「おれ、結構好きなんです、‘看取られ’ってやつ。
　相手の人生で永遠にいちばんの存在にはなれなくても、この瞬間に相手の心に刻みつければ、相手にとってひとつの永遠の存在になれるって気持ち、分かる気がするんです。
　おれはきっと永くはないから、おれの存在を誰かに遺せたらと思って、レースと同様に俺の夢だったんです。
　でも、トレーナーさんは俺からそんな夢も奪っちゃうんですね…
　ずるいなぁ…おれのトレーナーさんなのに…

　…トレーナーさん、目を開けてくださいよ
　おれ、二度と看取られたいなんて言いませんから…
　おれ、残されたほうが、こんな気持ちになるなんて、おれ、全然、考えてなくって、自分のこと、しか、考えてなっ、くって、おれ、おれ…！」