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作るのに失敗したイナリワン
1 :
あなた
2025/01/26 20:47:01
ID:RdU.XQ89pk
「あっ、ダンナ……」
イナリワンは、潤んだ目でイナリトレを見つめた。
その身体は、白くどろりとした液体にまみれている。
「ダンナのが、こんなに……」
イナリは豊満な胸に付いた白い液体を指ですくって、ぺろりと舐めた。
「イナリ、無理しなくても……」
「ダンナがこしらえたものだから、もったいなくてよ……」
イナリトレが液体まみれの箇所で手を動かすと、イナリは「あっ……」とうめき声を上げる。
「ダンナ……すまねえ……」
「たしかに、これはもったいないな……」
イナリトレは、サクランボを口に入れて、舌で転がす。
「肉厚で、甘い……最高だ……」
「へへっ、そうだろ……」
イナリは嬉しそうに笑う。
2 :
トレーナー
2025/01/26 20:47:57
ID:RdU.XQ89pk
イナリトレは続けて、目の前の大きな白桃に手を伸ばし、口に含む。
「こっちも、蜜たっぷりで、柔らかくて甘いな……」
「てやんでい、ダンナのせいでデカくなったんだからな……」
深夜のリビング。薄暗い明かりの中で、二人は黙々と動き続ける。
「ダンナ、そろそろ……」
「ああ、こっちもそろそろだ……」
終わりが近づくと同時に、二人の動きは速くなり、一瞬大きく震えた後、動きは止まった。
3 :
お前
2025/01/26 20:48:24
ID:RdU.XQ89pk
「はあ……はあ……ダンナ……」
イナリは申し訳なさそうに、赤い二本の線が入った棒を見せた。
イナリトレはそれを見ると、イナリを励ますように肩に手を置いた。
「いいんだ、気にするな」
「上手くやったと思ったのに、これ……」
「大丈夫だ。俺たちなら乗り越えられる。そうだろう?」
「そうだな、ダンナ……」
薄明りの中、白濁した液体まみれのイナリは、イナリトレに力無く微笑んだ。
白濁した液体は、この世界に産まれそこなった哀しき存在として、イナリの目に写っていた。
4 :
アナタ
2025/01/26 20:49:37
ID:RdU.XQ89pk
全ては牛乳寒天である。
事の始まりは、イナリワンとイナリトレが、行きつけの和菓子屋に行った時の事だ。
「おおう、こいつはすげえや。チョコレートを寒天で閉じたのかい?」
「そろそろバレンタインだからねえ。目玉商品の一つや二つ、作っとこうと思ってねえ」
目を輝かせて、試作品の和菓子を見るイナリワンに、駄菓子屋のおばちゃんは微笑んだ。
イナリは爪楊枝で寒天チョコをついて、口に運ぶ。
「ん!こいつはうめえや!ぷるぷるした舌触りに、チョコの甘さがうまく絡んでやがる!」
「甘さ控えめに作った寒天で閉じたからねえ。チョコの風味がきちんと出てるだろ?」
「さすがおばちゃんだぜ!こいつは飛ぶように売れるに決まってらあ!」
「ありがとねえ。イナリちゃんのお墨付きがもらえて嬉しいよ。あ、そうだ」
おばちゃんは、奥に引っ込んだかと思うと、小さな箱を持って戻って来た。
5 :
アナタ
2025/01/26 20:50:58
ID:RdU.XQ89pk
「これ、イナリちゃんとダンナさんに、プレゼント」
カウンターに置かれたのは、高級そうな小箱に入った、ペア揃えのスプーンだ。
気品ある銀の柄に、片方には青い線が二つ、もう片方には赤い線が二つ入っている。
見るからに職人の手によるもので、イナリとイナリトレは感心して眺める。
「こいつはすげえや、こんな高そうなものを貰っていいのかい?」
「仕入れ先からの貰いものだけどね。私とあの人は、今さらこういうのを揃える歳でもないし、それに……」
おばちゃんは、イナリトレにニヤリと笑いかける。
「ダンナさんは、こういうのを揃えたい頃合いだろうと思ってねえ」
「か、からかわないで下さいよ……」
イナリトレは顔を赤くした。
イナリは、スプーンの箱を受け取って言う。
「へへっ、ありがとなおばちゃん!代わりと言っちゃなんだが、このチョコのことは大井の子分たちにしっかり伝えとくぜ!」
6 :
お姉さま
2025/01/26 20:51:45
ID:RdU.XQ89pk
二人は和菓子屋から出て、のんびりと通りを歩きながら話す。
「おばちゃんのあのチョコレート、まさに職人技だったなあ。ああいうのを見ると、自分でも何か作りたくなってくるぜ」
