【安価SS】飛び級少女がトレセン学園でGIを目指す話
1 : ◆wuHHR64l1og   2024/07/05 05:30:15 ID:jpgfrBfaDo
がたん、ごとん。だっだっだっ……。
電車に揺られ、乗り換えて、後は駅から走って、合計1時間……今はお昼の1時くらい。
そこに、わたしの目的地はありました。

「わぁっ……!!」
そこは……門の外から見えるだけでも……とっても広くて、大きくて、通っていた小学校の何倍でしょうか?
明日から通うことになる、トレセン学園を目の前にして、わたしは思わず驚いちゃいます。
たぶん、耳もぴょこぴょこしてるはずです。ウマ娘なので!

学園に見とれていると、緑の帽子を被った女の人が話しかけてきました。
「あなたは……明日からの転入生の方ですね?お待ちしていましたよ。私、学園の事務担当……駿川たづなと申します」
「たづなさんですね!よろしくお願いしますっ!!わたしの名前は______」
わたしの方もきちっと自己紹介をした後、たづなさんに案内されて寮にやってきました!
ここはどうやら、栗東寮というらしく、寮長のウマ娘さんが案内を引き継ぐそうです!
「おやおや、本当にポニーちゃんがやってくるとはね。あ、私の名前はフジキセキ。
これからよろしくね」
「はいっ、よろしくお願いしますっ!」
優しそうな寮長のお姉さんに案内されて、私は寮の中をひと通り見て回りました!
そして……。
「______じゃあ、キミの部屋なんだけど……色々あって誰か2人の部屋に3人目として入ってもらうことになっているんだ。その部屋は……」
>>3(公式で判明済み同室コンビの部屋。調べて★)
292 : 使い魔   2024/10/02 13:27:58 ID:EALMat.7vs
>>291
ごめん、そこは悪かった。ところで流れを止めるよりあっちで話したほうがいいと思う
293 : ◆wuHHR64l1og   2024/10/02 13:41:02 ID:EALMat.7vs
ということで大変申し訳無い。この路線で進めさせてください。
最安価>>294
294 : ◆wuHHR64l1og   2024/10/03 06:46:43 ID:pSqjmPwIQs
もう少し書きます。

テレビ収録・放映から数日。
トレーニング休養日に出かけると、街の人の明るい視線を受けるようになり……少し恥ずかしいシュガー。
(これアレですか、時の人ってやつですか?)
ここに来てようやく、GI制覇の重みをなんとなく理解したような気がするが、
彼女の目標はこれ以上のその先を目指している。

クラシック3冠。その名の通り、クラシック級のウマ娘にしか目指せない栄光。
そしてシュガーは、今のところ3戦3勝の無敗だ。
まずは4月の皐月賞だが、トレーナーいわく目指せるかもしれない。
……無敗の3冠ウマ娘を。

無敗3冠。それはただクラシック3冠を勝つだけではなく、最終戦の菊花賞で勝つまでに"すべてのレースで負けないこと"。
3冠レースはおろか、叩きの前哨戦を挟む場合はそれすらも負けてはならない。

(……でも、やれるなら、やりたいなぁ)
今の自分に、それほどの力があるかはわからない。
だから、"やれるならやりたい"レベルの感情に留めるシュガー。

「あーっ!キミはーっ!」
(ん!?)
すると突然、後ろから声をかけられた。
やや甲高いその声に振り向くと……。
295 : ◆wuHHR64l1og   2024/10/03 06:47:25 ID:pSqjmPwIQs
キミ、この前ホープフルステークスで勝ったし、テレビにも出てたよねっ!?カッコよかったー!まあ、カイチョーには及ばないけどねっ」
「あ、あなたは……トウカイテイオーさん!?」

シュガーに声をかけたのは、かつて無敗で皐月賞・日本ダービーを制覇したウマ娘、トウカイテイオーであった。

「いやぁ寒いねー!そうだ、なにかの縁だし、あったかはちみー奢るよ!」
「えっ、ありがとうございます」

テイオーから冬仕様のはちみードリンクを奢ってもらったシュガーは、二人で公園のベンチに腰を下ろす。

(あ、あまい……!)

ハチミツといえば、温めると甘みの低下を引き起こしてしまうものだが、
このはちみーは普段の冷製はちみーより甘かった。
おかわりしたくなるほどに。

「……もう一杯欲しそうだね?」
「はいっ!!」
それを察したテイオーに、2杯目も奢ってもらうのだった
296 : ◆wuHHR64l1og   2024/10/03 06:47:33 ID:pSqjmPwIQs
「___無敗の3冠かぁ。すごく大きな目標だよ?それ」
シュガーの夢と、その上を行く大きな到達点。それを聞いたテイオーは、少し困ったような顔をした。
「いい?無敗の3冠ウマ娘っていうのは、ただ速いだけじゃなれないんだ。なんというか……一番運が強いウマ娘が、それを得られるんだと思う」
「運、ですか?」
「いくら脚が速くても、心肺能力が強くても、レース展開っていうのはどうなるか最後までわからない。それに……」
「それに??」
「すごくいいところで故障して、その夢を絶たれてしまうウマ娘だっている。……ボクとかね!」
(あ……)
シュガーは思い出した。このトウカイテイオーというウマ娘は、ダービーのあとに故障して菊花賞を断念せざるを得なくなったことを。
それに、フジキセキやアグネスタキオンなど、夢を絶たれたウマ娘は過去にも大勢いる。
「だから、"運"なんですね」
「でも、そこからやり直せたウマ娘だっている。……これまた、ボクもそうなんだけど」
「えっ!あ、そういえば……」

『______トウカイテイオー奇跡の復活ーッ!!』

長い休養期間を越えて、目の前にいる少女は有馬記念を勝った。
それを思い出したシュガーは、

(あれ?なんかものすごい人とお話してます!?)
まるでスター芸能人と会話しているかのような状態に陥ったのだった。
297 : ◆wuHHR64l1og   2024/10/03 06:48:34 ID:pSqjmPwIQs
それから数日後。
1月の終わりごろ……。

トレーニングを終えたシュガーは、休憩しながらトレーナーとミーティングをしていた。

「いい?シュガー。次の目標……皐月賞へ進むには、いくつかの重賞で好成績を出す必要があるの」
「え、まだわたしは駄目だったんですか!?」
「あっ、違うわね。あなたの場合はもうGIを勝っているから、戦績としては十分よ。ごめん」

軽く頭を下げたあと、トレーナーはホワイトボードを少し書き直した。
「……つまりはこの重賞には、あなたのライバルとなるであろうウマ娘が出走してくることになるわ」
「ライバル……」

3月期に開催される3つのレース……「弥生賞」・「若葉ステークス」・「スプリングステークス」で最低でも2着以内という成績を残せば、
皐月賞への優先出走権が与えられる。
ここで勝ったウマ娘が、シュガーライドを追う形になるのだ。

「3月は皐月賞へ向けての最終調整期間よ。だから、あまり他に時間を割けない……けれど、1つくらいなら、このトライアルレースの観戦に行ってもいい。どこにする?」
「そうですね……」

>>298
298 : 貴方   2024/10/03 07:05:36 ID:vHLG2Mw8CE
若葉ステークスで行きましょう
299 : ◆wuHHR64l1og   2024/10/04 14:33:05 ID:uWXxKCbK.M
「若葉ステークスがいいです!」
このレースは、他2つと違って重賞ではなく、ひとつ下のリステッド競走と呼ばれるクラスだ。
しかし、集まってくるウマ娘は重賞出走にも劣らない実力を持っている。
そしてその中からの勝者ともなれば……ライバルとして警戒すべき相手となるだろう。

(わかばって、なんかかわいい響きじゃないですか!)
……シュガー本人は、そこまで考えてはいないのだが。

どのトライアルレースも、開催は3月。
それまでにも、しっかりとトレーニングをしておかなければならない。

(GIを勝ったことで、今のシュガーには自信も満ち溢れているでしょう。
そんな中で、本番までどうトレーニングをすればいいのかしら?)
皐月賞はホープフルステークスと同じレース場・距離で開催される。
走りに対する不安は一切ないのが現状であり、今後のトレーニング方法に悩むトレーナー。

「シュガー。どんなトレーニングがしたい?4月の皐月賞までの間、あなたの意見も取り入れてみようと思うの」
「えっ、わたしのですか! いざそう言われると、うーん……」

数分悩んで、シュガーは自分の考えを伝えた。
>>300
300 : 相棒   2024/10/05 04:58:54 ID:n9GCN0Nafs
age安価下
301 : ◆wuHHR64l1og   2024/10/05 12:08:48 ID:n9GCN0Nafs
「……そのままで!いつもしてるトレーニングを頑張りたいです!」
「そのまま?」
「はいっ!何事もきそが大事って言うじゃないですか!」

シュガーは、普段通りのことをしたいと言った。
それを聞いて、トレーナーはハッとする。
(そっか、そうよね。何もすることが思いつかないなら、いつもしていることに真剣に取り組めばいい。結果はそれについてくるもの……か)

______結局、普段通りのトレーニングを続けるということで、話がまとまった。

それから2ヶ月後、3月中旬。


阪神レース場・11R「若葉ステークス」

『勝ったのはホワイトテイル!2着のウマ娘の追走をものともせず、逃げ切ってのゴールイン!』

良バ場開催となったこのレースで、ホワイトテイルというウマ娘が逃げ切った。
このレースでは2着までの優先出走権があるが、
1着のホワイトテイルが見せつけた圧倒的な走りはまるで「主役は自分だ」と言っているかのようであった。

(す、すごい……たしか、1000mのタイムが57.8って言ってましたよね……そんなに飛ばして、逃げ切るなんて……!)

レースの観戦に来ていたシュガーを驚かせたのは、先頭で走り続けたホワイトテイルが出した1000m57.8というタイムであった。

後半は少し鈍ったものの、それでも後続に3バ身という差での勝利。

(きょ、強敵になりそうですぅ……!!)

本番でも同様の走りをしてくるのであれば、最終的に追い抜かなければならない相手ということになる。
皐月賞まで数週間。最終調整として、越えなければならない壁ができたシュガーであった。
302 : トレぴっぴ   2024/10/05 19:00:37 ID:0jKUN0WUw6
取り急ぎ私服verをば

303 : ダンナ   2024/10/05 19:26:15 ID:n9GCN0Nafs
>>302
ねえ!?うちのここんな美少女で良いんですか!?
304 : ◆wuHHR64l1og   2024/10/05 19:45:38 ID:n9GCN0Nafs
次の日。
シュガーはとあるウマ娘に、併走をお願いしていた。
「私と併走を……?」
「はい!皐月賞のイメージトレーニングに、スズカさんの大逃げがぴったりなんです!」
異次元の逃亡者、サイレンススズカ。
彼女もまた、1000m57.4などのハイペースなタイムを出しながらも後半の逃げ切りに定評のある、中距離が専門の逃げウマ娘の一人だ。

若葉ステークスで見た、ホワイトテイルの逃げ。それに追いつくためには、近いかそれ以上の走りをするスズカこそ併走相手にふさわしいと、シュガーは考えたのだ。

「……わかったわ。私が持ってるものを、できる限りあなたにぶつけてみようと思う」
「ありがとうございます!」
305 : ◆wuHHR64l1og   2024/10/05 19:45:52 ID:n9GCN0Nafs
そして放課後、シュガーとスズカはグラウンドにやってきた。
異次元の逃亡者と、これから皐月賞に挑む”天才少女”。
見ごたえのありそうな併走ということで、周りには少しばかりの人だかりができている。
そんな中で、シュガーたちはウォーミングアップをしていた。

「ちょっと……きんちょーしますね?」
「そうね。でも、走れば気にならないわよ」

視線が気になるシュガーに対し、スズカは自分の世界に入る術を熟知しているようだ。

(走れば気にならない……)
スズカの見ている世界がどんなものか、静かに興味を馳せるシュガー。
……気がつくと、軽く心拍数が上がり、やや高揚した状態になっていることに気づく。
ウォーミングアップが終わったのだ。
(こ、これがそうなんでしょうか!?)
いわゆる”ゾーン”の片鱗に触れるシュガーなのであった……。

「距離は2000mで、良かったわよね?」
「はい!お願いします!」

スタート位置に立つ二人。今日は朝からずっと晴れていて、春の陽気が気持ちいい天気である。芝の状態も良好で、殆どのウマ娘にとって最高のコンディションだ。

「スタート、行くわよ」

シュガーのトレーナーがスターターとなり、片手を天に突き出す。
「よーい……ドン!」
掛け声とともに片手を振り下ろした直後、両者が一斉にスタートを決めた。
306 : ◆wuHHR64l1og   2024/10/05 19:47:41 ID:n9GCN0Nafs
>>302
遅れながらも感謝を。大感謝。ありがとうございます
307 : ◆wuHHR64l1og   2024/10/05 21:05:44 ID:n9GCN0Nafs
スタート直後、サイレンススズカが一気に前に出る。
(はやいっ!これが、スズカさん!!)
最序盤からのハイペースな逃げを見せつけられ、驚くシュガー。だが、自身は追い込みウマ娘なので、まだ前には出ない。逆転のチャンスは絶対にあると信じて。

______中盤、向正面を回って3コーナーへ差し掛かったところで、レース展開が変わる。
(ここから……っ!!)
シュガーが動いた。6バ身ほどの差で走るスズカに対し、ギアを上げて近づいていく。
「ここで引き離しますッ!!だぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
このあたりでもう、距離を突き放しておいたほうがいいと思ったのだ。
4コーナーを回る頃には、スズカとその前を走るシュガーの差は3バ身はあった。
残り310の短い最終直線のコースは、中山レース場を想定したものだ。
が、異次元の逃亡者がそれを黙ってみているわけもない。
(先頭の景色、返してもらうわッ!!)
1着しか見られないその景色を、勝つことで返上してもらう……スズカの脳内も走りも、先頭の景色を見ることだけでいっぱいであった。
308 : ◆wuHHR64l1og   2024/10/07 00:23:18 ID:OTW287ZlNE
うちのこにはスッと勝たせちゃったけど凱旋門賞の壁はまだまだ高い。
309 : ◆wuHHR64l1og   2024/10/07 06:01:42 ID:OTW287ZlNE
______静かに、プレッシャーが襲いかかる。

(っ……!?)

