うまぴょいチャンネル
>
ウマ娘BBS
▲
|
全部
|
▼
【SS※超長文予定】幻覚ウマ娘メイセイオペラ怪文書
1 :
アナタ
2022/11/14 12:00:25
ID:kvXibwg09o
「響けファンファーレ、届けゴールまで…」
美しい楽団の演奏、煌びやかな服と、そこに集う選ばれた少女達。
鳴り響く足音、揺れる度に心は高鳴り、ずっとずっと早い子達大地を駆け抜けていく。
「輝く未来を、君と…見たいから…………」
テレビで見た誰もが夢見る舞台、同世代の子達はそこを駆け抜けていく。
…一瞬でいいから、そこで立って見たかった。…勝負服を着てみたかった。
──人生を何度やり直しても
「受からなかった時点で、夢のまた夢なのかな…」
もう、絶対に届かない位置に居たとしても。
冷たい風が吹き、木の葉は舞い散る。
ここは誰も走っていない、……勝負なんかない。
…もう、終わりなのだろう
『水沢トレセンは、2年後には廃校するだろう───』
2 :
モルモット君
2022/11/14 12:01:43
ID:kvXibwg09o
秋、雲は少なく、乾いた空気と、遠くの山は色づいて、オレンジに染まる桜並木の道と、汚れた土の大地が広がる。
「うわー…地方トレセンってこんなんなのか…」
ボロけた学舎、グラウンドは良い整備もなく、大きく粒のような土のダート場でウマ娘達が遊んでいた。
まともに走ろうと襲歩をする子は1人もない。
「整備する人も居ないのか…?」
…だが、どうしてなのか
それにむしろ心躍る自分がいる。
「……うん、楽しみだ!」
門を抜けて焦げ茶色の紅葉が色づく道へと進んで行った
3 :
トレピッピ
2022/11/14 12:02:00
ID:kvXibwg09o
『北に行くのか』
『そりゃま、行くなら誰も居ないところがいいなって思ったから』
『ま、……なんだ』
別れ際、新幹線の前、冷たい息の玉が幾つも浮かんで消えて。
『もう中央のベテランだろ』
『わかってる』
『未勝利の子を勝たせてあげればいいんじゃないか』
『いや…もっと見たいんだ、…色んなものを』
『そうか』
『いいのか、これで────』
『…ああ、これでいい、いいんだ』
『じゃ、胸張って行ってこい!さっさと諦めてこい!そしたら連れ戻すからな!』
『そりゃ無理な話だな!…諦めないよ、もう』
4 :
お兄ちゃん
2022/11/14 12:02:22
ID:kvXibwg09o
そうだ、諦めてなるものか
「…まずは走れる子を探すことからかな──!」
幸い、当てがある。
ここに着く前に先代に呼ばれたのだから。
────────────
『どうか、彼女をお願いします』
『…はい。絶対に、やってみせます』
───────
ぎゅっと握られたその震える手…シワ寄せたあの指を思い出して、もう一度手をにぎりしめる。
ここから、どん底からやり直すのだ。
……この水沢トレセンで
5 :
トレーナー君
2022/11/14 12:03:07
ID:kvXibwg09o
───────
「あの〜…」
……………
「えっと……それで、──君は、どうしてずっと木の後ろに隠れてるの?」
「わーーーーーーーーーっ!!!!!」
きっかけは、些細なこと。
「ちょっと待って……待ってー!!!」
「不審者さんですーっっっ!!!」
だけど、これは間違いなく運命だった。
6 :
アンタ
2022/11/14 12:04:02
ID:kvXibwg09o
ゆっくり続きます、下書きあるんですが文字数が2万5000既に超えてます(完結するかも怪しい………)
続きは夜だします
7 :
マスター
2022/11/14 12:06:11
ID:meOEbhVSag
支援します。
ちなみにメイセイオペラちゃんのデザインとか決まってますか?
8 :
あなた
2022/11/14 12:07:50
ID:kvXibwg09o
>>7
決まってる
次で紹介しますが非常に小柄で鹿毛の長い髪と青い瞳の子です
性格とかは夜出すやつでしっかり書くけど
とっても臆病で賢い子だと思っていただければokです
9 :
トレーナーさま
2022/11/14 12:10:47
ID:meOEbhVSag
おお…!
これは期待せざるを得ない…!
10 :
トレーナー君
2022/11/14 12:12:36
ID:kvXibwg09o
ちょっと短すぎると思ったのでもう少しだして夜にもっと出します
11 :
トレピッピ
2022/11/14 12:13:06
ID:kvXibwg09o
小さな背丈に鹿毛の長い髪に透き通るような青い瞳。
しなやかに整った髪は年相応に手入れをしていると直ぐに伺える。
「ええっと…男の人が…!!なんで…ここに…!?…ふ、不審者さん…ですか!?ですよねっ!?」
竹箒を逆手に構え、少しでも動けば叩きのめすと言わんばかりのポーズに対して…
まったくと言うほど気迫はなく、震える箒は近づけば逃げ出してしまいそうな雰囲気である。
「君は…」
だが、その脚を見て思う。…努力してる子だ、中央程無駄のないレベルではないが、キチンと脚を育てている。
(あの時の爺さんが言ってた子は…)
「もしかして…」
「えっ、と!!!あのっ!初めまして…!ですよねっっっ…!!??」
「…あっ!」
ハッとなり、改めてちゃんと一礼する。
「……うん、初めまして!今日からここを務めるようになったトレーナーだ!よろしくね!」
「…トレーナー…さん?…ええ!?ええー!!!??」
「そんな驚く!?!?」
12 :
トレーナーさん
2022/11/14 12:13:21
ID:kvXibwg09o
その子は、昔担当していた子に良く似ていた。
臆病なのに賢くて、強かな子であったから。
13 :
貴様
2022/11/14 12:13:44
ID:kvXibwg09o
〜〜⏰〜〜
「すいません。すいませんっ…!!不審者さんが来たのかとてっきり…」
(不審者にさんを付けるのか…)
何度も大きく頭を下げる彼女に、俺は大丈夫と手を振る。
「でも、それにしても…そんな、驚く事かな。トレーナーって言ったって俺以外にも居るでしょ?」
「……えっ居ません…よ?」
「…えっ?」
「前の先…トレーナさんは…歳も病気も酷くてここ最近何日も来れてなかったんです、…教官も勉学が中心の仕事で、ここはもうトレーナーは1人も…」
「…そうなんだ。…ううん」
(いや、気づけた余地は多かったな。そもそもあんな老体の人がトレーナーをやってる時点で…)
「…私…それでどうしたらいいのか…困ってて…でも本当に来るなんて思ってなくて……」
今にも泣き崩れそうな少女に…理由を聞くのは酷だと判断し…
「と、とにかく!俺が新しくトレーナーになるから!その時はよろしくね!」
「……はい…!!…えっと……こんな田舎のトレセンに…来てくれて…本当にありがとうございます…!!」
「…ううん、それでその、改めて聞くけど…君、名前は……」
14 :
貴方
2022/11/14 12:14:09
ID:kvXibwg09o
「おい」
ポンと、突然背中を叩かれる。
…咄嗟に振り向くと…同じ鹿毛ながら、背の高い少女にググッと睨まれる。
「なんだなんだ不審者か〜?ちっちゃな子を狙うなんていい度胸してるじゃねーの?」
「あー!!カイちゃん!!この人は不審者じゃなくてね!!」
「ああ、俺は今日からここに…」
「ん?」
マジマジと服を見つめ…そしておぉ〜と歓声を上げる。
「って?お〜〜〜!!!!……そのバッチ〜〜……!」
「…バッチ…?あっ!!」
トレセンのライセンスバッチを癖でうっかり付けてしまっていた。慌てて外そうとすると、大きなウマ娘にその手を掴まれる。
「おーニーチャン!中央のトレーナーなのかよ〜!!なんだ〜?クビになったのか〜!?ま、落ちこぼれ同士仲良くやろーぜ!」
「…いや…、辞めてきた、ここを勤めたくてね」
「は?………いやいやいや、冗談はほどほどにした方がいいぜ…ここ、再来年には残ってるかも怪しいんだぞ」
15 :
マスター
2022/11/14 12:14:32
ID:kvXibwg09o
「…えっ…中央って……セントラル・トレーニングセンター?…あの?トレ….セン?」
「おー!間違いなく中央トレーニングセンター所属の正式なバッチだな〜!…これ取るのにT大合格レベルの知識が居るんだろ?エリート中のエリートの証だぜ〜」
「…ともかく、俺はクビになってないからな!自主退職でここに…」
「……辞めてここに来たんですか?…えっ?えっ?」「…いや流石にさぁ、それは冗談キツイって…」
「本気で来たんだけど…」
「「……えぇ〜〜〜???」」
16 :
お兄ちゃん
2022/11/14 12:15:42
ID:kvXibwg09o
カイちゃんは最後まで名前は出しませんがオペラの同期です
ノリ良く付き合ってくれるゴルシだと思っていただければ
17 :
トレーナーさん
2022/11/14 12:46:32
ID:meOEbhVSag
こんな……かな?
