12 : 大将   2024/04/10 12:59:06 ID:c/StBCGmbg

喪失した記憶は唐突に戻って来た。
同時に彼女の実家からの便りも来ていた。
この国で成し得た功績の賜物だからか、出国の許可は極めてスムーズに下りた。
しかし、再会を喜ぶには余りにも時間が経ちすぎていた。
既に命は無いものと思われていた私の全ては無惨にも片付けられていた。両親ももうこの世に居なかった。
あの日、トゥインクルシリーズを駆け抜けた彼女はさる貴人と婚姻関係にあった。私の消失に病む彼女を献身的にサポートしてくれただけに、文句のつけどころのない君子と言うべき傑物だった。彼にならば彼女を任せられるであろう確信めいたものが心中に根付くのに時間は要らなかった。
振り返ると、今の私の担当が心配そうに此方を見ていた。あの日、奴隷同然にこき使われていた彼女は海外重賞で好走を果たせるまでに上り詰めた。
ウマ娘を人とは思わないあの最悪の環境で同志を集めてトレセンの真似事から始めて、本当のトレセンに作り上げた。初めて彼女達は居場所を得られたのだ。それを失わせるわけにはいかなかった。