われちゃいますからね」
🤖「はい、そのためにマッサージするマスターの手にお尻の柔らかさを強引に刻める良い機会なのですが――このままでは筋肉で固くなったお尻で柔らかさがなくなってしまうのではないかと」
317 : お姉ちゃん   2025/04/25 21:03:04 ID:52VuIaSPTI
🕷️「でもさあ、実際ブルトレさんって無敗の2冠馬――しかも朝日杯も勝ってるこの世代最強のウマ娘のトレーナーでしょ? 担当になってくださいとか狙ってる新入生どころか今クラシック、シニアの子もいそうじゃない?」

🍚「うんうん、たまにトレセンは婚活会場って思ってる子もいるし、独身だと狙われちゃうよね。 マスターさん、小柄だけど結構可愛い顔立ちしてるし」

🌸「むふふ、私のトレーナーさんは私に3600Mを走らせてくれるまで専属だと約束してくださいました! いつか3600Mを走らせてくれるまでずっとキミ一本だと!――こっちは嘘じゃないですよね?」

🕷️「こわっ!?」

🌻「私のトレーナーさんはファンクラブがあるそうですよ、ほらサイトもあるんです。 」

🌸「にょわっ? 凄い会員数ですね――あれ、男女比おかしくないですかフラワーさん、フラトレさんって男性でしたよね? なんで男性ファン会員半分なんですか」

🌻「えへへ、トレーナーさんは可愛いので。 でも私のです♪」

🕷️「あー、うん。 フラトレさんはなんというか男の娘って感じだよね、ちゃんと成人してるのに。」

🌻「ブルボンさんのマスターさんは小柄で可愛いんですがちょっと勝ち気なタイプですよね。 男性ファンというより女性ファンが多そうです」

🤖「だめです。 危険です。 拒否します。 先に既成事実が必要です。」

🕷️「でもさ、実際話題の人ではあるんだし申し込みとかどうなの?」

🤖「うけないそうです。 マスターも私以外の時間が取れないと
 あと、学園にもっと坂路や運動学的トレーニング施設を取り入れたいので学園への企画立案や設計の案件でチームを作れる余裕がないそうです」
318 : モルモット君   2025/04/25 21:10:15 ID:52VuIaSPTI
🌻「でもブルボンさん……例えチームを作らない、専属と言われても安心してはいけませんよ、うふふ♪」
🤖「? と、いうのは」
🌻「私のトレーナーさんも私の成長や体質を加味して専属なんですが、最優秀西日本ジュニア辺りから――トレーナーさんに言い寄る方が多くて」
🤖「はい、しかし専属ですから問題はないのでは」
🌻「それがですね……やはり優秀なトレーナーと契約したいってウマ娘は多くて――中には色仕掛けでトレーナーさんを惑わす方も」
🤖「―――!?」
🌻「トレーナーさんも女性の押しには弱いので危うく――その時は私が"わからせ"て事なきを得ましたが、ブルボンさんもお気をつけて」
🤖「ガタガタガタガタ――嫌です、マスターが他の女性と……ウマ娘と」
🕷️「でもさー、その話だと――ライトハローさん大丈夫なの?」
🍚「あ、あのすっごいおっぱいおっきな人だよね、今グランドライブの企画やってる人。 たしかにおっぱい柔らかそうだし――いいなあ、ライスもこうぽよんぽよんに」
🌸「大丈夫ですライスさん! 慎ましい胸もそれはそれで人気があるもの! 巨乳も好き、でも慎ましいのも好き! 慎ましいのも巨乳も好き! これらが実は大多数です!」
319 : トレーナーさん   2025/04/25 21:23:11 ID:52VuIaSPTI
🕷️「あー商店街のおじさんたちもライトハローさんのおっぱいは気になってるみたいだよ、あれはG1級だとか凱旋門賞挑戦できるだとか」
🌻「実際おっぱいの大きな側のブルボンさんとしてはどうなんですか?」
🤖「正直あまり気にしたことはなかったのですが――マスターを男性としてみてから……誇らしくなりました。」
🍚「ほ、誇らしく!?」 🌸「ちょわっ!?」
🤖「マスターはお尻よりおっぱい派です。 そのマスターが時たま私の胸に視線を向けては慌てて私の顔の方に視線を戻します」
🕷️「あー、会話って基本相手の顔みて話すから相手の視線がどこいってるかってわかるんだよね」
🍚「ふええ、いいなあ、ライスもおじさまにチラチラ胸元に視線向けてほしいよ」
🌸「ライスさん、既婚者にそれはマズいですよ!」
320 : トレーナーさま   2025/04/25 21:29:37 ID:52VuIaSPTI
🤖「チョコレートメイドの勝負服には胸元に宝石のイミテーションがあるのですが、走ったりダンスではそこが大きく揺れます。 厳密に言えば上下に跳ねます。
うごくそこに、マスターの視線が行きます。
――その瞬間、私は勝利の気持ちを感じます」

