魔法少女ドリームジャーニー
1 : トレーナー君   2025/03/18 22:05:51 ID:iUzunJi.f2
 魔法少女。
 魔法を駆使して、人々の安全と平和を守る少女たちのことである。
 トレセン学園にも魔法少女がいる。
 ウマ娘の身体能力と、神秘の魔法を駆使して、夜な夜なバケモノを狩る少女たち。

 その話を、魔法少女のウマ娘のトレーナーから聞いた時、正直なところ半信半疑だった。
 特撮やアニメに出てくるような怪物が、人々の平和を脅かしているだって?ばかげている。
 実際に魔法少女のウマ娘が戦っている動画を見せられても、CGとしか思えなかった。
 だが、それは間違いだった。
 今、目の前にいるのは、CGでも着ぐるみでもない。
 本物のバケモノだった。
2 : トレ公   2025/03/18 22:06:25 ID:iUzunJi.f2
 夜9時。
 資料作りで疲れた身体を伸ばし、作業を続けるか一旦止めるか迷っていた。
 遠征支援委員会の資金提供がかかった、プレゼン資料の発表会が近い。
 明日は休みだし、もう少し作業しようと思った時、あくびが一つ出た。
 ここ数日、タフネス30を飲んで頑張った影響が出て来たのか、耐えがたい眠気が波のように襲いかかってくる。
 こんな状態では、まともに作業できるはずがない。
 続きは、明日の朝4時に起きてやろう。それで充分間に合う。
 アパートに帰るため、荷物をまとめてトレーナー室を出る。
3 : トレーナー   2025/03/18 22:06:54 ID:uXUUiyFgfk
ドリームゴンズイ
4 : マスター   2025/03/18 22:06:56 ID:iUzunJi.f2
 学園の廊下は既に消灯しており、トンネルのような暗い空間が奥まで続いている。
 学生の頃なら怖くて仕方なかっただろうな、と自嘲しながら歩き出す。
 人の気配はない。24時間点いているグラウンドの照明が、青白い光の帯となって窓から差し込んでいる。
 あまりにも静かで、自分の足音が廊下の端から端まで響くようだ。
 不意に、廊下の奥から獣の唸り声がした。
 足を止めて、目を凝らしてみると、何やら四つん這いのものが廊下の奥からこちらにやってくる。
 乱心した職員か?あるいは、警備をすり抜けた不審者か。
 思わず身構える。だが、それは無駄だと分かった。
 現れたのは、バケモノだった。
5 : トレーナーさま   2025/03/18 22:09:05 ID:iUzunJi.f2
 姿形は、四つ足のキングサイズのベッドに似ていた。
 木製の骨組み、その上には分厚い布の掛け布団と、大きな羽毛の枕。
 だが、明らかに生物的な特徴が、この物体をバケモノと定義していた。
 掛け布団の下にぽっかり空いた空間に、ずらりと並んだ白い牙。その奥から伸びる、長くて太い舌。
 食虫植物に、カメレオンの舌をつけたような異形だ。
 まるで、不眠症の悪夢から出てきたようなバケモノ。
 不眠症……?そのキーワードで、あることを思い出す。
6 : あなた   2025/03/18 22:10:03 ID:iUzunJi.f2
 魔法少女が退治するバケモノの一種、フーミンショー。
 大きな口と長い舌を持ち、トレーナーを丸呑みにするらしい。
 もし丸呑みされたら、お休みで毎回30しか回復しないとか、ターンごとに体力が10マイナスとか、よく分からないことを言っていた。
 このバケモノの事を教えてくれたトレーナーも丸呑みにされかけたが、担当である魔法少女のウマ娘に助けられたらしい。
 だが、自分には助けてくれる魔法少女なんていない。
 自分でどうにかしなければならない。
 無駄だと知りながら、フーミンショーが勢いよく伸ばした舌を、腕を上げてガードしようとした。
 その時だった。
7 : トレーナーさま   2025/03/18 22:11:13 ID:iUzunJi.f2
 パシュ、パシュ、パシュ。
 空気が破裂するような音が響き、フーミンショーの舌が弾かれた。
「フウッ、フーミン……!」
 フーミンショーは何かに気圧されるように、大きく体を退かせ、こちらの背後にいる存在を警戒する。
「いけませんね、こんな静かな夜に」
