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トレーナー君 2023/03/17 10:27:12
ID:/TPqzebs46
昔々、あるところに、「わんいなり」というウマ娘がおった。わんは大層な気性難で、「大井は江戸」と言いふらしたり、あちこちに迷惑をかけてばかりいた。今日もわんは川でウナギ採りの罠を壊してウナギを逃し、たまという貧乏な若者を困らせていた
次の日、わんはチビっ子に泣き付かれているたまを見つけた。どうやらたまは彼らにウナギを食べさせてやりたかったらしいが、そのウナギを昨日わんが逃してしまったらしい。流石に申し訳なくなったわんは、気づかれぬよういなり寿司をそっとたまの家の軒先に置いていった
それからわんは定期的にたまの家にいなり寿司を運んだ。たまは不思議なこともあるものだと思いつつも、美味しそうにいなり寿司をチビっ子たちの笑顔の前に些細なことと気にしなかった
ある日もたまの家にいなり寿司を届けに来たわん。しかしその場面を目撃したたまは、またわんがいたずらしに来たのだと思ってしまった。
この前のウナギの恨みも込めてわんを背後から差し切るたま。ぱたりと倒れるわん。そこでたまは、いなり寿司に気づいた
「わん、自分やったんか。いつもいなり寿司を届けてくれたのは」
わんは目を閉じたまま、静かに頷いた。
(最後のページには全裸で倒れるわんと、傍に立ち尽くすたまが描かれている)
作・挿絵 どぼめじろう