キタサン「はりきっていこー!」スピカ「…」
1 : トレ公   2023/11/05 15:48:07 ID:4SeKWNHRJ.
あたしはキタサンブラック。
憧れのテイオーさんのようなウマ娘になるべく、同じチームスピカに加入した。7人の先輩たちとトレーナーさんにサポートを受けながら、トゥインクルシリーズに挑んでいく…はずだった。
2 : 1◆/1drO9VniwQ   2023/11/05 15:50:14 ID:4SeKWNHRJ.
コテハンつけるの忘れた

先輩方の様子が変わり始めたのはあの頃だったかな。
「おはようございます、今日もトレーニングよろしくお願いします!」
あたしはいつものように元気に部室の扉を開けた。
「おーっす。」
部室にいたのはウオッカさん、スカーレットさん、マックイーンさん。挨拶を返してくれたのはウオッカさんだけだった。
「今日キタサンのトレーニングだったの?」
なにか勉強をしていたスカーレットさんが驚いたようにマックイーンさんに聞いた。
「来たんですから、そうなのでしょう。」
「知らなかったわ。アタシ集中して勉強したいから図書室行くわね。」
勉強道具一式をまとめると、スカーレットさんは足早に出ていった。あたしの横を通ったとき、鋭い目で見られたような気がした。ツリ目だからそう見えたのかな?
3 : 1◆/1drO9VniwQ   2023/11/05 15:51:38 ID:4SeKWNHRJ.
「俺も飲み物買いに行こーっと。」
追うようにウオッカさんも出ていく。
「あの…マックイーンさん。トレーナーさんはどこか知りませんか?」
「あなたが来る少し前に、なにか用ができたと出ていかれましたわ。」
「そうですか…。じゃあ、マックイーンさん!あたしとランニング…!は、できないから…うーん…。」
「キタさん、トレーニングもいいですが、あなたにはお聞きしたいことがありますわ。」
4 : 1◆/1drO9VniwQ   2023/11/05 15:58:12 ID:4SeKWNHRJ.
あたしが頭を抱えているとマックイーンさんにまっすぐと澄んだ瞳に射抜かれた。
「そこにお座りなさい。」
あたしはマックイーンさんの向かいの椅子に腰掛けた。一体なにを聞かれるんだろう。なにを聞かれても隠しごとなんてしないけどね!
「あなたはなぜトレセン学園へ入学したのですか?」
そんなの決まってる。
「テイオーさんみたいなウマ娘になるためです!」
「テイオーのようになるために、今後どうする予定なのです?」
「次は皐月賞に出走して、その次はダービーに出走して、無敗で勝ち続けます!」
5 : 1◆/1drO9VniwQ   2023/11/05 15:59:37 ID:4SeKWNHRJ.
「では、菊花賞は?」
「もちろん出ます!」
マックイーンさんは大きくため息をついた。
「 勝ちます、ではないのですね。呆れましたわ、キタさん。
わたくし、スプリングSまでの3戦すべて観戦しましたが、あなたからはレースに対する熱意を感じません。G1ではなくとも、レースは遊びではありませんのよ。テイオーごっこもいいですが、競争相手に敬意を払うレースを心がけるべきではありませんこと?」
マックイーンさんが椅子から立ち上がる。
「えっ…?あたし、敬意払ってます…。」
扉の取っ手に手をかけたマックイーンさんはあたしの方を見ずに言った。
「競争相手に敬意があったら、あのように間の抜けたゴールをするはずがありませんわ。」
扉が閉まると、部室にはあたし一人だけになった。
「よくわかんないけど…そのうちわかるようになるよね!うん、きっとそうだ!よーし、今日も張り切っていこー!」
なんだか不穏な空気だから、一声出してみた。
6 : お姉ちゃん   2023/11/05 16:00:04 ID:4SeKWNHRJ.
するとガチャと扉が開いて、そこにはトレーナーさんがいた。
「おう、おはようキタサン。悪いな遅れちまった。ウオッカたちはどうした?」
「どこか行っちゃいましたけど…。」
トレーナーさんははぁ!?と声をあげた。
「あいつらバックレやがったな。キタサンとアップしておくよう言ったんだが…。」
「え?でもお二人ともそんな感じじゃありませんでしたよ。あたしのトレーニングあるって知らなかったみたいでした。」
「なわけねーよ。俺はちゃんと伝えたし、あいつらは返事をした。なんなら証人のマックイーンだって…あれ?あいつはどうした?」
ウオッカさんとスカーレットさんはあたしとアップする予定だったんだ。でもあたしにはそれを知らないふりをしたってことなのかな?だとしたら、マックイーンさんも全部知っててスルーしてたってことだよね。
「キタサン?マックイーンからは何も言われなかったか?」
「…いえ、あたしが来る前にマックイーンさんは席を外してたみたいです。」
この日は一人でトレーニングをした。
同世代の他の娘たちがチームメイトや先輩方とトレーニングしてるのが、とてもまぶしく見えた。
7 : 1◆/1drO9VniwQ   2023/11/05 16:01:09 ID:4SeKWNHRJ.