すべてを押しのけるようなそれを感じたと思った次の瞬間、シュガーの目の前にはスズカが走っていた。

(譲らない……!!)
(わたしだってっ!!)

最終直線でさらにバ身を開こうとするスズカに、シュガーが必死に猛追する。
この短い直線では、圧倒的回転数のピッチ走法では有利に働いているのだ。
しかし、結果は……。

スズカが1バ身差での1着。
シュガーはギリギリ、異次元の逃亡者を捕らえることはできなかった。

「はぁっ……はぁっ……」
流石はGIを走る大先輩だと、悔しさと同時に感激すら覚えているシュガーの内心。
疲れながらも微笑んでいるその表情に、スズカは。

「何か、掴めたかしら?」
「……はい!ありがとうございましたっ!!」

シュガーの中に芽生えた確信を感じ取り、皐月賞に向けてのエールを送るのだった。

それから数日後。4月に入り、桜が舞う春の季節がやってきた。

まずは、ニシノフラワーの出走する「桜花賞」
ここから始まる、クラシックGIシーズンの開幕である。
310 : ◆wuHHR64l1og   2024/10/07 12:20:19 ID:OTW287ZlNE
『ここ阪神レース場は桜満開の快晴模様です。バ場状態は良の発表で、もうすぐ発走となる桜花賞では、スピード勝負に期待がかかります』

スマホのラジオ機能を横に置きながら、シュガーはトレーニングに励んでいる。
桜花賞観戦は兵庫まで出向く必要があるので、スケジュールに余裕のない今回は断念することにしたのだ。

(フラワーちゃん……頑張って!)
心の中でエールを送りながら、シュガーは走り込みを続けた。
ふと思い出すのは、代わりにスイープトウショウが応援に行っているらしいが……。


「フラワー!ここで勝ってGI2勝目よっ!」
「もちろんです!がんばります!!」

阪神レース場の控室で、発走を待つフラワーにスイープが応援をしに来ていた。
自身のデビューはまだ先であるが、スイープのトレーナー曰く「今後のための視察」も兼ねてとのこと。

(うう……この前のチューリップ賞で、”無敗”じゃなくなっちゃって……)
フラワーは、前哨戦であるチューリップ賞に挑んだのだが、2着となってしまった。
持ち前の明るさとやる気で、どうにか繋いできたのだが、本番前になって蘇ってしまったようである。

「……しっかりしなさいよっ!」
「あ……」
フラワーの心境の変化になんとなく気づいたスイープが、背中を叩くように言葉をかける。
「たった一度負けたくらいじゃ、アンタがレースに掛けた”魔法”は消えないのよ!なんだったら、アタシが掛けなおしてあげるわ!」

(スイープさん……そうだ。わたしはまだ全然、がんばれますっ!)

スイープの言葉で、魔法にかかったかのように自身を取り戻したフラワー。
その後、トレーナーからもエールをもらい、ニシノフラワーはトリプルティアラ1戦目・桜花賞へと向かっていくのだった。
311 : ◆wuHHR64l1og   2024/10/08 07:39:22 ID:1jZU3PZW6s
「はっ、はっ、はっ……」
グラウンドでトレーニングを続けるシュガーライド。
フラワーのことは気になったが、自身も皐月賞のために頑張らなければならないのだ。

(いいわね……ホープフルステークスの時よりも、仕上がりがいい。8割ってところかしら?)

それを見守るトレーナーは、シュガーの成長に感心していた。今の時点で8割なので、事後報告で知ったサイレンススズカとの併走では、それよりも低い仕上がりで僅差に迫ったということになる。

(本番も、やれそうね)

トレーナーは、自信を持って確信していた。シュガーなら皐月賞を勝てると。

……そんな時だった。周りのウマ娘たちがざわつき始めたのは。

「あの人よ……!」
「今度皐月賞に出るっていう?カッコイー!!」
(誰??)

声が向けられているその主を見つけると、トレーナーは驚く。

(あの娘は……ホワイトテイル!)

雪のような白毛。尻尾までふわっとしている白毛。
美青年と見紛うくらいの、整った顔立ち。
そして、実力。

……シュガーの次に皐月賞制覇に期待のかかっているウマ娘・ホワイトテイルが、
グラウンドに姿を見せたのだ。
312 : ◆wuHHR64l1og   2024/10/10 05:40:39 ID:vaPKi5llv.
(……あの人、この前の!!)
暖かくなってきた春だというのに、一瞬だけ冬のような寒気と空気感を覚えたシュガーも、
グラウンドにやってきたホワイトテイルに気付く。

周りからの視線も歓声も、全く微動だにせず、
ホワイトテイルはゆっくりと歩き、シュガーライドの目の前まで来た。

「併走、良い?」
「えっ、あっ、どど、はいっ!」
(なんかいきなり、一緒に走ることになっちゃいましたー!?)

突然の誘いに驚いて語彙力も変になるシュガーであったが、半分は意図しない形で皐月賞のエキシビジョンマッチが実現したことに対する驚きである。


「これはチャンスよ、シュガー。リステッド勝ちでありながらも一番注目されている、スノーホワイトと走れるのは……」

「ですよねっ!本番に向けて、GIウマ娘としてがんばっちゃいます!」

「ま、まあ……油断はしないようにね?」

準備をするシュガーに言葉を送りながらも、トレーナーは少し不安であった。
GIウマ娘であることへの自信……それは時に、油断や慢心へと繋がってしまう。
だが、こうも考えた。それを本番前に解消できる機会が得られたことに、ホワイトテイルへ感謝したいと。


「……何歳なの?」
「歳ですか!?えっと……この前、たんじょうびを迎えたので……11歳ですっ!」
「……そう。私は14歳。それだけ」
(んんー!?!?)

スタート地点に立ち、ただお互いの年齢を知り合う会話を交わす二人。
それだけで終わってしまったので、シュガーは困惑しまくっている。
(14歳のお姉さん……でも、わたしはいつもどおりにっ!)

そして、併走……というか模擬レースが始まった。
313 : トレぴっぴ   2024/10/11 13:42:27 ID:5JVEnlQu.I
せいふくのすがた。
身長サバ読んだせいで少しサイズが大きいとかなんとか。

314 : ◆wuHHR64l1og   2024/10/11 14:02:05 ID:ajotV/KjO6
>>313
あり、がとう……ありがとう……!!
315 : ◆wuHHR64l1og   2024/10/11 20:59:10 ID:rbTx7fk8zI
2000m設定で、併走が始まった。
両者ともに良いスタート。

ホワイトテイルは若葉ステークスの時と同じく、序盤からペースを上げて飛ばしていく形に。
(思ったとおり、です!)
が、それはシュガーライドの思惑通りであった。
スズカとの併走で、大逃げに対する走り方を見出しているシュガーにとって、
もう同じような走りは怖くない。

淡々とペースを刻むホワイトテイルに対して、シュガーライドは4バ身ほど後ろでしっかりと脚をためる。

(いいわよシュガー。ハイペースで飛ばす相手にも、しっかりとマイペースでついて行っている。あとは終盤で追い越せば……)
シュガーのスタミナと、適応力の高さ。この2つにトレーナーはとても感心していた。
相手が逃げの手を打っても、自分自身が走れるペースで追走できれば、攻略しきれるかもしれない。レースの定石の一つであったが、トレーナーの中ではそれをシュガーに対して実感している。

1コーナー、2コーナー、向正面と行っても、レースは淀みなく進む。
1000mは58秒台と少し早めのペースであった。

シュガーが仕掛け始めたのは、3コーナーを過ぎた時。
「行きますッ!!だぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
スズカの時よりも仕掛けをやや遅くすることで、レース最終盤までしっかりと全力の脚を使い切れるように、トレーナーが考えた走りだ。
4コーナーを曲がりながら、小回りの効いた加速でホワイトテイルを追い抜き、先頭に立つ。
……はずだった。
316 : ◆wuHHR64l1og   2024/10/12 05:02:45 ID:FUQraIS7lQ
追い抜いた直後だった。シュガーに変化があったのは。

(っ……!? なに……?脚、うごかないっ……)
ほんのコンマ1秒にも満たない、しかし何秒にも感じられるような感覚。
シュガーは実感したのだ。”脚が完全に止まって、動かなくなってしまう”のを。

その僅かな瞬間に、ホワイトテイルは二の脚でシュガーを差し返し、振り切る。

(あ……っ!)
「くぅぅぅぅぅっ!!」
シュガーは我に返り、ホワイトテイルを追いかける。
しかし、僅かなフリーズが命取りの超速レースの世界……その差は縮まらなかった。

……結果は、3バ身差でホワイトテイルの1着。

周りの観衆たちは「惜しかった」という感情を抱く者が多かった。
しかし、シュガー自身は納得していない様子。

「はぁっ……はぁっ……あのとき……なんで……!?」

ほんの一瞬だった。4コーナーでホワイトテイルを追い抜いた時、シュガーの脚は確実に”動かなくなっていた”。

トレーナーにそれを伝えると、彼女はまず顔を真っ青にした。

「しゅ、シュガー……脚の精密検査を、受けてみましょう……」
「えっ!?」

トレーナーが疑ったのは、脚の故障。
皐月賞前にそれが発生したとなると、まずは出走を断念せざるを得ない。
さらには、それがどこまで深刻な症状であるか……もしや選手生命にも関わるレベルかも知れないのだ。

「わ、わかりました!」

が、シュガーには内心の大部分は伝えていなかった。今から不安にさせてしまっては、まだ幼い子供心を傷つけすぎてしまうからだ。

そして大病院へ行き、シュガーは検査を受けることになる。
317 : ◆wuHHR64l1og   2024/10/14 04:17:29 ID:oEOUlCNK4E
出た結論は……「異常なし」。

MRI検査などを行い、徹底的に身体の不調や異常をチェックしたのだが……シュガーはあまりにも健康体そのものであったのだ。
もちろん、脚部不安なんてものもなく、近頃は食事に対する血糖値スパイクも抑制できている。

検査の後でトレーナーから真意を聞かされたシュガーは「そんなに心配してくれたんですか!?大げさですよ~」
とその場では笑って流したのだが……。

(……じゃあ、あのときのアレはなんなんでしょう!?)
4コーナーでホワイトテイルを追い抜いた瞬間の、脚のフリーズ。
医者からも異常なしと言われてしまえばそこまでであり、あと数日に迫った皐月賞に不安を残す結果となってしまった。


次の日。栗東寮では、桜花賞を勝利したニシノフラワーのための祝賀会が開かれていた。

前目につけての好位抜け出しで、トリプルティアラの1冠目を掴んだフラワーの目前には、好みの料理がたくさん並べられている。

「わぁ……!こんなに、食べてもいいんですかっ!!」

夢のような空間に目をキラキラとさせるフラワー。

「はい。今日はあなたのためのお祝いです。"モード変更、楽しむ"に移行しましょう。フラワーさん」

ルームメイトのミホノブルボン含め、上の学年のウマ娘たちがサプライズで仕込んだものである。

(……いいなぁ。わたしも、皐月賞で勝ったら……)
今日は参加者の一人として……シュガーライドは、お祝いイスに座るフラワーに自分を重ねていた。

(でも……なんだろ……こんなに不安で……)

前日のホワイトテイルとの併走で、シュガーの心に影を落とすこととなってしまった謎の現象……解決策が見出せないままで皐月賞当日を迎えてしまうことに、
心の中で焦りも少し出ている。
318 : ◆wuHHR64l1og   2024/10/14 04:18:09 ID:oEOUlCNK4E
そんな時だった。
「……シュガーライドさんも、食べて良いんですよ?」
「あ、ジャーニーちゃん!」

不安な表情を浮かべるシュガーに声をかけてきたのは、ドリームジャーニー。
シュガーが学園内で出会った先輩ウマ娘の一人であり、なんとオルフェーヴルの姉である。
歳の離れた先輩でありながらも"ちゃん"付けで呼ぶシュガーだが、ジャーニーの方は気に入っているとか。

「なんというか、しょくよくが……」
「それは……いけませんね。レース前に節制気味であるならまだしも、食欲が無いとなれば本番に響いてしまう。……何か、悩みでも?」
「そ、それは……」
何かを心中に抱えている事を察していたドリームジャーニーと、それを見抜かれたシュガーライドは、話してみることにした。

シュガーは語った。皐月賞への優先出走権を手に入れたホワイトテイルとの併走の話……そこで起きた不可解な現象の事を。


「……なるほど。ではシュガーさん。軽く食べたら、少し併走をしませんか?」
「えっ!?ジャーニーちゃんと!?」
ジャーニーからの突然の申し出。走れるのは嬉しいが、それで何か解決の策が見つかるのかと心配するシュガーだったが、
そこはウマ娘としての本能が前に出ることになり、それを承諾するのであった。
319 : ◆wuHHR64l1og   2024/10/14 19:14:03 ID:oEOUlCNK4E
昼食を兼ねたパーティーを抜け、ドリームジャーニーと併走をすることになったシュガーライド。
二人はトレセン学園に行き、ジャージに着替え、グラウンドへとやってきた。

(ジャーニーちゃんと走れるんだ……オルフェーヴルさんもすっごく速かったけど、ジャーニーちゃんはどうなんだろう?)

シュガーから見て、ジャーニーの走りはひたすらに未知数だ。”暴君”オルフェーヴルの姉であること、自分と同じぐらい小柄なこと……その2つの要素が上手く混ざりきらず、予想も何も無い。

「……どうかしましたか?」
「あっ、ジャーニーちゃんと走るの、楽しみだなって!」
「そうですか。私もです、シュガーさん」

自身をじっと見つめるシュガーに、笑顔で返すジャーニー。
一瞬、シュガーは背筋がゾクッとした気がしたが……違和感はすぐに消えたので、気のせいだと思うことにするのだった。


(……姉上、催しを突然抜けられたかと思えば、こんな所に)

木陰から二人を見つめるウマ娘……オルフェーヴル。
ドリームジャーニーたちの不審な行動に目をつけ、真意を探るべく追ってきた。

「それにしても、久しいな……”あのような状態”の姉上を見るのは」
320 : ◆wuHHR64l1og   2024/10/15 00:45:43 ID:MS2V7DzGv2
「______私も追い込み脚質なので、シュガーさんの好きなタイミングでスパートを掛けてください」

その申し出の通り、スタート直後からドリームジャーニーとシュガーの走るペースはほとんどピッタリであり、同じ歩幅で走っていると言っても過言ではなかった。

(シュガーライドさん……思った以上の成長を遂げているようだ)
(ジャーニーちゃんっ! あなたのおかげなんですけどね!!)

