【安価SS】飛び級少女がトレセン学園でGIを目指す話
1 : ◆wuHHR64l1og   2024/07/05 05:30:15 ID:jpgfrBfaDo
がたん、ごとん。だっだっだっ……。
電車に揺られ、乗り換えて、後は駅から走って、合計1時間……今はお昼の1時くらい。
そこに、わたしの目的地はありました。

「わぁっ……!!」
そこは……門の外から見えるだけでも……とっても広くて、大きくて、通っていた小学校の何倍でしょうか?
明日から通うことになる、トレセン学園を目の前にして、わたしは思わず驚いちゃいます。
たぶん、耳もぴょこぴょこしてるはずです。ウマ娘なので!

学園に見とれていると、緑の帽子を被った女の人が話しかけてきました。
「あなたは……明日からの転入生の方ですね?お待ちしていましたよ。私、学園の事務担当……駿川たづなと申します」
「たづなさんですね!よろしくお願いしますっ!!わたしの名前は______」
わたしの方もきちっと自己紹介をした後、たづなさんに案内されて寮にやってきました!
ここはどうやら、栗東寮というらしく、寮長のウマ娘さんが案内を引き継ぐそうです!
「おやおや、本当にポニーちゃんがやってくるとはね。あ、私の名前はフジキセキ。
これからよろしくね」
「はいっ、よろしくお願いしますっ!」
優しそうな寮長のお姉さんに案内されて、私は寮の中をひと通り見て回りました!
そして……。
「______じゃあ、キミの部屋なんだけど……色々あって誰か2人の部屋に3人目として入ってもらうことになっているんだ。その部屋は……」
>>3(公式で判明済み同室コンビの部屋。調べて★)
2 : トレーナーさん   2024/07/05 06:18:01 ID:G1zXMJSBro
ビワハヤヒデ・テイエムオペラオー部屋
3 : トレーナー君   2024/07/05 06:25:48 ID:6WSevywkHo
アニメ基準だとしたら狭すぎないか…?
しかもよりによってオペラ像2体も設置するオージとデカイ姉貴の部屋とか…
4 : トレーナー   2024/07/05 06:26:07 ID:5Q2YZot6M6
スペ&スズカ部屋
5 : トレーナー   2024/07/05 06:26:57 ID:6WSevywkHo
ごめん>>2じゃなかった…>>4にして
6 : ◆wuHHR64l1og   2024/07/05 06:53:43 ID:jpgfrBfaDo
「わぁぁぁぁっ!なまら可愛い~!!」
「この子も……トレセン学園の生徒、ですか?」
案内された部屋を使っている2人は、スペシャルウィークさんとサイレンススズカさんって言うそうです。
(……ん?)
ふと、わたしは考えます。
お二人の名前、聞き覚えがあるってレベルじゃないです。
(……はっ!!)
「お二人ともっ!!トゥインクルシリーズの最前線で大活躍されてますよねっ!!わたし、いつもテレビで応援してましたっ!!」
そうです。どちらのウマ娘さんも、GIレースをバンバン勝っていく凄い方だったのです。
「ふふっ、すぐに馴染めそうだね。じゃあ、私は失礼するよ。何かあったら下にいるから」
そうしてフジキセキさんが出ていった後、わたしたちは3人一部屋になりました。
「……」
「……」
「……」
なぜでしょう。3人だけになった途端、チンモクが流れています。どうにか、この開かずのゲートをぶち破らないと……!!
「えっと……あなたの名前は何ていうの?」
(はぁっ……!!!!)
なんとサイレンススズカさんがそれをやってくれました。
流石は”異次元の逃亡者”!。会話のペースも先頭を譲らないんですね!!!
っていうか、名前を聞かれました。
「わたしの名前は______」
>>8
7 : モルモット君   2024/07/05 06:56:08 ID:bkax8PPqsU
シーケンスブレイク
8 : ダンナ   2024/07/05 06:59:24 ID:AexmxqJsoI
バンゲリングベイ
9 : ◆wuHHR64l1og   2024/07/05 07:01:45 ID:jpgfrBfaDo
>>8
なんかゲーム名と引っかかりそうですね!!良くなさそうなので再安価>>10で......
10 : お姉ちゃん   2024/07/05 07:10:45 ID:5Q2YZot6M6
シュガーライド
11 : ◆wuHHR64l1og   2024/07/05 07:35:59 ID:jpgfrBfaDo
「わたしの名前は、シュガーライドって言います!えっと……シュガーって呼んでくださいっ!」
言えました、わたしの名前。
お母さんがつけてくれたらしい、かわいくてかっこいい名前。大好きです。
「ふふっ。よろしくね、シュガーちゃん。さっきも寮長から説明があったけど、私はサイレンススズカ。そしてこっちが……」
「スペシャルウィークです!シュガーさん、これからよろしくお願いします!」
お二人からも自己紹介をしていただいて、少しだけ仲良くなれた……気がします。
あ、そうだ。大事なことはまだあります。言っておかないと。
「わたし、まだ小学4年生なんですけど……飛び級で通えることになったんです!色々と理由がありまして______」
それは何ヶ月か前のこと。子どものウマ娘……ポニーっ子の競争大会に出たときです。
わたしの走りを、トレセン学園の職員だっていう人がすごーく褒めてくれて、
そしたら両親がいつの間にか願書を出してて……。
「それで通っちゃったんですか!?凄いです!」
「わたしもビックリしました!こんな子どもでも、学園に入れるんだって」
同い年のウマ娘ちゃんたちも、みんなトレセン学園に憧れています。
でも、それは小学校を卒業してからじゃないと選べない道……そう思っていました。
「シュガーちゃんは、どんな走りが得意なの?」
「得意な走りですか!えっと……」
スズカさんに尋ねられました。わたしの得意な走り……確か、あのとき褒められたのは______。
>>13〈類まれなる瞬発力(短距離・マイル)/とても長く続く心肺機能(中・長距離)〉
12 : 貴方   2024/07/05 08:08:48 ID:G1zXMJSBro
瞬発力
13 : トレーナー君   2024/07/05 08:12:18 ID:5Q2YZot6M6
とても長く続く心肺機能
14 : ◆wuHHR64l1og   2024/07/05 10:16:41 ID:jpgfrBfaDo
「わたし、同年代のウマ娘ちゃんより長く走れるんです!ぜんぜん息切れしなくって……」
あのとき褒められたのは、”心肺機能”らしいです。
職員の人によると、将来はステイヤー?になれるとかどうとか……。
「じゃあ、デビューしたら中・長距離で走るのかしら?」
「私達のライバルになりますね!楽しみです!」
スズカさんたちの言葉を聞いて、ふと考えます。
将来、勝負服を着て、レースを走る自分のすがたを……。
「えへへ……あっ、すみません!モウソウにふけってました!」
我に返って、今からやることを考えることにします。
……何をすればいいんでしょう?
「そうだ!シュガーさんと同い年くらいのウマ娘が、同じ寮にいるんですよ!」
「えっ!?」
スペシャルウィークさんからの突然の告白。
私は衝撃を受けました。
つまり、飛び級ウマ娘はわたしだけじゃないってことですか!?
(そ、そんなっ……!)
実をいうと小学生であることが自慢だったんです。
わたしは恥ずかしくなって、クッションに顔を沈めます。
いっそダートに埋めてくれませんか。
「あ、会いに行ってみたらどうかしら……?」
そう言ってスズカさんは、そのウマ娘ちゃんの部屋の位置を教えてくれました。
いいですよ、見に行ってみようじゃありませんか!!!!
15 : ◆wuHHR64l1og   2024/07/05 10:19:08 ID:jpgfrBfaDo
※書き方こんなので良いですか?
16 : お兄ちゃん   2024/07/05 11:07:10 ID:e1sHFK3Y76
>>15
いいと思います!
17 : ◆wuHHR64l1og   2024/07/05 13:14:43 ID:jpgfrBfaDo
______こんこんと、寮のドアをノックしてみます。ちょっと恐る恐るですけど。
すると、「はーい」という返事の後に、部屋から一人の女の子が出てきました。

「あれ?あなたは……」
その女の子は、わたしと同じように耳が頭の上の方にあって、ウマ娘ちゃんだってわかりました。そして、わたしと歳も近そうで……。
「あっ、わたし明日からトレセン学園に通うことになって、今日からこの寮でお世話になります、シュガーライドですっ!」
ちょっと早口になってしまったけど、わたしの方から先に自己紹介。
すると相手の方も、
「私はニシノフラワーです!えっと、シュガーライドさんですね!よろしくお願いしますっ!」
名前がニシノフラワーだって自己紹介してくれました。なんだか喋り方も似ているような?
……それから色々話すうちに、フラワーちゃんも飛び級でトレセン学園に入ったことを知りました。
(……この子だったのかぁぁぁぁぁ!同じ小学生のウマ娘ちゃんッ!!)
わたしよりちょっと早かったみたいで、先を越された悔しさみたいなのを感じましたが、
表には出しません。えらいです、わたし。

「感情・悔しさを検知。そして、新しいトレセン学園の生徒の反応も検知」
(……ッ!?)
すると突然、後ろから聞こえる、ムキシツな声……
振り向くと、スペシャルウィークさんくらい身長のある、
お姉さんウマ娘が立っていました……。
18 : ◆wuHHR64l1og   2024/07/05 13:39:12 ID:jpgfrBfaDo
「……なるほど、そういうことでしたか」
「はいっ、よろしくお願いします!!ブルボンさん!!」
フラワーちゃんのルームメイトだというミホノブルボンさんとも知り合えました。
静かで怖い人だと思ってたけど、話してみると意外と優しいお姉さんで良かったです!
……ところで、なんでわたしの心が読めたんでしょうね?

それからスペシャルウィークさんたちの部屋に戻って、夜になって、
食堂でご飯をいっぱい食べました!
「えっ、シュガーちゃん……まだ食べれるの??大盛りご飯を5杯も……」
「はいっ!食うウマ娘と寝るウマ娘は育つって言いますし!」
スズカさんに驚かれるくらいいっぱい食べました!
でも、スペシャルウィークさんのほうが食べてたと思います!
その後はあったかいお風呂に入って、歯みがきもして……。

(……あっ)
パジャマにも着替えて、寝よう!というところで、
大問題が発生しました。
「べ、ベッドが2つしかないです!!」
「そうね、どうしましょう?」
もともとは2人用のお部屋だったので、ベッドが2つしかない!
わたしとスズカさんが頭を抱えていると……。
「シュガーさんっ!一緒に寝ませんか?」
なんとスペシャルウィークさん。ベッドを一緒に使わせてくれるとのこと。
来たばかりのわたしに、いいんでしょうか。

まあ、考えている暇はなかったんです。
キャンプ道具みたいなのも持ってないですし、お言葉に甘えることにしました。
さあ、明日からはトレセン学園で新しい生活が始まります!
すっごく、楽しみ、ですっ!!
19 : ◆wuHHR64l1og   2024/07/05 13:41:31 ID:jpgfrBfaDo
シュガーライドのスクールライフを安価で盛り上げてあげましょう。

初日。
>>20>>25の展開を統合。
20 : 貴方   2024/07/05 14:08:59 ID:/NljQWspSk
同じく飛び級(と思われる)スイープトウショウと、ただ単に小さいだけのドリームジャーニーと出会う
21 : アネゴ   2024/07/05 14:14:00 ID:NUK7UrHP2E
アグネスタキオンやマンハッタンカフェにも出会い、実験台にされそうになるが阻止される
22 : トレ公   2024/07/05 14:17:36 ID:5Q2YZot6M6
シュガーがスズカに「なぜレースではいつも先頭大逃げなのか?」と問う。
23 : ダンナ   2024/07/05 14:24:40 ID:7sTsQk4YzU
ちっちゃいステイヤー仲間のライスの不運に巻き込まれる
24 : お兄ちゃん   2024/07/05 15:48:28 ID:P30fE5VN0Y
チケゾーがチョークを折って泣いていたので何とか落ち着かせる
25 : 使い魔   2024/07/05 15:52:23 ID:qQhls77Mgs
カフェテリアで食事しているスペオグリを見て改めて中央のヤバさを実感する
26 : ◆wuHHR64l1og   2024/07/05 18:30:05 ID:jpgfrBfaDo
(すごく、お母さんみたいだった……)
寮にきて、初めての朝。
というか夜寝ている間……なんだかすっごく暖かかったんです。
スペシャルウィークさんと一緒に寝て、腕の中はまるでお母さんと寝てるみたいな……。
とにかく、おかげでしっかり眠れたようです。
ほわほわした気分は、顔を洗ってシャキッとさせて……今日から登校!頑張ります!

「わあぁぁ……制服っ!!」
初めて着る、トレセン学園の制服!ちょっと大人になった気分です!
サイズもなんとジャスト!
……測った覚え、ないんですけどね?
後は、お母さん譲りの栗毛のショートヘアの右側にヘアゴムを巻いて……
わたし、完成!です!
27 : ◆wuHHR64l1og   2024/07/06 05:42:53 ID:MXuy6mXXPw
……さっき知ったんですが、朝ご飯は学園に着いてからカフェテリアで食べる……らしいです!
なんてことでしょう!お腹の虫さんが泣き止まないんです!!
くぅー……って。
わたしは、そんなじょーたいで、トレセン学園の門をくぐるのでした!!

(……!!)
一歩踏み出した瞬間、そこから世界が変わったような感覚に襲われます……!
「シュガーさん?」
「あ、な、なんでもないです!ちょっと緊張してるのかもっ」
ぼーっとしちゃって、スペシャルウィークさんが声をかけてくれました。
実際大した事ないので、ちゃんと笑顔で返しましたよ!!
そういえば、わたしを褒めてくれたあの人、どこにいるのかなぁ……?
そんなことを思いながらも、わたしのお腹の虫さんは泣き続けるのでした。
28 : ◆wuHHR64l1og   2024/07/06 05:55:51 ID:MXuy6mXXPw
「……これ、ぜんぶ食べていいんですか」
今、わたしの目の前には、いわゆるビュッフェ形式でたくさんの料理が並んでいます!
ここは高級料理店?いえ違います!学園のカフェテリアですっ!
朝からっ!いいのでしょうかっ!こんなに食べても!!
そう思っていると、身体の大きい芦毛のウマ娘さんとすれ違いました。
聞こえてきた声によると、オグリキャップさんというそうです。
(……!?)
わたしが驚いたのは、そのウマ娘さんがかかえた料理の多さ!
昨日のスペシャルウィークさんより多くないですかあれ。
わたしは甘かった。
上には上がいることを思い知りました……。
その後、朝から5回くらいおかわりをしてようやく満足したわたしは、
編入することになるジュニアクラスへ向かうのでした。
29 : ◆wuHHR64l1og   2024/07/06 08:48:05 ID:MXuy6mXXPw
前作からの勢いが体感弱くなってきてるのでじっくり行きたいと思います...
30 : マスター   2024/07/06 11:48:15 ID:YWN1nC6Y2A
乙。ゆっくり待ってる
31 : ◆wuHHR64l1og   2024/07/06 18:28:19 ID:MXuy6mXXPw
なんか引っかかってる理由がわかりました。
クラス分けって公式から明確に出てましたっけ?
32 : あなた   2024/07/06 18:39:03 ID:oMKbdIprNk
アニメ1期ではスペ、グラス、エル、スカイ、キングが同じクラスだったが1学年に何クラス有るのかは触れられていなかった。
(ただ、スペのクラスの生徒はG1に出れると担任教師が説明していたので成績は優秀なのだろう。)
33 : ◆wuHHR64l1og   2024/07/06 18:42:08 ID:MXuy6mXXPw
>>32
うーん、二次創作ってことで独自解釈で行きますか、内訳......
34 : ◆wuHHR64l1og   2024/07/06 18:47:27 ID:MXuy6mXXPw
>>32
しかし教えていただき感謝です
35 : お姉さま   2024/07/06 18:47:51 ID:oMKbdIprNk
まとめサイトでこんな記述が

「年齢に応じて大きくジュニアクラスとシニアクラスに分かれており、ジュニアクラスはさらに年少からA組、B組、C組に分けられている。このうち最年長のC組のみがクラシック三冠レースに出走できるとされる。」(アニメ版)

とありました。
36 : ◆wuHHR64l1og   2024/07/06 18:50:22 ID:MXuy6mXXPw
>>35
アニメ公式にも同内容がありましたね。なるほど......
37 : お兄ちゃん   2024/07/06 18:52:00 ID:oMKbdIprNk
ゲーム版だと

生徒は中等部と高等部に大きく分けられており、明言はされていないがその中でも学年の上下はある様子。ただし、各ウマ娘間で判明している世代的な上下関係を照らし合わせると「中等部:3学年」「高等部:3学年」ではとても収まらないため、人間尺度の教育課程とは違う可能性もある

ともありました
38 : ◆wuHHR64l1og   2024/07/06 19:36:52 ID:MXuy6mXXPw
視界に入ってきたのは、真っ白な天井でした。
……あれ?なんでわたし、上を向いてるんです?
どうやら、わたしは寝ていたみたいです。ここはベッドの上……。
記憶が、ありません!!食堂を出てから!!
しかも、なんとなく身体がだるいような……。
「______よかった。お目覚めになられましたか」
まだ、頭はボーッとした状態。でも、その声はすーっと耳に入ってきました。
その声がした方を向いてみると、難しそうな小説みたいなのを読んでいる、メガネのウマ娘ちゃんがいます。背はわたしよりちょっと大きいくらいで、たいかくは同じくらいかも……。
「えっと……わたし、どうしてここに?」
最初の言い方からさっするに、わたしがここで寝ている理由を知ってそうだったので、
聞いてみることにしました。
「あなたは……先ほど、食堂から出てくるのを見かけたのですが、その瞬間にパタリと倒れてしまったのです。幸い、すやすやと眠られているだけだったので、保健室に運んできたのですが……」
「ええーっ!?」
わたし、寝ていた!!
登校初日からです!!
「……どうやら、もう元気そうですね。そろそろ失礼します。では、良い旅を……」
クールなメガネのウマ娘ちゃんはそう言って、保健室を出ていきました。
……なんだか、優しい子でした。
同じクラスだったらいいなぁ……なんて思っていると、わたしが入るクラスの担任の先生が迎えに来てくれたので、わたしもベッドから起き上がって、保健室を後にしました!!
39 : ◆wuHHR64l1og   2024/07/07 17:29:49 ID:QxsYcGFa9E
「今日から!みなさんと一緒におべんきょーさせて頂きます!シュガーライドですっ!」
ジュニアクラスの教室に入って、まずは自己紹介です!
元気よく出来て、個人的には100点満点ですね!
ざっと見回してみたところ、ニシノフラワーちゃんは居ないみたいで、別のクラスのようです。それに、さっきの子も……後で会いに行ってみましょうか!
(えっと、席はどこに座れば……)
空いている席はいくつかあるのですが、悩みます。
迷っていると、あるウマ娘ちゃんがアイサインを送ってくれました。
まるで、「座りなさい!」と指示を送られているような気がしたので、
お言葉に甘えます。
「あ、ありがとうございます」
「いいのよ。新入生には優しくしなさいって、グランマも言ってたし!」
そんな優しいウマ娘ちゃんは、フラワーちゃんと同じくらいの身長で、やはり歳も同じくらいなのでしょうか?
名前を聞いてみると、スイープトウショウちゃんというそうです。
印象に残ったのは、マンガに出てくる魔女さんみたいな大きな帽子。
……学校内でこんな大きな帽子を?
そりゃまあ、帽子を被ってるウマ娘は何人かすれ違ったりもしましたけど。
とりあえず!席も決まったことですし、
ここから始まるのです!
わたしのトレセン学園ライフが!!
40 : あなた   2024/07/07 22:20:00 ID:QxsYcGFa9E
「では、この問題分かる人~」
授業の時間です!算数です!
(……いや、これは……数学ッ!?)
ほーていしきです!中学生でやるものです多分!
これが、トレセン学園の恐ろしさ……違うかもしれませんが。
わたしは!飛び級とはいっても!褒められたのは走りのみで!
学力は小学生です!
つまり勉強わかりません!へるぷっ!!
(……ん?)
困り果てていると、隣のスイープちゃんからまたもアイサインが。
(ノート、見せてあげるわ!)
(マジですか~!?)
なんとノートを見せてもらえるとのこと。
しかもその内容は、細かい部分もすっごくわかりやすくまとめられています!
これが、トレセン学園……ッ!!
その後も、スイープちゃんのノートのおかげで午前の授業を頑張ることが出来ました!!
41 : ◆wuHHR64l1og   2024/07/08 17:07:30 ID:R5vwCYgGqU
お昼休み、食堂にて。
初めての授業を切り抜けて、お腹の虫さんが目覚めちゃったわたしを待っていたのは、”衝撃”でした。
(……ビュッフェじゃないんですか!!)
なんと、お昼ご飯は朝のビュッフェ形式ではなく、メニューから選んで注文する方だったのです!
ひどいです、こんなの。こんなの……
(迷っちゃうじゃないですかー!!)
写真で見るメニューはどれもこれも美味しそうで、
選んでいるだけで時間がなくなってしまいそうです。食べなければ。
……どれにしましょう?
「______こちらの、シーチキンと季節の野菜のサラダをベースに、大麦入りご飯などを選んでみるのはどうでしょうか?」
(……!!)」
迷っていたわたしのウマ耳に、声が聞こえました。
その声は、その声の主は……!!
「ああ、急にすみません。しかし、迷っている様子だったので、つい」
その人は、今朝わたしを助けてくれた、クールなメガネのウマ娘ちゃんだったんです!!
42 : トレーナー   2024/07/08 17:25:00 ID:R5vwCYgGqU
本家キャラとは解釈違いになるかもしれないです。
43 : お兄さま   2024/07/10 07:59:17 ID:vDbuHjsgFM
そのウマ娘ちゃんの言う通り、わたしはシーチキンのサラダと大麦ごはん、それとお味噌汁を選びました。
それと量も今朝の食事の半分です。ご飯のおかわりは1回だけです。
「少ない気がする……」とつぶやくと、「あなたのためです」という返事が返ってきました。
クールなメガネのウマ娘ちゃん、どうしてここまでしてくれるのでしょう?
______しばらくして、食べ終わりました。
おいしかったです。でもやっぱり、足りないような……。
「……今朝のあなたの突然の睡眠について、私から一つ見解が」
「えっ?」
クールなメガネのウマ娘ちゃんは、突然ふところから何枚かの紙を取り出してきました。
なにかの資料のようで、それを読み上げ始めたのです。
「血糖値スパイク……食後、血糖値の急激な上昇とそれに伴う低下によって、突発的な眠気が発生する症状です」
「けっとーちスパイク??」
「まあ、簡単に言えば食後に眠くなるアレです。我々ウマ娘はそれへの耐性が通常ヒトより高いとされていますが……あなたのような低年齢のウマ娘なら話は別です」
「わ、わたし??」
「まだ身体に本格化が始まっておらず、大量の食事に適応できていない……だから今朝、あなたは食堂を出てすぐに眠ってしまった。私はそう考えます」
クールなメガネのウマ娘ちゃんが言ってることは半分くらいしかわからないけれど……つまりわたしはいっぱい食べるとすごく眠ってしまうってことですか!
そういえば昨日も、ご飯のあとにお風呂に入るまではすっごく眠かったような……。
「ですので、今回は血糖値スパイクを引き起こしにくい、血糖値の上昇を緩やかにする食事を提案させていただきました。足りない分は、放課後にでもなにか食べて補ってください」
44 : ◆wuHHR64l1og   2024/07/10 09:21:02 ID:vDbuHjsgFM
それだけ言うと、クールなメガネのウマ娘ちゃんは食堂を出ようとします。
「待ってっ!」
まだ、まだここでお別れするわけには行きません。まだ聞きたいことがあるので、わたしは呼び止めました。
「あのっ、あなたのっ、名前っ!まだ、聞いてなくって……!!わたしはシュガーライドですっ!!」
「……ああ、そうでしたね。まだ名乗っていませんでした。私はドリームジャーニー。それではシュガーライドさん、良い旅を……」
クールなメガネのウマ娘……ドリームジャーニーちゃんは、今度こそ食堂を去りました。
(いい人、でした……あれ?)
ふと、思い出します。
ドリームジャーニーちゃん、どこのクラスなのでしょう……?
また、聞きそびれましたーっ!!!!!
45 : ◆wuHHR64l1og   2024/07/10 16:22:59 ID:vDbuHjsgFM
その後、午後の授業も、どーにか頑張れました。
スイープちゃんによると、まとめノートの考案者はフラワーちゃんなのだとか。
感謝です、ニシノ神……!!

