7 :
アナタ 2022/10/17 01:10:50
ID:PK2N2osvv.
星降る石畳をお踏みになってあなたはゆくんですわよ。一歩半だけ先でございますわね、怒ったように忙しないですわよ。
皆様こぞる市場の中、その細い脚で縫うように淀みなく、騒ぐ人波をかきわけて。
店先は光で満ちて、きらめく品々は眩しく鮮やかですわ。
甘いホットチョコレートの湯気に、シナモンの香りが乗って夜を温めているんでございますの。
この冬の日の喧噪の中でその可愛らしい肩を見失わず済んでいるのは、間違いなくあなた自身のおかげですわ。
「何してんの、はぐれないでよ」
振り向きなさって、ぶっきらぼうにあなたはおっしゃる。
頷き返しますと、すぐに前を向かれます。
ただ一歩半だけ先を、それ以上決して引き離されませんように、細心の注意を払いながらあなたはゆくんですわよ。
時折、ちらちらと振り返る視線をお送りになりますが、気づかないふりをして後を追いますわ。
気づいたことがわかりましたら、そのとたんにこの聖なる1歩半がぐんと伸びて消えてしまうからですわ。
聖夜の月明かりを受けてあなたはゆくんですわよ。
1歩半だけ先を、どなたよりも優しく慎重に。