SS:はっ、必死に努力し続けたら誰でも三冠ウマ娘になれるってか?
1 : お前   2025/04/12 04:23:15 ID:P/2vHxlbPE
・独自解釈独自設定を含みます。おおらかな人だけどうぞ
・細かい部分が気になる方はこの先はご覧にならない事をお勧めします

彼はそう笑った
傑作だというように、私を嘲るように
そして続けた
――そんなんでなれるわけねえのは、お前が一番分かってンじゃねえのか?
――ココの連中はみんなみーんな、お前のいう一生懸命な努力をずぅっとずぅっと続けてるぜ?
――で、その結果そいつらはG1はもちろん、メイクデビューも未勝利戦も勝てねえのが半数ってとこだ、そいつらは一生懸命努力してなかったのか?
彼は睨むように、でもまっすぐに私を見ていた
私は答えた
「それでも――私は三冠ウマ娘になります」

215 : アナタ   2025/04/21 08:54:52 ID:QC1k5eXN2.
『ああ、そういう……』

ジュニア級というのは才能とセンスで1年を終えることもよくある。
名家だったり話題性のあるスターが入学しそのままジュニアの最優秀になって、という王道パターンだ。
無名なウマ娘が無敗で朝日杯を勝ち最優秀ウマ娘になれば、ウマ娘もトレーナーもそれなりに話題になるだろう

「僕はライスに故障してほしくない。 だから今のライスの脚の状況をみてもらって、遠回しにでもオーバーワークに釘を刺してほしいんだ。」


🍚「うわあ、うわあ、ブルボンさん!」
🤖「こうして練習場でお会いするのは初めてですね、ライスさん」
🍚「嬉しいな、嬉しいな。 ブルボンさんと並走できるなんて」
🤖「……」
『並走していいぞ、一本。 ただし一本きりな分一杯までやっていい』

「どう、ですか? ライスの走りは」

『身体柔らかそうですね。 バネも良いモノもってますよ。』

「素質は良いんだけど、結果が伴わなくてね。」

『……うーん』


🍚「はあ、はあ、やっぱり、ブルボンさんにはかなわないな、すごいな、ブルボンさんは……すっごく早いし――強いなって」
🤖「ライスさんも、いい走りでした」

『よーし、こっちこい。 ライスシャワー、ここに座ってもらえる?』

芝生の上、ブルーシートにライスシャワーを座らせて――おもむろにお腹を触る

🍚「うひゃうっ!? な、な、なっ?」
「ちょっとブルトレくん?」

『あー、やっぱ骨盤とかまだしっかりしてねえなあ。じゃあ次うつ伏せなって?』

🍚「あ、あ、あのおじさま? おじさま?」
『……ライストレさん教え子におじさまとか呼ばせてるんスね……』
「マスターと呼ばせてる君に言われたくはないよ!? それより急になにしてんの!?」
『え、触診スよ触診。 こうして骨や筋肉や内臓の成長確認してるんス。はい、次うつ伏せね。』
216 : お姉さま   2025/04/21 08:55:18 ID:QC1k5eXN2.
うつ伏せになったライスシャワーの背中を軽く押すようにマッサージしていきながら

『ふーん、じゃあちょっとくすぐったいかもだけど我慢してね―』

と、膝立ちのままライスにまたがっておしりのあたりを両手で揉む。


🍚「うひゃあっ? ちょ、ちょっとブルトレ、さん? きゃうっ」
🤖「……………マスター」
『黙ってろブルボンこちとら真剣なんだ。うんうん…なるほど』



『単に調子悪いだけ、ってかまだ未成熟なだけっすね』
🍚「へ?未成熟って」


『本格化はきたけどまだ内臓や骨盤の骨がしっかり出来上がってないって事。
だから今焦って強度の高いトレーニングをしても骨の育成に良くないから。
しっかりトレーナーが身体を造るメニューつくってくれるだろうから、それに従ってな』


🍚「まって、まってください。 でも、もうクラシック期で、その……」
『身体が出来上がるかどうかは個人差大きいの。 お前ブルボンに勝ちたいんでしょ?』
🍚「そ、そ、それは……その」
『なに、勝ちたくないの? ブルボンはスプリングS出るぞ。 多分バクシンオーやコンタクトも出る。 そこでブルボンを倒そうって思ってるだろうし、俺等は全員逃げ潰して1着を穫るつもりでいる』
『お前は? ……お前はミホノブルボンに勝ちたくないの?』
🤖「ライスさん」

🤖「私は、ライスシャワーさんと全力で戦いたいです。」
🤖「ライスシャワーさんがいっぱいいっぱい頑張って、努力してるのを知ってます。だから――ライスシャワーさんの全力と、戦って、勝ちたい」

🍚「私も……私もブルボンさんと戦いたい! 全力で、勝ちたいっ……!」
217 : お前   2025/04/21 09:01:01 ID:QC1k5eXN2.
『……じゃあ、今の全力でスプリングSにぶつかってこい。 勿論負けるつもりもないし、実力差を思い知らせてやる。 でも、レースはスプリングSだけじゃないからな
身体をしっかり作って、いっぱい頑張って……それでまた勝負してこい。
もし、ブルボンが不甲斐なければスプリングSで勝ってみせろ』



「すごいな君は。 触診だけであんな内臓や筋肉が未成熟だなんて」

『え? ああさっきの半分ぐらいは適当っすよ? そんなの医者でもあるまいしわかるわけないないじゃないッスか。』

「………………え?」

『まあでも、身体柔らかすぎでお尻からトモが甘いとか骨盤が弱いとかそのつなぎ目が細すぎて、体幹からしっかりつくらないといけないとは思いました。
あれであの走りができるってのは良い素質持ってると思いますよ』

「…え、えっ? さっきのは?ねえさっきのは?」

『でまかせ半分ですよ。 オーバーワーク、してほしくないんでしょ?
あの子はまだ身体できあがってないってのは間違いないんで嘘ってわけでもないスけどね。 春でしっかり身体できたら良いレース出来ると思います。』

「ええっ、君あんなに自信満々に触診してたじゃん!?」

『まあええ、あれはほらマッサージとかであるじゃないですか』

「普通は女の子のお尻をわしづかみにしてもまないよ!?」

『え、しないんスか?』

「しないよ!?」

『だめですよ、おしりからトモまでしっかりマッサージしないと』
218 : 使い魔   2025/04/21 09:09:52 ID:QC1k5eXN2.
トレーナー室で、トレーナーはミホノブルボンにじっと見られていた
無表情だが、なにかトゲのある雰囲気、オーラだけが出ている

『あー、うんミホノブルボンさん? 何をそんなに怒っているのか、ナ? 僕ぁ親友であるライスシャワーちゃんに適切なアドバイスをしたと思うん、だけど、ナ?』

🤖「ライスさんのおしりは、柔らかかったですか? マスター」
『ええ、お前もソレいうの?
確認だけするけど、俺がライスのおしりや太ももをベタベタ触ったのが気に入らないと?』
🤖「破廉恥です、マスター」
『えー……』

わきわきと動かす自分の手を見つめるトレーナー。
そのような意識がかけらもなかったが、確かにやっていることは、少女のお尻を触りまくっているということだ

『いや、俺お前のマッサージ毎日してるじゃん? なんかこう、お尻を触るのがいやらしい事とか考えもしなくなってんだよね』
『まあ確かにそうだなあ、うーんブルボンにマッサージしてたけどたしかに良くないよなあ、どうするか』

🤖「問題ありませんマスター。 マッサージの継続を希望します」
🤖「ところでマスター、マスターはお尻を触ることで性的興奮をおぼえないのでしょうか? 男性は乳、尻、太ももが好きだと」

『あー俺尻フェチではないんで。 安心しろ魅力とか関係なく邪な感情を抱いたりしない。大丈夫だぞ』

🤖「………」

『ねーなんでそんな不機嫌オーラ出すんだよ―、そんなエロオヤジみたいなのにケツさわれたくないだろブルボンだってさー、俺誠実に向き合ってるよねえ?』
219 : アナタ   2025/04/21 09:29:25 ID:QC1k5eXN2.
『いやさ、俺思ったんですよミホノブルボンさん』
🤖「?」
『世間一般のトレーナーはマッサージしても臀部までしないんだと。 でも臀部ってトモにも腰にもつながってるから俺はするじゃん?』
🤖「はい、マスターが悪意ある欲求で触れてないのは理解してます」
『ブルボンって理解あるし、そもそも距離近いじゃん?』
🤖「もっと縮めることは可能です。マスター」
『結構ですミホノブルボンさん、いやまあ、今日のライスシャワーもびっくりしてたし、俺ももうちょっとブルボンとの距離感かんがえないとなって
『確かによくよく考えたらセクハラだよなあって、まあでもマッサージはしますよ? 脚の疲労ぬくのはもう絶対に必要だし』
🤖「他の女性に配慮する分私とのスキンシップはもっとすべきだと進言しますマスター、マスターがケツフェチでなければ、おっぱいでも問題ありません。 私は86の54です。カップは」

『やめなさいやめなさいやめなさい。 ブルボンが魅力的なのは知ってるからかわいいから、やめなさい』
220 : お姉ちゃん   2025/04/21 09:34:18 ID:QC1k5eXN2.
『いつも言ってるけど、お前の本分は三冠なわけですよ。 わかりますよねミホノブルボンさん。』

🤖「はい、そのためのトレーニングでも良好な結果をだしています。 トレーニングは順調です、マスター」

『くそ、タイムも何一つ申し分ないしトレーニングもしっかり集中してるから言い返せねえ』

🤖「よって、その時間以外は私のメンタルややる気を向上させる事で今後更にトレーニング効率が上昇する可能性が高いのでミッション:らぶらぶちゅっちゅを提案します」

『しませんよブルボンさん。俺は犯罪者にはなりたくないんですよブルボンさん』

🤖「なぜですかマスター。 マスターには性欲がないのですか?」

『ありますよブルボンさんでもそんな話を教え子としたくないんですよ、わかってくださいブルボンさん』

🤖「わかりません。 モード力ずくを使用するか、協議が必要です」

『やめてね?マジで人生終わるからやめてね?』
221 : トレ公   2025/04/21 09:34:37 ID:QC1k5eXN2.
休憩
222 : お前   2025/04/21 13:09:35 ID:QC1k5eXN2.
『あのね、もう言っちゃったから言うけど、お前は美人だし身体もイイしハグしてると滅茶苦茶いい匂いすんの』

🤖「ッパアアアア」

『でもね、君は学生なの手を出したら犯罪なのバレなきゃOKって思うかもだけど世の中の犯罪ってのはみんなバレないようにしてバレてるんだよ俺は犯罪者にはなりたくない』

🤖「……ステータス:理不尽」
🤖「わかりましたマスター。 その代わりに――先程の「美人」「かわいい」「おっぱい大きい」「いい匂いする」を沢山言ってください。
そうしたら我慢します」

『やだよ恥ずかしい。あとお前はそういうの言ったらかかって我慢できなくなるから無しだ。 スプリングS圧勝したら考えてやっても良い』

🤖「ッパアアアア」
223 : キミ   2025/04/21 18:04:44 ID:O0V8.L1QMU
『さて――いい話ばかりじゃない。 今後の事もちょっと話しておく。』

🤖「はい」

『今回のスプリングSは1800Mだが皐月賞2000Mの前哨戦だ。 ほどなく日本ダービーが控えてる。
もし、スタミナ、距離適性が原因で敗戦した場合―――2000Mの皐月賞まで時間がない事から皐月賞を走り切るスタミナが足りてない。 と判断する。
――意味は、わかるな?』

🤖「――はい、クラシック路線を走りきれない、短距離路線への変更を考える、という事ですね。」

『随分あっさり言うじゃないか、三冠しか興味ないって感じだったろう』

🤖「私はマスターを信じています。 マスターが鍛え上げた脚と、心臓を信じています。 ですからそれを作り上げたマスターの判断に、すべて従います。
――三冠路線を諦めるとマスターが判断すれば、従います」

『……いいのか?お前の夢だろう?』

🤖「マスターは言いました。 才能があるウマ娘が頑張って、努力してそれで最強が集まるのがG1、クラシック戦線だと。ならば適正を考えるのは選択としては正しいと思います。
朝日杯1600Mの僅差が私の距離限界を示しているとの見解は見ました」

『個人的にはありゃヤマニンキセキが覚醒しすぎた感じだったけどな』
224 : お姉さま   2025/04/21 18:13:38 ID:O0V8.L1QMU
朝日杯のヤマニンキセキの覚醒した走りは限界を超えたものだった。
あと20Mあれば確実に差し切られていた。
ミホノブルボンの上がりは35秒5 良馬場とはいえ曇りの湿気の含んだ中山11Rとしては十分なタイムだが、ヤマニンキセキの上がりの走りはそれを凌駕した。

