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メイクデビューのモブウマ娘ちゃんを安価で導くスレ【SS?】
1 :
トレぴっぴ
2024/06/07 07:54:14
ID:dEMSm/gcgI
「今日は初めての公式レース!トレーナーさんの期待に応えられるよう頑張るぞ!!」
新潟1600m芝 良 晴 13人
結果>>3
402 :
トレーナーさん
2024/06/29 21:49:43
ID:N9IjzrUFYU
アヤベはトプロからキタノが自分のために必ず秋華賞に復帰すると聞いた。
そして当の本人を見に来たらこのざまだったというわけだ。
しかし、キタノはすぐにやる気を無くすウマ娘ではないことは知っている。
だから隣に座ってキタノの話を聞くことにした。
キタノは少しずつ話し出した。けがは治った。しかし、またいつ怪我をするか、いつ走れなくなってしまうのか。
その恐怖におびえていると。その気持ちはアヤベにもわかる。それは全てのウマ娘が抱える境遇、あるいは運命なのかもしれない。
しかし、アヤベ自身も自分と代わりに失った妹という運命と共にいる。だからこそ運命を超えるための言葉をキタノに掛ける。運命というものは誰にでも必ず訪れる。それはキタノはもちろん、アヤベ自身にもだ。
だから、その運命と向き合う勇気が必要だと、キタノに伝えるのだった。
403 :
貴様
2024/06/29 21:52:40
ID:SbZ0zaaziA
「……キタノさん、あなたの勝利への意欲はその程度で折れる物だったの?」
(……!)
「私が知ってるキタノさんはもっと勝利に貪欲だったわ。」
「でも今のあなたは強かったキタノダイヤモンドではない。ただのウマ娘……」
「……キタノさん、このまま砂に溺れたままでいいの?」
(……勝ちたい)
「だったら、勝ちなさい。どんなに嫌われてもどんなに惨めでもどんなに泥臭くても勝ちなさい。」
「……ありがとうございます!」
「…次のレースまで時間が無いのでしょう?こんな所に居ないで少しでも走って勝てるようになさい。」
404 :
◆MpgAVDknPw2
2024/06/30 13:24:48
ID:roX3lVTDPc
上げ。あと追伸。
今のところ395と396からズレていてすみません
405 :
キミ
2024/06/30 16:51:36
ID:miF2JcA7xE
アヤベの言葉を聞いて、キタノはハッとする。
自分がなんのために走るのか、誰のために走るのか。
またわからなくなりかけていたが、アヤベの言葉で少しわかった気がする。キタノはまた、立ち上がるのだった...!
406 :
◆wuHHR64l1og
2024/06/30 18:19:47
ID:roX3lVTDPc
アヤベはトプロから、秋華賞復帰を目指すキタノの動機を聞いていた。
全てを背負い、引退宣言をしたアヤベのため……それを聞いて、彼女の心のなかに一筋の光が差していた……それなのに。
「______なんで、あなたが沈んでいるのかしら?私を、もう一度奮い立たせたいのでしょう?」
「でも、わたし、ホントに無理で……」
「……見損なった。やっぱり私は、この合宿までね。菊花賞には出ず、レースを引退させてもらうわ」
頑なに心を開かないキタノを突き放す言動をし、
アドマイヤベガはその場を離れようとした。
(待って、嫌だ。行かないで、行っちゃ嫌だ)
どくんどくんと、鼓動が速まっていくキタノの心臓。
一歩また一歩と離れていくアドマイヤベガを、引き止めたいと焦る心。
じゃあ、それをするためには?
407 :
◆wuHHR64l1og
2024/06/30 18:20:02
ID:roX3lVTDPc
「______待ってッ!!」
「……っ!?」
アヤベは聞いた。背後で浜の砂がぶわっと舞うような音を。
そして次の瞬間、
「わたし、アヤベさんともっといっぱい、走りたいですッ!!」
キタノは彼女の片手を掴み、その歩みを引き止めたのだ。
(なによ、ちゃんと立って、走り出せるんじゃない)
そうされたことに、それが行えたことに内心で安堵するアヤベ。
合宿所に戻りながら、二人は話を続けた。
______走りたいと思うのも、怪我に怯えるのも、ウマ娘の宿命。
だから自分は、その時が訪れるまで走り続けたい。
アヤベの覚悟はとうに決まっていたのだ。
喪ってしまった片割れへの想いを持ち続けながら、
トゥインクルシリーズを走り続ける……アヤベは、引退を取り消すことを決定していた。
キタノは面食らったように驚いたが、同時にとても喜んだ。
彼女の脚は前日までよりとても軽く、今すぐにでも走り出せそうな状態だ。
一連の出来事をトレーナーに報告しに行くと、トレーナーもとても喜んだ。
そして今度こそ、キタノの夏合宿が始まる。
1ヶ月のブランクを取り戻し、トリプルティアラの夢へ向かって______。
408 :
◆wuHHR64l1og
2024/06/30 18:36:14
ID:roX3lVTDPc
その日の午後。キタノは夏服からジャージに着替え、砂浜に立っていた。
よく晴れ、水気の少ないサラサラな砂浜だ。
脚で軽く踏み込んでみると、それなりに靴が沈む。
(重い……こんな中で走るんだ。油断したらすぐに転けそう)
いつものレース前のように、足元の確認をしていると……。
「うんうん、やっと来てくれたね!」
「あ、トウカイテイオーさん!」
今回のトレーニングプランの考案者、トウカイテイオーが現れた。
ようやくキタノが立ち上がったことに喜びつつ、改めてトレーニングの説明を始める。
「この砂浜の環境をフルに使った、筋力強化トレーニングだよ!ブランクのある身体でも通常時の2倍以上のトレーニング効果が見込めるって話だけど……」
本来これは、”1週間”のブランクが合った夏合宿前までのキタノに組んでいたプランだ。
それが1ヶ月ものブランクとなれば、今のキタノには少しばかり負荷が重いかもしれない。
しかし、それでもキタノは。
「2倍!?凄いじゃないですか!よーしっ、まずは往復10本でしたよね、行ってきまーすっ!!」
ずっと運動していなかったとは思えない蹴り出しの良さでスタートを決め、砂浜を駆けていくのだった。
(キタノちゃん、これほんとに1ヶ月走ってなかったの!?)
いつも以上のパフォーマンスを見せるキタノに困惑するテイオーだが、彼女の方は1年間のブランク明けで有馬記念を走って勝っている。
409 :
◆wuHHR64l1og
2024/06/30 19:02:18
ID:roX3lVTDPc
その光景を横目に、自身も秋の菊花賞に向けてトレーニングに励むアヤベ。
(……落ち込んでいたと持ったら、すぐに立ち上がるなんて……私もだけど)
妹のためにも、走り続けなきゃと思った。
だがしかし、最大の理由は……キタノ自身だ。
アヤベもまた、望んでいた。それは”罪”であったはずなのに。
それでもなお、望んだ。
そして気付いた。この”罪”は、走ることでしか償えないと。
だから______
「アヤベさーん!次始まりますよー!!」
「ええ、今行くわ!」
アドマイヤベガは走ることを選び続けた。いつかまたキタノと並ぶとき、それがもっと強くなった自分であるために。
そして、あっという間に8月が過ぎていく。
「やぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
キタノは合宿中にレースに参戦することはなく、ひたすら自己研鑽に励んだ。
重バ場に強い脚を、砂浜を使って効率的に鍛えぬく……。
最終的に、それは万遍ないステータスアップへとつながっていくのだ。
雨の日は室内で。雨上がりは重バ場を楽しむように、キタノは走り続けた。
410 :
◆wuHHR64l1og
2024/06/30 19:20:50
ID:roX3lVTDPc
______さらに日が経ち、合宿も最終日を迎えた。
キタノは名残惜しそうに、切ない表情で海岸の砂を手で掬っていた。
(な、なんとかなった……のかな?)
