【安価SS】飛び級少女がトレセン学園でGIを目指す話
1 : ◆wuHHR64l1og   2024/07/05 05:30:15 ID:jpgfrBfaDo
がたん、ごとん。だっだっだっ……。
電車に揺られ、乗り換えて、後は駅から走って、合計1時間……今はお昼の1時くらい。
そこに、わたしの目的地はありました。

「わぁっ……!!」
そこは……門の外から見えるだけでも……とっても広くて、大きくて、通っていた小学校の何倍でしょうか?
明日から通うことになる、トレセン学園を目の前にして、わたしは思わず驚いちゃいます。
たぶん、耳もぴょこぴょこしてるはずです。ウマ娘なので!

学園に見とれていると、緑の帽子を被った女の人が話しかけてきました。
「あなたは……明日からの転入生の方ですね?お待ちしていましたよ。私、学園の事務担当……駿川たづなと申します」
「たづなさんですね!よろしくお願いしますっ!!わたしの名前は______」
わたしの方もきちっと自己紹介をした後、たづなさんに案内されて寮にやってきました!
ここはどうやら、栗東寮というらしく、寮長のウマ娘さんが案内を引き継ぐそうです!
「おやおや、本当にポニーちゃんがやってくるとはね。あ、私の名前はフジキセキ。
これからよろしくね」
「はいっ、よろしくお願いしますっ!」
優しそうな寮長のお姉さんに案内されて、私は寮の中をひと通り見て回りました!
そして……。
「______じゃあ、キミの部屋なんだけど……色々あって誰か2人の部屋に3人目として入ってもらうことになっているんだ。その部屋は……」
>>3(公式で判明済み同室コンビの部屋。調べて★)
142 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/07 10:17:46 ID:AVSLer3TOE
「ふわぁぁぁぁっ!!これがレース場ッ!!」
競技ウマ娘とそのトレーナーは関係者用の裏口から入れるので、それを使って入場したシュガー。そして早速足を運んだ観客席……そこから見る本バ場に、シュガーは心を奪われていた。
「ここでっ!ここで走るんですよねっ!たくさんのお客さんに応援されながらっ!!」
「ええ、そうよ」
「ああっ!あれが有名な中山の直線ッ!!」
興奮するシュガーに返事をしつつも、それを見るトレーナーにも自然と笑みが浮かぶ。
(ここまで純粋に喜ぶウマ娘は、なかなか居ないわよね……さすが小学生……)
今まで見てきた中高生のウマ娘たちは、こんなにも目を輝かせてレース場に興奮する者は少なかった……ので、純粋な心で興奮して喜んでいるシュガーを見るのが、うれしいのだ。
今は朝の9時。これからは未勝利ウマ娘たちのレースが始まるが、シュガーの出るメイクデビューは12時過ぎだ。
「まだ時間に余裕があるけど……何する?」
「そうですね……おなか空きました!!」
そういえば、とトレーナーはハッとした。自分もシュガーも、朝は何も食べずに来た。
よくここまで平常でいられたなと驚くとともに、そのツケが回ってきたかのように腹の虫が泣き始める。
「とりあえず……食べに行きましょうか」
二人は観客席から離れ、屋内へ。フードコートのエリアを目指すのだった。
143 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/07 11:26:56 ID:AVSLer3TOE
助けてくれ!!!これ以上、中山競馬場がわからない!!!!

てか小倉しか現地行ったことないです!!!!
144 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/07 12:13:32 ID:AVSLer3TOE
ここはもう、時々登場するめっちゃ書ける人に任せる……>>145から、大体レース時間ちょっと前くらいまで。
中山レース場と食についてを……。
145 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/07 20:13:07 ID:AVSLer3TOE
保守?上げ。安価下。
前スレみたいな文章バケモノの人、来ないかな……(他力本願)
146 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/08 14:39:14 ID:mwqXMn1BNg
二人が地下まで降りてやってきたのは、とても大きなフードコートエリア。
まだ時間が早いため、人並みはまばらだが……お昼時になると飲食用の座席の取り合いや譲り合いが発生するほどに、人であふれかえる場所だ。
「わぁーっ!なんでもあるんじゃないですか!ここっ!!」
シュガーは、ウマ娘としての”食”に対する本能が刺激されるのか、出展している店舗に目を輝かせている。
そして彼女はいつの間にか、雑誌のようなものを手にしていた。
「シュガー、それは?」
「これはですね、各レース場をもーらした、食とエンタテイメントのガイドブックです!!」
持っているそれは創刊号で、590円……次もあるの?とトレーナは少し困惑する。
「昨日の夜はこれをざーっと読んでいたんですが、じっさいに来てみるとすっごくワクワクしますね!!!!」
おそらくシュガーライドは、ネタバレを聞いてもそれを楽しみにするタイプなのだろうと、トレーナーは思った。
147 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/08 14:39:54 ID:mwqXMn1BNg
「あっ、永福の焼きそば屋に……あっちには確か……すいしょーまつのラーメン屋!」
「ちょっ、はっ、速いわよッ!時間はあるから!!」
小柄ながらも圧倒的な腕力差にトレーナーが勝てるはずもなく、様々な店舗を見て回るシュガーライドに引っ張り回される。
だが、不思議と悪い気はしなかった。レース場を楽しめている、緊張もしていなさそう……本番ではしっかり走れるはずだと、トレーナーはシュガーに改めて期待を寄せた。
「な、何を食べるにしてもっ、腹八分目にしといてね!?」
「あっそうだった!レース前に眠くなったら大変ですもんね!!」
シュガーは、自身の体質である血糖値スパイクをまだ克服できてはいなかった。
しかし、十分な野菜や健康茶とともに食事を摂ることで、ある程度緩和はできている。
それでも一般的なウマ娘より食事量を減らさなければならないのだが、ここ数週間で彼女の身体は着実に成長できている。トレーナーはそれを信じていた。


(一人でテンパってましたけど、なんとか解決できそうです。ゴメンネ)
148 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/08 15:19:10 ID:mwqXMn1BNg
「ぷはー!焼きそば、おいしかったですー!!」
永福で焼きそばを腹八分目までたらふく楽しんだシュガーは、とてもごきげんな様子だ。
(か、加減してて、あの量!?さすがウマ娘ね……)
トレーナー1杯に対し、シュガーは大を3杯。これでまだ控えめというのだから、この種族はとてつもないと、トレーナーは驚いていた。
「まだもう少し時間ありますよね!?グッズ売り場行きたいですっ!」
シュガーの希望で次に足を運んだのは、同じフロアにあるグッズショップ。
トゥインクルシリーズで活躍するウマ娘の公式グッズが売られた、ファンなら一度は足を運びたい場所である。
「うおーっ!UFOキャッチャーでもなかなか取れないぱかプチがこのお値段でっ!?あっちにはウイニングライブ用のペンライトっ!!」
たくさんのグッズに、これまた目を輝かせるシュガー。
しかし、ふと、彼女は足を止めた。
「らい……ぶ?」
「______あ」
小さく発した言葉を聞いたトレーナーは、気付いた。シュガーも、気づいてしまった。
「ういにんぐらいぶの……れんしゅう……してないです……」
トゥインクルシリーズのレースと言えば、1着でもそれ以下でも、応援してくれたファンに感謝の思いを伝えるための、ウイニングライブがある。
が、しかし。
シュガーライドはこれまで、レースに出て走ることを考えるしかなかった。それに向けてとても忙しかった。
ダンスレッスンを一切受けていない。
「どどどどどど、どうしましょうトレーナーさん!!!!!」

レースまであと2時間。体操服へ着替えたり、パドックへの参戦の時間も含めると、あまり使えない。
どうする?というか何ができる?
>>149
149 : トレーナーちゃん   2024/08/08 15:25:04 ID:vIEd.MF8a2
トレーナーのスマホでUmatubeの過去のウイニングライブのダンス動画を見て出来る限り覚える
150 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/08 17:25:41 ID:mwqXMn1BNg
二人は急遽、控室へと向かった。
そしてシュガーライドは早々と着替えを済ませ、軽くストレッチを始める。
「んーっ……2時間で覚えられますかねぇ!?」
体を伸ばしながら、シュガーはトレーナーが即興したプランについて改めて尋ねてみた。
「覚えられるかじゃないわ、やるのよ」
いつにもまして真剣なトレーナーの、プランはこうだ。
着替え→ストレッチ→ダンス練習を2時間で終わらせ、パドックに間に合わせる。
レースに向けてのウォーミングアップは、ダンス練習を通して済ませる。
……超突貫のプランだが、やれることはもうこれしかない。
「さ、ウイニングライブはMake Debutよ。動画サイトに振り付け動画があるから、覚えましょう」
「は、はいっ!なんとしても!!!!」
タブレットで動画を再生しながら、シュガーは振り付けを覚え始める。
とある男性俳優の話だが……リズム感がないが運動ができるその男性は、役としてダンスをする際、”リズム通りの振り付け”を1本の動きとして叩き込んだという。
シュガーもそれをするつもりだ。とりあえず今回は、みっちり踊れれば良いのだ。
ところで、見ている動画はセンター……つまり1着のウマ娘の振り付け。
シュガーは、デビュー戦で2着以下になることは考えていない。
楽しく走って、勝つ。だから練習するのはセンターの振り付けだけで、良いのだ。
151 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/08 17:26:03 ID:mwqXMn1BNg
そして、2時間後。
「______どっ、どうですか!」
「なんとか様になってきてるわね。あとはぶっつけ本番だけど、いけそう?」
「はいっ!」
ある程度の振り付けを覚えたシュガー。歌の方は……まあこれも聞けないレベルではないので、今日を乗り切ってから考えようということになった。
蹄鉄をしっかり打った競走用シューズに履き替え、水を飲んで少し一息入れてから、シュガーは表情を引き締める。
「……じゃあ、トレーナーさん。いってきますっ!」
「ええ。楽しんできて!」
楽しく走って、勝つ。その思いを胸に、シュガーライドはターフへ向かうのだった。

