ウマ娘は実在しない。

ウマ娘とは、面白い競馬を、史実に劣らないレベルの高い競馬を見たいと望む人々の間で自然発生的に生まれた理想の生き物である。

はじめはジョークに過ぎなかった。
ウマ娘はこの宇宙のどこかにいるはずの理想の走者だった。
しかしそれは当時のまさに黄金と呼ぶに相応しい競馬に絶頂していた観客の間で瞬く間に広まって行った。
ウマ娘ならこう走った。ウマ娘のあのパフォーマンスは良かった。
観客はそうやって、少しずつ理想の競走ウマ娘のイメージを固めていった。
彼女は健康的で快活な女の子である、彼女が信頼する相手はトレーナーである、彼女は走らないと落ち着かない、そして彼女は親しみやすいことに勝利が大好きなのだ！

ウマ娘はこうして、観客の理想の走者のイメージのコラージュとして生まれたのである。
観客はウマ娘を欲した。故にウマ娘は存在するのである。