金出し天井を踏んで君はゆく。一歩半だけ先を、怒ったように忙しなく。
もろびとこぞるコンビニの中を、その細い脚で縫うように淀みなく、騒ぐ人波をかきわけて。
店先は金で満ちて、きらめくプリペイドカードは眩しく鮮やかだ。
甘いホットチョコレートの湯気に、シナモンの香りが乗って脳を沸騰させている。
この冬の日の喧噪の中でその小さなカードを見失わずに済んでいるのは、間違いなく君自身のおかげだった。
「22000円になります」
顔を上げて、ぶっきらぼうに店員は言う。
頷き返すと、すぐに下を向いてしまう。
ただ一歩半だけ天井を、それ以上決して引き離さないように、
細心の注意を払いながら俺はゆく。
時折、ちらちらと振り返る視線に、気づかないふりをして先を行く。
気づいたことがわかったら、そのとたんにこの計額がぐんと伸びて消えてしまうからだ。
聖夜の月明かりを受けて俺はまたコンビニにゆく。
1歩半だけ先を、誰よりも優しく慎重に。