下手でごめんなさい
18 :
お兄さま
2022/11/14 14:03:44
ID:kvXibwg09o
>>17
まことありがたし…
19 :
アナタ
2022/11/14 18:24:49
ID:ULBbZiT.Xk
いいものを読んだ
早く続きを待ってるぞ…
20 :
貴様
2022/11/14 20:36:50
ID:jat0Edq5A6
非常に面白いものを見つけた
強いて言えばメイセイオペラのデビュー前年までトウケイニセイが現役だったり
当時の水沢は廃止や落ちこぼれどころか地方では屈指の強豪だった印象あるけど頑張れ
21 :
お兄ちゃん
2022/11/14 22:21:11
ID:urXsHcUb0o
〜〜⏰〜〜
「マジかよ…すげぇなニーチャンイカれてるぜ本当…」
2人に挟まれたまま、校舎へと向かっていく。
並木道は随分と綺麗だった。
…彼女が一人でやってたのだろうか?
「あー…ここ、きれーだろ?毎年写真コンテストで良いとこ行けるのよ、オペラが綺麗にしてるからなんだよな」
オペラ…てことはやっぱり、この子が…。
22 :
あなた
2022/11/14 22:25:27
ID:urXsHcUb0o
「カイちゃんがいつも写真に収めてくれるんです…皆に綺麗って言われるのがここだけしかないから…」
「ま、他のヤツらもこーいう風にちゃーんとやればいーんだけどな!そういう意味でもなー?ここヤバいぞ〜?」
「今更戻る気も無いよ…」
23 :
マスター
2022/11/14 22:26:11
ID:urXsHcUb0o
「でもっ、どうして地方に…来たんですか?わざわざ…しかもこの田舎に…?訳分からないですよっ…」
全く持って2人の言う通りであり……正しくあまりにも狂ってる物だった。
「…単純に地方の世界を知っていて、…そこで仕事したいと思ったんだ」
なるほどな、と背丈の高い方は頷く。
「じゃあニーチャン今からでも遅くないから東京に帰った方がいいぜ?特にここ、何度も言うけどもう廃校寸前のとこだぞ??」
「…中央の方が来ても満足なウマ娘も設備もないですよ…っ!」
「分かってるよ、…全部わかって来たんだ」
「…本当に、本当にどうして…」
「とりあえず!…2人とも、今から研修を受けて正式に活動を始めるから、その時はよろしくね!」
うん…!これ以上驚かれてもしょうがない!
…あんまり変に思われても嫌なのでザックリと済ませて逃げることにした。
24 :
お姉さま
2022/11/14 22:26:35
ID:urXsHcUb0o
「あ、ちょっと!もー少し話そーって!ちほーなんだしゆっくりやってけよー!」
「ごめんごめん!研修の時間に遅れる訳には行かないし!」
駆け足で走り、ささっと職員室の中に入る。
いくら足が早い彼女達でもここには簡単に入ることはできないだろう。
(人、少ないな…………本当にギリギリで回してるのか…)
25 :
相棒
2022/11/14 22:26:52
ID:urXsHcUb0o
〜〜〜〜〜〜
「……あ、言っちゃった…………わぁ〜〜、セントラル、セントラルだって!凄いよね〜私も行きたかったな〜…」
「トレーナーが来るっては聞いてたけど、中央から来るとは思わないじゃん…」
「えっ、カイちゃん、トレーナーさんが来ること知ってたの?」
「あ?逆に知らなかったのか?オペラ、じーさんから聞いてないのかよ」
「き、聞いてないよ…?教えても貰ってないよ……うう、どうしよう…自信ない…やっぱり私無理……」
(そーか、トレセン出身だって教えればオペラが自信を無くすからか〜。…悪手だったなぁ、アレ)
「…わかった!…オペラ!任せとけって!ひっ捕らえて全部聞いてやろーぜ!」
「………え?」
「いやだから、ほら、こ〜れ?」
「………ええええええ!!物騒すぎるよ!」
26 :
アナタ
2022/11/14 22:28:27
ID:urXsHcUb0o
〜〜⏰⏰〜〜
彼女達とひとまず別れてから、ささっと俺は研修を受ける事となった。
「本日はどうぞよろしくお願いします」
「こちらこそ、わざわざお手数をお掛けして申し訳ございません」
この学校の校長、…話によると、少し前に病で倒れたトレーナーの妻であり、教官も兼務しているという。
施設は一通り説明されたが、殆ど必要な設備は揃ってないに等しかった。
唯一食事の場だけ…ちゃんと存在していたが…
「おや。疑問でしたか?」
「…あっ…すいません、顔に出ていました?」
少し老婆は黙り、そして答える
「…学生として、ウマ娘としてそこだけは守らないと…と…まあ、エゴですね」
「……そうですか」
27 :
あなた
2022/11/14 22:29:26
ID:urXsHcUb0o
〜〜⏰〜〜
「以上で研修は終わりとなります。新しいトレーナーとして…いえ、この学校の新星として、期待していますよ」
しっかりと教本を渡されて、校長室の前で優しくそう言われる。
「新人に買いかぶりすぎですよ」
ふふ、と…年老いた老婆は微笑み、…重たい口取りで最後に告げる。
「トレーナーさんと言えど、スカウト制度は変わっておりません、…ただ…」
「…はい」
「ここは長年トレーナー不足と、最後のトレーナーだった夫自体の老年化もあり…サークル活動だと言って様々なウマ娘が普通の学生と同じように部活を行っています」
「…つまり、今俺がスカウトしても少なくとも上手く行かない可能性がある…と」
「はい…中央と違い、特にここは自分の意思で勝手にレースに出る世界です。当然未勝利で終わる子だけでなく、そもそも走る気がない子まで…」
「……仕方ない事とは言え、前途多難ですね…」
「ですから!…貴方には期待しておりますよ、こんな薄給で受けてくれるだけでなく、若く実績もあるなんて!晩年はタマモクロスの指導をしていた…そうですよね?」
「……はは、ありがとうございます。そうですね」
(よく知ってるな…やっぱり調べられるんだなぁ…)
28 :
トレピッピ
2022/11/14 22:29:52
ID:urXsHcUb0o
「…しかし、名トレーナーになれたであろうあなたがどうしてここに…?中央で何かあったのですか…?」
「いいえ、俺の意思でここに来ました、少なくとも心が折れるまでは務めるつもりでいますよ!」
元気よく答えると、教官である老婆は寂しそうに外を見た。
「グラウンドは、もう拝見しましたか?」
「…はい、既に確認しています」
「正直、どうですか」
「正直、……ですか。」
…………
「……とても酷いです、こんな場所では勝てるウマ娘も生まれません、整備もロクにされてないのを見るに、生徒の自主性も低いように見えます」
はっきりと、言葉を選ばずに答える。
「そうですか、…トレセンから来ただけでなく、地方のトレセンを見てる貴方なら、きっとそう言うと思っていました」
職員室から、外に繋がる窓に手を伸ばしーー
「我が校は、資金繰り売りもギリギリで殆どの設備も物も老朽化の一途を辿っています」
「……」
29 :
お姉ちゃん
2022/11/14 22:30:43
ID:urXsHcUb0o
「かつていた広告塔となりうるウマ娘も居ないですし、何よりここは東北の僻地、人口も少なければ…冬の冷たい風はグラウンドに大きなダメージを与える…」
「だけど、俺は諦めてないですよ、…そうじゃなかったらここを選びません」
「…………まあ、やはりあなたは、相当な切れ者のようですね」
「…」
「主人が黙ってたんですよ、…あなたのこと、今日の今日の最後まで、『きっとコイツはこの水沢のトレセンを大きくできる』と突如昨日叫びだしまして」
「勘弁してくださいって…」
「…だから、期待しています、あなたにはね、…夫があそこまで言うのだから」
「できる限り…はやってみます、それと…出資は結構です、まずは自分の力でできる所を探りますから」
その言葉に少し驚いていた彼女に、俺は静かに振り向いて外に出る。
(…さて、頑張るぞ…!)