 聞きなれた声が、背後から聞こえて来た。
8 : モルモット君   2025/03/18 22:12:05 ID:iUzunJi.f2
 振り向くと、そこに立っていたのは、自分の担当ウマ娘である、ドリームジャーニーだった。
 だが、恰好がいつもと違う。
 フリル付きの黒いドレス姿、肩には血のように赤いケープを羽織っている。
 ドレスの襟や袖の端、赤いケープの生地には、金色の刺繡が入っており、窓から差し込む光を反射して鈍く光っている。
 左手には、革製の旅行カバン。
 そして右手には、いまだ硝煙立ち上る拳銃。
 普段のジャーニーなら、間違いなくしない恰好だ。
「魔法少女ドリームジャーニー。貴方を、安寧の旅路に案内いたしましょう」
 ジャーニーは、控えめなポーズを取って名乗りを上げた。
「じ、ジャーニー?どうしてここに?それに、その恰好……」
「話は後です、トレーナーさん。下がって」
9 : ダンナ   2025/03/18 22:12:52 ID:iUzunJi.f2
 パシュ、パシュ、パシュ。
 ジャーニーは俺の前に出ると、フーミンショーに向けて拳銃を撃つ。
 爆発音ではなく空気音しかしない理由は、その拳銃にあった。
 スタームルガーMK2カスタム。サプレッサー内臓型の拳銃だ。
 亞音速弾を使用することで、消音性能に特化させた拳銃であり、サプレッサーが内蔵されているため、消音機の不具合で起きるバッフルストライクが起きにくい特徴もある。
 静かに、そして効率的に敵を排除するための銃だ。
 フーミンショーはかけ布団部分に銃弾を受けるが、あまり効いていないかのように、ベッドの身体を立て直す。
10 : トレピッピ   2025/03/18 22:13:56 ID:iUzunJi.f2
「口径が小さすぎるか……」
「フウウウウウウウミンッ!!!」
 ジャーニーの呟きと同時に、フーミンショーは、走り出す直前の獣めいた体勢を取った。
 ジャーニーは旅行カバンを地面に置き、ルガーを投げ捨てる。
 すると、ルガーは床に落ちる前に、黒い煙状の物質になって消えた。一体どういう仕組みなのか。
 考える間もなく、フーミンショーが突進してくる。
 自分とジャーニーを、たやすく押し潰さんばかりの質量と速度が迫る。
 反射的にぐっと目を瞑った瞬間、恐ろしい爆発音がした。
11 : トレーナー君   2025/03/18 22:15:57 ID:iUzunJi.f2
 目を開けると、フーミンショーは壁にぶち当たったかのように、ジャーニーの目の前でひっくり返っていた。
 何が起きたのか。それは、ジャーニーの手を見たらすぐに分かった。
 水平二連散弾銃。いわゆるダブルバレルショットガン。
 それを、極限までバレルを切り詰めてソードオフにしたものを、両手それぞれに持って構えている。
 四連ショットガンである。
「10ケージ。なかなかの威力ですね」
 10ケージのショットシェル。クマやトド相手に使われる、殺傷能力が高い弾薬だ。
 しかも、重なった爆発音からして、それを4発同時発射したに違いない。
 ウマ娘の筋力と、魔法少女の力によって為せる荒業である。
12 : モルモット君   2025/03/18 22:16:49 ID:iUzunJi.f2
 そして、そんなものを食らったフーミンショーは無事ではすまない。
「フウッ、フウッ、フーミン……!」 
 フーミンショーは無残にえぐれた舌と骨組みを動かして、何とか態勢を立て直そうとする。
 なんてタフなやつなんだ。
「しつこいですね」
 ジャーニーの両手から散弾銃が落ちると、またしても黒い煙状の物質に変わる。
 そして黒い煙は、ジャーニーの手の中で新たな銃器へと変化していく。
 なるほど、あれが噂に聞く魔法少女の魔法というものだな。と理解する。
 もっとキラキラしたものをイメージしていたが、魔法には違いない。
 黒い煙は、1920年代のマフィアが愛用したと言われる、ドラムマガジン搭載のトミーガンへと姿を変え、ジャーニーはそれを腰だめに構えた。
13 : あなた   2025/03/18 22:18:10 ID:iUzunJi.f2
 ババババババババババババババババババババババババ!!!