シュガーと並びながら、ジャーニーは心のなかで驚いていた。去年の夏のデビューからの、この少女の進化に。

シュガーもなんとなくジャーニーの考えていることを理解し、返事をするようにアイサインを送った。

そして展開が動いたのは、4コーナーに差し掛かってからである。

(じゃあっ、ここからっ!!)

シュガーは広めのストライドに超人的なピッチを加え、歩幅を強化しながらスパートを掛け始めた。
ドリームジャーニーを3、4バ身も突き放し、一気に先頭に立つ。

その瞬間であった。先日と同じく、足がすごく重たくなり、走っていないようにも感じてしまう。そして、するどい刃物か何かで刺されたような、冷たい衝撃。
同時に湧き上がってくる、恐怖。

(やだっ、なんで、なんで。……っ!?)

直後、シュガーのスローになった視界に映ったのは……獣のような目つきで自分を追い抜くドリームジャーニーの姿であった。
321 : ◆wuHHR64l1og   2024/10/15 04:10:25 ID:MS2V7DzGv2
そして結果は、ドリームジャーニーの圧勝。
ホワイトテイルの時よりもバ身が開くことになってしまった。

「はぁっ……はぁっ……また、だ……」
息を荒げながら、あの感覚を思い出し続けるシュガー。
ハッキリと理解した。
自分は、怖かったのだと。


「……すみません、あの様な走り方をシュガーさん相手に」

立ち尽くすシュガーに、ジャーニーは頭を下げて謝罪した。
同時に、この併走の真意を伝えた。

「ホワイトテイルというウマ娘は……恐らく先程の私と同じ様に、自分の前を走ったシュガーさんに”ぶっ潰す”という強い感情をぶつけたのでしょう」
「ぶっつぶすっ!?」
「あくまで競争の中でですが、ある意味それを逸脱した物だとも言えます。私にもあるんですよ、とても強いライバルがいたら……喉元に食らいついてやるとか思うこと」

(わ、わぁ……)
いつもは平静で優しいドリームジャーニーにも、そんな一面があるのだと……心のなかで語彙力を失うシュガー。

「お話を聞いて、もしかしたらと思って……かなり近いと思う感情をむき出しにしてみたのですが、やはりという感じですね。あなたは……とても強い感情をぶつけられて、恐怖心が勝ってしまっている」

「きょ、恐怖心……わたしの心に……」

理解したつもりだった。だが、ジャーニーの説明でさらに腑に落ちた。
自分の脚は不調というより、ライバルからのプレッシャーによる強い恐怖心で止まってしまったのだと。
本番まで時間がない。シュガーは新たな課題の登場に、焦りを見せ始めるのだった。
322 : ◆wuHHR64l1og   2024/10/17 04:48:46 ID:n8d0UQ0gn6
皐月賞、当日。

かなりの快晴に恵まれ、バ場状態もいい。

桜吹雪の中で、絶好のレース日和であった。


「ああああああっ!どうしましょおおおおおおおっ!!」

「落ち着きなさいシュガー」

ついに課題を解決できないまま本番を迎えてしまったシュガーライド。
トレーナーとも協力して色々考えたが……あまりにも時間が足りなかった。

(レースが動くのは終盤……恐らく、ホワイトテイルとシュガーの一騎打ちになる……問題はその瞬間よね……)

シュガーから事情をしっかり聞いたトレーナーも一人で出来ることを探したが、解決には至らずである。
後方にいる、バ身が近いウマ娘から強いプレッシャーを受けたとき、一瞬でも脚が止まってしまうという問題……実戦にそれを持ち込んでしまえば、GIで1着を目指すのはとても困難だ。

……しかし、いくら狼狽えていようとも、シュガーライドは走る気だ。

なぜなら、彼女は既に勝負服へと着替えているからである。

「……はぁ。こ、ここまで来たら……やるしかないんですよね。いいですよ、やってやります。そして、勝ってきますから!!」

トレーナーは正直なところ、行かせたくなかった。皐月賞が穫れなくても、ダービー・菊花賞がある。しかし、そんな話をしてしまえばシュガーはとても怒ってしまうだろうというのは目に見えていたので、

ターフに向かう小さな天才少女の後ろ姿を……見送るしかなかったのだ。
323 : ◆wuHHR64l1og   2024/10/17 06:42:39 ID:n8d0UQ0gn6
ちょっとここで安価復活>>324(ホワイトテイルの勝負服)

容姿
・雪のような白毛
・イケメン寄りのお顔
・尻尾はもふっとしている
324 : 使い魔   2024/10/17 07:00:00 ID:YFFPHpKrmE
自分同様、真っ白な燕尾服。
325 : モルモット君   2024/10/17 07:22:33 ID:n8d0UQ0gn6
>>324
デュランダルさん!?
326 : ◆wuHHR64l1og   2024/10/17 07:56:53 ID:n8d0UQ0gn6
いやこれデュランダルじゃない……アルダン??
327 : ◆wuHHR64l1og   2024/10/17 08:17:28 ID:n8d0UQ0gn6
地下バ道を進むシュガーライドの視界に、一人のウマ娘が映る。

(あれ、は……あっ!)

彼女にとっては、見覚えがありすぎる相手であった。
それと同時に、今回立ちはだかる強大な壁。

「……あなた、この間の」

足音と気配に気づいたのか、ホワイトテイルが振り向く。

彼女の勝負服は、燕尾服を思わせるデザインのものだ。
細身ではあるがそのスタイルの良さが際立つ、おそらくパドックでもビジュアルだけで注目を集めるであろうそれに、

(かっこいい……)
思わず見惚れてしまうシュガーであった。
「何か用でも?」
「あっ!すみません、勝負服がかっこよくてついつい……」
「……なんだ、それだけか」

ホワイトテイルは踵を返してターフへと向かう。
そんな彼女をシュガーは大声で呼び止める。

「あのっ!!」
「……だから何なの?」
「こっ、この前はギリギリで負けちゃいました!でもっ、今日は負けません!皐月賞、わたしが勝ちますからっ!!」

シュガーが言い放った宣戦布告は、ホワイトテイルだけに向けられているものではない。
自分自身への言葉でもあった。絶対に勝つ。恐怖にも、勝負にも。
そんな思いを込めながら、シュガーは叫んだ。

「……同じ」
「えっ?」
「私も、同じ。一番人気である、あなたにだけじゃない。全員に勝つ」

それに答えるように、ホワイトテイルも宣戦布告。あっけにとられるシュガーに背を向け、今度こそターフへと歩いていくのだった。

(全員、かぁ……)

そう、ライバルとなるウマ娘はホワイトテイルだけではない。
全員を追い抜かなければ、一着はありえない。
シュガーは両頬を叩くと、気合を入れる。

そして自分も、ターフへと向かうのだった。
328 : ◆wuHHR64l1og   2024/10/17 19:14:51 ID:n8d0UQ0gn6
『快晴に恵まれた中山レース場。クラシック3冠の第1戦・皐月賞がまもなく発走となります』

桜花賞から続く、クラシックGIの2戦目……会場には大勢の観客たちがいて、既に大歓声だ。

パドックで、ポージングによる自己アピールをする出走ウマ娘たち。その中に、シュガーライドの姿もあった。

(わ、わたし、ついにこのレースまで来ちゃったんですね……!)

まだ着慣れていない勝負服に身を包み、クラシック3冠の舞台に立っていることを驚く少女は、圧倒的一番人気である。
ホープフルステークスでの勝利もあるが、まだ小学生というハンデすら感じさせない圧倒的な走りが、ファンの心を掴んでいるようだ。

(不安なことはまだあるけど、後はもう走るだけ。ですっ!)

走ってみないことには何もわからない。上手くいくかもしれない。
だから自分は自分の走りをするだけ。
強い意志に飲まれるなというメジロブライトからのメッセージも思い出し、
シュガーライドは前を向く。

シュガーの枠>>329
ホワイトテイルの枠>>330
レース展開(中盤まで)>>331
329 : ◆wuHHR64l1og   2024/10/17 20:27:58 ID:n8d0UQ0gn6
あー待ってこれは自力がいいかぁ……
330 : ◆wuHHR64l1og   2024/10/17 20:50:45 ID:n8d0UQ0gn6

シュガーの枠は18枠中の最内1番ゲートであった。
ロスなく走れるポイントではあるものの、追い込みのウマ娘にとってはバ群からの抜け出しが必須になってくる場所でもある。
対して、ライバル・ホワイトテイルの枠は大外。
逃げを打つのならば、臨機応変な展開が求められる。外目はスタミナを多く消費するというのは、レース界での常識である。

(……)
ゲートの中で、出走を待つシュガー。
太陽の日差しに温められた中山の芝はとてもふかふかしていて、
踏んでいるだけでも気持ちがいいようだ。

『さあ、最後に大外枠・2番人気のホワイトテイルがゲートイン。これで18人がゲート入りして、体勢完了です』

「よしっ……!」

実況が聞こえて、シュガーは気持ちを切り替える。

『最初の1冠目を掴むのはどのウマ娘か?皐月賞……今、スタートしました!』


ちょうど埋まるから>>331だけ安価
331 : アンタ   2024/10/17 21:07:13 ID:YFFPHpKrmE
皐月賞は芝2000m。後方に居ると不利なのでシュガーは集団の中程に位置を取る。先頭から数えると5番手。ホワイトテイルは7番手だ。
スタート地点から約275mは下り坂が続き、体力の消耗は少なめ。第1コーナー、そして第2コーナーを無事通過。
向正面でシュガーは1人抜いて4番手に位置を上げた。ホワイトテイルも6番手。
第3コーナーを周り、そして最終コーナーを周ると「中山の坂」が待ち構える。約2.4mの高低差をたった300mで駆け上がるのだ。
332 : ◆wuHHR64l1og   2024/10/18 03:59:18 ID:gLUKOWhDoM
『4番・5番が逃げてペースを作ります。1番人気シュガーライド・2番人気ホワイトテイルは
共に中団。後半の末脚に期待がかかります』

スタートしてすぐ、会場のざわつきが大きくなった。
各ウマ娘が揃っての駆け出しだったのだが、逃げると思われていたホワイトテイルは先頭から7番手ほどに構えたのだ。
(えっ!?逃げないんですか!?)
驚くシュガーも5番手の位置を走っている。今回は中団で脚を溜め、最後の短い直線で爆発させるという計画があるのだ。
だからこそ、ホワイトテイルのポジション取りは都合がいいと思った。
一番警戒したいライバルがもしも埋もれるようなことがあれば、あとは独走するだけなのだ。

『バ群はやや縦長の展開。各ウマ娘、下り坂を超えていきます』
先頭を逃げる二人のウマ娘のペースは速いようで、それに釣られてか全体の空間がやや広くなっている。
その後、滞りなく1コーナーと2コーナーを回り、向正面へ。
(少し、位置を上げないとっ!)
ポジションをキープしていたシュガーだったが、後半の仕掛けどころを確保するために、前を走っている一人を空いた隙間から抜いた。それと同時に最内レーンからも外れている。

……が、シュガーが気づいていないのは、ホワイトテイルも同様にポジションを上げてきている事である。

『さあ、3コーナー・スパイラルカーブに掛かります。ここからが仕掛けどころ!』
333 : ◆wuHHR64l1og   2024/10/18 03:59:29 ID:gLUKOWhDoM
レース終盤。小回りの強い3・4コーナーに入った。
外目を回るウマ娘や大回りな走りのウマ娘は、ここで脱落するかロスを大きく受けやすい。
(ここからッ!)
『シュガーライド仕掛けたっ!ややインを突く形で前に出て、先頭を捉える勢い!』
前が膨らんだり、逃げのウマ娘たちのペースが下がってきたのを見て、ここで仕掛けることを選択したシュガー。
闘志に火をつけ、脚の回転数を大幅に上げながら、前をどんどん追い抜いていく。
『シュガーライド先頭!シュガーライド先頭ッ!』

(いけますっ!3冠の最初の一つ!わたしがッ!!)
眼の前には誰もいない。あとは最後の坂を登るのみ。
……のはずだった。

(あ。)

感じる、硬直。
まさか?何で?と不思議に思うシュガー。
もう少し、なのに。もう少しで、勝てるのに。

スローになっている視界に入ったのは、後続をぐんぐん抜いて上がってきたホワイトテイルの姿だった。
334 : ◆wuHHR64l1og   2024/10/19 04:35:39 ID:N5jlIM3Er6
______動いて、動いて、動いて。
何度そう願っても、先頭からある程度引き離されるまで、
また脚が動き出すことはなく。


『ホワイトテイル1着ーッ!前走とは打って変わった圧倒的な末脚で、皐月賞を制しました!!』

実況とともに、勝者へと送られる歓声。

今年の皐月賞を勝ったのは、2番人気のホワイトテイル。
リステッド勝ちからの大舞台での勝利ということで、SNS等では既に大盛りあがりを見せている。

(まけ、た……)
シュガーライドは最終直線で追い抜かれ、巻き返せなかったものの後続を引き離しての2着。それにより2冠目・日本ダービーへの出走権も獲得したのだが……、

(わたし、かてなかった……1冠目……とれなかった……)

ここでの敗北は3冠ウマ娘への道が閉ざされたことを意味している。
しかも、無敗でもなくなってしまった。
シュガーの心に渦巻くのは、くやしさ。
ただひたすらに、色々な目標が閉ざされた事へのくやしさ。

またやってしまったと思った。ドリームジャーニーから言われた「恐怖心」を克服できずに、
脚が止まってしまった。本番でそれを発生させてはいけなかったのに、やってしまった。
335 : ◆wuHHR64l1og   2024/10/19 04:36:04 ID:N5jlIM3Er6
(……)
ターフの上で立ち尽くすシュガー。
そこに……。