30 :
あなた
2022/11/14 22:31:20
ID:urXsHcUb0o
そして…このトレセンを決めた日を思い出していた────
『水沢トレセンか、…ここ、再来年には廃校になるかもしれない場所だな、なんでんなとこを調べてんだよ』
『…ん?…ああ…そりゃもちろん』
『おいおいおい、まさかここにするのか?』
『うん』
『いやいくらなんでもやめとけって!! 廃校になるとこなんてな、なるべくしてなるのが当たり前なんだよ!!教員の腐敗だったり、育成環境が悪循環を辿ってるとこが大半だ!』
『うん。だから行ってみようと思うんだ』
『はーーっ……まあ、お前の意思なら止めねぇよ?ただ本当にやめておいた方がいいぞ、それこそ育成環境がしっかりしてる函館トレセンの方が…』
『…いいんだよ、ここで、これくらいじゃなきゃ、俺だって強くなれない』
『………はぁ…分かった…分かったよ、一応なんかあったら引き戻す様に常に準備してるからな』
『ありがと、…ま、戻らない気でいるけどね』
31 :
貴方
2022/11/14 22:31:34
ID:urXsHcUb0o
『本当に…強くなっちまって』
『…そうかな、まだ心は弱くて、自信は底知れぬほど無いまま…だけど』
『そういう事じゃないんだがね…』
32 :
トレーナー君
2022/11/14 22:31:46
ID:urXsHcUb0o
理由は無くても、高い理想はある。
どれほど無謀だ、身投げだと嘲笑われても、成し遂げたい理想があった。
その道はどこまでも遠く、何年、いや、10何年掛けても達成できるかも分からないほど険しいものだった。
(ひとまずグラウンド整備だよなあ……)
手伝ってくれるウマ娘も居ないだろうし、係員も居ない、…全部1人でやるしかない。
お先真っ暗なスタートだが、だからこそふつふつと熱が湧き上がって───
33 :
モルモット君
2022/11/14 22:33:13
ID:urXsHcUb0o
「あ、居たぞ〜こっちだぜーオペラ!」
「ちょっとカイちゃん…ほんとにやるの?セントラルのトレーナーさんなんだよ?」
「もう辞めてる身だから大丈夫だろって!オイラ、気になってたんだぜ〜これでも!」
「…えっと、そこで隠れてみてる2人は…」
「え、えーっと…えーっと!!」
「よーし抵抗すんなよ!」
「えっちょっ急に…何!?何!?」
バサッと麻袋を被せられ、グイッと持ち上げられる。
「ほら、オペラ、後ろ支えて」
「か、カイちゃん…そんな運び方しなくていいじゃん…!」
「いーって!いーって!!」
「ちょ!!!なに!!うそだろー!!?!!!」
今日は放課後だから大丈夫だって!とポンと袋の中を叩かれ、俺はオンボロで物置にされてるトレーナー室に連れ込まれていった。
(…う…裏切られたァァァァァ!!!!)
…………先行きは、どこまでも不安である
34 :
トレーナーさん
2022/11/14 22:35:59
ID:urXsHcUb0o
>>20
メイセイオペラのお爺さんのとこと足していい感じに割ったりしたり折衷した結果今回のお話みたいになってます
20の言う通り普通に水沢はこの頃結構ブイブイ行ってます
今回書いたのはかなりやりすぎな描写で
むしろ少ない人数で本当に努力していた場所で…メイセイオペラ以降の水沢競馬場は特に綺麗でしっかりしてる地方競馬場として有名なくらいなんですよね
ちなみにオペラが掃除してたとこは本当に実在するし綺麗なんで是非
水沢競馬場の桜道でググって貰えれば…
35 :
トレーナー
2022/11/14 22:41:00
ID:urXsHcUb0o
あっ続きは明日の昼か夜に
36 :
トレーナー君
2022/11/14 22:43:49
ID:ULBbZiT.Xk
カイちゃんのモデルが誰なのか分かってしまったけどこれマニアックすぎない?
オペラの戦績見ないと絶対分からないでしょこの子…
そしてなんとなく戦績見てモデルに相応しいなって納得してしまった…めっちゃレースに出て真面目にやる子なのね……
37 :
貴様
2022/11/14 23:15:13
ID:I6FKLMcC26
メイセイオペラはあの
明
正
って書かれたあかい
38 :
モルモット君
2022/11/14 23:16:28
ID:I6FKLMcC26
>>37
途中送信になった…
あの赤いメンコがカッコいいんよね
39 :
お兄ちゃん
2022/11/14 23:30:34
ID:ULBbZiT.Xk
ストーリー的にはまだレースにすら入れてないから長編だなこりゃ…
……オペラ物凄いレースでてない?大丈夫これ?完走出来る?
40 :
相棒
2022/11/15 12:47:36
ID:DmMZEQK/1Y
〜〜⏰〜〜
「よーし!着いた!あらよっと!」
「カイちゃん…乱暴に下ろしちゃダメだって…!」
「いっでぇ!…ここは…?」
麻袋から降ろされる衝撃で意識を取り戻す
……古ぼけた部屋で、色んなもう使えない機材が転がっている。いくつかは…修理すれば使えるかもしれない
「ん、ここ…?ああここ!トレーナー室だな〜!オイラが連れてってやったんだぞ!」
「…あ、えっと、お茶…!お茶用意しますねっ」
「あ、大丈夫大丈夫……ここがトレーナー室…か…」
「どーよー?汚いだろ〜?前のおじさん中々トレーナー室に来れなかったから、家の学校の物置になってるのよ」
「うん…まあ、想像以上には…汚い」
ちょっと待て
「なんでトレーナー室に連れてったんだよ!??」
「そりゃあ、前のトレーナーに所属してたよしみだって!」
(意味わかんねぇ!)