「ねえ!アンタまだ、学園のことよく知らないでしょ?あたしが案内してあげてもいいわよ?」
放課後、スイープちゃんからの突然のお誘いです。
しょーじき、すっごくありがたいです……が、これからやりたいことは、
わたし一人のほうがはかどるのかもしれない……です!
(あの日、わたしを誘ってくれたヒトも探したいし……ドリームジャーニーちゃんのことも気になるし……)
どうする? >>46(一人で行動/スイープと行動)
(前回の安価もちゃんと使っていきますので!!)
46 : お姉ちゃん   2024/07/10 16:28:55 ID:XzyHS.ryIo
スイープと
47 : ◆wuHHR64l1og   2024/07/10 16:49:25 ID:vDbuHjsgFM
「じゃあ……お言葉に甘えますねっ!!」
「ふふーん!スイーピーについてくれば、学園のことがすぐにわかるようになる魔法に、かかっちゃうんだから♫」
というわけで、スイープちゃんといっしょに、トレセン学園探検をすることになりました。
むしろ、学園の中を回っていれば、探している人たちに出会えちゃうかもしれません!

まずやってきたのが……。
「タキオーン!遊びに来たわよー!」
「なっなんですかこの部屋―!!」
学園の隅っこの方の準備室をそのまま部屋にかいちくしたかのような、
物置部屋で実験室みたいなところでした!!くさいですね!
「やぁやぁスイープくん! ……そっちのキミは初めましてだね。私はアグネスタキオン。
趣味と興味で、ウマ娘の観察や実験にあけくれている者さ!」
(えっ、実験?)
アグネスタキオンというウマ娘さん、白衣まで着てて本当に学者さんみたいな……いや、これは”まっどさいえんてぃすと”でしょうか!!!
「キミ、名前は?」
「えっと……シュガーライドですっ……!」
「ではシュガーくん。キミにもさっき出来上がったばかりの新薬を______ぶっ!」
何か言いかけたタキオンさんの横から、なんかブサイクなクッションが顔に押し付けられています!なんなんでしょうかこれ!もう!
「初対面の人を実験台にするのは良くないです……初対面じゃなくてもダメですが」
それをしていたのは、髪が長くてちょっと暗い雰囲気のウマ娘さんでした。
どこにいたんでしょうか!?
「ああ……私は、マンハッタンカフェです。シュガーライドさん、スイープさん……コーヒーを一杯飲んでいきませんか?お砂糖は入れますよ」
その後、マンハッタンカフェさんに意外とおいしいコーヒーをごちそうになり、ほわほわした気分でわたしたちは学園探検を続けるのでした……ほわぁ。
48 : ◆wuHHR64l1og   2024/07/10 17:46:45 ID:vDbuHjsgFM
そのあとも、折ってしまったチョークさんに泣いて謝っていたウイニングチケットさんを落ち着かせたりと、いろいろな場所を歩きました。なんだか、学園にすっごく詳しくなった気がします。
(……そういえば)
歩きながら、わたしは気づきました。あんまり眠くないです。
午後の授業中も、普段通り起きてられましたし……。
あのメニューが効いたんでしょうか?
だったらなおさら!ドリームジャーニーちゃんにお礼を言いたいですね!!
……まだ、会えてませんが。
「ねえ、次どこ行く?」
「んと……グラウンド、とか?」
「わかったわ!トレセン学園といえばやっぱあそこよね!」
(グラウンドなら、会いたい人がいるかもしれない)
そんなことを思いながら、わたしはスイープちゃんと一緒に、学園で一番広いといわれる専用グラウンドにやってきたのです。
49 : ◆wuHHR64l1og   2024/07/10 17:46:52 ID:vDbuHjsgFM
「______わぁ!!」
たくさんのウマ娘さんたちが、走って走って走りまくっています!
コースの長さは、2000mくらいでしょうか。
いつかわたしもあそこを走るのかな……そう思っていると、ある人が現れました。
「スイープっ!集合時間とっくに過ぎてるぞ!?」
その人は、スーツを着た男の人でした。スイープちゃんと知り合いでしょうか?
「ごっめーん、使い魔☆でもでも、この子のために学園を案内してあげてたんだから!」
「ん、そっちは転入生の……それでも!遅れるなら連絡しろってー!」
「うるさいわね!夢中で忘れちゃっただけよ!ふんっ!」
な、なにやらケンカをしてるようです……スイープちゃんは「着替えてくる」と言って学園に戻っていっちゃいました……。
「……変な場面、見せちゃったな。ごめん」
「い、いえいえ!それにしても、あなたは……」
その男の人は、スイープちゃんの”トレーナー”さんだと言いました。
トレーナーさんは、ウマ娘と一緒にレースで勝利を目指す人、らしいです。
わたしが出会ったあの人も、そうだったのでしょうか?
50 : ◆wuHHR64l1og   2024/07/11 16:41:34 ID:CX9fbIb.HY
しばらく待っていると、スイープさんがなんか慌てて戻ってきました。
あ、ジャージには着替えてますね……。
「使い魔!あっちで模擬レースがやってるわよ!見に行きましょうよ!!」
「マジか……って、トレーニングは!?」
「そんなのいつでもできるじゃない!ほら、シュガーも!先輩たちの走り、見れちゃうわよ?」
もぎレースって何ですかと尋ねてみたところ、何人かのウマ娘が独自のルールを決めつつ実際のレースと同じように走って競い合うものだそうです。
どうやらそこでは、ウマ娘のスカウトを考えているトレーナーさんも来るとか……。
これはもう、行くしかないですね!!
てことで、わたしたちは模擬レースの行われている別のグラウンドまで行ってみることにしました。

『さあ、夢の対決です!異次元の逃亡者・サイレンススズカと、青薔薇の黒い刺客・ライスシャワーの模擬レースッ!!』
なんと実況席にマイクとスピーカーまであります。本格的です。
というか、スズカさん!! あともう一人のウマ娘さんは……ライスシャワーさんと言うそうです。
お二人共、すごく人気があるように見えます……お客さんがいっぱいです。
「このレース、どちらもかなり実力が高いけれど……私はステイヤーのライスさんを応援しようかしら」
(あれ……この人……)
私の隣に座ったお姉さん……ジャージを着ていますし、トレセン学園の関係者……トレーナーさんでしょうか?それよりも、なにか見覚えが……。
『両者、スタート地点に構えて、よーい……ドンッ!』
(あっ!!)
51 : ◆wuHHR64l1og   2024/07/11 16:42:02 ID:CX9fbIb.HY
次の瞬間、レースが始まりました!
スズカさんはスタートしてすぐに、ぐんぐんと前に行きました。
ライスシャワーさんは、それを追いかけずに後ろの方を走っています。
(す、すっごい速い……!!)
テレビで見たレースよりも人数は少ないですが、生で見ると迫力がすごいです。
音だって近くって、わたしもなんだか走りたくなってきそうです!
『サイレンススズカが先頭で1000mを通過!57秒5という超ハイペース!ライスシャワーは追いつけるか!?』
コースを半分まで回ったところで、スズカさんとライスさんの差は全然埋まりません。
あんなに飛ばしていたら、ゴールする前に疲れてしまうのでは……と思ったんですが、
スズカさんは涼しそうに走り続けています。
(……え)
驚きました。すっごく楽しそうに走ってるんですから。
『残り400m!!ここでライスシャワーがスパートを掛ける!サイレンススズカに追いつくが……サイレンススズカが1着でゴールっ!!ライスシャワー、2バ身差で敗れましたッ!』
けっきょく、スズカさんが一着でした。でも、ライスさんもあんなに加速できちゃうなんて……。
「わぁーっ!!すごいレースだったわね!!さー使い魔!あたしたちもトレーニングよ!!」
「や、やっとか!」
楽しそうにレースを見ていたスイープちゃんは、トレーナーさんと戻っていきました。
(わたしは……あっ!)
はっと思い出したわたしは、隣を振り返ります。
「自分もそろそろ戻るか……」
「あのっ、えっと!待って!」
帰ろうとしているお姉さんを、わたしは呼び止めました。
52 : ◆wuHHR64l1og   2024/07/12 18:17:04 ID:qTbFHVl4Ng
立ち上がろうとしたお姉さんのジャージの裾を掴んで、引き止めました。
「えっと、あなたは……あっ!まさか、あの時の!?」
わたしの眼の前にいるのは、あの日のお姉さんだったんです。
______あの日は、ポニーちゃん運動会がありました。
わたしも走って、3位だったんですけど……まわりの娘が息を切らしている中で、
ぜんぜん苦しくなかったんです。なんかもう一回走れそうなくらい!
そこに、お姉さんが現れて、言ったんです。
「凄いわ!あれだけ走って、涼しい顔をしているなんて!すばらしい心肺機能の持ち主ね!
将来はステイヤー路線を目指すのもありね……」
「ん…?」
「ああ、突然ごめんね。私はトレセン学園でトレーナーをしているの。大きくなったら、トレセン学園で走ってみない?それと、専属トレーナーにならせてもらえたら______」
______その出会いから、たった数ヶ月。
わたしはとんとんびょうしで、トレセン学園にやって来ちゃいました。
「えっ、いや、そんな……大きくなる前にやって来れるとは……」
「えへへ~」
「飛び級の例が他にない訳じゃないけど、……勉強の方は大丈夫?ついていけてる?」
「むりですね!!」
53 : ◆wuHHR64l1og   2024/07/13 21:27:52 ID:2c.JquOCao
「そっかぁ……よし、ならまずは賢さトレーニング(勉学)ね!」
「お勉強……ですか?」
「そうよ。トレセン学園は学問でもエリートな学校なの。走ることと同じくらい、勉強ができることも必要なのよ」
(そ、そうなんですか……)
たしかに、スイープちゃんに教えてもらってようやく勉強についていけましたし……自分だけでもバンバン問題を解けるくらいの、がくりょくが必要ですね!!
でも……今さっき、あんなものを見せられたら……!!
「わっ、わたし……」
「ん?」
「は、走りたい……ですっ!!」
思えば、脚がうずうずして熱くなって、今にも駆け出したい気分です……!!
「まあ、そうだよね。ウマ娘だものね……あっ」
「なんですか……あっ」
そんな気持ちに”頭を冷やせ”と言わんばかりに、とつぜんの大雨が降ってきました。
いっしゅんで土砂降りです。いけません、わたしたちも室内に戻らないと……。
結局色々あり、わたしとおねえさんは、校舎に戻るのでした。
そして次にやってきたのが、図書室です。
“お勉強”を頑張ることにしました。雨は今日はやまないらしいので。
54 : ◆wuHHR64l1og   2024/07/14 14:43:34 ID:EtIBKiacQc
勉強に使う本を探していると、読書をするスズカさんと出会いました。
スズカさんはあんなレースをしたあとにも……まだまだ元気いっぱいだったみたいで、もっと走りたかったようです。
「そういえば、あなたに声をかけたっていう人とは会えたの?」
「はいっ!どーやらここのトレーナーさんだったみたいで、わたしの担当トレーナーさんになってくれそうです!」
「それは良かったわね。シュガーちゃんがレースで走るの、楽しみにしてるわ」
「ありがとうございます!」
スズカさんに応援の言葉をもらってから、わたしたちは別れました。
そして次に出会ったのは……
「うーん……と、届かない……」
(あっ、あの人)
高いところにある本を取ろうとして、手を伸ばしている……あれはライスシャワーさんのようです。
どうしよう、脚立でもあればいいのでしょうか。
そう思っていると、
「あっそうだ!」
(ん……んっ!?)
ライスシャワーさん、なんと飛びました。ぴょんと。
「よしっ届いた______きゃっ!」
(危ないっ!!)
高いところにある本に手が届いたはいいのですが、なんとなんと本棚に顔をごっつんしてしまい、その拍子で本棚から本がライスさんにバラバラっていっぱい落ちて______。
「いたた……あれっ?わ、大丈夫!?ど、どうしよう、ライスのせいで……」
「そちらの方こそ……どこも怪我してないですかッ!!」
「う、うん。ありがとう、助けてもらっちゃった……」
かんいっぱつ、でした。
ライスさんの上に私が覆いかぶさって、本が当たるのを防いだんです。
これくらい……ぜんぜん痛くないですよ!ぜんぜん!!
そのあと、二人揃って保健室で手当をしてもらったりがありましたが……。
55 : ◆wuHHR64l1og   2024/07/14 14:56:40 ID:EtIBKiacQc
夜。
今日はおふとんで寝ることにしました。
一人で、いろいろ考えたくって。

昨日以上にたくさんの人と出会って、トレーナーさんとも会うことができました。
……あ、ドリームジャーニーちゃんにあれから会ってません!!
まだやることがいっぱいありそうで、ちゃんと前に進めるか不安です……けど!
どんなバ群が壁になっても立ち向かうのがウマ娘ですよね!
あ、でも、スズカさんは別なんですよね……スズカさんには前が壁になることがないっていうか……いわく、1番前で逃げて走るのは。とても楽しいらしいです。
わたしは……どんな走りができるのかなぁ?
ってことでもう寝ましょう!
おやすみなさい______。

トレセン学園生活1日目 終わり。

2日目
>>56>>60まで
56 : 貴様   2024/07/14 14:57:51 ID:a4hLgKdHIA
まだ2日目なのに寝坊しちゃった!
57 : トレーナーさま   2024/07/14 19:02:38 ID:bMo1Mb0x/M
タイキシャトルが急にハグしてきた
58 : トレーナー君   2024/07/14 19:15:49 ID:.0HpARmphk
ドリームジャーニーと再会、ついでにオルフェーヴルにも出会う
59 : トレ公   2024/07/15 05:54:05 ID:oIUQkWgH9s
カフェテリアで昼食に「豚(とん)かつ定食」を注文したら、キッチンへの伝達ミスで「鶏(とり)かつ定食」が出て来た(でも文句言わずに食べた)
60 : トレーナーちゃん   2024/07/15 12:28:12 ID:odZsQlWcI.
選抜レースにむけたトレーニングを開始
61 : ◆wuHHR64l1og   2024/07/15 12:31:08 ID:X1O9dEsXVU
多分前回よりスローになったこのスレでも安価レスを下さって感謝です……
62 : ◆wuHHR64l1og   2024/07/16 07:19:36 ID:Q3VpzazgWU
~トレセン学園生活 2日目~
(ん……おき、ました)
重い目を軽くこすって、あくびをして、今日も起きました。
えっと……なんか外がすごく明るいです……あ、カーテン開いてる。
今何時です?
時計を確認すると……心臓が止まりそうどころかすごくバクバク言いだしました。

「……あ、そん、な……」
夢ならさめて欲しい。でも、これは現実だってわかっています。
時計がしめす時間は朝の8時。
完全に、寝坊です。
どうしてこうなってしまったのでしょうか。
先輩二人はどこに……あ、「今日は朝練があるから先に行ってるわね」という書き置きを見つけました。
……いえいえ!そもそも自分で起きなきゃいけないでしょう!?
起きれませんでしたっ!!昨日は寝る前まで振り返りをしてたのに!
目覚ましをかけ忘れてましたね!
「あっははははははははっ!!」
(……あほみたいに笑ってどーすんですか、わたし)
そうです、笑ってる場合じゃないです。
りろんじょーは、あと15分くらいで支度すれば8時30分からのホームルームに間に合います!いえ、間に合わせなきゃなりませんっ!!
わたしは、急いで準備を始めました……!!
63 : ◆wuHHR64l1og   2024/07/16 16:50:31 ID:Q3VpzazgWU
その後、なんとか15分で準備を終えて、
猛ダッシュで寮を出ました。
そして到着です。
上履きはいて、またダッシュです!
(間に合ってぇぇぇぇぇぇ!!)
あと5分でしょうか。間に合うのでしょうか。
いえ、間に合わせなきゃなりません。ほんとうに!!

なんとか教室のドアに手をかけて______。

「……とんだ災難だったわね。お疲れさま!」
「うう、ありがとぉスイープちゃん……」
残り1分で間に合ったわたしは、授業をしっかり受けることができました。
そして3時間目の前の10分休憩で、スイープちゃんに話を聞いてもらっているところ。
「そうえいばシュガー、あんた今日まだ何も食べてないでしょ!?」
「……あっ!そ、そういえばそうですぅ……」
スイープちゃんに言われて、やっと身体がそれに気づいたのか、
きゅるるる……とお腹の虫さんが鳴いています。
お、おなかすいた……。
今思えば、何も食べないであんなに全力疾走……自分がウマ娘として生まれたことを、
あらためてびっくりしたのでした。
おなかすいた。
3、4時間目はどうにか気合で乗り切って……
やっとお昼ご飯の時間ですっ!!
64 : ◆wuHHR64l1og   2024/07/16 16:51:02 ID:Q3VpzazgWU
「は、はやく……ごはん……」
ゾンビさんみたいに廊下を歩くわたし。
せーかくには……歩くしかないくらいにお腹が空いて、もうダメなんですよね。
(あ……)
地面が、目の前に迫ってきます。倒れますね、これ。
(いたい、のかなぁ……)
このまま昨日みたいに眠れたらいいんですけど、
眠くはないんです……あーあ……。
もう色々あきらめてた、その時でした。
「WoW!!大丈夫デスか!?」
「え……」
なんか、大きくてあたたかい手に受け止められた気がします。
誰だろう……ドリームジャーニーちゃんじゃないのは確かで……。
なんとかそっちの方を向くと、アメリカ帰りのお姉さんみたいなウマ娘さんでした。
「無事でよかったデース!!」
「うげっ!きゅ、急なハグは苦しいですッ!!」
身も心もアメリカンなこの人、タイキシャトルさん。
ウマ娘のハグはとても強烈です。
ウマ娘でさえも結構苦しいのですから、普通の人間さんが同じ力でハグされたら……考えるのはやめておきますッ!!
そんなわけで、危なかったところをタイキさんに助けてもらったわたしは、
今度こそ食堂でお昼ご飯にありつくのでした……。
65 : ◆wuHHR64l1og   2024/07/17 17:48:59 ID:eizpbbXN3M
「あなた……とんかつですよね?」
わたしは、目の前に置かれたカツ定食に、疑問をぶつけます。
今日の1番人気のメニューらしい、とんかつ定食……を注文したはずなのですが、
いざ一口食べてみると、わたしの中のほんのーが「疑え!!!!!!!!」って叫んでくるんです。うるさい。
わたしの知ってるとんかつはもうちょっと硬くて歯ごたえがあって……この”カツ”はサクサクのころもに対して、お肉がなんか柔らかすぎるんです!!
(でも……おいしい……)
今日はじめてのご飯なんです。もはや何を食べてもおいしいのです。
昨日のドリームジャーニーちゃんのアドバイス通りに、野菜もたっぷりと頼みましたし、これで午後も頑張れます。たぶん。
「______おや、昨日のアドバイスを守っておられるんですね」
(……あ)
後ろから、すっごく聞き覚えがあるしすっごく聞きたかった声。
振り向くと……。
(……ん!?)
そこには、二人立っていました。
一人は、ドリームジャーニーちゃん。もう一人は……誰!?
すっごくイケメンのお姉さんです!!ジャーニーちゃんもイケメンなんだけど!!
「お前、余の顔に見とれているのか。よかろう、隣で食事をする故……その間ならばじっくり拝ませてやる」
(なんかクセが強いお姉さんだー!!)
なんでしょうか、王様?なるしすと?
すっごくイケメンなんですが、クセが強すぎないですか?
66 : ◆wuHHR64l1og   2024/07/18 22:36:16 ID:uXgnkY5DDY
「こら、オル。困った顔をしているじゃないか。控えて」
「む、姉上……そうか。すまぬ、少女よ」
(んー……!?)
ジャーニーちゃんが、このイケメンウマ娘さんにため口……!?
いや待って。今なんて?
あねうえ??
「ああ、そうか。シュガーライドさんは初対面でしたか。この娘は私の妹で」
「オルフェーヴルだ。……少女よ、姉上と知り合いか?」
(……!?!?!?!?!?)
目の前で起きていることに、理解が追いつきません。
オルフェーヴルさん、明らかにジャーニーちゃんより身体がおっきいですよね。
ていうかなんですか、あねうえ?いもうと?しまい??
「その……ジャーニーちゃんは……学年、は……」
「え?高等部、ですが……」
一番聞きたかったことを聞いたとたん、わたしの頭の中は真っ白じゃなくて真っ黒になりました。
まさか、まさか……と、年上のお姉さんだったなんて。
(ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……)
心の中で何度もそう呟きながら、わたしはまた倒れてしまうのでした……。
67 : ◆wuHHR64l1og   2024/07/20 10:17:37 ID:UwB4xLhRiE
「______なるほど。身長で私の年齢を勘違いしていたと」
「はいぃ……」
保健室で目を覚ましてから、ドリームジャーニーちゃ……さんに改めて色々聞かれて、色々答えました。
学年と歳を勘違いしてたり、脳内でちゃん付けしてたり……
(あああああっ!!ダートに埋めて欲しいっ!!)
「いえ。良いですよ、別に。割とよくあることなので」
「えっ!?」
「小学生料金で精算されそうになったりとか、日常的ですから」

意外!
そして頭の中でそれを想像するわたし……いや、やめておきましょう。

「それと……呼び方もあなたのお好きなように」
「えっ! ……じゃあ、ジャーニーちゃん!」
「はい、シュガーライドさん」
ドリームジャーニーちゃんは、ニコッと笑顔で返してくれました。
高校生の大先輩……でも、なんだかやっぱり、すっごくやさしい人で、よかったなぁ……。
「……シュガーライドさんは、契約するトレーナーはもう見つけられたのですか?」
気分が落ち着いて保健室から出ようとすると、ジャーニーちゃんから聞かれました。
「あ、昨日、学園に入るきっかけになったトレーナーさんと再会して……」
「そうでしたか。近々、先発レースがありますね。そのトレーナーさんにあなたの走りを見せつけるのも良いかもしれません」
「せんぱつれーす??」
先発レースは、まだ担当トレーナーが決まっていないウマ娘ちゃんたちが、模擬レースで走ることで自分の力をアピールする場所らしいです。
(そういえばわたし、まだレースで走ったこと……ないです!!!!!)
68 : ◆wuHHR64l1og   2024/07/20 10:30:42 ID:UwB4xLhRiE
「というわけでトレーナーさん!! トレーニングしましょう!!」
「い、いきなりね」
放課後、グラウンドで待ち合わせてたトレーナーさんに模擬レースの話をしました。
そして、それに向けてのトレーニングの話も!!
「トレーニングかぁ……待って、私にそんなノウハウないぞ……小学生のウマ娘を、本格化を迎える中高生のウマ娘たちと一緒に走らせるためのトレーニングなんて……」
「えっ!!」
(つまりは、わたしを鍛える練習方法がないということ。そんな……!!)
「でも、あなたはトレセンに入る資格を持ってる……なら、その才能を開花させるのも、トレーナーの役目よね。よし、あの人に相談してみるか」
トレーナーさんはスマホを取り出すと、誰かに電話をかけ始めました。

