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ウマ娘BBS
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ダンナをかけた勝負を挑まれるイナリワン
1 :
お兄さま
2025/01/25 19:02:01
ID:dt0.iljjdQ
【SSを書いたので公開します。8000字ほどです】
2 :
お兄さま
2025/01/25 19:02:52
ID:dt0.iljjdQ
大井レース場。
ダートのウマ娘レースなら、中央のウマ娘に勝るとも劣らない実力者が多く在籍する、大井のウマ娘レースチームの拠点である。
大井レース場では日曜日に公式のレースが行われ、月曜日は定休日である。
だが、今日は月曜日でありながら、レース場では練習が行われており、ジャージを着た多数のウマ娘が一人のトレーナーの周りに集っていた。
「はい、これが今日のメニュー」
「頑張ります!」
「君はこれ」
「押忍!気合い入れてやります!」
「君は……あった、これだ」
「全力疾走でいきます!」
ウマ娘たちに取り囲まれながら、トレーニングメニューが書かれたプリントを配っているのは、かつて中央のトレセン学園でイナリワンのトレーナーを務めていたイナリトレである。
イナリワンが学園を卒業すると共に、イナリトレも学園を去った。
そして、大井のレースチームのウマ娘トレーナーになり、中央で鍛え上げたトレーナー技術を発揮しているのだった。
3 :
貴様
2025/01/25 19:03:26
ID:dt0.iljjdQ
「おうおう!ダンナのトレーニングで分からないところがあったら、あたしのとこに来な!ちょいとしたコツを教えてやっからよ!」
イナリトレの隣でウマ娘たちに声をかけているのは、イナリワンだ。
かつては中央で、あのオグリキャップやスーパークリークと激闘を繰り広げ、彼女たちと共に永世三強と呼ばれた、大井では伝説的な存在として扱われているウマ娘である。
現役を引退した後は、かねてより希望していた畳職人になるべく、日々修行に精を出している。
だが、忙しい日々を過ごしながらも、手の空いた日にはパートナーであるイナリトレを手伝うために、こうしてレース場に顔を出しては後輩たちの面倒を見ているのだった。
4 :
貴様
2025/01/25 19:04:46
ID:dt0.iljjdQ
元中央トレーナーであるイナリトレと、G1ウマ娘のイナリワン。
二人を迎え入れた大井のチームは、これまでになく強力になりつつあったが、一つだけウマ娘たちの間に不満をもたらすことがあった。
イナリワンが、模擬レースを受けてくれないのである。
練習中の併走は受けてくれるし、走り方を見てもらえば実力は向上する。
だが、模擬レースに出てくれと頼むと、
「てやんでい!あたしがおめえらのレースに出しゃばったら、せっかくの模擬レースが台無しじゃねえか!模擬レースは、実力が近い奴同士がやるから意味があるって、いつもダンナが言ってるだろ?」
と取り合ってくれないのだ。
イナリワンが全く走らないというわけではない。
チームの練習が終わった後、イナリワンとイナリトレが二人きりで、レース場でトレーニングしているのを見たと言うウマ娘もいる。
せっかく憧れの先輩が目の前にいるのだ。模擬レースでやり合いたいと思うのがウマ娘の本能である。
この密かな不満が溜まり、そしてちょっとした事件が起きた。
5 :
大将
2025/01/25 19:06:00
ID:dt0.iljjdQ
チームトレーニングがひと段落した昼過ぎ。
イナリトレが、チームメンバーそれぞれの練習結果をノートにまとめていると、イナリワンが近づいてきた。
「おうダンナ、約束は覚えてるよな」
