新年から理事長室に呼び出されるイナリワンとイナリトレ
1 : トレーナー   2025/01/07 21:41:18 ID:EmG/wpfzrA
正月休みが明けて、すぐのことである。

2 : トレーナーさん   2025/01/07 21:42:00 ID:C7jxna05dk
イナリ「何か用かぃ?」
3 : 相棒   2025/01/07 21:42:21 ID:EmG/wpfzrA
 イナリワンとイナリトレには、心当たりが無かった。
 なぜ、新年早々から、理事長室に呼ばれなくてはならないのか。
 二人は廊下を歩きながら考えるが、さっぱり思い至る節がない。
「まったく分からねえな。どうしてあたしたちが、わざわざ呼びつけられなきゃならねえんだい?」
 イナリワンは、納得いかない様子だ。
「まだ叱られると決まったわけじゃない。もしかしたらいいニュースかもしれない。イナリはよく人助けをするからな」
「へへっ、だといいけどな。でも、放送の時のたづなさんの声色じゃ、こってり絞られるような気がするんでい」
 歩きながら話すうちに、理事長室の前に着いた。ノックと挨拶をして、中に入る。
4 : マスター   2025/01/07 21:44:55 ID:EmG/wpfzrA
 部屋の中では、いつものように秋川理事長が奥のデスクに座り、その傍らには、タブレット端末を持ったたづなさんが控えている。
 空気は張りつめていたが、少なくともこっぴどく叱られるような雰囲気ではないことに、イナリトレは内心ほっとする。
「明けましておめでとうございます」と、それぞれが新年の挨拶をした後、秋川理事長が口を切る。
「質問ッ!トレーナーはネットニュースをチェックしているだろうか?」
 秋川理事長は、イナリトレに閉じた扇子を突きつける。
「いえ、見ていません」
「なら、正月休暇中にしたことで、何か不適切な行為をした覚えはあるだろうか?」
「正月中……ですか」
 イナリトレは。正月を思い返す。
 正月はイナリと一緒に年越ししたり、イナリと一緒に大井の商店街や大井のレース場に挨拶回りをしたり、イナリと年賀状のお返しを書いたり、イナリと初詣に行ったり、イナリとおせちを食べたり、イナリと羽根つきをしたりした。
 イナリトレにとっては、楽しい出来事の記憶しかない。
5 : キミ   2025/01/07 21:47:28 ID:EmG/wpfzrA
「まったく、思い至ることがありません」
「横から失礼するぜ、理事長さんよ」
 イナリワンが、前のめりになって言う。
「あたしとダンナは、お天道様の元に出られねえようなことは何一つしちゃいねえ。咎めることがあるんなら、まず何があったのか説明してくれやせんか」
「うむ、最初にあれを見せるべきだったな。たづな」
「はい」
 たづなさんが、タブレットの画面をイナリトレとイナリワンに見せる。
 見せられたのは、ウマ娘レース関連のネットニュースのページで、見出しにはこう書かれていた。
6 : お兄ちゃん   2025/01/07 21:48:48 ID:EmG/wpfzrA
『イナリワンとそのトレーナー!年末デートか!?』
 その下には、大井の商店街で、並んで歩いているイナリワンとイナリトレの写真が。
 二人は指を搦めて手を繋いでおり、特にそこが強調されて掲載されている。
 コメント欄には、『年末も仲が良くて助かる』『大井ではよくあること』『コンコンしたんか!?』などとコメントが付いている。
 イナリトレとイナリワンは弁明する。
「いや、これは、年末で人通りが多かったので、はぐれないように手を繋いでいただけです」
「その通りでい。簡単に離れねえように、いつも出かける時と同じように、指を絡めて握ってたってわけよ」
「そうですか。ではこちらは?」
 たづなさんはタブレットを操作して、別のネットニュースを二人に見せる。
7 : モルモット君   2025/01/07 21:58:13 ID:EmG/wpfzrA
『イナリワンとそのトレーナー、初詣で見せつける!』
 見出しの下には、振袖を着たイナリワンと着物を着たイナリトレが、神社の前で、二人並んで手を合わせている写真が載っていた。
 コメント欄には、『夫婦じゃん』『結婚発表のニュースを読み飛ばしたかな』『神前でコンコンするんか!?』などとコメントが付いている。