電話をかけた相手>>69
69 : ◆wuHHR64l1og   2024/07/20 16:34:46 ID:UwB4xLhRiE
あげ安価下
70 : トレーナー君   2024/07/20 16:39:06 ID:HprIEs5BDs
桐生院トレーナー
71 : ◆wuHHR64l1og   2024/07/20 17:51:12 ID:UwB4xLhRiE
「もしもし、桐生院ちゃん?あなたすっごい物知りだったよね?うんうん、それで……」
長電話は30分くらい続きました。
つうわりょーとかバッテリーとか大丈夫なのでしょうか?そんなことを考えながら、わたしは他のウマ娘さんたちとストレッチをしたりウォーミングアップをしたり。
「……よし、わかった。やってみるね、ありがと」
やっと電話が終わったみたいです。
わたしはいつでも運動の準備はばんぜん!なんですけど……何が始まるのかな?
「とりあえず……またあなたの走りを見せてほしい」
「えっ?あ……はいっ!!」
また……っていうのは、ポニー競走のとき以来ってことですね、うん。
ウォーミングアップはもう済ませたので、わたしは練習コースのスタート地点に立ちます。
初めて着る、トレセン学園の体操服、それとジャージ……そして靴には蹄鉄(てーてつ)が打ってあって、普通の靴より歩いた感じがカッチカチです。
いろんな初めてを味わいながら……
「じゃあ、見せてもらうわよ……学園が認めた、あなたの走り……」
トレーナーさんが見守るなか、わたしは2000mのコースを一周走ります。

>>72
走法(ピッチ・スライド)
スタミナ(余裕・ギリギリ)
72 : あなた   2024/07/20 17:51:55 ID:PKInhAa.TU
余裕のスライド走法
73 : ◆wuHHR64l1og   2024/07/20 18:10:41 ID:UwB4xLhRiE
私はシュガーライドの走りを見ながら、それをビデオカメラに記録する。
同時に、タブレットにテキストデータとして入力していく。
『スタートダッシュは普通だった。やや荒いか。
走るフォームは……ここもまだ荒い。しかし、身長や体格以上の力強いストライド走法を用いているようだ。
1000mの通過は63秒。平均以下のスロータイムだ。しかし今のところ、ペースが悪くなるような様子は見られない。
終盤。声をかけてペースアップを図らせてみた。
するとどうだろう、涼しく楽しそうな顔でスパートを始める。
残り600m、上がり3ハロンの計測を開始。
そして、最高速に達したままゴール。
ゴールタイムは2分10秒。2200m並みのタイム。
だが上がり3ハロンの記録は33.8とかなり速かった』

(この娘は……やはり……)
計測終了。桐生院ちゃんの言う通り、まずは本格的な走りを見てみたが……凄いの一言だ。
全体的な走力はまだまだだが、並みの追込ウマ娘より速い上がりタイムを出している。
……いやちょっと待て?
2200mが走り切れるのかこの娘は?
74 : ◆wuHHR64l1og   2024/07/20 18:18:47 ID:UwB4xLhRiE
「トレーナーさん!どうでした!?」
一周走ってもらったあとも、シュガーライドはとても涼しそうな顔をしていた。
「その……疲れてないの?」
「はい!なんかもう一本いけちゃうかも!?」
(な……!!)
私は驚いた。この小さな体のどこに、そこまでのスタミナが詰まっているんだろうと。
確かに息の乱れも少ない。
2000mで2分10秒を出せたのなら、このスタミナの余裕さで考えると2200mや2400mを好タイムで走れるだけの走力を身につけるのも、そう遅くはないかもしれない。
(私の目に、狂いはなかった……!!)
あの日、ポニー競走であなたを見つけたとき、凄い原石を見つけたと思った。
凄い速さで学園にやってきたのだけれど。
……よし、それじゃあ次のプランを実行しよう。
再度、桐生院に連絡を取る……そして、彼女から伝えられたトレーニング内容は______。
>>75>>79までの内容をそれぞれのレス時間の秒数x100(一桁)またはx10(二桁)だけ行う。
75 : キミ   2024/07/20 18:19:59 ID:PKInhAa.TU
坂路
76 : トレぴ   2024/07/20 18:22:07 ID:s.gKTWMQUg
プールトレーニング
77 : 貴方   2024/07/20 19:21:13 ID:Xui2Xof7Ao
新書の黙読
78 : トレーナーちゃん   2024/07/21 01:44:59 ID:IvWx0wcGHE
スペシャルウィークと並走
79 : トレ公   2024/07/21 08:39:43 ID:mJhAsP4eXU
レースの勉強(座学)
80 : 大将   2024/07/21 08:48:59 ID:fhe3G8pLGs
賢さトレーニング多いね!?
81 : トレーナー君   2024/07/21 09:15:13 ID:D7rYjA3Yps
>>80
まぁ、学生の本業は勉強ともいうから多少はね...
82 : ◆wuHHR64l1og   2024/07/21 18:21:56 ID:fhe3G8pLGs
【桐生院葵の、小学生ウマ娘トレーニングプラン☆】
送ってもらったある程度のデータから算出したところ、本格化はまだですがアスリートとしてのトレーニングをするのに問題はなさそうです!
というわけで私の考案した各トレーニングをこなして、バランスの良い成長を図りましょう!

1. 坂路トレーニング
フォームを整えながらスローペースで走ることで、総合的な負荷をかけることができます。
2. プールトレーニング
水圧を利用して低負荷かつ高効率なトレーニングを行えます。
3. 新書の黙読・レースの座学
トレセン学園の学習単元についていくためにも、様々な本を読みましょう!
4. 実力のあるウマ娘との併走
強い相手とのトレーニングで、実際のレースに心身の感覚を近づけていきましょう。

______というのが、昨日の夜に、トレーナーさんのパソコンに送られてきたそうです。
「次の選抜レースは3ヶ月後の9月よ。夏の間にこれらをこなして、先輩たちに追いつけるように頑張りましょう!」
「はいっ!トレーナーさん! 」
こうして、わたしがトレセン学園に入ってからの、初めてのトレーニング生活が幕を開けたのです!! 勉強のほうが大変かもしれない……です。
83 : ◆wuHHR64l1og   2024/07/21 18:22:44 ID:fhe3G8pLGs
>>84~90までを統合。
84 : お姉ちゃん   2024/07/21 19:02:50 ID:IvWx0wcGHE
やっぱりスペシャルウィーク先輩は速い…G1を取ってるウマ娘さんとは並んで走るだけで精一杯だよ…
85 : キミ   2024/07/21 21:08:00 ID:/dpgoJIILw
自分よりもスローペースで進むメジロブライトに出会う。
スペに憧れる気持ちが伝わり、一緒にスタミナを鍛える
86 : トレピッピ   2024/07/21 21:11:00 ID:ucNoucWdV6
そしてプールトレーニングにてミラ子に出会う。
ミラ子は後輩にいいところを見せられるのか!
87 : トレーナー   2024/07/22 00:38:49 ID:kc7DqkKEXk
マヤノから読み終わった新書を色々と貰うが意味☆不明!
サクラローレルに心配されて秘密の解説授業が始まる
88 : トレぴ   2024/07/22 00:43:49 ID:AxZAwCZtfI
な~んだ、坂路って言う位だから急な坂なのかと思ったら意外と緩やかだなぁ…これを走って登ればいいの?
89 : 貴方   2024/07/22 01:00:13 ID:nD5szCTk1k
この子にステイヤーの因子が集まっていく…!

クリークに見つかったら絵面が遠足みたいになりそう
90 : マスター   2024/07/22 01:18:13 ID:64L4kbM8Gs
トレーニング中にクリークに遭遇しトレーニングをみてもらうも終了後しっかり赤ちゃんにされる
91 : ◆wuHHR64l1og   2024/07/22 05:03:48 ID:pEiNM.yXqk
なんだ!?ステイヤーだらけじゃないか!!
92 : ◆wuHHR64l1og   2024/07/22 05:54:15 ID:pEiNM.yXqk
その日の夜、寮の部屋で……。
「わぁー!ついにトレーニングが始まるんですね!頑張ってください!!」
「はいっ!ありがとうございます、スペシャルウィークさんっ!!」
トレーナーさんとの練習プランが決まったことを報告すると、
スペシャルウィークさんは喜んでくれて、応援もしてくれました。
スズカさんは……あ、夜の走り込みに行っています。
(今日めっちゃ走ってたよね!?)
むしろあの人のほうが、すていやー……長い距離を走れるウマ娘じゃないかとも思いますね。
「それで、あの……」
「はい?」
わたしはスペシャルウィークさんに、とある頼みごとをしてみました。
翌日……。

「______大丈夫ですか!?ついてこれますか!?」
「は、はいっ!!」
放課後からの併走トレーニングが始まりました。
そのお相手は、昨日頼んだ通りにスペシャルウィークさんです。
ええ、もう、速いですね。手加減はされてると思うんですけど……ついていくだけでいっぱいですっ!!
でも……誰かといっしょに走るって、こんなに楽しいんだなって思います。
「さあっ、ラストスパートですよぉー!!」
「は、はぃぃぃぃっ!!」
誰かといっしょに走っていると、不思議と脚がまだ動くんです。すっごく重いはずなんですけど!
「て、ていうかスペシャルウィークさん!!スローペースですよね!?」
「そうですけど!?」
なんと、今走っているのは坂路です。
遅いペースでもこんなにきつい……レースの世界は思った以上に大変みたいですっ……!!
93 : ◆wuHHR64l1og   2024/07/23 06:19:59 ID:gS3oeRb5A6
あっヤベ!回数設定したのにトレーニング描写合体しちゃった!
失くすか。
94 : ◆wuHHR64l1og   2024/07/23 06:33:17 ID:gS3oeRb5A6
な~んだ、坂路って言う位だから急な坂なのかと思ったら意外と緩やかだなぁ…これを走って登ればいいの?

……なんて、最初は思ってました。
なんというおろか!わたしのおばか!!
何往復もしてたら、もう、脚が、棒みたいに!!

「こっ、こんなきつくて苦しいトレーニングをっ、やりますなんて言ったの……わたしでしたぁぁぁぁぁぁ!!」
これを週5で合計63往復も繰り返すんです。
んなぁぁぁぁぁ……。
……その時でした。
「もう少し~……スローペースで行ってみてはどうでしょう~」
(だ、誰ッ!?)
わたしが走ってるさらに後ろのほうから、ほわほわとした雰囲気のウマ娘さんが走ってきたのです。
「あっ、申し遅れました~。わたくし、メジロブライトですわ~」
「こっ、こんにちは……シュガーライドです……」
メジロブライトさん……そういえば、
すごく涼しそうな顔をしてます……汗もかいてない……。
「そうよ!シュガーライド!もう少しゆっくり目で!!」
トレーナーさんからも声が飛んできました。なるほど、スローペースですか……。
「そうだ~。わたくしと~、併走されますか~?」
「あっ、はい!お願いします、ブライトさん!」
スローペースなメジロブライトさんといっしょに走ることで、ペースのコツを掴めたらいいな……とか思ったりしました。
速いペースのスぺさんを追いかけようとはせずに、自分に合ったペースで……。
95 : トレーナー   2024/07/23 11:40:13 ID:L/LDmwIKQg
合体できる所は自由に合体させても良さそう
いいぞ~
96 : ◆wuHHR64l1og   2024/07/23 15:45:10 ID:gS3oeRb5A6
「きょ、今日のぶん……終わりっ!!」
わたしは息をぜぇぜぇと吐きながら、グラウンドの隅っこに戻ってきました。
これがトレセン学園のトレーニング……すっげぇきついです!!!!!
「お疲れ様!」
「あっ、トレーナーさん!!」
トレーナーさんがドリンクを持ってきてくれました。ごくごくと飲みながら、話を聞いてみましょう。
「シュガー……って呼んでいいよね?で、よ。初日にしては並のウマ娘より頑張ってたと思うわ。昨日走ってもらったのを見て、あなたにはスローペースに走ったりレース終盤に後方から追い抜く戦法が向いてるって感じたんだけど……自分的にはどう思うかな?」
「ごくごく……ぷはっ。わたしてきに……ですかぁ」
考えてみます。さっきは、スペシャルウィークさんのペースにはあんまりついていけなくて、メジロブライトさんのゆっくりなペースで一緒に走ったら、走りはじめよりもあんまり苦しくなくなった感じですね。
授業でやりました。ウマ娘の走り方はだいたい4つにわけることができて……最初から最後まで先頭を行く”逃げ”や”先行”、レースの終わりごろまで我慢して最終コーナーくらいで走り出す”差し”や”追込み”……です。
「速いペースで行くのがむずかしいなら、やっぱり追込みが合ってるんだと思います、わたし」
「そうよね!何より、あなたと出会ったときに見た走りは後方向きだったわ。もっと鍛えれば先輩たちにだって通用するようになるわよ!」
「そ、そうですか!?頑張らなきゃ……!!」
きついトレーニングは、いつかきっと力になるはず……そう信じて明日からも頑張ります!!
でも今日は……帰って寝たいですね!!!!!
97 : ◆wuHHR64l1og   2024/07/25 08:35:48 ID:qT5lgz8ZNI
「ぐぇー……つかれました……」
夕方……。
寮に戻ってきて、制服のままベッドにダイブするわたし……。
全身の筋肉も関節も、ひめいをあげてますね。すっげえ痛いですね。
でも……なんか、強くなっていく気がします!
(……あ、やべーです)
か、体が動かない……疲れてるからでしょうか。ベッドから降りたくない……。
まあ、こういうのも時には良いと思います……ご飯の時間までちょっと寝ちゃおう……。
「ぐー……」
こうして、わたしは初めてのトレーニングを終えたのでした……。

______1時間くらい経ってから、スペさんに起こされました。
「シュガーさんー。ご飯の時間ですよー」
「ご飯ッ!?」
ウマ耳のそばで声をかけられて、わたしはびっくりして飛び起きます。
声をかけられたからじゃなくて、ご飯に反応したからかもしれないけど。
「あ゛っ゛!!!」
「シュガーさん!?」
飛び起きたそのしゅんかん、わたしの体に激痛が走るッ!!
そうでした!全身筋肉痛でした!!痛い!!
「でもっ、ごはん食べたいっ……!!」
わたしは痛みをガマンしながら、食堂へ向かうのでした……。
98 : ◆wuHHR64l1og   2024/07/25 08:57:00 ID:qT5lgz8ZNI
______なんと、いつもの半分しか食べられませんでした。
食欲が、ないです。
筋肉痛がすごいんです。
むし歯?って聞かれたりもしたんですが、そっちじゃないです。
手足の痛みでこんなにも食欲がなくなるなんて……。
(こんな調子で、明日からも頑張れるんでしょうか、わたし……)
部屋に戻って、またベッドに転がり、考えます。
トレーナーさんも応援してくれてて、わたしも走りたい……だけど、
大丈夫なんでしょうか?こんなで。
(そうだ、お風呂)
なにはともあれ、今日いっぱいかいた汗を流さないとです……わたしは重い体をなんとか起き上がらせて、パジャマその他いろいろを持ってお風呂に入ることにしました。


______ちゃぷん。
4、5人は一度に入れるくらいの大きなお風呂です。泳げそうですけどしませんよ。
(たしかこう、痛いところをもむように……)
あったかいお湯でマッサージをすれば、筋肉痛は治るって聞いたことがありました。
なのでやってみてるんですが……効果あるんでしょうか!?
……まだみんな、ご飯を食べてるはずなので、お風呂場にはわたし一人……ですね。
聞こえてくるのは、水道から時々ぽちゃんと落ちてくる水の音だけ。
そう、わたしは今、ひとり……。
ちょっとさみしくなっていたその時、ドアがガラガラと開きました。
入ってきたのは……。
>>99
99 : お姉ちゃん   2024/07/25 08:59:02 ID:vEPoG4L12I
メジロライアン
100 : ◆wuHHR64l1og   2024/07/25 09:17:48 ID:qT5lgz8ZNI
「お邪魔しまーす……って、先客がいたんですね!こんばんは!」
「こ、こんばんは」
なんかすごくさわやかそうな、ウマ娘のお姉さんが入ってきました!
ていうかすごいです!筋肉が!お腹もばきばきで、手も足もすらっとしてるのにムッキムキじゃないですか!
「あたし、メジロライアンっていいます!あなたは……」
「さ、最近転入してきたシュガーライドです」
「そっかぁ、シュガーライドちゃんか!よろしくお願いします!」
メジロライアンさんは挨拶を終えると、凄い速さで髪も体も洗っていきました。
そしていざお湯へ……ん?
「それ、なんですか?」
ライアンさんの手に、こびんが握られているのが見えました。
「ああこれ、入浴剤です。筋肉の疲労回復に効果的で、入るときはいつも使ってるんです!あ、寮長の許可はちゃんともらってますよ」
(ひろーかいふくの、入浴剤!?こ、これは今のわたしに必要なものなのでは)
ライアンさんはその液体を、1人用のお風呂の中に流していきます。
お湯の色が、オレンジ色になっていきました。
「ちょっと狭いけど、個人で入浴剤を使って良いのはここだけだし……ガマンっ!」
そう言って、お湯に体をちゃぷん。
「……ああーっ!!効くなぁー!!」
なんか、すごく気持ちよさそうです。
香りも甘くて優しい感じで……。
「あ、あのっ!わたしも……そのお風呂、入ってもいいですか!!」
「え?うん、いいですよ!」
101 : ◆wuHHR64l1og   2024/07/25 09:17:57 ID:qT5lgz8ZNI
ライアンさんが上がると同時に、わたしも入浴剤入りのお湯の中にちゃぷんです。
(……!!)
こ、これは、効きますッ!!
全身の痛みとか疲れとかがどんどんなくなっていく感じが!!すごい!!する!!
こ、これなら明日も頑張れそうな!!気がします!!する!!!!!
______たっぷり温まって上がってから、ライアンさんに同じ入浴剤をいくつかもらいました。
そしてライアンさんの寮は別の場所らしく、今日は用事があってこっちに来ていたそうです。
走って帰っていきました。また汗をかきそうなんですが?

こうして筋肉痛その他いろいろを、ばっちりいやしたわたし。
食欲も戻ってきたので、今度こそ晩ごはんをお腹いっぱい食べるのでした……。
102 : モルモット君   2024/07/25 18:29:38 ID:PwhrTiLF/o
筋肉痛には筋肉のプロがよく効く
103 : ◆wuHHR64l1og   2024/07/28 06:49:07 ID:pPSKrb0uzU
次の日……。
まだちょっと体が重い気がしますけど、動けないほどではないですね。
昨日のライアンさんの入浴剤がすっごく効いたみたいで、なんだか前より強くなった気もします!
(……ん?)
違和感がありました。部屋暗くないですか?
おふとんで寝てたので、ゆっくりとベッドの方に顔を向けると……
(二人ともまだ寝てるー!! ていうかまだ3時じゃないですかー!!)
すやすやと眠る先輩たちの姿と、置き時計がしめす時間は3時……夜中じゃないですか!!!!!!
(こ、これ……もう一回寝ましょう☆)
そうです、寝る子は育ちますから。
何もあわてることなんてないのです。寝るだけです。

そして、今度こそ次の日……。
わたしはトレーナーさんから呼ばれて、とある場所にやってきました。
じめじめしてて、ちょっとお薬の匂いがつんとする……
プールです!
朝練をするウマ娘さんがいっぱいで、なんか市民プールにやってきた気分です。
「今日は少しばかり負荷を抑えたトレーニングをするわ。そのためにプールはとても最適な環境なのよ」
「そうなんですか……」
トレーナーさんは昨日のトレーニング後のわたしの身体のことをわかってくれてたみたいで、今日は重くないやり方を提案してくれるみたいです。さすがトレーナーさん……。
「よし、とりあえず水着に着替えてきて」
「あ、はいっ!」
やはりサイズを測った覚えがないけどいつの間にかもらってた、トレセン学園指定のスク水さん……これを着て泳ぐみたいです、わくわく。
104 : ◆wuHHR64l1og   2024/07/28 07:32:06 ID:pPSKrb0uzU
着替えるため、更衣室に来ました。
(誰かいる……)
ひとり、着替えてる途中のウマ娘さんがいます。水色の髪の毛と、ウマ耳にシマシマの飾りをしてますね。
「んーっ! ……も、もう少しなのに着れないッ!!」
(ん!?)
「どーしよ、太りすぎたか……」
(んんん!?)
そのウマ娘さん、なんか水着が着れなくて困ってるようです。
なんで??
よくみるとお腹がぽっこりふくよかに……。
「見ちゃいましたね?」
「ひっ」
ドアの隙間から見守っていたんですが、ついに見つかってしまいました。
ウマ娘さんは、ヒシミラクルさんと言うそうです。
ヒシミラクルさんも、トレーナーさんに呼ばれてプールトレーニングをしに来たらしいです。
「いいなー小学生……太ってない」
「えっ!?」
ミラクルさんはお腹を擦りながらぼやきます。なんかオジサンくさくなったような!?
「わたしはもうダメだよ……あるから食べるせいでまた、こんな腹に……」
105 : ◆wuHHR64l1og   2024/07/29 03:21:13 ID:wNqeMeex0c
その後、なんとか水着を着れたミラクルさん。わたしも着替えて、いっしょにプールへ。
「おっ、ヒシミラクルさんと出会ったのね。 ……あなたまた太ったんじゃない?トレーナーが嘆いてたわよ」
「で、ですよね……あはは」
トレーナーさんに指摘されて、なんか申し訳無さそうな顔をするミラクルさん。
そんな彼女に、トレーナーさんはあるものを渡しました。
あれは……泳ぐときに使う、ビート板ですね。
「コレ使ってもいいから、後輩のシュガーライドに、良いところを見せてやりなさい」
「えっ、ええっ!!まさか焚きつける作戦とは……いいですよ、やってやりますとも!!」
(……んん?)
どうやら、わたしに泳ぎの手本を見せてくれるらしいですが……なんか雰囲気があやしいような!?

______準備運動もしっかりやって、いざ水の中へ。
水の温度は……あ、温水ですね。夏でも冬でも泳げちゃいますね。
「よ、よーく見てて!シュガーちゃん! これが、わたしの、泳ぎだぁぁぁぁぁ!!」
ヒシミラクルさんはそう言うと、ビート板ですごく勢いのあるバタ足をくりだします。
さ、さすがウマ娘のきゃくりょくです。水しぶきがとんでもない強さで!
「うぉぉぉぉぉぉぉ!!」
こ、これは______。

泳げたor泳げなかった >>106
106 : お兄さま   2024/07/29 03:22:45 ID:3GIhjy/GK2
勿論泳げなかった
107 : ◆wuHHR64l1og   2024/07/29 03:36:35 ID:wNqeMeex0c
「うぉぉぉぉぉごぼぼぼぼぼぼぼ!!」
(えーっ!?)
ほんの数メートル動いただけで、みるみる沈んでいくミラクルさん。
「ごぼぼ……ぶはぁっ。憎い、この腹の肉が……」
(そこーっ!?)
お腹をつまみながら、くやしそうに浮き上がってくるミラクルさん。
いえ、明らかに泳げない人のソレですよね?
小学校でもときどきいましたよそういう子……。
良いところを見せられなかったと、プールサイドで落ち込むミラクルさんを元気づけるために、今度はわたしがやります!
「泳ぎには自信があるのでッ!」
こう見えて結構泳げます。では、やってやりましょう。
「ビート板は……」
「あ、大丈夫です!」
「マジか……」
トレーナーさんはびっくりしてますが、ビート板もいりません!
普通にいけます!!
てことでスタート地点に移動して……。
「……はぁっ!!」
壁をけって、スタートです!!

