幼馴染男の娘フジキセキとそういう関係になりたい人生だった
1 : トレぴっぴ   2024/11/07 19:06:33 ID:OINe278EAo
小学校に入る前から一緒に遊ぶ間柄だったウマ娘(生えてる)のフジ。中学高校と何をするにもいつも一緒に過ごしていた。思春期なら同姓同士でもいたずらで身体を触り合ったり抱きついたりした経験があるだろうがフジにされると、気が気でなくなる。どこかは一緒に遊びに行って人混みに巻き込まれたとき、なんの気なしに「こっちだよ!」と自分の手を握り引かれた時は静かに「きゅん」としていた。高校3年の夏、フジはスポーツ推薦で進学する大学はもう決まっていた。お互い同じ大学に進学したいと強く思っていたので、夏休み中いつもフジは勉強に付き合ってくれた。ときたま相手の家で夕食を囲む日もあった。都度、フジのお母さんも一緒の大学に通えるよう優しく声がけしてくれたので幸せな気分になった。
2 : トレピッピ   2024/11/07 19:06:42 ID:OINe278EAo
少しすぎて冬、12月24日の冬季講習を終えて家路につくと駅前は星が散りばめられたようなライトアップをカップルたちの顔がチラチラ反射させていた。(フジと一緒に見たかった…)心の中で感情に浸っていると突然後ろから冷たい両手が顔に周りひやっとし、嗅ぎ慣れた匂いが背中にもたれかかってきた。「キミが来るの楽しみに待ってたよ!これプレゼント!」フジはそういうとやさしくおもむろな手つきでマフラーを巻いてきた。ガラス張りの駅舎には、お気に入りのブランドの色違いのマフラーをフジキセキと私が映っていた。一抹の寂しさが消え失せ、こうして一緒に幸せに思える時間に感極まって思わず、口をついて出た小さい頃からの思いの丈を目の前のウマ娘に向かって述べる。フジは嫌そうなそぶり一つせずイタズラっぽく笑う。「男の子同士でそんなこと言えるなんて…頑張ったね」そういうクスクス口元に手を当て笑う。「せっかくだしこのまま”休憩”…していかないかな?」そう言われると私は嬉しさと緊張突き動かされながら「行く」と短く返事をする。今度は自分からフジの手を取り歩き始める。歩きながらフジは言った。「そういえば」、この切り出し方は毎回自分を色んな意味でドキドキさせる。「キミ、初めてだったよね?気持ち良すぎで泣いちゃってもやめてあげないからね?」私はすっかり自分の顔が赤くなっめいくのがわかった。
3 : アナタ   2024/11/07 21:54:28 ID:zBQbdAMhdE
俺には元からかっこいい子が男の娘であってほしい願望が分からないんだが何故なんだい?
4 : 使い魔   2024/11/07 22:02:24 ID:OINe278EAo
>>3
一緒の部活とか男風呂入ったりできないじゃん
5 : お姉ちゃん   2024/11/07 22:05:18 ID:DeQNabMhWk
>>3
正直、俺もわからん。ただ、>>1の文章にはなんか惹かれる
6 : トレぴっぴ   2024/11/07 22:30:53 ID:ExAoeMzB0k
ホモは文豪(至言)

たぶん修学旅行とか合宿の部屋割りで一緒に寝れるからとかじゃないか?
