これって日本中の親のレールの上を走るだけで済む子供たち集めて
VR内のゲームが誰もクリアできなかったら全員の脳を破壊して日本をリセットする
とかやらないの？

　メジロVRウマレーター。
　メジログループとサトノグループの共同開発の賜物である最新鋭のVR機器でありながら、流れて来る情報は非常にすくなく、その正体は長らく謎に包まれていた。
　しかし今回は、そのメジロVRウマレーターを、特別に見せてもらえることになった。
　インタビューの相手はメジロマックイーン。メジロ家の至宝であり、メジロVRウマレーターの開発に深く関わっているウマ娘だ。

──本日はよろしくお願いします。メジロマックイーンさん。
マックイーン「よろしくお願いしますわ」　
──早速ですが、このメジロVRウマレーター。従来品と外見は変わりないようですが？
マックイーン「機器そのものの性能に、変更はありません。変わったのは、ソフトウェアですわ」
──ソフトウェア。簡単に言えば中身ですね？
マックイーン「その通り。メジロVRウマレーターの本体は『一心同体』をテーマとした、画期的なソフトウェアにあると言えますわ」

──『一心同体』ですか……
マックイーン「電子信号の出力から調整を見直し、従来のウマレーターよりも感覚機能を最大限に引き出す調整が為されています。また、時間感覚も調整されていて、ウマレーター内の1時間が現実世界での3分になるように調整されていますわ」
──すごいですね。3時間VRウマレーターを使っても、実際は9分しか経っていないと。
マックイーン「その分、仮想空間の容量が、ホテル一部屋分ほどまでに減ってしまいましたが、用途を考えれば何も問題ありませんわ」

──感覚機能を最大限に引き出すとおっしゃっていましたが、機械との一心同体がテーマ。ということですね？
マックイーン「いえ、トレーナーさんとの一心同……ゴホン！ええ、その認識で間違いありませんわ」
──次に、メジロVRウマレーター内でのコンテンツについてお聞きしても？
マックイーン「それは……すみません、まだ社外秘ですわ」
──トレセン学園の生徒が使用していると、サトノダイヤモンドさんからお聞きしましたが。その件について伺ってもよろしいでしょうか。
マックイーン「サトノダイヤモンド様の他に、志願した高等部以上のトレセン学園生徒の皆様方に、試運転に参加して頂いています。内容ではなく、感想までならインタビューなさってもよろしいですわ」

　さすが最先端のVR機器。その実態を掴むのは一筋縄ではいかない様子だ。
　この後、試運転室を見学させてもらうことに。トレセン学園の舎内にある試運転室では、3台のメジロVRウマレーターが稼働していた。
──ここが試運転室ですか。シャワールームもあるんですね。
マックイーン「感覚機能が強化されているため、使用後はどうしても汗をかいてしまうのですわ」
　汗をかくほどの激しい運動。スポーツを主体としたコンテンツ展開を想定しているのだろうか。

　メジロマックイーンと話していると、メジロVRウマレーターの一つが機能を停止し、中から一人のウマ娘と一人の男性が出て来た。
　ウマレーターのモニターには、使用時間21分と書かれている。
　筆者は驚いた。まさか二人で使っていたとは。
──あのお二人で、使用していたんですか！？
マックイーン「申し上げるのが遅れましたが、メジロVRウマレーターは、二人プレイ専用のウマレーターですわ」
　まさか使用人数に制限があるとは。二人プレイ専用ということは、協力型のゲームが主体なのだろうか。　

　メジロVRウマレーターを使用した生徒に、話を聞いてみる。
生徒B「本来は、メジロVRウマレーターに使われている電子演算機能に興味があったのだが、気づけばプレイの方に夢中になってしまった。トレーナー君と、お互いに自制しようと言い続けているのだが、2日に1回は通うようになってしまうとは……ここに通うようになってから、トレーナー君の部屋に通う回数も増えてしまって……」
　かなり中毒性のあるコンテンツらしい。ローグライクのような要素もあるのだろうか。

　続いて、二つ目のウマレーターが停止し、中からウマ娘とトレーナーが出てきた。
　モニターには使用時間27分と書かれている。もちろんインタビューだ。
生徒T「いやー！ほんま大助かりや！ウチの実家にはチビたちがいるから、こういうのは堂々とできなくてなあ。せやけど、ホテルを借りるのもお金はかかるし、トレーナーの部屋に行くのも変な噂が立ちそうやし。ほんま、マックイーンには感謝しかあらへん！」
　子供たちの前でゲームをすれば、コントローラーを貸さなくてはいけない雰囲気になる。そういった制約から解き放たれるのは、たしかな利点だ。