🍚「うわあ、ブルボンさん大胆だよそんなブルンボインをマスターさんにアピールなんて夜の三冠はもうブルボンさんのモノだよ副賞はマスターさんの人生だね」
🌸「くっ、学級委員長としてそれは破廉恥と言いたいですが視線誘導につられたトレーナーさんの言い訳を聞きたい気持ちが勝りますっ!」
🌻「あは♪ マスターさんも可愛らしいとこあるんですね♪」

🕷️「でも――おっぱいの揺れとか大きさとかだとやっぱライトハローさんの方が強いんじゃないの?
しかも合法だし」

🤖🌻🌸「……」

321 : 貴方   2025/04/25 21:36:16 ID:52VuIaSPTI
🍚「そ、そんな――ターフで未勝利でもあの人とのメイクデビューは1番人気1着センターお先に失礼なんてそんなのずるいよライトハローさん」

🕷️「でもまあ……あのブルトレさんがブルボンさん以外にお熱になるとかちょっと想像できませんけどね」

🌻「確かに……でも色仕掛けとかアピールは大人の女性の方が緑スキルも金スキルも豊富です……ブルボンさん」

🤖「…………問題ありません。 後方から追い上げられても私は逃げ切ります。 お先に失礼なんてさせません私がマスターのトキメキハートを頂きます」

🌻「きゃーブルボンさん♪この夏合宿で思い出作りですね♪ 応援してます♪」
🍚「が、頑張ってねブルボンさん! ら、ライスもがんばる!」
🕷️「いやライトレさん既婚者でしょ」
🌸「いやー、恋のレースに忙しいですね、青春ですねハッハッハー」
322 : トレ公   2025/04/25 21:50:08 ID:52VuIaSPTI
『あほかああああああああっ!! この夏合宿は遊び回るためのもんじゃねえって言っただろうがっ!!!』

夏のビーチ、白い砂浜打ち寄せる波青い海
絶好のロケーションだが田舎の小さな浜辺は地元民以外はほぼ来ない穴場だ
そんな最高の海の砂浜で、トレーナーが合宿参加者にカミナリを落としてた。

「うわっ、こわ……」
「うーん、あそこまで全力で怒鳴れる指導者って最近減ったよねえ」
「昔は結構いましたけどね、今はああいうのに厳しいですから」

各トレーナーも集まっているが今回の主催――チーフトレーナーはブルトレ――マスターが行うことになった。
本人は柄ではないとベテランであるライスシャワーやマチカネタンホイザのトレーナーを推薦したがやはり実力的にもっともあるブルボンのトレーニングを軸にしたいというのが強いのだろう

『バクシンオーはスプリント路線――ニシノフラワーはティアラ路線変更なしか、エリザベス女王杯も2400Mだし、しっかりスタミナをつけて帰ってもらう。
ライスシャワー、マチカネタンホイザ、ミホノブルボンは菊花賞に向けてこの夏合宿で力をつけて帰ること、いいな』