7 : ダンナ   2024/11/08 00:07:30 ID:kr6SI6UDQM
泣いちゃってもやめてあげないからねのところだめお腹の奥に響く
8 : 使い魔   2024/11/08 00:45:19 ID:YC4GdxfWt6
>>6
新時代の扉の合宿のシーンでポッケとフジさんが寝てる場面とかよかったね。
風呂上がりにシャツ一枚のフジさんが、キシキシ濡れた髪を拭きながら部屋に入ってきて、「今日疲れちゃったね。明日も早いから寝ちゃおっか。」って言いながら部屋の電気を消して、窓から月明かりが差し込んだときにちょっと目があい、軽いノリで自分の布団を抜け出しフジさんと一枚のタオルケットにくるまる。そうした何気ない男子のノリを重ねるうちに自分はフジキセキのことが好きなんだって気づきたい。
9 : お前   2024/11/08 15:37:46 ID:sRdImvRovI
幼馴染のフジキセキのふにゃっとした笑顔でしか得られない栄養素がある

10 : アネゴ   2024/11/08 21:24:02 ID:W56azCma3o
高校3年の2月。志望校の合格発表の当日、朝から家を出て近所のカフェに入り奥の席を陣取りフジを待っていた。スマートフォンで大学の合否発表のフォームを立ち上げページを開くか開かないかを逡巡する。これで落ちたら一緒の学年として入学できない。自分の家族は浪人には反対していたので、滑り止めの大学に進学し大好きでやまないフジとのキャンパスライフを送れない…。自分の将来より両親の顔より、同性の幼馴染の顔の方が強く頭に浮かぶ。中学や半ば義務教育の高校とは違い、色んな面で自由な大学でフジと同じ時間を過ごすことは自分にとって大きな意味があった。するとLANEの通知がフジが店に着いたことを知らせた。カフェの入り口から常に飄々とした立ち振る舞いとは打って変わって心配そうなフジが胸元に手を当て歩いてきた。通路に対して横並びのソファ席の隣に腰を下ろし私の顔を覗き込む。「どうだった…?」と短く尋ねれらる。一緒に見て欲しいと告げると、フジはスマホを握る私の右手の下から手を回し私の左手を少し冷たい手で包んだ。
11 : 使い魔   2024/11/08 21:38:47 ID:W56azCma3o
左手と右半身にフジを感じながらフォームに受験番号とパスナンバーを入力する0.5秒もないであろう画面の短い読み込み時間は体がぐっと重く感じられた。映し出された結果は短いお祝いの文とともに、学部学科の合格を伝えた。すぐさま頬が勝手に強張り目玉がじわじわ熱くなるのを感じた。いつもなら大人びてるフジもあどけない笑顔で「よく頑張ったねおめでとう!」と人目を憚らず首元に抱きついてきた。私も涙を抑え抱き返す。もうどうしたらよいかわからないほどの安心と喜びに何を言ったらわからず、抱き寄せたフジに感謝の言葉を伝える。向き直り、まだ一緒に過ごせることへの喜びを述べると注文していたコーヒーが運ばれできたので手をつけながら、大学生活も楽しみだね、なんてことを話していると、フジはいつもの様子でひょんなことを言った。「せっかくだし、卒業旅行行こうよ!」
12 : アネゴ   2024/11/08 22:01:32 ID:W56azCma3o
私は二つ返事で了承した。高校の春休みもとい大学入学までの準備期間の3月に予約できる宿を探す。コーヒーと一緒に注文したケーキを二人で食べながら旅行サイトのウマバゴで調べる。食事中にスマホを触るという行為はいささか行儀が悪いだろうが、ショートケーキのスポンジをボロボロ崩す私と違って綺麗にザッハトルテを食べるフジは、スマホを触っていてても不快感を感じさせない上品さがある。「私は箱根が行きたいかな」フジの提案は高校生の出かける先としては少々渋いように感じた。どうしてまた箱根に?思いの外、返事は単純だった。年始の箱根駅伝を見ていて走者の大学生見ていたらウマ娘である自分も走りたくなった!ちょっとついて行かないかな、と私は笑う。電車で行こうね。旅行先は一人一泊6万円ほどの宿に決まった。
13 : アナタ   2024/11/08 22:39:33 ID:W56azCma3o