「あ、えっと、あの…ごめんなさい…ちゃんと説明しますね……!」
41 :
アナタ
2022/11/15 12:49:45
ID:DmMZEQK/1Y
彼女はぼんっと立ち上がり、そして話した。
「私…レースに勝ちたいんです!!それで…前のトレーナーさんの元で指導を受けてて…だけど…先生は…病で倒れてしまって…」
「つーわけでここが倒れるまで使ってた拠点なんだ、ま、メンバーはオイラとオペラしかいなかったけど…」
「…その…このままじゃ勝てないって分かってたんです、私とカイちゃんじゃ無力で…全然勝てなくて…」
「オイラは別にレースは興味無いんだけどな、オペラがこんなに勝ちたいって言って1人で頑張ってるのに無視するのもなーって」
「…1ヶ月くらい前から…ついに私たちに練習メニューは届かなくなってしまいました…」
「……そっか、やっぱり君だったのか」
「知って…居たんですか?」
「…ううん、…先代に頼まれちゃって…」
「えっ…えっーー!!」
42 :
トレーナー君
2022/11/15 12:51:13
ID:DmMZEQK/1Y
─────────
『彼女を、彼女をどうか頼みます、メイセイオペラを──あの子は強い子じゃない、とにかく臆病で、体も小さくて、だけど、──賢い子です。…貴方なら…きっと貴方なら──私の無念を果たしてくれると信じています』
『俺は…そんなできたトレーナーではないですよ』
『…はは、ふふっ…!貴方は面白いことを言いなさる、心も覚悟も出来てないセントラル出身が、わざわざ地方に来る訳ないでしょう?』
『………』
─────
43 :
トレーナー君
2022/11/15 12:51:36
ID:DmMZEQK/1Y
「な〜!ニーチャンー!トレセン出身なんだろー!?オペラをG1?かなんかでバンバン勝てるウマ娘にしてやってくれよ!頼むよ!お願いだよ〜〜!」
「わっ!」
強くせがまれ揺さぶられる、だが、苦い顔をするしかない。
地方に来た時点で覚悟はしていたのに、改めて言われ、答える覚悟が…中々厳しかった。
だけど、答えればそれは…あの爺さんに対する裏切りになると思って。
「…G1は、難しい、正直、…無理だ」
振り絞った言葉に、オペラは静かに頷く。
「…えー!なんでだよーー!」
「…わかっていました」
「G1を取れたのは、トレセンの…その中でも5パーセントに満たない子達だ。地方じゃまずチャンスはない…でも…」
「でも…?」
そうだ、あの人に、…ここに来た覚悟のために全力を尽くすんだ。
44 :
貴方
2022/11/15 12:52:02
ID:DmMZEQK/1Y
ぐっと目を向けて、オペラを見る。
「G1に出よう。いや、出るだけじゃない、…やろう…目標にしよう!G1の勝利を!」
「…嘘、えっ!!ええー!!!!!!!!!」
「むむむ無理ですよ!!さっきセントラルでも5パーセントに満たないって!!」
「誰もしてないこと、できないと言われてること、…だけど、できないと言われてるだけで、できる可能性はある」
「…でもよ、聞いたオイラが言うのもなんだけど…どうやって行くんだよ」
「ファン数…人気と、実績。地方じゃ中央よりファンは増えなくても…とにかく数を勝てばチャンスは来るはず」
「…へへっ、じゃあ、思ってるよりはチャンスはあるんだな!頑張ろーぜ」
「まだ…私、デビュー以外で勝ったことが無いです」
「オペラ〜?」
「無理だと、本当に思います。だって…勝てない、私は勝てません!勝てる子じゃないんですっ!!」
オペラは…唐突に泣き叫ぶ。
…彼女は相当に努力を積んできた子だ。結果は伴わないのは…この環境と、まだ未熟な足だったからだろう。
それでも、…彼女が前のトレーナーに見せれたレースは指で数える程しかなく。…特に地方バなら、それで決定付けてはならない。
45 :
お姉さま
2022/11/15 12:52:33
ID:DmMZEQK/1Y
「オペラ、…俺の話、ひとつしていいか」
ゆっくりと頭を撫でて話しかける。
オペラは驚いた顔で、だがその手に嫌がらなかった。
「……トレーナー…さん…?」
「…俺、賢い子はいくつも見てきた。でも、…賢いだけで勝てる子はいなかったよ、勝てる子はみんな特別なトモや何らかの高い戦略を持っている、皆殆ど自分だけの武器を持っている」
「……オペラじゃ、勝てないって事か?」
頷き、そして見る。
「今はただ賢いだけだ。…それでは勝てないと思う」
「なら…」
「だから…3ヶ月、…うん、それが限界だ」
「3ヶ月………?」
俺は壊れたホワイトボードを持ち上げて、ペンで描く。
短く書いた3ヶ月という線と、下に1年と書いた長い線。
「3ヶ月だけでいい、それ以上の時間をかける猶予もない…基礎トレーニング、そして何より…レースで勝つ為に必要なものを作る時間だ」
46 :
トレ公
2022/11/15 12:52:58
ID:DmMZEQK/1Y
「…でもよ、レース出ないで3ヶ月も黙ってたら流石に勘当されちまうだろ?」
「…そうだね、なら…そのレースも力にしていこう!」
「へへっ、てことは…すぐに勝てるわけじゃ当たり前だけどねぇな」
「さっき言った通り、G1を狙うなら長期的なトレーニングで準備をしていく必要がある…段階的にレースに出る必要だってある。ただ、…そんなことしてたら、ここは廃校になるだろ?」
5割くらいまで示した段階で、線を切り…残りを消した。
「…………それでは…勝てない…のでは…?」
47 :
お兄ちゃん
2022/11/15 12:53:17
ID:DmMZEQK/1Y
「───いいや、勝つ」
「……っ!」
「ほ〜う?」
なるほど!とカイはぽんと手を叩いた。
「賢いだけなら勝てないんだろ?…その強みとやらを3ヶ月で手に入れりゃ勝てるって事だ!つまり普通よりも圧倒的に短期間で終わるんだ?そういうことだろ〜?」
「……そうだ!オペラは基礎能力はある、もう少しで開花すると俺は踏んでいる。…実際は結果を見ないと分からないこともあるけど…」
「……」
ぎゅっと、その手を握る。
「ひゃっ」
「お爺さんから聞いたんだ……誰よりも賢く、努力する子だって、最初に出会った時から、君は──君はここにいる他のどんな子よりも違うと確信してるよ」
「オイラだって、ここの部屋に来たのは3ヶ月くらい前だけど…でも、オペラの事、ずっと凄い奴だって思ってるよ」
「…うぅ………あの…それ…なら…」
自信を持って欲しかった。あとは俺とオペラ次第で──
48 :
トレーナー君
2022/11/15 12:53:45
ID:DmMZEQK/1Y
「…なら、先生って、呼んでもいいですか?」
脈絡もないそんな言葉に、2人は固まる。
「えっ」
「えっ??」
意外な質問と、思わず漏れた言葉。
「おいおいおいおい!そこは…はいかYESじゃねぇのー!?」
「ごめん、カイちゃん…でもね!…こんなに凄い人だから…やっと自信が持てそうだから…!」
「えっとそれは…どういうこと?」
少し荒く息を吐き、…そして整えて、オペラは笑う。
「自信が無い時、前のトレーナーさんは、いつも頭を撫でて、娘のように優しく励ましてくれました。ずっと…尊敬する人でした」
「……」
「さっき、撫でられた時に…思い出して閉まったんです。…あの時の彼を、だから、…だから──!」
最後に1呼吸を置いて、オペラはめいいっぱいの声で話した。
「だからっ!セントラルから、何もかもを捨ててここに来た貴方を───尊敬する人で居たいんです!!どんなに気弱な時も背中にいるって分かるだけで──自信も、胸も張れたから───!!」
49 :
トレーナーさま
2022/11/15 12:54:08
ID:DmMZEQK/1Y
『───どうか、どうか諦めないで、あなたは、あなたなら──誰よりも誇れるトレーナーになれます。だって、私の誇りなんですから』
「─────っ!!!」
50 :
お前
2022/11/15 12:54:49
ID:DmMZEQK/1Y
「…ああ!!俺は少し不甲斐ない男だけど…君の『先生』らしくあるために努力する、…うん!約束するよ!」
「……はい!……先生っ…!」
「〜っし!決まりだな!それじゃ、オイラも呼び方統一した方がいいか〜?センセー?」
「…それは…ちょっと…好きなように呼んでもいんじゃないかな?」
「じゃ、ニーチャンでいいか?」
「………言うと思ってたからいいよ」
最早半分諦め気味だ、芯があるオペラと違って、とにかくこっちは言いくるめられる。…たぶん、対抗するだけ無駄だろう。
「なんだよ〜?しけてんな〜?ニーチャンらしく努力しろよな〜、ご飯奢るとかさ」
「……はいはい、前向きに考えるよ」
「じゃ、…おう!とりあえず…頑張ろうぜ!」
「ああ、頑張ろう、…オペラ」
「はい…先生!」
「そんじゃ掛け声やるぞ〜!!」
「うんっ!カイちゃん!!」
「えっ!?!?」
へへっ、と俺の手を奪い、3つの手を合わせて円陣を組む。