「本気じゃなかったね」
「あっ……!」

ホワイトテイルが話しかけてきた。少しばかり苛立ちを見せているようにも感じて、シュガーは驚いてしまった。

「今回、私は勝った。でも、つまらない」
「どう……してですか?」
「最後、あなたを追い抜いても、何も感じなかった。前に走った時と同じで」
「それ、は……」

シュガーはなんとなく察した。ホワイトテイルは、実力を最大限発揮した相手と戦いたいのだ。しかし、2度の対決でも、シュガーは恐怖心によって力を出しきれずに敗北している。

「……ダービー。ここでは見せてくれるかな?あなたの本気」

ホワイトテイルはそう言い残して、記念撮影や勝者インタビューへと臨んでいった。

(わたし……どうすれば……)

シュガーは色々な不安を抱えつつも、その後のウイニングライブ「winning_the_soul」を2番手でしっかり歌って踊り、最後まで気丈に振る舞っていた。

帰りの電車の中ではトレーナーに抱かれながら、降りる駅までずっとすすり泣いていたのだが……それはまた別のお話。
336 : ◆wuHHR64l1og   2024/10/19 07:05:07 ID:N5jlIM3Er6
皐月賞が終わって数日。休みも終わったシュガーライドは、トレーニングに復帰していた。
「だぁぁぁぁぁぁっ!!」
練習コースの最終直線。普段の自分のスタイルを意識して、末脚で駆ける。
「いい上がりタイムよ!シュガー!これなら次の日本ダービーでも……」
計測をしていたトレーナーからも高評価で、皐月賞からの悪影響は感じられない。

次はダービー。今度こそ、負けられない。負けたくない。本気で走って、勝ちたい。
そう思ってはいるのだが……。

(わたし……やれるのかな?)
2本目を走りながら、シュガーは悩んでいた。
ここでいい走りをしていても、本番で最高のパフォーマンスを発揮できるのかと。
何より、恐怖心を克服できていないのだ。後方から強い闘志を向けられた際の、脚のフリーズを。

ダービーでもそうなってしまえば、勝ちはないとわかっている。
ホワイトテイル以外からもそれを向けられてしまうかもしれない……誰が相手でも、
この状態は克服しなければならない大問題なのだ。

______トレーニングが終わり、更衣室で制服に着替えたシュガーは、噴水前のベンチに座っていた。

「はぁ……」
大きなため息を吐き、うなだれるシュガー。
今の彼女の心の中には、おそらく人生最大の不安が詰まっている。
そこに、一人のウマ娘が現れた。

>>337
337 : トレーナー君   2024/10/19 11:05:15 ID:N5jlIM3Er6
安価下 次で来なきゃ自力で

(公式化ウマ娘で)
338 : ◆wuHHR64l1og   2024/10/19 13:37:28 ID:N5jlIM3Er6
書けたので停止で
339 : ◆wuHHR64l1og   2024/10/19 13:52:15 ID:N5jlIM3Er6
「シュガーライドさんも来てたんですね!」
「あ、フラワーちゃん……」

自身も練習終わりなのか、少し火照った様子でベンチに腰を下ろすニシノフラワー。
今のシュガーとは対象的に、明るい表情を浮かべている。

「フラワーちゃんは……いいですよね」
「えっ?何がです??」
「この前、桜花賞で勝てて……次のオークスで勝ったら2冠目……だけど、わたしはもう……」

不安げに話すシュガーを見て、フラワーはグッと彼女の手を握った。

「えっと、そのっ! わたしもっ、ほんとは不安でいっぱいで……しかも1回負けちゃってますし、シュガーさんの気持ち、わかりますっ!!」
(あ……)
熱心に喋るフラワーに、シュガーは思わずハッとしてしまう。
ニシノフラワーも、桜花賞の前哨戦を勝てずじまいに終わっていたじゃないかと。
だけどこの少女は、一生懸命に前を向いている。
そして桜花賞を制覇した。

「だけどっ!負けちゃってもっ!無敗じゃなくなってもっ!1度かけた”魔法”は消えないんですっ!!」
「……まほう?」
「あっ、すみません!スイープさんからの受け売り、です」

そういえばと思うシュガー。
スイープトウショウといえば、いつも熱心に魔法の研究をしている。
彼女が、よく言っていることがある。
340 : ◆wuHHR64l1og   2024/10/19 13:52:37 ID:N5jlIM3Er6
「レースの、魔法……」

ふと思い出す。トレセンに来てからのことを。
色々な人と出会って、様々な形で応援をしてもらっている。
シュガーは気づく。自分の持つ影響力というものを。

それはまるで魔法のように、シュガーから誰かへ、誰かからシュガーへ移っていく。

その魔法は、簡単には消えない。
自分がやってきたことは、負けたくらいじゃ無駄にはならない……!

(応援してくれてるみんなが、いまの”わたし”を作ってる……そうなんですね。
ああ、なんだろう……そう思うだけで、安心してきます)
自分の中の、記憶や経験、想いを改めて感じ取ったシュガー。
そうしているうちに、不安や恐怖心はどんどん薄れていっているのがわかった。

「……ありがとう、フラワーちゃん。わたし、次の日本ダービーは勝ちます!」
「じゃあこっちも、オークスを勝ちますっ!」

前を向いたシュガーはフラワーに向けて誓い、
改めて日本ダービー制覇を目指すのだった。


そして数週間後、5月の半ば。

オークスは、予想外の結末を迎える。

『なんと1番人気ニシノフラワー!7着ッ!着外という結果になってしまいました!!』

最終コーナーまではスムーズに回れたものの、そこから伸びきれずの7着。
テレビで中継を見ていたシュガーにも、衝撃的な出来事となった。

(フラワーちゃん……でも、わたしは絶対、ダービーを勝ちますから……!!)

あの日の誓いを、自分も破ってしまうことだけは避けたい。
きっと、どちらも変な空気が流れてしまうかもしれない。
友人関係的な話でも、シュガーにダービーを勝つ理由が増えてしまった。
341 : ◆wuHHR64l1og   2024/10/19 13:53:10 ID:N5jlIM3Er6
その後シュガーは、今度は自分からドリームジャーニーに声をかけに行く。
「おや、また併走ですか?……あの日よりも、なんだかいい目をしていますね」
「はいっ!今度は負けませんっ!」

1ヶ月前のリベンジで、もう一度併走を行うことになったシュガーとジャーニー。

シュガーは、ただ気持ちを切り替えただけではない。
それをここで試したいのだ。自分の成長を。

「よし、それじゃあ……スタートッ!」

グラウンドに移動し、トレーナーの合図で駆け出す両者。
どちらとも絶好のスタートを切り、そこでのロスは見られない。

(なるほど、短期間で状態がとても良くなっている。しかし、最終直線でどうなるか……)
ドリームジャーニーは走りながら、シュガーの心の問題を気にしていた。
ここを解決しなければ始まらない。次のダービーにも100%では臨めない。
そして問題の3・4コーナー。
「行きますっ!だぁぁぁぁぁっ!!」
シュガーが前に出てスパートを掛けに行く。
その瞬間、感じる。
(……っ!!)
とてつもないプレッシャー。今にも脚を止めたくなるほどの、強いプレッシャー。
しかし、今は違う。

「これは……!!」
ドリームジャーニーがシュガーに並ぶ。そして追い抜こうとする。だが、抜けないのだ。

(なるほど、これがオルに迫ったというっ!!)

妹・オルフェーヴルから聞いていた……突き放したものの、ギリギリまで迫られたという話。
前回見られなかったその末脚を、彼女は今この目で見ている。

そしてシュガーはそのまま、2バ身ほどの差をつけてゴールするのだった。

併走の後、木陰で水分を摂る二人。
とてつもない進化を遂げていたシュガーに、ジャーニーが尋ねる。

「……何があなたを変えたんです?」
「なんでしょうね?むずかしいですけど……」



______数日後。ついに日本ダービー当日を迎えた。
342 : ◆wuHHR64l1og   2024/10/19 16:35:47 ID:N5jlIM3Er6
『オークスの熱気冷めない中、東京レース場ではついに日本ダービーが開催されます』

クラシック級ウマ娘の出るクラシックGIの中でも、日本ダービーは特に格式の高いレースと言われている。この路線に進んだウマ娘たちは、3冠の中でも特にダービーだけは絶対に勝ちたいという娘が多い。

そんな人気の高さは観客たちにも現れており、東京レース場の指定席も自由席も開始30分前の今の時点ですでに超満員となっている。

「シュガー。ダービーよ」
「はい、トレーナーさん!ダービーですね!」

控室で勝負服に着替えたシュガーは、備え付けのソファに座ってトレーナーと会話をしていた。
クラシック2冠目……今度こそ勝ちたいという想いは、ヒトもウマ娘も同じ。
ここ最近のシュガーの変化に最初は驚きを隠せないトレーナーであったが、走りにも現れているのを感じ取って納得したようだ。

「日本ダービー……ぜったい勝ってきます!」
「ええ、記念撮影もしましょう。絶対」
「はいっ!!それに、ライブのセンターで歌ってるのも、しっかりろくがしてくださいねっ!」

勝った暁の様々な約束事を交わし、シュガーライドは控室を後にする。
343 : ◆wuHHR64l1og   2024/10/19 16:36:16 ID:N5jlIM3Er6

「ふぅ……」
少し呼吸をするだけで、その音すら反響する地下バ道。この空気感をシュガーは意外と気にっているのだ。

「……来たね」
少し歩くと、待ち構えていたかのようにホワイトテイルの姿があった。

「私は、ここも勝つ。そして3冠目も」
「いいえ、ダービーも菊花賞も、わたしが勝っちゃいますから!」
「……すごい自信」

物静かで、やや寡黙な一面のあるホワイトテイルも、シュガーの熱意には表情を変えて驚く。
そんな彼女に、シュガーは少し話をしてみることに。

「気になってたんですけど、どうしてそんなに強いんですか!つまり原動力ってなんですか!?」
「……走るの、好きだから。それで1番になって、もっと上の頂点に立ちたい」
「へぇー!わたしと似てます!わたしも、走るの大好きですからっ!」

普段は無口なホワイトテイルも、話してみれば自分と似たような熱意を持っている。
ギリギリまで抱いていたクールなイメージが少し和らぎ、心の中で彼女を想う感情に変化があることを感じ取ったシュガー。

(……今日は、今まででいちばん頑張れそうですっ!)

さらなる自信をつけて、ターフへと向かっていくのだった。
344 : ◆wuHHR64l1og   2024/10/20 03:43:57 ID:I0FsyMs1uI
『まもなく発走を迎えます、日本ダービー。前走の覇者であり1番人気のホワイトテイルは4番ゲートです。今回はどのような走りを見せてくれるのか』

5月の暖かさが感じられる晴れ模様となった東京レース場のターフに、18人のウマ娘が集う。
ホワイトテイルは内寄りの4番ゲート。
シュガーライドは10番ゲートだ。
バ場状態も良く、芝の荒れはどのレーンでも少ないようである。

観客たちが今回期待しているのは、ホワイトテイルの作戦だ。逃げても追い込んでも圧倒的な走りを見せる彼女の変幻自在な脚質に、注目が高まっているのだ。
対するシュガーはこれまでの戦績もあって2番人気。やはり前走での敗北が響いた形だ。

「すーっ……はぁー……」

ゲートの中で、ゆっくりと深呼吸をするシュガー。
時折、地面を踏みしめて感触を確かめたりもしている。

(日本ダービー……ウマ娘たちの、おっきな目標……)

まだ普通の小学生だったあの頃も、毎年の日本ダービー開催時はテレビに食いつくように見ていたのを思い出す。シュガーにとっても、ダービーというのは何か大きな輝きを感じるGIレースなのだ。

『最後に、大外枠18番のウマ娘がゲートインして……各ウマ娘、体勢完了です。
さあ……これから始まるのは、優駿たちの夢の祭典ッ!日本ダービー……今、スタートしました!』

〈日本ダービー 東京2400m 芝 晴・良 18人 左〉
345 : ◆wuHHR64l1og   2024/10/20 06:05:19 ID:I0FsyMs1uI
『各ウマ娘、揃っての綺麗なスタート。果たして誰が行くのか……』

シュガーライドも出遅れることなく、スタートダッシュを決めた。
夢に向かって駆ける18人のウマ娘たちが、それぞれの走りでレースを作っていく。

『まず前に出たのは最内1番のウマ娘!……おおっと!これは意外ッ!1番、大逃げに打って出たッ!!』

最内枠を走るウマ娘が、最初から前を突き放し続ける「大逃げ」を選んだ。
2400mという距離にもなれば、そのハイペースさから終盤に失速してしまうこともあるが、ハマればそのまま逃げ切ってゴールしてしまう、博打のような脚質作戦だ。

後続のウマ娘たちはそれに付いていかない選択をした。同じだけのペースで走れば、自分も失速してしまうリスクを伴う。突き放される覚悟と追いついて追い抜く覚悟の両方を兼ね備えなければならない。

(前、どうなってるんでしょう……)
シュガーは最後方に控える形を取った。
いつもの通りの終盤の末脚を発揮するのに、このポジションは十分すぎる。
前の状況が全く把握できなくなるというデメリットはあるが、最後は全員を追い抜くのだから関係ない話なのだ。

(また、中団からか)
1番人気ホワイトテイルは、大逃げを警戒して団子になっている中団の、13人中7番手ほどにいた。本人としてはどこでも走れるのだが、個人的には逃げを好んでおり、皐月賞と同じく先頭にいけないことに憤っているようだ。


『各ウマ娘、スタンド前を通過し1コーナーに掛かります。しかし先頭1番は、すでに2コーナーを過ぎる大逃げを続けているッ!』

大逃げを続ける1番のウマ娘は、まだペースが落ちないようだ。
そして後方のウマ娘たちが同じく2コーナーを通過する頃、1000m通過タイムが発表された。
『最初の1000mは57.6!これはとてつもないハイペース!先頭は粘り切れるのか!後続は間に合うのかーッ!?』
346 : ◆wuHHR64l1og   2024/10/20 06:54:53 ID:I0FsyMs1uI
そして、坂を下って3コーナーに入った所で、展開が動き出す。

『ここで後続のウマ娘たちが前に行き始めるッ!先頭1番は厳しいか!?』
流石のハイペースも、ここまでといったところだろうか。
徐々に遅くなりだし、それに合わせて後続が一気に差をつけようと前に出る。

(ここからっ……!)
最後方にいたシュガーライドも、団子状態が解消され始めていることに気づき、急加速を始めた。
4コーナーを回れば最終直線の前に急坂が待ち構えており、この地点で一瞬だけペースが落ちる。
そこを、天才少女は見逃さなかった。

「だあぁぁぁぁぁぁっ!!」

『ここで大外からっ!最後方からぐんぐん伸びてくるのはシュガーライドッ!皐月の雪辱を果たせるか!!』
小柄な身体と圧倒的な瞬発力で、外からバ群を追い抜いていき、トップに躍り出る。

(……させない!)
ペースが早くなりだして5番手ほどにいたホワイトテイルも加速を始める。
残り525mの最終直線。前回、シュガーライドを追い抜くに至った末脚で、ここでもまた勝利を攫わんと駆ける。

(来ましたねっ!でもっ、もうっ、止まりませんッ!!)
「やぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
ホワイトテイルが自分の後ろにいることに気づくシュガー。しかし、少女の脚は止まらない。
何が彼女をそうさせているのか。恐怖心はどこへ行ったのか。
(わたしはっ!思ってるよりっ!とっても強いんですっ!!)

