「わたしはすっごく楽しかったんだけどね、トレーナーはあまり楽しそうじゃなかったの」

なるほど彼女のトレーナーに関することならば陰りがあるのも納得である。
ハルウララは心優しい少女だ。
自分に関係ないことでも、他人が悲しんでいると一緒に落ち込み悲しみを分かち合う性分なのだ。
増してやそれが彼女がよく懐いているトレーナーともなれば悲しさも一入だろう。
かくいう彼女の同室であるウマ娘のキングヘイローも、何度もその優しさに救われてきたものである。
言葉を聞いているキングヘイローは、更に先を促すように声をかける。

「えっとね、このままだとわたし、レースに出れなくなっちゃうかもしれないんだって……」

トゥインクルシリーズの未勝利戦はクラシック級の9月初週がタイムリミットだ。
それまでに一勝もできなければ、ウマ娘はトゥインクルシリーズへの出走権を失ってしまう。
そしてハルウララもまた、その危機に陥っているのだ。
負けても決して気にしないハルウララではあるが、走る事そのものができなくなるとなれば悲しくなるのは当然である。
ハルウララの悲しみを感じ取ったキングヘイローは、慰めようと彼女の顔に自身のそれをすり寄せる。

「えへへ、ありがとうキングちゃん」

「それでね、トレーナーが併走トレーニングを増やそうって」

ハルウララ最大の弱点。それは他のウマ娘に比べて闘争心が弱いことだ。
なるほど、他のウマ娘と走らせてそれを養おうという算段なのだろう。
しかし、一つ問題がある。

「でもね、わたしって弱いから、誰も一緒に走ってくれなくて……」

併走は実力が拮抗した者同士で行うのが常道だ。
残念ながら、今の時点で一勝もできていないハルウララと併走したがるウマ娘は、そう多くは無いだろう。
可哀想だが、レースは実力が全ての弱肉強食世界。自分に利が無い事をしたがらなくても責める事はできない。

「そ、それでねキングちゃん……もし良かったらなんだけど……」

思った事はすぐ口にするハルウララが、歯切れが悪そうに言う。
大方、キングヘイローに併走をお願いしようとしているのだろう。
キングヘイローは芝を得意としている。対してハルウララはダートしか走ることはできない。
はっきり言って併走をするには無理がある。
それでもキングヘイローにお願いしてくるのだ。おそらく彼女の知り合いにかたっぱしからお願いしてきたが断られてしまい、藁にも縋る想いでお願いしていることが伺える。
普通であれば、他の者達と同じで受ける理由はない。キングヘイローに全く利がないからだ。
しかしそれ以上に、悲しそうな目で申し訳なさそうにお願いしてくるハルウララを見捨てる理由は、キングヘイローには存在しなかった。

キングヘイローは任せろと言わんばかりに大きく嘶く。

「ぶるるるるるる！」
「え、いいの！？ ほんと！ありがとうキングちゃん！」

友人の優しさに触れたハルウララは感動のあまりにキングヘイローに抱き着く。
その鼻面にすりすりと自分の頬を摺り寄せ、感謝の意を示す。
キングヘイローもぶるると気持ちよさそうに鼻を鳴らすのであった。


ガチャリ

😭「ただいまウララさん。遅くなっちゃって……え、ウララさん何その生物！一体何に抱き着いてるのよー！？」

終わり

キンウラてぇてぇな…ってなってた情緒が行き場をなくしたんだが！？

これはこれで尊いのであり

作者は最近、イナリの話を投稿してる人かな？

寮はペット禁止では

>>9
違います

キングはどの姿でも一流ってこと！

ペットとかそういう問題かなあこれ！？

大丈夫？　その子、「キング」が付いてないヘイローだったりしない？

憎悪の化身みたいだったヘイローがウララちゃんの涙に濡れた頬に優しく鼻先を擦りつけたっていいんだ