こういう内容だめそうだったら言ってください
あと6はコテハン忘れた
8 : 1◆/1drO9VniwQ   2023/11/05 17:49:42 ID:4SeKWNHRJ.
トレーニングを終えると、部室に戻った。誰もいなかったので、もう何度も見たテイオーさんの皐月賞のビデオをぼーっと見ていた。
「キタさん、トレーニング終わったんですか?お疲れさまです。」
「スペさんにテイオーさん!」
部室にスペさんとテイオーさんが現れる。
テイオーさんはビデオに気づいた。
「ボクの皐月賞また見てるの?」
「はい!もうすぐあたしも出るので、参考にしようと思って!」
「…そっか。でもキタちゃんの皐月賞に、そのビデオに映ってるウマ娘たちは出ない。
出走者のことを調べてマークすることも大切だと思うよ。」
「そうですよね。ご指導ありがとうございます!ちゃんと調べておかないと…!」
9 : 1◆/1drO9VniwQ   2023/11/05 17:50:32 ID:4SeKWNHRJ.
あたしとテイオーさんが話している間、スペさんは取りに来た荷物をまとめていた。
「それじゃテイオーさん、お先に失礼しますね。」
「うん!また明日ねスペちゃん!」
「お疲れさまですスペさん!」
スペさんが扉を開けると、スズカさんも外から扉を開けようとしたのか、そこへ立っていた。
「うわあ!」
「あら、ごめんなさいスペちゃん。あなたを探してたのよ。」
「いえいえっ!こちらこそすみません。ところでスズカさん、」
そこからは声が遠ざかってよく聞こえなかったけど、たぶんこう言ってた。
「 わたしもあんなでしたか?」
「 あそこまでじゃないわ。」
なんの話だろう。あんなって、あたしのこと?スペさん、今もスズカさんに憧れてるけどあたしとテイオーさんのことと重ねてるのかな?
10 : 1◆/1drO9VniwQ   2023/11/05 17:51:10 ID:4SeKWNHRJ.
「 ねえキタちゃん。」
閉まった扉を見つめていたあたしに、テイオーさんが声をかけてくれた。
「 はいっ!なんでしょう!」
「 せっかくチームスピカに入ったんだから、チームみんなの力を借りてみない?もちろん、ボクに憧れてくれるのはすごく嬉しいよ。でも、ボク以外にもアドバイスくれる先輩のことはもっと大切にしたほうがいいんじゃないかな。ボクたちもキタちゃんの勝利を願ってアドバイスしてるから、実践してくれたら嬉しいし、もっとサポートしたいって思うんだ。逆に全然聞いてくれなくて、しかもその理由が『 トウカイテイオーじゃないから』だったら、もうアドバイスもしたくなくなっちゃうんじゃないかな。」
11 : お姉ちゃん   2023/11/05 17:51:50 ID:4SeKWNHRJ.
あたしは頭をひねって、今まで先輩たちとのことを思い出した。確かに、テイオーさんの意見を聞くときよりは熱心に聞いてなかったかもしれない。
「 テイオーさんの言う通りです。反省します…。」
「 ボクもみんなもキタちゃんも、いいチームでいたい気持ちは同じだと思うから。これから変わっていこう。」
「 はい…!」
テイオーさんも取りに来た荷物を持って出ていった。
外はもう暗いみたい。今日の施錠係はあたしだ。
「 やっぱりテイオーさんはすごいなあ。的確にアドバイスをしてくれる…あたしもいつか後輩ができたらあんな先輩になりたいなあ。」
鍵を決まった場所に返すと、その日は寮に帰った。
スペさんたちのことが気になったけど、寝る前にダイヤちゃんと話していたら忘れてた。明日もはりきっていこー!
12 : お姉ちゃん   2023/11/05 22:41:06 ID:WsA55mkVtA
いいぞ…もっとこういうのちょうだい…
13 : 1◆/1drO9VniwQ   2023/11/06 20:03:04 ID:hLjc2LHp76
次の日の朝。今日も1日トレーニングだけど、昨日のことが気になっていつもみたいな声で挨拶はできなかった。
「おはようございます。」
扉を開けると、そこにはテイオーさん、ゴルシさん、トレーナーさんがいた。
あたしはなんだかほっとした。
「おはようキタちゃん!」
「よう新人。」
「おはようキタサン。今日はいつもよりハードだからな、頑張れよ!」
目の奥から涙がこみ上げてくるのをぐっとこらえた。
「はいっっ!あたし、これからもっと、もーっと、頑張りますっっ!」
はりきっていこう、そう心の中で誓った。
今ならどんなハードトレーニングだって頑張れる!