『さあ!中山レース場も5Rに突入だ!メイクデビューに挑む9人のウマ娘たちは、どのような走りを見せてくれるのでしょうか!?』
12時をまわり、客席にも人が増えてきた中山レース場。
このレースでメイクデビューを迎えるウマ娘たちが、続々とパドックに姿を見せていく。
『そして最後に登場するのは、期待の飛び級ウマ娘! 、1番人気、シュガーライドです!』
実況の声とともに、シュガーライドがパドックに登場した。
(これが、レースに向かうウマ娘さんからみた景色……)
(ていうか、1番人気……えーっ!?)
観客に向けている表情はキリッとしていたが、内心は自分の評判に驚くシュガー。
だが、彼女はその期待すらもエネルギーに変えようと思った。
なぜなら今、ものすごく楽しみだからだ。そのすべてが。
152 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/08 17:37:25 ID:mwqXMn1BNg
シュガーライドの枠>>153
レース展開>>154
153 : トレ公   2024/08/08 17:42:49 ID:vIEd.MF8a2
1枠2番
154 : 相棒   2024/08/08 17:49:47 ID:LBWhxC3Pkc
ややスローペース、先頭からシンガリまで約10バ身
155 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/08 18:31:20 ID:mwqXMn1BNg
『ターフに集うは9人の新人ウマ娘たち。スムーズにゲート入りが進み、出走の時を待っています』
内枠となる2番ゲートに収まったシュガーライドは、ゲート内でもいろいろなことを考えていた。
自分よりも大きなお姉さんウマ娘たちのことだったり、ターフの感触だったり。
だが、一番は。
(たのしみ、ですっ!!)
細かい作戦指示もされていない。まずは自分の思うように楽しく走ってほしいとだけ。
彼女の心の中はもう、走りたい気持ちでいっぱいだ。
『最後の一人がゲートイン。各ウマ娘体勢完了か……今、スタートしました!』
ゲートが開き、ウマ娘たちが一斉に飛び出していく。
『さあ、誰が行くでしょうか。まずは4番と8番がハナを奪い合っている。1番人気のシュガーライドは最後方、後半届くでしょうか?』
これを出遅れだと思う観客もいるかも知れない。だが、
(よしっ、たぶんいいスタートなんです!!)
シュガーライドにとっては、最良の位置取りだった。
ポテンシャルの高さはわかっているものの、2000mは未知の距離。そして自身の脚質と合わせて、シュガーライドはギリギリまで脚を溜められる最後方を走ることを選んだのだ。
『最初の1000mは60秒ジャスト。ややスローな展開です』
2コーナーを回って向正面。レースは淀みなく進行している。
(すごいっ、これがレース!足音がたくさん聞こえて、わくわくするっ!!)
最後方に居て、その前方を2、3人のウマ娘にカバーされている状態であったが、今のシュガーにはすべてが新鮮で、楽しいものであった。
『先頭からシンガリまでおよそ10バ身。3コーナーを回って最終コーナーへと進みます。誰が最初に仕掛けるか!?』
156 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/08 18:31:46 ID:mwqXMn1BNg
シンガリといえば今はシュガーライドであり、スローペースで10バ身もの間隔が開いているのは、後方からくるウマ娘には少し不利な展開だ。
前のウマ娘の脚が生きていることも多く、先行勢が逃げ粘ることも少なくはない。
そんな状況で突入する最終直線。4コーナーを抜けて、残り400m。
(あっ……ここからっ!!)
もうすぐゴールだと気づき、シュガーが動く。
『おーっとここでシュガーライド!凄まじいまくりで大外から上がってくるぞ!!』
タマモクロスたちとの走りで見せた、大股でありながらもその間隔がとても小さい、高速なストライド走法。
その走りで、内を走るウマ娘たちをどんどん追い抜いていく。
「はあぁぁっ!!」
『シュガーライド、先頭を走る8番を追い抜いて先頭に立った!凄まじい走りで心臓破りの坂も難なく突破し、いま1着で、ゴールっ!!』
ラストスパートを掛けるその間、シュガーライドは終始笑っていた。そしてそのまま、楽しくゴールしたのである。
「よしっ!!」
観客席で小さくガッツポーズをするトレーナー。
そしてゆっくりとスピードを落とし、止まるシュガー。
(あ……デビュー戦……勝ったんですね……)
「はぁ……はぁっ……やっ、やったぁー!!」
あれだけの大まくりをして、息は荒かった。だがその笑顔を崩さず、シュガーライドはデビュー戦の勝利を喜ぶ。
彼女のレースは、まだ始まったばかりだ……。
157 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/08 18:32:27 ID:mwqXMn1BNg
次の展開>>158>>160
158 : キミ   2024/08/08 18:38:31 ID:vIEd.MF8a2
ウイニングライブも大成功
159 : お姉さま   2024/08/08 20:44:13 ID:JI7FkGQuyk
大外まくりの豪快な走りとライブの出来から一躍今期の期待の星に!目の肥えたファンからは今年の菊花賞ウマ娘は決まり、あわよくば三冠も!?との声も
160 : お前   2024/08/08 21:47:32 ID:vIEd.MF8a2
早速、雑誌『月刊トゥインクル』の記者である乙名史悦子から「期待の新星に密着取材を」との要望が。
161 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/09 03:37:09 ID:OCmbApAAho
「トレーナーさんっ!! やりましたっ!!」
控室に戻ると、大喜びのシュガーは改めてトレーナーに勝利報告をする。
力いっぱいの握手に応えながら、トレーナーも称賛の言葉を送った。
「凄いわ。デビュー戦で初勝利、しかもあれだけの結果! ……それと」
「はい?」
称賛と同時に、トレーナーは”あの疑問”を投げかける。
「走ってて、楽しかった?」
それに対し、シュガーは迷わず答えた。
「はいっ!すっごくっ!!」
その表情から飛び出した言葉には一切の曇りがなく、
本気で走れたのだと実感するトレーナー。
「あ、そうだ!トレーナーさん!ライブって夕方ですよね!」
「そうだけど……」
「しっかり1着になれましたし、もうちょっと練習しませんか?」
ダンス練習を提案するシュガーライドからは、レースでの疲れはほとんど見えない。
プレッシャーもなく、先ほど以上に集中して取り組めるだろう……そう思い、トレーナーはライブに向けてのダンス練習を再開することにした。
途中、軽食も挟みながら、数時間後……。
162 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/09 03:37:38 ID:OCmbApAAho
『さあ!ウイニングライブの時間がやってまいりました!センターを飾るのは、圧巻の大まくりでレースを制したこのウマ娘ッ!!』
暗くなってきた中山レース場。ライブ専用の中規模なステージには、すでに多くの観客が詰めかけ、皆それぞれ応援グッズを持っている。
そして、そんな大観衆に見守られ登場したのは……。

『期待の新生ウマ娘、シュガーライド!!』
(わ、わぁ……これが、ウイニングライブっ!)
せり上がりエレベーターでステージにやってきたシュガーライドは、たくさんの観客たちに驚き、息をのむ。
(ま、まだデビュー戦だけど、もしGIで勝てたら、どんなことになるんでしょうか!!)
彼女の脳内では一足先に、GIレースで勝った後の話を想像していた。
観客も歓声も、今の比ではないだろう。
そんな景色を思い描きながら、彼女はスタンドマイクを手に取る。
「えっと、シュガーライドですっ!きょうは、楽しいステージにしていきましょうっ!」
まだ大それた言葉も何もないけれど、今日は楽しい走りができて、それを応援してくれた人たちに感謝を伝えたい……そんな思いを胸に、シュガーは歌って踊る。
活舌は安定していないが、子供らしさのある元気な歌声。そして、何時間も練習したキレのあるダンス。センターに特化したおかげでもあるだろう。
初めてのレースに、初めてのライブ。どちらも、大成功で幕を閉じるのだった。
163 : 貴方   2024/08/09 03:46:00 ID:47WW.AvmxI
>>159
メイクデビュー中山2000mなら菊花賞より皐月賞では?
それとも目の肥えたファンが皆何故かステイヤーだと見抜いてるって事?
164 : トレ公   2024/08/09 03:52:18 ID:OCmbApAAho
>>163
後者でいいんじゃないですかね
165 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/12 04:22:51 ID:cmCOWRzSJk
次の日。トゥインクルシリーズ専用SNS「U」では、すでにシュガーライドの話題で持ちきりになっていた。

『メイクデビューのあの娘、凄かったよな』
『身体が小さいね……ってか小学生!?』
『あのまくり方は並のウマ娘にはできないと思う』
『歌とダンスもよかった。推す』
『3冠も目指せるくね?』