「ああ、蕎麦屋で昼飯食って、いつもの和菓子屋だろ?」
「へへっ、和菓子屋の婆さん、娘さんに新作を作ってもらったって喜んでたからよ。どんなもんか、楽しみで仕方ねえぜ」
月曜日の練習が終わった後、イナリトレとイナリワンは、お決まりのように一緒に出かけていた。
世間一般ではデートと呼ばれるものに近いが、一緒に居て当然とばかりに距離感が馴染んでいるせいか、デートという浮ついた言葉を使うのは何とも憚られるのだった。
6 :
アンタ
2025/01/25 19:07:25
ID:dt0.iljjdQ
二人の和やかな雰囲気を破ったのは、三人のウマ娘だった。
「おうおう、イナリ先輩。ちょいと汗を流し足りねえんじゃないですかい?」
突然、喧嘩腰で話しかけてきたのは、先ほどまでトレーニングしていたウマ娘だ。
その後ろに、二人のウマ娘がついている。
大井のチームの中でも、実力のあるウマ娘三人組で、それぞれの頭文字を取ってABCトリオと呼ばれている。
喧嘩腰で声をかけたのは、リーダー格のAだ。
イナリワンはダンナとの会話を遮られたせいか、少し不機嫌な表情を見せる。
「汗を流し足りないってのは、どういうことだい?」
眼鏡をかけたBが言う。
「そのまんまの意味ですよ。人の走りを見てばっかで、自分はまったく走っていないようで」
小柄なCが続けて言う。
「走り足りねえってなら、アタシたちに付き合ってもらえませんかね」
7 :
ダンナ
2025/01/25 19:09:42
ID:dt0.iljjdQ
イナリワンは、腕を組んで三人組を睨みつける。
「喧嘩の誘いかい?」
長身のAは、イナリワンを見下ろして威圧する。
「その通り、あたしらと一丁走ってもらいましょうか」
「てやんでい!おととい出直してきな!あたしが出しゃばって、おめえらの世代の邪魔をしたくねえってんだ」
すると、Aはイナリトレを値踏みするように眺める。
「出しゃばらねえってなら、トレーナーさんはあたしらが頂いちまっていいですかねえ?」
「……どういうことでい?」
「知ってるんですよ。イナリの姉さんが、私たちが帰った後にトレーナーさんとトレーニングしているのを」
Bが眼鏡を光らせる。
「現役を退いたイナリの姉さんには、ちょっぴり過度な待遇じゃないでしょうか」
「ひひっ、それにトレーナーさんはいい男だからさ」
ニヤついた顔でCが言う。
「イナリ先輩に勝ったら、アタシたちで頂いちまうってのも、アリかと思ったんでさあ」
8 :
貴方
2025/01/25 19:10:45
ID:dt0.iljjdQ
Cのこの発言で、レース場の空気が一変した。
イナリワンだけが、トレーナーとサシで練習するのが気に食わない。もっと指導が欲しい。
そこまでは正当な要求である。むしろ、上昇志向があると褒められてもよい。
だが、イナリワンからイナリトレを奪う。この発言は一線を越えていた。
イナリワンとイナリトレの関係は、大井では暗黙の了解を得ており、密かに応援するウマ娘も多い。
先ほどまで、イナリワンとイナリトレのやり取りに顔を和ませていたウマ娘が、一瞬にして修羅の形相に転じたのも、この瞬間であった。
もし部外者だったら、この時点で無事にレース場から出ることはできない。
だが、普段は素行が良く、学校の成績は優秀で、皆と良好な関係を築き、地域のボランティア活動にも積極的に参加し、何よりイナリワンと仲が良いABCトリオだからこそ、周りのウマ娘は一時静観の対応を取ったのである。
9 :
貴方
2025/01/25 19:11:26
ID:dt0.iljjdQ
「おい、イナリがトレーニングしているのは……」
「ダンナ、あたしに任せてくんな」
イナリワンが、イナリトレの言葉を遮る。
「上等でい。そんなにイナリ様と走りてえなら、走ろうじゃねえか」
Aはニヤリと笑う。
「でしたら、軽く体を暖めて……」
「必要ねえよ」
