バニーを着てお月見団子を売るイナリワン
1 : 使い魔   2026/09/26 21:47:10 ID:pXU9f53BgQ
 イナリワンがバニーを着て客寄せしている、と聞いて、ほとんど駆けるような速さで商店街に向かっていた。
「おう、ダンナ!今、和菓子屋でウサギの服を着て、客寄せやってるからよ!帰りに寄ってくんな!」
 と電話を貰ったのが、昼の休憩前。
 昼休憩中に、どうしても今から行きたいという気持ちと、大井のトレーナーとしての責任の間に挟まれながら、いなり寿司を食べていると、
「イナリ先輩の話、写メ付きで回って来ましたよ、はよ行け」
「行かなきゃ蹴りますよ」
「プラン出せばこっちで勝手にやるんで。やる気が無いなら邪魔っス」
 と、教え子たちに大井レース場を追い出された。
2 : 相棒   2026/09/26 21:48:25 ID:pXU9f53BgQ
 急いで到着した時には、和菓子屋の前はお祭りのような騒ぎになっていた。
「らっしゃい!らっしゃい!さあさあ、寄ってらっしゃい見てらっしゃい!ここに並ぶは、大井の名店が手作りした、由緒正しきお月見団子!ほっぺが落ちる旨さだぜ!」
 和菓子屋の前には、テーブルが出され、その上でお月見団子とススキのセットが山積みにされ、売り出されている、
 テーブルの前で大声を出しているのは、紫のバニー服を着たイナリワンだ。
 全身を黒タイツで覆った上からバニースーツを着て、ウサギの耳を模した耳カバーを着け、ウサギらしくあちこち跳ねまわりながら客寄せをしている。
 黒タイツのおかげで肌の露出はそこまでではないが、イナリのトランジスタグラマーな体格でバニースーツを着ている姿に、通行人は思わず足を止めざるを得ない。
3 : 貴方   2026/09/26 21:51:07 ID:pXU9f53BgQ
「お、お月見団子、発売中でーす!」
「今夜のお月見にいかがっすかー?」
 イナリの周りには他に二人、同じようにバニースーツを着た大学生くらいのウマ娘が客寄せをしていた。一人は眼鏡をかけた大人しそうなウマ娘で、もう一人は背の高いギャル風のウマ娘。どちらもナイスバディの美人だ。
 まるで、月から降りて来た見目麗しいウサギたちが、自分たちで餅をついて、こねて作った団子を売り出しているような光景である。
 人だかりをかき分け、イナリに近づく。
「イナリ、この騒ぎはどうしたんだ?」
「おうダンナ!いやあ、和菓子屋のおばちゃんが急に体調を崩しちまってな。見舞いに行ったら、せっかく仕込んだお月見団子を売って欲しいって頼まれてよ。そんで、この間の商店街の仮装大会で使ったウサギの服で、客寄せをしてるってわけでい」
「なんでバニーなんだ!?」
「てやんでい!十五夜のお月見と言えばウサギだろうが!それに、こういう恰好なら人を集めやすいだろ?」
 そう言って、イナリは胸を張る。ここまで堂々とされると、筋が通っているように思えてしまうのが不思議だ。
4 : 使い魔   2026/09/26 21:55:12 ID:pXU9f53BgQ
「そちらの二人は?」
「あたしの後輩でよ、ちょうど暇してるってんで手伝ってもらってるんでい」
「商店街の許可は?」
「おうよ、電話してちゃんと貰ってあるぜ」
「なら大丈夫だな。手伝おうか?」
「よし来た。売る方を手伝ってくんな」
 テーブルの前には行列ができており、二人の若い男が会計係と品物を渡す係を分担して、せっせと客をさばいていた。
 よく見れば、商店街の集まりで話したことがある青年たちだった。
5 : 使い魔   2026/09/26 21:55:37 ID:pXU9f53BgQ
 テーブルの後ろに回って話しかける。
「手伝おうか?」
「あっ、イナリのダンナさん」