午後3時頃。トレーナーはスマホでそれを眺めながら、屋内トレーニングルームでシュガーを待つ。
(いきなり有名人……胃が痛いわ……)
世間からこれだけの期待がかかっているのだ。トレーナーとしてもシュガーの環境にかかわってくる要素を潰すわけにはいかない。
掛けられた期待が重い。
「トレーナーさんっ!わたし今、SNSで有名人になってるって!!」
(まあ、そりゃそうか)
ジャージを着てやってきたシュガーライドの瞳は純粋なキラキラオーラを放っているようだった。その眩しさは、不安や心配などが混ざっていては絶対に成せないものだと思い、
杞憂だったなと納得するトレーナー。そして、用意していた次の計画シートをタブレットで見せる。
「ほうほう……次のレースはGIII札幌ジュニアステークス……え?いきなりじゅーしょーを走るんですか!?」
驚くシュガーに、トレーナーは説明を始めた。
166 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/12 04:24:06 ID:cmCOWRzSJk
「良い?私は、あなたにそれだけの力があると思ってる。多分、他のウマ娘に決して劣らない、あなただけの力が」
「わたし、だけの……」
「そうよ。この調子で走っていれば、きっとそれが”シュガーライドを形作るもの”になっていくはず。 ……要は、あなたにしかできない走り、ね」
小柄でありながら、勝負どころでは異質な末脚を使うことのできるシュガー。
それは同年代のウマ娘にも、先輩ウマ娘たちにも中々マネできないものだ。
自分だけの走りを確固たるものにすれば、GIどころかクラシック3冠にも手が届く……トレーナーはそれを信じている。
「わっ、わかりました!GIIIにでて、えっと……はずみをつけますっ!!」
少し考えて、納得したシュガーの目が、また熱く燃えだした。
次の舞台は8月下旬の札幌。東京と比べるとこの時期でも冷たいが、きっと温めてくれるに違いないと、トレーナーは期待を寄せるのだった。
そして屋外に出て、トレーニングを始めていると……。
167 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/13 05:38:11 ID:0xVA54Iu4.
「すみませんっ!お時間よろしいでしょうか!!」
トレーナーに、一人の女性が話しかけてきた。カメラや手帳を持っていて、動き回るのに良さそうな服装……これらを見て、トレーナーは直感する。
「……記者の方ですか?」
「そうです!!私、雑誌『月刊トゥインクル』の記者で、乙名史悦子と申します!」
トゥインクルシリーズを特集する人気雑誌の記者を名乗るこの女性。
トレーナーがまだ何も言ってないのに、既に目を輝かせているようだ。
話を聞いてみると、まだ10歳でありながら鮮烈なデビューを果たしたシュガーライドに、
とても興味があるという。
「密着取材、させていただけませんか!!!!!」
なんというか悪意はないが圧が強いこの女性記者に、トレーナーは……。
>>168
168 : あなた   2024/08/13 05:43:39 ID:im.4hB/1Qk
1日(24時間)だけですよ。但し、シュガーが嫌悪感を抱いたらその場で即終了です。それでも良いなら密着取材しても構いません。
169 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/13 06:34:30 ID:0xVA54Iu4.
「トレーニングの間なら構いません。ただし、シュガーやその他のウマ娘たちに悪い影響がないように、お願いします」
「すすす、素晴らしいですっ!!」
どうやら、担当だけではなく周りのウマ娘にも配慮した提案に、いい評価をもらったようだ。トレーナーは一瞬困惑したが、乙名史記者といえばこんな性格だったなと納得する。
「ではさっそく、撮らせていただきますね!」
そして乙名史記者は、持っていたデジカメを構えて、シュガーライドの練習風景を撮影し始めた。 
その日の夜……。
「かんぱーいっ!!」
寮の一室で、小さなお祝いパーティーが開かれていた。
祝われているのはシュガーライドで、祝っているのはスペとスズカだ。
それっぽいグラスになみなみと注がれたなまはげジュースを飲みながら、シュガーはご満悦に浸っている。
「初勝利、おめでとう」
「おめでとうございます、シュガーさん!」
「えへへ。お二人とも、ありがとうございますっ!」
昨日は、帰ってきてすぐにシュガーが眠ってしまったため、今日のこの時間にお祝いパーティーを開くことになっていたのだ。
「ところで、次のレースはもう決まってるんですか?」
「はい!札幌ジュニアステークスです!」
「いきなり重賞ですか!頑張ってください!!」
スペもスズカも、シュガーのことを心から祝い、応援してくれている。
シュガーはそれに応えねばと思った。またこんなふうに祝ってもらえたら、自身にとっても嬉しいものである。
そして、明日からも頑張ろう……そう思えたのだった。

>>170>>173
170 : トレーナーちゃん   2024/08/13 09:32:57 ID:im.4hB/1Qk
トレーニングの合間にお茶をしようと思いカフェテリアを訪れたら、今日は誰かの誕生日らしくケーキが全品半額でラッキー!
171 : お姉さま   2024/08/13 10:07:21 ID:FlAx4OaFDY
そして手にしたスイーツを食べようとすると…
「そんな!?昨日から食べたかったメロンパフェを半額で入手するチャンスが…こんなのあんまりですわ!絶対に許しませんわよゴールドシップさん!」という怒りの声が…
哀れに思ったのでたまたま購入していたメロンパフェを声の主に譲ってあげた
そして話を聞いて見ればなんとそのウマ娘はステイヤー系の名家の期待の星だった!
お礼に後日長距離の極意を教わる事になった!
172 : お姉ちゃん   2024/08/13 10:10:52 ID:FlAx4OaFDY
あ、マックちゃんが怒ってるのはゴルシに振り回されてカフェに行くのが遅れたせいです。無駄にレスしてすいません
後1つ ↓
173 : お姉ちゃん   2024/08/13 10:22:40 ID:5aYnfP5YS.
>>171>>172
(文脈的にゴルシのせいでパフェを買えなかったって事か…?)

ついでにゴルシからも同じ後方からの捲りが得意という事で色々教えてくれる事になった(真面目にレース技術を教えるとは言ってない)
174 : モルモット君   2024/08/14 13:46:04 ID:JuopfQKb/Y
>>173
それです!全然補足出来て無かった…すいません
175 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/15 05:06:08 ID:FVCDezNPk2
そして次の日。
今日の放課後は時間に余裕があったので、シュガーライドはトレーニング前にカフェテリアで糖分補給に勤しむことにした。

「わぁー!この時間のカフェテリア、めったに行かないので……こんなにスイーツがあってびっくりです~!!」
ビュッフェ形式で並ぶ豪華絢爛なスイーツたち。
ショートケーキなどの定番メニューや、パティシエ監修の装飾が施されたスイーツがたくさんある。
(……あ、あれは!!)
ふと、テーブルの端のほうに目をやってみると……”特別なメニュー”が掲示されていることに気がついた。
「なになに……おたんじょうび記念……いつもなら1000円のメロンパフェが、半額以下の250え______」
ビュッフェ外の有料メニューであるメロンパフェは、レースで戦績を重ねた一部のウマ娘しか気軽に手が出ないような、良いお値段の限定商品だ。
それが250円で売っている。なんとオトクなことだろうか。
しかし、それを読み上げていた次の瞬間、押し寄せてくるバ群の波に飲まれていくシュガーライド。
(し、しまった!すっごいオトクすぎて、ウマ娘さんたちがこんなに!! ……でもっ!!)
正直なところ、メロンパフェを買いたい。食べたい。
その気持ちに正直になることを誓ったシュガーは、走る構えをとった。
「わたしは、追込ウマ娘なんだーっ!!」
一気に駆け出す。小柄な身体を利用してバ群の隙間を抜けていく。
そして……!
「め、メロンパフェ、ひとつっ!!」
176 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/17 01:37:44 ID:OSTdwbi4M2
多忙のため更新頻度ダウン
177 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/18 17:33:49 ID:XXF81bYPXI
(か、買えた!!!メロンパフェ、買っちゃいましたぁー!!!)
メロンパフェ争奪ステークスをくぐり抜けたシュガーライドは、席に座ってその最初の一口を頂こうとする。
メロンクリームも練り込まれたバニラアイスから行くか、それとも三日月型に切られた一切れのメロンから行くか、悩んでいると……。
「そんな!?昨日から食べたかったメロンパフェを半額で入手するチャンスが…こんなのあんまりですわぁぁぁぁぁっ!!」
(ん!?)
レジの方から悲鳴のような叫びが。
恐る恐る振り向くシュガー。その目に映ったのは、芦毛のウマ娘が芦毛のウマ娘にプロレス技をかけている姿だった。
「絶対に許しませんわよ!ゴールドシップさん!」
「いでででででで!わ、悪かったってマックちゃん!まずはこれほどいてくれよ!?」
(あ……)
技をかけている方のウマ娘に、哀れみを覚えたシュガーは……立ち上がって、持ってきた。自分の買ったメロンパフェを。
「あの……メロンパフェ、食べます?ぜんぶ」
「ええっ!?いいんですの!?」
その芦毛のウマ娘は、シュガーライドの突然の申し出に目を丸くしたが、どうぞどうぞというシュガーの気持ちを汲み、しぶしぶパフェを受け取った……。

「______はぁ、助かったぜ。サンキューな、えっと……」
「あ、シュガーライドです。そちらのお名前は?」
「アタシはゴールドシップ。で、あっちで嬉しそうにメロンパフェを食べてるのが……メジロマックイーンだ」
(……めじろ?)
178 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/18 17:35:35 ID:XXF81bYPXI
ゴールドシップから名を聞いて、シュガーは何かを思い出しかけていた。
(えと……そ、そうだ!わたし、会ってます!メジロブライトさんとメジロライアンさんに!!)
完全に思い出した。学園に来て以来、メジロという名のついたウマ娘2名と知り合っていたことを。それをゴールドシップに話してみると……。
「へぇ、オメーすげぇな!メジロといえばレースでもエリート揃いのお金持ちのトコだ。学園に来てすぐ二人と知り合えるなんてよ」
(おかねもち!?)
つまりはお嬢様ということになる。
「あの人も……」
パクパクとメロンパフェを食べているマックイーンを見て、”とてもそうは見えない”と思うシュガー。
「______今、お嬢様には見えないとか思いませんでした??」
「ひっ!」
いつの間にかパフェをたいらげたマックイーンが、眼前に立っていた。
驚くシュガーに、マックイーンは話を続ける。
「改めまして、メジロマックイーンですわ。先程のことは感謝してもしきれません、シュガーライドさん」
「あれ?わたし自己紹介しましたっけ……」
「ブライトから話を聞いていましたの。あなたも私と同じく、ステイヤーを志すウマ娘……食後の運動も兼ねて、併走しませんこと?メジロの名を背負う覚悟とその実力、お見せしますっ!!」
179 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/19 16:02:07 ID:KpsCyYsVd.
「……シュガー、あなたの人脈が怖いわ……」
トレーニングの時間になり、グラウンドにやってきたシュガーライド。トレーナーはその隣に立つメジロマックイーンを見て、シュガーが短期間で実力派の先輩ウマ娘たちと知り合えていることに唖然としている。

