あの人は気づいてるのかな? あなたがナイスネイチャよりおふくろの事を多く口にするようになってから反比例するようにアタシがいつからかトレーナーさんって呼ばなくなった事、あの人、彼、呼び方は様々だけど剥がれ落ちた心ってさ、もう二度と治らないわけ
次の日にアタシは本格化の時期が過ぎて能力が下がり始めている事と、遠からずレースの舞台から退くことを、確固たる意志として伝えてそのままトレーナー室を後にした
最後に背中越しに見た彼は頭を抱えているようで、薄々彼自身も気が付いていたんだろうね。それ以上何も言う事はなかったし、きっとアタシはあなたの経験になるに過ぎないウマ娘だったってことなのかな、じゃあせめて永遠に忘れる事が無いようにずっとずっと後悔してほしい。あなたは二人をおって、結局どちらも輝かせきることのできなかった愚かなトレーナー、信頼を失って、時間を無為にさせた……何てアタシたちを尋常じゃない目で見てた周りのウマ娘たちに言われちゃうのかな
輝きよりも、誹謗や中傷を勝負服にした真逆の色でしかあなたの中に残れないと考えればそれはそれで悲しいけど、それでも――――三年間を振り返れば最後以外は悪くなかったよ
だから最後に呼ばせてもらうね、ありがとうトレーナーさん
でもアタシが一番うれしかったのは重賞を取った時でも、自分に自信が持てた時でもなくあなたから貰ったヘロヘロのトロフィーが一番うれしかったよ――――