 品物を渡す係の方が、応えてくれた。 
「会計係が足りてないです。手伝ってもらえますか?」
「分かった」
 パイプ椅子に座って、客の対応を始める。
6 : トレぴっぴ   2026/09/26 22:02:28 ID:pXU9f53BgQ
 イナリは、テーブルの周りをぴょんぴょんと跳ねまわって、口上を唱える。
「今夜の満月は、まさに中秋の名月!まん丸なお月様の下で、ススキを飾って、このお月見団子を供えれば、立派なお月見ができるってもんでい!食べてよし!飾ってよし!イナリ様イチ押しのお月見団子!さあさあ、買った買った!早いもん勝ちだぜ!」
 永世三強と呼ばれ、ウマ娘レースで名を馳せたイナリワンが勧めるお月見団子。
 そのネームバリューもあってか、ものの一時間もしないうちに、お月見団子セットは完売となった。
「お買い上げありがとうございやす!今後ともご贔屓に頼むぜ!」
「ありがとうございましたー!」
「また買ってねー!」
7 : アンタ   2026/09/26 22:03:32 ID:pXU9f53BgQ
 バニースーツのウマ娘三人が、去っていく客たちに手を振る後ろで、疲弊しきった男三人はお互いを称え合っていた。
「はあはあ……二人とも、よく頑張った……」
「人の波でしたね……」
「いや、洪水だよ……あれは……」
 たった一時間ではあったが、雪崩のように押し寄せる客をさばくのは、まさに過酷としか言いようがなかった。 
 ふと、会計係をしていた方の青年が、疲れた顔に不機嫌そうな表情を浮かべているのに気づく。
「やけに不満そうだが、何かあったか?」
「いえ、俺とこいつは、あいつらの彼氏なんですけど……」
 完売を祝って、イナリと楽しそうに話している二人のウマ娘を見て言う。
8 : トレぴっぴ   2026/09/26 22:07:04 ID:pXU9f53BgQ
 すると、品物を渡す係の方の青年が、
「お前、あいつと昔から仲が良いもんな。他のやつに見られたくないんだろ?」
 と楽しそうに言う。
「ま、まあ、そうだけどさ……お前はどうなんだよ」
「俺だって、見られたくないけどさ、あいつが楽しそうならいいかなって……イナリのダンナさんはどうなんです?」
 まさか、話を振られるとは思っていなかった。
「えっと、そうだな、できれば見られたくはないよな」
「ですよね」
「おうおう!男どもだけで何話してるんだい?」
 イナリたちが、こちらに歩いてきた。
 それぞれタイプが違うとはいえ、美人のウマ娘たちがバニースーツを着て並んでいる姿は、圧巻の一言だ。
9 : アナタ   2026/09/26 22:10:32 ID:pXU9f53BgQ
「へえ、かっちゃんはアタシのバニー姿、みんなに見られたくないんだ?」
 ギャル風な長身のウマ娘は笑いながら、会計係の青年を見下ろして、からかうように言う。
 頭一つ分の身長差があった。
「き、聞こえてたのかよ。そうだよ、悪いかよ?」
「別にぃ?カワイイとこあるなーって」
「か、かわ……!?」
 ギャル風のウマ娘は、青年の肩に腕を回して抱き寄せる。
「ほーれ、バニーだぞー?うりうり」
「やめろって!近いし!当たってるから!」
 会計係改め、かっちゃんは顔を赤らめる。
10 : トレーナーさん   2026/09/26 22:13:37 ID:pXU9f53BgQ
「ショウくんも、私のこの姿、みんなに見られたくないって……」
 眼鏡のウマ娘が、恥ずかしそうに小声で言う。 
「そうだけどさ……お前が楽しいのが、一番だから」
「……ふふっ、嬉しい」
 眼鏡のウマ娘は、商品を渡す係改め、ショウくんの腕にぎゅっと抱き着く。
「おい、急に……」
「私は、こうしてるのが、一番楽しいから」