ダッフルコートを羽織り例のマフラーを巻いて待ち合わせの駅でフジと落ち合う。待たせちゃったかな、と微笑みを浮かべるフジはやはりお揃いのマフラーを巻いているが細身の身体にトレンチコートがよく似合い野暮ったい私とは正反対だった。熱海行きの列車の窓から冬の海を見るとどこか寂しげだった。窓に頬杖をつくフジの片手に手を伸ばし優しく握る。「ふふっ、寒くなったのかな?」目を細めて笑うフジに心が温まった。小田原駅で乗り換え15分ほどして箱根湯本についた。適当に昼食を済ませ、箱根神社にお参りした。(こんな日がいつまでも続きますように…。)来た山道を降り、あたりのスイーツを食べ歩きしながらチェックインまでの時間を潰そうと思っていると、フジはあっ、と声をあげ芦ノ湖を指差す。「あれ乗ろうよ!」船着場に向かい運行時間を見ると旅館に行くにはちょうど良い時間になりそうだった。冬の太陽はせっかちにも芦ノ湖を茜色に照らしていた。湖の真ん中らへんに差し掛かるとフジは私の手を引きデッキの船首側を連れていく。「一度やってみたかったんだ…ほらタイタニック!」そういうと後ろに立っていた私に背中と尻尾を押し付け両手を広げ倒れ掛かる。すかさず両手で脇腹のあたりを支える。目の前でウマ耳がぴこぴこ揺らぎ楽しそうにしているのがわかった。フジの脇を通しスマホのセルフィーで顔を並べ写真に残した。
14 : トレーナー君   2024/11/08 22:50:11 ID:W56azCma3o
船を降り、長い坂を登って旅館に着く。チェックインを済ませ部屋の案内をされるまでの間、二人で芦ノ湖を見ながらラウンジのドリンクを飲んでいた。「君、大人になったみたいだね」自分より大人びているフジに真面目な顔わして言われたので照れ臭くてにやけてしまう。上目遣いの優しい横目で見つめられる。中居さんが来て部屋の準備ができたと、旅館の中を案内され部屋に通される。お友達同士で旅行ですか?と聞かれたので、返事を躊躇ってしまう。ところがフジは「実は付き合ってるんです」とカミングアウトした。中居さんは少し驚きつつも優しく「仲良しさん同士で素敵ですね」とにっこり応えてくれた。
15 : 貴様   2024/11/08 22:56:26 ID:W56azCma3o
付き合ってることを公言されることに抵抗はなかったし、むしろフジの方も好意を持っていることを憚らないことは嬉しかったけどやはり気恥ずかし差を感じずにはいられなかった。大浴場はなく風呂は部屋ごとの露天風呂だったので特に急いで入ることもなく座椅子に座って静かに過ごす。浴衣に着替えて足を伸ばすフジの膝に思い切って、横になって頭を預けてみる。「夕飯前に甘えたい盛りなんて悪いポニーちゃんだね」くすくす笑う。
16 : 使い魔   2024/11/08 23:22:11 ID:W56azCma3o
「ご馳走こんなに食べれて大満足だね!」夕食会場の個室を後にし、下腹部の辺りさすりながら部屋に戻るフジ。私は浴衣の帯を緩め間隔を詰めて敷いてもらった布団に帯を放った。「さっ温泉入ろっと」休むことなく脱衣所を兼ねた洗面所に二人で入る。色白で線の細いフジの上半身は肌もきめ細かい。薄い胸元と浮き出たあばらをに劣情を覚える。「まだ早いよ」そう言ってフジは背中を向け美しい青鹿毛の尻尾で私の下腹部を撫でた。二人でお互いの身体を洗い、寒い外で体を寄せ合いながら石造りの湯船に浸かった。箱根の静かな夜空を芦ノ湖が映す景色を大好きな幼馴染と望むかけがえのない時間だった。
17 : トレ公   2024/11/09 10:14:14 ID:ElRz6Wgocc
BLは滅多に嗜まないけど、凄い熱量を感じた。普通に長編でもいいから出会いから最後まで書いて渋にでも投稿してほしい。読むから。
18 : キミ   2024/11/09 11:15:38 ID:SgGO3G92..
怪文書かと思ったら割とすごかった
19 : お姉さま   2024/11/09 16:18:59 ID:lrYVozN9HI
>>17
感想ありがとう。実はこういうの初めて書いた。もうちょっとここでお邪魔させてもらおうと思ってる。
20 : アンタ   2024/11/09 17:51:46 ID:fBT7OlhPi6
>>19
やったぜ!