今のシュガーの心を支えているのは、ある種の自己暗示であった。
学園に来てから、たくさんの想いが自分を成長させて……今の自分は、強くなったと。
恐怖心なんて跳ね除けられるくらい、強くなったんだと。

だからもう、少女は止まらない。

『シュガーライド先頭ッ!ホワイトテイルも追いすがる!しかし差が縮まらないッ!
4バ身ッ!シュガーライド、先頭でゴールッ!!!!』
347 : ◆wuHHR64l1og   2024/10/20 07:27:24 ID:I0FsyMs1uI

______何があなたを変えたんです?
______なんでしょうね?むずかしいですけど……。



「はぁっ……はぁっ……!!」

激走の末、シュガーライドは1着になった。
GIを、それも日本ダービーを制覇したのだ。

大の字になってターフの上に寝転ぶ形となり、大きく息を吸って吐くを繰り返す。

「か、かてっ、ましたっ!!」

歓声に包まれながら、宙に向かってガッツポーズのように手を伸ばし、喜ぶ。
ダービーを制覇できた。そして、弱点を克服できた。
最高の気分であった。やりきったと感じた。

「……そんなに強かったんだ」
「あ、ホワイトテイルさん……」

見下ろし、話しかけてくるホワイトテイル。
笑みの中に、僅かだが驚きも混ざっている。

「……やっと、本気で勝負できたね」
「はいっ!やっと、本気のわたしを出せましたっ!」

皐月賞の後に言われたこと……

本気で走っておらず、そんな自分を追い抜いても嬉しくなかったと。
何も感じなかったとまで言われた。

しかし今回は違った。
どちらも、最後の瞬間まで燃える走りができたのだ。

「……あと1冠。菊花賞は、私が貰う」
「いえ!菊花賞も勝って、わたしが2冠ウマ娘ですっ!」

だが、まだ終わりではない。クラシック3冠の最後の1つ、菊花賞が残っている。
10月に行われる、京都レース場での3000mという長い距離で行われるGI競争だ。

「ふぅっ……よし!」
呼吸を整えたシュガーはゆっくり立ち上がると、客席に向かって深々と一礼。
こうして天才少女は日本ダービーを制し、心身ともにさらなる成長を遂げるのであった。
348 : ◆wuHHR64l1og   2024/10/20 19:19:18 ID:I0FsyMs1uI
激走の日本ダービーから数日。
トレセン学園は梅雨に入り、夏の気配を感じ始めていた。

「______それで、相談ってなによ?フラワー」
「はい、スイープさん。実はですね……」

雨降る渡り廊下で、
まるで密談のように会話をするニシノフラワーとスイープトウショウ。
フラワーがスイープに相談したのは、自身の今後の路線についてであった。

「トリプルティアラを諦めて……短距離路線に挑戦したい?」

フラワーはマイル中距離路線を諦め、短距離・マイル路線を戦っていきたいという。
一番は距離適性の問題があり、トレーナーの見立てでは2000mの距離も体力が持たないとのこと。

「わたしは、自分の走りが誰かにとっての魔法になるんだって気づきました。
でも、今のままじゃそれをしっかり届けることができないんです。だから……」

満足に走れないようでは、自分の想いを周りに届けられない。
そのためには、短距離路線が一番合っている……ということだ。

それに対してスイープは数秒黙り込んだ後、返事をする。

「いいんじゃない?グランマにも言われたの、人生は1度しかないから、思ったことをやりなさいって。まぁ、アタシはトリプルティアラを目指そうと思ってるから、中距離で当たれなくなるのは残念ね」

最も尊敬する祖母の言葉を引用し、フラワーに肯定の言葉を返すスイープ。
フラワーは意外そうな顔をした。少しでも否定されるものかと思っていたからだ。
そもそもなぜスイープに話を持ちかけたのか。
349 : ◆wuHHR64l1og   2024/10/20 19:19:26 ID:I0FsyMs1uI
今のフラワーにとって、スイープがある種の特別な存在であったのだ。
デビューはまだ先だが、自分じゃたどり着けない考えや言葉をいくつも持っていて、
憧れの的のような存在なのだ。

「じゃあとりあえず心機一転で……アタシのことをタメ口で呼ぶこと!」
「えっ!それじゃあ……スイちゃんとか?」
「良いわねスイちゃん!それでいきましょ!!」

スイープのことをあだ名で呼ぶようになったフラワーは、
自分の中で小さな何かが成長したのを感じた。
そして先程よりも確かに、短距離路線への意識を強く持つのだった。
350 : ◆wuHHR64l1og   2024/10/21 02:54:06 ID:poree9YDWI
シュガーの方はというと、ダービーの後はトレーニングを行いつつの休養期間に入ることにしていた。
サマーシリーズなどの重賞には参加せず、菊花賞に向けてのカラダつくりを徹底するのだ。
宝塚記念の投票では1桁順位に推されたりもしたが、これは当然回避。
過去にはクラシック級でありながら人気投票1位となって出走し、シニア級ウマ娘との同着で制覇したウマ娘もいるが、秋のクラシックGIへの参加が危ぶまれる程の怪我を負ったというケースがある。
そういった点も踏まえて、無理はさせないというトレーナーの方針だ。

「雨ですねぇ……」

屋内トレーニング場の窓から、土砂降りの外を見つめるシュガー。
本人としては外で思い切り走りたいところではあるが、この天気では難しいものがある。

(おへやでも出来るトレーニングかぁ……ここにはトレーニング道具がいっぱいありますけど、
今日はどれを使いましょうか?)

200kg程度のバーベルや時速60km出るランニングマシンなど、常人ではないウマ娘向けの器具は一通り揃っているのだ。

(トレーナーさんの話では、菊花賞に向けてのトレーニングは、これまたいつも通りでいいってことで……)

日々のトレーニング成果から、3000mもの長距離に対する適性の良さは既に把握されている。加えて、シュガーには並のウマ娘より強い心肺機能もあり、距離延長にも対応しきれるというのがトレーナーの考えである。

(この前なんてプールに入ったら、40分くらいもぐっちゃって……みんなビックリしてましたね……)

シュガーが出したこの記録は、競技大会であるUAFでの上位入賞の目安25分を大幅に超えており、トレーナーやその他関係者をハラハラさせたのだが、シュガーは特に気にしない話である。
351 : ◆wuHHR64l1og   2024/10/21 15:50:55 ID:poree9YDWI
そして宝塚記念も終わった7月の初め。
季節はついに夏を迎える。

「うっみっでっすぅーっ!!」

太陽照りつける白い砂浜に、シュガーライドの甲高い声が響き渡った。

トレセン学園の夏の恒例行事、合宿トレーニングの始まりである。

そうは言っても、今日はまだ初日なので……

「使い魔!ボンベを持ちなさい!失われた海底都市を探しに行くわよ!」
「本気かスイープ!?」

海に潜りに行く者、

「おやおや?砂のお城ですかぁ。セイちゃんじっくり作るのは得意なのだ~」
「手伝ってくれるんですか!?スカイさんっ、ありがとうございます!!」

砂で遊ぶ者、

「泳ぎでも先頭は譲らない……!!」

遊泳を楽しむ者など、みなが思い思いに海を満喫していた。
ところで、先ほど高らかに声を上げていたシュガーはというと……。


「水着わすれましたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

学園指定のスク水ではなく、今日遊ぶために選んでいたマイ水着……それを寮に置いてきてしまっていたのだ。
シュガーは酷くショックを受けていた。スク水では何故だか遊ぶ気が全く起きない。

「……ダービーのウイニングライブのビデオでも、見る?」
「はぁい……そうします……」

見かねたトレーナーの助言で、自身が勝った日本ダービーの、ウイニングライブの動画を鑑賞することにした。ビーチパラソルの下で日光による液晶への映り込みを避けながら、スマホを使っての鑑賞会だ。

______皐月賞での悔しさを晴らし、日本ダービーの舞台でもセンターで歌うことができたシュガー。
自分が一着なんだよとアピールするかのように、カメラへの目配りも欠かさず、まるで本職のアイドルのようだと当時のSNSでは密かな話題となっていた。
352 : ◆wuHHR64l1og   2024/10/21 17:50:27 ID:poree9YDWI
______動画を楽しむシュガーとトレーナーを、物陰から見つめるウマ娘が一人。

「まだ小学生だよね?それであの歌とダンス、目配り……あの娘もウマドルの才能が……」

ダートの鬼だったりウマドルだったりと色々な呼ばれ方を持つ美少女ウマ娘・スマートファルコンだ。
そもそもウマドルというのはウマ娘のアイドルのことであり、ウイニングライブ以外でもステージ活動を行っている娘も少なくはない。
中でもスマートファルコンは絶対的な自信と努力心を持っていて、ライバルが出れば闘志を燃やすのだ。

そして今、スマートファルコンはシュガーライドに目をつけた。
レースの面で「小さな天才少女」と呼ばれ、ホープフルステークスと日本ダービーを勝っている。
皐月賞以外負けておらず、そこにおいても2着とウイニングライブの歌唱には参加。
ウマドル方面においても、近頃は人気が高まっているようだ。

「い、今の間に挑戦状叩きつけといたほうが良いのかな……」
目をつけたにしてはこのウマドル、弱気である。
確かにライバル宣言は早いほうが良いのだが。

「……よしっ!…………たのもぉーっ!!」

「うわぁ!道場やぶり!?ていうか道場なんですか!?」

意を決したスマートファルコンは、シュガーライドに話しかけてみるのだった。
353 : ◆wuHHR64l1og   2024/10/21 18:27:12 ID:poree9YDWI
「……ということで、ファル子!あなたにライバル宣言します!」
「ら、ライバルですか……?」
自信満々のスマートファルコンと、これまたクセの強い先輩に絡まれてしまったと想うシュガーライド。
そもそもレースの世界でしっかり生きていくつもりでいたし、まだ心は小学生。
ウマドルとは何?な状態のシュガーは、頭上にハテナを浮かべている。


「じゃあ、難しい話は抜きにして……今から言う勝負で決着をつけちゃおう☆」
「うわあ!すごい速さのけっちゃく!!」

(何を見せられているのかしら、私は)

二人のやり取りを見ながら、置いてきぼりのトレーナー。
同じく頭上にハテナを浮かべ、困惑の表情を浮かべる。

そして、スマートファルコンが出したウマドル勝負の条件とは……

>>353
354 : ◆wuHHR64l1og   2024/10/21 18:27:52 ID:poree9YDWI
被った>>355
355 : トレぴっぴ   2024/10/21 21:34:38 ID:w8MDlnmwus
しりとり
356 : ◆wuHHR64l1og   2024/10/21 22:30:12 ID:poree9YDWI
『さあ、こちら某市のウマ娘用アスレチックゾーンで始まりますのは、No1ウマドルステークスっ!レースをしながらお題を解決し、なおかつ観客にも素晴らしいアピールを決めるのは、果たしてどのウマ娘か!?』

海の家から少し離れたエリアで始まるこの競技は、なんと毎年行われているものだという。
つまりは競技を通じて自身の可愛さなどをアピールし、ウマドル力を競うのだ。
障害物の多いアスレチックゾーンということで、走りの難易度も高めである。

(えっと……ナニコレ?)

観客席で無表情になっているのは、シュガーのトレーナー。
スマートファルコンから話を持ちかけられ、連れてこられたのだ。
シュガーの方はノリノリで準備をしている。

(夏休み……夏休みは?)

合宿初日。謎の行事に巻き込まれてしまい、困惑が止まらない。
シュガーの方はやはりノリノリで準備をしている。

「わたしたちの他に、16人も……ふつうにレースっぽいですね!」
「でしょでしょ?だから燃えるんだ☆」

シュガーライド・スマートファルコン以外にも、粒ぞろいな16人のウマ娘が選手として参加している。
人数で考えれば日本のURAレースと大差ない。

皆、それぞれの思いでこの競技に臨んでいるようだ。

『それでは!今回のお題を発表します!……しりとりですっ!しりと「り」から始まり、レース中に誰よりも速く次の文字へたどり着きながら、1着を目指しましょう!ドローンカメラがしっかり徘徊しておりますので、アピールも忘れずに!』

しりとり……単純な遊びだが、そこにウマ娘のレースという要素が入ると、それは途端にハイレベルなものとなる。
(こ、これは……トレーニングの一環になるのかしら?)
トレーナーはようやく、ここに来た意義を理解し始めたようであった。
357 : ◆wuHHR64l1og   2024/10/22 08:46:54 ID:ta9OWnYVWY
(シュガー……まあ、大丈夫よね?)