「……っ」
 ショウくんの顔がみるみるうちに赤くなっていく。

 二組のカップルから、もし彼女がいない男が見れば、怒りのあまり全身の毛穴から血を噴き出しそうな、甘ったるい雰囲気が漂い始める。
「おうおう!いい雰囲気のところ悪いけどよ、後片付けをしてからにしな!」
 イナリの一声で甘い雰囲気は破れ、皆でテーブルやパイプ椅子の片づけを始めるのだった。
11 : 相棒   2026/09/26 22:15:51 ID:pXU9f53BgQ
「へへっ、たくさん貰っちまったな」」
 帰り道で、イナリは笑いながら言う。
 和菓子屋のおばちゃんが持たせてくれた、かなりの数のお月見団子が入った袋は俺が持ち、もう片方の手はイナリの手と繋いでいる。
「あいつらも、楽しそうで良かったぜ」
 片付けを終え、バニースーツを着ていた三人は、和菓子屋の奥で私服に着替えた。
 そして、ギャル風のウマ娘とかっちゃん、眼鏡のウマ娘とショウくんは、給料代わりに大量のお月見団子と、それまで着ていたバニースーツを貰って、仲良く帰っていった。
 二人のウマ娘の目が、獲物を狙うような光を帯びていたのが気になるが、まあ良しとしよう。
12 : モルモット君   2026/09/26 22:17:03 ID:pXU9f53BgQ
「そんで、ダンナはあたしのバニー姿を、他のやつらに見られたくないみてえだな?」    
 イナリはニヤリと笑って言う。話し声を聞かれていたらしい。
「ああ、正直言うと、見られたくない」
 もう卒業したとはいえ、担当ウマ娘がバニースーツ姿で公衆の面前に立つのを、良く思う人間はいないだろう。
「その事だけどよ、埋め合わせというか、手伝ってもらった礼も兼ねて、用意してるものがあるんでい」 
「用意してるもの?」
「へへ、そいつは帰ってのお楽しみってやつよ」
 そう言って、イナリは繋いだ手をぎゅっと握りしめると、
「せっかくの十五夜なんでい、月が綺麗に見えるといいな」
 と、楽しそうにこちらを見上げて来るのだった。 
13 : アンタ   2026/09/26 22:17:35 ID:pXU9f53BgQ
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14 : トレピッピ   2026/09/26 22:18:58 ID:pXU9f53BgQ
 夜。雲一つない夜空に、見事な満月が浮かんでいる。
 縁側に、コップに差したすすきを立て、平たい皿に盛ったお月見団子を供える。
 本格的とは言い難いが、ちゃんとしたお月見の様式だ。
 縁側に腰かけて、ぼんやりと月を眺め、イナリが来るのを待つ。
「ダーンナ!」
 寝室で、何やら着替えていたイナリが戻って来た。
 その姿を見ようと振り返った瞬間、驚いた。
「イナリ、その姿……」
「おう!れっきとしたバニーだぜ!」
 昼と同じように、紫色のバニースーツを着たイナリがそこに居た。
15 : トレぴ   2026/09/26 22:24:36 ID:pXU9f53BgQ
 だが、昼の時と明らかに違うところがあった。
 全身タイツを身に着けていない。
 素肌の上から、バニースーツを着ており、太ももから下は何も履いていない。
 何も覆われていない、太ももとふくらはぎの白い肌が眩しい。
 露出した肩回りと胸元は、イナリの豊満なバストを、これでもかと見せつけていた。
「十五夜のウサギが、団子食ってぴょん!っと!」
 イナリはその場で飛び跳ねてみせる。
 跳ねた瞬間、タプン、と胸が大きく揺れ、バニースーツが食い込む。 
 昼のように、全身タイツで押さえられていないからだ。
「ぴょんぴょんぴょん!ってな!」
 タプン!タプン!タプン!