イナリワンはジャージの上着を脱いで、イナリトレに投げ渡す。
練習用の体操服の上下姿だが、イナリワンが纏う空気は、練習用のそれではなかった。
「てめえらを潰すには、このぐれえがちょうどいい」
その目には、見た者を呑みこみ、焼き焦がすような狐火が灯っていた。
10 :
トレピッピ
2025/01/25 19:12:53
ID:dt0.iljjdQ
スタートラインで4人が構える。
枠番は、内側から、A、B、C、イナリワン。
ダートの1800m。右回り。馬場は良。天気は晴れ。
マイル帯の距離を指定したのは、イナリワンだ。
この距離は模擬レースで最も用いられる距離であり、チーム全員が走り慣れている距離でもある。
それに加えて、理由はもう一つ。
「おめえらが得意な距離でやろうぜ。負けても言い訳できねえようによ」
とイナリワンが凄んだからだ。
11 :
キミ
2025/01/25 19:14:04
ID:dt0.iljjdQ
スタート前の静寂。
見守るウマ娘たちの感情は様々である。
急にあのような態度をとったABCトリオに困惑する者、イナリワンに対する挑戦に血が騒ぐ者、イナリワンの今の実力を見定めようと目を凝らす者。
イナリワンが現役を退いて以来の、他者が観る中で行われるレース。元G1ウマ娘に向けられる目に、熱がこもらぬはずがない。
スタートコールは、イナリワンと特に仲の良い、紫シュシュのウマ娘が務める。
「位置についてー!よーい!」
緊張が走る。
現役を退いて衰えているであろうイナリワンは、どのような走りを見せるのか。ABCトリオはどこまで食らいつくか。あるいは、下剋上を果たすのか。
期待と不安がないまぜになった雰囲気が、レース場を包む。
12 :
貴様
2025/01/25 19:14:51
ID:dt0.iljjdQ
「ドン!」
スタートは4人同時。出遅れは無し。
直線で、それぞれが脚質に合った走りでバ群を形成していく。
逃げのAが先頭、3バ身離れて先行のBが続き、すぐ後ろに差しのC、追込のイナリワンはCから1バ身離れて最後方。
そこから徐々にバ群は広がっていき、第一コーナーを過ぎるころには、先頭から最後方まで10バ身という、出走人数にしては長いバ群となっていた。
「手ェ抜いてんのか?」
先頭のAが苦々しそうに、ぽつりと漏らす。
「あるいは……伝説は終わりってわけかよ、クソッ」
13 :
お姉さま
2025/01/25 19:16:09
ID:dt0.iljjdQ
一方、BとCに余裕はなかった。
得体のしれないイナリワンの気配が、後ろから伝わってくるのだ。
数バ身も離れているはずなのに、首に大鎌の刃を当てられているかのような、おぞましい重圧感。
「やられる……少しでもペースを落としたら、狩られる……!」
「とんでもねえ……これがG1ウマ娘の圧力かよ……!」
それでも、掛からずに自分の走りに集中できているのは、イナリトレの指導の賜物か。
はたから見れば、Aの逃げ切りで終わりそうなレース展開。
中盤に差し掛かっても、ペースは変わらず。まったくバ群に乱れが無いのが不気味なほどであった。
風向きが変わったのは、第三コーナーに入りかけた時だった。
14 :
モルモット君
2025/01/25 19:17:18
ID:dt0.iljjdQ
イナリワンが急加速した。
「嘘でしょう……?」
「早ッ……!」
スパートの早さに、BとCが驚く。
春の天皇賞3200mを走り切るスタミナあっての、早いスパート。
この"強行策"に対し、BとCは抜かされまいとペースを上げる。
「来やがったか……」
10バ身先のAは、この異変に気付きながらも、息を乱さない。
息を乱した逃げウマにあるのは、確実な敗北だと分かっていた。
イナリワンの位置が、差しのCから1バ身後ろ、先頭から6バ身離れて最終コーナーへ。
15 :