 イナリトレとイナリワンは、またしても弁明する。
「これは、『せっかく初詣に行くんだから、きっちり身なりを整えな』とイナリのお父様に言われて、着物を貸して頂いただけで……」
「あたしも、せっかくの初詣だからって、母ちゃんに振袖を着せられただけでい。しっかし、こうして改めて見ると、なかなかの色男じゃねえか、ダンナ」
「イナリだって、粋で華やかで、とても似合ってるぞ」
「へへっ、おだてたって何も出やしねえぜ」
「コホン。まだありますよ」
 たづなさんは咳払いで二人の会話を止めると、タブレットを操作して画面を見せる。
8 : 使い魔   2025/01/07 22:01:15 ID:4boSQAHQYA
タマ。
9 : アナタ   2025/01/07 22:03:19 ID:EmG/wpfzrA
『イナリワンとそのトレーナー!ホテルで密会か!?』
 見出しの下には、ホテルの扉から出て来るイナリワンとイナリトレの写真が載っていた。
 コメント欄には、『めでたい』『赤飯を炊きたいが餅しかねえ』『姫初めでコンコンしたんか!?』などとコメントが付いている。
 たづなさんが、二人に圧をかける。
「これは、どういうことでしょうか?」
「えっと、前日が大井の人たちとの新年会で……」
「おう!その新年会で、ダンナがあたしの父ちゃんや大井の親方と話してるうちに、ついつい飲みすぎちまってね。まともに歩けねえくらい酔っぱらっちまったから、宿をとって休ませたんでい。そんで、あたしもダンナを介抱するために、一緒に泊ったってわけでさあ」
 イナリトレは、赤面して俯きながら言う。
「ええ、介抱してもらってただけです。本当に」
 たずなさんは、渋い顔でタブレットの画面を閉じる。
「この他にも約10件。ネットニュースに、このような記事が掲載されています」
10 : お前   2025/01/07 22:10:18 ID:EmG/wpfzrA
 秋川理事長は、ばっと扇子を広げて、扇子に書かれた『忠告!』の文字を見せる。
「叱責ッ!今回の件、事情があるのは分かったが、トレセン学園の評判に関わるのも事実!仲良きことは喜ばしいが、記事にされるような行いは控えるように!」
 イナリトレとイナリワンは頭を下げる。
「分かりました。気を付けます」
「あたしも、気を付けさせてもらいやす」
「以上!戻ってよいぞ!」
 二人は理事長室から出た。
11 : トレピッピ   2025/01/07 22:15:13 ID:EmG/wpfzrA
「てやんでい!年始早々から叱られるとはなあ」
 廊下を歩きながら、イナリワンはふてくされるように言う。
 イナリトレはなだめるように、
「まあ、大事にならなくて良かったじゃないか」
「まったくだぜ。それにしても、ネットってのは怖いねえ。ちょいとしたことがすぐニュースになっちまう」
「それだけ、イナリが人気者ってことだよ」
「へへっ、そう言われると悪い気はしねえけどよ」
 しばらく二人は無言で歩き続け、やがてイナリワンが笑顔で言った。
「ダンナ、改めて今年もよろしくな」
「ああ、今年もよろしく」
 そして、二人は笑いながら、手でキツネサインを作ってぶつけ合うのだった。
12 : トレーナー君   2025/01/07 22:16:45 ID:EmG/wpfzrA
 この出来事からしばらく後、学園中でネットニュースに掲載されたイナリワンの記事が話題となった。
 その影響か、一部のウマ娘が、セーフラインを見極めたかのように、トレーナーに対するアプローチをエスカレートさせていくのだが、それはまた別の話である。 
13 : 相棒   2025/01/07 22:18:12 ID:EmG/wpfzrA
【終わり】

14 : トレーナー   2025/01/07 22:19:00 ID:C7jxna05dk

15 : キミ   2025/01/07 22:30:18 ID:tMiUzgpbQo
このスレ読んで気付いたんだけど、
イナリって実はメチャメチャ可愛いよな
16 : トレぴ   2025/01/07 22:43:23 ID:PCWSHyG7uo
>>15
気性難で騒がしいですが、ちっちゃくてかわいい狐ちゃんですよ。

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