イナリワン掌編集
1 : アナタ   2025/09/16 22:58:16 ID:lStkWdlElk
【イナリワンの掌編を書きます。毎日書くつもりですが、ネタ出しと体調次第で、隔日になる場合もあります。また、ネタが尽きたら終了です。よろしくお願いします】
2 : キミ   2025/09/16 22:58:37 ID:lStkWdlElk
【① 昼寝】
3 : あなた   2025/09/16 22:59:42 ID:lStkWdlElk
 昼休み。
 イナリはトレーナー室に置いた畳で、昼寝をするのが日課だ。
 イナリ曰く、「畳の上で昼寝ができりゃ、午後も張り切って頑張れるってもんよ!」という訳だ。
 畳の上で寝ているイナリは、ぐっすりと眠っているが、あまり近づかないようにしている。理由はもちろんある。
4 : お姉ちゃん   2025/09/16 23:04:37 ID:lStkWdlElk
 以前、たまたまトレーナー室にやってきたタマモクロスが、昼寝をしているイナリを見て、耳を触ってやりたいと、いたずらをしようとしたことがあった。
 そろりそろりと、タマモクロスが忍び足で近づき、イナリまであと数歩というところだった。
 イナリはぱちりと目を開けて、タマモクロスを睨んだのだ。
「なんでい!タマじゃねえか!」
「お、起きとったんか!脅かさんといてや!」
「てやんでい!起こしたのはタマの方だろうが!」
「近寄ったくらいで起きるなや!」
「ああ!?」
 と、その後は喧嘩になってしまった。
 つまり、寝ている時のイナリは気配に敏感なのだ。
 
5 : 使い魔   2025/09/16 23:06:23 ID:lStkWdlElk
 イナリの寝息を聞きながら仕事をしていると、あることに気が付いた。
 資料が足りないのだ。
 そして、その資料はテーブルの上。寝ているイナリのすぐ傍だ。
 昼休みが終わってから取ろうと思ったが、あれがないと仕事が進まない。
 心を鬼にして、椅子から立ち上がると、なるべく音を立てないようにして歩く。
 一歩、二歩、三歩。
 この間、タマモクロスの接近が気が付かれた位置まで来たが、イナリは起きない。
 時々、ピクリと耳が動くが、寝息に乱れはない。
6 : トレ公   2025/09/16 23:07:13 ID:lStkWdlElk
 四歩、五歩……まだ起きない。
 六歩。イナリのすぐ傍だ。しかし、起きる気配はない。
 ここまで起きないと逆に心配になる。
 イナリを見ると、畳の上で丸くなって、すーすーと寝息を立てている。
 寝顔は穏やかだ。
 いつもはきはきした表情を見ているせいか、こうしてリラックスしているイナリの表情は新鮮だ。
 無防備なイナリを見ていると、邪悪な欲求が沸き上がってきた。
 トレーナーとして、決して従ってはいけない欲求。必死に耐えようとするが、欲求はあまりに強く、激しい。
7 : お姉ちゃん   2025/09/16 23:08:47 ID:lStkWdlElk
「ん……」
 イナリが小さい呟きを漏らして、寝返りを打つ。
 もう耐えられなかった。
 イナリの頭を、一回、二回、と優しく撫でる。
 ここまで眠りが深いのも、トレーニングをしたり、後輩の面倒を見たりと、いつも頑張ってるせいだろう。
 イナリがリラックスできるように、何か手助けがしたかった。
 気が済むまでイナリの頭を撫でた後、テーブルから資料を取って仕事に戻った。
8 : トレぴ   2025/09/16 23:11:09 ID:lStkWdlElk
「おはようさん、ダンナ!」
「ああ、おはよう」
 昼休み終了直前に、イナリは目を覚ました。
 頭を撫でたことはバレてないのか、特に変わった様子もない。
「なあ、ダンナ……」
 と思ったら、イナリは少しだけ顔を赤くして提案してきた。
「頭を撫でるやつ……毎日やってくれねえかい?」
「……ああ、いいよ」
 どうやら、バレていたらしい。
 この日から、昼休みにイナリが畳の上に寝転がった後、十分ほどイナリの頭を撫でる時間ができたのだった。