未知過ぎるレースを走るシュガーを心配しながら、トレーナーは観客席で、
手元の用紙を確認する。
事前に渡されたこのパンフレットによれば、このレースは1600mの距離で開催されるという。
そして4つのコースを駆け抜け、1着を目指すのだ。

まず、スタートから200m地点までは……2mもの長さの草をかき分けながら進む。
今回はしりとりルールなので、おそらくお題の言葉を道中で見つけなければならない。

次に、400m地点までは……なんと砂のお城を破壊しながら進むという。
その中にお題が隠れているのだろうが、カメラにその姿が写ったとき、少女たちは綺麗な顔でいれるのかと不安に想うトレーナー。

そこから1000m地点までは、登ったり降りたりと立体的な迷路を進むアスレチックコースだ。どうやら、この競技のメインイベントらしい。ここでもまた、しりとりお題を突破すると……。

最後の3ハロン……つまり600mは、全速力で駆けるラストスパート。
“レース”の部分である。3つ目まででお題は終了のようで、ウマ娘の本能に従って走り続けるのみ。


「……あ、そろそろ始まるみたい」

パンフレットに一通り目を通し終えると、公式さながらのファンファーレがスピーカーから聞こえてくる。

『さあ、No1ウマドルステークス!間もなく出走です。レースに勝つだけではなく、ウマドル力をアピールできるのは、果たしてどのウマ娘でしょうか?』

「うおー!頑張れーッ!!」
「推しー!キミが一番だーっ!!」

(んん……??)

歓声の中に、アイドルのライブに来ているかのような若者たちの声が混ざっていることに気づくトレーナー。
しかし、すぐにレースに目を向け直した。

(……それもそうか。ウマドルですもの)
358 : ◆wuHHR64l1og   2024/10/22 16:49:08 ID:ta9OWnYVWY
『各ウマ娘、一斉にスタート!まずは「り」から続く単語の書かれた紙を探して、背丈2mの草ゾーンを進みます!』

観客たちが見守る中、No1ウマドルステークスが始まった。

シュガーライドも遅れを取らず、草の中に入っていく。

「こっ、この中を進むなんて……!!」
普通に考えてもなかなかやらないコースでのレース。初めての経験に驚きながらも進む。
(り、ですよね。どこでしょうか?)
お題に答えるための用紙を探さなければならない。
しかし、2mの草に阻まれているので視界がとても見えづらくなっている。

(待って……そもそも紙って、どういうふうに置かれてるんでしょう?)
周りのウマ娘たちの足音や、草をかき分けるガサガサという音にも邪魔されないかのように、集中し始めるシュガー。
紙といえば、なにかに置かれているか、貼られているか、落ちているかがよくある。
(ここでは、なんだか地面に落ちてそうな……よしっ!)
“紙は地面に落ちている”と直感したシュガーは、視界を阻む草ではなく地面に集中して探し物を続行した。
そんな時だった。”アレ”が姿を現したのは。

「______しゃい!」
(なんの音……!?)

掛け声とともに、何かを引き裂くような音が聞こえてくる。
この大自然の中で、誰も刃物なんて持ってきてはいない。
その筈だった。

(なんだか……明るい空がみえてきて……ええっ!?)

草に潜って空からの光はかなり遮断されていた。
それが明るくなり続けている。かなり速い。
その答えを見て、シュガーは絶句する。


「しゃい☆しゃいしゃい☆」

「草をきってるー!?!?!?!?」

スマートファルコンが、自身のツインテールで、2mの草を斬り刻みながら進んでいたのだ。

『でたぁ~!!夏の風物詩、ファルコオオクワガタだー!ウマドル的にはアリなのかーッ!?』
359 : ◆wuHHR64l1og   2024/10/22 17:50:25 ID:ta9OWnYVWY
(でっ、でもっ!おかげで見やすくなってます!)
次々と草が斬り刻まれて行くお陰で、視界が拓けてきていることに気づいたシュガー。
用紙を発見したのは、そのわずか数十秒後であった。

「ありましたーっ!!」
思った通り、地面に落ちていた紙を見つけたシュガーは、空中のドローンに向かって笑顔で手を降る。
無邪気に喜ぶ姿に、今の一瞬だけで2000人はファンが増えたようだ。


「これですよね!!」
「はい、確認します」
そうして最初の200mに到達し、係員に紙を渡すシュガー。

「りんご、ですね!通ってよし!」
「やったー!!」

無事に次へ進むことに成功。どうやら16人中9番手らしいので、次へのエリアへ急ぐ。
次の200mは、砂のお城を破壊しながら進むのだが……。

「……えっ」

シュガーは、眼の前にそびえ立つ”城”に、衝撃を受ける。
何人がかりで何日掛けたのかも想像つかないほどの大きさの、砂の城。
それが眼の前にあるのだ。

『さぁ次のエリアは、特注原寸大サイズの砂のお城をぶっ壊しながら進み、道中で次のメモを発見しましょう!!』

既に城の一部が欠けており、先行しているウマ娘たちがぶっ壊しているのがうかがえる。

「わ、わたしも急がないと!そりゃーっ!!」
砂のお城内部に突入したシュガー。
砂を掘りながら走り、城を崩壊させるつもりだ。

※最終的に崩壊する瞬間、砂は落ちるが城全体は簡易的な骨組みで出来ているので、砂に生き埋めになるようなことはない。


そして、そこにまたあの影が……。

「しゃいっ☆しゃいっ☆」

声の主……というかスマートファルコンは、既にしりとりの紙を見つけただけでなく、
城をかなり破壊している。
彼女はこの城を、どのようにして崩しているのだろうか?

方法>>360
360 : ◆wuHHR64l1og   2024/10/23 04:02:25 ID:Y/RT8rUMAI
続行


「ウマドルはパワー! ウマドルはパワーッ!」
(……!?!?)
シュガーライドは思った。世界は広いんだなと。
スマートファルコンは拳一つで、砂の壁を崩し続けていたのだ。

『おーっとここでもスマートファルコンっ!アキュート仕込みのパンチが止まらないーッ!!
他のウマ娘たちも頑張れーッ!!』

目にも止まらぬ高速パンチ……アイドルじゃなくてプロのボクサーなのでは?とも思う。

「あ……メモ……」

そうこうしているあいだに、余波でしりとり用紙が飛んできた。

「ご、ゴリラ……」

りんご→ゴリラ。単純すぎるだろうと心の中で突っ込むが、言ってはいられない。
これはもしかしたら、素手より速い手段があるのでは?と思ったシュガーは、
即行動に移した。


「てぇやぁーっ!!」

右脚を素早く・高く上げてのハイキックを繰り出す。
前に動画サイトで偶然見かけた格闘技の映像を思い出し、放った。
見様見真似だがとてつもない威力だ。

スマートファルコンに劣らず、道がどんどん拓けていく。


そして続けること数分……。

「ふーっ……い、いま何番目でしょうか?」

無事に特大砂の城を脱出したシュガーは、係員に紙を渡して先へ進む。
流石はステイヤーを見込まれただけあって、息は乱れていない。
わずか200mの距離ではあるが、実質の運動量は5倍くらいに増えているにも関わらずだ。

次は3番目のエリア、アスレチックコースだ。


『このアスレチックコースで、しりとりは終わりとなります。ここまで結構単純だったなと思うウマ娘さんもいるかもしれませんが、ここは特に凶悪なステージですので、ご注意ください』

(きょ、きょうあく……?)

急に落ち着いて話す実況の声を聞いて、少し怖くなるシュガーであった。
361 : ◆wuHHR64l1og   2024/10/23 04:20:27 ID:Y/RT8rUMAI
『第一関門ッ!水上に設置されたロープウェイを下り切りましょうっ!』

「こ、これは……」

シュガーが見たのは、ここまで脱落することのなかった6人ほどが、既に水中から這い出て失格となっている光景であった。

ハンドルにぶら下がり、超高速で下るロープウェイをくぐり抜けるには、
何よりも冷静な心が必要らしい。

「ファル子、行きまーす☆」

シュガーの前に、スマートファルコンが行くようだ。
どうやり切るのか見守ることにしたシュガー。すると……。



「しゃぁぁぁぁぁい☆」
なんとカメラを意識したのか、全く笑顔を崩さず、華麗とも呼べる動きでロープウェイを突破してしまった。

(な、これは……すごいです、ファルコンさん)

これがウマドルに必要なものなのかと痛感するシュガーだったが、尚更自分も負けてはいられない。そもそも夏合宿の初日で休養日だということをすっかり忘れているのだが。

「いやっほぉぉぉぉぉ!!」

下ってみると結構楽しいもので、楽しさから自然と溢れた笑顔がドローンカメラに記録されていく。

(意外と行けるのかしら……)
(しょ、小学生に負けてられない……)

見ていた他の参加ウマ娘たちも、ファルコンとシュガーに遅れないよう、意を決してロープウェイに挑むのだった。


『では次の関門ッ!逆バンジー!!』

(なに、これ……)
それは、テレビで時折見かける大掛かりな仕掛けであったが、シュガーは実際に見るのは初だった。

さながら人間スリングショット。
いやウマ娘スリングショットか。

先行したウマ娘が、ひたすら空中に打ち上げられるのを繰り返している光景を、
シュガーは見てしまった。
362 : ◆wuHHR64l1og   2024/10/23 04:47:33 ID:Y/RT8rUMAI
(これもうレースじゃないですよね?バラエティ番組ですよね????)
頭の中で困惑が止まらないシュガー。
やっていることは最早レースではないことに、ようやく気づいたのだ。

『この逆バンジーでは、ひとりひとり違うしりとりの答えを、天辺にあります小型モニターから読み取っていただき、先に進む形となります』

ルールは単純である。
逆バンジーで打ち上げられた時、しりとりの回答を見ればいいだけ。
しかし、それが出来ないウマ娘が多いようで……ここでも3人ほどが脱落した。

「しゃぁぁぁぁぁああああああい☆」

ここでもスマートファルコンの独壇場。カメラ目線に笑顔を向けながら、逆バンジーを難なく終わらせた。1回で。

「えっとねー、さっきが「ごま」だったから、次は……孫の手☆」

モニタに映った言葉をしっかり読み取り、先へ進む。

(ま、まずいです。ファルコンさんが先に行っちゃう……)
「わ、わたしも行きますっ!!」

ファルコンに遅れを取りたくないシュガー。だが、この逆バンジーというものはあまりにも、未知の体験である。

しっかりと安全ベルトを固定して、スタンバイ。
そのわずか3秒後。

「ぉっ、うおぉぉぉぉぉっ!?!?!?」

とてつもない勢いで、シュガーライドの身体が宙に跳ね上がった。

(も、文字……!!)
次は”ら”の言葉だ。シュガーはなんとか目を凝らし、それを見ようとする。

(これ、は……ランドセルっ!!)

自身もつい1年半くらい前まで背負っていた、小学生の必須アイテム……”ラ”ンドセルだ。

シュガーも逆バンジーを1回で終わらせ、次のエリアへと進む。
363 : ◆wuHHR64l1og   2024/10/23 05:19:44 ID:Y/RT8rUMAI
『さあ3つ目のアスレチックは、迷路ゾーンっ!ウマドルには知力も必要です。最後の難関を突破できるのか!?』

(あ……あれ?)
迷路に入ろうとした所で、シュガーは気づく。
先行していったスマートファルコンを除いて、後ろから誰も来ていないということに。
(ま、まさか全員、あのバンジーで……)
あまり考えたくはなかったが、有り得る話ではあった。
つまり、残っているのはスマートファルコンとシュガーだけ。

と、そこにドローンカメラがやってくる。

「い……いえいっ☆」

不安な表情を見せず、カメラに向かって白い歯を見せながらニコッとピースサイン。
(これが……ウマドル……)
なんて過酷なんだろうと思った。
それをスマートファルコンはやり続けている。とても凄いと思うシュガー。

……実際はここまで過酷なことはしていないのだが。

「……行くぞー!!」

もうすぐレースも終わる。シュガーは声で自分を奮い立たせ、先へ進むのだった。

______植物で作られた壁で隔たれる迷路は、大自然の香りが漂っている。
立っているだけでリフレッシュできそうな空間だが、急がなければならない。

「えっと……ここでもしりとりの答えを探すんですよね……あっ!」

2、3個所の曲がり角を抜けた所で、台座に宝箱を発見したシュガー。
早速、それを開けてみる。

「バか、はずれです……えーっ!!」

ここまでやってきた苦労を嘲笑うかのようなメモに驚くが、気を取り直して迷路を続行。

その後も、宝箱を見つけるがハズレばかり。

(はぁ……まず迷路の出口もありませんし……どうすれば……)

なかなか先に進めず、気分はセンチメンタル。
そんな時であった。

「……あーっ!シュガーライドちゃーん☆」
「ファルコンさん!?」

先に迷路に入っていたスマートファルコンと、ばったり再会したのは。
364 : ◆wuHHR64l1og   2024/10/23 05:41:38 ID:Y/RT8rUMAI
『ここでスマートファルコンとシュガーライドが合流っ!』

実況とともに、撮影用ドローンがその場へ座り込む二人のウマ娘を捉えている。

「ウマドルって……大変なんですね……」
「でもっ、苦労した分だけ楽しいの☆」

やや表情が崩れてきたシュガーに対し、スマートファルコンは余裕の笑顔だ。

「このままじゃ……ファル子が余裕で勝っちゃうかも☆挑戦状を叩きつけたのはこっちの方だけど☆」

「っ……!!」

余裕の笑みで余裕の発言。少し悔しくなるシュガー。
立場が逆転していることにも気づく。
挑まれたはずなのに、こちらが挑んでいるというか……。

(はっ……)
ここでシュガーは、ふと閃いた。

「余裕そうですけどっ!ファルコンさんも迷ってるんですよね!!」
「あー☆……うん」

そもそも、余裕なら既に迷路を脱出しているはずだ。
それなのに新しい紙も持たず、ここで自分と談笑している。

相手もここから出られないのだ。

「……よし、休憩終わり☆ ファル子、今度こそ脱出しちゃうんだから!またねー!」

ある程度休めると、スマートファルコンは笑顔で走り去っていく。

「わたしも……がんばりますっ!」

シュガーもその熱に押され、立ち上がる。

そうして歩き回って、なんと10分後。

「る……る……ルビーっ!!」

宝箱の中から、やっとしりとりの続きを発見したシュガー。
後は迷路を脱出するだけ……と思ったら、すぐ目の前に出口があった。
(わかりやすすぎる……)

紙を見つけることが出口につながるというのは単純なものであったが、
やっと出られる。そう思い、駆け出す。

「……あっ」
「……あっ☆」

係員に紙を渡していると、別の出口から出てきていたスマートファルコンと目が合ってしまった……。 ここから始まるのは、ラストスパートだ。
365 : ◆wuHHR64l1og   2024/10/23 08:50:06 ID:Y/RT8rUMAI
『さあここからがメインイベント!3ハロンのラストスパートを走りきれーッ!!』
「いくよー!!」

実況と同時に駆け出すスマートファルコン。
そして走りながら、観客席に向かって大きくコール。

「ファル子が逃げたら~!!」

「追うしかなーいっ!!」

逃げの得意なスマートファルコン独自のコーレスが会場に響き渡る。
が、走っているのは彼女だけではない。

「わたしだってっ!!」

後方からシュガーライドが追う。最後はレース勝負となれば、負けられない。
最終コースのバ場は雑草なども生えている普通の地面だ。やや芝に近いか。


「うおー!!ファル子―!!」
「シュガーライドッ!負けるなー!!」

観客たちも、ラストを走る二人のウマ娘に声援を送る。
GIレースにも負けないくらいの声援を。
3ハロン……600mはかなり速いペースになるので、レースとしての迫力も凄まじい。

「だあぁぁぁぁっ!!」
『シュガーライド必死に追いすがる!しかしスマートファルコン!脚色衰えないッ!!』

得意の走法でファルコンを追いかけるシュガー。だが、距離が一向に縮まらないのだ。
(これっ、どうして……いや、これが……ウマドルっ!!)

