ウマ娘で学ぶ名作文学「杜子春」
1 : お兄ちゃん   2023/11/26 18:17:49 ID:jjto.D8mQI
スイープ「ロブロイ!ちょっと聞きなさい!」
スイープ「アンタが前にお勧めしてくれた『舞姫』読んだわ!教科書にあるからすぐ読めます言ってたあれよ!」
ロブロイ「…!読んでくれたんですね!ど、どうでしたか…?」
スイープ「なによアレ!赤ちゃんまで作ったエリスが可哀そうよ!読んでてムカムカしちゃったわ!」
ロブロイ「あー…確かに今の私たちには理解しがたい選択してますよね…」
スイープ「それに…


読み辛くない!?


ロブロイ「…え?」
スイープ「あれじゃ全然頭に入ってこないわよ!」
ロブロイ「…も…」
ロブロイ「(もったいないです!スイープさん!)」
2 : モルモット君   2023/11/26 18:18:09 ID:jjto.D8mQI
ロブロイ「(確かに読み辛いです!ストーリーもどうしようもない男の人のお話なだけです!)」
ロブロイ「(ただ主人公・太田豊太郎の言動は当時では"まだ"受け入れられるものでしたし、そもそも舞姫が教科書にも載るようになったのは当時でも突出して優れた文体や文章が評価され、見本として定番化したからなんです!)」
ロブロイ「(…ということを、スイープさんに深く丁寧にお伝えしたいですが…)」

ロブロイ「私がそれをやってしまうと、長々語ってしまってまた引かれてしまう~~~~!」
スイープ「っ!?き、急にどうしたのよ!?」
ロブロイ「す、すみません、こっちの話です…」
3 : お兄ちゃん   2023/11/26 18:18:28 ID:jjto.D8mQI
ロブロイ「えー…舞姫は確かに読み辛いですよね…より現代語訳されたものもありますし、わざわざ原文に近い教科書をお勧めするのはダメでしたね…すみません」
スイープ「まぁいいわよ…魔導書でちょっとは興味持てたけどアタシには合わなかったわ」
スイープ「…本すすめてくれたのは感謝するわ、じゃあアタシ行くから」

ロブロイ「…」
ロブロイ「スイープさんの本に対する興味は間違いないですし、昔の本に触れ合えるまたとない機会だと思ったんですが…」
ロブロイ「どうにかして、もう一度興味を持ってくれたら…」

・・・
・・・・・・もしかしたら、"あれ"だったら・・・!

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
4 : あなた   2023/11/26 18:18:45 ID:jjto.D8mQI
~それから~
ロブロイ「スイープさん、少しいいですか?」
ロブロイ「急なんですけど、明日スイープさんに紹介したい作品がありまして…」
スイープ「…明日?もういいわよ、アタシにはああいう本は合わな…
ロブロイ「今回は、期待に応えて見せます!お願いします!」
スイープ「…?特に用事があるわけじゃないし、わかったわよ」
5 : お前   2023/11/26 18:18:59 ID:jjto.D8mQI
スイープ「…?なんで視聴覚室なのよ?図書館じゃないの?」
ガラッ
スペ「あ!来ましたよ!」
マルゼン「スイープちゃん待ってたわよ~」
スイープ「?どういうこと?なんでみんないるのよ?ただ本紹介するだけじゃないの?」

カレン「あれ?ロブロイさんスイープちゃんに言ってないんですか?」
スイープ「どういうことよ、ロブロイ?」
ロブロイ「そ、そうですよね、そこをちゃんと伝えるべきでした…」
ロブロイ「今回読んだのは確かに作品を紹介するためです」
ロブロイ「ですが、
紹介するといっても本ではなくそれを題材とした映像作品という形でスイープさんにお届けしようと思ったんです」
スイープ「…!」
6 : トレーナーさん   2023/11/26 18:19:42 ID:jjto.D8mQI
ロブロイ「前回『舞姫』を紹介しましたが、私はスイープさんのことを考えずにただ作品を紹介してしまいました…読書家として反省すべきことです。せっかく興味を持ってくれたのに…」
ロブロイ「ですので、今回はもう一度スイープさんが本に興味を持ってもらえるよう、短編小説の映像化に思い切って挑戦してみました…!」
ロブロイ「ここに皆さんがいるのは映像制作に協力してくれたからなんです…!」
ウインディ「そういうことなのだ!」
スイープ「…アタシのために作ってくれたの?」
キング「あら?別に貴方の為というわけじゃないわよ?面白そうだから参加しただけよ」
カワカミ「こういうことは初めてでしたが、すっごく楽しかったですわ~!」
スズカ「みんな初めてだからそんなに演技は上手くないけれど、楽しんでね」