「行くぜ?…水沢トレセ〜〜ン……ふぁーい!おー!!!」
「おー!」「お、おーっ!!」
51 :
トレーナーさん
2022/11/15 12:56:46
ID:DmMZEQK/1Y
「あ、わかってると思うけどオイラとオペラしか居ないからな、セントラル…は確か6人チームなんだろ?」
「………うっ」
「人手不足だし、とにかくやれること、3ヶ月って言ったけど時間は絶対足りないと思ーよ、それこそ、オペラの活躍しだいだろ」
「………そうか、そうだな!」
「オペラがすごいと、オペラに憧れて沢山ウマ娘が来るってすんぽーよ!今はしょぼいけど…オイラ、……ここが活気溢れて、みんなでいい場所に変えれるってのが夢なのさ」
「…そうなると、カイ…だったかな、君の戦績も当然大事になると思うけど?」
「……ははっ、言うね〜。………でもオイラは才能ねーよ。オペラに集中して欲しい」
「……」
「…ちょっと…それじゃあ不公平だよカイちゃん…」
「いーの、…満足してるんだぜ?これでもなー、セントラルからトレーナーがわざわざ来たってだけで、オイラの夢の半分は成就してるんだ」
「カイ…えっと、…本当にそれでいいの?」
「…おう!…改めて名乗っておかないとだよな、あー……、──まあ、やっぱいいや、カイでいーよ、オイラの夢は──この水沢トレセンを、もう一度復活させることだ!」
「…」
「だから、一緒に頑張ろーよ、オペラ、雑務は得意なんだ、何から何までやるからさ!」
「…うん、……うん!!」
52 :
相棒
2022/11/15 12:57:06
ID:DmMZEQK/1Y
恐ろしいほど、カイは…自分の事など眼中に無いようだ。
オペラのように迷いがある訳でもなく、本気で、本心はレースではなく──ここを復興させることと思ってる。そう感じた。
「ひとまず…今日は解散するか〜!明日から準備していこう」
「カイちゃん勝手に決めちゃダメだよ!…先生は、それでいいですかっ?」
「……ああ!今日はここを一通り視察することにするよ、…明日から本当に始めるために、できる限り準備しないとダメだから」
「…よーし!じゃあ帰ろーぜオペラ!」
「うん!…前の…師(せんせい)にも、手紙で報告しないとっ」
「真面目だよな〜、じゃ、…明日から、本当に頼むよ、オペラのこと」
「ああ!……任せてくれ」
「おう!じゃーなー!!」
53 :
貴様
2022/11/15 12:57:24
ID:DmMZEQK/1Y
恐ろしいほど、カイは…自分の事など眼中に無いようだ。
オペラのように迷いがある訳でもなく、本気で、本心はレースではなく──ここを復興させることと思ってる。そう感じた。
「ひとまず…今日は解散するか〜!明日から準備していこう」
「カイちゃん勝手に決めちゃダメだよ!…先生は、それでいいですかっ?」
「……ああ!今日はここを一通り視察することにするよ、…明日から本当に始めるために、できる限り準備しないとダメだから」
「…よーし!じゃあ帰ろーぜオペラ!」
「うん!…前の…師(せんせい)にも、手紙で報告しないとっ」
「真面目だよな〜、じゃ、…明日から、本当に頼むよ、オペラのこと」
「ああ!……任せてくれ」
「おう!じゃーなー!!」
54 :
使い魔
2022/11/15 12:57:45
ID:DmMZEQK/1Y
──────
拝啓、お世話になったあなたに
───師、私ね、尊敬できる人に会えました。
その人は、全てを捨ててここに来た……それは、童話に出てくるような騎士のようで。
だけど、あの目は1度大きなものを失ったように感じました。
でもきっと…不思議な事も、理由も、これからわかる事。
私はまだ何も知らない。…彼のこと、私の力の事、このトレセンの未来のこと。
崖っぷちの私たちに、現実はきっと凄く厳しい風を浴びせると思います。
だけど
どこかで確信してるんです。
あの時の真っ直ぐな目を見て、信じたいって思えたんです。
これから新しい先生と、私の親友と、3人で道を開いていきます。
どうか…1年前のように……ずっと、優しく見守っていてください。
また、手紙を送りますね。これからは忙しくなるから、手紙の頻度は落ちるかもしれませんが…
私はきっと、真っ直ぐ歩めると思います。
55 :
お姉さま
2022/11/15 12:58:08
ID:DmMZEQK/1Y
この夕暮れは、全ての始まりの日
俺たちの物語は、今歩み出したのだ
56 :
トレーナー君
2022/11/15 12:58:33
ID:DmMZEQK/1Y
ようやく一区切りが着きました
次の話は少し時間を開けるかもしれませんができる限り早く出します
57 :
トレピッピ
2022/11/15 17:07:13
ID:1iPKzzKuvo
続きキター!!!
最近の楽しみなんだ!!
無理せず完走してくれ頼むぞ
58 :
お姉さま
2022/11/15 22:48:05
ID:iIaQ59tRAI
ようやく追いついた
暇つぶしに読ませて貰ってるがすげぇ出来だ
続きを待つから必ず書いてくれよ
59 :
トレピッピ
2022/11/16 01:01:23
ID:ouHTHO9nlE
次が楽しみです…
60 :
あなた
2022/11/16 19:22:40
ID:jbqti1stEg
支援
ところでですます語で話すトレーナーの過去に出るウマ娘は誰だ…
前の担当はタマモクロスって言ってたけどタマはそんなふうに絶対話すわけないし…てことはその前にも担当が居たのか??
誰だろう……?喋り方的にたぶん既存のウマ娘では無い気がするし…
61 :
貴方
2022/11/17 23:20:42
ID:f8cqNhbOhI
支援age
続きはまだかい…?もう2日目だぞう
62 :
アナタ
2022/11/21 22:20:57
ID:Lrbg419DcA
務めて1日目、顔合わせが終わり、今日は早めに帰って明日に備える事にした。
だが俺はまだ帰る訳には行かない、明日の為にも準備を進めないとダメだから
(一応グラウンドはそれなりに走れるな、ゴミとか落ちてないし、これなら明日そのまま使えそうだ)
若干土の段差や硬さがあるが、河川敷等で走るよりは何倍も良いだろう。
練習機材の方は殆ど錆びており、ダンベル系は酷く錆びてもう使われず何年もたって居るように見える。
チューブやスピードガンは使えそうで、ひとまず練習メニューは走り込みや実践的なダッシュ、…あとは併走を中心に組むしかないか。
63 :
貴様
2022/11/21 22:21:55
ID:Lrbg419DcA
一通り施設を見た次に、オペラの記録を調べていた。
カイは何故自分ではなく、オペラを選ぶのか───少なからずとも、買いかぶるだけの理由はあるはずだ。
地方は資料が少ない為、校内記録の彼女データを発掘してようやく確認することが出来た。
その原因も──すぐにわかるものだった。
「1戦目は4馬身差で勝ってる。だけど2戦目から動きが変だな…乱調にも程がある、……そうか、前トレーナーがいなくなって1人になってからこの調子なのか…!」
前トレーナーはオペラを2年もの間育て上げ、デビューの直後に病に倒れて引退した──それ以降、オペラは明らかに乱調気味で、勝てるレースすら簡単に負けている。
10月の頭のレースの2着も含め、どうにも心の乱れが激しいように感じた。
ここから勝つには──12月までにどうすればいいのかを決めなくてはならない。
「素質があるが、乱調になる原因はトレーナーが居なかったから…となると、どう指導するべきか…」
64 :
お姉ちゃん
2022/11/21 22:23:05
ID:Lrbg419DcA
今の段階ではオペラと信頼関係が築けてるとは言い難い。つまりこの状況でレースに出ても負けるのは必然である。
だからプランとしてはこうだ。
ひとまず素質や能力面は間違いなく開花してきてる。
だが、現実勝ててない。大半の人にそう話すと納得できない状況が現に起きてるのだ。
その理由はよく知っていた。『制御が下手』なのだろう
強いウマ娘に往々に存在するのが、いくら強い能力を持っても、力の使い方が上手くない、そうなればどれほど表面の能力は高くてもレースに勝てないことは多くある。
事実、俺が担当してきたウマ娘は全員そうだった。……能力をよく理解し確実に勝てるレースを選ぶ子。…力の制御を覚え、自分よりも遥かに高い敵を倒して来た者…。
オペラは能力は高い、賢いとなれば、問題はメンタル面だ。勝ち方を知らないし、その機会もチャンスも少なくスランプに陥っている。
それを達成すれば信頼だって得れるはずだ…ここを狙うしかない
「つまり──彼女が勝ち方を覚えれば、もしかすると本当にG1を勝てるかもしれない」
65 :
アナタ
2022/11/21 22:23:22
ID:Lrbg419DcA
12月までに勝てるレースを覚えさせる。
もちろん勝てなくても良い、勝てない時に経験値に変える指導が必要だろう。