21 : トレーナーさま   2024/11/10 23:37:45 ID:nawUy1z7nM
11月11日
我が家のリビングの間取りは、レース場に例えるなら客席スタンドのようなカウチと内馬場にあたるローテーブルとそのバックストレッチにあたる壁掛けテレビだ。一日を終えてカウチに座りソシャゲでも遊ぼうとしたところ、フジがやってきて「シェアハピ!」といつもの調子で指を鳴らして入ってきた。大丈夫私たちの間では死語ではない。これ見よがしに5本入りのポッキーの小袋を口の端に咥えている。「さあお決まりのやつやるよ!」フジはそう言いながら、私の右隣に腰を下ろして袋を破きクッキー部分を綺麗な指先で摘み上げた。みんな知っての通りこういう遊びが彼はこういう遊びが大好きだ。ところが、摘み上げたポッキーを持ち上げると、フジの青い瞳は右上を見上げ何か思いついたことを伺わせる。「せっかくだし、動画を撮って勝負するところウマスタにあげようか!」いかにも考えつきそうなことだったので私は鼻で笑ってしまった。私たちの関係は大部分の知人には深く知られていないのでただのお遊びとしか取られないだろうし、別に反対もしなかった。私は内馬場ローテーブルに三脚を置きフジのスマホを取り付けた。動画をセルフィーで起動し回し始める。フジが剥き出しの方のクッキー部分を加えて私はチョコの被ってる側を咥え、お互いの意気があったので双方が両端から齧り始める。二口目にしてフジが(おやっ…)とした様子ですぐ内馬場スマホを向いたので釣られて私も横目で見てしまう。案の定それは罠だった。一息に半分以上口に持っていかれ、私の唇をフジの唇が一瞬かすめるとポッキーの大部分は得意げな顔をしたフジに食べられてしまった。「あはは!私の勝ちだね!」ウマスタに上げられた動画にはカメラ目線でキメ顔のままポッキーを食べるフジと間抜けな顔して口をわずかにもごらせる私が映っていた。
22 : アナタ   2024/11/10 23:38:09 ID:nawUy1z7nM
まあ、そんなこったろうと思った。友達からのコメント欄は賑やかしに溢れていた。中にはフジに群がる女友達もたくさんいた。私はフジが男友達とポッキーゲームで遊んでる姿を思い浮かべるだけで心が穏やかでないし、相手が女だったら我慢ならずにレース場のゲートを蹴り壊したくなるに違いない。もしかしするとフジはこの反響を見せることで、私の嫉妬心を煽ってからかってるのではないかとさえ思えた。むすっとする私などどこ吹く風のフジは「こんどは2人きりでゆっくり食べようね」、そう言いながら私の背中をさすり、腕を引っ込めるとどこにもなかったはずのジャンボポッキーを引っ張り出した。(知らない人のために説明するとパーティ用のたまにしか見かけない大きな箱入りのポッキーで一本当たり20センチほどになる。)ちょっと苛立ちつつも、断る理由もないのでこのかわいい悪戯っこの誘いにのる。今度は私が封を開け、クッキー部分を咥えフジも反対側を咥える。あむ、あむ、とチョコレート部分を目掛け寄り目になりながら食べ進めると、また何か悪戯を仕込んでいるのではと相手の顔に目をやる。すると、とぼけた様子でリラックスした猫のように目を細めながら(うん?どうかしたの?)と問いかけるような顔をしてくる。そこでまた私はやられてしまい、食べ進めるペースが落ちお互いの唇が触れる頃には、普通にフジに半分以上食べられてしまった。「いっひょにたべるとおいひいね〜」と幸せそうに食べるフジが私の右肩に頭をもたれかけて来たので優しく頭を撫でると、彼はちょっとだけイタズラっぽく笑い横顔にツンとキスしてくれた。
23 : トレピッピ   2024/11/11 23:19:06 ID:bPfzGJDJj.