『限界を超えるってのはいいこっちゃないんだ。
事実ヤマニンキセキはあのあと骨膜炎を発症、この前の弥生賞で復帰したが走りに影響が出ていいとこなしの4着だ。』

――己のスピードの限界を超えればそうなる
――それはスタミナの限界を超えても一緒だ

『スタミナが切れれば上半身を支えられなくなる。 乗っていたスピードが支えられない身体と脚に一気に襲い掛かる。
当然故障すれば全てはパーだ。
これ以上の無理は出来ない。わかるだろ?
スタミナが足りなくてもレースは勝てない
――故障をしたらレースに出れない』
225 : マスター   2025/04/21 18:18:30 ID:O0V8.L1QMU
🤖「私は――マスターを信じます。 ですが、私はまだ、証明していまいません」

――スプリングステークスで、マスターに証明します。
――マスターが作り上げたミホノブルボンは、誰しもが認める最強のウマ娘だと言うことを

『……そうか。 わかった、まずスプリングSで俺にも証明してみせろ。 』

個人的には
皐月賞までのスタミナは鍛え上げたと思っている。
しかし、そこからさらに400M――その400Mの距離はあまりにも長過ぎる。
東京の長い長い直線。 あの直線を後続を突き放して走り切るスタミナ。
このスプリングSでもし――スタミナに不安が出れば、その400M いや600Mの距離は絶対に間に合わない
226 : モルモット君   2025/04/21 18:23:22 ID:O0V8.L1QMU
『……準備はできたか、ブルボン』
🤖「――――」
『……ブル―――』

言葉を飲み込む。 ミホノブルボンは初めてレース前に瞳を閉じて、集中していた。
しばしの沈黙のあと、ミホノブルボンは目を開き、立ち上がる

🤖「システムオールグリーン。 ステータス:超絶好調
ありがとうございます、マスター
――今日は最高の状態だと言えます。」

『……おう』

ミホノブルボンはあまりレースでの自意識が過剰な方ではない。
しかし今日のミホノブルボンには強い自信と――強者がもつ威圧感、風格というものがあった。
最高の状態、というのは間違っていないようだ

『いってこい。 2枠4番、偶数番号はゲートインから開くまでがはやい。 逃げには絶好だ。』

🤖「はい、マスター」
227 : お兄ちゃん   2025/04/21 18:33:58 ID:O0V8.L1QMU

>>226に表記ミスがありました。 スプリングSの枠順は1枠1番です。訂正してお詫び申し上げます

『どうですか、ライスシャワーの仕上がりは』

「ああ、悪くはない。 悪くはないがまだ万全じゃないね。 君の言う通り今は身体を作り上げることにしてるよ。 皐月賞までは苦戦するだろうね。
今日のミホノブルボンの調子はどうだい?」

『世辞抜きに最高ですね。 集中もしてました。 これで万が一スタミナ足りなくて負けるようなら――』

「……短距離に転向かい? 惜しいね。 でも、今日は枠番も味方してる。
中山の1800Mはスタート直後がコーナーだ。 1枠1番は良い枠順だろう。」


一瞬、互いの言葉が止まって――
ゲートが開いた
228 : トレーナー君   2025/04/21 18:46:27 ID:O0V8.L1QMU
🌸「バクシン的……ロケットスタート!」

最高のスタートを切ったのは4番サクラバクシンオー
そのまま先頭を伺い――

🌸「ちょわっ?」

スタートはバクシンオーに劣ったものの、一足、二足と加速して先頭に立とうとするサクラバクシンオーに並ぶ

🤖「――ッ」
🌸(なんという加速、なんというバクシン! しかしスタートでそんな加速をしては1800Mという距離が保つのですかブルボンさん。コーナーが目の前ではこれ以上は競れませんね……バクシン的撤退です。二番手から脚が鈍ったブルボンさんを差します)

――第一コーナーに来てまだ加速してますの?
――ミホノブルボンさん、貴女は中距離――1800Mを甘く見てますわ


『ノーザンコンタクトは抑えたな。 さすが名家の一族、ハイペースには付き合わないか。』

「重賞で2000M勝利、1800Mを2着。 1800M以上のレースの経験があるからね。 ジュニアに多いマイルまでのペースでは通用しないのが分かってる。」

『さすが、ミホノブルボンを抑えての1番人気だ。』
「それにしても――はやすぎやしない? 今日、不良馬場に近い重馬場だよ?」
『……俺もそう思います。 ですが、ミホノブルボンが掛かってるとは思いません』
「途中で息をいれるにも、もうバックストレートに入ってる」
229 : トレぴ   2025/04/21 18:52:08 ID:O0V8.L1QMU
――キミの適性は短距離だろう
――三冠路線なんてもってのほかだ
――まず、OPクラスまで無難に勝つ方法を

短距離適性しか無い、並のウマ娘
それが私、ミホノブルボン
でも――今は違う。
マスターに出会って――マスターが私を最初から作り直してくれた。
あの人の作り上げた脚は、心臓は――最強なのだと
私が思う三冠への夢と同じぐらい――証明したい
――マスターは、最高のトレーナーなのだと

🍚「――ッ、だめだ、今いかないと――きっとブルボンさんは垂れてなんかくれない」
🌸「……ええい、ッこれ以上は離されません、離されませんとも、私は学級委員長!私はサクラバクシンオーなのです!」

――だから! そんなペースで1800Mを走りきれるわけないじゃないですの!
――そんな甘いレースじゃない、距離が200M変われば別世界なのがレースですの!
――でも
――もし――ミホノブルボンさんが―――
――もし――このまま垂れ落ちなかったら?
――あり得ない
――だって追走してる子たちの表情だって精一杯だ

――ついていくだけで潰れてしまうなんて相手――そんなのはありえませんわ
230 : アナタ   2025/04/21 18:57:50 ID:O0V8.L1QMU
『……俺は、1800Mなんかでミホノブルボンがいっぱいになるって思ってはいなかったんスよね。 スタミナの壁に悩まされるのはきっと、日本ダービーぐらいかなって。』

「いや、しかしこのペースは……サクラバクシンオーが、もう表情からして限界だ。 後ろの子たちがスパートをかけたら」

『できます? 今日、ほぼ不良馬場なんですよね?』

「……まさか、彼女は」

『俺は、逃げ競るサクラバクシンオーを潰せとは言いました。 でもあれじゃ
――ついてくるウマ娘全員潰すような、走りじゃないですか』


――背中が遠い
――なのに、あの背中は、トモは大きく見える
――これが強者の、背中
――ついていくのがやっと、ううん、気を抜いたらライスも潰れそう
――でも――ついてく――――ついてく!
――今日は勝てないと思う。 それでも
――今日、ついてければ――いつか勝てるから
231 : あなた   2025/04/21 19:08:12 ID:O0V8.L1QMU
🌸「負けません、学級委員長として! 負けま、せんっ」
🍚「バクシンオーさん……ライスは、ついてく、絶対に、絶対に!」
🌸「っぷ、あっ」

第四コーナーを回ったところで、ライスシャワーに並ばれたサクラバクシンオーの顎があがった。 完全にいっぱい――スタミナ切れだ。

「サクラバクシンオーがいっぱいだ! ミホノブルボンは!」

『まだです! まだ! ほらブルボン、最後の一本!! 四本目だ!!
いけ!いけいけいけいけ!!』

重馬場としては異様なペース
サクラバクシンオーが追走しきれず潰れ
後方待機の殆どのウマ娘が差を縮められない――追走だけでいっぱいなのだ
そんな――後方待機で潰れたウマ娘に囲まれ沈んでいくノーザンコンタクト

――どいて、どいてっ!
――私はまだやれる!このために耐えてましたのに!
――邪魔をしないで、私はここから――勝てるのにっ!!


「ノーザンコンタクトは――バ群に揉まれたか」
『進路妨害もへったくれもねえ、完全に潰れたウマ娘の下敷きだ。 あれじゃ進路がない。 ブロックするつもりもねえんだろうが、進路ミスだな』
「いや――外に出た子いるぞ――マチカネタンホイザ」
『ああん!? あいつ目立たないと思ったらいつの間に外に?』

最後の直線
ミホノブルボンが先頭で――しかし外にはマチカネタンホイザ
そして――ずっとミホノブルボンについてきたライスシャワーが内から出てくる

「ライスシャワーの進路が開いた! 」
『ブルボンっ!最後の一本!』

「いけっライス!ライスライス!!」
『ブルボンッ!!!』
232 : 貴方   2025/04/21 19:16:52 ID:O0V8.L1QMU
🕷️「ふん、ふん、ふん――ドロドロバ場は走りづらいけど――でも、外は走りやすそう~……じゃあ、行きますよブルボンさん。むんっ」
🍚「ブルボンさんっ……行きます」

ここまでのハイペースでも潰れなかったウマ娘たちが最後の直線でミホノブルボンの背中を捉えようとラストスパートを仕掛ける。
しかし

――マスター
――証明できました
――私にはこの直線を走るだけの力が残ってます

🤖「ギアチェンジ――モード:ラストスパート システム――"四本目"」

ダンッ

🕷️「…うっそ、ぉ~……む、むんっ!!」
🍚「まだ、スパートが出来るの!? 届かない――ううん、どんどん離される」


「……たまげた。 ちょっと強すぎる」

『いや、俺もちょっとビビってますよ。 あのペースで押し切るのかと思ったら――直線で更に伸びやがった』

「ライスシャワーも直線までしっかりついていって内のいい位置から伸びた。正直ありゃだめだ――次元が違う」

『いや、凄いっすよね。ブルボン、すごいっすね……
っしゃあっ! どうだ、俺のブルボンが!こんなにも強いっ!!よっ……しっ!!』

「そんな全力でガッツポーズするトレーナー、始めてみたよ。 キミは、良いトレーナーだ。」
233 : トレぴっぴ   2025/04/21 19:23:55 ID:O0V8.L1QMU
――強い!残り200で差は5バ身いや6バ身!さらに差を広げてゴール
――圧勝ですミホノブルボン!これは強い!
――圧倒的な逃げ切り!

場内は歓声とどよめきに包まれている
あまりの強さに、観客もどのような反応をしていいかわからなかった。
重バ場のレースとは思えないペースでレースを引っぱり、直線に出る頃には追走するウマ娘たちが潰れていた。
それを追走しきったウマ娘のスパートを上回る直線の豪脚

淡々とレースをこなした
というにはあまりにも強すぎるミホノブルボンの圧勝だった。


🤖「戻りました、マスター」
『よし、タオル。 後ろ向け全部拭くから。
全部拭き終わったらまず着替えろ。 ライブ用の勝負服で今日はライブするぞ。』

🤖「あの、あのマスター」

『いいから、まず身体拭いて、アイシングとマッサージだ。
よくやった。 本当によくやった。
今気を抜いたら全部やるべきこと忘れて全力ではしゃいじまいそうなんだ。
先にマッサージとアイシングだけさせてくれ。 あとでいつもの100倍はほめてやるから。』

🤖「……はい、マスター」
234 : 貴方   2025/04/21 19:32:18 ID:O0V8.L1QMU
――ミホノブルボンさん

ライブが終わって、声をかけられた。
きらびやか、という雰囲気の似合う、お嬢様といった雰囲気のウマ娘、今日の一番人気だったノーザンコンタクトだ。

――なんなんですの……あの、あの走りは、なんなんですの!?
――あんなペース、保つわけがありませんわ。 なのに後続がバタバタ潰れていって、それなのに先頭を走る貴方はさらにスパートをして
――貴方は、なんなんですの!?

よほど、ショックだったのだろう。1800Mも2000Mもすでに経験していた彼女にとって、まるで別次元のレースだったことに。

🤖「……私は、ミホノブルボンです。
三冠を穫るために、この脚と心臓を鍛えてきました。
だから、このレースも勝てたんです。」

――このレースは三冠のための踏み台?

🤖「いいえ、否定します
今の私に出来る最高のレースでした。 それでも――まだ強くなる必要性があります。
皆さんも、これからどんどん強くなります。 今勝てた相手が、今度はもっと強くなります。 ライスさんも、マチカネタンホイザさんも
――ノーザンコンタクトさん、貴女も。」

――――私達が、まだライバルだと?

🤖「私も最初は弱いウマ娘でした。 ですから――今勝った相手に次も勝てる保証は存在しません。 全員が、強敵です。」

――は、ははっ
――潰れたウマ娘にブロックされて轢かれた私もライバルだっていうの!?