>>108(どれくらい泳げた?)
108 : トレピッピ   2024/07/29 03:43:32 ID:j9xWhdKWgg
200m
109 : ◆wuHHR64l1og   2024/07/30 08:27:29 ID:2VKatyTAuY
私は念の為、防水仕様のビデオカメラを使用して記録を開始する。
さて、シュガーライドは泳ぎにどれほどの適性が……。
(……!!)
少しばかり、甘く見ていたと思う。その少女の身体能力を。
私はカメラを向けつつ、しっかりと目を開いてその泳ぎを追った。
フォームはまだ荒い。しかし、水圧を苦にもしてないかのようなスムーズなクロール。
25m毎に技法の変更を指示してみたが、どの泳ぎ方でも完走……200mを泳いでみせた。
「な……なんですと!!??」
私の次に驚いていたのはヒシミラクル。それもそうだろう、トレセン学園に入ってきたばかりの年下の小学生が、アスリート顔負けの水泳を披露したのだから。
「ど、どうでしたかっ!?」
水から上がったシュガーライドが、目を輝かせながら迫ってきた。
どうだったか……ソレを答えるには、今受けた衝撃を言葉にしきれないだろう。
「……文句なしよ!とりあえずプールトレーニングを多めに入れて、長い距離をしっかり走れるスタミナを身につけていきましょう!」
「はいっ!」
なんとか言葉を振り絞り、今後のトレーニングプランを確立した。
プールトレーニングを成熟させれば、坂路をスムーズに走りきれるようになるはずだ。
(この娘は……思った以上に……)
わたしは驚き、期待する。シュガーライドという少女に。
この娘となら、トゥインクルシリーズの頂点を目指せる気がする。そう思うほどに。
110 : ◆wuHHR64l1og   2024/07/31 23:47:22 ID:U31jXMk4.I
午後からは……運動もオーバーワークは良くないということで、図書室でおべんきょうです!!
「何を読めばいいんだろう……」
トレーナーさんは”新書”を読めって言ってましたけど、しんしょってなんですか!!
とぼとぼと図書室を歩いていると、オレンジ色の髪のウマ娘さんに出会いました。
「キミ、新書を探してるの?それならマヤ、読み終わったのいっぱいあるよ?」
マヤノトップガンさんは、沢山の本を両手でしっかりと抱えています。
(わ、わぁ……むずかしそうな本……)
トレーニングに関するものから、歴史の本まで色々あります。
全部漢字で書いてあって、タイトルは薄っすらとしか読めないですが!!
「えっこれ全部読んだんですか」
「うん!マヤ、なんでもわかっちゃうから!」
なんと、沢山のむずかしそうな本をぜんぶ理解しちゃったとのこと。何なんでしょうかトレセン学園。ぶんぶりょーどーってやつでしょうか。すごい人がいっぱいです!!!!
(わ、わたしもなれるんでしょうか?こんなお姉さんに……)
そう思うと、むずかしい本でも読める気がしてきました。
「頑張ってねー」
「はいっ!」
とりあえず何冊か受け取って、机に広げて読んでみることに。
「なになに……>>111

本のタイトル。
111 : 大将   2024/07/31 23:49:36 ID:4rO5CqKlGw
「ウマ娘 その誕生から現代まで」
112 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/01 00:23:11 ID:J8rfbQcuLo
「なになに……「ウマ娘 その誕生から現代まで」ですか……」
歴史の本でしょうか?4年生じゃ、まだやらないじゃないですかーっ!!
しかし、読み進めていくうちに、意外とわかりやすく書かれてることに気づきます。
車ができる前はウマ娘に引っ張ってもらう乗り物があったりとか、色々書いてあります。すごいですね、ウマ娘……。
現在でもウマ娘車の需要はあって、浅草の方では人力車が走ってるとかどうとか……。
「あらあら~、難しい本を読んでて、関心ですよぉ~」
「あなたは……?」
夢中になっていると、一人のウマ娘さんが声をかけてきました。
……本当に学生さんなのでしょうか。なんというか、ぼせいをめっちゃ感じるんです。
「わたしはスーパークリークです~。よろしくお願いしますねー」
この時、わたしはクリークさんを甘く見ていたんです。そう、とても甘く……。
113 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/01 00:24:21 ID:J8rfbQcuLo
赤ちゃんにされる.....をセンシティブにならない範囲で案を募集します。なんなのだ赤ちゃんにされるとは。

>>114>>118
114 : トレーナー君   2024/08/01 00:32:01 ID:DlN2q08XVU
ベビー服を着させられる
115 : アナタ   2024/08/01 00:41:23 ID:qvo/MDmS2g
抱っこされる
116 : トレピッピ   2024/08/01 00:47:01 ID:6F0X6Hm9BM
クリークのことをママだと思い込む
117 : キミ   2024/08/01 00:54:34 ID:8LSrmXW.vs
寝かし付けられる
118 : トレぴっぴ   2024/08/01 01:10:48 ID:GO86DyMIvA
おしゃぶりを咥えさせられる
119 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/01 08:34:14 ID:J8rfbQcuLo
「______ちょい待ちいや!」
(……!?)
クリークさんが本を読んでくれるとのことで、専用スペースまで案内されようとしていると……小柄なウマ娘さんに引き止められました!
「ウチはタマモクロスってもんや。クリーク……お前から溢れ出とるで……そのウマ娘を”甘やかしたくてたまらないオーラ”がなッ!!」
「っ……!!」
(ん!?!?!?)
なんか、しゅらばが始まったようですが……まるで理解できません!!
なんですかこれ!!!
「ちょっと見ときや」
そう言うとタマモクロスさんは、クリークさんの背中を軽くぽんぽんと叩きます。
すると、
(……!!!???)
目の前で起きたことに言葉を失いました。
クリークさんのふところから、ちっちゃい子用のイスとか高そうなガラガラとかがどっさり出てきたんです。
どこにしまってたんですか。
「コレが、スーパークリークや。無尽のスタミナで追っかけ回されて最期は捕まり、赤ちゃんにされる……」
「えっ、無尽のスタミナですか!?」
なんか理解が追いつかないところは忘れて、わたしはスーパークリークさんがすごいスタミナの持ち主だってところが気になりました。
「せ、せやで。学園有数のステイヤーで、菊花賞を制覇したこともある……」
「菊花賞を!?」
菊花賞といえば、クラシック3冠レースの最後の1つ。
それを勝てるウマ娘さんが目の前にいるなんて……!!
「あのっ、クリークさん!」
「何でしょうー?」
「赤ちゃんにはしなくていいので、ステイヤーとしてわたしを鍛えてくださいっ!!」
120 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/02 17:54:16 ID:pdKN5rDqNk
「______で、今日も走ることになったと」
「はいっ!やっぱり走ってこそウマ娘じゃないですか!!!!!」
数分後、ジャージに着替えてグラウンドにやってきたわたしとクリークさんと、タマモクロスさん。
「まさか、これほどのウマ娘にトレーニングを見てもらえるとは……二人も」
トレーナーさんは、二人の大先輩ウマ娘さんに驚いています。
わたしは、過去のレースビデオでもお二人のレースを見たことはないけど……どれくらいすごいんだろう?
「じゃあ手始めに、ウチらの走りを見せたるわ!」
「タマちゃん、頑張りましょうねー」
クリークさんもタマモさんも、スタート地点に立って……。
よーいどん______そう言ったしゅんかんに、
まるで目の前にカミナリがびしゃーんって落ちてきたようなしょーげきを受けました!!

たった1000mを走ってもらうだけでしたが、それはもう凄い走りだったんです。
具体的に説明しようとすると……あれ!?
(なにもわからないッ!!)
これは……凄かったとしかわかりません!!
何が凄かったんでしょう!!びしゃーんの部分でしょうか!?
「ふぅ……短距離は専門外やけど、たまには走ってみるのもええな」
「そうですねぇー。 ……あ、シュガーさーん!どうでしたかー!!」
そうこうしていると、二人が戻ってきました。
どうだったかなんてわかりませんー!!
こうなれば……やはり、いっしょに走るしかないですね!!
121 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/03 11:55:43 ID:bHEK10IOco
ってことで、今度は1600mを3人で走ります。
すごい走りをする先輩たちといっしょに走れるなんて、それもすごい!
わたしは心のなかで喜びながら、同時にドキドキしていました。

「ま、気楽にいこーな」
「ですねぇ。私たちの胸を借りるつもりで、自分のペースで走っていいですからねー」
タマモクロスさんもスーパークリークさんも、わたしを気づかってくれてるみたいです。
でも、レースをするからにはフルパワーで走りたいなって思いもあります。

「じゃあ、全員位置についたわね」
ゴール板の前に立つトレーナーさんの合図で、スタートします。
「よーい、ドン!」
合図のしゅんかん、わたしは走り出しました。
ポニー競走以来の、誰かとの全力の競走です。
また、さっきみたいな”びしゃーん!”は見れるんでしょうか?
わたしはとりあえず、前の方を走るクリークさんの背中を追うように、タマモクロスさんと並びました。
「へぇ、ウチと走るんか」
「はいっ!よろしくお願いしますっ!!」
「先輩ムーブ、かまさせてもらうで!」
タマモクロスさんは少しペースを上げます。それについていこうと思ったけど……まだガマンです。
(わたしは追い込み型、追い込み型……)
心のなかでそう言い聞かせながら、わたしは3番手まで下がりました。
っていうか、タマモクロスさんも全然気楽に走ってなさそう!?
122 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/04 13:43:35 ID:JdRu21k2A6
(さ、そろそろ4コーナーやな)
2番手を走るタマモクロス。
その後ろを走るシュガーライドとは3バ身ほど離れているが、
ラストスパートで引き離せないレベルではなかった。
(ウチはどんな勝負でも、加減はせぇへんで。……それが歳下でもッ!!)
最終コーナーを曲がったその時、彼女の意識が変わった。
「ふぅっ……らぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
一瞬であった。僅かな呼吸の後、全身の筋肉を解放する。
そこから放たれる圧倒的な加速力が、彼女を「白い稲妻」と呼ばせる理由であった。

(ここからッ!クリークをぶち抜いて……なッ!?)
超スピードでクリークに迫ろうとするタマモクロスだったが、
その後ろから迫る何かを感じ取った。
(なんでやッ!?)
そう、それはほんの僅かな油断。
圧倒的な力で簡単に引き離せると思った、慢心。
“彼女”は、ついてきたのだ。タマモクロスに。
123 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/04 17:49:09 ID:JdRu21k2A6
シュガーライドは見た。
目の前で、稲妻が発生するのを。
雷が落ちたような衝撃を。
(わ、わぁ……わぁっ!!!!!!)
気分がすごく高揚してきたシュガーは、その本能の向くままに駆け出す。
今の彼女の心のなかには、ひたすら”楽しい”という感情ばかりが巡っている。
そして、3バ身も前を駆けるタマモクロスに迫っていくのだ。
(なんやアイツっ!!ウチの全速力やぞッ!!なのにっ!なんでっ!!)
残り400m。タマモクロスはとっくにクリークを引き離していた。
しかし、そのすぐ後ろにはシュガーライドがぴったりとついてくる。
(なんでついて来れるんッ!?)
タマモクロスが驚いているのは、シュガーライドの尋常ではない加速力だ。
歩幅の大きいストライドだが、加速が始まってからの脚の回転がとてつもなく速いのだ。
ありえない走りだが、今それを目撃した。
“ピッチ走法の回転速度とストライド走法の歩幅”の両方を発揮した走り。
結果、1バ身と迫ったギリギリのところでタマモクロスが先着した。
「はぁっ……はぁっ……危ない危ない……少し油断しとったわ……」
息を荒げるタマモクロス。あまり走らないマイルレースでの強烈なラストスパートをしたことも影響しているが、一番はシュガーライドに追われたことだろう。
そんなシュガーライドはと言うと。
「わぁー!!惜しかったですっ!!」
「うふふっ、すごく速かったですねー」
息を荒げる様子もなく、楽しく走れたことをクリークと語らっていた。
もう一本走れそうな勢いだが……。
(待てや……1600をもう一本走るん?そしたら……)
簡単な計算だった。3200m……長距離の最高峰のG1レース、天皇賞・春の距離である。
(うせやろ……あの年齢、あの体に、まだそんだけの燃料積んどるっちゅーんか!?)
タマモクロスは戦慄した。ステイヤーを目指しているとは聞いていたが、まさかここまで走れるとは思わなかったのだ。
124 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/04 17:53:58 ID:JdRu21k2A6
その光景に一番驚いていたのは、シュガーのトレーナーであった。
(練習の時とは……ぜんぜん違うじゃないッ!!)
坂路トレーニングのときには、なんとかスローペースでの走りをすることが精一杯であった。
だが目の前の現実は、とても凄まじいものである。
後方待機に徹していたところまでは定石通りの走りだ。
だがその後だ。終盤に加速しだしたタマモクロスに追いつけそうなレベルの、爆発的な加速力を見せた。しかも、まだもう半分の距離を走れそうなほど、涼しい顔をしている。
(どういうことなの……この娘、底が全く見えない!!)
そもそもまず、スーパークリークも手を抜いていたわけではなかった。
タマモクロスの追い上げに合わせて彼女も加速をしていた。
追い抜かれはしたが、それでもシュガーが簡単に抜けるレベルではなかった。
しかし現状、シュガーはスーパークリークでさえも抜かしていた。
(本番に強い……のかしら?)
単純な話だが、納得がいく。
これではいきなりデビューさせても戦えるのではないか?そうも思った。
しかし、やはり、まだ身体が出来上がっていないはずだとも思った。
どうする?トレーナーの選択は……

>>125 デビューを早めるor9月の選抜レースまで待つ
125 : アナタ   2024/08/04 18:50:39 ID:EaeKlak1cg
デビューを早める
126 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/04 18:53:29 ID:JdRu21k2A6
>>125
早めちゃったよ!!

あ、1から長く試してしっくり来なかったので書き方を普通に戻してます。
127 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/05 11:25:44 ID:3Gc5tETkaY
まだ走り足りなそうなシュガーライドに、トレーナーは声をかけた。
「……突然だけど、デビューを早めてみる?」
「えっ!?」
シュガーライドは驚いた。まだトレーニングも始まったばかり、今の自分がデビューに値するのかもピンときてはいなかった。
そんな彼女に、トレーナーは説明する。トレーニングのとき以上に走れていた……あとは実践経験を積みながら力をつけていけば良いはずだと。
そしてトレーナーは、改めてシュガーライドに申し出た。
「ちょっと早いけど、トレーナー契約を結ばせてほしい。 ……良いかしら?」
「は……はいっ!これからもよろしくお願いしますっ!トレーナーさん!!」
タマモクロスとスーパークリークも見守る中で、トレセン学園に新たなコンビが誕生した瞬間であった。

______それから数日。メイクデビューに向けての調整を行っている時のこと。
128 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/05 11:27:20 ID:3Gc5tETkaY
「トレーナーさんっ!メニュー終わりましたーっ!」
「あら、もう!?」
タマモクロス達と走ってからというもの、シュガーライドはメキメキと強くなり始めていた。
何が彼女を目覚めさせたのかはトレーナーにもわからないが、それに同調するように先輩のウマ娘たちも気合が入っているので、良しとした。
「ところでシュガー、メイクデビューを走る場所だけど……どこが良いと思う?」
「は、初めてのレースの場所ですか!!すっごい重要なやつですよね!!」
スマホで各地域を調べながら、シュガーライドにも意見を問う。
メイクデビューのレースは殆どの地域で同じ距離が走れるが、遠征に伴う疲労なども考慮にいれる必要があるのだ。それにデビューを決めたら、そこからは早い方が良いが、7-8月はまだ暑い地域が多い。
初っ端からパフォーマンスを発揮できないのであれば、本末転倒である。
「……おや?メイクデビューの出走地域を検討されているのですか?」
「あっ!ジャーニーちゃん!!」
悩む二人の前に現れたのは、これまでもシュガーライドを助けてくれたりした先輩ウマ娘・ドリームジャーニーであった。
トレーナーは思い出す。ドリームジャーニーといえば「遠征支援委員会」を運営しており、これまで海外遠征で輝かしい実績を出してきたウマ娘たちも、彼女のバックアップあってこその活躍だと言えるほどだ。
「ジャーニーちゃんはどこが良いと思いますか!?」
「そうですね……」
ドリームジャーニーの提案>>129(それなりに長文を希望)
129 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/05 19:15:29 ID:3Gc5tETkaY
あげ安価下
130 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/05 21:44:59 ID:3Gc5tETkaY
まあ、なかなか来ないな。
131 : アナタ   2024/08/05 23:12:25 ID:vdpYWH02uo
ドリジャの思考でわりと長文となると全然わからん!
ってなるのかもなった
安価なら下で
132 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/06 01:11:03 ID:mjpd3mx3Mg
>>131
なんで!なんでレスをしたぁーっ!!!


……もう自分で書いてみるか……
133 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/06 06:06:11 ID:mjpd3mx3Mg
ドリームジャーニーは懐からタブレットを取り出すと、慣れた素早い手つきで情報の検索を始めた。そして数分後、結果が出たようだ。
「まずは遠征の必要がない……近場の話からしましょうか。
学園、又は寮からなら、駅で電車を使ってすぐの東京レース場ですね。移動距離が極めて短く、伴う負荷も限りなく最小に抑えられるでしょう。
次点では千葉まで行く必要がありますが、中山レース場があります。ここからでは同じく、そう遠くない距離ですね」

都内近辺の話が終わると、次にジャーニーは遠征となるレース場の話題に移った。
「ここからは遠征の必要があるレース場です。新幹線や航空を使えば遠くはない距離ですが、時間的・精神的余裕を考えて1、2日前からの滞在が有効でしょう。
今の時期でも涼しいのは、中部の新潟や東北の福島、そして北海道の各レース場ですね。逆に冬はパフォーマンスが落ちるウマ娘もいますが。
次に関西方面のレース場です。愛知の中京レース場や京都のレース場、兵庫の阪神レース場があります。この辺りは、レース前後の観光目的で選ぶウマ娘も少なくはありません。
そして最後に九州・小倉レース場ですね。田舎というイメージを持たれることが多いですが、用意された収容人数に見合うだけの観客が毎週やってくるので、他に劣ることはないでしょう。 ……こんなところでしょうか」
134 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/06 06:06:31 ID:mjpd3mx3Mg
説明を終えたジャーニーは、タブレットをしまうと一考する。
それも1分程度であり、すぐに結論を出した。
「ここまでは各地域の説明でしたが、どこがいいかという質問に答えるとなると……私のおすすめは新潟か福島でしょうか。暑すぎず寒すぎず、やはり夏の時期にメイクデビューを迎えるならばこの辺りです」
なるほど……と感心するシュガーとトレーナー。
右も左もわからない状況なので、今回はドリームジャーニーの意見に従ってみようと考えた。
「じゃあ、さっそく選んじゃいます!わたしの初レースの場所は……」
>>135
135 : トレぴっぴ   2024/08/06 06:47:08 ID:PTSdazYk6.
中山
136 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/06 08:14:20 ID:mjpd3mx3Mg
「え、今の話の流れで中山を選ぶんですか」
シュガーライドが出した結論は、メイクデビューの地を中山レース場にするということだった。
それに少し困惑するジャーニー。
「やっぱり初めは近場が良いかなーって。それにわたし、千葉のほうに行ってみたかったんです!!ほら、遊園地があるじゃないですか!!」
シュガーがスマホで見せたのは、千葉にある日本最大のテーマパークのサイトだった。
「なるほど、その目の輝かせ方……千葉でも十分に満喫できそうですね。レースも観光も」
嬉しそうなシュガーを見て、ジャーニーは納得したらしい。
137 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/06 08:14:37 ID:mjpd3mx3Mg
「じゃあ、初レースは中山レース場で決まりね。一番早くて……1週間後。どうかしら?」
「早いですね!でも、すぐレースできるって思うと、今からもうウズウズしちゃってます!!」
「よし、さっそくエントリーを済ませておくわね。芝で、2000m……っと」
トレーナーは専用のスマホで、URAのページからメイクデビューのエントリーを進めていく。
「2000mですか。シュガーさんの適性を見るには無難な距離ですね。私も応援していますよ」
「ありがとうっ、ジャーニーちゃん!!」
ドリームジャーニーからのエールも受けて、シュガーライドは気合を入れる。
そしてその後は、ゲート試験なども難なく突破し……。
1週間後。ついにメイクデビューの日を迎えた。
「私たちも、後で応援に行きますからね!!」
「頑張って、シュガーちゃん」
「はいっ!お二人とも、ありがとうございます!!」
スペとスズカに見送られ、シュガーライドは手荷物とともに寮をあとにする。
外でタクシーを止めていたトレーナーと駅へ向かい、電車に乗って、いざ中山へ。
天気は、良バ場が間違いなしの快晴。少し暑いくらいの夏の天気という感じだ。
がたんごとんと電車に揺られながら、シュガーライドはドキドキしていた。
(やっと、わたしもレースに出られるんだっ!!)
緊張などは一切なく、純粋な楽しみだけがそこにはあった。
>>138->>140
138 : アンタ   2024/08/06 16:27:24 ID:T59fLWlbJg
まずレースコース(本バ場)の様子を見に行ったシュガー
「これが練習じゃない本番のレースコース・・・私たちウマ娘が本気でぶつかり合うターフ・・・」
139 : トレーナーさん   2024/08/07 00:01:00 ID:pwEDu4G8Zs
シュガー「あ、福三の焼きそば美味しそう・・・あっ翠松楼のラーメンも・・・」
140 : アナタ   2024/08/07 06:56:11 ID:6H9Gr89uaM
初めてのレース場を思ったより楽しめたようだ!
141 : お姉さま   2024/08/07 07:04:46 ID:x83C7i/UeY
あれが短い事で世界的に有名な中山の直線…
142 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/07 10:17:46 ID:AVSLer3TOE
「ふわぁぁぁぁっ!!これがレース場ッ!!」
競技ウマ娘とそのトレーナーは関係者用の裏口から入れるので、それを使って入場したシュガー。そして早速足を運んだ観客席……そこから見る本バ場に、シュガーは心を奪われていた。
「ここでっ!ここで走るんですよねっ!たくさんのお客さんに応援されながらっ!!」
「ええ、そうよ」
「ああっ!あれが有名な中山の直線ッ!!」
興奮するシュガーに返事をしつつも、それを見るトレーナーにも自然と笑みが浮かぶ。
(ここまで純粋に喜ぶウマ娘は、なかなか居ないわよね……さすが小学生……)
今まで見てきた中高生のウマ娘たちは、こんなにも目を輝かせてレース場に興奮する者は少なかった……ので、純粋な心で興奮して喜んでいるシュガーを見るのが、うれしいのだ。
今は朝の9時。これからは未勝利ウマ娘たちのレースが始まるが、シュガーの出るメイクデビューは12時過ぎだ。
「まだ時間に余裕があるけど……何する?」
「そうですね……おなか空きました!!」
そういえば、とトレーナーはハッとした。自分もシュガーも、朝は何も食べずに来た。
よくここまで平常でいられたなと驚くとともに、そのツケが回ってきたかのように腹の虫が泣き始める。
「とりあえず……食べに行きましょうか」
二人は観客席から離れ、屋内へ。フードコートのエリアを目指すのだった。
143 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/07 11:26:56 ID:AVSLer3TOE
助けてくれ!!!これ以上、中山競馬場がわからない!!!!