寮長の年相応な面もフィーチャーされててよき
24 : トレーナー君   2024/11/11 23:31:19 ID:t02qixdheU
一緒にサウナ入って薄くて筋肉質なフジの胸板舐めたい
25 : トレぴっぴ   2024/11/17 03:02:46 ID:fQ4cPYQyx6
「いらっしゃいませ、お客さま。あちらにお入りください。」
フジはコーヒーカップとプリンを載せたトレイを自分の目の高さで手のひらにのせ黒い腰下エプロンを靡かせ客席に運びながら、私が初めて訪れたバイト先で事務所の場所を目配せした。板チョコのような木目ドアを開け事務所に入ると、店主である白髪混じりで物静かそうなマスターがスケジュールをまとめた用紙から目を外し軽く挨拶してきた。「着替えを済ませたらカウンターへ来ておくれ。」私はワイシャツの上にベストを着込み生まれて初めて蝶ネクタイを結んだ。案の定、綺麗に留まらない。フジが様子を見に更衣室に来た。やっぱりね、と言いたげに私の首に手を回し襟を上げリボンを取り上げる。「貸してごらん」ぐっと顔を引き寄せられフジの額が迫る。水仕事も多いことだろうに綺麗で長い指先で私のタイを結ぶ間、フジの息遣いと香りを感じ初バイトにも関わらず緊張感を忘れる。「よしこれでバッチリ」軽く静かにサムズアップすると二人で事務所を出て客席の通路を通り、マスターのいるカウンターにはいる。腰ほどの高さのウエスタンドアは古ぼけていて力なくきゅいきゅいと、音を立てていた。「フジくんの紹介できてくれて助かったさ。君には軽い接客と洗い場をお願いするよ。」と言うマスターに続けてフジは「この子どんくさいとこあるからバシバシ言っちゃって良いよマスター」と囃しながら私の肩をポンポンと叩いている。
26 : あなた   2024/11/17 03:03:06 ID:fQ4cPYQyx6
昼の混雑する時間帯、コーヒーとサンドイッチを出すにも両手でトレイを持ちカップを揺らしソーサーにドリンクを溢れさせる私とは裏腹に、フジは片手でトレイを持ち空いてる方の手でトレイからドリンクや料理をサービスしている。その最中も客と談笑する余裕すら見せていた。空いた席の皿を下げようとしていると、「手伝うよ」とフジもやってきて皿を重ねドリンクのグラスをトレイにまとめようする私を尻目に慣れた手つきで片づけ、片手で皿とグラスをもう片方の手で除菌のスプレーを吹きかけながらダスターで汚れを拭き取ってしまった。先を歩かフジの細身のパンツと揺れる尻尾に見惚れながら洗い場にさげ、皿のパン屑やスイーツ類のクリームをさっと洗い流し食洗機に掛けた。
27 : 相棒   2024/11/17 03:03:40 ID:fQ4cPYQyx6
客足も遠のいたころ、店主は清算のため銀行に入金へ出かけ、店内には私とフジの二人きりになった。私は床を軽く箒ではき乱れた座席を綺麗に直していたところ、カウンターで濡れたカップを拭いていたフジがこっちこっちと手招きし声をかけてきた。「今のうちにサイフォンの使い方教えてあげるよ。」とても、バイト初日の人間が触っても良い代物には見えないので、目の前のアンティークな装置の値段を尋ねると、アハハっと笑いながら、「三ヶ月はタダ働きさせられちゃうかなあ」などとのたまった。指示に従ってフラスコのような丸い瓶に水を溜め、スタンドにセットしその下にアルコールランプを滑り込ませる。そうそうその感じ!フジは尻尾をパタパタさせながら楽しそうにコーヒーミルをガリガリ引いている。指示に従いながら軽量スプーンで挽いた豆をガラス容器に放り込み、下のフラスコ状の容器に斜めに差し込む。少しずつ沸騰してきたら今度は真っ直ぐ差し込み火を弱めながら、二人で顔を並べてお湯が上って豆を押しやる姿を見守る。混ぜてごらんと竹ベラを差し出されたが、加減が分からず戸惑う。フジに手を掴まれ一緒に優しく撹拌する。綺麗に混ざり合ったので、火を止めフラスコ部分に溜まったコーヒーをカップ2杯に注ぐ。「これはマスターからの奢りだって」目を細め首を傾げながら優しい笑顔のフジは一杯を私に差し出す。いただきますと言いながら一口飲む。苦味が少なく酸味の中にかすかに甘みを感じるすっきりした味わいでどことなくフジのパーソナリティを彷彿とさせる。「美味しい!」私はフジに感想を述べた。「よかった!一緒にバイトできて嬉しいよ」そう言いながらフジも口をつけた。カウンターに並びながら見る外の景色は既に陽が傾きかけていた。そっとフジが尻尾を右足に絡めてきたので頭をフジの頭にもたれ掛けフジとコーヒーの匂いを楽しんだ。
