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アンタ 2024/08/08 16:17:58
ID:JCoTRMKqto
夏のある日、ほんの僅かな日数だけどミラ子お姉ちゃんが帰ってくると聞いた少年。
心なし駆け足で向かうとおばさんが出迎えてくれて、入った先の和室には早速畳の上で寝転ぶお姉ちゃんの姿。
トレセンの制服を纏っている以外は出て行ったあの時と変わりなかった。
傍らに置いてあるスクールバックにはジャラジャラと括り付けられたよく分からないキーホルダーたち。その中に、かつて自分が贈った小物が今もあることに密かに安堵した。
「おかえり」「んー、ただいま。久しぶりだね、ちょっと大きくなった?」
昔のように背比べしようとしてくる幼馴染の体を気恥ずかしさから避ける少年。そんな時、ミラ子お姉ちゃんの手首に巻き付いているそれに気付いた。
「姉ちゃん、それ何?」
クラスの女子が同じような物を付けているのを見たことがあった。確かミサンガとかいうやつだ。年頃の女子なら誰でも付けているようなオシャレの一つだ。ミラ子お姉ちゃんが付けていたって不思議じゃない。
なのに、どうしてかそれが「何か」気になって仕方がなかった。よく分からない焦燥に突き動かされ、少年は幼馴染に問うた。
すると彼女は「んー……」と逡巡した後、「……内緒」と言って笑った。少年がこれまで見たことがないような、蕩けるような笑みだった。