内心は1ヶ月という短い期間でブランクを取り戻せたか、とてもハラハラしているのだが。
「だ、大丈夫だよね……?」
表情とセリフが合っていないが、キタノは自分の努力がちゃんと実るか不安であった。
……暑かった夏が過ぎれば、秋のGIシーズンが幕を開ける。
ここからが始まりなのだ。
トリプルティアラまであと一つ。
それを思い出し、キタノは気を引き締める。
「……大丈夫っ!!」
声に出し、立ち上がる。
荷物を抱えてバスに乗り込むその表情は、どこかキリッとしていたという。
(何が彼女をここまで変えたのか……いや、詮索はやめておくとしよう)
同じバスに乗っていたタキオンは、8月からのキタノのトレーニングデータも漏れず記録していた。
(理由よりも、気にすべきは実数値の方だねぇ)
7月以前の彼女のパフォーマンスよりも、格段に強くなっているのだ。
1ヶ月のトレーニングで伸びる平均値を遥かに超えて、キタノは成長していた。
(彼女は私の想定を遥かに超えて……クククッ、楽しみ……だ……)
揺れるバスの中。アイマスクを装着しながら、タキオンは眠りに落ちていく……。
411 :
ダンナ
2024/06/30 21:35:18
ID:wljaP5CB4I
アヤベさんの復活が早い。オリ展開の醍醐味
412 :
トレピッピ
2024/07/01 05:31:30
ID:6f9O6uffXc
タキオンが倒された悪役見たいになっとる(笑)
413 :
◆wuHHR64l1og
2024/07/01 06:10:27
ID:oMRWw4XDb2
まだ暑さの残る、9月上旬。
『アドマイヤベガ、現役引退を撤回!!菊花賞出走を表明!!』
学園に戻ったことで、アヤベのその旨が正式にメディアに公表された。
その日の夕刊やニュースなどで大々的に報じられ、世間はアヤベの復帰に喜び、安堵した。
そしてもう一つ……。
『キタノダイヤモンド、秋華賞出走を表明!!』
骨折から2ヶ月ほど経ち、夏を挟んだその間に復活を遂げたキタノダイヤモンドは、改めて秋華賞への出走を伝えた。
ファンがどう思うかで走るのではなく、一緒に走りたいと思う/そう言ってくれる人がいるから走るのである。
……そして、2つの記事をスマホで見ながら、闘志を燃え上がらせるウマ娘がいた。
(まずはわたくしの番ですわ……!!)
ムーントラックだ。彼女は夏の間にも重賞を制覇し、その先へ向かう準備を着々と整えている。
9月後半に行われるGI、スプリンターズステークスへの出走……短距離界の最強ウマ娘が集うこのレースで、初めての栄光を掴む。
良い戦績を残してきた一族の誇りにかけて、そこに自分も並び立ちたい。
「負けませんわよーっ!!」
休憩が終わり、彼女はまた全力疾走で駆けていくのだった。
414 :
◆wuHHR64l1og
2024/07/01 06:22:49
ID:oMRWw4XDb2
「……すごい気合だね」
ハイペース走を続けるムーントラックを見ながら、メジロドーベルがつぶやいた。
「こっちも負けてられねぇです!」
隣でストレッチをしていたユキノビジンは、自分たちも頑張らなきゃと改めて気合を入れているようだ。
(キタノも復活できたし、もう悩むことはない……)
夏合宿の半分1ヶ月の間、戦意を失ったキタノをずっと見てきたドーベルは、
ライバルの復活に心の底から喜び、全て吹っ切れていた。
(今度こそ、私が獲る……最後の1冠を!)
万全な状態で走るであろうキタノにこれ以上負けないよう、
ドーベルもまた気合を入れるのだった。
こうしてそれぞれの日々が過ぎ……スプリンターズステークス開催の日を迎えた。
当日の天気・バ場状態、ムーンの枠、(16人)。
>>415
415 :
トレぴっぴ
2024/07/01 06:47:52
ID:tB.OHp..RU
5枠10番
416 :
◆wuHHR64l1og
2024/07/01 06:50:48
ID:oMRWw4XDb2
>>415
天気!天気は!?
417 :
◆wuHHR64l1og
2024/07/01 07:09:53
ID:oMRWw4XDb2
なんかもどかしいので再安価します
>>418
418 :
キミ
2024/07/01 08:09:08
ID:8GUauhpyls
晴れ稍重
419 :
アンタ
2024/07/01 08:09:54
ID:8GUauhpyls
>>418
枠番忘れてた
3枠6番
420 :
トレピッピ
2024/07/01 08:18:22
ID:oarVibBIfw
>>416
すみません、うっかり忘れてました...
最安価内容採用でお願いします
421 :
◆wuHHR64l1og
2024/07/01 09:52:54
ID:oMRWw4XDb2
『スプリンターズSが開催されます此処、中山レース場には、既に多くのファンが詰めかけています』
前日に降った雨の影響で、稍重な芝状態の中山レース場。
先に開催された多くのレースでも、走りづらさ故かスローペースな展開とタイムが続く。
観客たちの一部やSNSからは、こう言われていた。
〈キタノダイヤモンドが出れば勝てるんじゃね?〉
〈秋華賞の前に完全復活を見せてほしい〉
などなど、クラシック世代のトップと評判のキタノダイヤモンドのスプリンターズS出走を願う声が多かった。
(……)
控室で、SNSを見ながらもどかしそうな顔をするウマ娘・ムーントラック。
「ファンの方々は勝手なことを……今回出るウマ娘たちに注目してほしいですわ!」
キタノは出走しないのだ。
出るのは自分を含めた短距離界トップを狙う16人。
ムーンは見せつけてやろうと思った。
自分も強いウマ娘なのだと。
観客たちの度肝を抜いて、一族の誇りを証明してみせると。
……そして時間になり、パドックへと向かうのだった。
422 :
◆wuHHR64l1og
2024/07/01 10:26:13
ID:oMRWw4XDb2
『さあ、各ウマ娘ゲートイン。この電撃6ハロン戦を制するのはどのウマ娘か?』
ムーンは外目10番ゲートからの出走だ。
専門家の解析で、稍重な芝では外枠のウマ娘が勝利する傾向が強いという結果も出ている。
だが、勝負は始まってみないとわからない。
(……今度こそ、勝つッ!)
『今______スタートしました!』
スプリンターズステークス 中山1200m芝 16人 晴・稍重
各ウマ娘、揃ってのきれいなスタート。
短距離レースということで、最初からペースは早めだ。
先頭は内に切り込むように3番。そこに先手を取りきれなかった最内1番が続く。
荒れた芝は、ロスの少ない内側を誰もが走りたい。
中団も同じような展開……ムーントラックは外に出ていた。
(少しきついですけど……混戦は避けさせて頂きますわッ!)
外目を走り続けることの距離ロスより、集団に揉まれて競り合うことによる消耗や、進路が塞がることのリスクケアを優先する。
『前半600mは35.6!スローペースな展開でレースが続きます』
ムーンの予想通り、殆どがゆっくりと展開を伺うことでペースはスローに。
集団の中には既に精神的消耗が激しいウマ娘もいた。
423 :
◆wuHHR64l1og
2024/07/01 10:26:47
ID:oMRWw4XDb2
『最終コーナーを通過して向正面。残り200m!』
(ここですッ!!)
ウマ娘たちがペースを上げて前に行こうとするなか、後方のムーントラックが大外から脚を伸ばす。
『大外からムーントラック!これはフローラSの再現か!?どんどん突き放すッ!!』
あの日も、稍重でスローなレースだった。
オークスでもそれをしようと試みたが、距離が長すぎた。
だが、今はどうだ。1200mはどうだ。
「はぁぁぁぁぁぁっ!!」
適正距離だ。完全にハマった。
誰も来ない、誰も来ない。重バ場に、最後の坂に脱落する。
だが落ちない。ムーントラックは落ちない。
『ムーントラック!一着でゴールインっ!!』
______その宝石は、電撃纏ったその輝きを見せつけたのだった。
424 :
◆wuHHR64l1og
2024/07/01 11:00:43
ID:oMRWw4XDb2
「やっ……やりましたわぁぁぁぁぁっ!!」
1着となり、天に向かって喜びの声を上げるムーン。
やっと自分もGIを勝てた。
華麗な一族の1人として名を残せるウマ娘になれた。
そしてなにより、とても嬉しかったのだ。
______観戦に来ていたキタノは、
「ううっ……よかったねぇムーンちゃんっ!!」
ムーントラックの初GI制覇に感動して大泣きしていた。
隣に座っていたトレーナーがびっくりするほどに。
(わたしも、負けてられないなぁ。 ……よし、頑張るぞっ!)