「フウウウウウウウウウウウウウウウウウウウミン!!!」  
 凄まじい銃声と共に、分間800発の45口径弾丸が、フルオートでフーミンショーに撃ちこまれる。
 悲鳴を上げてのたうち回るフーミンショーに、ジャーニーは眉一つ動かさずにトミーガンのトリガーを引き続ける。
 マズルフラッシュが、ジャーニーの氷の無表情を照らし出す。魔法少女への認識がおかしくなりそうだ。
 やがて、弾丸が尽きたのか銃声は止まった。
「フ……フ……フー……ミン……」
 フーミンショーは身体中に穴が開き、死にかけのカエルのように舌をだらんと伸ばしている。
 ここまで来ると、フーミンショーがかわいそうになってくる。
14 : トレピッピ   2025/03/18 22:19:16 ID:iUzunJi.f2
「終わりにいたしましょう」
 ジャーニーは、床に置いていた旅行カバンを開けて、中から箱状のものを取り出す。
 見間違いでなければ、タイマー付きの時限爆弾である。巻かれたダクトテープから手作り感が溢れている。
 魔法で用意したものだよな。実際の手作りじゃないよな。魔法であってくれ、頼む。
「ミルキー、キューティー、ドリーミング。不思議な魔法で、おかしな爆発……」
 真顔でなにか言っている。まさか必殺魔法とかそういうつもりなのか?
 今さら、キラキラした魔法で取り繕うつもりなのか?
「愛と絆の必殺技。ドリーミング・ジャーニーボム」
 ジャーニーは白々しい詠唱と共に、息たえだえのフーミンショーの口の中に時限爆弾を押し込むと、ゆったりとこちらに歩いてきた。
「さあ、行きましょうか。トレーナーさん」
「あ、ああ」
 ジャーニーと並んで何歩か歩いた後に、背後で爆発音がした。俺は振り返らなかった。
15 : 相棒   2025/03/18 22:20:27 ID:iUzunJi.f2
 正面玄関を出ると、心地よい風が吹いていた。
 先ほどのダーティーな戦闘が、嘘のように清々しい空気だ。
「気分はよくなりましたか?」
 ジャーニーが微笑みながら聞いてきた。
「ああ、大丈夫。助けてくれてありがとう」
 気分の悪さより戸惑いの方が大きかったが、何とかジャーニーに微笑み返してみせる。
「それで、その格好だけど……」
「ああ、これですか。あまり似合わないでしょう?」
 ジャーニーは、くるりと回って衣装を見せてくれる。
 黒いドレスの裾がふわりと広がり、赤いケープがジャーニーの微笑みを映えさせる。
「いや、とても似合ってる。陳腐な言い方だけど、中世のお嬢様みたいで、すごく可愛いよ」
「ふふッ、トレーナーさんに褒めて頂けるなら、魔法少女になったのも悪い事ではないですね」
 ジャーニーは手を口に当てて、嬉しそうに笑う。 
16 : アナタ   2025/03/18 22:21:48 ID:iUzunJi.f2
 続いて、ジャーニーが魔法少女になった理由を聞こうとした時、先にジャーニーが質問してきた。
「トレーナーさんは、なんでこんな遅い時間までトレーナー室に?」
「ああ、それは……」
 しまった。あまり遅くまで仕事をしないよう、ジャーニーに口酸っぱく言われていたんだった。
「その。今度のプレゼンに使う資料を……」
「こんな遅くまで、いけない子だ」
 ジャーニーがこちらに手を差し伸ばすと、がくんと膝の力が抜けた。
 地面に膝をつき、ジャーニーに対して跪く体勢になる。
 見れば、ジャーニーの手が黒い光に包まれていた。これも魔法の力なのか。
「本来ならば、このように使うのは良くないのですが」
 ジャーニーの手が、俺の顎の下に触れ、じっと目を覗き込まれる。  
 羅針盤の瞳から目をそらせない。
「どうかお休みください。トレーナーさん」
 その言葉と共に、瞼がすとんと落ちてきて、そのまま意識を失った。
17 : 貴様   2025/03/18 22:22:54 ID:iUzunJi.f2
 目を開けると、おいしそうな匂いが漂ってきた。ベーコンの匂いだ。
 身体を覆っているのは、馴染みある感触。いつも使っている布団だ。
 いつの間にか、自分の部屋に帰って来ていた。
 そしてどうやら、誰かにベッドに寝かせられたらしい。
 硝煙の匂いも、魔法の痕跡もない。昨晩のことは夢だったように思われる。