スイープ「…ありがとう、みんな」
スイープ「ロブロイも…ありがとう」
ロブロイ「い、いえ!そう言ってもらえるだけで嬉しいです…///!」
7 : トレーナーちゃん   2023/11/26 18:19:59 ID:jjto.D8mQI
スイープ「で、何を紹介してくれるの?」
ロブロイ「芥川龍之介の『杜子春』という作品です」
スイープ「あくたがわ?舞姫つながりで鴎外の作品じゃないの?」
ロブロイ「鴎外でもいいんですが今回はスイープさんに本自体に興味を持ってもらうことが目的です」
ロブロイ「そのため、あの時代の作品の中でも短めで比較的わかりやすい作品として杜子春を選びました…!」
スイープ「ふーん…なるほどね…それじゃあ早速見たいわ!早く見せなさい!」
ロブロイ「はい…!」

ライス「えっと、これから『杜子春』を上映します…!。ナレーションは私、ライスが担当するね…!」


─ 杜子春、原作:芥川龍之介 監督:ゼンノロブロイ


8 : トレピッピ   2023/11/26 18:21:15 ID:jjto.D8mQI
ある春の日暮れ 夕暮れを背にぼんやりと空を仰いでいる一人の娘がありました
名前は杜子春(スペシャルウィーク)といって 元は大金持ちの娘でしたが ギャンブルで親の財産を使い尽くして自己破産し 友達から誰も相手にしてくれない 哀れな暮らしをしていました

スペ「うぅ…日が暮れるし、お腹は減るし、その上私なんかを泊めてくれる人なんて誰もいません…」
スペ「こんな思いするぐらいならいっその事、川に身を投げて死んでしまおうかな…」

─ あなた、何を考えているの?

スペ「え?」
???「ひどく思いつめた顔をしているじゃない?何を考えているの?」

どこからやってきたのか 突然彼女の前にマブいスケ…にも見えますが不思議と気品のある老女(マルゼンスキー)にも見える女性が立っていました 
そしてなぜか彼女は 名も知れない老女に自分の境遇を話し始めました
9 : 大将   2023/11/26 18:22:05 ID:jjto.D8mQI
マルゼン「それはかわいそうねぇ」

そう言うと老女はまだ夕日に照らされている往来へ指を指しながら

マルゼン「良いこと教えてあげる♪あの夕日の中に立てばあなたの影が映るでしょ?その時頭に当たるところを夜中に掘ってみなさい♪」
マルゼン「きっと車いっぱいの黄金が埋まっているはずよ~」
スペ「ほ、本当ですか!」
スペ「あ、あれいない…?」

先ほどまでいたはずの老女の姿はありませんでした
夢だとも思いましたが、彼女は老女の言うことを信じてみることにしました
10 : トレぴっぴ   2023/11/26 18:22:40 ID:jjto.D8mQI
スペ「あ・・・あわわわ・・・!ほ、本当に黄金が出てきた・・・!」
スペ「やりました!これでまたレース場で競バができます!」スッペペペ
スペ「国一番のお金持ちです!開催地全てのレースに好きなだけ賭けて、好きなだけご飯も食べます!」スペペペ
スペ「貧乏だったころ話しかけても無視し続けた友達も今では一緒に豪遊しています!楽しいです!」

 ただ お金とは際限があります 
 一年が経ち 二年が経ち 三年目の春が訪れたころには

スペ「うぅ…日が暮れるし、お腹は減るし、その上あんなに奢ってやった友達が誰も私を助けようとしてくれません…」

また元の貧乏に戻っていました
11 : トレぴっぴ   2023/11/26 18:23:06 ID:jjto.D8mQI
そうやって三年前と同じように夕暮れを背にぼんやりとしていると

─ あなた、何を考えているの?

