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ウマ娘格闘伝~サトノ、その血のさだめ~
1 :
トレーナーさん
2025/02/09 18:56:54
ID:WGX6V6rUsU
日本ウマ娘トレーニングセンター学園……通称トレセン学園には、競争ウマ娘として己を磨く学生達のために、様々な施設が用意されている。
芝・ダート・ウッドチップ等の各種トレーニング用コースを始めとして、全長約1kmの坂路コース、大型の体育館、年中通して使用できる屋内プール、フィットネスルーム、ライブ練習用のダンススタジオ……
そして剣道や柔道といった各種武道を修練するための格技場もある。
一般的な剣道・柔道の試合場が二面は取れるその格技場に、今二人のウマ娘がいた。
格技場のうちの半面、柔道用の畳が敷いてある側でその二人……ヤエノムテキとサトノダイヤモンドは白い道着を着て向かい合っていた。
「本当にサポーター無しで大丈夫ですか?」
ヤエノムテキが気遣わしげな表情で問う。
彼女の実家は金剛八重垣流という古武術の道場を営んでおり、彼女自身も師範である祖父から流派の技と精神を幼い時分から叩き込まれていた。同年代の少女の中では、武道家としての素養は群を抜いているといってよい。それゆえに、サポーター──空手の練習等でも使われる拳足及び頭部を防護するサポーター・プロテクターを使わず試合形式で立ち合ってほしいという申し出は、意外であると同時に怪我をさせるかもしれないと不安でもあった。
「はい! できるだけ実戦に近い形で感覚を掴みたいのです!」
しかしその申し出をしたサトノダイヤモンドは、両の眼差しにいささかの迷いもなく答える。
2 :
アナタ
2025/02/09 18:57:29
ID:WGX6V6rUsU
サトノダイヤモンド……日本でも有数の大企業であるサトノグループを支配するサトノ家の御令嬢。ヤエノが抱いていた正直な印象でいえば、自分とは対極的な、格闘技よりもピアノやバイオリンが似合いそうな可憐な少女だった。
だがその可憐な少女は、汗の匂いが染み付いたような格技場で、武道家として自分との立ち合いを求めている。
「……分かりました」
ヤエノムテキは頷き、軽く息を整えた。
指先を前に向けた掌を顔の前に。
「いつでもどうぞ」
「はいっ!」
元気よく返事をしたダイヤは、両足を心持ち大きく開いて掌を上下、やや低い位置に構える。
(これは──)
意外にも、その構えは堂に入っていた。
ダイヤはそのまま大きく踏み込むや、拳を突き出してくる。
(直突き!?)
日本拳法でよく見られる拳を縦にした突き技。
(だがこれは──)
ヤエノは突きを掌で弾くと同時に、地を蹴って大きく間合いを外した。
ダイヤの顔に少し残念そうな色が浮かぶ。イタズラが失敗した子供のような風情だが、ヤエノとしては背筋の冷える思いだ。
今の突きはただの直突きではなく、腰の捻りを十分に活かした突きから肘打ちへと繋げる連続技だった。最初の突きを弾いたところで安心していれば胴に深々と肘が入っていただろう。
3 :
貴様
2025/02/09 18:57:59
ID:WGX6V6rUsU
「──続けます」
するり、と滑るような歩法で間合いを詰めるダイヤ。
疾い。
(左ジャブか!)
古式ゆかしい突きを放ってきたかと思えば、今度は近代的でスマートなパンチ。立て続けに二発。
ヤエノは落ち着いてガードし、続けて打ち込まれたストレートを頭を沈めて躱すと同時に胴体へ掌打を叩き込んだ。
「っ……!」
ダイヤの目に苦痛が走る。が、倒れなければ下がりもしない。そして一瞬後には、その目には獰猛な意志が宿る。眼の前にいる相手を、如何にして叩き伏せるかという、実に武道家らしい傲慢ささえ伴って。
反撃。瞬きほどの間に、拳と蹴りが交差する。
様子見も兼ねて守勢であったヤエノの胸中には、新鮮な驚きがあった。
自分とは正反対なタイプだと思っていた大企業の御令嬢。だがどうして、獰猛な獣を見せてくれる。
考えてみれば当たり前なことだ。
ここはトレセン学園。勝利を求めるウマ娘達が集う学舎。
それが何であれ、勝ちたくない子などいないのだ。
無意識に見くびってしまっていた詫びも込めて、ヤエノは拳を固める。
明確な闘志とともに打ち込まれた拳打を、ダイヤは前腕を盾にガードする。ウマ娘の肉体でなければ骨が砕けていてもおかしくない一撃。
ヤエノは続けて左右の拳と下段蹴りのコンビネーション。
経験の差が出たか、ダイヤは防戦一方。しかし致命的なダメージはきっちり避けている。
だが下段蹴りを受けてダイヤの意識が下方へ下がった僅かな隙を、ヤエノは見逃さなかった。
4 :
お姉さま
2025/02/09 18:58:41
ID:WGX6V6rUsU
矢のように鋭い正拳突きが、まっすぐ放たれる。吸い込まれるようにダイヤの顎を捉える──はずだった拳が、次の瞬間、
(流された!?)