トレーナーさん
2025/01/25 19:18:02
ID:dt0.iljjdQ
最初に狩られたのはCだった。
"神速"で迫るイナリワンの圧力に負け、脚を乱した瞬間には抜き去られていた。
「嘘だろ……なんで……?」
間を置かず、Bも狩られる。
"飛翔脚"は狙い誤ることなく、スパートに入りかけたBの外側を貫いた。
「そんな……伴走では見せなかった走り……!」
ラストの直線。イナリワンとAの差は3バ身。
もはやAに余裕はなかった。
ただ、全力を出し切り、差をこれ以上縮められまいと、"迫る影"から逃げるしかなかった。
16 :
アナタ
2025/01/25 19:19:18
ID:dt0.iljjdQ
「うぐっ、うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
息を乱し、叫び、ひたすらに地面を蹴ることしかできない。
イナリ先輩?どこだ?すぐ後ろか?いつ来る?逃げ切れるか?おかしい、ゴールが遠すぎる?練習より遠い?いつまで続く?遠い、遠い、遠い――
ゴールまでの距離が無限に感じる逃走劇。
終わりは、あまりにあっけなかった。
すっと、小さな影が脇を通ったかと思えば、まるで当たり前のように抜き去られていた。
追い比べすらできない、圧倒的なスピードの差。
一瞬だけ、イナリワンが振り向いた気がした。
狐火の残滓が、Aの目前で瞬き、そして消えた。
17 :
ダンナ
2025/01/25 19:21:01
ID:dt0.iljjdQ
レースの結果は、誰が見ても決定的だった。
4バ身差でイナリワンが一着。
続いて、A、B、C、の順番でゴール。
だが、順位や着差よりも、イナリワンとABCトリオの実力差を明らかにしたのは――
「はあっ……はあっ……はあっ……」
Aはうつ伏し、ダートの砂に荒い息を吐き続けていた。
Bは体と眼鏡を砂まみれにして横たわり、Cは激しく深呼吸しながら仰向けに寝転がっている。
まるで、生命力を奪われたかのように、ひどく消耗していた。
一方、イナリワンは、
「おうダンナ!どうでい!イナリ様もやるもんだろ?」
「ああ!さすがイナリだ!粋な走りだったぞ!」
と、さほど疲れた様子もなく、イナリトレとキツネサインでハイタッチをしていた。
大井のチームメンバーの誰が見ても、完全な勝利であった。
18 :
お姉さま
2025/01/25 19:22:00
ID:dt0.iljjdQ
「さて……そんじゃ、ケジメ付けねえとな」
イナリワンは、ふっと笑顔を消して、まだ倒れ伏したままのABCトリオに近づいていく。
止める者はいない。
元々、ABCトリオから吹っ掛けた喧嘩というのもあるが、イナリワンならひどい沙汰を下さないだろうという信頼もあった。
イナリワンはAの目前に、仁王立ちになる。
Aはイナリワンを見上げる形だ。Aの目には、イナリワンの姿が巨人のように見えていた。
こちらから仕掛けた喧嘩、イナリトレを利用した挑発、無様な敗北。チームを追放されてもおかしくない。
だが、悔いは無かった。
憧れのイナリワンと、全力で走るためにやったことだ。どんな罰を受けてもよかった。
けれど、そのためにBとCを巻き込んだことが、唯一の心残りだった。
19 :
お姉さま
2025/01/25 19:23:44
ID:dt0.iljjdQ
「イナリ先輩……」
「なんでい?」
「今回のことは全部、あたしが一人で考えたことで……」
「何言ってるんですか!」
Bが怒鳴る。
「私が全部計画したことです!二人は関係ありません!」
「いーや!アタシが考えたんでさあ!」
Cも怒鳴る。
「だから悪いのは全部アタシってわけです!」
「おめえら」
イナリワンが睨むと、3人は口を閉じた。
「まだ、走れるかい?」
「え?」
Aが困惑の声を上げる。イナリワンは睨んだまま続ける。