 身体を起こすと、キッチンの方からジャーニーがやってきた。
 いつもの私服にエプロン姿という、なんとも家庭的な恰好だった。
「おはようございます、トレーナーさん。具合はいかがですか?」
 ジャーニーがいることに驚きはなかった。しばらく前から合鍵を渡していた。
「ああ、大丈夫。よく寝たおかげか、とても元気だよ」
 そう言って、ベッドの目覚まし時計を見ると、朝10時を指していた。
18 : キミ   2025/03/18 22:23:39 ID:iUzunJi.f2
「まずい、資料を作らないと」
「もう終わりましたよ」
 ジャーニーは微笑みながら言った。
「ええっ!?」 
「トレーナーさんが集めたデータを、少々まとめるだけでしたから。後で発表会のために目を通して頂ければ……」
「あ、ありがとう」
「それと、朝食を作っておきましたから、良ければどうぞ」
「……本当にありがとう。何から何まで」
 至れり尽くせりだ。ジャーニーに対して、申し訳ない気持ちが沸いて来る。
「……そういえば、トレーナーさん」
 ジャーニーはベッドに身を乗り出して、こちらに手を伸ばしてくる。
19 : 大将   2025/03/18 22:26:46 ID:iUzunJi.f2
「魔法には、対価が必要だと知っていますか?」
「ま、魔法?昨晩のあれは夢じゃなかったのか?」
「ふふッ、本当に可愛い人だ。夢ではありませんよ」
 ジャーニーの手が、昨晩と同じように顎に触れる。
 今度は魔法をかけられていないのに、無抵抗でジャーニーの目を覗き込んでしまう。
 羅針盤の瞳は、獲物を前にしたような鋭い光を帯びていた。
「対価って……なんだ?」
20 : トレーナー君   2025/03/18 22:27:44 ID:iUzunJi.f2
 背筋を寒気が這い上る。生き血をすすられるのか?それとも、臓物をえぐられるのか?
 すると、不安を感じ取ったのか、俺を落ち着かせるように、ジャーニーの手が優しく顎を撫でる。
「心配しないで下さい。トレーナーさんも楽しめると思いますよ」
 楽しむ?お出かけだろうか?どこかに一緒に行くとか?
 考えていると、すっと顎から手を離して、ジャーニーは微笑む。
「朝食をどうぞ。連日の残業でお疲れでしょう?精が付くものを用意しました」
 それから、ジャーニーはベッドの側に立って、楽しそうに言った。
21 : トレーナー君   2025/03/18 22:28:30 ID:iUzunJi.f2
「こなすべきタスクも無く、貴方を害するコバエもいない、充実した休日。心置きなく、対価を頂けますね」
 ジャーニーの笑顔。その口の端から覗く鋭い歯を見て、どうやら魔法の『対価』は、とても重いものになりそうな気がしたのだった。
22 : お前   2025/03/18 22:29:10 ID:iUzunJi.f2
【終わり】

23 : モルモット君   2025/03/18 22:30:30 ID:oIFdD61Ubg
😭
24 : キミ   2025/03/18 22:31:08 ID:iUzunJi.f2
以上です。魔法少女の多様化みたいな話を聞いて、なんとなく思いつきました。
25 : お姉さま   2025/03/18 22:35:20 ID:L76KD.HXNw
読みごたえがあった
クリエイティブなスレは無限に評価されるべきである
26 : トレぴっぴ   2025/03/18 23:09:31 ID:iPqqQWA3C.
何となくマジカルチャカみたいな感じがするなぁと思ったら
期待を裏切らない予想通りの話だった

トミーガンって正直こういうイメージしかないけど
第2次大戦中の米軍で最も使用された軽機関銃で別にマフィアと警察以外使ってないわけじゃないよ
自衛隊も90年代まで一部で使用を続けた信頼性の高い「元祖」サブマシンガンだよ
ドラムマガジンが有名すぎるけど普通の20発とか30発のマガジンもあるよ

某国の首相が葉巻咥えて持ってると似合いすぎてて本職にしか見えないのは気のせいだよ


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