🤖「はい。 貴女も強敵です。ですから―――」

🤖「次も―――負けません。」
235 : 貴方   2025/04/21 19:35:24 ID:O0V8.L1QMU
🍚「ぶ、ブルボンさん!!」
🤖「ライスさん」
🍚「ぜ、全然勝負にならなかったよ、えへへ……ブルボンさんは、やっぱすごいな、強いな……」
🤖「内から黒い影が見えました。あれがライスさんだったのですね。」
🍚「え、き、気づいてたの?」
🤖「はい」
🍚「すごいな、ブルボンさんは」
🤖「ライスさんも――あのペースをずっと付いてこられるのはプレッシャーを感じました」
🍚「そ、そうかな? ライス、頑張れた、かな……」
🤖「はい、とても」
236 : トレーナー君   2025/04/21 19:44:28 ID:O0V8.L1QMU
『ライブお疲れ、脚や腰に違和感はないか?』
🤖「ありません、マスター。」
『よし、ここ今日は使われないらしいし許可もらったからもう少しマッサージしていくぞ』
🤖「マスター」
🤖「今日のレースは、証明になりましたか?
――私は、マスターが最高のトレーナーだと、証明できましたか」

『……っ、あーもう、お前は自分の三冠のことだけ考えてろ』

🤖「っ、マスター」

ぎゅうっと、強く抱きしめる。いつものように頭を撫で回したり背中をたたくような事もせず、ぎゅうっと強く、深く抱きしめる

『びっくりした。 驚いた。 ブルボンがこんなに凄くて強いって、いつもトレーニングを見てる俺がびっくりしたんだ。
本当によくやった。 本当にすごかった。 証明なんか要らん、お前は誰がなんと言おうと最強のウマ娘だし、今日レースを見たやつはお前が最高のウマ娘だって思ってるさ』

――嗚呼
――私は――マスターに出会えて、よかった

🤖「マスター……」
『ブルボン――』

ミホノブルボンとトレーナーは見つめ合い、ゆっくりと顔を近づけ

『――あぶねえ!?』

ギリギリのところでトレーナーが離れた
237 : アネゴ   2025/04/21 19:48:45 ID:O0V8.L1QMU
🤖「…………マスター それはバッドステータス:空気読め なのではないかと進言します。」
『うるせえっ!うるせえうるせえ!! あぶねええええっ、ほんとに危なかった!!!』
🤖「……」

上気した頬、潤んだ瞳、ハグで伝わる柔らかい身体、甘い匂い
――間違いを犯すとこだった
心臓破りの坂をのぼったように心臓をバクバクバクバクさせて、トレーナーは

『ほら、これ見てみろこれ! 触ってみろ』

🤖「あっ、マスター……?」

『心臓の音わかるだろ? 死ぬほどバクバクしとるわ、小娘が良い年した大人をときめかすんじゃない! 間違いはおこさないって約束だろう?』

🤖「……つまり、 これは――状況:惜しかった という事ですねマスター」

『間違いを犯すなって言ってんだよ!』
238 : トレピッピ   2025/04/21 19:56:44 ID:O0V8.L1QMU
『後でタクシー呼ぶから。 怒られるギリッギリまでマッサージするぞ。
学園と寮には事情説明してあるし許可貰ってるから門限は気にするな』

マッサージ用の寝台にうつ伏せになったミホノブルボンの脚をゆっくりとマッサージしていく。
お尻からトモの部分の筋肉の発達が素晴らしい。 鍛え抜かれた筋肉の張りと美しい曲線美が出来上がっている。
いいケツ、とかデカいケツ。というと性的に聞こえるがそうではなく、そういう丸いケツではなく、鍛えられたのがよく分かるトモまでの筋肉がそのままお尻に伸びてるというアスリートとして垂涎の臀部だ。

🤖「マスター、マスターは私のおしりには興奮しないのですか?」
『なんなんですか、ミホノブルボンさん突然のセクハラよくないですよ?』

ぎゅ、ぎゅ、とマッサージを続ける。

『ちなみに、トレーナーって基本おしりと太ももずっと見てるけど職業柄なわけで。 まあ勿論チチシリフトモモって言葉はありますよ? 男性はそういうとこをいやらしい目で見るのはまちがいないですよ?』

🤖「では、私のお尻には魅力がありませんか?」

『ちがうんスよ。 なんつーかほら……下着メーカー勤務の男性が女性用下着にそういう邪な視線をむけないような。 もうトモにどんだけ筋肉がついてるかとか大臀筋からトモのバランスはどうかとかで見てるからいやらしい目で見る習性が消えてるんスよね、多分俺だけじゃなく殆どのトレーナーそうよ?』
239 : トレぴっぴ   2025/04/21 20:03:14 ID:O0V8.L1QMU
🤖「……そうですか、残念です。 マッサージのたびにマスターの理性を削れると思っていたのですが」

『あのね、最近は女性から男性へのセクハラも認められる世の中だからね? やめようねほんとにやめようね。
それにしても、こうしてトモとかをマッサージしてると、だ』

🤖「?」

『脚にも腰にも、いい意味ですっげー筋肉ついたなって。 手に余るというかマッサージ出来る範囲がどんどんどんどん狭くなる。
前はここ手のひらで届いたのになって――お前ほんとに頑張ったんだなって』

🤖「はい……頑張りました。」

『次――皐月賞だな』

🤖「はい、 三冠の1つ目です。」

『今日より200M長い。 朝日杯より200M長かった今日、どうだった?』

🤖「……200Mは、予測より遥かに大きな差でした。
結果、7バ身差でしたが最後はとても心配――スタミナがいっぱいでした。」

『ああ、もうすぐに皐月賞で、さらに200M伸びる。 』

🤖「問題ありません。 ペースとデータを更新し最適なラップを割り出します」
240 : 大将   2025/04/21 20:06:17 ID:O0V8.L1QMU
『よし、そろそろ帰るぞ。 タクシー呼ぶからちょっとまっていてくれ』

🤖「マスター、ご褒美のハグは」

『さっき滅茶苦茶したじゃん。 キスまでしそうになったじゃん』

🤖「マスター、今日私はとても頑張りました。 とてもとても頑張りました」

『くそ、要求の仕方覚えやがって。 もう帰らなきゃいけないからおしまいです。 おしまい』

🤖「……」

『ま、今度また俺の部屋にきて、いっぱいご褒美やるから。 今日は確かにすげーレースだったもんな。感動したよブルボン』

🤖「ッパアアアア」
241 : お前   2025/04/21 20:06:36 ID:O0V8.L1QMU
スプリングSおしまい
242 : トレーナーちゃん   2025/04/21 20:07:04 ID:O0V8.L1QMU
今日はだそくなしで明日以降に次話書きます
243 : トレピッピ   2025/04/21 20:15:56 ID:O0V8.L1QMU
>>1です
閲覧ありがとうございます。 今回の枠番のミス、申し訳ありませんでした。
また史実をご存知の方は実際のレース内容と違う部分があります。
マーメイドタバン・ダッシュフドーなど史実でライスシャワー、マチカネタンホイザより上位入着したウマが登場してない部分は、

・文字だけで表現することで発言や心理描写の混戦が起こる
・この掲示板の文字数制限改行制限で細かく描写ができない

などの都合であえて登場させていません。 筆者の表現限界と思いご容赦いただければと思います。
今後も、このような史実との乖離、ご都合主義による史実、アプリストーリーとの乖離、改変などありますが、どうぞ暖かくスルーしていただければ幸いです
244 : アネゴ   2025/04/22 18:03:17 ID:HcyNelBreg
『皐月賞――G1――かあ』

スプリングSの圧勝から1ヶ月にもならない。
しかしスプリングS以外のトライアルから続々と出走登録は出ている
人気薄ながらOP、重賞と連勝。 その報知新聞杯ではヤマニンキセキ、サクラワールドオーを破って2000Mを勝利したアサカリーゼント
OPクラスを2勝、クラシック期に入って実績を詰むナリタタイセー
勿論、ライスシャワーやマチカネタンホイザも出走表明してきた
堂々たる顔ぶれ、人気の上位から人気薄まですべてが強者

――ミホノブルボンさんは初の2000Mという事ですがどうですか?
――距離の壁に苦しむのではありませんか?
――トレーナーとして彼女の適正に合わせ短距離路線を進ませないんですか?
――彼女に2000Mは走れますか

記者会見とかいう大仰なものは初めてだったが殆どがネガティブな距離への不安の質問ばかり。
うっとおしい、だめだと言おうがスタミナは余裕だと言おうがレースは変わらないのだ。もうここまできたら走るしかないのだから。
スプリングSのあの圧勝を見てもこれだ。 半分以上は話題性のためのゴシップなのだろうが、ここまでくると黙って見ていろと怒鳴りたくなる

――とはいえ、ミホノブルボンに逆風になるような事は言うつもりはない。

ゴシップであるなら最もそのような記事で盛り上げれば良い
短距離ウマ娘が距離の限界を超え三冠ウマ娘に――その方がよほどセンセーショナルだ。ファンも記者も、URAもすべてが一つの物語の体験者になる。
余計な事は言わず、その限界を、距離の壁を超えられるのがミホノブルボンだとだけ、記者が喜びそうな言葉を選んで答えておいた
245 : キミ   2025/04/22 18:10:13 ID:HcyNelBreg
距離の壁を、努力で克服した三冠ウマ娘
伝説的な存在、歴史に名を刻む事件だ。 ミホノブルボンはスターになるだろう

『……ま、あんだけ頑張ったんだ。 本当に三冠馬になったら、スターになるぐらいいいじゃんな』

「あの、ミホノブルボンさんのトレーナーさんですよね?」

『……はい?』

ミホノブルボンや自分よりちょっとだけ低い背丈
左耳にリボンのついたウマミミ
とはいえ学生ではない。 佇まいも体格も明らかにアスリートではない
太っている、というわけではないがアスリートのしまった筋肉質な体躯ではなく、ッ全体的に豊満、といった柔らかい雰囲気の女性だ

『あー、記者会見で話した事以外話せる事ないっスよ? 皐月賞は走りで距離の壁を克服してるって証明するしかないんで』

学園にまで入り込むとは随分熱心な記者だ。 パパラッチの類かもしれないがその時はさっさと警備員の方にお願いしよう
246 : アネゴ   2025/04/22 18:13:47 ID:HcyNelBreg
「ち、違うんです。 私――ミホノブルボンさんの特別なライブ――三冠グランドライブを企画したくて――」

『三冠、グランドライブ……すか?』

三冠ともなればURAも特別なセレモニーをするのだろうか? とはいえまだ皐月賞前なのに随分気の早い話だ。

「はいっ! ミホノブルボンさんは三冠ウマ娘になれるって信じてるんです! 私ちょっとしたファンです! トレーナーさんに是非お話伺いたいなって思いまして」


「私――イベントプロデューサー、URAのイベント企画をしているライトハローと言います」
247 : アンタ   2025/04/22 18:27:16 ID:HcyNelBreg
最初からライトハローの身の上を信じたわけではなかった。
ゴシップ狙いの記者ならいくらでも身分を詐称する。なので質問をした

――アンタはミホノブルボンのどこが好きなんだ?


