「懐かしい？」
「おう、10年くらい前に卒業しただろ？あれ、よく見りゃ、ダンナもずいぶん若く見えるな」
　10年、そこで気がついた。
　最近学園で起きている、10年バズーカ現象だ。突然爆発が起きて、ウマ娘が10年後の自分と入れ代わってしまう現象らしい。名前は昔の漫画から取ったという。
　5分過ぎれば、勝手に戻ると聞いているので、慌てず騒がずイナリに10年バズーカ現象について説明する。

「ほう、そいつは厄介だな」
「時間が来るまで、じっとしてればいいさ」
「そんじゃ、ここでゆっくりさせてもらうかね」
　キャンパスに設置されたベンチに、イナリと並んで座る。
　イナリは10年経っても変わらないんだな、と思う。少し柔らかい雰囲気になって、カッコカワイイ顔から美人の顔つきになったと感じるくらいか。

　ふと、イナリの左手の薬指にはまった指輪に気がつく。
「結婚……したのか？」
「はあ？なに言ってんでい、あたしとダンナは……」
　そこまで言って、イナリは口をつぐむ。
「いけねえ、未来のことを知ったら、面白くなくなっちまうよな」
　一体、誰と結婚したのだろうか。
　とても気になる。その相手は、きちんとイナリを幸せにできているのだろうか？
「……誰と結婚したんだ？」
「さあな、ずっと一緒にいるうちに、いつの間にかこいつが指にはまってたのさ」
「子供もいるのか？」
「元気なややこが3人ってもんよ。手がかかって仕方ねえや」
「……幸せ、なのか？」
「べらぼうめい、幸せすぎるくらいでい」

　ほっと息をつく。
　誰と結婚したとしても、イナリが幸せなら安心だ。
　腕時計を見ると、そろそろ5分経ちそうだった。
「もうそろそろ、時間だ」
「そうかい、そんじゃ最後に……」
　イナリは俺に顔を近づけて、ニヤッと笑ってみせた。
「ずーっと、あたしをよろしくな。ダンナ様」

　ボンッ、と爆発が起きる。
　目の前に、イナリの顔があった。
　顔を真っ赤にして、動揺しているようだ。
「だ、だ、ダンナ？」
「大丈夫か？10年後になにかあったのか？」
「こ、子供があたしを母ちゃんって……そんで、ダンナが……」
「俺が？」
「ダンナが、あたしが心配って抱きしめ……て、てやんでい！顔洗ってくらあ！」

　イナリは、走って行ってしまった。
　俺も走って追いかける。
　イナリが心配なのもあったが、彼女の最後の言葉が頭に残っている。
「ずーっとよろしくな。か……」
　言われなくても、ずっとイナリを支えていくつもりだ。
　そう思いながら、イナリの背中を追いかけるのだった。

【終わり】

かーっ！見れやダーリン！
イナリの良スレがまた立っとるで！！

コンコンしたんやな！イナリ！