「では、早速始めましょう」
「はいっ、よろしくお願いしますっ!!」
先の一部始終と併走の件をトレーナーに伝えた後、二人はスタート地点に立つ。
距離は同地点からの一周2000m。シュガーライドの要望に、マックイーンが応えてくれた形だ。
(マックイーンさん、どんな走りをするんだろう?)
(シュガーライドさん……メイクデビューを勝ったばかりとはいえ、ブライトが目をかけるその実力、警戒していきますわよ!)
未知なる相手との走りに心を弾ませるシュガーと、始まったばかりの実績……それ以上の力を警戒するマックイーン。両者思惑は違えど、やる気は十分。
「じゃあ、そろそろ行くわよ。よーい……」
トレーナーの合図で、二人は構える。そして、
「ドン!」
スタート。それと同時に瞬時に走り出す両者。
本番のレース基準で考えても出遅れはないだろうと感心するトレーナーは、すでにかなり先を走っている二人を見守り始めた。
(後ろから……追い込むつもりですわね?)
最初のコーナーを通過し、先頭を走るマックイーン。
おそらく自身の4バ身ほど後ろを走るシュガーの作戦を予想しながら、ペースをキープする。
(それならば、最終コーナーで一気に引き離します!)
180 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/19 16:03:51 ID:KpsCyYsVd.
______時を同じくしてシュガーライドは、マックイーンを追うように走っている。
(すごいっ、これがメジロマックイーンさんの走り……うん、楽しいっ!)
自分の気持ちをわくわくさせてくれる相手との併走……というかこれはもはや模擬レースであるかもしれないが、シュガーライドの気分はじわじわと高まっていた。
そしてそのまま、バ身を維持したまま2コーナーを曲がる。
仕掛けどころはまだ先。このレースの行方は……>>181
181 : お姉さま   2024/08/19 18:51:18 ID:lJkdsk72qI
アタマ差
182 : アナタ   2024/08/19 18:54:21 ID:KpsCyYsVd.
>>181
アタマ差の、……!?
183 : 貴様   2024/08/19 19:00:41 ID:KpsCyYsVd.
勝敗は委ねるってことでいいですね!?!?!?
184 : 貴方   2024/08/19 19:01:06 ID:lJkdsk72qI
>>183
よろしくお願いします
185 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/20 19:21:53 ID:3rDdJ1X6ss
二人ともに一歩も譲らず、余力を保ったまま、最終コーナーを曲がる。
ここからが本当の真剣勝負。逃げ切りか、差し切りか。
「このタイミング……ですよねっ!」
後方にいたシュガーライドが得意の加速走法でメジロマックイーンを追い始める。
前回のレースで勘を養ったのか、踏み込みには自信が宿っていた。
ここでスパートをかければ確実に追い越せる、その気持ちを胸に前へ進出していくシュガー。
(なるほど、これが……!ですが、私もメジロのウマ娘として、負けるわけにはいかないんですのよっ!)
未熟で小柄な身体からは想像も付かない脚を使ってくるシュガーに対し、マックイーンは一歩も引かない、屈することはない。
前の方を走ってはいたものの、脚は十分に溜まっている。
それを、一気に、爆発させる……!!
「はぁぁぁぁぁっ!!」
「だぁぁぁぁぁっ!!」
最終直線。二人は激しい競り合いに突入。
並ばせない、追い抜く……両者の意思もぶつかり続ける。
この場の空気感はもはやGIレースに匹敵するほど熱く、高まっていた。
が、そんな時間も、終わりの時______。
「えー……ビデオカメラによる写真判定の結果、1着はアタマ差でメジロマックイーンでした。シュガーライドもお疲れ。すごい走りだったわ」
ゴールしてから10分もの映像判定が行われ、今回の併走はメジロマックイーン1着という結果で終わりを告げた。
「はぁっ……負けたけど……やっぱり走るのってすっごく楽しいです!」
「私も、併走とは思えないほどの熱いレースができて、とても楽しめましたわね」
シュガーライドとメジロマックイーンは握手を交わし、公式戦での再戦を誓う。
願わくばそれは、GIレースで。
186 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/22 06:45:03 ID:gATzVCGUrs
メジロマックイーンとの併走から数日後。
札幌ジュニアステークスへの出走を間近に控えたシュガーライドは、いつものようにトレーニングを終えていた。
普段通りの生活を送りながらも、毎日少しずつ、何かが違ってきていると心のどこかで思っている。走るたび、鍛えるたびに自身の成長を感じているのだ。
(あれ?なんか今日、まだ走れそうです……)
グラウンドのベンチで水分補給をしながら、シュガーは予感めいたものを覚える。
脚に余裕があり、軽いペースならもう少し走れるかもしれない……と。
そう思うと、はやる気持ちを抑えられなくなっていく。
走れるなら、もっと走りたい。
「トレーナーさん!えっと……」
「シュガー、どうかした?」
「なんだか落ち着かないので、くーるだうん行ってきてもいいですか!!町中を走りたいですっ!!」
こうしてシュガーライドはトレーナーに許可をもらい、学園の外……町中での外回りに向かうのだった。


>>187(外回り中に起きる出来事と、出会うウマ娘)
187 : トレーナーさま   2024/08/22 07:17:54 ID:dAywy.xSII
何かをやらかしたと思われるパーマー、ヘリオスとそれを鬼の形相で追うエアグルーヴに巻き込まれ、何故か一緒に爆逃げするハメに
188 : トレぴ   2024/08/22 07:23:15 ID:gATzVCGUrs
(わたし追込なんですけどね!?)
189 : トレーナーさん   2024/08/22 07:34:31 ID:dAywy.xSII
火事場の馬鹿力って事で…(忘れてた何て言えない…)
190 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/22 10:26:07 ID:gATzVCGUrs
「はっ、はっ、はっ……」
ビル街・商店街・公園______学園周辺のエリアを、スローペースだが軽快に走るシュガーライド。
時間あたりの進む距離は比べものにならないが、走る速度は人間のランニングレベルだ。
「マイル~中距離はよく出来ているから、長い時間・距離を走ることを見据えたスローペーストレーニングを」というトレーナーのアドバイスを受けての走法である。
(これっ、けっこうっ、きますね)
実はランニングを始めてから1時間は経過しているのだが、シュガーは身体的に少し疲れが見えてきたようだ。それもそのはず、5周は走っているのだから。
(そろそろっ、どこかでっ、休憩を……ん?)
公園まで戻ってきたころ、背後から複数の激しい足音を感じるシュガー。
本能的にウマ耳が感じ取る。まだ距離は遠い。しかし近づいてくる。凄い勢いで走っているのは間違いなかった。
「お前らぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「ひぃぃぃぃぃぃ!!」
「わぁぁぁぁぁぁ!!」
(……!?)
振り向くと、悲鳴を上げながら逃げるウマ娘が二人。そしてそれを鬼の形相で追い掛けるウマ娘が一人。
逃げるウマ娘たちはとてつもないスピードで、駆け足だったシュガーを追い抜いていく。
「キミ、ちょっと手伝ってくれないか!?後ではちみードリンクをおごろう!」
「手伝うって何を!?」
「あの二人を捕まえたいのだッ!!」
追っていた3人目のウマ娘が、シュガーに声をかけてきた。
前を走る二人を捕まえれば、公園で売っているはちみーをおごってくれるとのことで……。
「わかりました、やりますっ!」
急に元気がわいてきたシュガー。
トレーニング疲れが減っていき、それはどんどんやる気へと変化していく。
191 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/23 07:41:41 ID:SaXs3.9nUA
______スイッチが、入った。
そこからはもう、ノリノリである。
シュガーより少し先行したウマ娘を一瞬で追い抜くと、前を逃げる二人にぐんぐん迫っていく。
(……!! とてつもない加速力だ。あの娘は一体……!?)
そのウマ娘______エアグルーヴは、シュガーライドの加速力に驚きを隠せない。
彼女は、自身と同じティアラ路線を目指すニシノフラワーに近いものを、シュガーから感じていた。
そしてわずか数秒後。
「おふたり、捕まえましたぁ~!!」
「……そ、そうか!助かった!今向かう!」
少し離れたところで、逃げていた二人______ダイタクヘリオスとメジロパーマーを捕まえたことを知らせるシュガーの声を聞いて、エアグルーヴは急いで向かうのだった。

「おいしぃ~!生き返りますねぇ……」
「無理させてすまなかったな。2杯目もいるか?」
「いえいえ、大丈夫です!ありがとうございます、エアグルーヴさん!」
救援に来た他の生徒にヘリオスとパーマーを引き渡した後、シュガーは最初の約束通り、エアグルーヴにはちみードリンクを奢ってもらっていた。
「にしても、凄い走りだったな。キミは……シュガーライドは、何を目標に走っているんだ?」
「もくひょう……ですか。なんでしょうね、今はまず……GIで勝ちたいですっ!」
「そうか。走り始めたころの目標は、それくらいがまだちょうど良いだろう。頑張れよ」

こうして、はちみーとエールをもらったシュガーライドは、るんるんとした気持ちで学園に戻るのだった。
(フラワー……だけじゃない。脚質は違うが、”アイツ”に近い何かを感じるな)
エアグルーヴはそれを見送りながら、過去に偉大な戦績を残したあるウマ娘を内心に思っていた。
192 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/24 19:31:40 ID:LfzwbDgqJw
そしてレース当日。
前日から航空機で現地入りし、ビジネスホテルに宿泊したシュガーとトレーナーは、さっそく札幌レース場へと足を運んでいた。
「どきどき、です」
「東京とは気温差があって少しばかり寒いし、緊張してたら筋肉まで固まっちゃうわよ?」
「そこはだいじょうぶです!ホテル出るまでしっかり体操してたので!」
シュガーにとっては2回目の公式戦。初陣よりは緊張感が増している。
が、札幌の寒さも緊張もはねのけて、彼女は走るのだ。

当日の天候・バ場状態>>193
193 : お前   2024/08/24 20:09:16 ID:ur/MDPxx9A
曇 稍重
194 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/24 21:10:13 ID:LfzwbDgqJw
そしてレース当日。
前日から航空機で現地入りし、ビジネスホテルに宿泊したシュガーとトレーナーは、さっそく札幌レース場へと足を運んでいた。
「どきどき、です」
「東京とは気温差があって少しばかり寒いし、緊張してたら筋肉まで固まっちゃうわよ?」
「そこはだいじょうぶです!ホテル出るまでしっかり体操してたので!」
シュガーにとっては2回目の公式戦。初陣よりは緊張感が増している。
が、札幌の寒さも緊張もはねのけて、彼女は走るのだ。