てか小倉しか現地行ったことないです!!!!
144 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/07 12:13:32 ID:AVSLer3TOE
ここはもう、時々登場するめっちゃ書ける人に任せる……>>145から、大体レース時間ちょっと前くらいまで。
中山レース場と食についてを……。
145 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/07 20:13:07 ID:AVSLer3TOE
保守?上げ。安価下。
前スレみたいな文章バケモノの人、来ないかな……(他力本願)
146 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/08 14:39:14 ID:mwqXMn1BNg
二人が地下まで降りてやってきたのは、とても大きなフードコートエリア。
まだ時間が早いため、人並みはまばらだが……お昼時になると飲食用の座席の取り合いや譲り合いが発生するほどに、人であふれかえる場所だ。
「わぁーっ!なんでもあるんじゃないですか!ここっ!!」
シュガーは、ウマ娘としての”食”に対する本能が刺激されるのか、出展している店舗に目を輝かせている。
そして彼女はいつの間にか、雑誌のようなものを手にしていた。
「シュガー、それは?」
「これはですね、各レース場をもーらした、食とエンタテイメントのガイドブックです!!」
持っているそれは創刊号で、590円……次もあるの?とトレーナは少し困惑する。
「昨日の夜はこれをざーっと読んでいたんですが、じっさいに来てみるとすっごくワクワクしますね!!!!」
おそらくシュガーライドは、ネタバレを聞いてもそれを楽しみにするタイプなのだろうと、トレーナーは思った。
147 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/08 14:39:54 ID:mwqXMn1BNg
「あっ、永福の焼きそば屋に……あっちには確か……すいしょーまつのラーメン屋!」
「ちょっ、はっ、速いわよッ!時間はあるから!!」
小柄ながらも圧倒的な腕力差にトレーナーが勝てるはずもなく、様々な店舗を見て回るシュガーライドに引っ張り回される。
だが、不思議と悪い気はしなかった。レース場を楽しめている、緊張もしていなさそう……本番ではしっかり走れるはずだと、トレーナーはシュガーに改めて期待を寄せた。
「な、何を食べるにしてもっ、腹八分目にしといてね!?」
「あっそうだった!レース前に眠くなったら大変ですもんね!!」
シュガーは、自身の体質である血糖値スパイクをまだ克服できてはいなかった。
しかし、十分な野菜や健康茶とともに食事を摂ることで、ある程度緩和はできている。
それでも一般的なウマ娘より食事量を減らさなければならないのだが、ここ数週間で彼女の身体は着実に成長できている。トレーナーはそれを信じていた。


(一人でテンパってましたけど、なんとか解決できそうです。ゴメンネ)
148 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/08 15:19:10 ID:mwqXMn1BNg
「ぷはー!焼きそば、おいしかったですー!!」
永福で焼きそばを腹八分目までたらふく楽しんだシュガーは、とてもごきげんな様子だ。
(か、加減してて、あの量!?さすがウマ娘ね……)
トレーナー1杯に対し、シュガーは大を3杯。これでまだ控えめというのだから、この種族はとてつもないと、トレーナーは驚いていた。
「まだもう少し時間ありますよね!?グッズ売り場行きたいですっ!」
シュガーの希望で次に足を運んだのは、同じフロアにあるグッズショップ。
トゥインクルシリーズで活躍するウマ娘の公式グッズが売られた、ファンなら一度は足を運びたい場所である。
「うおーっ!UFOキャッチャーでもなかなか取れないぱかプチがこのお値段でっ!?あっちにはウイニングライブ用のペンライトっ!!」
たくさんのグッズに、これまた目を輝かせるシュガー。
しかし、ふと、彼女は足を止めた。
「らい……ぶ?」
「______あ」
小さく発した言葉を聞いたトレーナーは、気付いた。シュガーも、気づいてしまった。
「ういにんぐらいぶの……れんしゅう……してないです……」
トゥインクルシリーズのレースと言えば、1着でもそれ以下でも、応援してくれたファンに感謝の思いを伝えるための、ウイニングライブがある。
が、しかし。
シュガーライドはこれまで、レースに出て走ることを考えるしかなかった。それに向けてとても忙しかった。
ダンスレッスンを一切受けていない。
「どどどどどど、どうしましょうトレーナーさん!!!!!」

レースまであと2時間。体操服へ着替えたり、パドックへの参戦の時間も含めると、あまり使えない。
どうする?というか何ができる?
>>149
149 : トレーナーちゃん   2024/08/08 15:25:04 ID:vIEd.MF8a2
トレーナーのスマホでUmatubeの過去のウイニングライブのダンス動画を見て出来る限り覚える
150 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/08 17:25:41 ID:mwqXMn1BNg
二人は急遽、控室へと向かった。
そしてシュガーライドは早々と着替えを済ませ、軽くストレッチを始める。
「んーっ……2時間で覚えられますかねぇ!?」
体を伸ばしながら、シュガーはトレーナーが即興したプランについて改めて尋ねてみた。
「覚えられるかじゃないわ、やるのよ」
いつにもまして真剣なトレーナーの、プランはこうだ。
着替え→ストレッチ→ダンス練習を2時間で終わらせ、パドックに間に合わせる。
レースに向けてのウォーミングアップは、ダンス練習を通して済ませる。
……超突貫のプランだが、やれることはもうこれしかない。
「さ、ウイニングライブはMake Debutよ。動画サイトに振り付け動画があるから、覚えましょう」
「は、はいっ!なんとしても!!!!」
タブレットで動画を再生しながら、シュガーは振り付けを覚え始める。
とある男性俳優の話だが……リズム感がないが運動ができるその男性は、役としてダンスをする際、”リズム通りの振り付け”を1本の動きとして叩き込んだという。
シュガーもそれをするつもりだ。とりあえず今回は、みっちり踊れれば良いのだ。
ところで、見ている動画はセンター……つまり1着のウマ娘の振り付け。
シュガーは、デビュー戦で2着以下になることは考えていない。
楽しく走って、勝つ。だから練習するのはセンターの振り付けだけで、良いのだ。
151 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/08 17:26:03 ID:mwqXMn1BNg
そして、2時間後。
「______どっ、どうですか!」
「なんとか様になってきてるわね。あとはぶっつけ本番だけど、いけそう?」
「はいっ!」
ある程度の振り付けを覚えたシュガー。歌の方は……まあこれも聞けないレベルではないので、今日を乗り切ってから考えようということになった。
蹄鉄をしっかり打った競走用シューズに履き替え、水を飲んで少し一息入れてから、シュガーは表情を引き締める。
「……じゃあ、トレーナーさん。いってきますっ!」
「ええ。楽しんできて!」
楽しく走って、勝つ。その思いを胸に、シュガーライドはターフへ向かうのだった。

『さあ!中山レース場も5Rに突入だ!メイクデビューに挑む9人のウマ娘たちは、どのような走りを見せてくれるのでしょうか!?』
12時をまわり、客席にも人が増えてきた中山レース場。
このレースでメイクデビューを迎えるウマ娘たちが、続々とパドックに姿を見せていく。
『そして最後に登場するのは、期待の飛び級ウマ娘! 、1番人気、シュガーライドです!』
実況の声とともに、シュガーライドがパドックに登場した。
(これが、レースに向かうウマ娘さんからみた景色……)
(ていうか、1番人気……えーっ!?)
観客に向けている表情はキリッとしていたが、内心は自分の評判に驚くシュガー。
だが、彼女はその期待すらもエネルギーに変えようと思った。
なぜなら今、ものすごく楽しみだからだ。そのすべてが。
152 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/08 17:37:25 ID:mwqXMn1BNg
シュガーライドの枠>>153
レース展開>>154
153 : トレ公   2024/08/08 17:42:49 ID:vIEd.MF8a2
1枠2番
154 : 相棒   2024/08/08 17:49:47 ID:LBWhxC3Pkc
ややスローペース、先頭からシンガリまで約10バ身
155 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/08 18:31:20 ID:mwqXMn1BNg
『ターフに集うは9人の新人ウマ娘たち。スムーズにゲート入りが進み、出走の時を待っています』
内枠となる2番ゲートに収まったシュガーライドは、ゲート内でもいろいろなことを考えていた。
自分よりも大きなお姉さんウマ娘たちのことだったり、ターフの感触だったり。
だが、一番は。
(たのしみ、ですっ!!)
細かい作戦指示もされていない。まずは自分の思うように楽しく走ってほしいとだけ。
彼女の心の中はもう、走りたい気持ちでいっぱいだ。
『最後の一人がゲートイン。各ウマ娘体勢完了か……今、スタートしました!』
ゲートが開き、ウマ娘たちが一斉に飛び出していく。
『さあ、誰が行くでしょうか。まずは4番と8番がハナを奪い合っている。1番人気のシュガーライドは最後方、後半届くでしょうか?』
これを出遅れだと思う観客もいるかも知れない。だが、
(よしっ、たぶんいいスタートなんです!!)
シュガーライドにとっては、最良の位置取りだった。
ポテンシャルの高さはわかっているものの、2000mは未知の距離。そして自身の脚質と合わせて、シュガーライドはギリギリまで脚を溜められる最後方を走ることを選んだのだ。
『最初の1000mは60秒ジャスト。ややスローな展開です』
2コーナーを回って向正面。レースは淀みなく進行している。
(すごいっ、これがレース!足音がたくさん聞こえて、わくわくするっ!!)
最後方に居て、その前方を2、3人のウマ娘にカバーされている状態であったが、今のシュガーにはすべてが新鮮で、楽しいものであった。
『先頭からシンガリまでおよそ10バ身。3コーナーを回って最終コーナーへと進みます。誰が最初に仕掛けるか!?』
156 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/08 18:31:46 ID:mwqXMn1BNg
シンガリといえば今はシュガーライドであり、スローペースで10バ身もの間隔が開いているのは、後方からくるウマ娘には少し不利な展開だ。
前のウマ娘の脚が生きていることも多く、先行勢が逃げ粘ることも少なくはない。
そんな状況で突入する最終直線。4コーナーを抜けて、残り400m。
(あっ……ここからっ!!)
もうすぐゴールだと気づき、シュガーが動く。
『おーっとここでシュガーライド!凄まじいまくりで大外から上がってくるぞ!!』
タマモクロスたちとの走りで見せた、大股でありながらもその間隔がとても小さい、高速なストライド走法。
その走りで、内を走るウマ娘たちをどんどん追い抜いていく。
「はあぁぁっ!!」
『シュガーライド、先頭を走る8番を追い抜いて先頭に立った!凄まじい走りで心臓破りの坂も難なく突破し、いま1着で、ゴールっ!!』
ラストスパートを掛けるその間、シュガーライドは終始笑っていた。そしてそのまま、楽しくゴールしたのである。
「よしっ!!」
観客席で小さくガッツポーズをするトレーナー。
そしてゆっくりとスピードを落とし、止まるシュガー。
(あ……デビュー戦……勝ったんですね……)
「はぁ……はぁっ……やっ、やったぁー!!」
あれだけの大まくりをして、息は荒かった。だがその笑顔を崩さず、シュガーライドはデビュー戦の勝利を喜ぶ。
彼女のレースは、まだ始まったばかりだ……。
157 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/08 18:32:27 ID:mwqXMn1BNg
次の展開>>158>>160
158 : キミ   2024/08/08 18:38:31 ID:vIEd.MF8a2
ウイニングライブも大成功
159 : お姉さま   2024/08/08 20:44:13 ID:JI7FkGQuyk
大外まくりの豪快な走りとライブの出来から一躍今期の期待の星に!目の肥えたファンからは今年の菊花賞ウマ娘は決まり、あわよくば三冠も!?との声も
160 : お前   2024/08/08 21:47:32 ID:vIEd.MF8a2
早速、雑誌『月刊トゥインクル』の記者である乙名史悦子から「期待の新星に密着取材を」との要望が。
161 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/09 03:37:09 ID:OCmbApAAho
「トレーナーさんっ!! やりましたっ!!」
控室に戻ると、大喜びのシュガーは改めてトレーナーに勝利報告をする。
力いっぱいの握手に応えながら、トレーナーも称賛の言葉を送った。
「凄いわ。デビュー戦で初勝利、しかもあれだけの結果! ……それと」
「はい?」
称賛と同時に、トレーナーは”あの疑問”を投げかける。
「走ってて、楽しかった?」
それに対し、シュガーは迷わず答えた。
「はいっ!すっごくっ!!」
その表情から飛び出した言葉には一切の曇りがなく、
本気で走れたのだと実感するトレーナー。
「あ、そうだ!トレーナーさん!ライブって夕方ですよね!」
「そうだけど……」
「しっかり1着になれましたし、もうちょっと練習しませんか?」
ダンス練習を提案するシュガーライドからは、レースでの疲れはほとんど見えない。
プレッシャーもなく、先ほど以上に集中して取り組めるだろう……そう思い、トレーナーはライブに向けてのダンス練習を再開することにした。
途中、軽食も挟みながら、数時間後……。
162 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/09 03:37:38 ID:OCmbApAAho
『さあ!ウイニングライブの時間がやってまいりました!センターを飾るのは、圧巻の大まくりでレースを制したこのウマ娘ッ!!』
暗くなってきた中山レース場。ライブ専用の中規模なステージには、すでに多くの観客が詰めかけ、皆それぞれ応援グッズを持っている。
そして、そんな大観衆に見守られ登場したのは……。

『期待の新生ウマ娘、シュガーライド!!』
(わ、わぁ……これが、ウイニングライブっ!)
せり上がりエレベーターでステージにやってきたシュガーライドは、たくさんの観客たちに驚き、息をのむ。
(ま、まだデビュー戦だけど、もしGIで勝てたら、どんなことになるんでしょうか!!)
彼女の脳内では一足先に、GIレースで勝った後の話を想像していた。
観客も歓声も、今の比ではないだろう。
そんな景色を思い描きながら、彼女はスタンドマイクを手に取る。
「えっと、シュガーライドですっ!きょうは、楽しいステージにしていきましょうっ!」
まだ大それた言葉も何もないけれど、今日は楽しい走りができて、それを応援してくれた人たちに感謝を伝えたい……そんな思いを胸に、シュガーは歌って踊る。
活舌は安定していないが、子供らしさのある元気な歌声。そして、何時間も練習したキレのあるダンス。センターに特化したおかげでもあるだろう。
初めてのレースに、初めてのライブ。どちらも、大成功で幕を閉じるのだった。
163 : 貴方   2024/08/09 03:46:00 ID:47WW.AvmxI
>>159
メイクデビュー中山2000mなら菊花賞より皐月賞では?
それとも目の肥えたファンが皆何故かステイヤーだと見抜いてるって事?
164 : トレ公   2024/08/09 03:52:18 ID:OCmbApAAho
>>163
後者でいいんじゃないですかね
165 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/12 04:22:51 ID:cmCOWRzSJk
次の日。トゥインクルシリーズ専用SNS「U」では、すでにシュガーライドの話題で持ちきりになっていた。

『メイクデビューのあの娘、凄かったよな』
『身体が小さいね……ってか小学生!?』
『あのまくり方は並のウマ娘にはできないと思う』
『歌とダンスもよかった。推す』
『3冠も目指せるくね?』

午後3時頃。トレーナーはスマホでそれを眺めながら、屋内トレーニングルームでシュガーを待つ。
(いきなり有名人……胃が痛いわ……)
世間からこれだけの期待がかかっているのだ。トレーナーとしてもシュガーの環境にかかわってくる要素を潰すわけにはいかない。
掛けられた期待が重い。
「トレーナーさんっ!わたし今、SNSで有名人になってるって!!」
(まあ、そりゃそうか)
ジャージを着てやってきたシュガーライドの瞳は純粋なキラキラオーラを放っているようだった。その眩しさは、不安や心配などが混ざっていては絶対に成せないものだと思い、
杞憂だったなと納得するトレーナー。そして、用意していた次の計画シートをタブレットで見せる。
「ほうほう……次のレースはGIII札幌ジュニアステークス……え?いきなりじゅーしょーを走るんですか!?」
驚くシュガーに、トレーナーは説明を始めた。
166 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/12 04:24:06 ID:cmCOWRzSJk
「良い?私は、あなたにそれだけの力があると思ってる。多分、他のウマ娘に決して劣らない、あなただけの力が」
「わたし、だけの……」
「そうよ。この調子で走っていれば、きっとそれが”シュガーライドを形作るもの”になっていくはず。 ……要は、あなたにしかできない走り、ね」
小柄でありながら、勝負どころでは異質な末脚を使うことのできるシュガー。
それは同年代のウマ娘にも、先輩ウマ娘たちにも中々マネできないものだ。
自分だけの走りを確固たるものにすれば、GIどころかクラシック3冠にも手が届く……トレーナーはそれを信じている。
「わっ、わかりました!GIIIにでて、えっと……はずみをつけますっ!!」
少し考えて、納得したシュガーの目が、また熱く燃えだした。
次の舞台は8月下旬の札幌。東京と比べるとこの時期でも冷たいが、きっと温めてくれるに違いないと、トレーナーは期待を寄せるのだった。
そして屋外に出て、トレーニングを始めていると……。
167 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/13 05:38:11 ID:0xVA54Iu4.
「すみませんっ!お時間よろしいでしょうか!!」
トレーナーに、一人の女性が話しかけてきた。カメラや手帳を持っていて、動き回るのに良さそうな服装……これらを見て、トレーナーは直感する。
「……記者の方ですか?」
「そうです!!私、雑誌『月刊トゥインクル』の記者で、乙名史悦子と申します!」
トゥインクルシリーズを特集する人気雑誌の記者を名乗るこの女性。
トレーナーがまだ何も言ってないのに、既に目を輝かせているようだ。
話を聞いてみると、まだ10歳でありながら鮮烈なデビューを果たしたシュガーライドに、
とても興味があるという。
「密着取材、させていただけませんか!!!!!」
なんというか悪意はないが圧が強いこの女性記者に、トレーナーは……。
>>168
168 : あなた   2024/08/13 05:43:39 ID:im.4hB/1Qk
1日(24時間)だけですよ。但し、シュガーが嫌悪感を抱いたらその場で即終了です。それでも良いなら密着取材しても構いません。
169 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/13 06:34:30 ID:0xVA54Iu4.
「トレーニングの間なら構いません。ただし、シュガーやその他のウマ娘たちに悪い影響がないように、お願いします」
「すすす、素晴らしいですっ!!」
どうやら、担当だけではなく周りのウマ娘にも配慮した提案に、いい評価をもらったようだ。トレーナーは一瞬困惑したが、乙名史記者といえばこんな性格だったなと納得する。
「ではさっそく、撮らせていただきますね!」
そして乙名史記者は、持っていたデジカメを構えて、シュガーライドの練習風景を撮影し始めた。 
その日の夜……。
「かんぱーいっ!!」
寮の一室で、小さなお祝いパーティーが開かれていた。
祝われているのはシュガーライドで、祝っているのはスペとスズカだ。
それっぽいグラスになみなみと注がれたなまはげジュースを飲みながら、シュガーはご満悦に浸っている。
「初勝利、おめでとう」
「おめでとうございます、シュガーさん!」
「えへへ。お二人とも、ありがとうございますっ!」
昨日は、帰ってきてすぐにシュガーが眠ってしまったため、今日のこの時間にお祝いパーティーを開くことになっていたのだ。
「ところで、次のレースはもう決まってるんですか?」
「はい!札幌ジュニアステークスです!」
「いきなり重賞ですか!頑張ってください!!」
スペもスズカも、シュガーのことを心から祝い、応援してくれている。
シュガーはそれに応えねばと思った。またこんなふうに祝ってもらえたら、自身にとっても嬉しいものである。
そして、明日からも頑張ろう……そう思えたのだった。

>>170>>173
170 : トレーナーちゃん   2024/08/13 09:32:57 ID:im.4hB/1Qk
トレーニングの合間にお茶をしようと思いカフェテリアを訪れたら、今日は誰かの誕生日らしくケーキが全品半額でラッキー!
171 : お姉さま   2024/08/13 10:07:21 ID:FlAx4OaFDY
そして手にしたスイーツを食べようとすると…
「そんな!?昨日から食べたかったメロンパフェを半額で入手するチャンスが…こんなのあんまりですわ!絶対に許しませんわよゴールドシップさん!」という怒りの声が…
哀れに思ったのでたまたま購入していたメロンパフェを声の主に譲ってあげた
そして話を聞いて見ればなんとそのウマ娘はステイヤー系の名家の期待の星だった!
お礼に後日長距離の極意を教わる事になった!
172 : お姉ちゃん   2024/08/13 10:10:52 ID:FlAx4OaFDY
あ、マックちゃんが怒ってるのはゴルシに振り回されてカフェに行くのが遅れたせいです。無駄にレスしてすいません
後1つ ↓
173 : お姉ちゃん   2024/08/13 10:22:40 ID:5aYnfP5YS.
>>171>>172
(文脈的にゴルシのせいでパフェを買えなかったって事か…?)