観客に深々とお辞儀をするムーンを見て、キタノもまた秋華賞への決意を新たにするのだった。
そして、今日のGIレースはこれで終わりではない。
『フランス・パリより、ここロンシャンレース場。凱旋門賞、まもなく出走です!』
425 :
◆wuHHR64l1og
2024/07/01 11:24:47
ID:oMRWw4XDb2
日本のウマ娘が出走する海外レースのある日……特に日本時間で夜のレースの場合、
寮のテレビ室は1時頃まで開放されている。
そして今日。スプリンターズSの興奮も冷めぬまま、そのレースの幕が上がるのだ。
(凱旋門賞かぁ。フランスの超すごいGIだって聞いてるけど、どんな感じなんだろう)
キタノは海外レースの観戦は初めてで、周りに流されるがままにテレビ室に来てみたものの、イマイチ実感が湧いていない様子だ。
「お嬢さん、海外レースの観戦が初めてって顔をしてるね?」
「え、そうですけど……あなたは?」
そんな彼女に声をかけてきたのは、勝負服では伊達メガネを外す、学園1の情報通……トランセンドであった。
「このトランセンドが、凱旋門賞について色々教えてあげちゃうよ」
「いいんですか?ありがとうございます!」
「ただし、情報料はちょっともらうけどね」
(じょ、情報料?)
突然中高生同士の会話じゃなくなってきたことに困惑するキタノに、トランセンドは構わず続けた。
「キミが今開けようとしてるそのポテチ……半分ちょうだい?」
426 :
◆wuHHR64l1og
2024/07/01 13:22:53
ID:oMRWw4XDb2
「______凱旋門賞は、今まで日本のウマ娘が勝ったことが一度もないレース」
皿に盛ったポテチを時折口に入れて噛みながら、トランセンドは説明を続けた。
「その理由・説は色々あるけど、まず第一に環境の変化が激しいことだね。
飛行機で何時間も揺られる上に、向こうでは気候や食事の内容もまるで違う。普段の生活を180度ひっくり返すことになるんだ」
(そっか……”普段”通りの実力が発揮できなくなるから……)
話を聞きながら、キタノはそれをメモに書き記していく。
「次に、向こうのレース場の問題。ロンシャンは日本の芝とはまるで違う……特に雨が降ったとき/その後が一番ひどいらしいね。細くて深い芝が絡みついて、着地時の衝撃をほぼほぼ吸収してしまう。んー、砂浜。走りにくいでしょ?そういう感じかな」
(日本の芝は固くて反発力がある……でも、ロンシャンの芝は反発が効かなくて、日本の芝に慣れてるウマ娘にはすっごく不利かも……)
メモを続けるキタノ。トランセンドはその心意気に感心しながら、話を続けた。
「だから、凱旋門賞に挑戦できる日本のウマ娘に必要なのは……重バ場に対する適応力を持った娘だとウチは思うんだ。例えば……キミとか?」
「えっ?」
急に自分のことを指され、ハッとするキタノ。
「わ、わたし?」
「うん。キミ、重バ場レースの戦績めっちゃよくて、評判いいって聞くよ。
そうだなぁ……来年。挑んでみてもいいんじゃない?」
427 :
◆wuHHR64l1og
2024/07/01 14:23:24
ID:oMRWw4XDb2
色々話し合っているうちに、その時がやってきた。
『さあ、日本のウマ娘がパドックに姿を現しました!』
テレビから流れる現地の映像と音声に、かなりの数のウマ娘が集まり釘付けになっている。
そんな中、姿を見せたウマ娘は……。
『エル、登場デェェェェェス!!』
スペシャルウィークたちと同期であり、クラシック級では総合TマイルCとジャパンカップを制覇したウマ娘……エルコンドルパサーだ。
シニア級に上がってすぐに海外遠征を始め、いくつかの海外レースを制覇し……ついに凱旋門賞へ挑もうとしている。
「さてさて、今年はどうなるか」
「ですね……!」
テレビを見守りながら、トランセンドとキタノダイヤモンドは二袋目のポテチに手を付けていた。
そして、各ウマ娘のゲートインが終わり……。
『さあ、今年もまた夢を見よう、凱旋門賞……スタートしました!!』
428 :
◆wuHHR64l1og
2024/07/01 14:31:06
ID:oMRWw4XDb2
______結果は、敗北であった。
順調に先頭を走ったものの、残り400mで仕掛けたフランスのウマ娘・モンジューに並ばれ、追い抜かれ、差し返すことは叶わなかった。
半バ身差での2着……。
現地もテレビ観戦も、これを見ていたすべてのファンが、悲しみと悔しさに包まれた。
(すごい、これが世界のレース……最高峰って呼ばれる凱旋門賞ッ!!)
周りのウマ娘たちにもどんよりとしたムードが流れる中で、キタノの目の色は違った。
とても希望に満ち溢れ、燃えている。
「わたしも……いつか!!」
そんな彼女の隣には、すでにポテチの空袋が6つも積まれているのだった……。
429 :
◆wuHHR64l1og
2024/07/01 14:39:53
ID:oMRWw4XDb2
トプロたちクラシック3冠のお話を。
>>430
~
>>434
430 :
トレーナーさん
2024/07/01 18:08:39
ID:4PSkv2j.rM
アヤベの引退回避、そして菊花賞への出走最表明は、多くのファンの安堵と期待が高まる結果となった。
クラシック3冠のうち、アヤベは1つ、そしてトプロとオペラオーはなんとしても菊の冠は獲りたいところだ。
3人は互いを強く意識しあい、トレーニングに励むのであった。
431 :
◆wuHHR64l1og
2024/07/02 08:11:11
ID:w8aUM8RivA
なんか
>>430
だけで満たされそうなので書けますね......
432 :
ダンナ
2024/07/02 08:56:29
ID:THNMla9Ivw
>>431
430です。
そんなこと言っていただいて嬉しいですわ。ありがとうございます
433 :
◆wuHHR64l1og
2024/07/02 09:05:34
ID:w8aUM8RivA
キタノたちが秋華賞に向けてのトレーニングを重ねている裏で、
クラシック3冠の最後の一つ......菊花賞の勝利を目指すウマ娘たちもいた。
「だぁぁぁぁぁっ!!」
ナリタトップロードは、特に小回りを意識したコーナーリングの練習をしている。
菊花賞の舞台......京都レース場のコーナーは、彼女が苦手とするタイトなカーブが特徴だ。
下手に大回りで曲がってしまいスタミナを消費することを避けるためにも、
本番までに克服しておきたい部分である。
「はぁぁぁぁぁっ!!」
お馴染み覇王・テイエムオペラオーも、トップロードと同じくここまで2冠を逃している。
彼女のトレーナーは、オペラオーは長距離まで対応できる身体能力を持っていると評価しているが......2400mのダービーでは最終直線で失速し、
3着に終わってしまった。
菊花賞は3000mの長距離だ。オペラオーの持っているポテンシャルを余すことなく発揮すれば、勝利は揺るがないはず......というトレーナーの見解に応えるべく、
(最後の1冠は、ボクがっ!!)
覇王が覇王足るためにも、彼女は走り続けるのだ。
434 :
◆wuHHR64l1og
2024/07/02 09:05:45
ID:w8aUM8RivA
「......」
トップロード・オペラオーと並び3強と呼ばれ、特にダービーウマ娘となって知名度も高いアドマイヤベガは、
スポーツドリンクを飲みながら日陰で休憩していた。
(......なんなの。左脚の違和感・痛み......)
夏合宿が終わって以降、アヤベは自身の身体に謎の不調を抱えるようになっていた。
医者に診てもらっても何も異常はないのに、走ると脚が痛むのだ。
冷却やテーピング処置を施してはいるものの、痛みは日に日に増している。
(......そっか。そうだったんだ)
芝生に寝転び、目をつむり、彼女は悟った。
(あの子は、まだ、私を......)
妹はまだ、自分を赦してはくれていない......と。
この痛みは、きっと罰なのだ。
キタノは許してくれた。でも、妹は赦してくれない。
自分がまだ、走り続けることを。
『______お姉ちゃんの脚は、菊花賞までで______』
心のなかに、そんな声が聞こえた気がした。
そうして、アヤベは。
(菊花賞まで、か。良いよ、そこで壊れても。もともとその予定だったし!
私の走りはすべてあなたのもの!全部、全部......!)