【続く】
9 : お兄さま   2025/09/16 23:41:56 ID:VAq7unZgKo
このBBS文才あるヤツ
多すぎんか?
続けてくださいお願いします。
10 : 大将   2025/09/17 22:39:37 ID:HdSP22GuRg
②ダンナ呼び
11 : トレ公   2025/09/17 22:41:07 ID:HdSP22GuRg
 
 イナリは俺をダンナと呼ぶ。
 学園では、「おうダンナ!今日も一日頑張ろうぜ!」
 大井の商店街では、「ダンナ!和菓子屋で熱いお茶と饅頭でもどうだい?」
 お出かけの時は、「へへっ、ダンナと一緒なら、どこだって楽しいってもんよ!」
 こんな調子だ。
 ダンナと呼ばれ過ぎているせいか、休日に一人で大井の商店街を歩いていると、
「おう、イナリのダンナさん!」
 とイナリがいなくても、声をかけられるほどだ。
12 : アネゴ   2025/09/17 22:41:46 ID:HdSP22GuRg
 八百屋さんにも、
「イナリのダンナさん!いいナス入ってるよ!」
 と声をかけられ、魚屋さんにも、
「イナリのダンナさんじゃねえか!サンマいるかい?」
 と声をかけられ、和菓子屋さんにも、
「おやおやダンナさん。イナリちゃんにお団子買っていかなくていいのかい?」
 と声をかけられる。
 しまいには、イナリと仲がいい子供たちに、
「イナリのダンナさんだ!」
「イナリとラブラブなんでしょ!」
 とからかわれてしまう。
13 : アンタ   2025/09/17 22:44:11 ID:HdSP22GuRg
「俺とイナリがラブラブなんて、誰から聞いたんだ?」
「お母さんが言ってた!イナリとダンナさんはそのうち結婚するって!だからダンナって呼ばれてるんだって!」
 それは誤解だ。イナリのダンナ呼びと結婚は関係ない。
「その、それは違うんだ」
「じゃあ、イナリと仲悪いの?」
「そういうわけでもなくて」
「分かった!ダンナさんはイナリが嫌いなんだ!」
「違う!好きだ!」
「わあ怒った!」 
 けらけら笑いながら、子供たちは走って逃げていく。
14 : アナタ   2025/09/17 22:47:44 ID:HdSP22GuRg
 追いかける気にもならず、はあ……とため息をつくと、
「おうダンナ」
 後ろから声がした。
 振り返ると、イナリが立っていた。
 散歩か何かの途中なのか、私服姿だ。
「ダンナが来たって商店街の連中が言ってたからよ。ちょいと歩き回ってたら、声がしてな。そしたら、可愛げのある口喧嘩に出くわしたってわけでい」
 それから、イナリは笑って、
「いやあ、それにしても、怒鳴るくらいあたしが好きだなんてねえ」
「い、いや、つい口に出てしまったというか」
「照れなくてもいいぜ、ダンナ」
15 : トレぴ   2025/09/17 22:48:33 ID:HdSP22GuRg
 イナリは俺の目前に顔を近づける。
「あたしもダンナのことが、好きだからよ」
 機嫌良さそうに笑うイナリに、俺は顔を赤くして黙っていることしかできなかった。
 その後、イナリと和菓子屋でこし餡団子を食べながら、商店街に広まっている誤解を解く方法を考えていた。
 しかし、イナリが俺のほっぺについた餡子を指ですくって食べたのを、和菓子屋のばあちゃんに見られたせいで、さらなる誤解が広まってしまったのだった。

【続く】

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