ついでにゴルシからも同じ後方からの捲りが得意という事で色々教えてくれる事になった(真面目にレース技術を教えるとは言ってない)
174 : モルモット君   2024/08/14 13:46:04 ID:JuopfQKb/Y
>>173
それです!全然補足出来て無かった…すいません
175 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/15 05:06:08 ID:FVCDezNPk2
そして次の日。
今日の放課後は時間に余裕があったので、シュガーライドはトレーニング前にカフェテリアで糖分補給に勤しむことにした。

「わぁー!この時間のカフェテリア、めったに行かないので……こんなにスイーツがあってびっくりです~!!」
ビュッフェ形式で並ぶ豪華絢爛なスイーツたち。
ショートケーキなどの定番メニューや、パティシエ監修の装飾が施されたスイーツがたくさんある。
(……あ、あれは!!)
ふと、テーブルの端のほうに目をやってみると……”特別なメニュー”が掲示されていることに気がついた。
「なになに……おたんじょうび記念……いつもなら1000円のメロンパフェが、半額以下の250え______」
ビュッフェ外の有料メニューであるメロンパフェは、レースで戦績を重ねた一部のウマ娘しか気軽に手が出ないような、良いお値段の限定商品だ。
それが250円で売っている。なんとオトクなことだろうか。
しかし、それを読み上げていた次の瞬間、押し寄せてくるバ群の波に飲まれていくシュガーライド。
(し、しまった!すっごいオトクすぎて、ウマ娘さんたちがこんなに!! ……でもっ!!)
正直なところ、メロンパフェを買いたい。食べたい。
その気持ちに正直になることを誓ったシュガーは、走る構えをとった。
「わたしは、追込ウマ娘なんだーっ!!」
一気に駆け出す。小柄な身体を利用してバ群の隙間を抜けていく。
そして……!
「め、メロンパフェ、ひとつっ!!」
176 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/17 01:37:44 ID:OSTdwbi4M2
多忙のため更新頻度ダウン
177 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/18 17:33:49 ID:XXF81bYPXI
(か、買えた!!!メロンパフェ、買っちゃいましたぁー!!!)
メロンパフェ争奪ステークスをくぐり抜けたシュガーライドは、席に座ってその最初の一口を頂こうとする。
メロンクリームも練り込まれたバニラアイスから行くか、それとも三日月型に切られた一切れのメロンから行くか、悩んでいると……。
「そんな!?昨日から食べたかったメロンパフェを半額で入手するチャンスが…こんなのあんまりですわぁぁぁぁぁっ!!」
(ん!?)
レジの方から悲鳴のような叫びが。
恐る恐る振り向くシュガー。その目に映ったのは、芦毛のウマ娘が芦毛のウマ娘にプロレス技をかけている姿だった。
「絶対に許しませんわよ!ゴールドシップさん!」
「いでででででで!わ、悪かったってマックちゃん!まずはこれほどいてくれよ!?」
(あ……)
技をかけている方のウマ娘に、哀れみを覚えたシュガーは……立ち上がって、持ってきた。自分の買ったメロンパフェを。
「あの……メロンパフェ、食べます?ぜんぶ」
「ええっ!?いいんですの!?」
その芦毛のウマ娘は、シュガーライドの突然の申し出に目を丸くしたが、どうぞどうぞというシュガーの気持ちを汲み、しぶしぶパフェを受け取った……。

「______はぁ、助かったぜ。サンキューな、えっと……」
「あ、シュガーライドです。そちらのお名前は?」
「アタシはゴールドシップ。で、あっちで嬉しそうにメロンパフェを食べてるのが……メジロマックイーンだ」
(……めじろ?)
178 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/18 17:35:35 ID:XXF81bYPXI
ゴールドシップから名を聞いて、シュガーは何かを思い出しかけていた。
(えと……そ、そうだ!わたし、会ってます!メジロブライトさんとメジロライアンさんに!!)
完全に思い出した。学園に来て以来、メジロという名のついたウマ娘2名と知り合っていたことを。それをゴールドシップに話してみると……。
「へぇ、オメーすげぇな!メジロといえばレースでもエリート揃いのお金持ちのトコだ。学園に来てすぐ二人と知り合えるなんてよ」
(おかねもち!?)
つまりはお嬢様ということになる。
「あの人も……」
パクパクとメロンパフェを食べているマックイーンを見て、”とてもそうは見えない”と思うシュガー。
「______今、お嬢様には見えないとか思いませんでした??」
「ひっ!」
いつの間にかパフェをたいらげたマックイーンが、眼前に立っていた。
驚くシュガーに、マックイーンは話を続ける。
「改めまして、メジロマックイーンですわ。先程のことは感謝してもしきれません、シュガーライドさん」
「あれ?わたし自己紹介しましたっけ……」
「ブライトから話を聞いていましたの。あなたも私と同じく、ステイヤーを志すウマ娘……食後の運動も兼ねて、併走しませんこと?メジロの名を背負う覚悟とその実力、お見せしますっ!!」
179 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/19 16:02:07 ID:KpsCyYsVd.
「……シュガー、あなたの人脈が怖いわ……」
トレーニングの時間になり、グラウンドにやってきたシュガーライド。トレーナーはその隣に立つメジロマックイーンを見て、シュガーが短期間で実力派の先輩ウマ娘たちと知り合えていることに唖然としている。

「では、早速始めましょう」
「はいっ、よろしくお願いしますっ!!」
先の一部始終と併走の件をトレーナーに伝えた後、二人はスタート地点に立つ。
距離は同地点からの一周2000m。シュガーライドの要望に、マックイーンが応えてくれた形だ。
(マックイーンさん、どんな走りをするんだろう?)
(シュガーライドさん……メイクデビューを勝ったばかりとはいえ、ブライトが目をかけるその実力、警戒していきますわよ!)
未知なる相手との走りに心を弾ませるシュガーと、始まったばかりの実績……それ以上の力を警戒するマックイーン。両者思惑は違えど、やる気は十分。
「じゃあ、そろそろ行くわよ。よーい……」
トレーナーの合図で、二人は構える。そして、
「ドン!」
スタート。それと同時に瞬時に走り出す両者。
本番のレース基準で考えても出遅れはないだろうと感心するトレーナーは、すでにかなり先を走っている二人を見守り始めた。
(後ろから……追い込むつもりですわね?)
最初のコーナーを通過し、先頭を走るマックイーン。
おそらく自身の4バ身ほど後ろを走るシュガーの作戦を予想しながら、ペースをキープする。
(それならば、最終コーナーで一気に引き離します!)
180 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/19 16:03:51 ID:KpsCyYsVd.
______時を同じくしてシュガーライドは、マックイーンを追うように走っている。
(すごいっ、これがメジロマックイーンさんの走り……うん、楽しいっ!)
自分の気持ちをわくわくさせてくれる相手との併走……というかこれはもはや模擬レースであるかもしれないが、シュガーライドの気分はじわじわと高まっていた。
そしてそのまま、バ身を維持したまま2コーナーを曲がる。
仕掛けどころはまだ先。このレースの行方は……>>181
181 : お姉さま   2024/08/19 18:51:18 ID:lJkdsk72qI
アタマ差
182 : アナタ   2024/08/19 18:54:21 ID:KpsCyYsVd.
>>181
アタマ差の、……!?
183 : 貴様   2024/08/19 19:00:41 ID:KpsCyYsVd.
勝敗は委ねるってことでいいですね!?!?!?
184 : 貴方   2024/08/19 19:01:06 ID:lJkdsk72qI
>>183
よろしくお願いします
185 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/20 19:21:53 ID:3rDdJ1X6ss
二人ともに一歩も譲らず、余力を保ったまま、最終コーナーを曲がる。
ここからが本当の真剣勝負。逃げ切りか、差し切りか。
「このタイミング……ですよねっ!」
後方にいたシュガーライドが得意の加速走法でメジロマックイーンを追い始める。
前回のレースで勘を養ったのか、踏み込みには自信が宿っていた。
ここでスパートをかければ確実に追い越せる、その気持ちを胸に前へ進出していくシュガー。
(なるほど、これが……!ですが、私もメジロのウマ娘として、負けるわけにはいかないんですのよっ!)
未熟で小柄な身体からは想像も付かない脚を使ってくるシュガーに対し、マックイーンは一歩も引かない、屈することはない。
前の方を走ってはいたものの、脚は十分に溜まっている。
それを、一気に、爆発させる……!!
「はぁぁぁぁぁっ!!」
「だぁぁぁぁぁっ!!」
最終直線。二人は激しい競り合いに突入。
並ばせない、追い抜く……両者の意思もぶつかり続ける。
この場の空気感はもはやGIレースに匹敵するほど熱く、高まっていた。
が、そんな時間も、終わりの時______。
「えー……ビデオカメラによる写真判定の結果、1着はアタマ差でメジロマックイーンでした。シュガーライドもお疲れ。すごい走りだったわ」
ゴールしてから10分もの映像判定が行われ、今回の併走はメジロマックイーン1着という結果で終わりを告げた。
「はぁっ……負けたけど……やっぱり走るのってすっごく楽しいです!」
「私も、併走とは思えないほどの熱いレースができて、とても楽しめましたわね」
シュガーライドとメジロマックイーンは握手を交わし、公式戦での再戦を誓う。
願わくばそれは、GIレースで。
186 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/22 06:45:03 ID:gATzVCGUrs
メジロマックイーンとの併走から数日後。
札幌ジュニアステークスへの出走を間近に控えたシュガーライドは、いつものようにトレーニングを終えていた。
普段通りの生活を送りながらも、毎日少しずつ、何かが違ってきていると心のどこかで思っている。走るたび、鍛えるたびに自身の成長を感じているのだ。
(あれ?なんか今日、まだ走れそうです……)
グラウンドのベンチで水分補給をしながら、シュガーは予感めいたものを覚える。
脚に余裕があり、軽いペースならもう少し走れるかもしれない……と。
そう思うと、はやる気持ちを抑えられなくなっていく。
走れるなら、もっと走りたい。
「トレーナーさん!えっと……」
「シュガー、どうかした?」
「なんだか落ち着かないので、くーるだうん行ってきてもいいですか!!町中を走りたいですっ!!」
こうしてシュガーライドはトレーナーに許可をもらい、学園の外……町中での外回りに向かうのだった。


>>187(外回り中に起きる出来事と、出会うウマ娘)
187 : トレーナーさま   2024/08/22 07:17:54 ID:dAywy.xSII
何かをやらかしたと思われるパーマー、ヘリオスとそれを鬼の形相で追うエアグルーヴに巻き込まれ、何故か一緒に爆逃げするハメに
188 : トレぴ   2024/08/22 07:23:15 ID:gATzVCGUrs
(わたし追込なんですけどね!?)
189 : トレーナーさん   2024/08/22 07:34:31 ID:dAywy.xSII
火事場の馬鹿力って事で…(忘れてた何て言えない…)
190 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/22 10:26:07 ID:gATzVCGUrs
「はっ、はっ、はっ……」
ビル街・商店街・公園______学園周辺のエリアを、スローペースだが軽快に走るシュガーライド。
時間あたりの進む距離は比べものにならないが、走る速度は人間のランニングレベルだ。
「マイル~中距離はよく出来ているから、長い時間・距離を走ることを見据えたスローペーストレーニングを」というトレーナーのアドバイスを受けての走法である。
(これっ、けっこうっ、きますね)
実はランニングを始めてから1時間は経過しているのだが、シュガーは身体的に少し疲れが見えてきたようだ。それもそのはず、5周は走っているのだから。
(そろそろっ、どこかでっ、休憩を……ん?)
公園まで戻ってきたころ、背後から複数の激しい足音を感じるシュガー。
本能的にウマ耳が感じ取る。まだ距離は遠い。しかし近づいてくる。凄い勢いで走っているのは間違いなかった。
「お前らぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「ひぃぃぃぃぃぃ!!」
「わぁぁぁぁぁぁ!!」
(……!?)
振り向くと、悲鳴を上げながら逃げるウマ娘が二人。そしてそれを鬼の形相で追い掛けるウマ娘が一人。
逃げるウマ娘たちはとてつもないスピードで、駆け足だったシュガーを追い抜いていく。
「キミ、ちょっと手伝ってくれないか!?後ではちみードリンクをおごろう!」
「手伝うって何を!?」
「あの二人を捕まえたいのだッ!!」
追っていた3人目のウマ娘が、シュガーに声をかけてきた。
前を走る二人を捕まえれば、公園で売っているはちみーをおごってくれるとのことで……。
「わかりました、やりますっ!」
急に元気がわいてきたシュガー。
トレーニング疲れが減っていき、それはどんどんやる気へと変化していく。
191 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/23 07:41:41 ID:SaXs3.9nUA
______スイッチが、入った。
そこからはもう、ノリノリである。
シュガーより少し先行したウマ娘を一瞬で追い抜くと、前を逃げる二人にぐんぐん迫っていく。
(……!! とてつもない加速力だ。あの娘は一体……!?)
そのウマ娘______エアグルーヴは、シュガーライドの加速力に驚きを隠せない。
彼女は、自身と同じティアラ路線を目指すニシノフラワーに近いものを、シュガーから感じていた。
そしてわずか数秒後。
「おふたり、捕まえましたぁ~!!」
「……そ、そうか!助かった!今向かう!」
少し離れたところで、逃げていた二人______ダイタクヘリオスとメジロパーマーを捕まえたことを知らせるシュガーの声を聞いて、エアグルーヴは急いで向かうのだった。

「おいしぃ~!生き返りますねぇ……」
「無理させてすまなかったな。2杯目もいるか?」
「いえいえ、大丈夫です!ありがとうございます、エアグルーヴさん!」
救援に来た他の生徒にヘリオスとパーマーを引き渡した後、シュガーは最初の約束通り、エアグルーヴにはちみードリンクを奢ってもらっていた。
「にしても、凄い走りだったな。キミは……シュガーライドは、何を目標に走っているんだ?」
「もくひょう……ですか。なんでしょうね、今はまず……GIで勝ちたいですっ!」
「そうか。走り始めたころの目標は、それくらいがまだちょうど良いだろう。頑張れよ」

こうして、はちみーとエールをもらったシュガーライドは、るんるんとした気持ちで学園に戻るのだった。
(フラワー……だけじゃない。脚質は違うが、”アイツ”に近い何かを感じるな)
エアグルーヴはそれを見送りながら、過去に偉大な戦績を残したあるウマ娘を内心に思っていた。
192 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/24 19:31:40 ID:LfzwbDgqJw
そしてレース当日。
前日から航空機で現地入りし、ビジネスホテルに宿泊したシュガーとトレーナーは、さっそく札幌レース場へと足を運んでいた。
「どきどき、です」
「東京とは気温差があって少しばかり寒いし、緊張してたら筋肉まで固まっちゃうわよ?」
「そこはだいじょうぶです!ホテル出るまでしっかり体操してたので!」
シュガーにとっては2回目の公式戦。初陣よりは緊張感が増している。
が、札幌の寒さも緊張もはねのけて、彼女は走るのだ。

当日の天候・バ場状態>>193
193 : お前   2024/08/24 20:09:16 ID:ur/MDPxx9A
曇 稍重
194 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/24 21:10:13 ID:LfzwbDgqJw
そしてレース当日。
前日から航空機で現地入りし、ビジネスホテルに宿泊したシュガーとトレーナーは、さっそく札幌レース場へと足を運んでいた。
「どきどき、です」
「東京とは気温差があって少しばかり寒いし、緊張してたら筋肉まで固まっちゃうわよ?」
「そこはだいじょうぶです!ホテル出るまでしっかり体操してたので!」
シュガーにとっては2回目の公式戦。初陣よりは緊張感が増している。
が、札幌の寒さも緊張もはねのけて、彼女は走るのだ。

はねのけられないものが、一つだけあった。
それはあらゆる生き物が抗えない自然の摂理……天気である。
夜間降った雨の影響で、現時点では稍重な芝状態だ。
控え室のテレビで会場の天候を聞きながら、トレーナーは少し不安な気持ちになっている。
(札幌レース場の芝は水を吸いやすくて重くなりやすい洋芝……シュガーのバ場適性がはっきりしてないけど、2戦目でこれにぶちあたるのは厳しいかも)
シュガーライドの圧倒的な終盤加速力……それはやわらかく重い芝でも発揮できるものなのか、気がかりはそこにあった。無理して全力を出せば、通常の芝よりも故障リスクが高まるかもしれない。
「レース、たのしみだなぁ!」
既に体操服に着替えて準備は万全の様子なシュガーライド。
“わくわくしている”シュガーに、今の状況をどう伝えようかと悩むトレーナー。

どう伝えるか 「>>195
195 : お兄さま   2024/08/24 21:44:01 ID:ur/MDPxx9A
シュガー、今の札幌レース場のバ場状態を簡単に言うと「水を吸った高野豆腐」のようなものだ。
普段のバ場が「乾いて固い高野豆腐」なら、今ここ札幌のバ場は「水を吸った高野豆腐」のようにとてもやわらかくて不安定なバ場になっている。
いつものバ場のつもりで走ると通常の芝よりも故障リスクが高いから、1着になってもらいたいのは勿論だが...決して無理だけはするなよ。
196 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/25 05:55:38 ID:uo1xRLbbhA
(トレーナーさんは女性なんですけどね!?)
197 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/25 06:10:31 ID:uo1xRLbbhA
「ねぇ、シュガー」
「なんですか?トレーナーさん」
きょとんとした表情で振り返るシュガーに、トレーナーはこう言葉をかけた。
「シュガー、今の札幌レース場のバ場状態を簡単に言うと「水を吸った高野豆腐」のようなものよ」
「こ、高野豆腐ですか!?」
「ええ。普段のバ場が「乾いて固い高野豆腐」なら、今のバ場は凄く柔らかくて、重い。ヒトレベルで見てもかなり走りづらいわね。つまり……無理はしないで」
トレーナーからの忠告を聞いて、シュガーライドは表情を固める。数秒の間、けわしくなる。そして。
「わかりましたっ!でも、やっぱり走るなら勝ちたいので!できるかぎりやってみます!」
すぐに表情が明るくなり、いつものようなはつらつとした返事をした後、シュガーはターフへと向かっていった。
(大丈夫かしら……)
根本的な解決に至ることはない。だが、やはりトレーナーとしても……安全な完走と輝かしい勝利を両立させたい。
だからもう、観客席から祈るしかないのだ。

札幌ジュニアステークス 10人 芝 稍重
シュガーライドの枠>>198
198 : お姉さま   2024/08/25 06:25:15 ID:FnR1Ac3Xuc
8番
199 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/25 10:09:11 ID:uo1xRLbbhA
『さあ、ここ札幌レース場でまもなく始まります、GIII札幌ジュニアステークス!
昨晩の雨の影響で、稍重の芝状態。デビューしたての若駒たちはどう挑むのか!?』

実況の後、出走ウマ娘たちが続々とターフに姿を見せるその中に、シュガーライドの姿もあった。
(あ……たしかに、いつもの芝とは違います……)
ゲートへ向かう際、一歩一歩芝を踏みしめ、感触を確かめるシュガー。
普段とは違うその地面に心身を慣らすように、じっくりと歩く。
今回も1番人気として推され、本人もやる気は十分だ。
『各ウマ娘、次々とゲートイン。1番人気シュガーライドは外枠8番……』
ほぼ大外となる8番ゲートに収まることになったシュガー。
この重バ場の中、大外ではロスが大きいという見解もある。
それを期待の新星がどう攻略するかがこのレースの話題となっていた。
(お客さんたちの……ねっき?もあって、寒いっていうのはあまり感じないです……少し暑いくらいかも?)
ゲートの中で構えながら、シュガーは会場の熱気を肌で感じていた。それは札幌の寒さを吹き飛ばすレベルで、観客から送られているものである。
GIIIでこの熱量なのだから、GIともなればどれほどなのだろうと胸を高鳴らせている間に、出走ウマ娘が全員ゲート入りをした。
『さあ、各ウマ娘ゲートに入り体制完了。今……スタートしました!』
レース展開>>200
200 : トレーナーちゃん   2024/08/25 10:15:33 ID:MgrNa1BaLk
スタート直後、稍重のバ場で転倒する者も居たが特に大きな混乱もなく第1コーナーへ
そのまま第2コーナーも特に変化なくクリアし向正面へ。この時点でシュガーは前から3番目
第3コーナーを抜け、最終コーナーを超えて最後の直線に入ったところで仕掛けるシュガー
驚異の差しとまではいかないが2番手、先頭をあっさり抜き去り後続と2バ身差でシュガー1着
201 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/25 12:49:57 ID:uo1xRLbbhA
ゲートが開く。
曇り空の札幌レース場に、10人のウマ娘が一斉に飛び出していく。
『誰が行くのか……おっと7番が転倒!後方に位置取る形となってしまいました』
稍重なバ場に脚を取られてしまい、1人が軽く転倒。前に行こうとしていたが、後方集団に入ることになった。
(あ、危なかったです!)
シュガーライドは後方から外目3番手の位置。転倒したウマ娘を回避するのに、少し前の方に位置取った流れだ。
(でも、マイルってペースが速いんですよね?それならここの方が上がって行きやすそうですっ!)
2000mの中距離よりも距離が短い1800mのマイルレースは、全体的にウマ娘たちのペースが上がる。なので前を狙いやすい位置にいるこの状況は、シュガーにとって有利と思えた。
『各ウマ娘、平坦さが特徴の直線を駆けて、1コーナーにかかります。先頭は現在4番。逃げています。それを追うように2番。最内1番は現在4番手、虎視眈々と前を狙っているのか』
半径の大きな二つのコーナーを抜けて、ウマ娘たちは向正面へ。
1000m通過タイムは62秒8とややスロー。3コーナーへかかる頃には後続のウマ娘たちのペースも上がっていく。
『3コーナー、そして4コーナーへ。各ウマ娘、ペースが上がっていきます。1番人気シュガーライドは現在3番手。さあどこで仕掛けるのか!』
マイルのペースの速さに押されたシュガーは、前から3番目の位置まで来ていた。
(すっ、少し速すぎたかも……いや、いけます!)
長い距離への適性はあるものの、短めでペースが速くなりがちなマイルレースには少し身体が慣れないシュガー。しかし、彼女の瞳に曇りはない。稍重な芝であっても他のウマ娘に後れをとっておらず、いつでも加速していける状況だ。
202 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/25 12:56:22 ID:uo1xRLbbhA
『さあ4コーナーを回って、最終直線に入った!先頭は変わって1番!最内から切り込むように前へ進出!』
観客の大歓声を浴びる最終直線。ロスの少ない最内を走っていた1番のウマ娘が先頭に立つ。
(わたしもっ、行っちゃいますっ!!)
「はぁぁぁぁぁっ!!」
ここでシュガーライドもラストスパートをかけに行く。
まず前のウマ娘を抜き、そして1番のウマ娘へ迫る。
『外からシュガーライドっ!並んだ!並んだ!残り100m!シュガーライドあっさりと突き放し、2バ身差でゴールインッ!』
並びかけると同時にさらにギアを上げ、あっという間に追い抜く。そしてその勢いのまま突き放していき、シュガーが先頭でゴールしたのだった。
「はぁっ、はぁっ……やったー!!」
両手を挙げて喜ぶシュガーライド。歓声が彼女を包む。
(少し苦しい場面もあったかしら?でも、あの娘はやりきった……)
無敗の2勝目。声に出さずとも内心で大喜びするトレーナー。
そして、新たな目標を決めたことを、シュガーは控え室で伝えられた。
「シュガー。次は……GIよ。12月の中山レース場で、ホープフルステークスに出るのよ」
「つ、ついにですかっ!やった!GIっ!GIっ!」
トレーナーからGI出走の話を聞いて、レース疲れもないように小躍りで喜ぶシュガーライド。次勝てば、彼女の夢の一つが果たされる。

今後の展開>>203>>206
203 : お前   2024/08/25 13:07:34 ID:w2LRFdRZvM
ホープフルステークスはシュガーが初めて挑むG1だ。
というわけで先達に意見を聞こうと思いたち、ホープフルステークスを勝ったメジロブライト、ナリタタイシン、アグネスタキオン、アドマイヤベガ(何れか1人でも大丈夫です)に話を聞きに行くことにした
204 : 相棒   2024/08/25 18:32:03 ID:MgrNa1BaLk
1着だと賞金が7000万円も貰えるんですか!?
205 : お姉ちゃん   2024/08/25 20:13:29 ID:n/CF2o/1Xs
スパートはウマ娘それぞれ、いつでもよいのです〜
わたくしは自分だけのタイミングを
トレーナーさまに教えて頂きましたわ〜。
206 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/27 05:15:59 ID:lGbejPbPog
あげ安価下
207 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/27 10:25:06 ID:lGbejPbPog
過疎ってしまうのは仕方ないから書きますか...
208 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/27 13:25:24 ID:lGbejPbPog
札幌ジュニアステークスでの勝利から数日後。少し涼しくなってきた9月の初め。
シュガーライドは、初のGI・ホープフルステークスに向けて、
ホープフルステークスの出走・勝利経験のあるメジロブライトに話を聞くことにした。

