クンレンは　とてもきびしいでした

つらくて　つらくて　まいにち　お父さんお母さんをおもい出しては　泣いていました

でも　いくら泣いても　お父さんとお母さんの顔や声を　おもい出せませんでした

名前ももらったはずです　でもだいじな名前もおもい出せません　

泣いても　泣いても　だれもたすけてくれないと思ったカノジョは　だれの言うことを聞かない　あばれん坊の　悪い子になってしまいます

だから　カノジョをほんとうに見てくれる人はいなくなり　みんなカノジョをみすててしまいます

でも　カノジョにはバジュツの才能がありました　大きなバジュツ大会で活躍していたのです

だかいろんなトレーナーがついて　そのたびに悪い子になって　みすてられました

ヨーロッパ中を転々として　そしてさいごは　イタリアにまできてしまいました


そこで運命の出会いを　カノジョはするのです

悪い子な自分を受け止めてくれて　カノジョのことをほんとうに見てくれる　そんな運命の人とです

今のトレーナーから　今度自分を見てくれる人は　日本人だと聞きました

「ハァッ！？なんでよりにもよってあんなチビ共に！？」

彼らのことは知っていました　自分よりも背の低いニンゲンたちの中でも　さらに背の低い人　ちんまりしたひきょうなやつら　そういうふうに覚えていました

カノジョは　とても耐えられませんでした

「(ぜったい嫌だ、ここにきたら怖がらせて追い返してやる！)」

そう考えていると　例のトレーナーがきてしまいました

「おーおー！！テメェが新しいトレーナーの…」

君かい？あばれん坊のきかん坊っていう子は

「…は？」

その人は　カノジョが思っていた人とは　まるでちがう人でした

「私の名前は西竹一、今日よろしく　おじょうさん」ﾆｺｯ

思っいたよりも背が高くて　思ってたよりもハンサムでオシャレで　

そして　今まで一度も見たことのないような　やさしい笑顔を向けてくれる人だったのです

初めて味わう感情で　カノジョはすっかり　どく気を抜かれてしまったのです

男は変わっていました

「すごい！君はなんてきれいな飛越をする子なんだ！」

「巨体というハンディをモノともしない…本当に素晴らしいよ！」

「決めましたオーナーさん！私が責任をもってこの子を引き取ります！
え？購入額日本円で1000円は軍の予算オーバー？だったら私のポケットマネーから出します！はいどうぞ！」

西は　しっかりカノジョを顔を見て　話す男で　しかも今日初めて会った自分に大金をはらう　　それぐらい変わった人でした

今まで経験したことのない扱いに　カノジョは　ついまた悪い子になってしまいます

「おいテメェ…アタシを拾ったってこと、ぜったい後悔させてやるからな…覚悟しとけよ…」

今までのトレーナーにも見せていた悪い顔、これでたいていのトレーナーたちは怯んでしまいます

「ははっ！お手柔らかに頼むよ」

それなのに西は余裕そうな笑みを浮かべ、いじわるをうけいれてくれる
それがよりいっそう　カノジョの調子を　くずれさせるのでした

ウラヌス　という名前も　この時もらいました

他のウマ娘と比べても背が高く　星印のような髪色を額に持っているから　天王星を意味する"ウラヌス"　お前にぴったりの名前だろう　とつけてくれました

クンレンは変わらずきびしかった　けれどもそのぶんウラヌスは西からたくさんの愛情をもらい　めんどうをみてくれました

ああこの人は　今までのやつらとはちがうんだ　ほんとうにいい人なんだ　とウラヌスは気づくようになりました

するとどうでしょう　あのあばれん坊で悪い子だったウラヌスは

「なぁ竹一！クンレンがおわったらさとう菓子食わせてくれよ！」

「またかい？体重管理もあるから食べすぎは…」

「…なぁ頼むよ…たけいちぃ…」

「…しょうがないなぁ…その分クンレンは厳しめでいくよ？」

「…！！ああ！アタシ、頑張るよ竹一！ありがとう！エヘヘッ」

あれだけあばれんぼうの悪い子は　すっかり西に心通わせていました
ぜったい後悔させるはずではなかったのでしょうか

こうなってしまえば　二人にかなう相手はいません

出る試合ほとんどで活躍し　その果てにはオリンピックにまで出場してしまいます

ウラヌスは大しょうがい飛越きょうぎにでることになりました　

きょうぎは一番最後でしたので　だれもが注目する花形のきょうぎでした

そのため　きんちょうからほかのウマ娘は失敗を繰り返します　失敗すればするほどまた失敗してしまう　それがこのきょうぎのとくちょうでした

でも　ウラヌスは　かんぺきな　飛越を行い　みごと優勝　金メダルを獲得するのです

そこから二人は　いちやく"時の人"となりました

日本のえらい人　アメリカや海外のえらい人のパーティへ招待され　美味しいごはんに楽しくオシャレなおしゃべり　いままで味わったことのない楽しいひとときを　いっぱいすごしました