『――はい、次のビール来ましたよライトハローさん!
今日は皐月賞の前祝い! はいかんぱーい!』
「かんぱーーーーい☆ ブルトレさんは話がわかる方ですね、素敵です☆」

商店街、小さな居酒屋

トレーナーはライトハローとすっかり意気投合して酒を飲んでいた。
明らかに身分をさぐるようなトレーナーの問いに、ライトハローは即答したのだ

――ケツです、お尻です! あんなすっごいお尻見たことありません!
――私スプリングSのパドックで見た時「うわ、尻すっご」って言っちゃいましたもん

トレーナーは尻フェチではない。しかしミホノブルボンというウマ娘を語る時、まずケツの凄さから語る人間は間違いなくミホノブルボンを理解してる。
鍛え抜かれたトモ、ハムストリングス、それを支える大臀筋
恥じる事なくここを絶賛する人間は間違いなく本気でURAに取り組んでる人物だ

流石にトレーナー同士でこの時期に酒はのめない。 ライバル関係になる陣営も多いからだ。 一人で居酒屋でちびちびも淋しいもの

そこに現れたミホノブルボンファンであろうライトハローと酒を酌み交わしガハハと笑うのは必然だった。

『いやあ、ミホノブルボンへの評価の第一声が尻ごっついなあとはライトハローさんはわかってらっしゃる。 はい、飲んで飲んで飲んで』

「えへへ、三冠ウマ娘のトレーナーさんにお酌していただけるなんて光栄です。」

『ライトハローさんも、学生時代はURAで走ってらっしゃったんですか?』
248 : トレーナーさん   2025/04/22 18:33:29 ID:HcyNelBreg
「はい、でも私は未勝利で終わってしまいました。 それでもURAのキラキラした世界に関わりたいなって――今回は表彰ウマ娘などの大記録や記憶に残るなにかを達成したウマ娘のセレモニーとして、特別なライブ――グランドライブを立案、企画して学園やURA関係者にプレゼンしたいなって」

『おおお、そりゃ凄いですねライトハローさん。 素晴らしいアイデアだと思いますよ、ご褒美のおかわりをどうぞ、まだ飲めますよね』

さすがにブルボンのように頭をくしゃくしゃぽんぽんはできない。
その代わりというようにライトハローのコップにビールを注ぐ

「んっ、…んく、んく――ぷはー☆ 今日は一層ビールが美味しい☆
さささ、トレーナーさんも一献、お注ぎしますよ☆」

『いやあ、こんな美人さんにお酌されるなんて光栄ですよ、おっとっと。
本人の意思は尊重したいですがセレモニーの件、トレーナーとしては勿論喜んでお願いしたいぐらいです。
それにブルボンの話でこんなに盛り上がれる酒なんてなかなかね、ほら――正直? ブルボンが? ぜーんぶ? クラシックとっちゃうからねえ!』

悪酔いである。 とはいえ本当はブルボンを自慢したくてしたくてしょうがないのだ。 とはいえトレーナー間だとG1の栄誉を奪い合う間柄、自分の担当の栄誉はそのトレーナーたちの雪辱の上に成り立ってる。
酒で騒ぐ時はあっても、自分の担当の強さ自慢はなかなかにできないものだ
249 : ダンナ   2025/04/22 18:40:52 ID:HcyNelBreg
「よっ、ミホノブルボン! 歴史上初の無敗の四冠ウマ娘っ☆」

『まあまあまあまあ、ほらライトハローさんグラス空ですよカラ、飲んで飲んで
――あれ? 史上初?』

「そうですよ☆ "皇帝"シンボリルドルフの無敗の三冠は朝日杯が入りません。
菊花賞まで無敗で行った時は――史上初の無敗の4冠です。」

『あー、そっすね。 そういや栗東寮でもすこし話題になっていたような』

「栗東寮?」

『ええ
トレセン学園って栗東寮と美浦寮ってありましてね
まあ昔からトレーナーも栗東ひいき、美浦ひいきってあるんですよ。
昔からの慣習なんでいがみ合い、みたいなのはないですけどね』

「へえ、そんなのあるんですね」

『で――シンボリルドルフは美浦寮――というか過去の三冠ウマ娘はみんな美浦寮だったらしいです。 まだ栗東寮からは三冠ウマ娘が出てないとか。
今回、ブルボンが三冠路線ってことで、ちょっとだけ盛り上がってるらしいんですよね。』

実際、美浦寮の方が新入生から人気があるそうだ。 美浦寮を希望してこぼれた結果栗東にくるとなればそれが誰かわからずとも栗東寮からしたら気分はよくない
あくまで気分の問題だが、ミホノブルボンに三冠を獲ってもらいたいと思ってもらえるならいい話だ
250 : ダンナ   2025/04/22 18:45:04 ID:HcyNelBreg
「でも、実際スプリングSみたいなレースならもう皐月賞も、ダービーも、貰ったようなもんじゃないですか? ブルボンさんって逃げでも序盤から直線まで全く同じペースで走れるような子じゃないですか。」

『お、お、お? ラップみました? わかります? いっやーブルボンの体内時計にきづいてくれるなんてライトハローさん流石だなあ!
おっちゃん、ハイボール大ジョッキでもってきて、あと唐揚げ!
じゃあちょっと、ミホノブルボン試験しちゃおっかなー、ライトハローさんのブルボン愛をテストしちゃうぞー』

「きゃー、お手柔らかにおねがいしますねトレーナーさん」

『正解したらジョッキ一本奢りますね、今日は何本でも飲んでいってください』

「やりますやりますやりますっ! 私のミホノブルボン愛語っちゃいます」




―――マスター、そろそろ明日の準備をしてはいかがでしょうか?
251 : アンタ   2025/04/22 18:52:55 ID:HcyNelBreg
冷水を頭から被ったら、このように人間は戦慄するのだろうか

勿論トレーナーは冷水など被っていない。 ミホノブルボンは間違っても実力行使に訴えるようなウマ娘ではない。
単に、静かに、とても静かに――後ろからトレーナーに声をかけただけだ。

『…………………ミホノブルボン、さん?』
🤖「…………こんばんは、マスター」
🤖「マスター」
🤖「質問に答えてください」
🤖「私は今冷静さを失おうとしてます、マスター」

『まって?ねえまって? ねえ今門限すぎてるよね? 』
🤖「寮長であるフジキセキさんに夜間外出の許可を頂いてます。」
『そもそもなんで俺がここいるって知ってるの!?』
🤖「マチカネタンホイザさんから伺いました。 商店街の方がここでマスターが女性と飲んでいると」
『い、いいじゃないスか、たまにはこう、ハメをはずしてもいいじゃないスか!』
🤖「明日はミーティングです。 そろそろ明日の準備をすべきです、マスター」

ミホノブルボンに首根っこを掴まれ、ずるずるとお会計に引きずられるトレーナー
ライトハローは呆気にとられたままそれを見送っていた
252 : あなた   2025/04/22 19:02:31 ID:HcyNelBreg
『えー、今日は皐月賞のミーティングです。
――だよね? なんで俺は床に正座させられてるの?』

🤖「……」
🌻「だめですよマスターさん、浮気はだめですよ☆」
🍚「お、女の人と夜のお酒とか、ライスよくないと思うな」

『ちょっとまって、俺下心なかったよ? ねえ俺ギルティなの?
ブルボン愛を語れるライトハローさんと酒のんでブルボンの話でもりあがってたんだよ?』

🌻「同じ趣味や好きを共有していつしか恋仲とかよくある話ですね」
🍚「うわあ…うわあ……マスターさんギルティだよぉ」
🤖「マスター、浮気はだめす。 浮気はだめです。」
🌻「ライトハローさんはどんな方でしたか?」
🤖「おっぱいもお尻も大きいかたでした。 目視での計測は90をゆうにオーバー」
🍚「ふ、ふえ、そんなのだめだよ、だめだよお」

『そういうのは女の子だけで語っててよ男を前に生々しいのやめてよお』
253 : トレーナーさん   2025/04/22 19:11:14 ID:HcyNelBreg
『商店街の刺客だったのか――マチカネタンホイザは。 くそ、いかにも無害な普通のウマ娘って感じなのにくそっ
ええい、俺はライトハローさんといかがわしい間柄じゃねえ、単に三冠セレモニーの企画を打診されてただけだ。』

🌻「セレモニー?」

『ああ、引退式とかあるだろ? あんな感じで三冠の戴冠式みたいな大きなセレモニーと大規模ライブをしたいらしい。 とはいってもまだ構想段階だし――ブルボンが三冠を穫るって前提の話だ』

🤖「三冠……はい」

『まあ、お前がそういう企画を受けるかどうかってのはあるがまずは目の前の皐月賞をとってからだ。 あと桜花賞おめでとうニシノフラワー!』

🌻「あ、はい。 ありがとうございます。」

『まあ、ニシノフラワーはティアラ路線というのが確定してる。 しばらくライバルとして戦う事はない。
だが?
ここに?
スパイがいるな? なああああ?』

🍚「きゃああああごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

わざと怖い声をだし両手をあげライスシャワーを脅かすトレーナー

『まあいい、他の奴に一切漏らさないこと。それだけが条件な』
254 : お兄ちゃん   2025/04/22 19:17:53 ID:HcyNelBreg
🤖「いいのですか? マスター、最終ミーティングですが」

『じゃあなんでライトハローさんの尋問とはいえライスシャワーを連れてきたんだ。
――どうせやることは変わらん。スプリングS同様に逃げて逃げて追走しても潰れるほどに逃げる。 速く仕掛けてきたらスタミナ切れ、遅けりゃ届かん。 非常にシンプルで潰しようがない戦法だし、そもそも手の内はもうスプリングSと同じなんて全員わかってる。 』

🍚「う、うん……おじさまも、ブルボンさんはスプリングS同様に最初から飛ばすだろうって」

『朝日杯のマイケルアーサーみたいな先頭じゃないと気がすまないってのがいない。 敢えてブルボン対策にハナを奪うような博打はブルボンの先行力を考えたら自爆行為だ』

スプリングSでも、スタートはサクラバクシンオーが上回っていた。
しかしそれでも、ミホノブルボンの先行力はサクラバクシンオーすらも上回っていたのだ。
255 : トレーナー君   2025/04/22 19:27:47 ID:HcyNelBreg
🌻「マスターさん、そもそもブルボンさんみたいな逃げより無理して前にいかなきゃいけないって事はあるんですか?」

『あるぞ――走り方が前傾姿勢や小柄で蹴り足のドロをもろにかぶるやつ
それで集中できないでイライラしたり掛かったり――自分のペースを保てなくなる逃げウマは結構いる。
あとは、シンプルに性格だな、バ群に入れない、競り合うのが苦手、追い抜きが下手、あとは――自分の前に他のウマ娘がいるのが気に入らないとか、走る気なくすとかだな。』

🌻「脚質って色々なんですね」

『例えば、過去に伝説となったダービーウマ娘はダービーで最初の1000Mで58秒6ってタイムで通過した。 誰もが明らかなペースの狂い、潰れると思われたが逃げ切った。 明らかにへばってるのに後続馬が詰め寄ると加速して決して追いつけない。
これだけ聞くと、どっかの誰かさんを思い浮かべるんだが』

🤖「……」

『実際、ペースは滅茶苦茶。 実のところを言えばこのダービーウマ娘は滅茶苦茶な怖がりでな、後ろの足音だけで心臓が跳ね上がるし並び掛けられると思うと恐怖心が湧き出したそうだ。 闘志むき出しで並走してくる相手が怖いと思い文字通り必死に逃げてただけなんだとよ』
256 : アンタ   2025/04/22 19:35:59 ID:HcyNelBreg
『まあ、ペースメーカーにされがちな逃げって戦法を好んで使うのは大体が性格的な理由とかそんなんだ。 怖がりなやつ、前や横に誰かがいると集中出来ないやつ。
――だが、ブルボンは違う』

『強いから逃げる。 丁寧に勝てるラップを刻んで追ってくる奴らが届かない、つぶれるようなレースをする。 追い詰められてもそこから更に伸びる。
戦術はシンプルに、それに勝てる方法がないから、強い』

🤖「はい、マスター」
🌻「こうして聞くと、ブルボンさんってとってもすっごい方なんですね」
🍚「ブルボンさん、やっぱ凄いな、凄いな……ライスも、頑張ってついてくね」
『ついてくじゃなくて勝ちにこい。 強いやつがG1勝つんだから。』
🤖「ライスさん、お互い全力を尽くしましょう。 たとえどちらが勝っても、すべてを出し切れるように」
🍚「う、うんっ! 頑張るねブルボンさん!」


その後

『――で、実際のとこ、どうだ? 調子は』
🤖「問題ありません、皐月賞は全力でミッションを遂行できます」
『そうか、レース間隔が狭いからな……しかもダービーまでも殆ど時間がない』
🤖「……」
257 : アナタ   2025/04/22 19:43:19 ID:HcyNelBreg
『……ブルボン、あくまで俺の見解だが――皐月賞よりダービーの2400Mがきなってる。 予想以上にお前は強くなった。
正直お前の脚も、トモも大したもんだよ。 クラシックでそんなに出来上がった脚をしてるウマ娘なんて他にいやしない。
お前のトモと脚をみるだけで、あれはミホノブルボンの脚だってわかるぐらい、お前の脚は凄いと思う。』

🤖「ありがとうございます、マスター。 」

『だが、まあわかっちゃいたが――筋肉ってのは重いもんだ。
走りにだけ集中させて、走りに無駄な筋肉は自然に無くしていって
今度はその必要な脚の筋肉の重さが、スタミナを奪っていく』

🤖「確かに――以前のようにタイムが一足飛びで良化することは少ないです。
以前より心肺への負担がどんどん減っていく実感は、なくなっていきます」

『ここから、2000M,2400M この400Mは、多分大きい。俺等が思ってるより、きっとな』

🤖「マスター、皐月賞を獲ったら――もし、皐月賞をマスターが納得行くレースができたら」


――ダービー、菊花賞のために、私に"五本目"を挑戦させてください
258 : トレピッピ   2025/04/22 19:48:57 ID:HcyNelBreg
皐月賞
中山2000M――もっとも"早い"ウマ娘が勝つと言われる三冠路線最初のG1
しかしクラシックすぐの4月に2000Mを"速く"走りきれるウマ娘は多くない。結局のところこの時期でもっとも速く、もっともタフなウマが勝つレース
早熟なだけでは決して勝てない。

――朝日杯でもギリギリだったんだぜ?
――でもスプリングSを見ろよ、あんなの普通のウマ娘じゃできっこねえって
――ミホノブルボンって短距離ウマ娘だろ? ただの早熟な子じゃねえの?