「あはっ、はははははっ!!」
狂ったようにひとしきり笑ったあと、立ち上がってグラウンドへと戻っていくのだった......。
435 :
◆wuHHR64l1og
2024/07/02 09:20:52
ID:w8aUM8RivA
彼女たちの様子を見つめる、二人のウマ娘の姿があった。
「後輩たち、頑張ってるねぇ」
「......」
ハレバレストロングと、キヌハヤダだ。
ストロングの方は、脚のテーピングが少し減っている。
「おじさんもまた、走りたくなってきちゃったよ」
頑張る後輩たちの姿に、本能的な何かが溢れ出してきそうなストロング。
そんな彼女を見て、ハヤダは。
「......簡単に戻れると思うなよ。レースは甘いもんじゃねェんだ」
今もトゥインクルシリーズを現役で走るハヤダは、ブランクの長いストロングがそう簡単には復帰できないことをわかっている。
GIに挑むウマ娘たちのレベルはとても高い。クラシック級の後輩たちであっても。
それは、宝塚記念で十分に実感させられた......。
『______同着!同着ですッ!なんとなんとキタノダイヤモンドとグラスワンダー!ぴったり同時に1着ッ!』
あの日、あの最終コーナーで、キヌハヤダもグラスやアヤベと同じくらいのタイミングで外から仕掛けたつもりであった。
それまでは脚を溜め、最後に剥く牙を研ぐように待機していた。
だが、あの瞬間。キヌハヤダは仕掛けられなかった。
近くを併走する二人の圧が、勝ちたいという強い気持ちが、彼女を前に進ませなかったのだ。
(______認めてやるよ、おめぇら)
キタノたちは、ハヤダの求めた"真のレース"が出来るだけの実力を持っている。
だからこそ、ここで立ち止まるのは愚行。
「......次の有馬も、出る」
「へぇ。おじさんも負けられないねぇ」
強さを認めた後輩たちを迎え撃つべく、
ハヤダは今年の有馬記念を目指すのだった。
436 :
◆wuHHR64l1og
2024/07/02 10:59:44
ID:w8aUM8RivA
秋華賞当日の天気・バ場状態
>>437
437 :
トレーナー君
2024/07/02 11:01:00
ID:M4yN4.0wes
天気、雨。バ場、重。
438 :
◆wuHHR64l1og
2024/07/02 11:01:40
ID:w8aUM8RivA
>>437
()
439 :
◆wuHHR64l1og
2024/07/02 15:18:50
ID:w8aUM8RivA
というわけで
440 :
◆wuHHR64l1og
2024/07/02 15:39:44
ID:w8aUM8RivA
秋華賞前日......。
軽めのトレーニングを切り上げたキタノは、近所のコンビニに立ち寄っていた。
(わっ、ほんとにある......新聞)
そこで見たのは、明日の秋華賞を特集しているレース情報新聞であった。
『トリプルティアラ達成なるか、泥の女王』
『戴冠を阻む者たち』
......などなど、様々な見出しで特集記事が組まれている。
ついに明日なんだとワクワクしながらキタノは飲み物を買い、外に出る。すると、
「.....あ、降ってきた」
ぽつぽつと雨が降ってきたのだ。
次第にざぁざぁと勢いを増していき、土砂降りになる。
(な、なんでこんな時期に~!?)
台風が来るとも聞いていないし、まさに予期せぬ自体であった。
だが、同時にキタノは喜びながら、寮へと走る。
(しばらく止まなければ......うん、いけちゃうかも!!)
自身の得意な環境である重バ場が作られれば、走りやすくなる。
キタノはそれを信じていた。
その結果......。
『えー、秋華賞が行われます此処阪神レース場......今現在、雨が降り続いております』
ついに迎えた秋華賞当日。
前日から続く大雨で、バ場状態は重の判定だ。
もはや、不良バ場と呼んでも良いのではないかというくらいのコンディションの芝で、
3つ目のティアラを懸けた決戦が幕を開けようとしていた。
「つっ、ついに、この日が来たね!!」
「キタノ、緊張しすぎ!.....ほら、深呼吸」
「わ、わだすももう心臓どっきどきで」
「ユキノも!」
地下バ道に集まった、ティアラ路線の3強。
キタノダイヤモンドとユキノビジンはかなり緊張しているようだが、
メジロドーベルは二人をなだめるくらいの余裕がある様子だ。
「泣いても笑っても、これが最後......頑張ろ!」
「ですっ!」
「うんっ!」
そんなドーベルが中心となり、拳を合わせる形で陣を組む。
しかし、これが最後じゃない。
これからも私達は走るんだと、そんな思いを込めて......。
441 :
◆wuHHR64l1og
2024/07/02 15:41:43
ID:w8aUM8RivA
キタノ・ドーベル・ユキノのそれぞれの枠(18人)
>>442
ここまで来ちゃいましたね。あっという間に。
442 :
アンタ
2024/07/02 21:17:44
ID:5yTugtQIWc
ドーベル:2枠5番
ユキノ:5枠10番
キタノ:8枠18番
443 :
◆wuHHR64l1og
2024/07/03 01:57:07
ID:tOAiMMhW.E
『パドックに続々とウマ娘が入場してきました。3番人気メジロドーベル、内枠5番からの出走。最後の1冠、戴冠なるでしょうか!?』
堂々とした態度でパドックに姿を見せるメジロドーベル。
雨に濡れながらもそれに怯まない凛とした立ち方は、彼女の状態の良さを思わせる。
(最後の一つ、アタシが獲る!)
気合も十分だ。ここでこそ勝ってくれると、ファンたちは信じているのだ。
『2番人気ユキノビジン!皐月賞以来のGI勝利を掴めるか、外枠10番での出走です』
皐月賞を制した岩手のゆきんこ、ユキノビジン。
ドーベルとともに夏のレースを勝ち抜き、秋までの準備をしっかり整えてきた。
あこがれの先輩に導かれたこの路線で、今度こそ勝ちたい。
(おらだって、やれますっ!)
『そしてここで登場1番人気!』
敢えてその部分で実況者が言葉を切ったことで、会場の歓声が盛り上がりを見せていく。
『桜花賞、オークス、更にはクラシック級でありながら宝塚記念を制した、今世代最強とも名高いウマ娘!』
大型モニターにはこれまでのハイライトが流れ、盛り上がりはもっともっと強まる。
『大外18番という不利を薙ぎ払い、この重バ場でさえも味方につけ、トリプルティアラ達成なるか!キタノダイヤモンドです!』
キタノがパドックに姿を見せた途端、最大級の大歓声が会場に広がった。
(ま、まだ出走前なんだけどな......!?)
ここまで盛り上げて、負けたらどうするんだろうと考えるキタノ。
だが本人には、"負けるつもり"はない。
ここまで自分を支えてくれたトレーナーやライバルたち、そして今日だけはこの大歓声にも応えるため、
(勝つよ、ぜったい!!)
今までで最高に自信に満ちた表情で、キタノはターフへと歩みを進めるのだった。
444 :
◆wuHHR64l1og
2024/07/03 02:13:15
ID:tOAiMMhW.E
雨はまだ止まない。芝も変わらず濡れている。
キタノはゲート内で軽く地面を踏みながら、その感触を確かめていた。
(重い......ね。でも、やっぱりそっちのほうが走りやすい!)
自分の脚にマッチした重バ場。本番でこうなったのは本当にラッキーだと思うキタノ。
だったらあとは、走るだけ。
(
https://www.youtube.com/watch?v=TSEptoy3XdQ)
吹奏楽隊のGIファンファーレと、それに合わせた観客たちのコールが会場内に響き渡り、ついにその時が来た。
『さあ、秋華賞いよいよ発走です。トリプルティアラ誕生か、はたまた最後の1冠を阻止出来るのか。あらゆる未来の収束点を、ここに見届けよ______今、スタートしました!』
ざっくりとしたレース展開
>>445
445 :
トレピッピ
2024/07/03 06:35:14
ID:3DpNkBC.Zw
レースはきれいなスタートから始まった。
キタノはもちろん逃げで、彼女をユキノとドーベルが追う形だ。
走ってる中、キタノは感じていた。今までよりも速く走れると。しかもこの重バ場の中である。
一度は怪我へのおそれにより走れなくなったキタノ。
宝塚記念のときも似たようなバ場で、キタノは怪我をした。
だが今は、それを恐れることはない。キタノは、覚醒した。
そしてレースは着々と進み、いよいよ終盤。
キタノ、ドーベル、ユキノ、そして他のウマ娘たち。
それぞれの想い、執念がぶつかる!