20 :
マスター
2025/01/25 19:24:52
ID:dt0.iljjdQ
「まだ、あたしに挑む気があるのかって聞いてるんでい。どうなんだい?」
Aは、ダートの砂を握りつぶすように拳を握る。
「……走れます。いつか、イナリ先輩より速くなって見せます」
「おめえらはどうなんだい?」
視線を向けられたBとCは、歯を食いしばって、絞り出すように言う。
「……イナリ先輩に勝ちたいです」
「……絶対、イナリ先輩より強くなってやる」
「へへっ、そいつは良かった」
イナリワンは、険しい表情を緩め、おだやかに笑った。
「あたしがおめえらとレースをしなかったのは、あたしの走りに圧されて、走るのをやめちまわねえか心配だったからでい。だがまあ、その調子じゃ心配いらねえみてえだな」
21 :
貴様
2025/01/25 19:26:02
ID:dt0.iljjdQ
イナリワンがイナリトレを見ると、イナリトレは頷いた。時は来た、と言うように。
イナリトレは、チームメンバーたちに振り返って告げた。
「次の休日練習から、イナリとの実戦練習を開放する。そのために、イナリは一対一で俺とトレーニングをしてきたんだ。G1ウマ娘との真剣勝負を、みんなに体験させるためにな」
「勝っても負けても恨みっこなし!あたしと走りてえやつは、遠慮なくかかってきやがれってんだ!!!」
チームメンバーたちは歓声を上げた。
先ほどのレースを見てから、血が沸きだって仕方なかったのだ。
「それから、そこの3人」
イナリワンは、ABCトリオに告げる。
「喧嘩を吹っ掛けた罰として、あたしの分まで片付けしといてくんな。皆の衆!お先に上がらせてもらうぜ!」
そしてイナリワンは、さっとイナリトレの手をとって、抱きかかえるように握りしめると、イナリトレと談笑しながら更衣室の方へと歩いていった。
22 :
貴様
2025/01/25 19:27:08
ID:dt0.iljjdQ
「はーっ、やっぱイナリ先輩はすげえわ」
Aは立ち上がって、砂が付いた膝をはたきながら言った。
「中盤までけっこうリードしてたはずなのに、サッと抜かれちまった」
「そういう作戦だったんですよ」
Bは、砂まみれの眼鏡に息を吹きながら言う。
「最後方から一気に抜き去って、実力を知らしめる。まったく、容赦ない走りでした」
「イナリ先輩、本気で怒ってたもんな」
Cは、身体中が砂まみれなことを気にせず、笑って言う。
「ひひっ、トレーナーにお熱なことが丸わかりだったぜ」
23 :
キミ
2025/01/25 19:29:00
ID:dt0.iljjdQ
「とにかく、うかうかしちゃいられねえってわけだ」
Aは周りを見渡す。
レースを観戦していたチームメンバーたちが準備運動を始めており、追加練習が始まる雰囲気が漂っている。
「みんな殺気立ってやがる。イナリ先輩も、みんなと一斉には走れねえだろうし、次に走れるのはいつになるやら……」
「イナリ先輩と走って、分かったことがあります」
Bが、冷静な口調に熱気をこめる。
「あの"神速"の走り、盗めそうです。みんなより速くなれば、次もイナリ先輩と走れる。そうでしょう?」
「違いねえや」
Cが、獰猛な笑みを浮かべる。
「イナリ先輩のおかげでよ、"突撃魂"ってやつ?分かりかけてんだよな。あいつら蹴散らして、次も走ろうぜ」
「ふふっ、そいつはいい」
Aは、目に期待に満ちた眼光をたぎらせる。
「あたしも、"踏ませぬ影"ってやつを、イナリ先輩に見せてやりてえのさ」
3人は顔を見合わせて頷くと、イナリワンとの対戦で見出したスキルを身体に叩き込むべく、ダートコースを走り出した。
24 :
あなた
2025/01/25 19:30:52
ID:dt0.iljjdQ
この日以降、大井のチームでは上位の実力者が、イナリワンと対戦できるようになった。