またあの老女が現れました

スペ「…私ですか。私は今夜の寝る場所もないので途方に暮れているところです」
マルゼン「それはかわいそうねぇ」

マルゼン「良いこと教えてあげる♪あの夕日の中に立てばあなたの影が映るでしょ?その時…」
スペ「せっかくですが…お金はもういらないんです」
マルゼン「いらない…はは~ん?さては贅沢に飽きてしまったな?」
スペ「いえ…そういうわけでは…」
12 : マスター   2023/11/26 18:24:09 ID:jjto.D8mQI
スペ「私、他人というものに愛想が尽きたのです」
スペ「みんな薄情です、貧乏だったときは私なんか忘れたかのように無視してたのに、大金持ちになったら急に私を思い出して媚びへつらってお零れを貰いに来て…また貧乏になればその友人たちがまた私を忘れて無視し始めたんです…」
スペ「もし、もう一度お金持ちになってしまえば皆のいやらしさをまた味わうことになります…そうしてまた貧乏になって…
…だからお金はもういいです」

マルゼン「…ふ~ん、あなたまだ若いのに随分物事を理解しているようね」
マルゼン「じゃあ、これからずっと貧乏で平凡な暮らしをしていくつもり?」

スペ「いや…その…貧乏で平凡な暮らしはその…今の私にはできません…」
マルゼン「そうよね~ずっと贅沢してたもんねぇ」

スペ「…だから、私は貴方の弟子になります」
マルゼン「…あら?」
13 : トレーナー   2023/11/26 18:25:22 ID:jjto.D8mQI
スペ「おそらく貴方は仙人様ですよね?あてずっぽうで黄金の山の場所なんて当てられません、しかもその場所は往来の真ん中に埋まっていたんですよ?普通のことではありません」
スペ「私は、貴方様から仙術を教わって仙人になりたいのです…!」