446 :
◆wuHHR64l1og
2024/07/03 06:37:59
ID:tOAiMMhW.E
>>444
で文修正
『さあ、秋華賞いよいよ発走です。トリプルティアラ誕生か、はたまた最後の1冠を奪取し最強女王誕生を阻止出来るのか。あらゆる未来の収束点を、ここに見届けよ______今、スタートしました!』
447 :
◆wuHHR64l1og
2024/07/03 07:38:13
ID:tOAiMMhW.E
秋華賞 阪神2000m芝 18人 雨・重
『さあ誰が行くのか......一番人気キタノダイヤモンド、先手を取りました。しかし大外、粘り切れるでしょうか!?』
良いスタートダッシュを決めたキタノだったが、斜行失格のリスクも踏まえて内への移動を行わなかった。
大外からの逃げは並のウマ娘なら持たない距離ロスになる。それにこの重バ場だ。
......しかしそれは、"並"のウマ娘の話である。
(なんだろうっ!いま、すっごく体が軽いっ!!)
時折息を入れながら......そんな余裕があるほどに、キタノは今とても気分がよかった。
何が彼女のパフォーマンスを引き出しているのか、自身にすらわからないレベルだが。
(おらも重バ場の特訓はしてきたべ!!)
(っ!?)
そこに並びかけるのはユキノビジン。同じく外寄りを走っている。
早めに前に出てプレッシャーを与えなければ、逃げ切られてしまう......それを考えての策であった。
『キタノダイヤモンドとユキノビジン、激しい競り合い!坂を登って各ウマ娘1コーナーへ差し掛かります!』
キタノたちだけではない。どのウマ娘も、勝ちたいと思っている。
最後の1冠は譲らないと考えている。
(私はギリギリまでっ......!)
そして、内枠をとったドーベルは、後方集団3番手あたりにポジションを取った。
最後の最後に直線で差す......そのつもりで、今はひたすら脚を溜めることを選ぶ。
448 :
◆wuHHR64l1og
2024/07/03 07:38:31
ID:tOAiMMhW.E
______そして、レース後半。1000mが59秒台とスローペースになり、後続にもチャンスが生まれる形となる。
『各ウマ娘、3コーナーを回って4コーナーへ!さあ、どのタイミングで誰が仕掛けるか!?』
降りしきる雨の中、最高潮の歓声に包まれながら、ウマ娘たちの終盤が始まる。
(______行くよ、キタノっ!!)
「だぁぁぁぁぁぁっ!!」
メジロドーベルが内から仕掛けにかかる。
『メジロドーベル動いた!他のウマ娘を寄せ付けず、一気に先頭へ迫るッ!!』
(きたっ!!)
(ここからですっ!!)
先頭で競り合っていたキタノとユキノ。最終直線でのドーベルの急接近に気づき、お互いさらにペースを上げていく。
「やぁぁぁぁぁっ!!」
「おらぁぁぁぁっ!!」
外か内かの頂上決戦。
並ぶか、突き放すか。内有利・外不利なんてものは今は存在しない。
そこを走って、落ちなかったものが勝者の世界だ。
『3人並んだ!残り300m!!トリプルティアラか!!それともーっ!?』
「やぁぁぁぁぁっ!!」
「おらぁぁぁぁっ!!」
「だぁぁぁぁぁっ!!」
キタノ、ユキノ、ドーベル......3人の意思がぶつかる。限界ギリギリ、いやその先へ行くために。
(わたしがっ!!勝つんだぁぁぁぁぁぁっ!!)
その意思は、わずかに______
449 :
◆wuHHR64l1og
2024/07/03 07:46:30
ID:tOAiMMhW.E
『キタノダイヤモンド!!わずかにキタノダイヤモンドですっ!!最終直線激しい追い比べを制し、1着でゴールインっ!!』
掲示板に灯る、2着とのクビ差の表示。
一瞬の沈黙の後、地すら鳴らすような大歓声がレース場を覆い尽くす。
『ついにっ!ついに達成っ!トリプルティアラっ!!歴史的な名ウマ娘の誕生を、我々は見届けたのですっ!!』
(......あ、やっ、た?)
息を落ち着けながら、キタノは周りの状況の変化を理解し始めた。
「えっ、と......わたし、かったの......?」
「そうだよ、キタノ......あなたが一着」
それを補助するように、ドーベルが伝える。
「えっ、あっ、え......あああっ......わぁぁぁぁぁんっ!!」
理解を完了したキタノは、その場にへたり込んで大泣きを始めてしまった。
「き、キタノさんっ!?」
驚くユキノや観客たちには目もくれず、キタノは泣き続ける。
「わたしぃっ!やっとぉっ!トリプルティアラとれたよぉぉっ!!」
泣き笑いとでも言えるだろうか、ずっと頑張ってきた目標を達成した彼女の姿に、
会場からは大歓声と拍手が巻き起こった。
今日、トゥインクルシリーズの歴史に、新たな名前が刻まれることとなった......。
450 :
◆wuHHR64l1og
2024/07/03 07:48:56
ID:tOAiMMhW.E
はい、ついに達成してしまいましたね。トリプルティアラ。
もはやモブでもなんでもない......。
菊花賞もあるし、もう少しだけ続けましょうね。
とりあえずここまで応援と安価レスを送ってくださった方々に感謝を。
451 :
貴方
2024/07/03 08:17:16
ID:etiG3NIyr2
>>450
いやはや感慨深いですな
第二部と言うことで別の子で書いてもいいのよ?
452 :
トレーナーちゃん
2024/07/03 08:27:47
ID:3DpNkBC.Zw
>>450
偉業。応援して良かったです
453 :
◆wuHHR64l1og
2024/07/03 09:28:54
ID:tOAiMMhW.E
たくさんのフラッシュが焚かれる中、報道陣に囲まれての勝者インタビューが始まった。
トリプルティアラを達成したウマ娘が相手だ。例年よりも多くの記者たちが詰めかけている。
(こ......こんなに......!?)
キタノ自身、既にGI3勝。インタビューにはとっくに慣れっこだったのだが、
今回の報道陣の多さに、マイクの置かれた会見席に座りつつも少し気が引けているようだ。
そして、キタノへの質問が始まった。
トリプルティアラ達成を果たした今の気持ちを.....だとか、感謝したい相手は......だとか、
様々な質問に答えていく中で、
世間が最も注目する質問が出た。
『次走は!今後の路線の目標はありますか!!』
(あ......)
キタノは、ある日からずっと胸に秘めていたことを、世間にようやく告白する時が来たと思った。
水を一口飲んで、深呼吸をして、答える。
「......世界、ですっ!!次の目標は、フランス!来年のっ、凱旋門賞を走りますッ!!」
キタノの衝撃の告白。ティアラ路線最強のウマ娘が目指す次の舞台は、凱旋門賞。
日本のウマ娘が一度も勝てたことがない、最高峰のGIレース。
ざわめきに包まれる会場に、タキオンたちの姿もあった。
「......大きく出ましたね」
「でもよ!キタノならやれんじゃね?」
「クククッ!彼女の異質な程の重バ場適正なら、ロンシャンでも走れるかもしれないッ!!」
カフェも、ポッケも、タキオンも、キタノの決意表明に好意的な様子だ。
SNS上でも既に、キタノの凱旋門賞出走を望む声が増えている。
泥の女王なら、ロンシャンの芝を攻略できる......と。
こうして、秋華賞は幕を閉じた。
だが、クラシックGIはまだ終わりではない。
最後......菊花賞が残っている。
454 :
◆wuHHR64l1og
2024/07/03 09:32:38
ID:tOAiMMhW.E
菊花賞に向けて
>>455
~
>>458
455 :
トレぴ
2024/07/03 09:36:45
ID:3DpNkBC.Zw
テイエムオペラオー。この世に覇王となるべく生まれてきたウマ娘だ。
オペラオーには覇王への道があり、それはオペラオー自身が進むべき道だ。
そのために様々な努力をしてきた。そして、我が覇道を共に行くライバルも作ることができた。
しかし、まだだ、まだ1つ足りないものがある。それはG1レースの勝利。
それはオペラオー自身の覇道に必要なものだ。だから、だからこそ菊花賞は必ず勝ち取ってみせる。
そう思いながらオペラオーはトレーニングに励んでいた...。
456 :
トレーナーさま
2024/07/03 09:57:30
ID:AtRHnFMn.c
オペラオーらが菊花賞へ向けて気炎を上げる中、他のウマ娘達も着々と体勢を整えつつあった
夏を経て条件戦から勝ち上がり、トライアルを叩いてからここへ挑む。淀の3000メートルは誰もが未知の領域、それ故に誰が勝ってもおかしくなかった
457 :
◆wuHHR64l1og
2024/07/03 19:25:31
ID:tOAiMMhW.E
あげ 安価下
458 :
お兄さま
2024/07/03 19:40:11
ID:3DpNkBC.Zw
一方、足の違和感に苛まれながらも、パフォーマンスは悪くないアヤベ。
一度は定めと受け入れたが、辛いものはある。
しかし、キタノは自分を奮い立たせてくれた。自分のワガママに付き合ったうえ、立ち直ってくれたのだ。
自分は菊花賞で終わってしまうかもしれない。だが、キタノの思いを無駄にはできない。その思いだった。
トップロードもクラシック三冠では悔しい思いをしている。何度も挑戦して、なかなか掴めない頂点。
しかし、クラシック三冠の最後だからこそ、ここで頂点を掴みたい!
