66 : 貴様   2024/11/29 20:03:59 ID:uT.LZFl2sc

「な、何よこれー!?」
これを使うのは初めてだったのか、スイープはとても驚いていた。
磨けていると思っていたのに、真っ赤になった自分の歯……しかも、その部分には虫歯菌が暴れまわっている……と、ここまで言ってみると、彼女は口を抑えながらトレーナー室を飛び出し、1分ほどで帰ってきた。

「使い魔!命令よ!アタシの口の中から虫歯菌を消し去りなさい!」
「消し去るって……ああ、そういうことか」

突然、何を言い出すのかと思ったが……彼女の手に握られている歯磨きセットを見て、
答えが見つかった。

スイープは、仕上げ磨きをしてほしいのだと。

「少しでも痛くしたらただじゃ置かないんだから!」
(頼んできた方のセリフか……はいいとして、その通り気をつけないとな)
ソファに座り、俺の膝枕に寝てもらう体勢を取った。
歯の、赤くなっている部分を念入りに磨くだけ……そう思っても、
実は他人の歯磨きをしたことはない。
なので、力加減も何もわからない……つまり少しでも道を誤れば、
スイープに本当に噛みつかれてしまうリスクを伴った。

「ちょっとー!?早くしなさいよ!」
「わかった、わかった。始めるから口開けて」

考え込んでいたら、その時点でスイープにしびれを切らされそうになった。
こうなればぶっつけ本番でやるしか無いと思った俺は、覚悟を決めた。

「あーん……」
再度、スイープに口を開けてもらう。
とりあえず、奥歯の根元辺りから磨いていくことにした。

しゃかしゃか……
「いたっ!」
「すまん!!!!!!」
「声のほうがでかいわよ!」
どうやら、歯茎の肉に歯ブラシを当ててしまったらしい。
スイープが上げた小さな悲鳴に対し、俺はクソデカボイスで謝ってしまった。