87 : トレーナーちゃん   2024/01/02 20:59:38 ID:akX4VbAU9.

それはウマ娘のレース、皐月賞での出来事だった。
1番人気でないにしろ上位人気のゴールドシップ。クラシックを取る可能性が高いウマ娘として彼女の動きをトレーナーである俺も注目していた。しかしゴルシはゲートから出た瞬間、とんでもない行動に出たのである。
『―――あいつ、正気か!?』
俺が一番驚いていたのは、ゴルシが出遅れたことよりも普段追込の戦術を取るあるウマ娘が2番手につけたことだ。前が壁になった分ゴルシも厳しいレースで、スタミナを消費しすぎてゴルシ自身が潰れかねないと思った。レース展開は一向に動く気配がなかった。あのゴルシがゲートから出て一向に前に行かないし、作戦も何も掲げていない。俺は騙されたか? いや違うと脳は否定する。向こう正面に入っても膠着状態が続いており、こっちは体力だけが削られていく。そんな状況に変化が生じたのはレース後半だった。前が壁に挟まれていたゴルシが僅かに足を振ったその時だ。