勝つことで経験値を積めるように、負けても力に出来るような精神力──
あの臆病な子を強気な子に変えるという訳ではないが、それでも自分の中でレースに納得出来るくらいにはなって欲しい。
その為にはまずは彼女の信頼を得ることからスタートラインになるだろう。
「先生か…少しでも、頼りある指導者らしく振る舞う事が…オペラの力になるのかもしれない」
66 :
トレーナーちゃん
2022/11/21 22:23:41
ID:Lrbg419DcA
翌日、朝から俺はトレセンに着き──
「よし、始めよう!!」
修理したレーキ板と、大きめの安全靴 、汚れても大丈夫な服を着替え、グラウンドを整備していく。
「………あの人──確か昨日来たって言うトレーナーさんよね…」
「セントラル出身らしいよー、やっぱ中央の人って、自分から行動するんだなぁ…私たちとは出来が全然違うね」
「………」
67 :
お兄ちゃん
2022/11/21 22:23:59
ID:Lrbg419DcA
オペラについてはまだよく知らない。
だけど、俺が来るよりも早く彼女は居て、並木道の掃除をしていた。
努力する子なら、彼女と同じくらい俺も努力すればいい。
少なくとも人の身にこの広さのダート整備は無茶がある。ただ、それでもやることに意味があるだろう。
何せ、俺がやらなければ誰もやらないのだから。
「………お〜〜〜〜〜!!!感心したぜニーチャ〜ン!!」
「……ん?」
「おー!おはようだな〜!」
「ああ、おはよう!」
「グラウンド整備とはい〜い根性してるぜー、オイラも手伝うよ!レーキ板残ってるか?」
「ああ!」
スペアで修理していたレーキ板を渡すと、彼女はありがとよっ!と言って早速構える。
「オペラのためにも、オイラ達全員が頑張らないとな〜!!行っくぜー!!」
ダッシュで一気に綺麗にしてくカイを見て、俺も負けじと走り出す。
「おいおいニーチャン無茶すんなよ〜!そんなんで倒れたらまたオペラが泣くからな〜!」
「泣かせないよ!!若い内は働いてナンボだって!!」
68 :
お前
2022/11/21 22:24:17
ID:Lrbg419DcA
〜〜⏰〜〜
気づけば、俺とカイで互いにダッシュ競走のようにレーキ板を引っ張り走っていた。
直線に入り、いつもの桜並木の前を通ると──
「おはようオペラ!今日から練習頑張ろーな!」
「ちょ、ちょっとカイちゃん!?先生まで……!?」
「はぁっはぁっ…ちょ、ウマ娘早っ…バケモン…」
「先生ー!?い、今行きますねっ!!」
「大丈夫だよオペラ!来る頃には終わらせるから!!」
「いー返事だぜ〜ニーチャン!走りきって他の生徒にも宣伝していこうぜ!新生水沢トレセンの姿をな〜!!」
「くっそぉぉ!!」
軽快に走るウマ娘と、今にも倒れそうな男がグラウンドを綺麗にしていく。
確かにこれは、オペラ以外にも…トレセン全体に好影響を及ぼすだろう───
だが───
(死ぬっ!!!…物理的に………!!!)
1200m、1.2km、20を超えた男に課せられたのはダートの地を重いレーキを持ってきちんとキレイにするように何周も走る地獄の行軍だった。
69 :
モルモット君
2022/11/21 22:24:34
ID:Lrbg419DcA
〜〜⏰〜〜
チャイムがなり、カイと俺は3週目辺りで終わりを迎えた。
確かにダート場は遥かに均されて綺麗になった。人の手ではどうしても
「ま、全体の40パーセントくらいだけど、いい方じゃねーの?オペラが走る分には十分だろ」
「はぁっはあっ………」
レーキ板を杖のように構え、なんとか俺はふらふらと立ち上がる。
「先生……あの…大丈夫…ですか?」
「ま、今日だけだよ、ニーチャンがやるのはな…」
「えっ…?」
「これ。いい筋力とスタミナが着くと思うよ?練習が終わったら、オイラとオペラがしっかりやっていこうよ」
その方があんたの為にもなるだろ?とカイは見てくる。
…この子も相当な切れ者のようだ、…むしろそれで何故…
「…ははっ、いいとこ見せようとしたけど、これじゃあ背がないな…」
「いや、充分だって!…オペラはむしろさ、そういう無理する行為の方が心配しちゃって困ると思うし」
「そっか…」
70 :
貴方
2022/11/21 22:24:58
ID:Lrbg419DcA
「それに……ほら、見なよ」
「……?」
「すごい人だね…中央のトレーナーさんって」
「あんなに真剣にウマ娘と向き合ってくれるんだ…」「私も…私も入ろうかな…」
「広告としては、良かったんじゃないの」
「無茶だけは…本当にっ…本当にっ…」
泣きつき抱きつくオペラをまた撫でて、ゆっくりと手を離す。
「大丈夫…大丈夫、…うん、結果としては良かったんだな、…なら良かった」
「じゃ、午後からよろしくな、どうせ2人だけだろーし…書類仕事も少ないんだろ?ゆっくり休めって」
「……うん、そうするよ」
71 :
トレピッピ
2022/11/21 22:25:11
ID:Lrbg419DcA
トレーナー室に戻り、自分の行動を振り返る。
やはり、…オペラもそうだが、隣のカイも只者では無いのかもしれない。
現実的にオペラの求めてた物をまだ理解してなかった。彼女の方がよく理解してるとつくづく思う。
「もうちょっと、理解をしていかないと──」
午後に向けて改めて誓い、彼女の理解を深めてく事を決める。
まだ俺たちは知り合って2日しかない。
…3ヶ月という時間を自ら設定して焦ってるのは俺の方なのだろうな。
72 :
貴方
2022/11/21 22:26:35
ID:Lrbg419DcA
午後、オペラとカイを呼び、早速指導を始めることにした。
「よっ、…ニーチャン!みろよ…こいつら」
「………えっ??」
そこには何人ものたくさんのウマ娘達が居た。
「もしかして、新しくメンバーが…」
「いえ!トレーナーさん!私たちの指導は不要です!」
「私たち、オペラちゃんを手伝いたいんです!」
「話してやったんだよ、ニーチャンがここに来た理由、それと──オペラの思いも、みんなそしたら手伝いたいって言ってきてさ」
「…ごめんねっ…みんなっ…」
「しょぼくれんなって!…理解してるんだよ、オペラの強さをな」
「……本当。凄いやつだな……」
へへっ、とカイは鼻を鳴らし───
73 :
アンタ
2022/11/21 22:27:10
ID:Lrbg419DcA
「1番、凄いのは、───アンタだって」
「……えっ?」
「なーんでもない!さっさと始めようぜ!」
「…うん!分かった、始めよう!!」
(全く、とんでもないやつが本当に来たよな)
遠くの景色、活力ある若者、未来ある有望株のベテランが突然地方にやってくる。
おとぎ話でもこんな上手い話は無い、だが…当然現実ならばここから上手くいく保証も無い。
オペラはこここら練習や特訓を積んでも全く開花せず終わる可能性、これは充分にある。
だが…そう、コイツはそれはそれでいいなんて思ってきてる、そう見えた。
(…本当、買いかぶりすぎかなぁ?これ?裏があるとしか思えねぇよなー)
まあ…左遷ではないのは経歴を見てるから分かるんだけどね。だから余計怖いってだけかも
74 :
トレーナー君
2022/11/21 22:27:25
ID:Lrbg419DcA
〜〜⏰〜〜
「基礎トレーニングを中心に……これらのものを6セット、…オペラ以外の子も、ちゃんとやってくれ、トレーナーとしては、来た子はサポート側だとしてもちゃんと育成したい」
「…あいよ、もちろんだよ〜」
「……はいっ!!」
基礎トレーニングをする中、動きが違かったり、姿勢を各自にしっかり指摘していく。
「…確かに…こりゃ凄いな…今までやったどんなやつよりも…体が軋む」
「…はあはぁっ…疲れる…っ」
「うん、いいぞ!…それと、終わったらとりあえずオペラとは相談をしないとかな」
「…相談…ですかっ…?」
「レースの時の心構えを聞きたい…まだ分からないんだ、担当も君も誰も全然…」
75 :
アナタ
2022/11/21 22:27:42
ID:Lrbg419DcA
〜〜⏰〜〜
全員の基礎トレーニングメニューを終了し、彼女達にコース整備をお願いする。
全員快諾した上で、オペラに質問をした。
「レースの時、どういう心構えで走ってる?」
「心構え──ですか?」
難しい質問だったろうか?オペラは少し悩む顔をしている。
…いや…違う…彼女は、俺が100点だと答えてくれる回答を探してるように見えた。
「ごめんっ!…戦略とかじゃなくて、レース中…心の中はどうなってるのかなって」
「……それは…その…」
きっとそこに答えがある、正解じゃなくても。
「この質問に正解はないよ、正直な答えが聞きたい」
「真っ暗…なんです」
「真っ暗…」
「前も後ろも左も右も分からなくて…どこを走っていいか分かりませんっ…怖くて…怖くて…」
「そうか……なら、……よし…そうか…!それなら…」