オペラオー、アヤベ、トップロード、三者三様の思いを胸に、菊花賞のその日が近づいてくる。
459 :
◆wuHHR64l1og
2024/07/04 06:28:08
ID:PywodxWlUE
そのウマ娘は、生まれながらにして覇王である。
今は真の才覚を発揮できなくても、覇王への道が常に目の前に示されたウマ娘である。
テイエムオペラオー......彼女はトゥインクルシリーズでのレースを通して、
その覇道を歩み始めた。しかし今現在、GIタイトルを一つも得られていない。
前哨戦であるGII・京都大賞典では確かな結果を出し、菊花賞に向けての準備は着々と進んでいる。
限界ギリギリまで自分を追い込み、トレーニングも続けている。
あとは運命の導くままに______。
そのウマ娘は、常に前を向き続けた。
あと一歩勝てなくても、下を向かずに前を向いて走り続けてきた。
ナリタトップロード......その名の通り、頂点を目指すのに最も相応しいウマ娘。
彼女もまた前哨戦で結果を残し、苦手なコーナーリングの克服も進んでいる。
あとはまた、変わらず、前を向いて走るだけ______。
460 :
◆wuHHR64l1og
2024/07/04 06:29:35
ID:PywodxWlUE
そのウマ娘は、既に頂点にいた。
自身の"罪"と向き合い続け、優駿の座を掴み取った。
一等星、アドマイヤベガ......彼女の世界はいつも、"一人"だった。
だが、レースを駆け抜けていくうちに、沢山の光が灯った。
その中でも特に、絶対に壊れない光が灯ったことで、彼女の世界は大きく変わった。
壊れても立ち直れることを教えてくれた。その光は、後に最強となった。
今度は自分が壊れる定めにある......だが、アドマイヤベガは諦めきれなかった。
また走りたい、キタノダイヤモンドと______。
そして迎える、菊花賞......!!
461 :
◆wuHHR64l1og
2024/07/04 06:48:11
ID:PywodxWlUE
道筋が難しくなってきたんで今度こそこのスレを有効活用しましょう......。
菊花賞を勝つのは______
>>462
462 :
マスター
2024/07/04 07:12:02
ID:KbF1k4Sr4Q
テイエムオペラオー
463 :
◆wuHHR64l1og
2024/07/04 09:26:00
ID:PywodxWlUE
『さあ、クラシック3冠最後の1戦である菊花賞が行われます此処、京都レース場......現在天候は晴れ、バ場状態は良の発表です』
トリプルティアラの誕生した、衝撃の秋華賞から1週間後......。
ついに今日、クラシック3冠路線のレースも終わりを迎えるのだ。
未知の長距離3000m、菊花賞......3強だけではなく夏のレースを勝ってきたウマ娘たちにも、
勝利の可能性が示されている。
「泣いても笑ってもこれが最後だ。まあ、勝つのはこのボク、テイエムオペラオーさ!」
「わ、私だって負けません!ここでやっと、GIを獲るんですっ!」
ここまでGI未勝利のオペラオーとトプロ。何としてでも勝ちたいこの二人。
地下バ道で、開始前からバチバチと火花を散らしている。
(......)
そんな二人の横を通り過ぎ、一足先にパドックへと向かうアドマイヤベガの瞳には、
青い炎が宿っていた______。
464 :
◆wuHHR64l1og
2024/07/04 09:26:35
ID:PywodxWlUE
『ここで登場!1番人気、ダービーウマ娘アドマイヤベガですッ!!』
そして観客たちの前に姿を現すアヤベ。
だがアヤベの視界には、観客たちの姿は映っていない。
(これで最後だから、全部あなたに捧げるから)
心の中の妹との対話。そして勝利も感動もすべて妹に捧げるという強い意志。
それが今のアヤベを動かすものであった。
遅れて、テイエムオペラオーとナリタトップロードも入場してくる。
『前走京都大賞典3着!世紀末覇王はここで覚醒を遂げるのか!?2番人気、テイエムオペラオーですっ!』
実況に名が読まれると、オペラオーは観客に向けてファンサービスをするかのように手を振った。
「ウイニングライブのセンター!期待してておくれよーっ!!」
ここでもう1着宣言。それほどまでに今の彼女にはやる気と情熱があった。
『そして前走京都新聞杯2着、ついに頂点をつかめるか!!3番人気、ナリタトップロードッ!!』
トップロードも、オペラオーに負けじと観客に手を振る。
(ここまで来たんです。だから今度こそ、負けませんッ!)
内に秘めた情熱は、アヤベにもオペラオーにも負けないだろう。
今日までに仕上げられた肉体は、夏の前よりも遥かに状態が良くなっている。
『菊花賞、間もなく発走です!』
465 :
◆wuHHR64l1og
2024/07/04 11:12:36
ID:PywodxWlUE
続々とゲート入りしていくウマ娘たち。
トップロードは1番、テイエムオペラオーは4番と内枠を引き、
アヤベは外枠14番であった。
この長距離では外枠のウマ娘ほど不利だと思われているが、
先日の秋華賞がその定説を覆しつつある。
キタノダイヤモンドは、重バ場と大外18番枠という不利を超えてトリプルティアラを戴冠した……それ故に、今回のレースはあらゆる専門家による予想が意味を成さない。
どれだけ人気薄の順位予想の組み合わせにも投票が入り、オッズは色々ととんでもないことになっている。
(わぁ……す、すごいお客さんの数……!)
観客席でレースを“観る側”に立っているキタノダイヤモンド。
彼女は秋華賞の後、年内の休養を発表している。
今回は、路線の違う同期たち……特に思い入れがあるアドマイヤベガのレースを見届けに、京都までやってきたのだ。
「アヤベさん、頑張って……!」
最近、トップロードから相談されていた……アヤベの様子の変化。
結局、キタノ自身では何もできなかった。
ならば今はもう、祈ることしかできない。
466 :
◆wuHHR64l1og
2024/07/04 11:12:52
ID:PywodxWlUE
『各ウマ娘ゲート入りが終わりました。さあ、京都の長距離を制し、頂点へ立つのはどのウマ娘か……今、スタートしました!!』
どのウマ娘も一斉に、出遅れなしのスタート。
その空間からは、集中力の爆発によりとんでもない圧が発生したと計測する研究者もいた。
『さあ、誰が行くのか……最初の坂を上がっていくのは10番。早めに出ていこうという構えです。それを追って2番、外から9番。ナリタトップロードは現在内を突いて3番手あたりという体勢』
早めに飛び出した10番のウマ娘がペースを作る。
そこに2番と9番が追走していき、そのペースに負けないようトップロードも内から追走を図っている。
まず3コーナー・4コーナーを回って、1周目の正面スタンド前。長距離ということもあってか、先頭の10番から生まれるペースはややスロー。
(チャンスは必ず来ます……仕掛けるのは、その時っ!!)
トップロードはロスを減らしつつ、しっかりと脚を溜める構えだ。
467 :
◆wuHHR64l1og
2024/07/04 11:13:15
ID:PywodxWlUE
『後方集団を見ていきましょう。内の方にテイエムオペラオーが居て、その外目にアドマイヤベガ。仕掛けどころを狙っているのでしょうか、二人並んでいます』
落ち着いて展開を伺う二人。
しかしアヤベの方は、見かけとは裏腹に……。
(くっ、こんな……痛みっ!あの子の苦しみに比べればッ!!)