はねのけられないものが、一つだけあった。
それはあらゆる生き物が抗えない自然の摂理……天気である。
夜間降った雨の影響で、現時点では稍重な芝状態だ。
控え室のテレビで会場の天候を聞きながら、トレーナーは少し不安な気持ちになっている。
(札幌レース場の芝は水を吸いやすくて重くなりやすい洋芝……シュガーのバ場適性がはっきりしてないけど、2戦目でこれにぶちあたるのは厳しいかも)
シュガーライドの圧倒的な終盤加速力……それはやわらかく重い芝でも発揮できるものなのか、気がかりはそこにあった。無理して全力を出せば、通常の芝よりも故障リスクが高まるかもしれない。
「レース、たのしみだなぁ!」
既に体操服に着替えて準備は万全の様子なシュガーライド。
“わくわくしている”シュガーに、今の状況をどう伝えようかと悩むトレーナー。

どう伝えるか 「>>195
195 : お兄さま   2024/08/24 21:44:01 ID:ur/MDPxx9A
シュガー、今の札幌レース場のバ場状態を簡単に言うと「水を吸った高野豆腐」のようなものだ。
普段のバ場が「乾いて固い高野豆腐」なら、今ここ札幌のバ場は「水を吸った高野豆腐」のようにとてもやわらかくて不安定なバ場になっている。
いつものバ場のつもりで走ると通常の芝よりも故障リスクが高いから、1着になってもらいたいのは勿論だが...決して無理だけはするなよ。
196 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/25 05:55:38 ID:uo1xRLbbhA
(トレーナーさんは女性なんですけどね!?)
197 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/25 06:10:31 ID:uo1xRLbbhA
「ねぇ、シュガー」
「なんですか?トレーナーさん」
きょとんとした表情で振り返るシュガーに、トレーナーはこう言葉をかけた。
「シュガー、今の札幌レース場のバ場状態を簡単に言うと「水を吸った高野豆腐」のようなものよ」
「こ、高野豆腐ですか!?」
「ええ。普段のバ場が「乾いて固い高野豆腐」なら、今のバ場は凄く柔らかくて、重い。ヒトレベルで見てもかなり走りづらいわね。つまり……無理はしないで」
トレーナーからの忠告を聞いて、シュガーライドは表情を固める。数秒の間、けわしくなる。そして。
「わかりましたっ!でも、やっぱり走るなら勝ちたいので!できるかぎりやってみます!」
すぐに表情が明るくなり、いつものようなはつらつとした返事をした後、シュガーはターフへと向かっていった。
(大丈夫かしら……)
根本的な解決に至ることはない。だが、やはりトレーナーとしても……安全な完走と輝かしい勝利を両立させたい。
だからもう、観客席から祈るしかないのだ。

札幌ジュニアステークス 10人 芝 稍重
シュガーライドの枠>>198
198 : お姉さま   2024/08/25 06:25:15 ID:FnR1Ac3Xuc
8番
199 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/25 10:09:11 ID:uo1xRLbbhA
『さあ、ここ札幌レース場でまもなく始まります、GIII札幌ジュニアステークス!
昨晩の雨の影響で、稍重の芝状態。デビューしたての若駒たちはどう挑むのか!?』

実況の後、出走ウマ娘たちが続々とターフに姿を見せるその中に、シュガーライドの姿もあった。
(あ……たしかに、いつもの芝とは違います……)
ゲートへ向かう際、一歩一歩芝を踏みしめ、感触を確かめるシュガー。
普段とは違うその地面に心身を慣らすように、じっくりと歩く。
今回も1番人気として推され、本人もやる気は十分だ。
『各ウマ娘、次々とゲートイン。1番人気シュガーライドは外枠8番……』
ほぼ大外となる8番ゲートに収まることになったシュガー。
この重バ場の中、大外ではロスが大きいという見解もある。
それを期待の新星がどう攻略するかがこのレースの話題となっていた。
(お客さんたちの……ねっき?もあって、寒いっていうのはあまり感じないです……少し暑いくらいかも?)
ゲートの中で構えながら、シュガーは会場の熱気を肌で感じていた。それは札幌の寒さを吹き飛ばすレベルで、観客から送られているものである。
GIIIでこの熱量なのだから、GIともなればどれほどなのだろうと胸を高鳴らせている間に、出走ウマ娘が全員ゲート入りをした。
『さあ、各ウマ娘ゲートに入り体制完了。今……スタートしました!』
レース展開>>200
200 : トレーナーちゃん   2024/08/25 10:15:33 ID:MgrNa1BaLk
スタート直後、稍重のバ場で転倒する者も居たが特に大きな混乱もなく第1コーナーへ
そのまま第2コーナーも特に変化なくクリアし向正面へ。この時点でシュガーは前から3番目
第3コーナーを抜け、最終コーナーを超えて最後の直線に入ったところで仕掛けるシュガー
驚異の差しとまではいかないが2番手、先頭をあっさり抜き去り後続と2バ身差でシュガー1着
201 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/25 12:49:57 ID:uo1xRLbbhA
ゲートが開く。
曇り空の札幌レース場に、10人のウマ娘が一斉に飛び出していく。
『誰が行くのか……おっと7番が転倒!後方に位置取る形となってしまいました』
稍重なバ場に脚を取られてしまい、1人が軽く転倒。前に行こうとしていたが、後方集団に入ることになった。
(あ、危なかったです!)
シュガーライドは後方から外目3番手の位置。転倒したウマ娘を回避するのに、少し前の方に位置取った流れだ。
(でも、マイルってペースが速いんですよね?それならここの方が上がって行きやすそうですっ!)
2000mの中距離よりも距離が短い1800mのマイルレースは、全体的にウマ娘たちのペースが上がる。なので前を狙いやすい位置にいるこの状況は、シュガーにとって有利と思えた。
『各ウマ娘、平坦さが特徴の直線を駆けて、1コーナーにかかります。先頭は現在4番。逃げています。それを追うように2番。最内1番は現在4番手、虎視眈々と前を狙っているのか』
半径の大きな二つのコーナーを抜けて、ウマ娘たちは向正面へ。
1000m通過タイムは62秒8とややスロー。3コーナーへかかる頃には後続のウマ娘たちのペースも上がっていく。
『3コーナー、そして4コーナーへ。各ウマ娘、ペースが上がっていきます。1番人気シュガーライドは現在3番手。さあどこで仕掛けるのか!』
マイルのペースの速さに押されたシュガーは、前から3番目の位置まで来ていた。
(すっ、少し速すぎたかも……いや、いけます!)
長い距離への適性はあるものの、短めでペースが速くなりがちなマイルレースには少し身体が慣れないシュガー。しかし、彼女の瞳に曇りはない。稍重な芝であっても他のウマ娘に後れをとっておらず、いつでも加速していける状況だ。
202 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/25 12:56:22 ID:uo1xRLbbhA
『さあ4コーナーを回って、最終直線に入った!先頭は変わって1番!最内から切り込むように前へ進出!』
観客の大歓声を浴びる最終直線。ロスの少ない最内を走っていた1番のウマ娘が先頭に立つ。
(わたしもっ、行っちゃいますっ!!)
「はぁぁぁぁぁっ!!」
ここでシュガーライドもラストスパートをかけに行く。
まず前のウマ娘を抜き、そして1番のウマ娘へ迫る。
『外からシュガーライドっ!並んだ!並んだ!残り100m!シュガーライドあっさりと突き放し、2バ身差でゴールインッ!』
並びかけると同時にさらにギアを上げ、あっという間に追い抜く。そしてその勢いのまま突き放していき、シュガーが先頭でゴールしたのだった。
「はぁっ、はぁっ……やったー!!」
両手を挙げて喜ぶシュガーライド。歓声が彼女を包む。
(少し苦しい場面もあったかしら?でも、あの娘はやりきった……)
無敗の2勝目。声に出さずとも内心で大喜びするトレーナー。
そして、新たな目標を決めたことを、シュガーは控え室で伝えられた。
「シュガー。次は……GIよ。12月の中山レース場で、ホープフルステークスに出るのよ」
「つ、ついにですかっ!やった!GIっ!GIっ!」
トレーナーからGI出走の話を聞いて、レース疲れもないように小躍りで喜ぶシュガーライド。次勝てば、彼女の夢の一つが果たされる。

今後の展開>>203>>206
203 : お前   2024/08/25 13:07:34 ID:w2LRFdRZvM
ホープフルステークスはシュガーが初めて挑むG1だ。
というわけで先達に意見を聞こうと思いたち、ホープフルステークスを勝ったメジロブライト、ナリタタイシン、アグネスタキオン、アドマイヤベガ(何れか1人でも大丈夫です)に話を聞きに行くことにした
204 : 相棒   2024/08/25 18:32:03 ID:MgrNa1BaLk
1着だと賞金が7000万円も貰えるんですか!?
205 : お姉ちゃん   2024/08/25 20:13:29 ID:n/CF2o/1Xs
スパートはウマ娘それぞれ、いつでもよいのです〜
わたくしは自分だけのタイミングを
トレーナーさまに教えて頂きましたわ〜。
206 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/27 05:15:59 ID:lGbejPbPog
あげ安価下
207 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/27 10:25:06 ID:lGbejPbPog
過疎ってしまうのは仕方ないから書きますか...
208 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/27 13:25:24 ID:lGbejPbPog
札幌ジュニアステークスでの勝利から数日後。少し涼しくなってきた9月の初め。
シュガーライドは、初のGI・ホープフルステークスに向けて、
ホープフルステークスの出走・勝利経験のあるメジロブライトに話を聞くことにした。