トレーニングを終えてすぐ、ブライトの分も水を持ってきたシュガーは、すぐさま彼女にそれを手渡すと話の時間を作ってもらえるようお願いする。
ブライトは快く応え、水分を摂りつつ木陰での雑談に入った。
「アドバイス、でございますか~?」
「はいっ!今度、わたしも出るんです、ホープフルステークスに!」
「なるほど~」
初めてのGIに目を輝かせるシュガーに、ブライトは少し言葉を考える。
(何を言えば~……よいのでしょうか?)
共に併走をする中で、目の前の少女は凄いスピードで成長を遂げている……いつかは自分も追い抜かされるかもしれない、と思うほどに。
そんな少女に、自分がかけてやれる言葉は何だろうかと。
考えるブライトだが、一向に浮かばない。
(……そうですわ!“わたくし”ではなく……)
その時だった。ふと脳裏に浮かぶのは、自身がトレーナーから言われた言葉。
今のシュガーに伝えるなら、それが最もふさわしいとブライトは思った。
「あなたも~……私と同じく、追込みのウマ娘ですわよね~」
「は、はい」
「でしたら~……追込みというものは、レースのギリギリまで後ろにいて、最後の最後に速さを爆発させるようなもの……ですが、そのタイミングはウマ娘それぞれ。あなたも私も、それぞれですのよ~」
209 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/27 14:03:02 ID:lGbejPbPog
追込みのスタイルは、
どこで仕掛けるかでほぼすべてが決まると言っても過言ではない。
だが、レースに正解はない。様々な条件に左右されるからだ。
「GI……たくさんの”勝ちたい”が集まってきますの~。それはもう、押しつぶされそうなくらいに……」
「そ、そんなにですか?」
ブライトは、思い出していた。
初めてGIを走ったあの頃を。
周りのウマ娘から感じる、”勝ちたい”という気持ち。
それは集まりすぎて、圧を感じるレベルにまで膨らむ。
そんな中で自分を保って走るのは、とても難しいものである。
「”勝ちたい”にも人それぞれ。だからこそ、自分は自分のペースで、いいんですのよ~」
「自分の、ペース……」
210 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/27 14:17:08 ID:lGbejPbPog
シュガーは実は、少し迷っていた。今の走り方でいいのか、GIで通用するのか。
ペース配分、仕掛けるタイミング……さまざまな部分に迷いを感じていた。
(なんか……掴めた気がします、正解かどうかはわからないですが!)
だが、同じ追込みのスタイルで、なおかつ大先輩のメジロブライトからアドバイスをもらえたことで、シュガーは背中を後押しされたような気持ちになる。
「わたしは……わたしの走りを……」
「ですわ~。あなたにはあなただけの走りが、きっと出来るようになりますわ~」
自分だけの走り……それは、まだちゃんと見えていないけれど、ずっと続けていれば見つけられる気がした。
「ありがとうございますっ、ブライトさん!」
「いえいえ~。また走りましょうね~」
こうして、ブライトと別れたシュガーは、先ほどよりも自信に満ちた表情でトレーニングに励むのだった。

「______ブライト、さっきの娘は?」
「あら~、トレーナーさん。ふふ、将来のライバルですわ~」
声をかけてきた自身のトレーナーに、ブライトは楽しそうな表情で返すのだった……。
211 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/27 14:17:49 ID:lGbejPbPog
お金の話は解釈が難しいのでいったん保留で。
>>212
212 : お姉ちゃん   2024/08/27 14:24:04 ID:cNLt3EFnRU
今日は学園もトレーニングもお休みの日。せっかくだからどこかへお出かけしようかな?
213 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/27 14:54:48 ID:lGbejPbPog
それからしばらく経ったある日のこと。
「お休みだぁ~!!」
寮の、他には誰もいない一室に、シュガーライドの元気な声が響く。
ここ最近は練習はトレーニング続きだったため、今日は休日となったのだ。
(先輩たちは遠征とかでいないですし、今はわたしひとり……)
スペもスズカも、それぞれの用事で東京を離れている。
なので、今はシュガーのみだ。
「おやすみで……わたしひとり……暇ですぅ~!!」
残念なことに、ニシノフラワーやスイープトウショウといった同年代のウマ娘たちは、休みではない。
話し相手も遊び相手もいないとなると、子供としての本能が叫ぶのだ「たいくつだ~!」と。
(……こうなったら、お出かけしましょう!なんかお買い物とか!)
思い立ったシュガーは、さっそく外に出る準備をし始めた。
クローゼットから私服を取り出し、着替える。

私服のデザイン>>214
214 : お前   2024/08/27 14:58:03 ID:cNLt3EFnRU
薄いピンクのKawaii系ワンピース
215 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/27 15:24:13 ID:lGbejPbPog
「学園に着てからは、あんまりお出かけすることがないので……久しぶりですねこれ着るの」
前の小学校のときから着ている、薄いピンク色のふわふわ系ワンピースだ。
実は長袖スタイルもあるので、オールシーズン着れる優れものである。
その後は髪を整えたり歯を磨いたりして、準備完了だ。
「よしっ。……なんですけど、どこに行こうかな?」
学園周辺の地理は外回りで大方知り尽くしたつもりではあったが、お出かけスポットまでは把握していなかったシュガー。
着替えたはいいが、どこに行くかを悩み始めた。

場所>>216
216 : お前   2024/08/27 15:32:00 ID:cNLt3EFnRU
住宅街の古民家カフェ(紅茶とタルトが美味しいと生徒の間で評判)
217 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/27 15:45:00 ID:lGbejPbPog
昨日にでも同室の二人に聞いておけばよかったと思うシュガーだったが、
ふと思い出す。
(わ、わたしには……これがあるっ!)
どや顔で取り出したのは、自分のスマホであった。
「そうです、こういうときには検索してみましょう。えっと、トレセン学園周辺のお出かけスポット……」
検索エンジンを使い、出かけて楽しそうな場所を調べてみることにした。すると、
「ふむむ、紅茶とタルトのおいしい古民家カフェですか……」
住宅街にあって学園生徒たちからの評判も良いという、古民家カフェが気になったシュガー。値段は結構お手頃で、シュガーの今の財政状況でも大丈夫そうではあった。
「こういう所、一度ひとりで行ってみたかったんですよね……よし、ここにしましょうっ!」
目的地を決めたシュガーは、外へと飛び出していくのだった……。

>>218>>220
218 : トレピッピ   2024/08/27 17:04:38 ID:cNLt3EFnRU
(トレセン学園前のバス停から)3つ先のバス停で降りて徒歩約5分みたいですね・・・
バス運賃は180円(ウマ娘割引)で、古民家カフェの目印は「赤い屋根」・・・よし!

待つ事約10分、トレセン学園前バス停にやって来たバスに意気揚々と乗り込むシュガーであった。
219 : トレーナー   2024/08/28 00:00:03 ID:02yNAR8CZA
無事バスを降りたシュガー。
古民家カフェの前には行列が出来ていたが殆どがグループ客だったので、名前を書いて少し待つと店員さんにすぐ1人席に案内してもらえた。
オススメは九州のブランド苺「あまおう」をたっぷり使ったタルトと、店主自らインドまで茶葉を買い付けに行くダージリンティーのセット。
注文して少々待つと、運ばれてきたタルトは美しい芸術品のように白皿に盛られ、紅茶はノリタケのカップ。これで800円とは驚きの安さだ。

肝心の味はというと、タルトも紅茶もどちらもとても美味しくのんびり優雅な一日となった。
220 : あなた   2024/08/28 01:14:13 ID:IbLcncqnnc
そして学園に戻ると未知のスイーツ臭を漂わせるシュガーに目敏く反応したマックイーンにどこのどんなスイーツなのかを滅茶苦茶問い詰められ、呆れたゴルシにダイナミック頭陀袋運送されるという怒涛の展開に戸惑うのであった…
221 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/28 03:41:42 ID:mDI42uMagA
目的地までは、学園の近くにあるバス停からの公共バスで移動する。
バスが来るまでは約10分。
(この待ち時間も、お出かけのだいごみ……ですね)
シュガーライドはとりあえずベンチに腰を下ろし、時間を潰すためにスマホを操作する。

(バスの進路、もーいっかい確認しときましょうか)
時刻表アプリを開き、自身が降りるべきバス停を再確認するシュガー。
アプリによれば、ここから3つ先のバス停が目的地に一番近い。

運賃はウマ娘価格で180円……だが、シュガーライドは実年齢の影響で子供割も適用され、なんと片道90円だ。あと数年で使えなくなるのが勿体ないので、積極的に使っていきたいと思っている。

「えっと、バス停を降りたら約5分歩いて……赤い屋根が目印の古民家カフェですか、よし」
降りてからの進路も確認するなどして、有効に時間を潰すシュガー。
そしてあっという間に10分が過ぎ、やってきたバスに意気揚々と乗り込むのだった。
222 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/28 04:35:18 ID:mDI42uMagA
信号待ちもあまりなく、バスに揺られること5分……。
シュガーは目的のバス停に到着した。住宅の並ぶ密集地だ。
「よしっ、ここから歩いて5分でしたよね。……待って?」
歩き出そうとしたとき、シュガーはあることに気付く。
(走れば数十秒でいけちゃうのでは!?)
さいわい、ここにはウマ娘専用レーンがあり、町中でも安心して猛スピードで走ることが出来るのだ。
「それじゃ、さっそく行きますか!」
目的地の古民家カフェに向かって、シュガーは勢いよく走り出すのだった。
その目論見通り、数十秒後……。
「ふぅ……ついたーっ!!」
赤い屋根の建物には、少ないが行列が出来ている。
古民家カフェにたどり着いたシュガーは、名簿に名前を書いて待つことにした。

>>223(店の外観、内観の説明)
223 : お姉さま   2024/08/28 05:09:46 ID:02yNAR8CZA
外観はキレイにリノベされているが、内装は元々の古民家(和風)を最大限生かした作り(床は畳なので靴は脱いで下駄箱へ)
224 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/28 06:51:39 ID:mDI42uMagA
待ち時間が少しあるようなので、とりあえずお店の外観を観察してみるシュガー。
(ふむふむ……古いお家と書いて古民家ですが、建物はすっごくきれいですね)
昔からある和風の建物ではあるが、屋根や壁は綺麗に塗り直されていて、古いという言葉を感じさせないものであった。
お客さんは障子のようなドアを開いて入っていくが、軋むような音も一切せず、スムーズに開くらしい。ここも手入れが行き届いていると、シュガーは内心で驚く。
(中も……気になりますね!)
早く自分の番にならないだろうかと、うずうずするシュガー。
そしてしばらくすると、シュガーが先頭になった。
「いらっしゃいませ。1名様ですね。こちらの席にどうぞ」
「わくわく……」
女性の店員に案内されながら、シュガーはお店の内部を観察する。
まず中に入ると、靴を脱ぐ必要があった。
良いお客さんが多いのか、みんな丁寧に下駄箱へと収納しているようだった。
(おお……なんだか、おばあちゃんのお家みたいです)
通路を歩きながら、去年の長期休みに帰省した祖母の家を思い出すシュガー。
いくつか設けられた広間はみな畳部屋で、木目調の机と椅子が数台設置されている。
掛け軸のようなものもあり、和室といえば!という感じであった。
シュガーの案内された部屋も同じような感じであり、数名のお客さんが食事をしている。
「メニューをお決めになりましたら……」
「あ、もう決めてます!タルトと紅茶のセットで、800円のやつです!」
「かしこまりました」
席に座ったシュガーはさっそく、ネットで見たメニューを注文した。
後はまた、待つのみだ。
225 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/29 03:16:37 ID:xvjtdNSF4s
待つこと10分ほど。メニューが到着した。
「こ、これは……!!」
テーブルに並ぶそれに、思わず声を出して驚いてしまうシュガー。
大きくて赤く丸いイチゴが、薄切り状にこれでもかと飾られたタルトは、食べる前から心まで甘酸っぱくなりそうである。
そして普段はあまり飲まない紅茶だが……少し香りを吸ってみるだけで、
とても温かくなる……というのが彼女の今の心境だ。
店員曰く、店長がインドまで買い付けに行くダージリンティーだという。
「さ、さっそく……いただきます」
手を合わせ、次にフォークを持ってタルトから一切れを出し、口内へと運ぶ。
(……!!)
噛んだ瞬間、口から脳に途轍もない衝撃<インパクト>が走るのを、シュガーは感じた。
1口、2口と噛むたびに、タルトから来る濃厚なうまみが食欲を刺激する。
外側のクッキー生地も、中のクリーム生地とイチゴも全てが美味い。
(止まりません……いくらでもいけちゃいそう!)
しかしよく噛むことは徹底しているので、少し時間をかけてタルトをしっかりと堪能し終わった。そして、シュガーは紅茶にも手を付けてみることにした。
「紅茶……砂糖もらうの、わすれてました……」
気付くのが少し遅かった。今更店員を呼ぶのも気が引けるので、とりあえず飲んでみる……すると。
「ごくっ、……あ、おいしい……」
すっきりとした味わいとほのかな渋みは、紅茶初心者であるシュガーにも飲みやすいブレンドを施された結果である。
(なんか……良いですね、こういうの)
紅茶をしっかり楽しめたことで、大人の階段を登った気がして、シュガーは少しうれしくなるのだった。
226 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/29 07:54:53 ID:xvjtdNSF4s
(ほわぁ……おいしかったです……)
美味しいスイーツを堪能し、ふわふわとした気持ちで徒歩で帰っているシュガー。
一人で外食するのも初めての経験だったので、とても嬉しそうな表情を浮かべている。
(次は、トレーナーさんもいっしょに行きましょうか……)
ここまで美味しかったものは、他人とも共有したい。ということで次来るときは、自身のトレーナーと一緒に来ることを誓うシュガーライド。できればGIを勝った後で。
しばらく歩いてとりあえず学園に寄ってみると……。
「パフェ、パフェですわっ!」
「チキンっ!チキンしかありえねーだろッ!」
(んんんんん??)
取っ組み合っている二人の芦毛ウマ娘を目撃する。
なんと、メジロマックイーンとゴールドシップであった。
227 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/29 07:55:09 ID:xvjtdNSF4s

「なんなんですかお二人とも!!なにをあらそってるんですかー!?」
______慌ててシュガーが仲裁に入ると、二人は落ち着きを取り戻すのだった。
学園内に待避し、噴水広場のベンチに腰掛ける3人。
「今さっきまでトレーニングしてたんだけどよ、その後に何を食べるかでこうなってたんだ」
「トレーニングの後にチキンなんて……胃がもたれますわよ」
「スイーツも大概だと思うぞ??」
(はわわわ……)
険悪なムードに内心で焦るシュガー。
そのときだった。
「くんくん……シュガーライドさん。あなた、先ほどまでスイーツを食べていたのでは?」
「えっ」
まさか、とシュガーは驚く。
少し自分の匂いを嗅いだだけで、それを見切ってしまったマックイーンに。
「えっと……バスでちょっと行ったところの古民家カフェでタルトと紅茶を」
「タルトですって!?シュガーさん、そのお店のことを詳しく!できたら今から私と2食目を______んんーっ!?」
「わかったから!アタシがいくけど落ち着けって」
さらに問い詰めてきたマックイーンを頭陀袋に放り込んだゴールドシップは、シュガーから詳しい場所を聞くと、そのままマックイーンを連れて行ってしまった。
(な、なんだったんだろう……)
瞬間的な風を吹かせて去って行く、台風のような存在だと二人に感じたシュガー。
こうして、シュガーの休日は過ぎていくのだった。

>>228
228 : アネゴ   2024/08/29 09:02:06 ID:chJMStQpXQ
今日は早朝から並走トレーニング。
相手は足の速いスプリンターの方だって聞いたけど、一体誰だろう?
229 : トレぴ   2024/08/31 12:10:05 ID:cbfGFXpcvM
ハチャウマ来なくて今は落ち着いて更新が難しいです……
230 : ◆wuHHR64l1og   2024/09/01 08:49:44 ID:IWpMSoVfgE
ハチャウマの配達が確定したので更新再開。



「ふわぁ……まだねむいれす……」
10月の初め。今日は早朝からのトレーニングだ。
前日のトレーナーからの話では、今週のGI・スプリンターズステークスに出走するウマ娘が併走相手になってくれるという話だが……。
(どんなひとなのでしょうか?)
これまでも個性豊かな先輩たちを見てきたシュガー。しかしまだ、新たな出会いへの好奇心が消えることはないようだ。
そして、待つこと10分。

「______あら、小さな後輩さんですの?」
現れたのは、左耳につけた宝石の髪飾りが特徴的なウマ娘……ムーントラックであった。
彼女はシニア級で活躍するスプリンター。
クラシック時代にスプリンターズステークスを制してから、数々のレースで優秀な成績を残している一人だ。
「シュガーライドっていいます!えっと……」
「ムーントラックですわ。気軽にムーンとでもお呼びくださいませ」
(ま、また……おじょうさま!?)
ムーンと自己紹介を交わしたシュガーは、またもお嬢様ウマ娘と知り合ったことに驚く。
正確にはまだムーントラックがお嬢様だということはわからないが、すごく高そうな耳飾りとお嬢様口調が根拠となっている。
231 : ◆wuHHR64l1og   2024/09/01 08:50:58 ID:IWpMSoVfgE
二人は準備運動を終えると、さっそく芝コースのスタート地点に立つ。
「今日は併走をしながら、あなたのピッチ走法のフォーム矯正をするように、トレーナー様から任されていますの」
「ピッチ走法の?」
ムーン曰く、シュガーのラストスパートを決める技、ストライド+ピッチの強力な走りは、基本のピッチ走法を磨くことでより洗練されたものになるはずだという。
それで、ピッチ走法で短距離専門のムーントラックが呼ばれたのだ。
「______ピッチ走法といえば、マーチャンもいますよ」
「わぁ!?」
走り出そうとしたとき、横からひょいっと姿を現したウマ娘……こちらも左耳、小さな王冠の飾りが特徴のアストンマーチャンである。
「あなたも呼ばれていたんですの?」
「いえいえ。昨日、お二人が話されているのを聞いて、勝手ながらシークレットゲストとして参戦してみました。どや」
アストンマーチャンも、スプリンターズステークスと高松宮記念での勝利経験がある、優秀なスプリンターウマ娘だ。
……つまり、ムーントラックとアストンマーチャンはライバル同士。
(わわ……見えます、見えますよ。なんか、火花!)
シュガーは、二人の間に小さな火花がばちばちしているのが見えた気がした。
結局のところ併走は、3人で行うこととなった。
展開>>232
232 : 貴方   2024/09/01 09:55:24 ID:l62nHCY3Og
スタートは、ほぼ横並び。
1コーナーから2コーナーにかけて3人共一歩も譲らぬ展開。
バックストレートでも譲らず3コーナーに入ってシュガーがそろそろ仕掛けようか?という時に急に足を気にし出したムーン。
ムーンはそのままスローダウンしてずるずるとシュガー、マーチャンとの差が開いていく。
4コーナーを過ぎたらシュガーとマーチャンの一騎打ち状態に。この状況で強いのがシュガー。
得意の走法で逃げ切りたいがマーチャンも負けじと追いすがる。
結果はシュガーの1馬バ身差での勝利だったが、ムーンの失速の原因は蹄鉄が外れてしまった為であった。
シュガーにとっては何とも言えないモヤモヤ感が残るレースとなってしまった。
(2人に並走したお礼を言いたかったが、マーチャンはいつの間にかその場から居なくなっていた)
233 : ◆wuHHR64l1og   2024/09/03 07:38:05 ID:3uIMoreMhQ
シュガーも走りやすい1600mでの併走となり、早速開始することとなる。
よーいドンで、3人同時にスタート。マーチャンが先頭に立ち、シュガーとムーンが後続に控えた形だ。
(これが、GIを走るスプリンターの速さ……!)
ほぼ隣り合わせとはいえ、その位置をキープするためにはムーンのペースについて行く必要がある。シュガーは先輩ウマ娘の速さに必死に追いつきながらも、内心驚いていた。
(今日はわたくしが先輩……しっかり指導して差し上げますわ!)
シュガーを横目に見ながら、ムーンは自分のペースを慎重にコントロールする。
前を走るマーチャンに追いつきすぎず、さらにはシュガーも突き放さないベストなペースで。シュガーのトレーナー曰く、こうすることでシュガーに自然と”走るフォーム”を丁寧に身につけさせることができるという。
(それにしても……小柄な体とは思えないストライド走法ですわね)
ムーンもよく分かっている。一般的に小柄で大成したウマ娘は、小幅で跳ねるようなピッチ走法をする者が多い。しかしシュガーは、やや大きく足を開くストライド走法。
本人に自覚があるかは分からないが、おそらく股関節周りの柔軟性も非常に高いはずだ。
(おやおや。二人とも、いい空気感ですね)
先頭で逃げながら、アストンマーチャンは時折ちらりと後ろを見る。
火花散らす二人のウマ娘を、後方腕組みで見守るような気分で想うマーチャン。
自分もあの中に入ってみたいが、逃げウマ娘としてその役割は全うしなければならない。
(私にできることは……前を走って譲らないこと!)
マーチャンも得意のピッチ走法で駆けながら、1コーナーと2コーナーを通過していくのだった。
234 : ◆wuHHR64l1og   2024/09/04 18:36:06 ID:IG18.80QiY
どちらも譲らぬままバックストレートを抜け、3コーナーにかかる。
(自分には自分のタイミング……ならっ、ここで!!)
先頭のマーチャンと距離が4、5バ身開いていることを考慮し、メジロブライトから言われた話も思い出して、シュガーが動いた。
広い歩幅に急激な回転数が加わる。決めの一手のストライド+ピッチ走法で、前を走るマーチャンに迫っていく。
(ふふっ、来ましたね。ですがマーチャンも、ここからです!)
“追われている”。そう感じ取ったマーチャンの走りも、さらに強く鋭くなっていく。
彼女の場合は、小幅かつ高速回転のピッチ走法……そこに、瞬間的な爆発が発生したかのように、回転速度が急上昇する。
「だぁぁぁぁぁ!」
「はぁぁぁぁぁ!」
4コーナーを回り、早めに仕掛けた二人の一騎打ちとなった。
(くぅっ、もう少しで、追いつくのに……!)
粘るマーチャンを抜かそうとするシュガーだが、その一歩が中々届かない。
極限状態の中、考える。ここから何ができるか。
(……はっ!)
前を走るマーチャンの脚を見て、シュガーは気付く。
(すっごい回転速度です!わたしはスプリンターじゃないけど、でも、これを真似できたら……!!)
そして思い出す。今回の併走の目的を。
基本のピッチ走法を磨けば、自分の走りはもっと強く______
「もっと、もっと速く……もっと先へぇぇぇぇぇっ!!」
「なっ!?」
マーチャンが驚いたのは、雄叫びを上げたシュガーの脚がさらに伸びてきたこと。
最終直線、残り100mほどで、シュガーが迫る。迫る。そして、
かわした。
235 : ◆wuHHR64l1og   2024/09/06 20:36:29 ID:Uby7AhpjQE
うっかり扇風機を破壊してしまったので休みです……暑い
236 : ◆wuHHR64l1og   2024/09/07 13:22:10 ID:0.RVVDKV8.
「______はぁっ、はぁっ……!」
ゴール直後、ターフに倒れ込むシュガー。
彼女は一つ、壁を破った。スプリンターのマーチャンから技を盗む形で、自身のピッチ走法に新たな鍵を見つけられた。
(これは……いつか当たったら、とても強敵になりそうですね)
満足げなシュガーを見て、アストンマーチャンは新たなライバルの登場を予感し、内心で少しばかり恐怖を感じていた。
そんな2人の元に、遅れてゴールしてくる3人目が。
「……ムーントラックさん!?」
もはや歩いてきたムーンを見て、シュガーは大急ぎで駆け寄る。
ムーンは、右足を少しかばうようにしていた。
237 : ◆wuHHR64l1og   2024/09/07 13:22:30 ID:0.RVVDKV8.
何があったのかとシュガーが尋ねると、ムーンは気丈に返事をする。
「たいしたことじゃありませんわ。……落鉄、していましたの。ほら」
彼女は右足の靴裏を見せた。確かに、蹄鉄が外れかかっている。
ウマ娘にとって蹄鉄は、全力で走るために必要不可欠なものであり、それなしでレースを行おうと思えば故障のリスクは大きく高まってしまう。
「こうなってしまっていたので……朝練でケガするのは困りますから、ラストスパートあたりで私は降りさせて頂きましたわ」
シュガーが最後に仕掛けたあたりで、ムーンは競走を中止していた。
それを知ったシュガーは、うるうると瞳に涙を浮かべる。
「よ、よかったですぅー!!ケガしてなくてぇー!!」
「ちょ、大げさですわ!?泣きすぎでしてよ!!」
大泣きするシュガーをなだめるムーンを、マーチャンは遠くから傍観するような空気で眺めていた。
「……」
(落鉄……それだけでは、ないのかもしれません。マーチャンには、わかります。人がいなくなっていくタイミングが……だから、ムーントラックさんも、その”時期”が来てしまったのかもしれません……)
マーチャンは心の中で、ムーントラックに対する深読みな感情を抱く。
それが意味するものは、まだ彼女にしかわからない。