シュガーは、改めて思い知った。世界は広いと。普段戦うことのない相手だが、こんなにも速いウマ娘がいるのだと。

『スマートファルコン!1着でゴールッ!!』

5バ身の圧勝で、スマートファルコンがゴールした。

そして直後、やってきたドローンに向かって……
「しゃい☆」
スマートファルコン渾身のスマイル。
彼女はシュガーに対して、ウマドルとしての威厳を示し、見せつけたのであった。


(あの……これ、いいトレーニングにはなったはずだけど……なんなの?本当……)

大歓声の中、シュガーのトレーナーは消化不良が収まらない様子……。
366 : ◆wuHHR64l1og   2024/10/23 09:07:00 ID:Y/RT8rUMAI
「すっごく、いい経験になりましたっ!!」

合宿所までの道を歩きながら、トレーナーに向かって楽しそうに話していたシュガーだったが……。

“それ”は次の日にやってくる。


「いたいぃぃぃ!!全身がいたいですぅぅぅぅっ!!」

起きてすぐ、全身筋肉痛に襲われるシュガーライド。
今日から始まるはずのトレーニングも、少し休まなければならない。

(こうなっちゃったか……)
止めるべきだったかと思うトレーナー。だが、昨日の出来事はシュガーにプラスとなったのも事実。とても複雑な心境である。

なんとこの筋肉痛の回復には1週間も掛かり……。

「やっと治りました!!元気いっぱいですっ!!」

「遅れた分、取り戻さないとね」

「はいっ!!」

秋に向けてのトレーニングが、ようやく始まる。
トレーナーとして着目したいのは、やはり有り余る持久力だ。
それはマイル・中距離ではなく、完走に時間を要する長距離でこそ真価を発揮する。

この前も、全身筋肉痛になっただけで、その前日は全く息が乱れていなかったのだ。

(スタミナの面ではもう大丈夫そうで……じゃあ次は______)

こうして、夏のトレーニングが幕を開け、日はあっという間に流れていく。

そして2ヶ月後。トレセン学園に帰るバスの中で……。


「トレーナーさん」
「なぁに?シュガー」

バスに揺られながら、トレーナーに話しかけるシュガー。
周りのウマ娘たちは皆寝ているので、静かな声で。

「菊花賞も、勝ちたいです」
「そうね。今のシュガーなら、勝てるわ」
「ほんとですか?」
「夏の間に、すごく成長したもの」
「えへへ……ありがとうございます」

シュガーの決意は、既に2ヶ月後の菊花賞に向いている。
トレーナーも、今の彼女には絶対的な信頼がある。
それほどまでに、たくさん成長できたのだ。
367 : ◆wuHHR64l1og   2024/10/23 10:28:21 ID:Y/RT8rUMAI
具体的には……

・浜辺での高負荷なトレーニングにより、重馬場に対する脚力を手に入れた。
・暑い日差しの中でトレーニングすることにより、根性と我慢強さを磨いた。
・急激な筋肉痛からの回復で、身体能力が飛躍的に向上。

などなど……、様々な方面での成長ができた。
加えて、シュガーライドはまだ小学生。通常、レースに向けて鍛えていくのは中高生からなので、その年代よりも成長力がとても高いのだ。

(どこまで伸びるのかしらね……この娘は)
トレーナーはPCにデータを打ち込みながら、シュガーの未来を想像して微笑む。
菊花賞はもちろん勝つ。その後は海外レースだってありかもしれない。


(……あ、英語まで覚えるのは大変ね……)
それもそうである。

周りのライバルたちも、秋のGIに向けて本格的に動き出した。

トレーナーが特に目を引いたのは、セントライト記念を勝ったホワイトテイルの記事だ。
彼女は逃げも追い込みも出来る万能な脚を持っているが、今回は2200mの距離を逃げて制したという。

(本番は、どんな作戦でやってくるか……)
一番警戒したいライバルだ。シュガーからは恐怖心という弱点が消えたとはいえ、ホワイトテイルの実力が高いことに変わりはない。
菊花賞への出走を既に表明しているので、長距離勝負にも自身があるということだろう。
シュガーとの瞬発力勝負に持ち込まれれば、結果は読めない。

(だけど……シュガーは強い。トレーナーである私が、それを信じなきゃ)

シュガーと出会ったあの頃から、彼女の強さを見てきた。成長を見てきた。
だからこそ、信じなければならない。信じない理由もない。

菊花賞での勝利を。ダービーから続く、クラシック3冠最後の1つの戴冠を。
368 : ◆wuHHR64l1og   2024/10/23 11:23:53 ID:Y/RT8rUMAI
菊花賞の前に開催される、芝GIが一つある。それは……。

『ここ中山レース場は現在くもり。バ場状態は良の発表です』

今年は9月中旬の開催となった短距離GI、スプリンターズステークスだ。

秋のGI開催を飾る最初の1戦であり、クラシック世代からシニア世代までの快速自慢が集う中山レース場には、既に多くの観客が詰めかけている。
『さあ、スプリンターズステークスの発走時刻が迫ります。パドックに入場するウマ娘たちを見ていきましょう。まずは1番人気、ダイタクヘリオス!』

「うぇいうぇーい!パマちん見てるー!?バクアゲで行くべー!!」

既に短距離路線で戦績を残し、有馬記念でも5着に入るなど大番狂わせな走りが特徴のテンション高めなバク逃げウマ娘・ダイタクヘリオスだ。
スプリンターズステークスでの勝利経験はなく、今年こそと狙っている様子。

『2番人気はニシノフラワー!天才少女の脚は短距離GIでも発揮されるのかー!?』

「今度こそ……また、GIを勝ちますっ!」

オークス敗北からひと夏を越し、同年代のシュガーライドにも劣らず成長を遂げた、小さな天才少女・ニシノフラワー。2番人気に推され、それがむしろやる気に変わっているようだ。
369 : ◆wuHHR64l1og   2024/10/23 11:24:12 ID:Y/RT8rUMAI
『3番人気はこの娘、サクラバクシンオー!!』

「はっはっはー!GI初挑戦でも、委員長としてバクシンしてやりますともっ!!」

短距離路線に入ってきた新星であり、トレセン学園内では所属クラスで学級委員長を務めるウマ娘・サクラバクシンオー。
ヘリオスとは違うベクトルでテンションが高い。

『4番人気はヤマニンゼファー!安田記念から続き、短距離GIの連覇を成し遂げられるのか!?』

「今日の風は……まだ、静か。しかし、私が吹かせます。烈風を」

ヘリオスやダイイチルビー、ケイエスミラクルといった短距離路線のウマ娘たちと活躍しており、今年のマイルGI・安田記念を勝っているのが、このヤマニンゼファー。
スプリンターズステークスではアストンマーチャンやムーントラックの活躍で結果は残せておらず、こちらも勝ちを狙っている。


「今年のスプリンターズステークス、濃いな……」
「そうだな。去年のムーントラックの引退は衝撃的だったけど、まだスターウマ娘はこんなにもたくさんいるって、よくわかるよ」

とある二人の観客が言うように、今年のメンバーは4番人気まででもかなり強い。
ニシノフラワーでさえも、先輩ウマ娘たちには劣っていないという前評判がある。
370 : ◆wuHHR64l1og   2024/10/23 11:25:01 ID:Y/RT8rUMAI
1992年のスプリンターズステークス、ほんとにメンツが濃い……
371 : ◆wuHHR64l1og   2024/10/23 13:27:34 ID:Y/RT8rUMAI
「フラワーちゃん……頑張って」

ちょうどトレーニング休みの日だったので、シュガーライドも会場に行き、観客として見守っていた。

スイープからも少し話を聞いている、フラワーの路線転向。そしていきなりのGI。
既に3回もGIを走っていて場数を踏んでいると言えるが、それでもなおシュガーの不安が消えないのは、周りにいるのが先輩たちばかりだからかもしれない。


「彼女なら……やれます」
「……あっ、ミホノブルボンさん!」

フラワーのルームメイトであるミホノブルボンも、応援に駆けつけていた。

(……あれ?たしか販売機でにゅーじょーけんを買わないと……ブルボンさんって機械さわれなかったはずだし、どうやったんでしょうか……)

中山……というかほとんどのレース場でそうなのだが、入場券を機械で購入して受付に渡す必要がある。
操作するだけで機械がなぜか故障してしまうブルボンは、果たしてどうやってここまでこれたのだろうか。

(だれかが買った……トレーナーさんとか?)

シュガーがまず思ったのは、ブルボンが自分のトレーナーと一緒に来ていて、券を買ったことだ。
だが、隣りに座っているようにも見えない。

(……いやいや、こんなこと考えるのはやめときましょう……)
野暮なことは考えないでおこうと、忘れることに決めたシュガーなのであった。


『さあ、スプリンターズステークス、間もなく発走!まずはファンファーレです!』

自衛隊の吹奏楽隊による生ファンファーレには、いつも会場の観客の手拍子が連動する。

(……おお……)
シュガーは客席でGIを見るのは初めてだったので、自分もそっち側に回ったことに興奮しているようだ。
372 : ◆wuHHR64l1og   2024/10/23 16:20:19 ID:Y/RT8rUMAI
ダイタクヘリオスは6番ゲート。サクラバクシンオーは4番ゲート。ヤマニンゼファーは最内1番ゲート。そしてニシノフラワーは4番ゲートと、有力ウマ娘は内寄りに収まっている。

『各ウマ娘、ゲートに入って体勢完了。……スタートしました!』

〈スプリンターズステークス 中山1200m 芝 曇・良 16人 右〉

揃っての綺麗なスタートとなり、出遅れはない。
先陣を切って下り坂を駆けるのは5番。そこに3番と15番が追走する。

「はっはっは!バクシンバクシーン!!」
「ふっ……!!」

間を抜けるように、バクシンオーとゼファーも先頭を追いかけての追走。
先頭グループ5人が固まったまま坂を下り続けている。

「やばみー!完全に出遅れてるっしょー!?」
ダイタクヘリオスは中団の好位置にいるが、彼女の本来の逃げ脚質を全然活かせない位置だ。

(すごいペースですっ……でも、まだっ!!)
ニシノフラワーは後方の外目にいた。短距離重賞では勝ちを収めている彼女だが、GIという環境での勢いのある走りと熱を全身で感じながら走っている。それでも掛かったりすることはなく、仕掛けどころまで耐え忍ぼうとしているようだ。
373 : ◆wuHHR64l1og   2024/10/23 16:21:19 ID:Y/RT8rUMAI
『さあ、各ウマ娘!緩やかな3コーナーを回って4コーナー!そして最終直線へと駆けていきます!』

隊列が横いっぱいに広がっての最終直線。中山名物である短い直線とゴール前の急坂の両方が、ここまでハイペースで飛ばしてきたウマ娘たちに襲いかかる。

『先頭で粘る5番!そこにサクラバクシンオー!おっとヤマニンゼファーが抜け出した!』

(今こそ、烈風を……!!)

自身が風になるような走りで、内から一気に抜け出すヤマニンゼファー。
3番のウマ娘も追いすがるが、これはヤマニンゼファーで決まったと誰もが思った……
その時だった。

「やあぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

『ここで大外ニシノフラワーだ!!ニシノフラワー!!ぐんと追い込んで迫るっ!』

隊列が広がった時点で後ろから4番手程にいたニシノフラワーが、とてつもない脚で上がってきたのだ。
前を走るゼファーに追いつき、少しでも追い越そうとする。
(勝ちたいっ!勝ちたいっ!!)
(その気持ち、私も同じ……!ですが、あなたの風は……!!)