作戦はシンプル、だがだからこそみんなの協力が必要だ
「次のレース、俺達がゴールにいよう」
「……へっ」
「とりあえず見る場所が分からない時は…みんながゴールに居るから、そこを目掛けて走ってみて」
「……先生…はいっ…!!」
「その為にも…もちろん、レースの知識も覚えさせないとだから──」
76 :
トレピッピ
2022/11/21 22:28:16
ID:Lrbg419DcA
10月下旬、オペラをレースに出すことにした。
今回は勝つことは目的にしていない、オペラがこの意識をしっかり持てるか──つまるところ、勝ち方を覚えれるかの練習をするためだ。
「知識は覚えたが、実戦は今日が初めてだ…さてさて…」
「うーーん、見た感じまだまだ緊張してるぜ〜、いつものオペラだよ」
「……だね、でも今回はいいんだ」
「「オペラ〜!頑張って〜!!」」
後ろの声援を見て、…静かにカイに目をやる。
「応援団だぜ?ニーチャンが言った通り、オペラに必要なのはゴールを指し示す事なんだろ?なら大きな声で置いてやるべきだって」
「懇談会のお母さんみたいな声援だなぁ…」
「「何ですって〜!!」」
「すいません…」
カイはそれを見て手を抑えて笑いを堪えていた、どんだけツボになったんだよ。
「人も少ないけど、オペラを皆信じてやってるんだ、さ、ほら!ニーチャンもやるぞ!!」
「えっっ俺も!?!?」
「いやお前が提案したんだろ!?この作戦!?」
77 :
相棒
2022/11/21 22:28:35
ID:Lrbg419DcA
「……うおお!!がんばれーー!!!オペラーーー!!」
「やっちまえーー!!!」
「「がんばれ〜〜!!」」
「……みんなっ…!」
みんなが見てる、そこにゴールがある。
…うん、行ける!!
『大事なのは、最適化させてレースを走ること、先行で走る時の最大のメリットはそれだ、基礎能力はしっかりあるから、誰よりも無駄なく走ればいい、常に80パーセントを維持すれば勝てる、乱れそうな時は…ゴールで応援してる俺たちを見据えてくれればいい、そこまで来たら、後は力勝負で押すしかないから』
『……分かりましたっ、…まだ、怖いけど…でも…!!』
怖いけど、みんながそこにいる。
私を応援してくれる人が、そこにいる。
だから、もう少し…あと…少し………あれ……
周りに2人のウマ娘に囲まれる、どこを抜ければいいのか分からない…こういう時、どうすればいいんだっけ──
(オペラ……あのままじゃ…あと少しで追いつけない…)
嫌だ、負けたくない。勝ちたい、あと少しなの。
「うっわぁぁぁ!!!!」
柄になく叫び、前へと出る。だが───
78 :
トレーナー
2022/11/21 22:28:46
ID:Lrbg419DcA
「焦ってる、な…」
「…惜しかったなぁ…」
オペラはもう少しのところで抜かせず、2着で終わった。
79 :
お姉ちゃん
2022/11/21 22:29:08
ID:Lrbg419DcA
「お疲れ様、オペラ」
「…すいません、最後に焦っちゃって…」
「いや、むしろ───それだ、その末脚が俺が見たかった物だ」
「……えっ?」
「オペラ、負けたくなかった、そうだよね?」
「……はい」
「きっと、前までの君は…もう負けてしまうと思うレースが多かった、…でも、今は負けたくなかった、応援する皆が居るから──」
「負けたくなかった……私、勝ちたかったですっ……!!悔しくて、悔しくて…」
この時、俺は確信した。
オペラは才能開花を迎える。
この勝ちたいと思う気持ちが、間違いなく今、オペラを強くした。
…目覚めさせた!
「オペラ」
「はい」
「勝ちたいなら…もう一度、…もう一度レースに出よう!!オペラ!!」
「…はいっ!!」
ああ、ようやく──
「無理ですって……言わなくなったね」
「────っ!!」
「君は勝てるよ、絶対に」
80 :
アナタ
2022/11/21 22:30:03
ID:Lrbg419DcA
俺は真の意味で確信する。
オペラは次のレースで勝つ。…準備は整った
後は…あとは彼女が勝つのを見届けるだけだ
81 :
トレーナーさん
2022/11/21 22:31:51
ID:Lrbg419DcA
続きは明日夜に
後個人的な話
・オペラは負けてる頃から愛されてた
珍しい話なのですが、オペラにはその物静かな所が好かれ、負けてた頃から無名よりは愛される馬だったそうで
特にデビュー以降初めての勝利を迎える段階で既に普通の馬よりもずっと人気があり、レースでのオッズは比較的常に低かったです
まあこれオペラ自体は素質があることは走る前の段階で気づかれていて
勝つことさえ覚えれば連勝できるって下馬評の段階で言われてました
ただ、今回書いた通りオペラの精神的な負け癖が着いており
勝つことを覚えきれず敗北を繰り返していたと言われてます。
次のストーリーからは勝つのでどんどん強いオペラが見れると思います
82 :
マスター
2022/11/21 22:36:05
ID:TafsElyka6
遅かった…遅かったじゃないか…!!!
ほんとにまってたぜ…!
83 :
アナタ
2022/11/21 23:27:26
ID:OUcyaj6z/s
待ってた!
84 :
トレピッピ
2022/11/23 11:45:33
ID:phaFJJWDng
───そうしてオペラと、カイと、2人のチームが設立して…一月がたった。
11月の初旬、オペラには短い期間だが、基礎能力のチェック、メニュー、そしてレース知識をひたすら覚えさせる。
とにかく、オペラの成長速度はあの日から明らかに早くなった。
教えたことはすぐに身につくし、動きを教えればすぐに覚える。
彼女の勝てないと思う弱気な心に今勝ちたいと本気で思えたのだ。
だから…次は勝たせなければならない。
行けると確信してるが、リスクもある。そこで負ければオペラはまた諦め癖が着いてしまうだろう。
この絶好のチャンスを逃す訳には行かない。リスクもあるが、それ以上に逃せば次は無い
85 :
トレーナー君
2022/11/23 11:45:50
ID:phaFJJWDng
あの敗北の日から2週間が経つ。
───盛岡レース場。
水沢と違い、こちらは山形の中央に近いだけあり、地方の中でも賑わっていた。
「…頑張れよ、オペラ…」
「「「オペラ〜!!頑張って〜!!」」」
「ほんと…アイツ…勧誘が上手いな……どんどん人員が増えてる…」
オペラのサポート志望から、トレーナーとしての担当をお願いするもの。
チームとしての名前もない『水沢トレセンのチーム』だが、その数は間違いなく増える一方だ。
指導する量も比例するが、オペラの分は減らしてない。それについては他の子も皆納得していた。
私よりも努力していたオペラを優先して欲しい──と。
彼女達もまた、オペラに魅了されている、それだけ、あんなに臆病な彼女に確かにみんなどこかで信じてたとこがあったのだろう。
「頑張れよ、オペラ───」
86 :
貴様
2022/11/23 11:48:25
ID:phaFJJWDng
「……ふう」
「よしなに頼むよ?オペラ」
ダートの先、ゲートの中には…初めてのレースから居た同期がいた。
「うんっ!カイちゃん!…手加減はしちゃダメだからねっ?」
いやいや…何言ってんだよ、オペラ
「オペラに手加減なんてする余裕ないって、無理無理絶対無理」
階段に沢山のウマ娘が居る。ゴール前に、明らかに人の塊がある。
皆が待ってる、ゴールの場所で、たしかに応援する声が聞こえていた。
手筈はちゃんと出来ている。…下準備は完成した、後はオイラもオペラの助けになれるように…
「うん…っ、……勝てる…今日は…きっと─!!」
「へへっ、こっちもだ。…やっぱ、いいトレーナーだよ、アイツは」
誰よりも、オペラの為になるように───
「…そうだね」
「始まるぞ、…本気でやれよ、オイラが納得しない走りをしたら許さないからな」
───オペラを倒すくらい、食らいつくのみだ
「───っ」
ガチャリと、ゲートが開いた。
87 :
お姉ちゃん
2022/11/23 11:49:07
ID:phaFJJWDng
2人はほぼ同時に走り出す。若干オペラの方が綺麗にスタートを切れた
1番人気はオペラ、2番人気はカイ
最も長く教え、最も長く練習し、最高の盟友である2人。
その2人が勝負する日は、冷たい空気と快晴で…土も適度に湿気っていて状態も良い。
…決着を付けるには、本当に絶好のレース条件だった。
88 :
トレーナー君
2022/11/23 11:50:29
ID:phaFJJWDng
コーナーを周り、オペラはペースをつねに一定に走り抜く。
「…ふんっ!!」
が…ここでカイが仕掛ける、本来よりもずっと早仕掛けに前に出始め…まるでオペラを試しているようだった。
彼女は誰よりも知っている、オペラの弱点を──
賢く優しいが故に相手の単純な行動に弱い。流れにのせれば終わりだ
少なくとも前のオペラなら────!