右脚が痛みだしていた。だが、ペースを緩めない。止まらない。
ここで止まってしまえば、それもまた”罪”となってしまうから。
(……ふっ!)
何かを抱えながらも、走りをやめないその姿勢を見て、オペラオーも軽く笑みを見せて前を向く。
(少し、ペースが遅い……?)
キタノが違和感に気づく。先頭が逃げているのに、ラップタイムはそこまで速くない。
逃げウマ娘としての勘が、それを気づかせていた。
『ホームストレッチを抜けて1コーナー。少しスローな展開ですが、ここから仕掛けるウマ娘は現れるのでしょうか?』
スローペースだと、却って今前に出て距離を稼いでおいたほうが有利になることもある。
しかしまだ誰も仕掛けには来ない。
2コーナーを超えれば、ここからは急な下り坂だ。
(さあ、いつ動く?二人共ッ!!)
オペラオーは中団に位置しつつ、トプロとアヤベの動きを伺っている。
自身はまだ仕掛けない。
そして坂を越え、残り800mになったところで……!!
468 :
◆wuHHR64l1og
2024/07/04 11:13:36
ID:PywodxWlUE
(私はッ!!まだッ!!)
『外からアドマイヤベガが動いた!捲って上がっていきます!』
レース終盤。アヤベが仕掛けに行く。
(止まりたくない!本当はッ!こんなところでッ!!)
激痛ももはや気にしない。体力も殆ど残っていない。
そんな中で彼女は______。
『やっと本音を言ってくれたね、お姉ちゃん』
(……!!)
その瞬間、アヤベの意識は別の空間にあった。
そこには、”あの子”が立っている。
“あの子”はニコッと微笑みながら、言った。
『罪だとか、そんなの私は全然思ってなかったんだよ?お姉ちゃん最後まで話し聞かないから……』
「えっ……」
『菊花賞で、お姉ちゃんの脚は壊れるはずだった。でも、その運命は私が持ってく!
お姉ちゃんは、お姉ちゃんの思うままに、大好きな人達と一緒にいっぱい走って!
私はもう、たくさんたくさん貰ったから!』
“あの子”はそう言った後、驚くアヤベを前にその姿をどんどん粒子としていく。
「嘘っ、消えちゃうっ、やだ!!」
アヤベが手を伸ばす前に、その姿は完全に消滅した。
その時だった。
呆然と立ち尽くす彼女に、その声が届いたのは。
(______アヤベさんっ!!)
その声は、一番自分にぶつかってきてくれた。
時には、走る動機にもなった。
立ち上がるきっかけにもなった。
(そう……だ。私は、もう……)
アドマイヤベガはもう、ひとりじゃない。
469 :
◆wuHHR64l1og
2024/07/04 11:43:14
ID:PywodxWlUE
『最終コーナーを回って直線コースっ!先に飛び出しているアドマイヤベガに追走するように、各ウマ娘一斉にスパート!追いつけるウマ娘はーっ!?』
ラスト直線コースのペースは、アヤベが作り始めた。
外を回っての大捲り。仕掛けの早さからすぐに沈んでしまうだろうと思うファンが多かった。しかし。
「はぁぁぁぁぁぁっ!!」
後続の追走を振り切るように、アドマイヤベガは沈まない。
体力も残っていないはずなのに、不思議と脚が軽いのだ。
『アドマイヤベガ先頭!そこに並ぶテイエムオペラオーとナリタトップロード!!3人の一騎打ちだーッ!!』
「だぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「やぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
簡単には勝たせない。前目だったトプロと、囲まれ気味だったオペラオーも抜け出し、
3人が横並びになった。
(これっ、わたしのときと同じ……!?)
キタノは、見返していた自身の秋華賞でのレース映像を思い出す。
この時もまた、人気のウマ娘が最終直線で3人横並びという展開______
「がっ、頑張れぇぇぇぇぇぇぇ!!」
もうそんな事を考えている暇もなく、キタノはお腹から精一杯の声を出し、
3人へエールを送る。
『テイエムか!トップロードか!アドマイヤベガかぁぁぁぁっ!?』
大歓声に包まれながら、彼女たちはゴール板を駆け抜けた。
そして、
『かっ、勝ったのは……テイエムオペラオーっ!! テイエムオペラオーがっ、最終戦・菊花賞を制しましたぁぁぁぁぁぁぁっ!!』
470 :
◆wuHHR64l1og
2024/07/04 12:09:52
ID:PywodxWlUE
「負けちゃい……ましたね」
「ええ……」
大観衆に手を振り続けるオペラオーを見ながら、
トプロとアヤベが話している。
それぞれ2着・3着となってしまったが、
彼女らの表情は満足げであった。
「なんだろう……今までで一番、すごくすごい楽しいレースでしたっ!」
トップロードは、結局クラシック級GIで1勝もできなかった。
しかし、その瞳は希望に満ちている。
次は絶対勝とうという、未来への希望に。
(……脚、痛くない)
アヤベは、レース中も感じていた右脚の激痛が、すっかり消えていることに気がついた。
同時に、自分の中からすっぽり何かが消えて出来た、空白にも。
心の中の存在が、消えてしまったのだ。
しかし、今もう。それ以上に。
「アヤベさんっ!!惜しかったですーっ!!」
「ちょっ、キタノさん、首が締まってしまうわ」
「ご、ごめんっ!!」
自分の事を目標にしてくれて、
「ちょっといいですか?アヤベさんはカレンのルームメイトなんですけど?」
「カレンチャンさん!?」
「こうなったらみんなで写真撮りましょ?映えますよ、ゼッタイ!」
自分の事を想ってくれている人がいっぱい居て、
(ああ……私は、こんなにも)
幸せに支えられていたと、気づけたのだから。
471 :
◆wuHHR64l1og
2024/07/04 12:51:42
ID:PywodxWlUE
この日のウイニングライブは、学園OGであるライトハロー主導のもと、
アヤベ・トプロ・オペラオーの3人に加え、シークレットゲストとしてキタノも迎え、
クラシックGIを締めくくる大々的な開催となった。
______そして月日は流れていき、スペシャルウィークがモンジューを下したジャパンカップや、
そのスペたち等にリベンジを誓うキヌハヤダなども下して、グランプリ連覇を成し遂げたグラスワンダーの有馬記念など、年内最後のGIまで大盛況の後に……1年は幕を閉じるのだった。
472 :
◆wuHHR64l1og
2024/07/04 13:13:17
ID:PywodxWlUE
それから、半年後。
6月の某日、空港にて。
「……まだかなぁ」
キタノとそのトレーナーは、
自分たちの乗る、フランス行きの飛行機の搭乗開始時刻を待っていた。あと30分くらいはある。
(……そうだ。あれ、渡さないと)
何かを思い出したキタノは、下げていたポシェットから一枚の便箋を取り出した。
そしてそれを、トレーナーの手に預ける。
「トレーナーさんっ。これ、わたしが凱旋門賞で勝てたら、開けてくださいっ!勝てたら、ですよ!負けても読まれたら、なんか恥ずかしいので!!」
わかったわかったと言ってトレーナーは、キタノからの手紙と約束を受け取るのだった。
473 :
◆wuHHR64l1og
2024/07/04 13:13:47
ID:PywodxWlUE
「よかった、間に合って」
「あっ……」
声がした方にキタノが向くと、
ドーベル・ユキノ・ムーンのティアラ路線組が立っていた。
それだけではない。
「ハーッハッハッハ!見送りに来たよッ!!」
「ちょっ、オペラオーちゃん……目立っちゃいますよ!?」
「……少しは静かにできないものかしら」
オペラオー・トプロ・アヤベのクラシック3冠路線組も一緒に、キタノの見送りに来てくれたのだ。
国内ではオペラオーやトプロが、シニア級GIで大きな成果を見せている……もちろん、ドーベルたちもだ。
アヤベは1年の休養を発表した。脚のリハビリに努めながら、周りのサポートに回っている。
……そんなライバルたちからのたくさんの激動の言葉に感謝しつつ、キタノは高らかに宣言した。
「わたし、勝ってくる!重バ場大好きな泥の女王として、凱旋門賞で1着獲ってくるよ!!」
このレースのために、キタノはたゆまぬ努力を重ねてきた……GIを走る同期たちにも練習に付き合ってもらったり、VRウマレーターを使ったフランス用トレーニングも行った。
もう、出来ることがないというくらいに、”たくさん”を重ねた。
「じゃあ、行ってきますっ!!」
後はただ、走るだけ。キタノダイヤモンドは、広い世界へと羽ばたいていくのだった______
474 :
◆wuHHR64l1og
2024/07/04 13:14:16
ID:PywodxWlUE
【キタノの手紙】
拝啓、トレーナーさん。
この手紙を読んでるってことは、ちゃんと約束を守ってくれたんですね!
