722 : ダンナ   2026/01/05 14:37:15 ID:zXjY1BFPTQ

『親愛なる半歩』

星降るレースで敗北したウマ娘たちの屍を踏んで君はゆく。
半歩だけ先を、酔ったように嘔吐するだけではなく。
もろびとこぞる集団墓地の中を、
その細い脚で泳ぐように情け容赦なく、
騒ぐゾンビ共をかきわけて。
店先は亡霊で満ちて、
腐った亡者の匂いがひどく品々は醜く全て消費期限切れだ。
甘いホットバナナの腐ったニオイに、
キンモクセイの香りが乗って嘔吐を繰り返している。
この冬の日の仮染めの平和の中で
その悲しみを見失わずに済んでいるのは、
間違いなく君自身のおかげだった。
「何してんの、絶対に死なないでよ」
振り向いて、真面目に君は言う。
うなずくと、すぐに前を向いてしまう。
ただ半歩だけ先を、
それ以上決して被害者が出ないように、
細心の注意を払いながら君はゆく。
時折、「大丈夫?」と振り返る君に、
既に俺がゾンビウイルスにかかったことに気づかないふりをして後を追う。
既に俺がゾンビウイルスにかかったことに気づいたことがわかったら、
その途端にこの親愛なる半歩が
ぐんと伸びて世界を終わらせてしまうからだ。
親愛なる夜の猫ミームをなかった事にして君はゆく。
半歩だけ先を、誰よりも残酷なゾンビらしくメトに。