『気合は?』
🤖「上々です、マスター」
『調子は?』
🤖「絶好調――いいえ、状態:超絶好調です、マスター」
『今年の三冠を穫るのは?』
🤖「……私です、ミホノブルボンです」
『よおし、皐月賞いってこい!』
259 : トレ公   2025/04/22 19:54:50 ID:HcyNelBreg
――ミホノブルボン、あれが
――…………うわ、ごっつい尻……
――なんか、雰囲気あるね。

パドックで堂々と立つブルボンに、観客は勿論出走するウマ娘も呑まれている。

『ほんと、大したもんだ。
並、短距離、適正、散々言われて阿呆みたいに頑張る、努力言ってたひよっこが
――ほんとに強者になっちまった』

ゲートに入る
2枠4番――奇数からゲートインし偶数が後からはいる。 コーナーから近く、ゲートが開くまで短いそこは絶好の場だ

――集中――ゲートの、気配を――音を

「ミッション――コンセントレーション」

皐月賞のゲートが開いた
260 : お兄ちゃん   2025/04/22 20:03:20 ID:HcyNelBreg
ホーエーマーチがしたようなとんでもないロケットスタートというわけではない
するりとゲートから飛び出したミホノブルボンは――しかしたった数歩で並んだ一列から飛び出す

――各ウマ娘まずまずのスター……いやもうミホノブルボンが頭2つは抜けてる! とんでもない加速、ミホノブルボンがスタート数歩で先頭に立ちました

スタートのカンもいいが、あの加速は尋常じゃない。 無理やりの加速ではなくスタートから流れるように加速して一瞬でトップスピード。
このスタートの加速についていけるクラシック級は存在しないかもしれない。


――身体は十分軽い。 確かに徹底した坂路トレーニングで増加した筋肉は重いのかもしれないが、その筋肉は十分な推力をブルボンに与えている

――見ていてください、マスター
261 : 相棒   2025/04/22 20:08:05 ID:HcyNelBreg
🌻 「ペース、やっぱり速くないですか? 」
🌻トレ 「もうすぐ1000M……59秒8」
🌻 「っ、今日雨ですよ!? 発表は良バ場ですけど、こんなペースじゃ」
『……証明したいんだ』
『きっと、このぐらい重い場所で、こんなペースでも走りきれるスタミナがあるって、証明したいんだ。』

――五本目を、やらせてください。 ダービーまでの間だけでも
――私が、強くなったと思えたなら、させてください

『……くそ、ダービーまで全然ねえんだぞ。
残り400M、 どうすんだ』
262 : お兄さま   2025/04/22 20:13:21 ID:HcyNelBreg
自分には大した取り柄がない
クラスメイトからは怖がられる、上手く溶け込めない
表情をうまく顔にだせない。会話のリズムがあまり噛み合わない

――大人たちからは三冠路線を否定されて
――同級生からは、すこし距離を置かれた
――それが、最近は三冠路線を応援されるようになった。
――話をすると、ブルボンさんは怖そうにみえたけどいい人だって言われた時はすごく嬉しかった。
――頑張って、努力して、それを正しく努力するようになって
――自分がどんどん強くなれて、世界が変わった。
――ファンからも応援されるようになって
――クラスメイトからも皐月賞前には囲まれて沢山応援された


「っ、っ、ラップ、継続。100M――5.98」

――マスターは、私の世界を変えてくれた
――私の脚も、心臓も――世界を全部創り変えてくれた
――三冠のために、マスターのために
――もっと、もっと強くなりたい
263 : あなた   2025/04/22 20:19:28 ID:HcyNelBreg
――さあ第四コーナー、外からスタンドマン、セキテイドラゴンあがってくる
――しかし追走勢の脚色が辛いか、じわじわと差が開いてくる
――最後の直線、 差が縮まらない、むしろどんどん開いていく
――ミホノブルボン、更にスパート! 差が更に広がっていく!!
――はやい、はやい! 堂々としたスピードを見せつける、ミホノブルボン!
――圧倒的な強さをみせつけミホノブルボン、今ゴールインです!!!


――勝ったのはミホノブルボン! 無敗の5勝目皐月賞を圧勝です!!!


うわああああああああああああああああああああ!!!!
ブルボンつえええええええ!!
圧勝じゃねえか、距離の壁ってなんだったんだ!?

割れんばかりの歓声に包まれる
圧倒的な強さで皐月賞を逃げ切ったミホノブルボン
ついて行った後続がバテて潰れていくという逃げ
観客はミホノブルボンの三冠を期待し、歓声を送った
264 : お姉さま   2025/04/22 20:22:55 ID:HcyNelBreg
🤖「……マスター」
『よーーーーしよくやったよくやったよくやったよくやったよくやった!!
皐月賞制覇だ! 圧勝だったじゃねえかブルボン!
偉いぞ偉いぞ偉いぞ! 今日はマッサージして、帰りにうまいもん喰って帰ろう! 少しぐらい遅れてもちゃんと祝勝会だって寮にも電話してやるから!
…なんだったら明日は俺んちでずっと撫でててやるぞ』

控室――戻ってきたミホノブルボンをトレーナーが褒めちぎる
肩を何度もたたき、頭を両手でぐしゃぐしゃと撫で回し

――だが

「すいません――想定のラップを維持できませんでした。
最後の1Fでの急激な原則を、確認しました。」
265 : トレぴ   2025/04/22 20:27:15 ID:HcyNelBreg
脚が止まったわけではない
あのペースを維持できないのは当たり前の事だ
だが――そうではなく
あのペースはダービーを想定したペースなのだろう。 後続が追走できず潰れるようなペースで、しかもスパートしたように見えても
その実、後半は大きくペースダウンしている。 そのペースダウンの中圧倒的に早かったのがミホノブルボンであっただけだ

🤖「……マスター」
『…………だめだ』
🤖「しかし」
『言っただろ、五本は絶対させない。 今までだってずっとずっと無理をしてる。
筋肉が付いて坂路でも立派にスピードに乗ってる。 その分重くなった筋肉が脚にずっと負担をかけてる。』

『坂路4本、これでスタミナ切れならだめだ。 これ以上はさせない』
266 : 相棒   2025/04/22 20:32:31 ID:HcyNelBreg
わかってる
前半59秒8 トータルのタイムは2分1秒4
雨の中の良バ場としては十分立派なタイムだが、そのタイムの変化の方が問題だ。
2000Mをブルボンの完璧な体内時計をして、59秒8でかえってこれなかった。
スタミナ切れだ――400M伸びるダービーはわずか1ヶ月と少ししかない。
本当は、出来るんじゃないかと思ってる。
というか、やらないと完全なスタミナ切れで脚が止まる可能性がある。
2000Mの皐月賞は足が止まるまでに至らなかっただけで、400Mのびるダービーでどうなるかはわからない。

時間がない――ギリギリまでハードトレーニングをしても足りない。
6月になればクラシックから頭角を現したライバルがトライアルから参戦してくる


🤖「マスター、お願いします。 今のままでは――ダービーの勝率は大きく下がります」
267 : アナタ   2025/04/22 20:36:31 ID:HcyNelBreg
皐月賞から1週間後

――いつもと違う重苦しい空気で、大坂路の前にミホノブルボンが立っていた

『……いいか、タイムがちょっとでも悪いようなら途中で止める。
五本目登りきっても絶対に脚は止めるな。登り切るのが目標じゃなく目的は心肺の強化、登りきって心拍をゆっくり下げるクールダウン、インターバルまでセットだ。
脚に違和感、背中に違和感あったら即終了しろ。
――いいか? 目的はダービーだ。 五本こなすことじゃない、怪我したらダービーも終わるぞ。』

🤖「オーダー、了解しました」
268 : トレーナー君   2025/04/22 20:40:30 ID:HcyNelBreg
怒っているような、トレーナーの顔

🤖「大丈夫です、マスター。 マスターの作り上げた心臓も――脚も、まだ、戦えます。」

「よし――いくぞ、あと五本! 行って来い!」

――やりたくなんてない。
――博打をするなんて、しかも掛けるのが脚なんて、絶対にごめんだ
――こんなこと、本当にごめんだ。
――いいじゃないか、ダービーだって勝てる可能性はそこそこある
――相手がよわければ、ブルボンの逃げに焦ってくれれば
――ペースをうまいこと操って息をいれれば
――勝てるかもしれないじゃないか


――――かも、ではなく……私は三冠ウマ娘になりたいんです
269 : キミ   2025/04/22 20:44:54 ID:HcyNelBreg
――どうか、お願いします。 私に、戦わせてください

そう、深く頭を下げられた。
誰もがみとめる圧勝した無敗の朝日杯、皐月賞ウマ娘が、東日本ジュニア最優秀ウマ娘が――
まるで――未勝利のまま、脚を壊す前提で、たった一勝のために"壊し屋"に頼みに来るような、そんな頭の下げ方をされた。


『俺は――壊れず4本走りきったら――三冠穫れるって、言っちまったんだ』

だが、スタミナは足りない。 あと400Mを全力で走り切るだけの心肺がない
ミホノブルボンを最強たらしめるトモと脚の筋肉が、その重量が、そのスタミナをうばっていく。


『止まるなブルボン!! あと4本!』
270 : マスター   2025/04/22 20:47:34 ID:HcyNelBreg
この大坂路を2本やるのだってかなり過酷なトレーニングだ
シニアでだって常時やるようなもんじゃない
それをジュニアからずっとずっと4本やってきて

『あと三本! ペース落とすな同じペースで入れ!』

五本に増やしてもダービーまでに間に合うかどうかもわからない
危険ばかりでリスクばかりでリターンなんか殆どありゃしない

『あと二本! 走れ走れ走れ! 』
271 : 貴様   2025/04/22 20:52:47 ID:HcyNelBreg
いつもどおりのペース、いつもどおりの限界を超えるためのメニュー
しかし、ここから更に一本の追加、変則コースをおりていって、そのまま3角4角でゆっくり降りた脚を加速させていく


――ラスト一本! タイム出ないなら五本はさせないぞ行け行け行け!!

坂に入る前から今までの4本で心臓はパンクしそうだ
脚も腕も動くことを拒否してる

――レッド、レッド、危険、危険――危険

心臓が裂けそうだ、気を抜くと走ってるのか倒れるのかすらわからなくなる。
それでも、上半身をまっすぐ立て、早いピッチで大坂路を上がる

――私は、この坂で強くなりました
――この坂のお陰で、だから――もう一本、五本目を登りきって
――もっと、強く、強く――強く

目の前の坂が消える。
登りきった瞬間、坂が消え、視界が広がる
ミホノブルボンは、五本めを登りきって―――

――そして、その頂上でばったりと倒れた
272 : あなた   2025/04/22 20:59:03 ID:HcyNelBreg
心臓が、まだ痛い
――否定、心臓に痛覚はなく、しかし――心臓が痛いという表現以外の表現方法がありません。
頭の血管が、まだズキズキとする。
血液が脳に送られるたびにずきずきと疼くような痛みがする

――私は、何をしてたんだろう


『ブルボン! ブルボンッ!!』

坂路のゴール地点で、トレーナーに抱かれたまま倒れていた。
ゴールをした瞬間限界以上に身体を酷使した結果、意識を失って

(マスター……なぜ、そんなに泣いているのですか)

子どものように泣きじゃくるトレーナーに抱かれたまま、ミホノブルボンはぼんやり考える。自分は、トレーニングをして――坂路の五本目に挑戦して――五本目の頂上がみえた瞬間、景色が真っ白になって――

『ブルボンっ、返事しろ! ブルボン!! 』

泣きじゃくりながら、必死にミホノブルボンの事を呼ぶトレーナーに、手を伸ばす。

――泣かないでくださいマスター……私は
――私は、子供みたいに喜ぶマスターが、見たいんです
273 : トレピッピ   2025/04/22 21:01:35 ID:HcyNelBreg
『ブルボン! いいか動くな、今救護を呼んだ。 すぐ車両まわしてくれるって』

