>>454(続き)
少し名残惜しいけど指を解いて、今度は視線を顔へと向ける。トレーナーは穏やかに寝息をたてていて、まだ起きる気配はない。目の下には薄くくまができていて、トレーナーの日頃の生活態度を窺わせる。
そっと頬へと手を添えると、少し下の方に剃り残した髭の感触がある。よく見えないからと言って、また適当にやっているのだろう。本当にだらしのない人だ。
そのままそっと頬を撫でるように手のひらを滑らせて、指先で唇へと触れる。少しカサついた感覚と、意外にも柔らかな感触に少しだけドキッとさせられる。
(ちょっと荒れてるな…)
トレーナー自身は多分そういうの気にしないんだろうな、なんて思いながらなんとなく指先でなぞってみる。薄く開いた口から漏れる寝息が、指先にかかって熱を持つ。ドクン、と心臓が跳ねる。自然と視線がそこに吸い込まれる。
トレーナーは、まだ起きない。
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