トレーニングを終えてすぐ、ブライトの分も水を持ってきたシュガーは、すぐさま彼女にそれを手渡すと話の時間を作ってもらえるようお願いする。
ブライトは快く応え、水分を摂りつつ木陰での雑談に入った。
「アドバイス、でございますか~?」
「はいっ!今度、わたしも出るんです、ホープフルステークスに!」
「なるほど~」
初めてのGIに目を輝かせるシュガーに、ブライトは少し言葉を考える。
(何を言えば~……よいのでしょうか?)
共に併走をする中で、目の前の少女は凄いスピードで成長を遂げている……いつかは自分も追い抜かされるかもしれない、と思うほどに。
そんな少女に、自分がかけてやれる言葉は何だろうかと。
考えるブライトだが、一向に浮かばない。
(……そうですわ!“わたくし”ではなく……)
その時だった。ふと脳裏に浮かぶのは、自身がトレーナーから言われた言葉。
今のシュガーに伝えるなら、それが最もふさわしいとブライトは思った。
「あなたも~……私と同じく、追込みのウマ娘ですわよね~」
「は、はい」
「でしたら~……追込みというものは、レースのギリギリまで後ろにいて、最後の最後に速さを爆発させるようなもの……ですが、そのタイミングはウマ娘それぞれ。あなたも私も、それぞれですのよ~」
209 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/27 14:03:02 ID:lGbejPbPog
追込みのスタイルは、
どこで仕掛けるかでほぼすべてが決まると言っても過言ではない。
だが、レースに正解はない。様々な条件に左右されるからだ。
「GI……たくさんの”勝ちたい”が集まってきますの~。それはもう、押しつぶされそうなくらいに……」
「そ、そんなにですか?」
ブライトは、思い出していた。
初めてGIを走ったあの頃を。
周りのウマ娘から感じる、”勝ちたい”という気持ち。
それは集まりすぎて、圧を感じるレベルにまで膨らむ。
そんな中で自分を保って走るのは、とても難しいものである。
「”勝ちたい”にも人それぞれ。だからこそ、自分は自分のペースで、いいんですのよ~」
「自分の、ペース……」
210 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/27 14:17:08 ID:lGbejPbPog
シュガーは実は、少し迷っていた。今の走り方でいいのか、GIで通用するのか。
ペース配分、仕掛けるタイミング……さまざまな部分に迷いを感じていた。
(なんか……掴めた気がします、正解かどうかはわからないですが!)
だが、同じ追込みのスタイルで、なおかつ大先輩のメジロブライトからアドバイスをもらえたことで、シュガーは背中を後押しされたような気持ちになる。
「わたしは……わたしの走りを……」
「ですわ~。あなたにはあなただけの走りが、きっと出来るようになりますわ~」
自分だけの走り……それは、まだちゃんと見えていないけれど、ずっと続けていれば見つけられる気がした。
「ありがとうございますっ、ブライトさん!」
「いえいえ~。また走りましょうね~」
こうして、ブライトと別れたシュガーは、先ほどよりも自信に満ちた表情でトレーニングに励むのだった。

「______ブライト、さっきの娘は?」
「あら~、トレーナーさん。ふふ、将来のライバルですわ~」
声をかけてきた自身のトレーナーに、ブライトは楽しそうな表情で返すのだった……。
211 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/27 14:17:49 ID:lGbejPbPog
お金の話は解釈が難しいのでいったん保留で。
>>212
212 : お姉ちゃん   2024/08/27 14:24:04 ID:cNLt3EFnRU
今日は学園もトレーニングもお休みの日。せっかくだからどこかへお出かけしようかな?
213 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/27 14:54:48 ID:lGbejPbPog
それからしばらく経ったある日のこと。
「お休みだぁ~!!」
寮の、他には誰もいない一室に、シュガーライドの元気な声が響く。
ここ最近は練習はトレーニング続きだったため、今日は休日となったのだ。
(先輩たちは遠征とかでいないですし、今はわたしひとり……)
スペもスズカも、それぞれの用事で東京を離れている。
なので、今はシュガーのみだ。
「おやすみで……わたしひとり……暇ですぅ~!!」
残念なことに、ニシノフラワーやスイープトウショウといった同年代のウマ娘たちは、休みではない。
話し相手も遊び相手もいないとなると、子供としての本能が叫ぶのだ「たいくつだ~!」と。
(……こうなったら、お出かけしましょう!なんかお買い物とか!)
思い立ったシュガーは、さっそく外に出る準備をし始めた。
クローゼットから私服を取り出し、着替える。

私服のデザイン>>214
214 : お前   2024/08/27 14:58:03 ID:cNLt3EFnRU
薄いピンクのKawaii系ワンピース
215 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/27 15:24:13 ID:lGbejPbPog
「学園に着てからは、あんまりお出かけすることがないので……久しぶりですねこれ着るの」
前の小学校のときから着ている、薄いピンク色のふわふわ系ワンピースだ。
実は長袖スタイルもあるので、オールシーズン着れる優れものである。
その後は髪を整えたり歯を磨いたりして、準備完了だ。
「よしっ。……なんですけど、どこに行こうかな?」
学園周辺の地理は外回りで大方知り尽くしたつもりではあったが、お出かけスポットまでは把握していなかったシュガー。
着替えたはいいが、どこに行くかを悩み始めた。

場所>>216
216 : お前   2024/08/27 15:32:00 ID:cNLt3EFnRU
住宅街の古民家カフェ(紅茶とタルトが美味しいと生徒の間で評判)
217 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/27 15:45:00 ID:lGbejPbPog
昨日にでも同室の二人に聞いておけばよかったと思うシュガーだったが、
ふと思い出す。
(わ、わたしには……これがあるっ!)
どや顔で取り出したのは、自分のスマホであった。
「そうです、こういうときには検索してみましょう。えっと、トレセン学園周辺のお出かけスポット……」
検索エンジンを使い、出かけて楽しそうな場所を調べてみることにした。すると、
「ふむむ、紅茶とタルトのおいしい古民家カフェですか……」
住宅街にあって学園生徒たちからの評判も良いという、古民家カフェが気になったシュガー。値段は結構お手頃で、シュガーの今の財政状況でも大丈夫そうではあった。
「こういう所、一度ひとりで行ってみたかったんですよね……よし、ここにしましょうっ!」
目的地を決めたシュガーは、外へと飛び出していくのだった……。

>>218>>220
218 : トレピッピ   2024/08/27 17:04:38 ID:cNLt3EFnRU
(トレセン学園前のバス停から)3つ先のバス停で降りて徒歩約5分みたいですね・・・
バス運賃は180円(ウマ娘割引)で、古民家カフェの目印は「赤い屋根」・・・よし!

待つ事約10分、トレセン学園前バス停にやって来たバスに意気揚々と乗り込むシュガーであった。
219 : トレーナー   2024/08/28 00:00:03 ID:02yNAR8CZA
無事バスを降りたシュガー。
古民家カフェの前には行列が出来ていたが殆どがグループ客だったので、名前を書いて少し待つと店員さんにすぐ1人席に案内してもらえた。
オススメは九州のブランド苺「あまおう」をたっぷり使ったタルトと、店主自らインドまで茶葉を買い付けに行くダージリンティーのセット。
注文して少々待つと、運ばれてきたタルトは美しい芸術品のように白皿に盛られ、紅茶はノリタケのカップ。これで800円とは驚きの安さだ。

肝心の味はというと、タルトも紅茶もどちらもとても美味しくのんびり優雅な一日となった。
220 : あなた   2024/08/28 01:14:13 ID:IbLcncqnnc
そして学園に戻ると未知のスイーツ臭を漂わせるシュガーに目敏く反応したマックイーンにどこのどんなスイーツなのかを滅茶苦茶問い詰められ、呆れたゴルシにダイナミック頭陀袋運送されるという怒涛の展開に戸惑うのであった…
221 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/28 03:41:42 ID:mDI42uMagA
目的地までは、学園の近くにあるバス停からの公共バスで移動する。
バスが来るまでは約10分。
(この待ち時間も、お出かけのだいごみ……ですね)
シュガーライドはとりあえずベンチに腰を下ろし、時間を潰すためにスマホを操作する。

(バスの進路、もーいっかい確認しときましょうか)
時刻表アプリを開き、自身が降りるべきバス停を再確認するシュガー。
アプリによれば、ここから3つ先のバス停が目的地に一番近い。

運賃はウマ娘価格で180円……だが、シュガーライドは実年齢の影響で子供割も適用され、なんと片道90円だ。あと数年で使えなくなるのが勿体ないので、積極的に使っていきたいと思っている。

「えっと、バス停を降りたら約5分歩いて……赤い屋根が目印の古民家カフェですか、よし」
降りてからの進路も確認するなどして、有効に時間を潰すシュガー。
そしてあっという間に10分が過ぎ、やってきたバスに意気揚々と乗り込むのだった。
222 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/28 04:35:18 ID:mDI42uMagA
信号待ちもあまりなく、バスに揺られること5分……。
シュガーは目的のバス停に到着した。住宅の並ぶ密集地だ。
「よしっ、ここから歩いて5分でしたよね。……待って?」
歩き出そうとしたとき、シュガーはあることに気付く。
(走れば数十秒でいけちゃうのでは!?)
さいわい、ここにはウマ娘専用レーンがあり、町中でも安心して猛スピードで走ることが出来るのだ。
「それじゃ、さっそく行きますか!」
目的地の古民家カフェに向かって、シュガーは勢いよく走り出すのだった。
その目論見通り、数十秒後……。
「ふぅ……ついたーっ!!」
赤い屋根の建物には、少ないが行列が出来ている。
古民家カフェにたどり着いたシュガーは、名簿に名前を書いて待つことにした。