(ここでお前が掛かれば…オイラの勝ちっ…!!)
「………………見えたっ」
「………えっ?」
早仕掛けした彼女よりも早く、オペラは更に走り出す。
悠々に、疲れる姿は一切なかった。
「…嘘だろ…」
一気に呼吸が乱れたカイを他所に、オペラはずっと走る。
(先生…見えたっ!見えたよっ!!…絶対勝って……勝って…っ!!!)
「オペラーー!頑張れー!!」
「うんっ………行けるっ!!!」
周りの全てのウマ娘を大きく超えて、馬身はどんどん離れていく。
「……なんだよアレ…こんなの勝てるかって…!」
単独でオペラは全てを抜き去り、ゴールへと一直線にたどり着いた。
89 :
あなた
2022/11/23 11:52:08
ID:phaFJJWDng
誰よりも圧勝のゴールイン、オペラはその時、嬉しそうに走りだし…
まるでまだまだ余力を、もっと長い距離も同じ速度で走り抜けると言わんばかりに駆け出して……
「先生っ!!先生ーーっ!!」
俺の元へと、勢いよくレールにぶつかる勢いで走り出し…。
「オペラ…危ないよ!!」
「わっわわわ!!すいません!!」
大きく頭を下げ、そして笑う
「…私…勝てた…勝てましたっ…!やった…やったぁ…!!」
「……うん!おめでとう……本当に…おめでとう…!」
ゆっくりと頭を撫で…えへへと笑う声に…かつてのオペラの言葉を思い出す。
90 :
お前
2022/11/23 11:52:53
ID:phaFJJWDng
『自信が無い時、前のトレーナーさんは、いつも頭を撫でて、娘のように優しく励ましてくれました。ずっと…尊敬する人でした』
あの時言っていたオペラの言葉
そうだ、オペラは支える人が居ないと勝てない。…彼女は強く、そして弱い。
オペラを俺は知らなかったと思ってた、彼女が本当に求めてるのは
…誰よりも強くて臆病な自分を支えて、優しく守ってくれる人なのだ。
「……頑張ったね。おめでとう、オペラ」
いつもより、長く、優しく…頭を撫でる。
ロングヘアーが崩れないように、さするように耳を撫でてあげた。
「はいっ!…勝てましたっ…本当にやっと……やっと…!」
「勝ち方、分かったね…」
「はいっ!!!」
「………良かった…………賭けに勝ったんだ…」
91 :
お姉さま
2022/11/23 11:53:35
ID:phaFJJWDng
〜〜〜〜〜〜⏰〜〜〜〜〜〜〜
「「かんぱーい!!」」
「とほほ…opでもないレースなのに…」
焼肉バイキング、…なお全員奢り。割り勘は無し。
…オペラのデビュー外での初勝利を記念して焼肉に来ていた。
「いーじゃねーかよーー!オペラが勝ったことでオイラも飲み食いできて実質大勝利ってことだな〜」
「それでいいのか本当に!」
「いーんだって!な?オペラ」
「へへ…勝てた…勝てたんだ…」
「…そーだ!勝てたんだぜ!しかも圧勝の圧勝!あんなふうに走れば次も余裕だって!なー!みんな?」
「「オペラ最強!!!」」
「10人分か…平気で8万飛ぶとはな…」
「食べ放題なだけ有情だと思うんだな〜、オペラがG1勝った日にゃぁ…行くか!ジョジョ!!」
「えーっっっ!!絶対先生財布が死んじゃうよ!ただでさえ薄給で困ってるんだよ!?」
「俺が給料で困ってるなんてリアルな話をするのはやめてくれ」
貯金は一応…そこそこあった、が、こうもあっという間に横線を迎えるとは…
「まーまー!でもさ、オペラ、やっぱりお前強いよ、オイラと8馬身もつけちゃって…本当、自信もっていーよ」
「……うん、カイちゃん…」
「きっと、いつかG1、…絶対取れる!そう!勝てるんだ!オイラの高級焼肉の為にもな!だから頼むぜ〜?オ・ペ・ラ!」
「…へへっ!うんっ!もちろんっ!」
「あ〜じゃあ段階あげてくって感じで寿司でもいいな?次重賞勝ったら寿司にするか?行きてぇなぁ寿司!」
「待ってくれ本当に勘弁して」
「「やったーー!!」」
「………ウソだろ……」
項垂れる俺に、隣に座っていたオペラは、上目遣いに嬉しそうに話す。
「…先生、私、頑張りますっ!ようやく勝てたのが本当に嬉しくて……幸せなんですっ…!」
今は、この笑顔だけが救いだろう。
「…うん…オペラ、頑張れ!…G1のためには小さな1歩だけど…間違いなく、近づいたんだ」
「はいっ!」
92 :
トレーナーさま
2022/11/23 11:55:36
ID:phaFJJWDng
「じゃ!この辺からこの辺までもう全部頼むぜ〜!」
「ちょおいまてそれは有料の方だろ!?」
「奮発しろよな〜!!」
ギャハハと笑うカイとみんなに、俺は少し肩を竦めた。
今は喜ぶべきだろう…きっと俺が来るまで本当に長く勝ててなかったのだ。
…そして、これから何度も戦いに挑むことになる。
この勝利は間違いなく、オペラにとっても、俺にとって1番大きな1歩だった。
…同時にこれほど上手くいってる事が、俺にとって恐ろしかった。
神様はいつも最後に牙を向けるのだから
…ついでに…俺の財布もいつその牙が噛みちぎるのかも不安で不安で仕方なかった。
93 :
お姉ちゃん
2022/11/23 11:56:01
ID:phaFJJWDng
昨日夜出せなかったので今日出しました
ゆっくり呼んでくだせぇ…
94 :
トレーナー
2022/11/23 19:31:34
ID:VM5FXKRlIY
オペラがついに勝ったか!
ここからは史実だと連勝の時期だから楽しみだ
95 :
お兄ちゃん
2022/11/25 13:10:28
ID:K7wNxtzY/g
支援age
続きはまだかい?
96 :
お姉ちゃん
2022/12/12 13:59:14
ID:irPTeiSrGU
頼むから失踪しないでくれ…
97 :
あなた
2022/12/12 14:37:01
ID:u9WJpeNcWQ
これふたばのいもげの奴じゃん
▲
|
全部
|
▼
|
ウマ娘BBSに戻る
名前
(空白でランダム表示)
画像
※JPEG/PNG/GIFのみ。最大サイズ合計: 8MB
画像は3650日で自動削除する
画像認証
(右画像の数字を入力)
コメント
スレをTOPへ (age)
※コメントは15行まで
※画像などのアップロードの近道 :
http://imgur.com/
※コメント書き込みの前に
利用規約
をご確認下さい。