🤖「すいません、マスター。 脚、止めてしまいました。」

『いいから、だまってろ。 お前、がんばったから』

ボロボロと大粒の涙を流しながら

――止めなかった俺のせいだ、ごめん、ごめんブルボン

と何度も何度も、トレーナーの謝罪を聞いた、むせび泣く声を聞いた。

――自分は
――自分は、マスターを、悲しませてしまったのだろうか
274 : アナタ   2025/04/22 21:07:26 ID:HcyNelBreg
幸い、大きな異常も故障もなかった。
限界を超えて走ったせいで一時的な貧血を起こしたという診断だった
それでも――右足の脛に発熱があり、少しの期間坂路の使用は勧めないと医者に言われた

『……しばらく、プールでのトレーニングに切り替える。』

ベッドで横になるブルボンにトレーナーが有無を言わせないような口調で切り出した。

『どのみち熱が引くまで坂路はできない。 筋肉や骨への負担を抜く意味でもプールでしっかり心肺と全身を動かしてトレーニングする』

「……できます。 今日は、だめでしたが……今度は、五本、走りきってトレーニングに」

『だめだ!
――もう、これ以上は、だめだ』

🤖「マスター、私は三冠ウマ娘に」

『お前は、走れなくなるって事がなんだかわかってない。』
275 : 貴方   2025/04/22 21:12:50 ID:HcyNelBreg
『今まで当たり前にできてた行為ができなくなる。
周囲はそれをずっとしてる。 じぶんだってできたはずだ。
歩く走る――そんな当然のことまで、できなくなるんだ。』

トレーナーは『見ろ』と右のズボンのすそをまくる

「―――――ッ、マス……ター」

『学生のときに、事故で無くしたよ。 トラックの居眠り運転。
右からぶつかったと思った瞬間意識がとんでさ――目覚めたらこれだ』

細い金属の球体関節、板バネのような脚部分。
トレーナーの膝上から下はすべて義足だった

『大したもんだろ、十年以上身につけてると義足だって誰にも気づかれない。
歩くぐらいならホントに困らねえ。
事故の前までは、これでもヒトミミの陸上選手だったよ』
276 : お兄さま   2025/04/22 21:17:58 ID:HcyNelBreg
『脚をなくしても、義足をつけて生活して――
それでも、何年もしても夢を見るんだ―――自分の脚があって
ああ、なんだ俺の脚あるじゃんて思うんだ―――ほら、夢の中って滅茶苦茶なことでも納得しちまうだろ?』

ミホノブルボンは俯いたまま、返事もできない。それでも、トレーナーは続ける
――もう、ミホノブルボンは十分強い、これ以上脚に爆弾をくくりつけさせてはいけない

『でさ、目覚めて、自分の脚を見て思うんだ
――何年経とうと、思うんだよ。 ああ、やっぱ夢だったよな、脚ねえじゃん、って』



『――他人事でも他所の不幸な話でもないんだ。
むちゃをしすぎたウマ娘ってのの故障は――走れなくなる。歩けなくなる。
脚があるかないかの違いがあっても一緒なんだ。
俺はもうこれ以上お前に無理をしてほしくない。』
277 : トレーナーさま   2025/04/22 21:21:22 ID:HcyNelBreg
『……しばらくは、プールトレーニングだ。 いいな?』

「ごめんなさい。 マスター」

嗚咽の混じった声、ショックを与えすぎた事に、トレーナー自身の胸が痛む。
――それでも、これ以上の故障との綱渡りをさせるわけにはいかない。

「ごめんなさいマスター、私は―――」


――私はそれでも、三冠ウマ娘になりたい

『――ッ』

ゾクリ、と背筋が凍った。
トレーニングで倒れて
目の前に脚のない義足をみせられて
脅されたようなものだ、脅迫といっていい
278 : 大将   2025/04/22 21:25:54 ID:HcyNelBreg
それでも――ミホノブルボンは

「坂路五本ができないなら四本、今まで通りの継続をダービーまで。
熱が引くまではプールでも。
ですが、ダービーまでに――残りの400Mを走るために、少しでもやれることを」

『………』

トレーナーは大きく、ため息をついた。
正直今回の発熱は故障の兆候だ。 骨膜炎一歩手前だっただろう
だからこそ、これ以上の無茶はさせれない
自分の"右足"をも見せて止めたかったが――それでも止まらない
現状を嘆かず、出来る範囲で、なんとかしようとしてる
279 : 使い魔   2025/04/22 21:30:10 ID:HcyNelBreg
『――くそっ、俺の負けだ。
いいかブルボン、お前の脚の発熱は骨膜炎だ。 本来なら休養が必要だがプールトレーニングで患部に負担をかけないようにする。
プールへの移動や学校内の移動は熱が引くまでは杖を補助にする。 本来不要なもんだが少しでも移動で患部に負担掛けさせないためだ。』

「はい、マスター」

『当然――周囲は故障だダービー回避だ騒がれるが全部無視しとけ、ダービーには出ます程度にあしらっときゃいい。
熱が引くまで徹底してプールで心肺のトレーニング
――熱ひいたら、坂路戻るぞ、ただし四本だ。 五本は絶対にやらせん。』

「はい、マスター。ありがとうございます」
280 : マスター   2025/04/22 21:35:48 ID:HcyNelBreg
――はい、はい。
――ミホノブルボンにも、私の脚の事は話しました
――私の不届き、不徳で娘さんを故障手前までさせたこと、本当に申し訳ありません。


ミホノブルボンを休ませて
ミホノブルボンの父親に連絡をする。 無茶な五本目を試してミホノブルボンが倒れたこと、骨膜炎の前兆である発熱が脛におきたこと。
それらを詫び、以前に話しておいたトレーナー自身の右足の件を知らせた事を伝えた

驚くほどあっさりと、父親はトレーナーを許した。
ブルボンがどうしてもダービーを獲りたいとせがんだのだろうと
皐月賞で最後の最後でスタミナがきれたことを悔いていたと知らされた

――これからも、娘をよろしくお願いします

とだけ言われ、通話を切る
281 : お姉ちゃん   2025/04/22 21:36:57 ID:HcyNelBreg
皐月賞、おしまい
曇らせのようで申し訳ありませんが、ハピエン厨なので曇らせたままはありません
282 : トレーナー君   2025/04/22 21:45:22 ID:HcyNelBreg
蛇足

🤖「マスター、あの」

『なんスかミホノブルボンさん』

🤖「泳げるのでしょうか? マスター」

『義足はずしたらめちゃ泳げるよ。
ただ脚ないから目立つじゃん? あとはしごないと無理だな。上にあがるのきつい
いやーブルボンに脚の話したからお前と二人の時はプールはいれていいわ』

🤖「あの、あの……マスターはその、義足な事を気にしたりは」

『ないもんはない。 そりゃ、お前らが羨ましいと思うことはあるようんうん。
でも、お前にはどっちにしても言おうとは思ってたんだ』

🤖「そうなのですか?」

『だって――今は、お前のその脚が俺の脚みたいなもんだろ。
丹精込めた俺の脚だ、ブルボン――その脚でダービーにつれてってくれ』
283 : トレーナーちゃん   2025/04/22 21:52:35 ID:HcyNelBreg
だそく

『義足の話してからなんかブルボンが気を使ってるように感じるな
――よし、おーいブルボン』

🤖「はいマスター、どうしましたか?」

『俺は今日からマスターロボだ、見ろ見ろ、ロケットキーック(義足蹴って飛ばす)』

🤖「…………………」

『あれ? あれ? ブルボンさん?』

🤖「マスター、バッドステータス:自暴自棄。 今すぐ精神のケアが必要です
緊急ミッション:父への相談、学園長への相談」

『ええええっ!?まって? まってジョークだってジョーク!!』



🌻「で、義足でロケットパンチの真似事をしたと?
🍚「うわあ…うわあ、ちょっとドン引きだよライス…うわあ」
『えー!? 』
284 : 大将   2025/04/22 22:02:45 ID:HcyNelBreg
だそく
🤖「あの、マスター」

『なんですかブルボンさん 』

🤖「マスターは水着には興味がないのですか? 職業:女子高生 の水着姿です」

『あー俺、あんまし水着萌えしないのよ』

🤖「!? な、なぜですか?」

『いや知らんて、なんというか健康的すぎるというか。
つか、ブルボンはブルボンで男の水着姿とか萌えるのかよ』

🤖「はい、 マスターの水着姿が見れてプールトレーニングやれてよかったと思ってます」 『もうちょっと隠そうね美少女女子高生』

『まあでもブルボンの競泳水着姿は綺麗だなとかは思うようん』
🤖「/////」
285 : トレピッピ   2025/04/22 22:27:14 ID:HcyNelBreg
🤖「マスター、陸上というのは」
『ああ、50M走』
🤖「短すぎないですか?」
『50Mだとヒトミミでもウマミミと争えるんだよ最初のダッシュ次第だから』
『こう見えてもクッッッッソ早かったんだぞ、親父もお袋も陸上選手でさ』
🤖「……」
『ああ、事故からちょっと疎遠でな。
でもブルボン、よーく考えてみな?』
🤖「?」
『俺が作った脚はヒトミミじゃなくてウマミミ……URAの頂点だぞ? やばくね』
🤖「あの、それは」
『頂点じゃないの?』
🤖「…頂点です、マスターの脚は世界一の脚です」
『よーしいい子だブルボン(わしゃわしゃわしゃ)』
286 : マスター   2025/04/23 19:04:58 ID:p1A6Drlhh.
🤖「マスター。 好きです。」
『おう俺も好きだぞブルボン、めっちゃ愛してる』
🤖「ッパアアアア、ではハグを希望します。」
『しませんよブルボンさんトレーニング頑張ったらご褒美にしましょうね』
🤖「はい」
『……てかさ、俺愛してるとか好きって言われてるの一応わかってるよね?』
🤖「はい。 性的、恋愛的意味で本気でマスターが言っていないのは了承してます」
『いいの? 適当にあしらわれてるとか怒ったりせんの?』
🤖「大丈夫ですマスター。 マスターが私を好きな事実は変わりません。 怒ってもそこでその好意が愛情や性的好意に変換は不可能です」
『お、おう、なんか恋愛強者な言葉だな……』
287 : キミ   2025/04/23 19:13:48 ID:p1A6Drlhh.
今日はお休みです
288 : 相棒   2025/04/25 00:44:43 ID:kEAghphoQw
289 : アンタ   2025/04/25 08:03:45 ID:725.XAEgLo
『よし、坂路トレーニングに戻ってきたわけだが。
今まで通り4本。 ただし一本一本脚の違和感やハリを確認して少しでも違和感があれば途中で切り上げだ』

「了解しました、マスター」

本来ならば疲労を抜いていかなくてはいけないレース前だがギリギリまで追い切りを引き伸ばしての坂路。
疲労を抜いてもスタミナが足りなければ東京の長い坂道は走りきれない
ミホノブルボンが最強な理由は届かない事にある
手が届きそうでも突き放される二の足、それがスタミナ切れで届くとわかれば相手に希望が見える。 希望は最後の一滴のガソリンになりうる

『よおし、あと3本! 脚を止めるな3本目4本目のために今限界まで心拍上げろ!』

本当は休ませたい。 疲労を抜いてダービーに万全の状態で挑ませたい。
しかし、皐月賞から伸びた400Mはそれを許さない
290 : 貴方   2025/04/25 08:10:54 ID:725.XAEgLo
「マスター、脚の状態は良好
脚部への負担が少ないプールトレーニングの効果が出ています」

『リハビリじゃなくしっかり心肺に負担がかかるようにトレーニングしたからな。 今のお前はとにかく心肺をギリギリまで鍛えなきゃならん。一本一本集中しろ
ラスト一本! 走れ走れ走れ走れ!!』

レース直前までのハードなトレーニング
骨膜炎でプールトレーニングを行った時から学園でもURAの記者からも散々言われた。
――ミホノブルボン故障?
――ダービー回避?
――トレーナーの管理はどうだったのか
――なにをしてるんだあのトレーナーは

まあ、事実だ。
坂路五本を止めていれば骨膜炎は発症していなかったし
ただ、ミホノブルボンには申し訳ないとおもってもそいつらには申し訳ないと思うわけもなく。

しかし――それに納得しなかった者もいるわけで

当のミホノブルボンが、トレーナーへの風当たりに対して不満げだったのだ
291 : トレピッピ   2025/04/25 08:14:23 ID:725.XAEgLo
マスターは今まで最高のトレーニング環境を提供し最も効率的でもっとも心肺、スタミナを効率よく引き上げるトレーニングを提示してくれている
短距離適正である自分が2000MのG1を勝てたのもトレーナーとしての手腕である
勝つためにハードなトレーニングをしているのだから故障のリスクは十分承知している。

