最近はアイドルという物が大騒ぎでございまして、

こんな風に青い空には、いわし雲が広がって……ああ、じゅるり。
あ、すみません。
のどかな商店街の夕方では、漂ってくるラーメンの匂いに立ち止まることもありますね。

「おう、ネイちゃん。トレーナーさんとデートかい？見せつけてくれるねえ」
「あ、いやいや、そんなんじゃありませんって」

因みに先日、オグリさんとスペシャルウィークさんがものすごい勢いで、ラーメンをパクパクしておりまして、皆そっちに目が留まってました
そのなんとも美味しそうな匂い。う～ん。こりゃ、私も食べたくなりますなぁ。
はいはい、ターボはあとでね。また私が作ってあげるから。
それでですね、イクノがラーメンを初めて食べて感動したなんてことを聞いたんですね。その味が忘れられない、って。
それで思い出したのが、この話。

昔の御身分の高い方々は、下々の庶民の生活はご存じありません。ですから常々少しでも知りたいと思っております。

天候に恵まれた初秋の日。
アイルランドよりご留学なさったお姫様が、SP連れて、目白駅近くの不動参詣をかねてお出掛けなさいました
着かれたのはお昼近くのことでした。

近くの商店街から、ラーメンの醤油ベースの香りが漂っております。
その時、SP隊長が「かような腹ぺこの折りには、締めをラーメンで」とか言ったのを聞きつけたファイ……いえ、お姫様、
「わたくしも是非、ぜひ、ラーメンというものを食してみとうございます」
とSPに所望いたしました。

さあ困ったSPの皆様方。
「ラーメンとは粗末なB級グルメでございますゆえ、殿下のお口にはいりますような料理ではございません」
といったものの、ファインモー……いえ、お姫様のお言いつけじゃあ仕方ない。SP隊長、考えあぐねた末に……

「というわけで、なんとかしなさい」
「え！？俺！？」

と、殿下の側付きのトレーナーさんに命じました。

トレーナーも初めは困惑四苦八苦。
ですが
「はっ、閃いた！このやりとりはファインモーショ……お姫様とのトレーニングに活かせるかもしれない！」
いつもの病気で快く引き受けました。
餅は餅屋、セレブ屋はセレブ屋ということで、名家のメジロ一族に相談し、材料や調理法、小麦一粒、醤油一垂らしにまでこだわり、ついに究極のラーメンを作り上げました。

「これは、メジロがファインさんの為に作ったラーメン……即ち、メジロラーメンですわ！」
「まぁ、美味しい！美味しいわ！こんな美味しい食べ物は初めて食べました！ありがとうございます、マックイーンさん！」
「良かったぁ、ありがとうマックイーン」
「いいえ、お友達のためですもの。では私も…」
「君は減量中だから無しね」
「殺生な！？」

お姫様は、生まれて初めてのラーメンをすっかり気にいられ、お腹が空いていたことも合わさって忘れられない味になってしまいました。
「フフッ、シャカールは知らないよね。ラーメンという食べ物を！」
「いや知ってるわ。テメーより遥かに食い慣れてるっつーの」
と、ご学友に無駄に自慢する始末。

ところが故郷のお屋敷に帰っても、食卓にラーメンのような料理は出てきません。
当たり前です、アイルランドでぽんぽこラーメンが出てきたら話が終わりです。
ある日のこと、親戚のお貴族様のおよばれでパーティーに出席致しますと、
「なにかお好みのお料理はございませんでしょうか。なんなりとお申し付けくださいまし」
という執事の申し出に、すかさずラーメンを注文してしまいます。

貴族様は驚きました。
「なんだそれは！？何か殿下のおふざけか！？」
「いいえ、あの目をご覧なさい、マジですよ」
「マジか」
なんとか日本のラーメンを再現しようと、府中トレセン学園から最上級の鰹節をとり寄せ、小麦も最高のものを用意して麺を作り、普段外国人が口にしない昆布も輸入して……
え？そんなの日が暮れるって？
細かいことはいいの、それよりターボ、鍋の火加減見てて。
えー…失礼しました。

こうして最高のラーメンを作ることはできました
が、このように味が濃いものをさしあげて、もしもお体に触っては一大事と、塩分も控えて、油も少なめ、
更に毒味を繰り返したせいでスープも冷め切ってデロデロに麺が伸び切ったラーメンを差し出しました。

「なんですか、これがラーメンと申すのですか？お戯れを。私の知るラーメンはもっとアツアツで、香ばしい匂いもして、旨味がたっぷりの筈ですわ…」
冷めて伸び切った、おまけに材料に脂っ気もないラーメンが美味しい筈がありません。
「このラーメン、いずれより取り寄せたのですか？」
「はい、材料は日本のトレセン学園にござります」
「ああっ、それはいけません！やはりラーメンは、メジロに限りますわ！」

（思いの外ちゃんと翻案してて困惑する俺……）

この上手さ、日本昔ばなしの人を思い出す

（ちなみに元ネタは『目黒のさんま』という噺の一つです）

じゃあ次は「モンジューこわい」で

凄く上手にウマ娘落とし込んでて感動したわ
目黒のサンマ知ってるからニヤっとしながら読ませてもらいました

>>18
語呂が良くて芝