歯間も全て磨き終え、後は口を濯ぐだけ。
しかし彼女は腰が抜けてしまったのか、洗面所へ向かうことが出来なかった。
「ああ、博士、私が邪魔で洗面所へ行けないんでしたね」
私はマウスウオッシュを彼女の口に注ぐ。
「2、30秒濯いでくださいね、ぐちゅぐちゅぐちゅ~ぺっ!」
博士は私の用意した洗面器へ吐き出した。洗面器の内容を覗くなんて事はしない。羞恥心があるだろうから。
「シンク、借りますね」
私は洗面器をすすぎ、彼女と言葉を交わした。
フロスは今日のような糸状のものがいいかI字型のブラシがいいか、Y字型のフロスか。歯磨き粉の味の好みは、ミントか、リンゴか。今はジンジャーミントやシナモンミントのフレーバーもあるらしい。彼女は何も答えなかった。
「明日もまた。来ますからね」
彼女はいつ私に背を預けてくれるだろうか…
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