――ダービーで、私は結果を出します。
――マスターの指導が正しい事を証明します。

ダービー回避のセンが消え、坂路トレーニングを再開したことでダービー出走への安堵が広まったのかミホノブルボン陣営の故障への避難は収まっていった
292 : モルモット君   2025/04/25 08:27:43 ID:725.XAEgLo
 『珍しいな、お前が自己主張、というか自分の意見を他所様に張っていくの』

 「……マスターはく正しい判断をしています。
不当に批判をされるような事はしてません。」

 『そっか、ありがとな。』

トレーナーはくしゃくしゃと頭を撫でる。 最近は頭をなでると目を細めたり目をつぶったり、気持ちよさそうな顔をするのが微笑ましい。

 『ダービーまで時間がないが、休養できない。 ギリギリまで坂路で心臓も身体もいじめ抜く事になる。ダービーも含め辛いだろうが、できるか?』

 「もちろんです、マスター。目標は三冠です、2400Mまでではなく3000Mまで保つスタミナを希望します」

 『その意気だ。 ところで――もしダービーを獲ったら夏合宿なんだが。
 ブルボンの親御さんにも挨拶したいし、多少の休養もかねてブルボンの実家に向かってからにしたいと思う』

 「マスター、本当ですか?」

 『ああ、朝日杯、皐月賞、ダービー無敗のウマ娘として親御さんに挨拶しにいくぞ。 ダービーまで全力だ』

 「オーダー承認します。 ダービー制覇のミッション、開始します」
293 : トレーナー君   2025/04/25 08:34:12 ID:725.XAEgLo
「さあ、ダービーの前祝いしましょう☆ かんぱーーーいっ☆」

『うす、かんぱーい』

「あれあれ元気ないですよトレーナーさん☆ 今日は私が奢っちゃいますから☆」

――ライトハローさんに捕まった。 前祝いという名目の酒のがぶ飲み会だ

スタイルもよく柔らかそうでしかもウマミミだから美人というふんわりほんわか系美女ではあるライトハローさんだが、この人のお誘いは酒を飲むための口実でしかない。 ライトハローさんの欠点を挙げるなら脳みそがアルコールで溶けてる系の人物ということだ。
普段はもうちょっとしっかりしてるが酒がはいるとてんで駄目な大人になる。

「えへへー☆ ダービーウマ娘をアテに飲むお酒は美味しいですねええへへ☆」

『ハローさんは年中お酒美味しくのんでそうですけどね』

「あはー☆ばれちゃいました? まあまあもういっぱい行きましょうよトレーナーさん☆」
294 : アネゴ   2025/04/25 08:45:19 ID:725.XAEgLo
ウマミミはアルコールに強い子が多い、本当か都市伝説かは不明だが完全耐性を保つ個体もいるそうな
もちろんライトハローさんは違う。対して強くないしそのせいで完全にハッピーアル中だしもう気持ちよさそうに上半身がふらっふらしてる。

『あーもうハローさんペース落としましょうよ。 ふらふらじゃないですか』

「えぇ~酔ってませんよお☆ 私が酔ったらこんなもんじゃすまないですよお~☆」

『もうこれ飲んだらかえりましょ? ね?』

「あははー☆ 送ってもらってあざでした~☆ ダービー勝ったら祝勝会しましょうね~☆」

べろんべろんのライトハローさんを送って一人トレーナー寮に帰る。

 『うーん、ダービーか。 しかも無敗の朝日杯、皐月賞勝利か。
 なんかとんでもない世界に生きてるなあ今』

ミホノブルボンは平気だと言っていたがこの先レースはダービー、菊花賞のトライアル、菊花賞ぐらいだろう。 レースにでるより徹底して心肺をいじめぬいて菊花賞を走り切るスタミナを作らないといけない。
骨膜炎があったとはいえここまで無事にはしれたのはブルボンの丈夫さを考えても奇跡にちかい。
身体もしっかりして鍛え上げられた筋肉の重量や全身の体重を考えれば今後はジュニアのように鍛えるほどスタミナがつくともいえない。
あの鍛え抜かれた身体は消耗するスタミナもとんでもないのだ
295 : アンタ   2025/04/25 08:47:50 ID:725.XAEgLo
――贅沢な悩みだ。

ダービー出走だけでも誉、そこに上位人気として出走できるだけで十分な話だ。
なのにトレーナーは勝つ前提でダービーを、その先を考えている

――頑張れば、努力すれば――本当に頑張って努力してすごいとこに立っちまったなあブルボン。

頑張ってほしい
勿論菊花賞まで無敗の三冠馬を貫いて欲しい
同時に――そのためのトレーニングやレースで故障なんかしないでほしい。

『ああ、本当に贅沢だ』
296 : トレーナー君   2025/04/25 08:53:02 ID:725.XAEgLo
🌻「ブルボンさん! 私はオークス惨敗でしたけど――ブルボンさんなら勝てます! がんばってくださいね!」
🤖「はい、フラワーさん。 状態は良好――今日はダービー勝利のために全力でミッションを遂行します。」

 『……やっぱ、ニシノフラワーはマイルですか』
🌻トレ「うん、本当は秋からマイルに向かおうかなって思ったんだけど……本人の希望は最後のエリザベス女王杯までは走りたいって」
 『もうすぐくるティアラ路線の改正が来てればよかったんすけどね。 確か新レースの秋華賞が2000Mでしたっけ』
🌻トレ「エリ女は2400Mだからね。 とはいっても、近くでミホノブルボンをみてると自分も頑張りたいって気持ちはわかるよ。 今度、そっちの坂路で走らせてもらいたいんだ。」
 『ああ、いいすよ。 並走でも単走でも』
297 : トレーナーさま   2025/04/25 09:00:24 ID:725.XAEgLo
🍚「ぶ、ブルボンさんっ!」

小柄で黒の勝負服――ライスシャワーがブルボンに駆け寄ってくる。

🍚「今日、ライスすっごい調子がいいんだ! ブルボンさんとダービーを走れるなんて夢見たいだよ!」

『………』

🍚トレ「本来はファン数不足で出走できなかったんだけどね。 出走回避の子が多すぎるそうだよ。
 今回ばかりはミホノブルボンくんに助けられたかもね。 有力な子もみんなNHKマイルや裏開催に回ってるのはミホノブルボンに勝てないってところだろう?」

ジュニアのメイクデビューとOPが一生づつ
ソレ以外は3着にも入っていないウマ娘がギリギリでダービーに滑り込み出走
まあ――過去の実績だけでみたら明らかに実力不足。
事実ライスシャワーの人気はドベもドベ。 支持率から見る人気指標――オッズでは一番人気のミホノブルボンが2.3に対してライスシャワーは114となっている。

『……ライストレさん。 ライスシャワーってあんなに雰囲気ありましたっけ?』
298 : トレーナーちゃん   2025/04/25 09:03:32 ID:725.XAEgLo
何度か見たことはある。スプリングSまではトレーニングも見ることはあった。
もっとひ弱で線も細い子だったと思うが――体格は一緒なのに、こう

 『前より全体がしっかりしてますね、ライスシャワー』

🍚トレ「ああ――皐月賞ぐらいから急に身体がしっかりしてきてね。
 今日はもしかしたら――なんて思うことがあるんだ」

 『ふぅ、ん……確かに距離が伸びたのは良い材料ですよね、あの子にとっては』

最低人気の実績なしのウマ娘ライスシャワーを見ながら、トレーナーは嫌な気持ちを抑えきれない。
299 : あなた   2025/04/25 09:10:27 ID:725.XAEgLo
🤖「マスター……マスターもやはり小柄で可愛らしくて守ってあげたくなるような少女――はっきり表現すると可愛らしいロリっ子が好みなのでしょうか?」

『おおう、ダービー出走前なのにトバしてるねミホノブルボンさん、急にどうしたんですか?これからダービースタートするんですよ?』

控室に入るとミホノブルボンが唐突に切り込んできた
無表情といわれるが無感情ではなくクールと言われるがその実頭ピンクなミホノブルボンである。
クラスメイトが自分の無表情っぷりに怖がるのを気にしてしまうぐらいの情緒はあるし、マスターの事がすきなのでそこをストレートでなげつけてくるだけの感情はしっかりしている

🤖「ずっとライスシャワーさんを見ていました。
 私もちょっとスケスケな黒のドレスに黒と濃紫の下着をつければマスターにずっと見ていてもらえますか? マスター」

 『見ていたの意味があまりに違いすぎるんだよな。
 実際どうだ? 今日のライスシャワー見た感想は』

🤖「強いです。 今までとまとっている雰囲気が違います。 突然バージョンアップしてMk2とついたような、超電磁コーティングをまとったかのような違いを感じました。」

『よーし頭まで茹で上がってはいないようで安心したぞ』
300 : トレピッピ   2025/04/25 09:14:40 ID:725.XAEgLo
 『とはいえ――ライスシャワーの脚は逃げができるほど長くない。 結局お前が逃げて他を潰す構図は皐月賞となんら変わらない。
 ただただ400Mのびて大回りで直線が伸びただけだ。 東京の直線は長い坂と500M以上の大直線だが――その400Mよりお前はずっとずっと苦しい坂を毎日走ってた。』

 『――最後の最後、どうしようもなくなってもその毎日を思い出して根性でなんとかしろ!』

根性論を嫌い――スパルタではあっても運動学、医学根拠と効率を求めたトレーナーが最後の最後に言う言葉が根性論である。
そのぐらいにはギリギリなのだ。 2400Mを走りきれるかどうかは正直わからない。 それを試すような機会もない。 ぶっつけ本番だ
301 : お姉さま   2025/04/25 10:19:18 ID:725.XAEgLo
「オーダー:最後まで頑張れを承認します。 ミッション:日本ダービー……
 マスター――ありがとうございます。
 私を、ここまで導いてくれて。 」

『まだ終わってないだろう、ダービーだけじゃなく、菊花賞まで全部勝って無敗の三冠馬になってからそういう事は言うんだブルボン
――ただ、まあ―――』

ぽんぽん、といつものように手を頭に置く。

 『ダービーまでのキツいトレーニングよく頑張った。  
 今日勝って、一緒に親御さんに頑張って良かったと報告しに行くぞ』

――はい、三冠ウマ娘のため、マスターのために、ミホノブルボン、発進します。


――うわ、前より脚も腰もすごくなってない?
――いやいや、皐月賞から1ヶ月ちょいしかなかったのに、いやでも
――うわあ、ごっつい尻しとんな

パドックに立つウマ娘の中で一際目を引く身体。
体格が良い、強そうとかではない
その脚の鍛え抜かれた筋肉は遠目から見ても他を圧倒するものがある

『ダービー、貰っていくぞ』
302 : トレーナー   2025/04/25 10:27:13 ID:725.XAEgLo
――どうですか、ブルボンの様子は

『ご無沙汰してます。 ギリギリまでトレーニングだったので疲労は抜けきってないかもしれませんが――その分鍛え抜かれてます。
 それに――その御蔭なのか、鬼気迫るほどに集中できてますよ。
 それにしても――いいんですか? 娘さんと挨拶しなくても』

ミホノブルボンの父親は困ったように首を振り

 「今私の顔をみて集中が途切れてもアレですからね。 親ばかのような言葉ですが、あの子はどうにも私に懐き過ぎていて。
 最近は安堵してるんですよ、マスター……貴方のような立派な方とブルボンが巡り会えた事に」

 『よしてくださいよ、私なんてただのうだつのあがらないトレーナーです。 ブルボンの担当をするまで未勝利か一勝かしか面倒みたことがない。』

 「あの子がダービーをね……私も元はトレーナーです。 あの子がそういった未勝利、一勝クラスでウロウロする才能だとは思ってました。
 それが今やダービーを獲ろうとしてる。 しかも朝日杯、皐月賞と無敗で掲げて――堂々と勝利を目指してる。」

――ブルボンの父は深く、深く頭を下げた
303 : キミ   2025/04/25 10:30:42 ID:725.XAEgLo
――夢を、現実にしてくれてありがとう

 『くすぐったいんで、頭をあげてください。 そういうのは三冠を獲ったときに一緒に酒でも呑みながらしましょう。 ダービーはふたつ目でしかないですから』

 「勝ち目は」

 『皐月賞直後なら半々でした。 皐月賞では終盤スタミナが切れてた、しかも私の不手際で坂路五本のせいで骨膜炎同様の発熱。 展開次第ではスタミナが保って勝つか、後続にギリつかまらなければいいなという塩梅でした』

「――では、今は?」

『そりゃ――勝てますよ。 あいつはそれだけの努力を皐月賞から今日までもしてますから』
304 : お兄ちゃん   2025/04/25 11:04:54 ID:725.XAEgLo
「ダービーの1角までは短い。 誰も彼も優秀なスピードに富んだウマ娘達がスタートから最高のポジションを目指して競り合う。
――7枠15番、大外側から穫れますか? 一番手」

