35 :
アンタ 2023/02/01 22:21:07
ID:98ciGMGc0s
星降る石畳を踏んで君はゆく。7cmだけ先を、怒ったように忙しなく。
もろびとこぞるライブハウスの中を、その細い脚で縫うように淀みなく、騒ぐ人波をかきわけて。
ステージは光で満ちて、きらめくライトは眩しく鮮やかだ。
立ち込めるエナドリの匂いに、EDMのリズムが乗って夜を暖めている。
この冬の日の喧騒の中でその小さな肩を見失わずに済んでいるのは、間違いなく君自身のおかげだった。
「何してンだ、はぐれンなよ」
振り向いて、ぶっきらぼうに君は言う。頷き返すと、すぐに前を向いてしまう。
ただ7cmだけ先を、それ以上決して引き離さないように、細心の注意を払いながら君はゆく。
時折、ちらちらと振り返る視線に、気づかないふりをして後を追う。
その途端にこの聖なる7cmがぐんと伸びて消えてしまうからだ。
聖夜の月明かりを受けて君はゆく。7cmだけ先を、誰よりも優しく慎重に。