ゼファーも粘るが、結果は……。
『ニシノフラワーとヤマニンゼファー!並んでのゴールインっ!!わずかに、わずかにニシノフラワーが体勢有利かっ!?』
374 : ◆wuHHR64l1og   2024/10/23 16:45:16 ID:Y/RT8rUMAI
「フラワーちゃん、勝ったんですか!?」
「私の目には、確かにそう見えましたが……!」

大外から追い込んだフラワーの生み出した結果に、シュガーとブルボンだけでなく、観客たちにざわめきが起きている。

その十数秒後、掲示板にはフラワーが1着であることを示しすランプが点灯。
瞬間、会場を大歓声が包んだ。

『勝ったのはニシノフラワーですッ!!小さな天才少女が、電撃のような走りを見せてくれましたッ!!』

(______わたし、勝ったんだ……!!)
結果が確定すると、フラワーは喜びのあまり言葉を失い、ターフの上で両手でのガッツポーズ。

一度は閉じてしまったつぼみが、たゆまぬ努力によって花開いた瞬間であった……。

「わぁぁぁぁ!!フラワーちゃんが勝ったー!!」
観客席で自分のことのように大喜びするシュガーライド。
やはり、勝つ瞬間というのは素晴らしいのだ。応援している人物が勝った瞬間であれば、特に。

「やりましたね、フラワーさん……!!」
ルームメイトとして、様々な時のフラワーを見てきたミホノブルボンにとって、久々の勝利はとても嬉しかったようだ。


その後、ウイニングライブも終わって観客たちも引き上げた中山レース場で……。


「凄かったねぇぇぇぇフラワーちゃんッ!!」
「よ、喜びすぎですよシュガーさん……」

小さな天才二人が、観客席で会話をしている。

「えっとね……フラワーちゃんの走りで、わたしすっごく勇気をもらえたよ!」
「ほんとうですか!?」
「うんっ!だから……わたしも勝つよ!菊花賞、ぜったい勝つ!」

フラワーの走りに力をもらったシュガーは、GI菊花賞での勝利への誓いを新たにするのだった。

そして、秋も深まる10月中旬……。
クラシック路線に、決着がつく。
375 : ◆wuHHR64l1og   2024/10/23 17:13:35 ID:Y/RT8rUMAI
『少し涼しくなってきた10月の京都レース場で、本日ついに開催されますGI・菊花賞。クラシック3冠の最後ということで、レース場内は既に超満員となっている模様です』

「わぁぁ……ついに、ですねぇ」

京都レース場の控室で、テレビ中継を聞きながら、シュガーライドは心を踊らせていた。

「ここまで大きな怪我をすることなくやってこれたのは、本当にすごいことよシュガー。
だから本番も……」
「わかってますよトレーナーさん!えっと、”全ウマ娘無事”ですよねっ!!」

本番で、GIレースで故障して選手生命を絶たれるなど、絶対にあってはならないこと。
だからこそトレーナーは改めてシュガーに伝えたが、彼女はちゃんとわかっているようだ。

「ダービーの時みたいに、待っててくださいね。わたし、1番になって帰ってきますから!
そのときは……えっと……」
「何か、して欲しいの?」
「その……ぎゅーって!しても、いいですか?」
「ふふっ、良いわよ」

シュガーは1年以上帰省していないので、そろそろ家族が恋しくなっている部分もあった。
そんな中で、今ではトレーナーもある意味家族のように考えている。
なので、勝って戻ってきたら……いっぱい抱きしめて欲しい。そう思ったのだ。
トレーナーも快く快諾し、準備は万全。

「じゃあ……トレーナーさん、行ってきますっ!!」

シュガーは今までで最高のコンディションで、ターフへと向かうのだった。
376 : ◆wuHHR64l1og   2024/10/23 17:13:55 ID:Y/RT8rUMAI
「……来たね」
「はいっ、来ました!!」

地下バ道では、シュガーの到着を待っていたかのようにホワイトテイルが立っていた。

「私も……日本ダービーの時より強くなった。前哨戦も勝ってる。
だから……負けない」
「こっちこそ!まけないですっ!!ぶっ飛ばしちゃいますよ!」
「い、言うね」

無邪気な表情から放たれた宣戦布告ワードにやや驚くホワイトテイルだったが、気を取り直して先にターフへ進む。

(よーし……行きますっ!)

シュガーも、ゆっくりと歩きながら向かう。夢の舞台へと。
377 : ◆wuHHR64l1og   2024/10/23 17:37:55 ID:Y/RT8rUMAI
菊花賞のバ場状態:晴・良 18人立て

シュガーの枠・ホワイトテイルの枠>>378


せめてこれだけでも……!
378 : お姉ちゃん   2024/10/23 23:24:00 ID:bGWWBc/aP2
シュガー:2枠3番
ホワイトテイル:2枠4番

何と隣同士!
379 : ◆wuHHR64l1og   2024/10/23 23:27:04 ID:Y/RT8rUMAI
>>378
助かりました。書き始めてたので。凄く感謝。
380 : ◆wuHHR64l1og   2024/10/24 04:08:20 ID:m0eyXdj82g
『間もなく発走となります、菊花賞。現在、枠入りが進んでいる模様です』

現在のバ場のコンディションは良。天気も晴れていて、スムーズなレース展開が期待できる状態だ。

(……よし、入りますっ)
1番人気に推されているシュガーライドは、2番ゲートへ。結局のところ最後方で走るのだが、内側でロスなく走れるのが嬉しいのだ。長距離だと特に。

「……あ」
「となり同士、ですねっ!」

2番人気ホワイトテイルは、なんとシュガーの隣3番ゲートであった。
シュガーはまるで「どこにいても隣同士で走るのは楽しいですよねっ!」と言いたげな笑顔でホワイトテイルを見つめる。
本人はそのあたたかい眼差しにやや困惑するが、

(……いいや、私は自分の走りをするだけ)

気を取り直して、前を向く。

他のウマ娘たちも、各々のゲートへ入っていき、準備が整った。

『各ウマ娘、体勢完了! さあ……最後の1冠を手に入れるのはどのウマ娘か!? 菊花賞、今……スタートしました!』

〈菊花賞 京都3000m 芝 晴・良 18人 右〉

歓声響き渡る中、ウマ娘たちが一斉にスタートを決める。
まず先手を奪ったのは最内1番のウマ娘。
そこにホワイトテイルが追走し、2人がペースを作っていく。

坂の途中から始まるこのコースは、全体でコーナーを6回も回ることになる。
つまりは、内側でロスなく走れているウマ娘が有利な傾向があるのだ。

(シュガーライド……今回は、追いつかせない)

1番のウマ娘をすぐに突き放すと、なんとホワイトテイルは3バ身差ほどの先頭を走る。

『おーっと!ホワイトテイル単騎の逃げ!これは作戦なのかーッ!?』

〈何が起きてるんですかー!?!?)
バ群を避けつつ後続を走るシュガーライドには、やはり前のレース展開が認識できていないようだ。
1周目は、この状態が保たれたまま通過していく。
381 : ◆wuHHR64l1og   2024/10/24 04:41:53 ID:m0eyXdj82g
『各ウマ娘、向正面を通り2周目に入って、まだ隊列は固まっている!どこで仕掛けるのかー!?』

先頭は相変わらずホワイトテイルだ。
1000mの通過タイムも1分・2分と、それほどペースが早いわけではなく、まだ脚にも余裕を残している。

(スローペースで行けば……後続は届かなくなる……)

彼女の思惑通り、バ群はひと固まりのままだ。後続勢に蓋をしており、一番マークしているシュガーライドも簡単には前に進めていない。

(後は一気に引き離せば……勝てる!)

そして3コーナーを抜ける頃、ホワイトテイルは二の脚を開放する。

「はぁぁぁぁぁっ!!」

『4コーナーに掛かった所で、ホワイトテイルが一気にペースアップ!後続を引き離していくッ!!』

先行集団の反応も遅れるほどの急なスピードアップで、4バ身は差をつけながら最終直線へ。

『ホワイトテイル先頭!後続は不意を突かれ……おーっと!!』

(私の、勝……え、なっ!?)

急坂を越え、勝利を確信した。脚もまだ生きている。
それなのに、襲いかかるプレッシャー。

まさかと思った。来られるはずがないのだ。

だが……!

『なんと外からシュガーライドォ!!』

圧倒的な脚の回転数で生まれる音とともに、天才少女がやってくる。

「だあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

『シュガーライド並ぶ!シュガーライド並ぶ!ホワイトテイルかシュガーライドか!皐月賞・日本ダービーから続く、2強の最終決戦だぁぁぁぁ!!』
382 : ◆wuHHR64l1og   2024/10/24 04:57:43 ID:m0eyXdj82g
______レースは、1周目の時点で動いていた。

(何が起きてるんですかー!?!?)

最後方を走ろうとしていたシュガーライドは、レース展開が全く追えないことに気づく。
そして、トレーナーから言われていたことを思い出していた。

《______いい?最終戦、何としても勝ちにいきたい……前が凄く固まるようなことがあれば、最後方からの追い込みは止めて前を目指すの》


「今が、そのとき……よしっ!!」

トレーナーの言葉と、今まで走ってきて磨かれたレース直感を信じ、
シュガーライドは隊列の合間を縫うように前へと進出を続けていたのだ。


『シュガーライド交わすか!内で粘るホワイトテイルか!』

「だぁぁぁぁぁっ!!」
「はぁぁぁぁぁっ!!」

片方の作戦は的中し、もう片方の作戦は外れた。
そして最終直線は、ただただ一騎打ちとなっている。

後続を置き去りにする二人の走りは、既にSNS上で話題だ。

たった十数秒の戦いにも、「頑張れ」の応援メッセージが大量。

その思いが通じたのは______。

『僅かにっ、シュガーライドだぁぁぁぁぁぁ!!』

ほんの、アタマ差であった。
小柄なその少女がアタマ差で追い抜けたのは、もはや走りの力に他ならない。


「はぁっ、はぁっ……ふぅーっ……」
ゴール板を駆け抜けたシュガーは、ゆっくりと止まり、息を整える。

(勝った……勝ったんだ……菊花賞でっ!!)

皐月賞での悔しさから一転、日本ダービーと菊花賞を勝つことが出来た。
とても嬉しくて、最高の気分に浸るシュガー。

「……また、負けたね。でも、まだトゥインクルシリーズは、終わらない。
来年でもなんでも、いつかリベンジする……」

称えられるシュガーを見ながら、ホワイトテイルやその他のウマ娘たちは、打倒・小さな天才少女を誓うのであった。
383 : ◆wuHHR64l1og   2024/10/24 05:29:56 ID:m0eyXdj82g
「トレーナーさんっ!トレーナーさーんっ!!」

地下バ道を走って戻るシュガーを、トレーナーが迎える。

「頑張ったわね。おかえりなさい」
「はいっ、ただいまっ!!」

レース前にシュガーが最も望んだ、ぎゅーっと温かなハグで、
トレーナーはシュガーの頑張りとGI勝利を労うのだった。


その後は、聞き納めとなるウイニングライブ「winning the soul」も、大成功で幕を閉じる。

ホテルに戻るタクシーの中で、シュガーは……。

「明日は京都をかんこうしたいところですが……すぐ帰りましょう!」
「えっ、なんで??」
「ふふふ……トレーナーさん!わたし、ずっと前から行きたかった場所があるんですっ!」

そういうことなので、次の日は早々と荷物を整え、帰りの新幹線で東京へ戻る二人。
更に次の日、”シュガーが行きたかった場所”に足を運んでいた。


「遊園地っ!!決めてたんです、クラシック3冠でしっかり走れたら、トレーナーさんといっしょに来ようって!」

「なるほどね……じゃあ、とりあえずチケットを買いましょうか」
(あ、結構高いわね。でも、かわいい教え子のためなら……!)

目を輝かせながら待機しているシュガーに勝てず、トレーナーは”ネズミ頭のキャラで有名な遊園地”の1日パスを2人分購入。

こういうのも経費で落としてくれたら良いのだがと思うトレーナー。しかし……実費だ。

そしてシュガーはたくさんのアトラクションや食事を楽しんで、すっかりリフレッシュするのであった。
384 : ◆wuHHR64l1og   2024/10/24 05:30:32 ID:m0eyXdj82g

月日は流れ、年末。
季節はすっかり冬になり、寒くなっている。

「おー……すっかりまっしろですね。雪です」

トレーナー室の窓から外の景色を眺めるシュガー。例年よりも積もっているので、興味津々のようだ。

「シュガー、そろそろ始まるわよ。……有馬記念」
「あっ、はいー!」

もうそんな時間なんだと、こたつに入ってテレビを点けるシュガー。
年の終わりを告げるGI・有馬記念の鑑賞だ。
シュガーもファン投票で上位に入ったものの、今年は菊花賞までで活動を終えるという方針で、休憩に入っているのだ。
『一着は泥の女王・キタノダイヤモンドォー!!なんとこれで、秋シニア3冠を達成だー!!』

______今年の有馬記念を勝ったのは、シュガーよりも先輩で凱旋門賞などの海外レースの優勝経験もある、国内ではトリプルティアラを獲った最強のウマ娘・キタノダイヤモンド。

彼女は10月に帰国してすぐ、天皇賞・秋への参戦を表明。
そしてジャパンカップと共に難なく勝ち抜くと、ファン投票1位を獲得。
後は先に言った通りである。

達成例が少ない秋シニア3冠をも勝ち抜いたことで、世代最強を証明することとなった。

「す、すごい人がいますね」
「そうね。彼女、来年も走るみたいだし……挑戦してみる?」
「もちろんですっ!あんなに強いウマ娘さんと走れたら、すごく楽しそうなのでっ!」

トレーナーから促され、シュガーは来年の目標が定まった。
打倒・キタノダイヤモンド。

“泥の女王”と”小さな天才少女”のカードには、どれだけの観客が注目するだろうか。

まあ、来年になってみないとわからないのだが。

「トレーナーさんっ!来年も、これからも、よろしくお願いしますっ!!」


シュガーライドは走り続ける。まだ何も見えない未来へ向けて……。
385 : ◆wuHHR64l1og   2024/10/24 05:33:10 ID:m0eyXdj82g
はい、終わりです。今度こそ、終わりです。

勢い余って続編を建てて、かなり色々あったけど終わらせることが出来ました。

もう見切り発車はしない……それはそれとして、

安価レスをしてくれた皆様・シュガーのイラストを描いてくれた方……本当にありがとうございました。

特にイラスト提供がなければ、モチベーションを保てなかったはず。
386 : ◆wuHHR64l1og   2024/10/24 05:34:47 ID:m0eyXdj82g
とてもいい経験になりました。
正直に言えば楽しかったです。
でももう長編は書かない。疲れます。


結論

ありがとうございました。普通のBBS民に戻ります。
387 : ◆wuHHR64l1og   2024/10/24 06:24:40 ID:m0eyXdj82g
以下、感想(甘くても辛くても……)
388 : ダンナ   2024/10/24 09:31:19 ID:PH1g3BwW1A
長編は書かないなら短編書けば良いじゃない
(毎回安価で住民に頼っても良いんだし)
389 : トレぴっぴ   2024/10/24 09:35:12 ID:m0eyXdj82g
>>388
そうです、長編は書かない。
安価に頼ろうとしてたら何故か来なくなったのがこのスレの後半ですね
390 : トレーナーちゃん   2024/10/24 09:37:08 ID:PH1g3BwW1A
でも、まぁお疲れさまでした
そのうち気が向いたらまたスレ立ててよ
391 : トレーナー君   2024/10/24 09:40:55 ID:m0eyXdj82g
>>390
ありがとう。

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