同室の子とさ、得意の距離も脚質も同じで、ライバルみたいになってた
もちろん重賞とかで競い合うわけじゃないからおままごとみたいなものだけど、でも勝ったり負けたりで切磋琢磨してた
でもある時から、その子に負け越すようになった
強さの秘訣を聞いたら「トレーナーさんが専属でついてくださって……」って、はにかみながら言われた
アホらし、って鼻で笑った
だってその人ベテランじゃないよ? ペーペーの新米トレだよ? 何の意味があるんだって思った
そんなのとミーティングだの下見だのっておでかけ三昧で、お楽しく笑顔の日々を送って強くなるわけがない
毎日きつい努力を重ねてるあたしの負けの理由が、そんなとこにあるはずがない
だけど、それからは連戦連敗だった。
意地になってトレーニングを重ねて、ある時その子に怒られた。「いい加減に怪我しますよ!」って
そこから大喧嘩して、挙句、「そうやって独りで走っている限り、あなたはわたしに勝てません!」って言い切られた
実際その通りだから返す言葉がなくて、ただ歯噛みする以外なかった