「それじゃ、今日は階段ダッシュだから着替えたら神社に集合だ。俺とテイオーは先に神社で待ってるぞ。」
「ゴルシ、キタちゃん連れて寄り道しちゃだめだからね!」
「アタシの考えてることがわかるとはテイオー、できるな…。」
あたしの知ってるスピカらしいやり取りに、思わずクスッとなった。
この日はゴルシさんといっしょにテイオーさん、トレーナーさんのサポートを受けてトレーニングをした。今までと同じようにワイワイできて、昨日のことは嘘だったんじゃないかと思うくらい。
14 : 1◆/1drO9VniwQ   2023/11/06 21:14:54 ID:hLjc2LHp76
それから皐月賞は無事に(?)済み、日本ダービーも終わった。どっちも負けちゃったけど。
それでも菊花賞に出走すると決めたから、トレーニングはしないといけない。あたしは部室の扉の取っ手に手をかけた。
「アタシやっぱりあの娘ムリ!!」
扉の奥からスカーレットさんの叫びが聞こえた。きっとあたしのことだ。なぜだか、そう思ってしまった。聞きたくないのに聞きたくて、扉に耳をぴったりとつけた。
「アタシのアドバイスは適当に流すのに、テイオーが同じこと言ったら讃えながら実践するのよ!?
それならもうアタシとトレーニングする必要ないじゃない。ヒシアマ先輩のゴール板みたいに、アタシの絵でも持って走ればいいのに。」
15 : 1◆/1drO9VniwQ   2023/11/06 21:15:29 ID:hLjc2LHp76
そ、そんな…。
「珍しく意見が合うじゃねーか。」
この声はウオッカさんだ。
「あいつ、テイオーのダービー何回も見てたけどスペ先輩や俺のは1回も見なかったんすよ。本当に勝ちたかったら同じの100回見るよりも、いろんな勝ち方を研究しますよね?脚質を参考にしたいならスズカ先輩やスカーレットの意見聞いてもいいはずなのにな。」
冷たい汗がじっとりと滲み出す。
「あのっわたしも!」
スペさん?
「わたしもスズカさんに憧れているので、キタさんの気持ちは正直わかるんです。」
スペさん…!
「でも、わたしは皆さんの意見も真摯に受け止めました。いくらスズカさんみたいになりたいという気持ちはあっても、スズカさん以外の皆さんのサポートを軽視したことなんてありません!」
「それはわかってますよ、スペ先輩。先輩のクラシックはアタシたちデビューもしてなかったのに、一緒にトレーニングしてくれてましたから。」
「えへへ、そうだねスカーレットちゃん。」
心臓がドキドキしてきた。手のひらも、汗でびっしょびしょだ。
16 : 1◆/1drO9VniwQ   2023/11/06 21:16:11 ID:hLjc2LHp76
「わたくしは皐月賞の前に、少しお話をさせていただきましたわ。レースに対する姿勢について。ですが皐月賞、ダービーともに何も変化は見られませんでしたわね。相変わらずレースに対する真剣さが見られませんでしたわ。
ところでゴールドシップはどこですの?」
「今日は見てないわね。きっとどこかで自主トレしてるわ。」
マックイーンさんとスズカさんだ。
「そんな顔をしないで。悪いのはあなたじゃないわ。」
えっ。スズカさんが慰めてるのってもしかして…。
「いや、ボクの責任もあるよ。今までも言ってきたけど、これからはもっと言わなきゃ。これはテイオーの真似事ではなく、キタサンブラックのトゥインクルシリーズなんだって。」
「 …!」
あたしは取っ手から手を離した。嫌な汗が止まらない。
テイオーさんに菊花賞のアドバイス貰うつもりだったけど、こんなんじゃそんなことできるわけない!
17 : 1◆/1drO9VniwQ   2023/11/06 21:27:32 ID:hLjc2LHp76
こうして、あたしはネイチャさんと出会った。ネイチャさんはあたしのスピカメンバーとの関係を知らないみたいで、とても気が楽だった。
今テイオーさんにアドバイスを求めたら、スピカの皆さんからさらに距離を置かれる。そうしたらテイオーさんが困る。
不本意だけど、ネイチャさんがアドバイスをくれるのは今のあたしに三女神様が差し伸べてくれた手なのかもしれないと思った。
ネイチャさんと仲よくなればなるほど、スピカとは疎遠になった。どさくさに紛れてカノープスの打ち上げに混ざったりなんかして、あたしはしばらく恋しかった「チームの一体感」というものを楽しんだ。

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