それでも　ウラヌスは西のそばにいれるだけで　うれしかったのです

ずっと西のそばにいても　西がそれを受け入れてくれる　それがなによりもうれしかったのです

それがいつまでも続けばいい　いつまでも続いてほしい　そうウラヌスは思っていました





でも　時代が　そうさせてくれませんでした

オリンピックから５年後　おおきな戦争がはじまりました

戦争に勝つためつよいウマ娘をきょうぎ者としてではなく兵士として育成することがゆうせんされ　西はウマ娘の育成として北海道に行くこととなったのです

二人は　はなればなれになってしまいました

(いつかおわるはずだ　おわってアタシはまた竹一と一緒にきょうぎにでるんだ)

自分を安心させようと　こう思えば思うほど胸がくるしくなるばかりで　そして最後には

「…たい…会いたいよぉ…たけいち…あいたいよぉ…」

こればかりが　口からこぼれてしまうのです

戦争が始まって6年後の焼けるように暑い8月

ウラヌスはオリンピックでの活躍が認められて　バ事公苑で"保護"されていました

自由はないけれど　安全な暮らしができていました

それでも西に会えない日々は変わらなかったため　ウラヌスはいつも元気なく暮らしていました



そうしてボーっとしていると　どこからか聞き覚えのある　足音がしてきました　それが西の歩く音にとても似ていたのです

「…ははっ…アタシ、ついに幻聴まで聞こえちゃっているよ…」

でも　足音はどんどん近づいてきます　しかも幻聴にしては　とてもしっかりした　あの大好きな西にそっくりな足音なのです

「…うそだ…竹一がここにいるわけ…」

そんなことない　とショックを受けないように考えていると　声まで聞こえました


「ウラヌス」


西です　本当に西が　きてくれたのです




「たけいちッッ！」

ウラヌスは　恥じらいも監視の目も忘れて　西の元へ駆け寄りました

そして　ウマ娘が最大の愛情を示す態度と言われている　首を体に摺り寄せて　愛咬(あいこう)までしてしまいます

「たけいち・・・！たけいちぃ…！会いたかった…会いたかったよぉ…うわあああん！！」

もう　少女とは言えない年齢なのに　ウラヌスはまるで子供のように　彼の胸元・首回りで泣いてしまいました


「ごめんよウラヌス…長い間一人ぼっちにさせちゃって」


西は噛まれていたいはずです　それでも受け入れてくるのが西でした

その西の優しさが　よりいっそうウラヌスのひとみに涙を　声には泣き声をもたらすのでした

「少し　用事があって日本に戻ったんだ…またすぐ戦場へ帰るんだけどどうしても君の顔がみたくてね…」

「…」

「大丈夫さ、かならず勝って、生きて帰るから」

ウラヌスは嫌でした　このままずっと一緒にいたい　

ここで別れてしまえば　ずっとはなればなれになってしまう　そんな気がしたからです


でも　西は立派な人で軍人なのです　ウラヌスがどんなに言っても戦場へ行ってしまう


だから

だからウラヌスは

ｽ……ﾌﾞﾁｯ

「ッ！？ウラヌス…？なにを…？」

大事なたてがみを切り

「竹一

アタシのたてがみを　貴方に授けます」

西へ授けることにしました

むかしの人って大好きな人に切った髪をあげて、それをお守りになるようにしてたんだろ…だからさ


だから…お願い…生きて、生きて戻ってきてよ…竹一…」

ウラヌスは　どうしても西に生きてほしかったのです

「…わかった」

「私は、必ず生きて、君の元へ帰ってくる…約束だ」

「約束だぞ…竹一」

「ああ、約束だ」

立派な軍人であっても　こう言ってくれる　やっぱりウラヌスは西が大好きになり　これで絶対帰ってきてくれると　信じて待つこととしました

大好きな　彼を信じて

でも


「…」

年明けの3月下旬

「…たけいち…？」


西竹一は　戦死してしまう


一緒にいた人たちからは　まだわからないと言ってくれましたが　なぜかウラヌスは分かってしまったのです　あの人がもう帰ってこないことを

それからウラヌスは　急に体調を悪くさせて　ねこむようになりました


４日後に　西のいた戦場が敵軍の手に落ちたという話がでると　さらに体調を悪化させてしまいました


そして　その二日後






ウラヌスは　静かに息を引き取りました

今も　二人の遺体は見つかっていません

西は　戦場で戦死したため

ウラヌスは　バ事公苑で埋葬されたあと　せんとう機のばくだん攻撃で　お墓が吹き飛んだため

ですが　とあるものは遺されていました

あの　ウラヌスのたてがみです

西が　しぬその間際まで肌身離さず持っていたと言いますが　何年かたった後にたてがみが奇跡的にみつかり　西とウラヌスの記念館に飾られることとなり　二人はかんせつ的に再開を果たせたのです

最後に　西にとってウラヌスはどういう存在だったかを紹介して　この絵本を終わらせたいと思います


「自分を理解してくれる人は少なかったが、ウラヌスだけは自分を分かってくれた」


カノジョたちの最後は　戦争によって悲運な運命をたどりましたが　きっと天国で　再開できたはずです




おわり

ありがとうございました

絵のかけるトレーナーちゃんきてー？

ラブ&ピース！　愛だよ愛！！

素晴らしい話だった

ちくしょう、年喰ってからどうも涙腺が・・・

毎年8月に放送されるアニメかな？

小学校の夏休みの登校日に体育館で上映されるやつ

(バロン西って反転するとデューク東郷……)

ウラヌスと一緒にいるときのバロン西の優しい笑顔好き