「春の雨ってほんと嫌い」
1 : トレーナーさん   2023/05/04 16:05:35 ID:hZGWMb0p2M
「え・・・?」

 彼女と寮へ向かう途中、唐突に空へ向かってボソッと喋る。私は狐につままれたような気分だった。それ以降、彼女は何も喋らず、鈍色の空と雨に煙る山から自分を遠ざけるように少しだけ歩調を早める。私もそれにつられて合わせるが、なんとなく彼女と並ばないようにした。
あとどれくらいなんだろ。早く帰りたい。

 今にも降りそうなくらい水分を潤沢に含んだスポンジが私たちの気分に重く乗しかかる。

 程なくして彼女は口を開いた。

「チヨはさ、イヤ? 雨。」
2 : トレーナー   2023/05/04 16:14:23 ID:hZGWMb0p2M
「え、うん・・・・・・・・・。キr」

「・・・ふーん。だよね。なんで?」

 安心とも落胆ともいえない無機質な口調と顔は私にとって恐怖だった。

「やっぱり、雨が降ると気分も下がるし・・・トレーニングも満足にできないから、かな?」

「あーうん。まぁそうだね。」

「・・・・・・真面目、だね。」

「ぁ、えへへ・・・・・・ありがとう・・・・・・。」

 私とこの人は状況が違う。主にレースや勉学においての成績の差は否定しようがないほど日に日に大きくなっていった。私たちの間でその話題はやがてタブー視されていった。
3 : お姉さま   2023/05/04 16:29:09 ID:hZGWMb0p2M
「え、うん・・・・・・・・・。キr」

「・・・ふーん。だよね。なんで?」

 安心とも落胆ともいえない無機質な口調と顔は私にとって恐怖だった。

「やっぱり、雨が降ると気分も下がるし・・・トレーニングも満足にできないから、かな?」

「あーうん。まぁそうだね。」

「・・・・・・真面目、だね。」

「ぁ、えへへ・・・・・・ありがとう・・・・・・。」

 私とこの人は状況が違う。主にレースや勉学においての成績の差は否定しようがないほど日に日に大きくなっていった。私たちの間でその話題はやがてタブー視されていった。
4 : アナタ   2023/05/04 16:58:58 ID:tjOyejqhEo
連投しちゃってんよー
5 : 貴様   2023/05/04 20:43:54 ID:fqCDA.K9e2
いいね。続き読ませてくれ
6 : トレーナー君   2023/05/04 21:09:24 ID:hZGWMb0p2M
周りを見渡す。そこには2、3人組のウマ娘達が天気のことなんて気にも留めず和気藹々と話している姿が目に入る。こっちとあっちの温度差で風邪ひきそうなくらいここの会話は冷めていた。
 バクシンオーさん、どこにいるんだろう・・・。

「私は。」

「うん。」

「今、桜咲いてるじゃん?」

「うん。」

「雨降ったらさ、花びらって散っちゃうじゃん。凄いイヤ。あんだけさぁ綺麗でさ平和で幸せな桜の花が、ただの汚ったない水に落とされるってヤバい。グロい。」
7 : トレぴっぴ   2023/05/04 21:16:28 ID:hZGWMb0p2M
 彼女は熱く語り始めた。その影響で早足だった足並みはいつもの歩調に戻っていき、反面、語気が強くなり、尻尾の動きが活発になっていく。やがて周りの冷えた空気が、外の温暖な空気へと順応していくさまを感じとれた。

「あはは・・・。確かに、桜って儚いイメージがあるし、よくよく考えてみると残酷だよね。」

「そう!折角さ、努力して努力して努力して血反吐吐くくらい頑張って毎日日にちやりたくないことやって、やっと夢を叶えたのに、直ぐに上からの力で叩き潰されるの吐き気がする。ほんとキモイ。ってかなんで後ろにいんの?」
8 : 大将   2023/05/04 21:28:19 ID:hZGWMb0p2M
 指摘を受けて位置を元に直す。
 言ってることは分からなくはないけど、流石に曲解しすぎじゃないかとの旨を伝えた。すると、今まで一定のリズムを刻んだ足並みを止めて少し眉を顰めた顔をこちらに向ける。

「・・・チヨはいいよね、いい思いできてさ笑 私なんかクラシックなのに未勝利すらまだ抜けてないんだよ!?私の周り、もうみんな勝ち上がれてるのに・・・。」

「ごめん。」

「・・・でも、あんたらとは“勉強で差を付けてやろう”って図書室に行って参考書漁ったり先生とかその分野が得意な子掴まえて付きっきりで教えてもらったり、私みたいなバカでも分かる人の解説動画見ても、決して1位にはなれなかった。上位にすら行けなかった・・・!」

「・・・・・・・・・・・・はぁ。こんなことならダンス教室辞めなきゃ良かった・・・。もうやだ・・・。」
9 : トレピッピ   2023/05/04 21:45:22 ID:hZGWMb0p2M
 雨が降ってきた。周りの者はもう居ない。周りの色が濃くなっていく。さっきまでの威勢は無く、そこには漣々たる涙を流す暗色の顔をした彼女と、言葉を探しながら立ち往生しているサクラチヨノオーの2人だけがそこにはあった。

「帰ろっか・・・。」

 雨足が強くなる中、泣き止んだ彼女はチヨノオーの手を取り走りながら寮へと向かっていった。

 早く帰らなきゃ。

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