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トレピッピ 2023/06/02 07:28:15
ID:J.Tc1sOZws
「ハヤヒデが眠ってしまうなんて珍しいな…」
俺の呟きを、眼下の娘の耳がぴくりと拾う。
しかし、無意識の海に溶け込んでしまった彼女の反応はそこまでだった。
ふわりと良い香りのする芦毛の髪をめくると、心地の良い眠りの世界に旅
旅立っていったビワハヤヒデの寝顔を見ることができた。
きゅ、と引き締まるどこか大人びた普段の顔ではない、あどけなさの残る少女の顔…彫刻のようなその美しさに思わず見惚れ、ハの字に緩んだ柳眉、大きな瞼、長く艶のある睫毛と優しく指でなぞっていく。フォーム以外の担当をここまでまじまじと観察したことはなかったが、まるでこちらに全てを委ねるかのように力の抜けた彼女の身体を意識すればするほど、ゾワゾワした感情が心の中を支配していくのを感じた。
撫でる手が少しむず痒いのだろう。わずかに開いた唇から吐息が漏れ、自分の頬にかかる…
カタン。
「…!」
遠くで微かに物音がし、心臓が跳ねた。いつの間にか俺は、吸い寄せられるように彼女と唇を重ね合わせようとしていた。それを寸前のところで思いとどまる。
「い、いかんいかん」
首を振り、頭を支配していた煩悩を振り払う。あくまで俺達はトレーナーと教え子だ。彼女の夢を叶えるまで想いは秘めていようと決めたのだ。
「でも、このくらいは…許してくれよ」
そんな男の目の前で無防備になってしまった愛しき少女を嗜めるように、手触りのいい彼女のウマ耳に手を添えて、そっと口付けした。