『確かにそうですが』

ダンッ!!!
ゲートが開かれ勢いよくゲートが開かれる

内側のウマ娘がロケットスタートを切って先頭に立とうとする。

「―――ッ!?」

確実に他の追随を許さないロケットスタートをきめた
なのにたった数歩で大外からチョコレート色の影が飛び込んでくる
並ぶ、という生易しいものではなくすでにトップスピードになっていたミホノブルボンは内枠のウマ娘をあっさり突き放し先頭で1角に入っていく


 「皐月賞でも思いましたけど――スタートそのものじゃなく、スタートから一瞬で加速するんですね。あんな加速が当たり前のようにできるようになったんですか」

『ええ、坂路で身についた筋肉は急勾配に負けない力。 平地での使い方がうまいんですよね、加速がとにかく良い。 よほど出遅れなければスタートが良いウマ娘よりよほど速くトップスピードに乗ります』

「ええ、ええ――私もね、年甲斐もなく興奮してますよ。 あんなに素晴らしい加速のウマ娘なんてまずいない。 自分の娘がそんな走りができるようになるなんてね
――それに、ロボットに憧れてロボットのマネをしだした娘が決めた勝負服は、ちょっと、父親からみても露出が、ねえ?」

『そういや、今日はチョコレートメイド服ですね。』
305 : あなた   2025/04/25 11:07:00 ID:725.XAEgLo
「ブルボンがね、男の人が喜ぶ服とはなにか? と聞いてきたときには本当に驚愕しましたよ。 今まで三冠ウマ娘とロボットのマネばかりだったブルボンが男性の事をきにして勝負服をデザインしたいなんて。
私も貴方の趣味までは知らなかったですから、とりあえず嫌いな人の少ないメイド服なんかを勧めましたが」

『まってチョコレートメイド服てお父さんの趣味だったの!?』

「ああいやあくまで万人向けの話ですよ? ほらもう一着の方が結構露出が多いでしょう? ですからもう一着は逆の方向性がいいかなって
トレーナーとしては、どちらがいいとかは」

『日本ダービーですよ!?そんなことより応援しましょう!?』
306 : トレーナー   2025/04/25 11:22:41 ID:mI5oZHB2yM
――疲労があったはずなのに、疲労を感じない。
――まだ、ペースを速く設定できる。
――後続との距離、2バ身。 ペースを6.1秒に設定

2角を過ぎバックストレートに入る頃には2~3バ身の差をつけて先頭
しかし後続は3角までに差を縮めようと、ゆっくり、ゆっくりと距離を詰める

『後続が予想以上に落ち着いてるな。』

「2番手につけた黒い小柄な子……ライスシャワーか、スパートやペースアップとは言えないぐらいじんわりしたあげ方ですね」

『いやな上げかたですね……今ペースを上げたら潰れる、三角からじゃ間に合わない――きちんと目測のある詰め方です。』

「1000M 61秒2 ……ブルボン、頑張れ、いいペースだ。」


――第三コーナーに入って、じわじわと詰め寄られる
――コーナーは、焦らない。 スパートは直線から
――私の末脚は、マスターも褒めてくれた

詰め寄られる。 コーナーで後続が捕まえられると思えるほどの差しかない
皐月賞で敗れたがNHKマイルで勝利したナリタタイセーが
ミホノブルボンに何度も何度も苦渋を飲まされたマーネイドタバンが
期待に答えられなかったがNHKマイルでは2着に飛び込んだマチカネタンホイザが

――そして、その集団の先頭で、黒い刺客のライスシャワーが
――一斉にミホノブルボンに襲いかかろうとする
307 : 貴様   2025/04/25 11:31:06 ID:mI5oZHB2yM
――大ケヤキを超えて第四コーナー
――差がどんどんと縮まっていく、先頭のミホノブルボンとの差はもう1バ身、1バ身もありません!
――さあ、ここから東京の長い長い直線。 ミホノブルボンまだ先頭、後続が捉えようとする、東京の直線は500Mです!!

 「……ブルボン、粘れ、頑張れ、ブルボン」

 『お父さん、褒めてあげましょう。 アイツは、よく耐えたんです』

 「耐えた? だって後続が、あんなに」

 『メイクデビューの中京は410M 東京は500Mです。 あいつはちゃんと直線まで耐えた――いけぇっ、ブルボン!!』


 ――外に出る必要がない
 ――私は――マスターが創ってくれたこの脚と、心臓は
 ――ここから

 「ブルボンさん、捕まえる――ライスだって、ライスだって――」

直線に入ってラストスパートしたライスシャワー。
しかし、1バ身もなかった差が更に開く。
NHKマイルを勝ったナリタタイセーが、それを追い詰めたマチカネタンホイザが
それよりも前でレースをし、一番ミホノブルボンに近かったライスシャワーが
ブルボンのラストスパートで逆に差を広げられる

――ミホノブルボンここでスパート!1バ身だった差を広げていく!
――強い! ミホノブルボン強い! 東京の坂を軽々と登っていく!
――さあ残り400M ここまでで2000M
――ミホノブルボンには未知の領域!!
308 : トレピッピ   2025/04/25 12:08:07 ID:mI5oZHB2yM
――コーナーが巧いわけじゃない
――スタミナがあるわけじゃない
――スピードだって並程度

(マスター、それを貴方はすべて作り上げてくれた…
 スピード、パワー、スタミナ。 それでもコーナーは得意とは言えない。
でも、直線に入れば……出遅れてなくてもスパートはできる)

必死で食い下がる後続がズルズルと沈んでいく。
3角、4角で詰め寄って直線で射程圏に捕らえたはずの逃げウマにスパートで突き放されるのだ

(ブルボンさん、まだこんな力が残って――強い、すごいよブルボンさん……
でも、ライスだって、ライスだって――ブルボンさんみたいに)

――さあ残り200! ミホノブルボン!ミホノブルボン先頭!!
――差がどんどん広がっていく、ミホノブルボン!
――残り100を切ってもう大丈夫か!もう一着は大丈夫か!

――ミホノブルボンゴールイン!
――今ここに6戦無敗、無敗の2冠馬が生まれました!
309 : アナタ   2025/04/25 12:13:20 ID:mI5oZHB2yM
『――ッシャア! 見たか見たか見たか!! これが俺のミホノブルボンの走りだ!! 直線まで詰め寄られても逆にそれをぶっちぎるスピード!
うおおお最強最強最強!! よしよしよし!!

―――あ』

観客席で何度も飛び上がり全身で喜びを表現するトレーナーをブルボン父は微笑ましく見守っていた。

『あ、すんません。 はしゃぎすぎました』

「ああいやいやいやいや、自分の娘の事でそんなに喜んでもらえるのは嬉しいですよ。 ブルボンがよく言ってましたよ、マスターは自分のことのように喜んでくれるって」

『あ、はい。 いえ、お恥ずかしい事で』

「いえいえ、そのぐらいブルボンに入れ込んでもらえるのは父親冥利に付きますよ。それじゃ、私は帰りの電車もあるんで、ここらでね」

『え――会っていかないんですか? 絶対喜びますよブルボン、ダービーですよダービー』
310 : アナタ   2025/04/25 12:17:50 ID:mI5oZHB2yM
「父親としては会いたいですね。
 でも、これからマッサージをずっとしてね、その間いっぱいいっぱい褒めてくれる"大好きな人"からのご褒美の場に父親がいるのはね。
 ……夏休みは来ていただけるのでしょう? 山の反対側が海でしてね。 海水浴場になるほどは混み合ってないけど、海水浴場としても使える地元の穴場でしてね。
夏休み、楽しみにしてますよ。

――トレーナーさん、本当に……本当にありがとうございます。
娘をどうぞよろしくお願いします。」

――結局のところ、父親が来たことはブルボンには後で伝えることにして

『ミホノブルボンさん、無敗の2冠、ダービーおめでとうございます』

🤖「? マスター?」

『歴史に名を刻む大ウマ娘ミホノブルボンさんには今後生意気な口は効かないようにする所存です、ささ、こちらへ。マッサージの準備ができております。』

🤖「オロオロ マスター、マスター、マスター」
311 : あなた   2025/04/25 12:23:42 ID:mI5oZHB2yM
控室の仮寝台にうつ伏せになるミホノブルボン
その背中に、手とは違うおおきなものが置かれる。トレーナーの額だ

『お前、本当に無敗で2冠馬になっちまったなあ……』

『すげえや、お前。 普通なら4本の坂路なんかできるわけない。
それを毎日やるどころか一本一本全力で、だれよりも真面目に手を抜かず走ってさ。 殆ど遊び歩かないしさ、練習を一回もサボるどころか休んだ事ないんだぜ?』

「……はい、頑張りました。 とても、頑張りました」

『そうだよな。 今日のダービーだって、スタミナが保たないって言ってたのに、直線であのスパートなんだよ、一体。 ナリタタイセーだってマチカネタンホイザだってマーネイドタバンだって凄いのにさ、そいつら全員置き去りでさ』

「はい、マスターも私の脚は凄いから――スパートは直線だけで良いといってました。」

『お前、すごいよ。 本当に400Mの壁埋めちまった』

「マスター、私は凄いですか? 頑張りましたか? 偉いですか?」

『ああ、すごい、めちゃ凄い。 レースも凄いしいつもいつもいつも頑張ってるのもすごいしめちゃ偉い』
312 : アナタ   2025/04/25 12:33:28 ID:mI5oZHB2yM
「もっと――もっと褒めてください。
ステータス:ふわふわ です。 自分がダービーを勝てて嬉しいはずなのに、夢の中みたいな感覚で、嬉しいはずなのに実感がありません。
 なのに――マスターに褒められると、とても嬉しくて、ああ、勝ったんだと思えます。 ですから――いつもみたいに全力で褒めてください」

『……いいの? 今日の俺はもう遠慮しないよ?』

 「勿論ですマスター」

『――最高ッ!ブルボン、ブルボンブルボンブルボンブルボン!
 ああああお前ほんっとに凄いじゃん、ホントに無敗でダービーまで獲ったんだぞ。偉いっ! 最高! 日本最強のウマ娘ッ! このチョコレート超特急!
可愛くてスタイルよくて日本一速いウマ娘なのに2400Mも余裕のスタミナとか神様贅沢盛りしすぎっ!』

「…ッパアアア。」

マッサージというか、ワシャワシャと尻尾も髪も背中も頭も全部もみくちゃにして
落ち着いたらマッサージをしていく

『そういや、夏休みの合宿さ――ライスシャワーやマチカネタンホイザとか一部のウマ娘と合同で学園の指定合宿所じゃないとこでやらないかって話出てるんだよね』

「……そうなのですか?」

『個人的には疲労を抜きたいから大坂路はなくていいんだけど学園の合宿場は設備はいいけど坂道とか走りきれるばしょなくてな
 そこで、海と山があって、無敗の2冠馬サマが幼少期からトレーニングしてた坂道もある場所があるなって』

 「……それはもしかして」

『そ、お前の実家の山の裏手、そこの民家にアポとった。
少数精鋭の強化合宿するぞ、ニシノフラワーやサクラバクシンオーもくるってよ』
313 : お姉ちゃん   2025/04/25 13:12:56 ID:52VuIaSPTI
ブルボンを先に退室させ、ギリギリまで居残らせて頂いた礼をしつつ鍵を返し
そして帰るためにレース場から出ると、レース場の前の屋台に人が群がっている

🕷️「あ、ブルボンさんのマスターさんども。 ここの天むす美味しいですよ」
🍚「焼きおにぎりも美味しいよ、マスターさん」
🤖「もぐもぐもぐもぐ、むしゃむしゃむしゃむしゃ」
🕷️「もーブルボンさん、ほらマスターさんきたよ。 手とめて」

『馬鹿飯食ってるブルボンは』

🤖「シャアアアアアアアアっ!がるるるるる!!」
🕷️「うわぁっ!? 怖っ!?ブルボンさんこわっ!?」
『メシ喰ってるときのブルボンはそっとしとこうな、ほらブルボン口出して拭いてやるから』
🤖「もぐもぐ、 むいむい、ありがとうございますマスター。 もぐもぐもぐもぐ」

『しかしなんでレース直後なのに大量に食えるんだ』
🍚「……だよね」
🕷️「すごいよね」
『いやキミらもだからね?』
314 : モルモット君   2025/04/25 13:15:01 ID:52VuIaSPTI
日本ダービーおしまい
キャッキャウフフのドキドキ☆夏合宿~ひとなつのあばんちゅ~る~は後日


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