マルゼン「・・・そうね、いかにもあたしは戸霊千山のふもとに住んでいる鉄冠子という仙人です」
マルゼン「アナタ、どこか物分かりが良さそうだったから試しにお金持ちにして何回目で気づくか遊んでたけど1回目で気づいちゃうか」
マルゼン「─いいわ、アナタをあたしの弟子にしてあげる」
スペ「あ、ありがとうございます!ありがとうございます!」
マルゼン「こらこら、土下座なんてしなくていいから」
マルゼン「ただ、仙人になれるかはアナタ次第よ?それじゃあ早速、戸霊千山に行くとしましょうね…ささっ乗って乗って☆」
スペ「乗る…?」
ブルゥウン…!
14 : お姉ちゃん   2023/11/26 18:26:12 ID:jjto.D8mQI
~~~~~~~~~~~~~

スペ「…まさか本当に運転するなんて」
マルゼン「フフフッ☆やっぱりこれだと早いわね~♪さて、ここが戸霊千山です」
スペ「…巨大な一枚岩の上…?深い谷の中をまるで浮いているようにある…いかにも仙人様が暮らしてそうな場所ですね…」
マルゼン「さてと…じゃあこれからあたしは天上に行って三女神さまの下へと御目にかかりに参ります。候補と言っても新しい仙人が増えるからね、お話ししとかなきゃ」
マルゼン「それまでアナタここでじっと座って待っていなさい」
スペ「わ、わかりました!」
15 : 貴方   2023/11/26 18:27:01 ID:jjto.D8mQI
マルゼン「それで待つ間なんだけど…絶対に声をだしちゃいけないわよ?」
スペ「それは…どうしてですか?」
マルゼン「仙人の住まいと言ってもここはあたしがいないと悪魔が現れてアナタを誑かしてくるはずだからよ

 もし、一言でも声を出したならば、到底仙人なんかなれないと思いなさい
 例え、天地が裂けたとしても喋っちゃダメよ?いいわね?

スペ「…わかりました、絶対声を出したりいたしません。命が無くなっても黙っています」
マルゼン「…それを聞いて安心したわ」
マルゼン「じゃあ、行ってくるわね」


スペ「…」
16 : アネゴ   2023/11/26 18:27:50 ID:jjto.D8mQI
仙人が姿を消してから30分後 突然空から声を響き渡りました
 例の悪魔です
 悪魔は虎(シンコウウインディ)と蛇(カレンチャン)の姿をしていて しきりに彼女に怒鳴りつけてきます

ウインディ「そこにいるのは何者なのだッ!」
カレン「返事がないなら~…命はないよ?」

スペ「…」

 彼女はいくら脅されても 噛みつかれ 一飲みにされそうになっても 声を発さず耐えていました
 虎と蛇が消え 大嵐が代わって彼女に苦痛を与えても彼女は仙人の言いつけを守り 黙り続けました
17 : 大将   2023/11/26 18:28:29 ID:jjto.D8mQI
しばらくすると 虎も 蛇も 大嵐も嘘だったかのように消えていました
 彼女は安心していましたが すぐさま次の悪魔が現れたのです

???「一体何者よ!?この戸霊千山は天地が始まって以来、この私が住まいにしているところよ!?」

 山を住まいとしているという三又の矛を持った神将(キングヘイロー)は 矛を彼女の胸元に向けてさらにつづけました

キング「さぁ言いなさい…?誰に断って、この私の住まいに入ったのかしら?」
キング「もし言わないのなら、私とその眷属がアナタをズタズタにしてしまうわよ?」

\ズッタズタニシテヤリマスワー!/
18 : トレぴっぴ   2023/11/26 18:29:04 ID:jjto.D8mQI
 それでも 彼女は仙人の言いつけを守りました

スペ「…」
キング「…強情ね…悪く思わないでちょうだい」

…ッグサ

 こうして 仙人の言いつけを守った彼女は 殺されました
 しかし 体から抜け出した彼女の魂は 地獄の底へとおりていきました
 まだ 彼女の苦しみは これで終わったわけではなかったのです
19 : トレぴ   2023/11/26 18:29:40 ID:jjto.D8mQI
地獄に落ちた彼女は 鬼(シンボリクリスエス)に無理やり引きずられ 閻魔大王(ゼンノロブロイ)の前に引き出されました
 そして閻魔大王も 彼女を喋らそうとしてきたのです

ロブロイ「私は地獄の閻魔大王…コラ!!お前は何故戸霊千山にいたのだ…!?」
スペ「…」ビクッ!
ロブロイ「もし、答えないのならありとあらゆる地獄の責め苦を味合わせることになるぞ…?それでもいいのか…!?」
スペ「…(怖い…逃げたい…でも…)」

 もし、一言でも声を出したならば、到底仙人なんかなれないと思いなさい
 例え、天地が裂けたとしても喋っちゃダメよ?いいわね?

スペ「…」
ロブロイ「…よし、鬼よ!懲らしめてやりなさい!」
ボリクリ「…分かりました」
20 : キミ   2023/11/26 18:30:39 ID:jjto.D8mQI
閻魔大王に逆らった彼女は 地獄の責め苦を味わい続けました
 針山に突き落とされ 血の海に投げ出され 焦熱と極寒も味あわされ 時には直接鬼に痛めつけられました
 しかし 彼女は一言もしゃべりませんでした 
 これに驚いた鬼は自分では何もできないと判断し また閻魔大王の下へ引き出したのです

ボリクリ「この罪人…私がどうしても話す気配がない…私ではどうすることもできない…」