……そもそも私、ちゃんとその話をしてました!?
えっと、本題です!
3年前、トレーナーさんは私を見つけてくれました。
中身が何もなくって、ふわふわしてただけの……そんな私を。
そして、トレーナーさんと毎日駆け抜けて、私は私になれた……気がします!
トレーナーさんだけじゃない、たくさんの友だちが出来て、色んな経験をして、
すっごく楽しかったです!
だから、凱旋門賞で勝って、その恩返しが出来たんでしょうか!?
ていうか、その先もいっぱいいっぱい走って、もっと楽しみたい!
だから、これからも……よろしくお願いしますっ!!
キタノダイヤモンドより。
475 :
◆wuHHR64l1og
2024/07/04 13:15:35
ID:PywodxWlUE
終わり、です。
結構前から決めていた、凱旋門賞エンドです。
書き......きれました。
476 :
お兄さま
2024/07/04 13:30:18
ID:KbF1k4Sr4Q
>>475
ありがとうございます。非常に楽しませていただきました
477 :
◆wuHHR64l1og
2024/07/04 15:55:24
ID:PywodxWlUE
補完。
タキオンたちからのビデオレター。
『あー、あー。オーディオメーターを見ても、音はちゃんと入っているようだねぇ』
機内でスマホの電波をオンにしたキタは、スマホにビデオメッセージが届いているのに気がついた。
それはタキオンからのもので、3分程度の短い映像のようだ。
『まず……私のことを忘れていたんじゃないか?ということでビデオメッセージを撮らせてもらったよ。君が旅立つ当日は、こちらもトレーニングが忙しくなりそうな時期でね』
(あー……うん。正直、うん)
『では、本題に入ろう。凱旋門賞……とてつもなく高い壁だ。おそらく、今までで一番の。そんな壁に、君は挑もうとしているんだ。だから……』
『タキオン!面白そうなことしてんじゃねえか!オレたちにも喋らせろ!』
『私も……? まあ、いいですけど』
そこに、ジャングルポケットとマンハッタンカフェが乱入してくる。
『キタノ!てめぇがフランス行ってる間、オレたちはメイクデビューだ!帰って来るまでに、でっけー戦績出しとくからよ!!』
『キタノさん……去年の宣言を聞いたときにはとても驚きました。
でも、今のあなたなら……勝てると信じています』
ついにメイクデビューが迫るポッケたちも、キタノに激動の言葉を送った。
そして唯一、遮られて最後まで言わせてもらえなかったタキオンは……。
『そろそろ時間だ。頑張ってくれたまえよ、キタノくん!』
短く言葉を送って、動画はそこで終わった。
(みんな……ありがとう……!!)
感謝の思いを胸に、キタノはフランスを目指すのだった……。
478 :
◆wuHHR64l1og
2024/07/04 15:59:03
ID:PywodxWlUE
最後の最後に誤字った......てことでタキオンたちも出して今度こそ完結です。
キタノダイヤモンド 戦績
【ジュニア級】
メイクデビュー 1着
OP戦 2着
OP 芙蓉ステークス 1着
GI ホープフルステークス 2着
【クラシック級】
GIII フェアリーステークス 1着
GII フィリーズレビュー 2着
GI 桜花賞 1着
GI オークス 1着
GI 宝塚記念 1着
GI 秋華賞 1着
【シニア級】
GII フォワ賞 1着
GI 凱旋門賞 1着
何だ、お前……。
あ、感想受け付けますね......。
479 :
トレーナーちゃん
2024/07/04 17:51:43
ID:YiZtmmq6OU
凱旋門勝つのも凄いが、しれっとトリプルティアラ取ってるのも何気に凄い。
480 :
◆wuHHR64l1og
2024/07/04 17:58:00
ID:PywodxWlUE
>>476
こちらも書き続けることができました。ありがとう。
>>479
それくらい強くても許されるかなってw
481 :
◆wuHHR64l1og
2024/07/04 21:23:08
ID:PywodxWlUE
公式小説を読みながら書き始めたレース描写だったんですが、どうでした?
482 :
トレピッピ
2024/07/04 21:23:55
ID:YiZtmmq6OU
>>481
とても良かったのでパート2希望
483 :
◆wuHHR64l1og
2024/07/04 21:28:39
ID:PywodxWlUE
>>482
マジか……まあ反省点もあるし(最後の最後にキャラ出し忘れ)、新たなウマ娘を作ってみるのも良いかもですね……。
今度もまたカオスにしましょうね
484 :
◆wuHHR64l1og
2024/07/04 21:32:18
ID:PywodxWlUE
正直菊花賞は困った。実際のところ3強ではなくなってたから!!!!!!
485 :
◆wuHHR64l1og
2024/07/04 21:53:54
ID:PywodxWlUE
安価というかオリウマ娘考案しつつ小説スレをやりたい。どうです?
486 :
トレ公
2024/07/04 21:54:24
ID:YiZtmmq6OU
>>485
Good!!
487 :
貴方
2024/07/04 22:00:00
ID:KbF1k4Sr4Q
>>485
いいと思いますよ!
488 :
◆wuHHR64l1og
2024/07/04 22:00:04
ID:PywodxWlUE
>>486
ありがとう。次も頑張ります。
キタノの手紙って実際のお礼なんです。
何もなかったキャラに中身を作ってくれて、
本当にありがとうございました!!
489 :
貴様
2024/07/04 22:18:01
ID:bBevBqmMts
誕生日にいいもん見れた
更新が楽しみでしょうがなかったけど、ついに完結かぁ
読み応えある文章だったので、次回作にも期待させていただきます
490 :
モルモット君
2024/07/04 22:19:01
ID:YiZtmmq6OU
>>489
誕生日おめ🎉
491 :
アナタ
2024/07/04 22:24:25
ID:KbF1k4Sr4Q
>>489
おめでとうございます!
492 :
◆wuHHR64l1og
2024/07/04 22:24:25
ID:PywodxWlUE
>>489
すっごい嬉しいですっ!!!!!
あ、誕生日おめでとうございます!!!!!
493 :
◆wuHHR64l1og
2024/07/04 22:38:41
ID:PywodxWlUE
今度はもっとこう……負けを増やすというか。
強すぎだよキタノ!!!!
494 :
トレーナー君
2024/07/04 22:39:51
ID:YiZtmmq6OU
>>493
3回しか負けてないってどこかの皇帝ですか・・・?
495 :
マスター
2024/07/04 22:43:28
ID:ZmrjdbPmR6
>>493
勝てなかったモブ娘達の代わりにいっぱい勝ったんだよね
496 :
◆wuHHR64l1og
2024/07/04 22:47:24
ID:PywodxWlUE
もうモブじゃねえよこれ!?
497 :
◆wuHHR64l1og
2024/07/04 22:50:18
ID:PywodxWlUE
モブじゃなくていいな、オリ主でいいなこれ。
次からはそっちの方向でいきましょう。
モブ書けねえよ!!
498 :
◆wuHHR64l1og
2024/07/04 23:06:41
ID:PywodxWlUE
検討
上京してきた飛び級少女がGIを目指す物語
499 :
アナタ
2024/07/04 23:08:35
ID:YiZtmmq6OU
飛び級上京じゃなくてもユキノみたいな何も知らない芋娘(失礼)でも良いかと
500 :
◆wuHHR64l1og
2024/07/04 23:10:43
ID:PywodxWlUE
>>499
スペちゃんじゃねえか!?
501 :
◆wuHHR64l1og
2024/07/04 23:17:04
ID:PywodxWlUE
とりあえずフラワー以外の小学生ウマ娘を作ってみたいので、今度の方向性はそれで行きます。
また、応援よろしくお願いします!!
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