28 : お前   2024/11/26 01:39:09 ID:3KfTrVJmXY
世間が動き始める朝、少々シーズンをはずれつつ、私とフジは紅葉を見にキャンプ場へ向かっていた。
フジの運転で東京から車で三、四時間曲がりくねった山道を助手席で揺られながらの道のりだった。途中、昼食を摂りに寄った道の駅では、どこにでもありそうなご当地のお菓子が売られていたので、音楽の流れるコーヒーの自販機の前でルンバを聴きながら佇むフジに持って行った。自販機が私の分のルンバも流し終えると駐車場に戻り、今度は私がハンドルを握った。助手席のフジが時折、わざとらしくアンニュイな目つきでこちらをじっと見つめるので横目でチラりと見ると「脇見厳禁」と言って笑う。秋の暮れ始めたキャンプ場は湖のほとりにあり、今年の猛暑もあってところどころ傷んで葉が紅葉せずに散ってしまった木もあり一面の紅色とはいかなかったが、カエデやイチョウ以外にもツツジやカラマツなどそれはそれで鮮やかな色彩を放っていた。車から降りたフジはふぁさふぁさと舞わせながらストレッチをしていた。コートの身頃が持ち上がり、中のセーターがシルエットを浮かび上がらせる。私はトランクを開け予約したログハウスのコテージで荷解きを始めた。一日分の着替えや上着をクローゼット、夕飯の食材をクーラーボックスから備え付けの冷蔵庫に移した。外に出てフジの様子を見に行く。彼は自転車用の空気入れをせっせっと動かし、左に汗をかきインフレータブルのカヤックを組み立てていた。これがいちばんのメインイベントだ。二人で湖上を散策し湖面から色鮮やかな山や木々を見ようというのである。
29 : お姉ちゃん   2024/11/26 01:40:32 ID:3KfTrVJmXY
ボートの前後に座席をベルトで固定し舟は出来上がった。漕ぎ慣れているフジが後ろに座り私は前の景色を楽しんでほしいとことだった。コテージそばの砂地から出艇した。湖面の真ん中は遠くの山を逆さに映している。ボートは早歩きほどの速度で、風で起きる湖面の波に底をパタパタ打ち付けながら進んでいく。岩肌の上に立つカエデの木に舟を近づけ、みなもに漂うたくさんの紅葉を割りながら受ける風は穏やかだった。枝の葉を少し手に取ろうと片腕をあげ半身をひねってみる。するとフジは慌てた声で、「あ、そんなことしたら…!」ズルッと座席を固定したベルトが外れ舟が傾き、後ろのフジの足に倒れ込む。すかさずフジが反対に身体を逸らし事なきを得た。「こんなところで沈したら大変だよ〜」と困ったフジが言う。流石に申し訳なくなり素直に謝る。気を悪くする事なくフジは続けて「もうちょっと下がっておいで。」私はそう言うフジの両足の間に滑り込み、身体をフジに預けた。自分の持っていたパドルをホルダーにセットし一つのパドルをフジと一緒に握る。他に誰もいない静かで広い湖。二人息を合わせて水の上を漂った。出発したコテージはずっと遠くに見える。高揚とは裏腹にこのまま二人切りの場所へ行ってしまいたくなるほどの切なさを感じた。
30 : アナタ   2024/11/26 01:41:11 ID:3KfTrVJmXY
陽が傾き始めたので進路を出発地点に向けた。どんよりしたねずみ色の雲が空を覆った。上陸する直前、変わりやすい山の天気は激しく私達の体を濡らし、カヤックを逆さにし傘がわりにコテージへ駆け込んだ。急いで暖炉に薪をくべ、服を脱ぎ風呂を沸かした。待っている間、温かいココアを淹れ二人で一枚の大きなブランケットの両端を掴みくるまる。中でフジの濡れた尻尾が私の腰に絡みつき冷やっとしつつも彼の温もりを感じた。やがて風呂が溜まると今日の出来事を笑いながら体を流し湯船に浸かる。「見ててごらん」そう言うと、浴槽に向かえ合わせに浸かっているフジは湯船に紅葉を散りばめた。「さっき拾ってきたんだ。」紅葉風呂は秋のいい香りがした。寒い外とちがってより暖かな印象を持たせられる。