>>223(店の外観、内観の説明)
223 : お姉さま   2024/08/28 05:09:46 ID:02yNAR8CZA
外観はキレイにリノベされているが、内装は元々の古民家(和風)を最大限生かした作り(床は畳なので靴は脱いで下駄箱へ)
224 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/28 06:51:39 ID:mDI42uMagA
待ち時間が少しあるようなので、とりあえずお店の外観を観察してみるシュガー。
(ふむふむ……古いお家と書いて古民家ですが、建物はすっごくきれいですね)
昔からある和風の建物ではあるが、屋根や壁は綺麗に塗り直されていて、古いという言葉を感じさせないものであった。
お客さんは障子のようなドアを開いて入っていくが、軋むような音も一切せず、スムーズに開くらしい。ここも手入れが行き届いていると、シュガーは内心で驚く。
(中も……気になりますね!)
早く自分の番にならないだろうかと、うずうずするシュガー。
そしてしばらくすると、シュガーが先頭になった。
「いらっしゃいませ。1名様ですね。こちらの席にどうぞ」
「わくわく……」
女性の店員に案内されながら、シュガーはお店の内部を観察する。
まず中に入ると、靴を脱ぐ必要があった。
良いお客さんが多いのか、みんな丁寧に下駄箱へと収納しているようだった。
(おお……なんだか、おばあちゃんのお家みたいです)
通路を歩きながら、去年の長期休みに帰省した祖母の家を思い出すシュガー。
いくつか設けられた広間はみな畳部屋で、木目調の机と椅子が数台設置されている。
掛け軸のようなものもあり、和室といえば!という感じであった。
シュガーの案内された部屋も同じような感じであり、数名のお客さんが食事をしている。
「メニューをお決めになりましたら……」
「あ、もう決めてます!タルトと紅茶のセットで、800円のやつです!」
「かしこまりました」
席に座ったシュガーはさっそく、ネットで見たメニューを注文した。
後はまた、待つのみだ。
225 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/29 03:16:37 ID:xvjtdNSF4s
待つこと10分ほど。メニューが到着した。
「こ、これは……!!」
テーブルに並ぶそれに、思わず声を出して驚いてしまうシュガー。
大きくて赤く丸いイチゴが、薄切り状にこれでもかと飾られたタルトは、食べる前から心まで甘酸っぱくなりそうである。
そして普段はあまり飲まない紅茶だが……少し香りを吸ってみるだけで、
とても温かくなる……というのが彼女の今の心境だ。
店員曰く、店長がインドまで買い付けに行くダージリンティーだという。
「さ、さっそく……いただきます」
手を合わせ、次にフォークを持ってタルトから一切れを出し、口内へと運ぶ。
(……!!)
噛んだ瞬間、口から脳に途轍もない衝撃<インパクト>が走るのを、シュガーは感じた。
1口、2口と噛むたびに、タルトから来る濃厚なうまみが食欲を刺激する。
外側のクッキー生地も、中のクリーム生地とイチゴも全てが美味い。
(止まりません……いくらでもいけちゃいそう!)
しかしよく噛むことは徹底しているので、少し時間をかけてタルトをしっかりと堪能し終わった。そして、シュガーは紅茶にも手を付けてみることにした。
「紅茶……砂糖もらうの、わすれてました……」
気付くのが少し遅かった。今更店員を呼ぶのも気が引けるので、とりあえず飲んでみる……すると。
「ごくっ、……あ、おいしい……」
すっきりとした味わいとほのかな渋みは、紅茶初心者であるシュガーにも飲みやすいブレンドを施された結果である。
(なんか……良いですね、こういうの)
紅茶をしっかり楽しめたことで、大人の階段を登った気がして、シュガーは少しうれしくなるのだった。
226 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/29 07:54:53 ID:xvjtdNSF4s
(ほわぁ……おいしかったです……)
美味しいスイーツを堪能し、ふわふわとした気持ちで徒歩で帰っているシュガー。
一人で外食するのも初めての経験だったので、とても嬉しそうな表情を浮かべている。
(次は、トレーナーさんもいっしょに行きましょうか……)
ここまで美味しかったものは、他人とも共有したい。ということで次来るときは、自身のトレーナーと一緒に来ることを誓うシュガーライド。できればGIを勝った後で。
しばらく歩いてとりあえず学園に寄ってみると……。
「パフェ、パフェですわっ!」
「チキンっ!チキンしかありえねーだろッ!」
(んんんんん??)
取っ組み合っている二人の芦毛ウマ娘を目撃する。
なんと、メジロマックイーンとゴールドシップであった。
227 : ◆wuHHR64l1og   2024/08/29 07:55:09 ID:xvjtdNSF4s

「なんなんですかお二人とも!!なにをあらそってるんですかー!?」
______慌ててシュガーが仲裁に入ると、二人は落ち着きを取り戻すのだった。
学園内に待避し、噴水広場のベンチに腰掛ける3人。
「今さっきまでトレーニングしてたんだけどよ、その後に何を食べるかでこうなってたんだ」
「トレーニングの後にチキンなんて……胃がもたれますわよ」
「スイーツも大概だと思うぞ??」
(はわわわ……)
険悪なムードに内心で焦るシュガー。
そのときだった。
「くんくん……シュガーライドさん。あなた、先ほどまでスイーツを食べていたのでは?」
「えっ」
まさか、とシュガーは驚く。
少し自分の匂いを嗅いだだけで、それを見切ってしまったマックイーンに。
「えっと……バスでちょっと行ったところの古民家カフェでタルトと紅茶を」
「タルトですって!?シュガーさん、そのお店のことを詳しく!できたら今から私と2食目を______んんーっ!?」
「わかったから!アタシがいくけど落ち着けって」
さらに問い詰めてきたマックイーンを頭陀袋に放り込んだゴールドシップは、シュガーから詳しい場所を聞くと、そのままマックイーンを連れて行ってしまった。
(な、なんだったんだろう……)
瞬間的な風を吹かせて去って行く、台風のような存在だと二人に感じたシュガー。
こうして、シュガーの休日は過ぎていくのだった。

>>228
228 : アネゴ   2024/08/29 09:02:06 ID:chJMStQpXQ
今日は早朝から並走トレーニング。
相手は足の速いスプリンターの方だって聞いたけど、一体誰だろう?
229 : トレぴ   2024/08/31 12:10:05 ID:cbfGFXpcvM
ハチャウマ来なくて今は落ち着いて更新が難しいです……
230 : ◆wuHHR64l1og   2024/09/01 08:49:44 ID:IWpMSoVfgE
ハチャウマの配達が確定したので更新再開。



「ふわぁ……まだねむいれす……」
10月の初め。今日は早朝からのトレーニングだ。
前日のトレーナーからの話では、今週のGI・スプリンターズステークスに出走するウマ娘が併走相手になってくれるという話だが……。
(どんなひとなのでしょうか?)
これまでも個性豊かな先輩たちを見てきたシュガー。しかしまだ、新たな出会いへの好奇心が消えることはないようだ。
そして、待つこと10分。