「ああ。でも、和菓子を気軽に作るってのは、難しいな……」
イナリトレは少し考えて、ふと思いつく。
7 :
アナタ
2025/01/26 20:52:43
ID:RdU.XQ89pk
「そうだ、牛乳寒天はどうだ?」
「牛乳寒天?」
「牛乳を寒天で固めたお菓子だよ。見た目は杏仁豆腐に近いな。作るのも簡単だし、色んな果物を入れて豪勢にできる。やってみないか?」
「そいつは面白そうじゃねえか!そうと決まれば善は急げ!材料を揃えに行こうぜ!」
こうして、二人は牛乳寒天を作るべく店を回り、スーパーで寒天と牛乳、果物屋で種々様々なフルーツを買い揃えた。
特に、サクランボと白桃は、果物屋のおじさんにオススメされた特級品である。
「サクランボは肉厚で甘みたっぷり!白桃も蜜たっぷりだ!イナリちゃんとダンナさんのお目に適うに違いねえ!」
と、威勢よく勧めてくれたものだ。
8 :
使い魔
2025/01/26 20:53:29
ID:RdU.XQ89pk
二人で同居している自宅に戻ると、さっそく牛乳寒天を作り始めた。
途中、イナリが寒天の分量を間違えかけたり、イナリトレが白桃を大きく切りすぎたりと、小さなトラブルがあったが、調理は順調に進んだ。
そして、あとは冷蔵庫で冷やすだけとなった。
「へへっ、明日が楽しみだな!」
「ああ、これだけ豪勢に作ったんだ。おいしいに決まってる」
「朝一で食べたいからよ、貰ったスプーンはここに置いとくぜ」
そう言って、イナリはスプーンを箱から出してキッチンに置いた。
9 :
ダンナ
2025/01/26 20:54:09
ID:RdU.XQ89pk
その夜。
イナリはトイレに行くために、イナリトレの懐から抜け出した。
用を済ませ、布団に戻ろうとした時、ふと冷蔵庫が目についた。
元来、せっかちな気性のイナリである。
味見とまではいかなくても、牛乳寒天の様子を見てみたくなった。
作る時に、寒天の量を間違えかけたこともあり、きちんと固まっているか気になって仕方ない。
イナリは冷蔵庫を開け、牛乳寒天が入った鍋を取り出した。
そして、足を滑らせ、鍋の中身をぶちまけ、物音を聞いたイナリトレが駆け付け――
10 :
大将
2025/01/26 20:54:46
ID:RdU.XQ89pk
身体にかかった白くどろりとした液体、掃除のために手を動かすイナリトレ、肉厚で甘いサクランボ、イナリトレが大きく切りすぎた蜜たっぷりの白桃、雑巾を絞るために大きく震える身体、赤い二本線が入ったスプーン。
こうして、今に至るわけである。
11 :
トレーナーちゃん
2025/01/26 20:55:44
ID:RdU.XQ89pk
「すまねえ、ダンナ。本当にすまねえ」
目に涙を溜めたイナリを、イナリトレは抱きしめる。
「気にするな。果物も材料もまだある。また作ろう」
「ダンナ……」
「それより、怪我はないか?」
「大丈夫でい……」
「良かった。さあ、体を洗って寝よう。今度は、桃を大きく切りすぎないように気を付けるよ」
「へへ……あたしも、寒天の量に気を付けるぜ」
二人は、手早く鍋を洗い、牛乳寒天まみれになったパジャマを洗濯機に放り込むと、二人でシャワーを浴びてから、布団に潜った。
イナリは、イナリトレの胸板に顔を押し付け、イナリトレはイナリの頭を優しく撫でて、二人は眠りにつくのだった。
12 :
トレぴ
2025/01/26 20:56:36
ID:RdU.XQ89pk
後日、二人は改めて牛乳寒天を作り、和菓子屋のおばちゃんから貰ったスプーンを使って食べた。
そして、イナリワンは牛乳寒天のおいしさに感動するとともに、イナリトレの寛容さと懐の深さに、改めて惚れ直すのだった。
13 :
使い魔
2025/01/26 21:02:55
ID:RdU.XQ89pk
【終わり】
14 :
お姉さま
2025/01/26 21:04:00
ID:8mhXE1hzKU
なかなかおもろいやんけ
15 :
アナタ
2025/01/26 23:55:02
ID:uk3RgcS5Zk
牛乳寒天なら仕方ないな
16 :
トレーナー
2025/01/27 11:14:58
ID:Uk.MDcxlTU
ときどきイナリSSニキが現れるな
17 :
アンタ
2025/01/27 11:41:51
ID:or.NYItv8M
コンコンしたんか?
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