31 : モルモット君   2024/11/26 01:41:36 ID:3KfTrVJmXY
風呂を上がり夕飯は二人でシチューを作って食べた。「そういえば…なんかこんなネットミームを見た覚えがあるな。私達みたいだね!」某大リーガーのイメージを損なわないかな。私は悪戯っぽくも幸せそうに言うフジに深い慈しみを感じた。その後はゆったり、暖炉の前のラグでお茶を楽しんだり絵本を読んで過ごした。夜も更けて洗面所の鏡で並んで歯を磨きロフトに上がり床につくと、空はすっかり晴れていて天窓から満月の優しい明かりが差し込んでいた。
月明かりに照らされながら眠るフジの顔を静かに見つめていると、ホーホー、とフクロウの声がした。上体を起こしどの方角にいるのか耳を澄ます。結局、それ以降鳴き声は聞こえなかった。うとうとしつつも目を覚ましたフジは、「こういうとこって殺人事件とかホラーとかありそうだよね」と呟く。例えばどんな?私は尋ねた。「ジェイソンとか狼男とか」眠そうに微笑を浮かべながらフジは続けた。そうなったら私が守るよ。フジの頭を撫でながら静かに伝えた。「どうやって守ってくれるの?」ふーん、と言いたげなフジに自信満々に告げる。「拳で。」私がそう言うとくすくす笑いながら「かっこいい頼もしいね」と返してくれた。フジの頭を撫でながら横になると、フジは私の首の後ろに両手を回し互いの額をくっつけまた寝息を立て始めた。

翌朝、朝靄のかかった美しい紅葉と湖を見ながらコーヒーと朝食を摂りコテージを後にした。
32 : トレーナーさま   2024/11/27 23:36:34 ID:a0P9NeOPdE
良SS保守
33 : 相棒   2024/12/03 17:31:49 ID:dowtB60eMM
マルチツールナイフ
中学生の頃の話になる。円安が進んでいない当時は三千円ほとだったろうか。私は男子中学生の大部分が気にいるであろうヴィクトリノックス製のナイフの小さなノコギリやドライバー、栓抜きや缶切りのついたキャンパーナイフを親に黙ってumazonで購入した。嬉しくてたまらなかった私は真っ先にフジの家を訪ね自慢した。「かっこいいね!そういうの好きだもんね」とにっこり微笑みつつも目は少し呆れたような素振りを隠せていなかった。さっそく私が持ち込んだリンゴや缶詰、要らなくなった目覚まし時計を使ってナイフの機能を満喫して楽しんでいた。途中、不器用な私を見かねて、貸してごらんと代わりにりんごの皮を剥いて綺麗に六等分にしてくれた。フジが剥いてくれた藤りんごは美味しかった。
34 : トレピッピ   2024/12/03 17:32:22 ID:dowtB60eMM
一通り遊び終えた気になると、まだ余していた機能に気がついた。小枝やロープを切るためのノコギリをつかっていない。庭に落ちている小枝を拾い集めビニール紐でくくろうとフジが提案した。小枝を集めいざ、切ろうとノコギリを引き出そうとするも上手く指先を引っ掛けられない。手間取っていると半端に指を引っ掛けこれまた半端に持ち上がったノコギリは可動域の中程で元に戻ろうと私の手の甲を巻き込みながら、勢いよくバチン!と閉じた。うわぁっ!と上擦った声をあげ私の手は血を吹き出した。フジは青ざめつつも「やると思った」と言わんばかりの目つきで私に心配の言葉をかけると、家に入り救急箱を取りに行った。足元に置いていたビニール紐は私の血によってまだら模様の紐になった。「やっぱりキミは私の予想を裏切らないんだね」と軽く叱責しつつも手の甲にとてもよく沁みる消毒液を掛けガーゼを当てながら、白く綺麗な手で器用に包帯を巻いてくれた。救急箱の緑色の十字架とビクトリノックスのスイスの国章が重なって見える。傷の痛みとフジに包帯を巻いてもらった余韻に浸っていると、彼は慣れた手つきでノコギリを使い枝を細かくし私のまだらの紐で全て括った。私よりも使いこなしていることに感心していると、怒った様子のフジは「これ没収するよ!あと、キミのお母さんにも報告するからね!」と私に告げた。傷は癒えても、赤いナイフは没収されたきり大人になっても彼の手元から帰ってきていない。

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