「______あら、小さな後輩さんですの?」
現れたのは、左耳につけた宝石の髪飾りが特徴的なウマ娘……ムーントラックであった。
彼女はシニア級で活躍するスプリンター。
クラシック時代にスプリンターズステークスを制してから、数々のレースで優秀な成績を残している一人だ。
「シュガーライドっていいます!えっと……」
「ムーントラックですわ。気軽にムーンとでもお呼びくださいませ」
(ま、また……おじょうさま!?)
ムーンと自己紹介を交わしたシュガーは、またもお嬢様ウマ娘と知り合ったことに驚く。
正確にはまだムーントラックがお嬢様だということはわからないが、すごく高そうな耳飾りとお嬢様口調が根拠となっている。
231 : ◆wuHHR64l1og   2024/09/01 08:50:58 ID:IWpMSoVfgE
二人は準備運動を終えると、さっそく芝コースのスタート地点に立つ。
「今日は併走をしながら、あなたのピッチ走法のフォーム矯正をするように、トレーナー様から任されていますの」
「ピッチ走法の?」
ムーン曰く、シュガーのラストスパートを決める技、ストライド+ピッチの強力な走りは、基本のピッチ走法を磨くことでより洗練されたものになるはずだという。
それで、ピッチ走法で短距離専門のムーントラックが呼ばれたのだ。
「______ピッチ走法といえば、マーチャンもいますよ」
「わぁ!?」
走り出そうとしたとき、横からひょいっと姿を現したウマ娘……こちらも左耳、小さな王冠の飾りが特徴のアストンマーチャンである。
「あなたも呼ばれていたんですの?」
「いえいえ。昨日、お二人が話されているのを聞いて、勝手ながらシークレットゲストとして参戦してみました。どや」
アストンマーチャンも、スプリンターズステークスと高松宮記念での勝利経験がある、優秀なスプリンターウマ娘だ。
……つまり、ムーントラックとアストンマーチャンはライバル同士。
(わわ……見えます、見えますよ。なんか、火花!)
シュガーは、二人の間に小さな火花がばちばちしているのが見えた気がした。
結局のところ併走は、3人で行うこととなった。
展開>>232
232 : 貴方   2024/09/01 09:55:24 ID:l62nHCY3Og
スタートは、ほぼ横並び。
1コーナーから2コーナーにかけて3人共一歩も譲らぬ展開。
バックストレートでも譲らず3コーナーに入ってシュガーがそろそろ仕掛けようか?という時に急に足を気にし出したムーン。
ムーンはそのままスローダウンしてずるずるとシュガー、マーチャンとの差が開いていく。
4コーナーを過ぎたらシュガーとマーチャンの一騎打ち状態に。この状況で強いのがシュガー。
得意の走法で逃げ切りたいがマーチャンも負けじと追いすがる。
結果はシュガーの1馬バ身差での勝利だったが、ムーンの失速の原因は蹄鉄が外れてしまった為であった。
シュガーにとっては何とも言えないモヤモヤ感が残るレースとなってしまった。
(2人に並走したお礼を言いたかったが、マーチャンはいつの間にかその場から居なくなっていた)
233 : ◆wuHHR64l1og   2024/09/03 07:38:05 ID:3uIMoreMhQ
シュガーも走りやすい1600mでの併走となり、早速開始することとなる。
よーいドンで、3人同時にスタート。マーチャンが先頭に立ち、シュガーとムーンが後続に控えた形だ。
(これが、GIを走るスプリンターの速さ……!)
ほぼ隣り合わせとはいえ、その位置をキープするためにはムーンのペースについて行く必要がある。シュガーは先輩ウマ娘の速さに必死に追いつきながらも、内心驚いていた。
(今日はわたくしが先輩……しっかり指導して差し上げますわ!)
シュガーを横目に見ながら、ムーンは自分のペースを慎重にコントロールする。
前を走るマーチャンに追いつきすぎず、さらにはシュガーも突き放さないベストなペースで。シュガーのトレーナー曰く、こうすることでシュガーに自然と”走るフォーム”を丁寧に身につけさせることができるという。
(それにしても……小柄な体とは思えないストライド走法ですわね)
ムーンもよく分かっている。一般的に小柄で大成したウマ娘は、小幅で跳ねるようなピッチ走法をする者が多い。しかしシュガーは、やや大きく足を開くストライド走法。
本人に自覚があるかは分からないが、おそらく股関節周りの柔軟性も非常に高いはずだ。
(おやおや。二人とも、いい空気感ですね)
先頭で逃げながら、アストンマーチャンは時折ちらりと後ろを見る。
火花散らす二人のウマ娘を、後方腕組みで見守るような気分で想うマーチャン。
自分もあの中に入ってみたいが、逃げウマ娘としてその役割は全うしなければならない。
(私にできることは……前を走って譲らないこと!)
マーチャンも得意のピッチ走法で駆けながら、1コーナーと2コーナーを通過していくのだった。
234 : ◆wuHHR64l1og   2024/09/04 18:36:06 ID:IG18.80QiY
どちらも譲らぬままバックストレートを抜け、3コーナーにかかる。
(自分には自分のタイミング……ならっ、ここで!!)
先頭のマーチャンと距離が4、5バ身開いていることを考慮し、メジロブライトから言われた話も思い出して、シュガーが動いた。
広い歩幅に急激な回転数が加わる。決めの一手のストライド+ピッチ走法で、前を走るマーチャンに迫っていく。
(ふふっ、来ましたね。ですがマーチャンも、ここからです!)
“追われている”。そう感じ取ったマーチャンの走りも、さらに強く鋭くなっていく。
彼女の場合は、小幅かつ高速回転のピッチ走法……そこに、瞬間的な爆発が発生したかのように、回転速度が急上昇する。
「だぁぁぁぁぁ!」
「はぁぁぁぁぁ!」
4コーナーを回り、早めに仕掛けた二人の一騎打ちとなった。
(くぅっ、もう少しで、追いつくのに……!)
粘るマーチャンを抜かそうとするシュガーだが、その一歩が中々届かない。
極限状態の中、考える。ここから何ができるか。
(……はっ!)
前を走るマーチャンの脚を見て、シュガーは気付く。
(すっごい回転速度です!わたしはスプリンターじゃないけど、でも、これを真似できたら……!!)
そして思い出す。今回の併走の目的を。
基本のピッチ走法を磨けば、自分の走りはもっと強く______
「もっと、もっと速く……もっと先へぇぇぇぇぇっ!!」
「なっ!?」
マーチャンが驚いたのは、雄叫びを上げたシュガーの脚がさらに伸びてきたこと。
最終直線、残り100mほどで、シュガーが迫る。迫る。そして、
かわした。
235 : ◆wuHHR64l1og   2024/09/06 20:36:29 ID:Uby7AhpjQE
うっかり扇風機を破壊してしまったので休みです……暑い
236 : ◆wuHHR64l1og   2024/09/07 13:22:10 ID:0.RVVDKV8.
「______はぁっ、はぁっ……!」
ゴール直後、ターフに倒れ込むシュガー。
彼女は一つ、壁を破った。スプリンターのマーチャンから技を盗む形で、自身のピッチ走法に新たな鍵を見つけられた。
(これは……いつか当たったら、とても強敵になりそうですね)
満足げなシュガーを見て、アストンマーチャンは新たなライバルの登場を予感し、内心で少しばかり恐怖を感じていた。
そんな2人の元に、遅れてゴールしてくる3人目が。
「……ムーントラックさん!?」
もはや歩いてきたムーンを見て、シュガーは大急ぎで駆け寄る。
ムーンは、右足を少しかばうようにしていた。
237 : ◆wuHHR64l1og   2024/09/07 13:22:30 ID:0.RVVDKV8.
何があったのかとシュガーが尋ねると、ムーンは気丈に返事をする。
「たいしたことじゃありませんわ。……落鉄、していましたの。ほら」
彼女は右足の靴裏を見せた。確かに、蹄鉄が外れかかっている。
ウマ娘にとって蹄鉄は、全力で走るために必要不可欠なものであり、それなしでレースを行おうと思えば故障のリスクは大きく高まってしまう。
「こうなってしまっていたので……朝練でケガするのは困りますから、ラストスパートあたりで私は降りさせて頂きましたわ」
シュガーが最後に仕掛けたあたりで、ムーンは競走を中止していた。
それを知ったシュガーは、うるうると瞳に涙を浮かべる。
「よ、よかったですぅー!!ケガしてなくてぇー!!」
「ちょ、大げさですわ!?泣きすぎでしてよ!!」
大泣きするシュガーをなだめるムーンを、マーチャンは遠くから傍観するような空気で眺めていた。
「……」
(落鉄……それだけでは、ないのかもしれません。マーチャンには、わかります。人がいなくなっていくタイミングが……だから、ムーントラックさんも、その”時期”が来てしまったのかもしれません……)
マーチャンは心の中で、ムーントラックに対する深読みな感情を抱く。
それが意味するものは、まだ彼女にしかわからない。

>>238
238 : ◆wuHHR64l1og   2024/09/07 20:19:16 ID:0.RVVDKV8.
安価下
239 : あなた   2024/09/07 20:30:23 ID:BvwZh6rYMo
早朝トレーニングを終えたシュガーは急いで制服に着替え、カフェテリアへ。今日は月に一度だけの「オーロラの日」らしい。

~昨晩の回想~
スペシャルウィーク「明日は『オーロラの日』で、限定メニューの『オーロラバーガー』が食べられるんですよ!」

揚げたサーモンに特製オーロラソースをかけたハンバーガーが数量限定で食べられると、急いでカフェテリアに向かったが物凄い行列!
並ぶ事数十分、ようやく順番が回って来た。「オーロラバーガー」ください!
しかし、皿の上にバーガーが2個。「?」と思っていると、『某Мのバーガーより少し小さいでしょ?だから一人前2個なのよ。』
なるほど・・・と思っていると、『只今を持ちましてオーロラバーガー完売です!』のアナウンスがあり、阿鼻叫喚しているウマ娘も居た。
席に座り、いざ食べようとすると隣の席に山盛りのサンドウィッチを抱えたウマ娘・・・スペシャルウィークさんだ。
『シュガーちゃんはオーロラ買えたんですね・・・私はダメでした・・・それでサンドウィッチをドカ食いして気を紛らわせ・・・』
・・・良かったら、1個食べます?2個あるので。
『良いの!?それじゃあこの中から代わりに好きなサンドウィッチ1パックあげる!』
じゃあ・・・ハムサンド頂きます。
満面の笑みでオーロラバーガーを食べるスペシャルウィークさん。私も一口・・・うん、確かに美味しい。

◇「また買えなかった・・・」⚡「来月まで我慢しぃや」
240 : ◆wuHHR64l1og   2024/09/07 21:45:57 ID:0.RVVDKV8.
朝練を終えたシュガーライドは、普段よりも急いで制服へ着替えていた。
そして向かったのは、いつものカフェテリア……だが、今日はいつもと様子が少し違っている。
(まだっ、まだありますように……!)
更衣室を出て廊下を駆けながら、シュガーは祈るような想いでいた。
それほどまでに今日は、狙っている食品があるのだ。
昨晩のことである。
スペシャルウィークが、シュガーにその話をしたのは。
「明日は「オーロラの日」で、限定のオーロラバーガーが食べられるんです!」
「オーロラの日の、オーロラバーガーですか……」
ネーミングが直球過ぎないか?そもそもオーロラの日とは?と不思議に思うシュガーだったが、話を聞いていくうちに……ウマ娘の本能・“食欲”への刺激が止まらなくなり始めたのだ。

(______これでもかとサクサクに揚げられたサーモンのフライに、とくせいのオーロラソースをかけて、バンズをがっちゃんこ……すっごく美味しそうじゃないですか!!!!!)
シュガーはカフェテリアを目指しながら、スペから聞いていたハンバーガーの特徴を想像してさらにお腹をすかせ続けていた。
そして、カフェテリアにやってくると……。
(……!?)
その光景に、驚きのあまり声すら出なくなるシュガー。
いつものカフェテリア……などではなかった。その場所は。
まずシュガーが感じたのは、熱。とてつもない熱気。
(も、もうすぐ10月ですよ……あつすぎる……)
夏かと思うほどに上がる体感温度。クーラーを付けたくなる室内の暑さ。
その発生源を見つけるのは、とても簡単なことであった。
「ただいまこちら最後尾となっておりまーす!」
(え、列……?)
正体は……カフェテリアらしからぬ、大行列。
メロンパフェの時など比ではないほどの、大行列である。
241 : ◆wuHHR64l1og   2024/09/08 07:19:36 ID:btRilqPXFo
(これは……買えるんでしょうか!?)
とりあえず急いで並ぶシュガーだったが、1列に数十人は居る。
もう間に合わないんじゃないかと思いながらも、わずかな可能性を信じて列から離れないようにしていた。
そして、待つこと10分……。
やっと自分の番だ。シュガーは肌身離さず持っていた財布から現金を出し、オーロラバーガーを受け取った。
(買えました……あれ?)
テーブルに座って、やっと一息。ふと皿を見ると、よく知るハンバーガーより一回り小さなバーガーが二つのっている。具材はサーモンフライで、オーロラソースもかかっているが。
(サイズが小さいから二つなんでしょうか?これはこれでおトクです!)
自己解釈して、納得したシュガー。
いただきますをして、口元にオーロラバーガーひとつを運ぶ。そしてキラリと光る白い歯が、それを噛み砕こうとした瞬間……!
「買えませんでしたぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
(……ん!?)
カフェテリア内に響き渡る絶叫。
なんだかデジャブを感じるシュガー。
またマックイーンだろうか?
おそるおそる振り向くと、そこには。
「最後の1セットだったのにぃぃぃぃぃぃぃぃ!」
(す、スペシャルウィークさん……!?)
捌ていく行列の中で叫びうなだれる、日本総大将の姿があった。

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