>>238
238 : ◆wuHHR64l1og   2024/09/07 20:19:16 ID:0.RVVDKV8.
安価下
239 : あなた   2024/09/07 20:30:23 ID:BvwZh6rYMo
早朝トレーニングを終えたシュガーは急いで制服に着替え、カフェテリアへ。今日は月に一度だけの「オーロラの日」らしい。

~昨晩の回想~
スペシャルウィーク「明日は『オーロラの日』で、限定メニューの『オーロラバーガー』が食べられるんですよ!」

揚げたサーモンに特製オーロラソースをかけたハンバーガーが数量限定で食べられると、急いでカフェテリアに向かったが物凄い行列!
並ぶ事数十分、ようやく順番が回って来た。「オーロラバーガー」ください!
しかし、皿の上にバーガーが2個。「?」と思っていると、『某Мのバーガーより少し小さいでしょ?だから一人前2個なのよ。』
なるほど・・・と思っていると、『只今を持ちましてオーロラバーガー完売です!』のアナウンスがあり、阿鼻叫喚しているウマ娘も居た。
席に座り、いざ食べようとすると隣の席に山盛りのサンドウィッチを抱えたウマ娘・・・スペシャルウィークさんだ。
『シュガーちゃんはオーロラ買えたんですね・・・私はダメでした・・・それでサンドウィッチをドカ食いして気を紛らわせ・・・』
・・・良かったら、1個食べます?2個あるので。
『良いの!?それじゃあこの中から代わりに好きなサンドウィッチ1パックあげる!』
じゃあ・・・ハムサンド頂きます。
満面の笑みでオーロラバーガーを食べるスペシャルウィークさん。私も一口・・・うん、確かに美味しい。

◇「また買えなかった・・・」⚡「来月まで我慢しぃや」
240 : ◆wuHHR64l1og   2024/09/07 21:45:57 ID:0.RVVDKV8.
朝練を終えたシュガーライドは、普段よりも急いで制服へ着替えていた。
そして向かったのは、いつものカフェテリア……だが、今日はいつもと様子が少し違っている。
(まだっ、まだありますように……!)
更衣室を出て廊下を駆けながら、シュガーは祈るような想いでいた。
それほどまでに今日は、狙っている食品があるのだ。
昨晩のことである。
スペシャルウィークが、シュガーにその話をしたのは。
「明日は「オーロラの日」で、限定のオーロラバーガーが食べられるんです!」
「オーロラの日の、オーロラバーガーですか……」
ネーミングが直球過ぎないか?そもそもオーロラの日とは?と不思議に思うシュガーだったが、話を聞いていくうちに……ウマ娘の本能・“食欲”への刺激が止まらなくなり始めたのだ。

(______これでもかとサクサクに揚げられたサーモンのフライに、とくせいのオーロラソースをかけて、バンズをがっちゃんこ……すっごく美味しそうじゃないですか!!!!!)
シュガーはカフェテリアを目指しながら、スペから聞いていたハンバーガーの特徴を想像してさらにお腹をすかせ続けていた。
そして、カフェテリアにやってくると……。
(……!?)
その光景に、驚きのあまり声すら出なくなるシュガー。
いつものカフェテリア……などではなかった。その場所は。
まずシュガーが感じたのは、熱。とてつもない熱気。
(も、もうすぐ10月ですよ……あつすぎる……)
夏かと思うほどに上がる体感温度。クーラーを付けたくなる室内の暑さ。
その発生源を見つけるのは、とても簡単なことであった。
「ただいまこちら最後尾となっておりまーす!」
(え、列……?)
正体は……カフェテリアらしからぬ、大行列。
メロンパフェの時など比ではないほどの、大行列である。
241 : ◆wuHHR64l1og   2024/09/08 07:19:36 ID:btRilqPXFo
(これは……買えるんでしょうか!?)
とりあえず急いで並ぶシュガーだったが、1列に数十人は居る。
もう間に合わないんじゃないかと思いながらも、わずかな可能性を信じて列から離れないようにしていた。
そして、待つこと10分……。
やっと自分の番だ。シュガーは肌身離さず持っていた財布から現金を出し、オーロラバーガーを受け取った。
(買えました……あれ?)
テーブルに座って、やっと一息。ふと皿を見ると、よく知るハンバーガーより一回り小さなバーガーが二つのっている。具材はサーモンフライで、オーロラソースもかかっているが。
(サイズが小さいから二つなんでしょうか?これはこれでおトクです!)
自己解釈して、納得したシュガー。
いただきますをして、口元にオーロラバーガーひとつを運ぶ。そしてキラリと光る白い歯が、それを噛み砕こうとした瞬間……!
「買えませんでしたぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
(……ん!?)
カフェテリア内に響き渡る絶叫。
なんだかデジャブを感じるシュガー。
またマックイーンだろうか?
おそるおそる振り向くと、そこには。
「最後の1セットだったのにぃぃぃぃぃぃぃぃ!」
(す、スペシャルウィークさん……!?)
捌ていく行列の中で叫びうなだれる、日本総大将の姿があった。
242 : ◆wuHHR64l1og   2024/09/09 03:57:47 ID:dTVfKr5gPA
「およよ……およよ……」
なんともいえない声で泣くスペシャルウィークにいたたまれなくなったシュガーライドは、声をかけることにした。
「だ、だいじょうぶですか……」
「大丈夫に見えますか……?」
「ひっ!?」
シュガーの差し出した手を握って立ち上がるスペの声色には、何やらいろいろな感情が混ざり合っているらしい。それが凝縮されたものを受け取ったシュガーが感じたのは……恐怖であった。迂闊に話しかけない方が良かったかもしれない……そう思うレベルの恐怖。
「最後の……1セット……」
そう言いながらスペが指さす先は、「完売」の文字が並ぶ購入カウンターであった。
オーロラバーガーが売り切れたことを示すそれは、スペをこの状態にするにはとても十分すぎたのだ。
「シュガーさんは……買えたんですね」
「は、はい」
「いいな……私は……特大サンドイッチで我慢することにします……」
(む、むう……これは……)
そろそろスペシャルウィークが可哀想になってきたシュガーライド。
手元には、オーロラバーガーが二つある。
一つなら、彼女にあげても良いかもしれない。
「……おひとつ、いかがです?」
「えっ、いいんですか!!じゃ、じゃあ私もサンドイッチをあげます!!これでおあいこですね!!」
こうして、朝の食事を分け合ったシュガーとスペの絆が、少し深まるのだった。
そしてこの週の日曜日……GI・スプリンターズステークスが幕を開ける。
>>243
243 : お姉さま   2024/09/09 13:08:41 ID:1IuqUgzj5s
清々しい晴天!「雲一つ無い天気」とはまさにこの事だろう。天候は晴、バ場も良だ。
11人が走る予定だったが、直前に1人が脚を痛めて出走を取り消したので10人での競争となった。
シュガーは1枠2番の好位置からスタート。だが「中山の坂」は厳しいぞ。果たして・・・?
発走時刻になり旗が振られ、ファンファーレが鳴る。盛り上がるスタンドを遠くに見ながら各バ順調にゲートイン。

暫しの静寂の後各バ一斉にスタート!

スプリンターズステークスは1200m。後方に居ると不利なのでシュガーは集団の中程に位置を取る。先頭から数えると5番手。
スタート地点から約275mは下り坂が続き、体力の消耗は少なめ。最終コーナー手前でシュガーは1人抜いて4番手に位置を上げた。
そして最終コーナーを周ってあの「中山の坂」が待ち構える。約2.4mの高低差をたった300mで駆け上がるのだ。

ここでシュガーがその「怪物ぶり」を遺憾なく発揮する。

「中山の坂」でシュガーの前3人が疲れで次々スローダウンする中、持ち前の強力な心肺とピッチ走法で一気にごぼう抜き。
「中山の坂」を軽々と超えたシュガーは文句なしの1着でゴール板の前を通過した。
タイムは1:08.0 レコードではないが、シュガーは観客にそのパワーを十分過ぎる程見せつけたのであった。
244 : ◆wuHHR64l1og   2024/09/09 13:31:48 ID:dTVfKr5gPA
>>243
待って?待って......?
今回シュガーじゃないんです......
245 : ◆wuHHR64l1og   2024/09/09 14:07:30 ID:dTVfKr5gPA
スプリンターズステークス開催、当日。
その日……レース界隈に衝撃が走った。

朝8時頃。
「プリファイ♪プリファイ♪今日はどんな話なんだろう?」
朝練を終え、寮に戻ってきたニシノフラワー。彼女もシュガーと同じく凄いスピードで成長していて、短距離・マイル路線での活躍が期待されているウマ娘だ。
日曜朝の魔法少女アニメを楽しみにしている彼女は、テレビを見るためにルンルン気分で食堂に入ってきた。
食事の準備をし、テーブルについて、テレビをつける。
「えっと、チャンネルは……あっ!?」
テレビの選局をしようとすると、URA臨時の報道番組がやっているのに気づいたフラワー。
「み、みなさーんっ!」
慌てて叫ぶフラワーの声で、寮にいた何名かが食堂に集まってきたのだった。
246 : ◆wuHHR64l1og   2024/09/09 14:08:40 ID:dTVfKr5gPA
______報道番組は、あるウマ娘の記者会見。

『えー、みなさま。今日は朝早くからお集まりいただき、感謝いたしますわ。
今日はわたくしムーントラックより……大切なお知らせがありますの』
(……ムーンさん!?)
フラワーの声で駆けつけたシュガーライドは、会見を開くその少女を見て驚く。
そして、何を言い出すのかという不安が心中を覆う。
とてもいやな予感がしているのが、シュガーには分かった。
……先輩ウマ娘たちには、それが何なのかわかっている者もいた。
こんな時間から大々的に会見を開くなど、あまりない。
“あまりない”からこそ、わかっていた。
テレビの向こうで、報道各社たちも見守る中、ムーントラックはゆっくりと口を開く。
『わたくし……ムーントラックは、本日開催のスプリンターズステークスで、トゥインクルシリーズを引退させていただきます』
その日……レース界隈に衝撃が走った。

今度こそ次>>247(スプリンターズステークスへ)
247 : お前   2024/09/10 00:00:38 ID:Y9rYAjfy3.
スプリンターズステークス当日の中山は小雨で、バ場は重と発表された。
出走は16人で、ムーンは一番外の8枠16番。あまり良い場所ではないが・・・
そうこうしているうちに、出走時刻を迎えてスターターが旗を振ったのを確認し、各バがゲートに収まりスタートの時を待つ。
「嫌な予感がする...」と、中継映像を固唾をのんで見守るフラワー。
そしてゲートが開き一斉にスタート・・・

のはずだったが、テレビの中継映像がトラブルで突然停止して黒い画面のまま音声も出ない。

「これじゃあムーンさんの最後のレースが見られない!」
騒然となるテレビ前のウマ娘たち。
約1分後に中継映像が回復したが、レースはすでに終わっていた。

ただ、一つ解ったのはムーンさんが1着だという事だけ・・・
248 : ◆wuHHR64l1og   2024/09/11 00:28:40 ID:SVyQ5ZBT/k
昼頃になって、雨が降りだした。
寮の自室の窓からそれを目撃したシュガーは、急いで窓を閉める。
(東京で雨ですか……あっ、千葉の方はどうなんでしょう?)
千葉、中山レース場……ムーントラックが引退を宣言したGI・スプリンターズステークスの発走時間が迫る中、東京の雨で千葉の天気も心配になったので、シュガーはアプリで天気予報を見てみた。
「そんな……あっちでも雨じゃないですか」
千葉の天気も、雨。今のところは、大雨だ。梅雨シーズンの名残とは書いてあるが、
この時期としては珍しいとも書いてある。
(ムーンさん、しっかり走れたらいいな……)
引退レースで、天候に左右されて実力を発揮できないとなれば、とても悔しいはず。
まだまだデビューしたてのシュガーにも、ウマ娘としての本能がそう告げている。
(……一緒のレースで、走ってみたかったなぁ)
シュガーとムーンは、一度の併走をしたのみであった。
来年、クラシック級に昇格してから、改めてGIで戦ってみたい……そう思っていた矢先の引退発表。シュガーだけでなく、他のウマ娘にも影を落としていることは間違いない。
「凄い雨ですねぇ……早めに切り上げて良かったです!」
「あっ。スペシャルウィークさん!」
部屋のドアがガチャリと開き、白いタオルで顔を軽く拭きながら入ってくるスペシャルウィーク。
スズカはまだ走っているということなので、シュガーはスペに話を聞いてみることにした。
「______こんな重バ場に強いウマ娘、ですか」
シュガーが尋ねたのは、スペシャルウィークが今まで走った相手で、大雨に見舞われようとも強かったウマ娘はいたか?というものだ。
その質問に、スペは……何かを懐かしむように、答えた。
「いますよ、知る限りでは一人」
「ひとりですか?」
「はい、たった一人です。私の一つ下で……通称が”泥の女王”なんて呼ばれてましたね」
249 : モルモット君   2024/09/11 00:33:15 ID:SVyQ5ZBT/k
あ、ムーントラックと泥の女王に関しては

https://umabbs.com/patio.cgi?read=19480&ukey=0&log=past&res=500

前スレを
250 : ◆wuHHR64l1og   2024/09/11 06:49:11 ID:SVyQ5ZBT/k
泥の女王……ダートが強かったのかとシュガーが聞くと、スペはこう答えた。
「いえ、あの娘は……今日みたいな雨の日の重バ場でも、難なく勝っちゃうんです。私も、宝塚記念では負けちゃって」
「た、宝塚記念で、ですか!?」

______春最後のGI・宝塚記念。ファン投票によって選ばれたウマ娘たちが走る、レースの祭典とも呼べるGI競争だ。
“泥の女王”は当時、トリプルティアラGIのうち桜花賞とオークスを制覇し、秋の3冠目に期待がかかっていた……同時に、ファン投票ではクラシック級のウマ娘でありながら1位の最多票を得る等とてつもない人気を誇り、それに応えて出走。
雨の中……前年度の有馬記念の覇者であり、宝塚記念での勝利でグランプリ連覇のかかっていたグラスワンダーの猛追から果敢に逃げ続け、なんと同着での優勝……クラシック級でのグランプリ制覇を成し遂げてしまったのだ。

「そ、そんな凄いウマ娘さんが……」
「今は海外遠征に行ってるみたいですけど、日本に帰ってきたらまた一緒に走りたいですね」

“泥の女王”に関する昔話をスペに語ってもらっていると、
時間はあっという間に過ぎていた。
お昼を食べたり、いろいろなことをしてさらに時間を潰すシュガー。
そして、ついにその時がやってきた。

GI・スプリンターズステークス。雨の中山レース場で、雷のような電撃戦が幕を開ける。
251 : ◆wuHHR64l1og   2024/09/11 10:21:18 ID:SVyQ5ZBT/k
元よりある種の続編として書きたかったんですが、アリですかね......?
252 : トレぴっぴ   2024/09/11 10:23:43 ID:f6NLhVpsjI
好きにやればいいじゃない
253 : ◆wuHHR64l1og   2024/09/11 10:31:47 ID:SVyQ5ZBT/k
>>252
まぁそれもそうか...
254 : ◆wuHHR64l1og   2024/09/11 18:25:49 ID:SVyQ5ZBT/k
『ここ中山レース場は、急な天気の崩れにより雨が降っています。バ場状態は重の発表です』
スプリンターズステークスの出走まで30分を切った、中山レース場。
予報が大外れな雨により、傘を持たずに慌てふためく観客もちらほら見られる。
そして今年は、例年に比べて……観客が多い。
理由は簡単だ。
スプリント界をわかせたスターウマ娘の引退、それを見届けたいのだ。
観客の数は、年末の有馬記念に劣らない程となっていた。

(……ああ、こんなにも観客がいる中で、わたくしは花道を飾るのですね)
控え室のテレビで外の中継映像を見ながら、ムーントラックは最後のGIにむけて心身を整えている。
ふと、手のひらにガーネットの耳飾りを乗せ、ムーントラックは回想する。
自身の、引退の理由ときっかけを。 
255 : ◆wuHHR64l1og   2024/09/11 18:26:14 ID:SVyQ5ZBT/k
______話は、数週間前に遡る。
8月の始め。
ムーントラックが走っていたのは、新潟1000mの祭典、GIIIアイビスサマーダッシュ。
彼女はいつも通り後方に控え、終盤でのごぼう抜きを狙う。
バ場状態は良。自身の体調も良い。いつも通り、最高の条件だった。
『残り350m!前に出るウマ娘は内からか外からか!?はたまた逃げのウマ娘が勝ちきるのかー!?』
(さあ、行きますわよッ!)
大外のポジションを取っていたルナトラックは、そのまま急加速を始める。
『ここで1番人気ムーントラックが上がってきた!前を走るウマ娘たちをどんどん追い抜いていく!』
観客たちも、いつも通りの彼女の勝利を疑わなかった。
ライバルであるアストンマーチャンは今回出走しておらず、ムーンの独壇場。
そう思っていた観客たちの期待をムーンもわかっていたから、応えた。
「はぁぁぁぁぁっ!!」
……見事に、ゴールイン。2番手とは1バ身差。追い込みのウマ娘にとってはギリギリかつ理想的な勝ち方である。
『ムーントラック1着!秋のスプリンターズステークスに向けて、快勝です!!』
(今回も、勝ちました……わ……あれ?)
「はぁっ……はぁっ……なん、ですの……息、戻らない……」
実況を聞き、観客たちからの歓声を待ち構えようとした彼女は、自身の体に起こる違和感に気づいた。
心拍数が速い。息が少し苦しい。いつも通りのペースで走ったはずなのに。
気温のせいかとも思った……だが、周りのウマ娘たちはここまで疲れている様子は見られない。
256 : ◆wuHHR64l1og   2024/09/11 18:26:40 ID:SVyQ5ZBT/k
______その後も、トレーニングで走ったりもした。
同じであった。
好タイムに矛盾するかのように、走った後はとても疲れてしまう。
いつも通り走れるのに、速いままなのに。
(……ああ、そういうことですの?)
ムーンは、一つの可能性に達する。
自分の競争寿命は、もう長くはないのだと。

「ピークを過ぎた……というのかい?」
「ええ。自分のことくらい、よくわかっていましてよ」
「そうか。なら……」
学園1の変人で頭脳家であり、かつては自身も引退宣言をしたウマ娘・アグネスタキオンに、それを伝えたムーントラック。
タキオンは言う。それならば早めにターフを去るのが良いと。
衰えにより大敗をしてしまう前に、最後に一花咲かせる方が良いと。
257 : ◆wuHHR64l1og   2024/09/12 22:47:28 ID:t9Ci/y45dI
______そのための調整も兼ねて、シュガーライドとの併走に臨んだムーン。
スプリンターとしてのライバル、アストンマーチャンも飛び入りで参戦してきたが。
模擬レース程度なら普通にやれるだろうと、いつもの態度を崩さずに挑む。
しかし、現実はそう甘くなかった。
シュガーが早めに仕掛けていった3コーナーで、ムーンは既に体に違和感を感じていた。
このまま走れば、とてもまずい気がする……本番前に折れるわけにはいかないと、シュガーやマーチャンに追いつこうとせず、ゆっくりと減速する。
そして、ふと気づいたのだ。片足の蹄鉄が外れていることに。
______それは、今日この日のためだったのだと、今は思う。
「ふぅっ……さあ、そろそろ時間ですわね。行ってまいりますわ、トレーナーさま」
改めてすべてを思い出し、それを闘志として燃やす準備もできた。
ムーンは自身のトレーナーに挨拶をし、ターフへと歩いていくのだった。
258 : ◆wuHHR64l1og   2024/09/16 09:32:11 ID:ffH9o1B0yQ
『さあ、まもなく発走となります、スプリンターズステークス。各ウマ娘がゲートインしていますが……雨は止まず、雷雨となっているとの情報もあるようです』
土砂降りとは言えないが、降り止まぬ雨が続く中山のターフ。
大外枠を引いたムーントラックは、自分のゲート入りの順番を待つ中……雲覆い雫が降り注ぐ空を見上げながら、考えていた。
(これが、最後……)
泣いても笑っても、これで終わり。トゥインクルシリーズで走る、最後のレースとなる。
それを選んだのは、紛れもない自分自身。
もっと、走りたかったと思うムーン。
衰えは絶対に来るものであるし、いつかは誰でも死んでしまう。
終わらないものはない。では、どうするのか。
(シュガーライドさん……併走ではいい格好を見せられませんでしたが……見ていてくださいませ)
中継を見ているであろう後輩に、ムーンは伝えたいと思った。
(わたくしの、最後の走りを。引退という概念を。今後のあなたのレース人生に、焼き付けて差し上げますわ!)

後輩に、次を託す。未来を繋げる。そのために、絶対に勝つ。

『大外枠でのゲートインとなります、このレースでの引退を発表したムーントラック。ラストランを、勝利で飾れるか!?』
自分の番が来た。ムーンは覚悟を決めて、ゲート入りする。

(……ああ、こんな重バ場。"彼女"を思い出しますわね)

かつて共に走った、泥の女王をふと思い出しながら、ムーントラックのラストランが今、幕を開けるのだった。
259 : ◆wuHHR64l1og   2024/09/16 09:33:07 ID:ffH9o1B0yQ
栗東寮のTVルームには、既に大勢のウマ娘が集まっていた。
ラストランを発表したムーントラックの、最後の走りを見るためだ。
それに、同じ寮の一員であるアストンマーチャンも出走しており、スプリンター同士の対決にも期待がかかる。

「大丈夫でしょうか……」
「フラワーさん、何を心配されているのですか?」
モニター越しに、ゲート入りを進めるウマ娘たちを見ながら、ニシノフラワーは不安げな表情を浮かべていた。
同室のミホノブルボンは、その表情を見ても心配事が何なのか読めず、彼女に尋ねる。
「かみなり、鳴ってるってテレビで言ってたんです……」
「それは……」
ブルボンも、それを知らないわけではなかった。事前に調べた予報よりも、発雷確率が高まっているのは確かであり、
しかしそれがレースに影響を及ぼすかは定かではないのだが……。

(ムーントラックさんは、走りきってくれます……絶対に)
二人の会話を聞いていたシュガーは、テレビに期待の眼差しを向ける。
まだ、ムーンと知り合って間もないが……なんとなくだが、期待を向けてしまうのだ。
根拠はない。しかし、応援したい。そんな気持ちである。

『さあ、各ウマ娘ゲートイン完了。最内枠のアストンマーチャンか、大外枠のムーントラックか、はたまた他のウマ娘か。見届けよう、この電撃戦を』
スプリンターズステークスが、いよいよ始まる。
その時だった。ニシノフラワーの心配が的中してしまったのは。

『いま、スタートし______』
瞬間、中継マイクに爆音が入った。
そして、映像が途切れ、「しばらくお待ち下さい」という表示が出るのみ。
音も、聞こえなくなる。

「えっ!ま、まさか本当にかみなりが……」

予感が当たってしまったフラワーや、他のウマ娘たちがうろたえてしまう中。
映像が回復するまでの約1分間、シュガーライドはじっと画面を見続けていた。

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