🕷️「はいはいせんせー、質問」
 『先生は質問じゃありません、なんだタンホイザ』
🕷️「バクシンオーさんとニシノフラワーさんは別路線だからいいんですが、私達菊花賞で争うのに一緒に合宿っていいんですか?」
 『なんだ嫌かー? 作戦だとか妨害だとかお互いに腹の内探り合うドロドロした心理戦が好みかマチカネタンホイザ』
🕷️「ひいっ? いえちがいますそうじゃなくて――
 そうじゃないですけど、ブルボンさんとブルトレさんからしたら無敗の三冠馬を邪魔されるとか、そういうのないんですか?」
323 : キミ   2025/04/25 21:57:22 ID:52VuIaSPTI
🍚「あ、う、うん……合宿で、みんなが強くなったら――ブルボンさんたちからしたら敵に塩をおくることになるんじゃないかな……って」

『ああ、安心しろそこは各トレーナーで話し合った結果全力で鍛え合って全力で潰し合おうって話になってるぞうんうん、争え、お前らは争うのだ。』

🍚「ひあああああっ!??」

両手を上げ怪物のマネのような何かでライスシャワーをおどかすトレーナー

『まあ――気持ちは分からんでもないんだが、ブルボン陣営からしたら作戦なんかバレバレだ。 逃げてそれなりにハイペースでしっかり逃げ切る、追って来ようとスタミナもスピードも届かせない、潰れてもらいましょうってわけだ。』

「ライスシャワー陣営としては菊花賞の第一目標はミホノブルボンに勝つこと。 なので他のウマ娘どうこうではなくミホノブルボンをしっかりマークして追走になる。」

「タンホイザさんは、この二人みたいに先行力があるわけじゃあない。 そうしたらそもそもがマイペースに中団からか後方からだからね。 結局は互いの作戦を利用したあれこれなんかないよ」


『って事で、もう一個の強くなったら云々というのは――あれだ
実際お前らは学生で――一緒にクラスで生活して寮で生活しててさ――
まあ、URAというレース人生を選んだのは事実だけど、俺等もお前らに楽しくて良い学園生活を送ってほしいってのはあるんだ』
324 : トレぴっぴ   2025/04/25 22:06:51 ID:52VuIaSPTI
『勿論、ブルボン陣営としてはこれ以上ライスシャワーちゃんにもマチカネタンホイザちゃんにも強くなってほしくはないが――互いに切磋琢磨してさ、レースが終わったら握手できるような奴らみたいだし』

マスターはウマ娘たちを見渡して

『朝日杯、スプリングS、皐月賞ってずっと戦って、ライバルになって
――それでもライバルとして友情を深めてるなら、もう全員でめちゃくちゃ強くなって、この世代はシニアになっても最強の世代だって言われたいだろ』

🍚「は、はいっ! ブルボンさんとも、タンホイザさんとも……ずっと仲良しでいたいですっ!」

『よし、よく言ったライスシャワー! 引っ込み思案だけど大事なとこはちゃんと言えるのは偉いぞ!
なので、お前らには友情も、レースも全力で頑張ってもらう。 この合宿は遊び回るためのものではない!
だが――遊んではいけないとは言っていない!』

🌸「おおおおっ、もしかして」
🌻「いいんですか」

『春の激戦の疲労を抜きつつ秋を迎えその間も各自鍛えるのがこの合宿の目的だ、そこには遊ぶことも――ふんだんに取り入れてよい!
今まで遊んで居なかった分、今日は海で徹底して遊んでこい!』

🕷️「おおおっ、いいですね話がわかりますね」
🌻「きゃーっ♪ いきましょう海です」
🍚「うわあ、うわあ、海だよ、遊んで良いんだって」
🌸「ここは私が水上走りの挑戦を」
🤖「……行ってきます、マスター」

『おう日焼けにはきをつけてこいよー』
「私達はここでのんびりしてるよ」
「僕達もバーベキューの準備しないと」
「ここは穴場だけど、モロコシもフランクもかき氷もないからねえ」
『あ、俺買い出し行ってきますよ。』
325 : 使い魔   2025/04/25 22:08:31 ID:52VuIaSPTI
おやすみなさい
326 : トレーナー   2025/04/25 22:53:44 ID:cSkRYxl/1I
良い青春だ

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