生徒I「てやんでい！こういう小難しい機械ってのは、ちょいと苦手だったんだが……ターボのやつが、使った感想を聞かせろとうるさくてなあ。試しにダンナと使ったら、もう泥沼に腰までハマっちまったってもんよ。最近じゃ、こいつで慣らした後に、ダンナの部屋に行って本物をやるのが習慣になっちまったんでい！」
　VR機器に疎いウマ娘にも好評のようだ。それに、トレーナーの部屋で本物をやるというのは、過去の作品をリメイクしたコンテンツということだろうか。
　ウマレーターでリメイク版をプレイして、トレーナーの部屋で実機のプレイをするのだろう。

　インタビューをしている間にも、前の使用者と入れ替わるように、次のウマ娘とトレーナーのペアたちがやってきて、ウマレーターを使用しはじめた。
マックイーン「予約制なので、行列はできていませんが、利用者は日に日に増える一方ですの。近々、台数を増やす予定ですわ」
　かなりの人気っぷりだ。よほど魅力的なコンテンツなのだろう。

　続いて、メジロマックイーンに学園内を案内してもらう。
　学園内を歩いて気が付いたのだが、学園のウマ娘はトレーナーとの仲が非常に良い。
　トレーナーと手を繋いでいるのは軽いもので、廊下でトレーナーとハグをしていたり、中庭のベンチでトレーナーと身を寄せ合う者もいる。
マックイーン「メジロVRウマレーターの試運転を開始してから、学園のウマ娘とトレーナーの連帯感は驚異的な速度で向上いたしましたわ。次のG1レースでは、メジロVRウマレーターの効果が如実に表れるかと」
　どうやら、レースの成績向上にも効果があるようだ。自信満々に語るメジロマックイーンを見るに、嘘や冗談ではないらしい。

　学園内で、メジロVRウマレーターを使用した生徒の感想を聞くことができた。
生徒D「我が一族も出資したプロジェクトです。使用感は非常に素晴らしく、毎日60分ほど使用しています。トレーナーとの意思疎通が円滑になり、大変充実した日々を送らせて頂いています」
生徒F「メジロVRウマレーター？あれは最高だよ。触覚だけではなく、匂いまで完全に再現しているなんて、まさにイリュージョンだね。そういえば……」
生徒S「あの機械を使うと、いつも子分にめちゃくちゃにされるのだ！次こそは、ウインディちゃんが子分をけちょんけちょんにしてやるのだ！別に、あの機械をもっと使いたいわけじゃないのだ！」
生徒D「毎日40分ほど使用しています。ウマレーターから出ると、トレーナーさんがいつも照れた顔をしていて……ふふッ、失礼。つい昂ってしまいました」
生徒T「やっぱ最新ガシェットは最高だね～。トレちゃんと、毎日ゾクゾクさせてもらってるよん」
生徒W「トレーナーさんが上手すぎるよおおおおおおおおおおおおお！！！」　

　このように、トレセン学園生徒に好評なメジロVRウマレーターだが、一部の生徒からは不満が噴出していた。
　不満は主に、中等部の生徒たちからのものだ。
マックイーン「学園生活への悪影響を鑑みて、私とサトノダイヤモンド様以外の、中等部のウマ娘の使用は禁止させて頂いています」
　とのことだった。最新ゲームができない恨みは、非常に深いものがありそうだ。

　激しい不満を持つ、数人のウマ娘にインタビューすることができた。
生徒K「お兄ちゃんと、メジロVRウマレーターを使えないなんて、カワイくないと思いまーす！早く使って、お兄ちゃんをもっと夢中にさせたいですっ！」
生徒K「ダイヤちゃんだけずるい！私も、トレーナーさんとワッショイしたいです！」　
生徒R「私もメジロVRウマレーターで、架け橋さんとたくさん愛を分け合って、もっと深く愛で繋がりたいわ！」
生徒S「機械で繋がらなくとも、私とトレーナーさんは繋がっていますが……それでも、使いたいと考えてしまいます。ああ、はしたない……」　
生徒M「マーベラ～ス★☆もーっと！トレーナーとキラキラリンな気持ちになりたいっ★だから、使ってみたいな☆★繋がってみたいな★☆」　

　年齢制限が課されているゲームは世に多いが、彼女たちの不平不満は、単なるゲーム以上のものに向けられているような、恐ろしい激しさがあった。
それほどまでに、メジロVRウマレーターの影響力は大きいのだろう。
　メジロマックイーンに聞いたところ、あまりに要望が多いため、個別に面談を行った上で使用許可を出し、中等部も使用できるようにする方針だという。

　ここまでインタビューしてきたが、メジロVRウマレーターは依然謎に包まれている。
　近日中に、企業向けの体験会があるとのことで、筆者も同居している幼馴染みのウマ娘と共に参加する予定である。
　当然ながら、その際は体験レポを書かせてもらう予定だ。
　今度こそ、メジロVRウマレーターの全貌を明らかにしてみせるので、ぜひ楽しみにして頂きたい。

【終わり】　

羊蹄山にＥＮＤの文字