ロブロイ「なにィッ!?…ええいしぶとい奴め!」
21 : アナタ   2023/11/26 18:32:19 ID:jjto.D8mQI
ロブロイ「…そうだ、この女の母親は畜生道に落ちているはずだ…コイツの母親を連れてこい!」
ボリクリ「…了解」

 鬼は空に舞い上がって行ったかと思うと すぐさま帰ってきました
 その傍らにはロバを駆りていましたが 明らかに様子が違いました
 それは 体をロバの姿に変えられた人であったためです
 さらにその顔に目をやると 彼女は驚愕しました
 その顔が 死んだはずの母(サイレンススズカ ※ロバのコスプレ)そのものだったからです
 形はみすぼらしい痩せロバでした それでも顔は忘れもしない あの母の顔だったのです

スズカ「…杜子春」

 声を聴いて彼女は確信しました この哀れな亡者は確かに自分の母に違いないと
22 : トレーナー君   2023/11/26 18:33:04 ID:jjto.D8mQI
ロブロイ「…もう一度聞く。なぜ、お前は戸霊千山にいた?もし白状しなければ今度はお前ではなくその母親を痛めつけるぞ?」
スペ「(…あ…ああ)」

 彼女は思わず 口を開いてしまいそうでした
 しかし やはりあの仙人の言いつけが 頭をよぎってしまうのです
 

もし、一言でも声を出したならば、到底仙人なんかなれないと思いなさい
 例え、天地が裂けたとしても喋っちゃダメよ?いいわね?


スペ「・・・・・」
ロブロイ「…ッこの親不孝者めが…!!自分さえよければというつもりだな…!?」
ロブロイ「鬼どもッ!母親を打ってしまえ!!!」
23 : ダンナ   2023/11/26 18:33:32 ID:jjto.D8mQI
ポカポカ

スズカ「うう」
ロブロイ「肉も骨も打ち砕いてしまえー!」

ポカポカポカ
スズカ「うう、痛い、うう、とっても痛い」
24 : 使い魔   2023/11/26 18:34:23 ID:jjto.D8mQI
 母が痛めつけられても なお彼女は声をあげませんでした
 その姿をみれば鬼たちはより強く母を痛めつけますが 彼女はそれでも 声を出せずにいました
 ただ 眼を手で多い隠し 必死に目を背けるばかりでした

 するとその時 彼女の耳に消え入りそうな声が伝わってたのです
 あの母の声でした

スズカ「杜子春…大丈夫よ。心配しなくていいからね」
スズカ「私はどうなってもいいの。ただアナタが幸せならそれでいいのよ」
スズカ「私がどうされても、喋りたくないのなら黙っていればいいのよ」
25 : 貴様   2023/11/26 18:34:40 ID:jjto.D8mQI
彼女はあのロバを
 母の顔だと確信し
 母の声だと確信し
 そして今 母の確かな優しさをも思い出しました

 彼女は背けていた目を母の方へやると 母は力なく地上に倒れたまま 彼女の方へと目をやっていました
 その目には悲しみが宿ってはいましたが 恨むようなものなどありませんでした


スペ「…あ…あ…」

ッッッッダ!!

 もう彼女に 仙人の言いつけなど 頭にありませんでした
26 : 貴様   2023/11/26 18:36:10 ID:jjto.D8mQI
 彼女は仙人の言いつけを忘れ

スペ「ハァ、ハァ、ハァ、ウウッ!」

 転ぶようにその傍に走りよると 

スペ「…」

 両手で半死のロバの頭を抱き 大粒の涙を落としながら 遂に一声叫んだのです





おかあちゃん。
27 : お前   2023/11/26 18:36:57 ID:jjto.D8mQI
気が付くと 彼女はあの仙人と会った場所にいました
 すべてが あの戸霊千山に行かない前と同じです

マルゼン「どうだった?あたしの弟子になったところで、とても仙人にはなれないでしょう?」

 あの仙人は 微笑みながら言ってきました

スペ「…なれません…でも、なれなかったことがかえって嬉しい気がします」
スペ「いくら仙人になるためでも、目の前で痛めつけられる母親を黙ってみてられません」
28 : 貴様   2023/11/26 18:37:44 ID:jjto.D8mQI
マルゼン「もし、黙り続けていたら─」
マルゼン「もし、アナタが黙り続けていたら、あたしは即座にお前を殺すつもりでいたわ」
マルゼン「もう仙人になりたいという望みも持っていないでしょう?」
スペ「…はい」

マルゼン「『大金持ちになることも元より愛想が尽きた』とも言ったわね?…これからどうするつもり?」
29 : 使い魔   2023/11/26 18:38:09 ID:jjto.D8mQI
スペ「…何になっても全うで、正直な暮らしをするつもりです」
マルゼン「…わかったわ。その言葉と気持ち、絶対忘れちゃ駄目よ?」
スペ「はい」
マルゼン「じゃあ、あたしは今日限りでもう二度と貴方に会わないことにするわ」
マルゼン「…それと、あの戸霊千山とは違う山のふもとにあたしは小さいけど土地を持っているの。家は小さいし畑も少しばかりあるだけだけど貴方に譲るわ」

マルゼン「今頃家の周りに桃の花が一面咲いているはずよ…それじゃあ、じゃあね♪」

仙人は愉快そうに満足そうな声を出して消えていきました…