「こぼれる!こぼれるって!」
 イナリがその場でぴょんぴょん跳ねる光景から、何とか目をそらす。
 胸の揺れ方があまりに危険だ。
16 : 使い魔   2026/09/26 22:29:25 ID:pXU9f53BgQ
「てやんでい!昼間のお礼なんだから、ちゃんと見ろってんだ!」
 イナリが腰に手を当てて怒る。
「タイツを着てねえ、本物のバニーなんだぜ?しっかり刮目しろってんだ!」
「いやいや、見ろって言われても……それより、月を見ないか?せっかくのお月見なんだからさ」
 話をそらす。これ以上、イナリが跳ねるの見るのは危険だ。
「ふーむ、まあそれもそうだな。そらっ、ぴょんぴょんってな!」
 イナリは飛び跳ねる勢いで、膝の上に座って来た。
 小柄なイナリの身体が、すっぽりと膝の上に収まる。
 少しでも下を見れば、イナリの胸元の深い谷間が見えてしまうため、なるべく月を見上げるようにする。
17 : お兄ちゃん   2026/09/26 22:32:31 ID:pXU9f53BgQ
「いい月だなあ」
 イナリがしみじみと言う。
「ああ、本当に綺麗だ」
 二人で月を見上げる。
 文句のない満月だった。
 赤みがかった黄色の光は、目を離すのがもったいないほど綺麗だ。
 見つめているだけで、胸がふわふわと浮つくような、妙な気分にさせられる。
 まるで今にも吸い込まれそうな……
18 : お姉さま   2026/09/26 22:35:01 ID:pXU9f53BgQ
 不意に、目の前にお月見団子を差し出される。
「ほら、ダンナ。あーん」
「あ、あーん」
 イナリに団子を食べさせてもらう。
 もちもちとした触感と、ほどよい甘さ。さすが名店だ。
「あたしにもくれないかい?」
「ああ」         
 皿からお月見団子を一つ取り、イナリに食べさせる。
「あーん」
「あーん、っと。んんっ、いい甘さだぜ」
 しばらく、月を眺めながら、お月見団子を食べさせ合っていると、やがて皿が空になった。
 皿の上で、イナリの指が空振る。
「ありゃ、もうおしまいかい」
「そうだな、そろそろお月見もおしまいだ」
「いや、もう少し付き合ってもらうぜ」
19 : アネゴ   2026/09/26 22:38:59 ID:pXU9f53BgQ
 イナリはそう言って体勢を変えて、膝の上でこちらと向き合う形になる。
 イナリの胸元が目の前で丸見えになり、どきりと心臓が高鳴る。
「い、イナリ?」
「月ばっかり見てないで、こっちも見てくれねえかい?」
 イナリに両肩をぐぐっと押されると、そのまま背中が床に着き、簡単にマウントを取られてしまった。
 腹の上に、イナリがまたがって、こちらを見下ろしている。
 まずい、ウマ娘にこの体勢に持ち込まれたら、基本的に抜け出すことは不可能だ。
20 : トレーナー   2026/09/26 22:43:14 ID:pXU9f53BgQ
「お望み通り、ダンナだけが見れるんだぜ。ちゃんと堪能しなきゃ、もったいねえだろ?」
 イナリの青い瞳が、満月よりもギラギラ輝いて見える。
 口元の笑みには、八重歯が煌めき、ウサギらしからぬ凶暴さが見え隠れする。
 指と指が絡んで押さえつけられ、抵抗する手段を奪われる。
 身体が密着する。ウサギの肉は、信じられないくらい柔らかかった。
 熱い吐息が、頬にかかる。
「なあ、ダンナ♡」
 その夜、ウサギがぴょんぴょん跳ねるのを見ていたのは、狂ったように明るい満月だけだった。
21 : 使い魔   2026/09/26 22:43:33 ID:pXU9f53BgQ
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22 : あなた   2026/09/26 22:45:35 ID:pXU9f53BgQ
 翌日の朝、商店街を歩いていると、かっちゃんとショウくんに偶然出会った。
 学校に行く途中なのか、二人で並んで歩いている。
 二人とも、頬がこけているように見えた。
 挨拶もそこそこに、なんとなく聞いてみる。
「二人とも、少しやつれてるように見えるが……」
「ああ、その……」
「ええっと……」
 何となく察する。ウマ娘と付き合う者特有のシンパシーだ。
「……ウサギが跳ねたってわけか」
「そうっすね……」
「その通りです……」
 顔を赤らめる二人を見て、こちらもそうだと頷く。
 そして、特定の事柄で通じ合える仲間を得たことに、密かな喜びを感じてしまうのだった。
23 : アネゴ   2026/09/26 22:46:43 ID:pXU9f53BgQ
【終わり】

24 : 大将   2026/09/26 22:48:47 ID:pXU9f53BgQ
【本当は、中秋の名月当日の昨日に投稿したかったですが、遅刻しました。長文かつ未熟な文章ですが、読んで下さりありがとうございます】
25 : ダンナ   2026/09/26 23:07:38 ID:SMSlx7mNz2
どうせみんなダンナになる
26 : お姉ちゃん   2026/09/26 23:24:39 ID:a7k03RN/Ms
高校を卒業してるなら別に何も言わないよ
お幸せにな!

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