後に『マスターズチャレンジ』と呼ばれるこの練習試合は、大井のチームの慣習となり、イナリワンへの対戦権を得るべく、チームメンバー同士での研鑽は激しいものとなった。
1年後にイナリワンが第一子を身籠ったことで一線から離れると、その時のトップである紫シュシュのウマ娘が『マスターズチャレンジ』を引き継ぎ、チームメンバーからの挑戦を受けた。
こうして連綿と、大井のエースウマ娘により『マスターズチャレンジ』は引き継がれ、そのあまりに激しい戦いぶりから、いつしか一般の観戦者が来るようになり、今では大井レース場の一大興行になっている。
今日も、大井のトップクラスのウマ娘レース選手たちは、『マスターズチャレンジ』にて己の実力を試し合い、そして高め合っていくのだった。
25 :
トレぴ
2025/01/25 19:36:09
ID:dt0.iljjdQ
「なあダンナ」
イナリワンは、葛餅を口に運びながら言った。
二人が座っているのは、和菓子屋の軒先に設置されたベンチで、買ったばかりの和菓子を食べられるようにテーブルも置かれている。
そこに和菓子と熱いお茶を置いて、二人は昼食後のお茶を楽しんでいた。
頭上には和傘が広げられ、和紙を通した薄い日差しが、二人の顔を優しく照らしている。
「どうした、イナリ」
「その、あいつらが言ってたことだけどよ」
「ああ、イナリの練習ばかり見てることか?」
「そろそろダンナも、あたし以外の奴の専属になったほうがいいんじゃねえかと思ってよ」
イナリトレは団子を口に入れて、少し考えてから言う。
「いや、それは良くないな。チームの中で一人だけ特別扱いしたら、チームが成り立たなくなるだろ?」
「……でも、ダンナはこれから伸びるやつを鍛えたほうがやりがいがあるだろ?もし文句を言う奴がいたら、あたしがびしっと言ってやるからよ!」
それから、イナリワンは目を伏せて、
「だから、現役を退いたあたしよりも――」
26 :
モルモット君
2025/01/25 19:37:34
ID:dt0.iljjdQ
「イナリ」
イナリトレは、真っつぐにイナリワンの目を見て言う。
「今までも、これからも、俺はイナリの相棒だよ」
「ダンナ……」
イナリワンは緩みそうになる顔を誤魔化すように、苦い茶をすすり、湯呑みを置いて言う。
「へっ、そこまで言われちゃ仕方ねえな!あたしも、ダンナに応えられるように全力で走るからよ!」
満面の笑顔で、イナリワンは拳を突き出す。
「これからもよろしくな!ダンナ!」
「ああ!よろしくなイナリ!」
イナリトレも拳を突き出して、二人は全幅の信頼を寄せ合うように、拳をぶつけ合うのだった。
27 :
アンタ
2025/01/25 19:46:26
ID:dt0.iljjdQ
【終わり】
28 :
お兄ちゃん
2025/01/25 19:57:31
ID:dt0.iljjdQ
>>27
(画像送れてませんでした)
【終わり】
29 :
トレーナー
2025/01/26 01:06:43
ID:ycCo8tieq.
素晴らしい
イナリワンはこうでなくちゃな
30 :
トレ公
2025/01/26 08:12:27
ID:ym5.4tM8mA
良かった!
31 :
アナタ
2025/01/27 20:57:57
ID:LBLmb5/uC.
なんでスレ消したんですか?
32 :
ダンナ
2025/01/27 21:12:26
ID:LBLmb5/uC.
このスレも消せや
33 :
相棒
2025/01/27 23:35:36
ID:T3CsgN/toQ
ドンナをかけた勝負!?
34 :
トレ公
2025/01/27 23:39:00
ID:CdD6GN1xfU
ダンツをかけた勝負!?
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