左に身を捌くと同時に掌で拳を受け流し、そのまま相手の腋を突き上げるように肘打ち。
半身の構えから自身の背中側──外門へ踏み込むと同時に放つ頂肘。
これ即ち、八極拳・六大開の一つ、外門頂肘!
(見事……! しかし──)
「浅いっ!!」
本来ならカウンター技として比類なき威力となるはずだった頂肘は、完全には入っていなかった。
痛みを堪えながらヤエノはダイヤの道着の襟を掴み、そのままお手本のような内股を決めた。
背中から畳に叩きつけられ一瞬息の詰まったダイヤの顔面に、拳が寸止めされる。
「……参りました」
勝負ありである。
………………
5 :
相棒
2025/02/09 19:00:23
ID:WGX6V6rUsU
「正直驚きました。学園にこれだけ実戦的な中国拳法を使える人がいるとは。特に最後の肘打ちは踏み込みこそ浅かったですが、タイミングは完璧でした」
立ち合いを終えたヤエノとダイヤは、カフェテリアに場所を移してティーセットを挟んで談笑していた。
「恐れ入ります。でもやっぱりヤエノさんには敵いませんでしたね」
「そうそう遅れは取れませんよ」
道場でのひりついた空気はどこへ去ったのか、華やかな紅茶の香りに包まれて和やかな雰囲気で会話は続く。
「ところでダイヤさんはどうして拳法を学ばれたんです? やはり護身術として? それともクロストレーニングですか?」
「そのどちらもありますけど、一番は責務ですね」
「責務……ですか」
その単語にヤエノが一瞬意外そうな表情を浮かべるが、すぐにそれは得心に変わる。彼女の家も、金剛八重垣流という流派の名と精神を伝え守るという責務を負っているのだから。
サトノ家ほど大きな家ともなれば、外の者が伺いしれない事情や必要というものがあるのだろう。
「なるほど。立派なことだと思います。よろしければまた付き合わせてください。こちらとしても勉強になります」
「はい! よろしくお願いしますね!」
………………
6 :
トレーナー君
2025/02/09 19:01:10
ID:WGX6V6rUsU
スイープ「ねえキタサン」
キタサン「どうしたの? スイープさん」
スイープ「ダイヤが最近、空手だか拳法だかの練習を熱心にやってるけど、何かあったの?」
キタサン「ああ、あれ。普段からもちょくちょく練習はしてるけど、最近バーチャファイターの新作が発表されたから、発売に備えて格闘感覚を鍛えてるんだ。サトノの一族としてみっともない対戦は出来ないとか」
おわり
7 :
トレぴ
2025/02/09 19:02:25
ID:WGX6V6rUsU
【注意】
作中の格闘描写は超テキトーです
ダイヤちゃんが使っている技もセガのゲームで使われているのを元にしたフィクション拳法です
8 :
トレピッピ
2025/02/09 19:13:34
ID:WGX6V6rUsU
>>7
ちょっと補足
八極拳の外門頂肘という名の技は実際にあるけど、実物じゃなくてゲームの方を参考にしたという意味でのフィクションです
9 :
お前
2025/02/09 19:40:38
ID:sUZKaRS.ds
タイトルでジョジョネタかと思った
10 :
モルモット君
2025/02/09 20:28:18
ID:ZAGv.946tI
新バーチャなぁ
出るってだけでも嬉しいけど発売時期もまだ分かってないしどうなるか
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