~~~~~~~~~~~~~~
30 : トレぴ   2023/11/26 18:38:40 ID:jjto.D8mQI
ライス「以上で、上映は終わりです…!」

スペ「いやーこうやって見るとちょっと恥ずかしいですね…///」
マルゼン「え~?スペちゃん凄い演技だったわよ?役に完全に入り切っていたわ☆」
スペ「そ、そんなことないですよ~///マルゼンさんだって~///」
ボリクリ「…ロブロイもperfectな演技、してたぞ」
ロブロイ「ええ////!!?む、むしろ汚い言葉を使っちゃったんでスペさんやスズカさんに嫌な思いさせてないか心配で心配で…/////!」
スズカ「そんなことないわ、鬼気迫る演技でとってもよかったわ」
ロブロイ「な、ならよかったです‥‥///あっ、スイープさん!どうでした…か・・・?」

スイープ「…;;」ズビッズビッ
ライス「な、泣いちゃってる!?ら、ライスなんか変なことしちゃったかな!!?」
スイープ「ちが、う…ち、がう、わよぉ…;;」
31 : トレーナーちゃん   2023/11/26 18:39:46 ID:jjto.D8mQI
スイープ「普通に良い親子もの作品じゃない…普通に泣けるじゃない…;;」
カワカミ「わかります…;;最後の駆け寄るシーンで思わず私も…;;」
キング「あーもう貴方まで…ほらハンカチ」

スイープ「…ありがとう、すっごく楽しかったわ」
ロブロイ「い、いえ」
スイープ「…本」
ロブロイ「原作、興味持てたからあくたがわの『杜子春』貸してちょうだい。いいわよね?」
ロブロイ「…!もちろんです!ありがとうございます!」
スイープ「何アンタがお礼言っているのよ…あと」
ロブロイ「?」

スイープ「面白そうだから、次やるときはアタシも呼びなさい…いいわね?」
ロブロイ「…!はい!!!」
一同(ほっこり)
32 : トレーナーさま   2023/11/26 18:40:13 ID:jjto.D8mQI
スイープ「そして打倒!森鴎外よ!」
ロブロイ「だ、打倒…ですか?」
スイープ「そうよ!前は楽しめなかったけど、これからもっともっと本を読んでいって面白いって思えるようにしてあげるわ!覚悟してなさい!森鴎外!」
ロブロイ「あはは…なんかすいません森鴎外先生…」

おわり
33 : おまけ   2023/11/26 18:40:47 ID:jjto.D8mQI
カレン「え!次も映画やる気なんですか!だったらカレン、カワイイ役やりたいな~♡」
マルゼン「あたしも~♪☆もっとトレンディな役やりたいわ~!」

ウインディ「(この二人、実は最初のキャスティングに駄々こねているのだ)」
ウインディ「(マルゼンはまるでおばあちゃんと思われる仙人役は嫌だって言ってなんとか納得させたのだ)」
ウインディ「(カレンは最初閻魔役だったけど駄々こねた末、無理やり蛇役になって代わりに監督のロブロイがやる羽目になったのだ…)」
ウインディ「(編集担当したウインディちゃんはぶっちゃけクソ面倒だったのだ…二人とも絶対ハマリ役だったのだ)」

カレン「ウインディ先輩~?なんか言いました~?」
マルゼン「ウインディちゃ~ん?ハマリ役ってな~に?お姉さん気になるな~☆」

ウェエ!?ナンデナノダ!?クチニダシテナイノニ!?...ッア

本当にお終い
34 : 使い魔   2023/11/26 18:41:36 ID:jjto.D8mQI
以上で終わりです
以前みた棒スレッドをみてこの作品を作ろうって気が起きました
面白かったら幸いです…
35 : トレーナーさま   2023/11/26 20:03:00 ID:G566Uyn.uQ
読みやすくて面白くて…味を占めてもっと色んな作品でやってほしいって気持ちが高まってまいりました
36 : ダンナ   2023/11/26 20:50:04 ID:UtclwgCKAI
面白かった
杜子春というか芥川作品は青空文庫に入っててすぐ読めるから良い時代だよね

森鴎外に関しては鯨統一郎の『タイムスリップ森鴎外』を読んでみるのもオススメ
37 : お姉さま   2023/11/27 12:24:06 ID:JV2U79FgG.
>>35
読んでてSSにしたいなって作品があったらしてみますね
38 : トレピッピ   2023/11/27 12:25:03 ID:JV2U79FgG.
>>36
青空文庫はいい制度ですよねぇ
夏目漱石や芥川作品はこれで知れました

タイムスリップ森鴎外おもしろそうですね...探してみます
39 : トレーナー君   2023/11/27 12:40:59 ID:JV2U79FgG.
あと今気づいたけど>>31

ロブロイ「原作、興味持てたからあくたがわの『杜子春』貸してちょうだい。いいわよね?」

はロブロイじゃなくてはスイープの発言です...
40 : 貴方   2023/11/27 13:04:30 ID:vAIE4eOUgU
😷姉御が閻魔はまさにその通りッス

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